説明

紙容器の製造方法及び製造装置

【課題】 製造品質の安定した、プレス成形による紙容器の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】 帯状の原紙6は、供給装置11によって成形装置31に連続的に供給される。成形装置31は、罫線形成手段である第1金型41a、41bと、ブランクシート打抜手段及びプレス手段である第2金型42a、42bとを備えている。供給装置11から供給された原紙6は、第1金型41a、41bによって、罫線25が所定の位置に形成される。罫線25が形成された原紙6は、下流側の第2金型42a、42bに移送される。第1金型41a、41bから移送された原紙6は、第2金型42a、42bによって、罫線が形成された原紙6からブランクシートが打ち抜かれると共に、その位置でプレス加工され、紙容器60の製造が完了する。このように、原紙6はブランクシートを打ち抜いた位置でプレス加工されるため、製造品質が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紙容器の製造方法及び製造装置に関し、特に、プレス成形による紙容器の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板紙原紙によってプレス成形された紙容器は、軽量且つコスト的に有利となるため、主に食品の収納を目的として使用されている。そして、このような紙容器を製造するためのプレス成形による製造方法及び製造装置は、種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図14は従来の紙容器を示す斜視図である。
【0004】
図を参照して、紙容器60は、長方形状の底部61と、底部61の外縁から上方に延びる側壁部62と、側壁部62同士を接続するコーナ部65と、側壁部62及びコーナ部65の外縁に形成された縁巻63とから構成されている。そして、紙容器60は、一枚の板紙原紙をプレス成形することによって形成されている。
【0005】
図15は図14で示した紙容器を成形するための板紙原紙の外観形状を示す図であり、図16は図15で示した板紙原紙の線条の拡大断面図である。
【0006】
図を参照して、板紙原紙70は、コーナーが丸められた四角形状のシート材によって構成されている。図の破線で示した部分は成形後の紙容器の底部61に対応する境界部分であり、その上下左右方向の部分は側壁部62及びコーナ部65に対応している。
【0007】
又、コーナ部65に対応する部分には、底部61に位置する湾曲部中心位置72を中心として、外周縁まで延びる放射状の線条(罫線)71が形成されている。線条71は、板紙原紙70におけるプレス成形時の皺を吸収するためのものである。
【0008】
そして、上述した通り、板紙原紙70をプレス成形することによって、図14で示した紙容器60が形成される。次に、このようなプレス成形をおこなうための成形装置について説明する。
【0009】
図17は特許文献1で開示された紙容器を成形するための成形装置を示す概略断面図である。
【0010】
図を参照して、成形装置80は、上方側に位置する第1の型部材81と、下方側に位置する第2の型部材82とを備えている。
【0011】
第1の型部材81は、第1の型部材81の上方側に配置された、上下方向に移動自在な台座部87にスプリングを介して取り付けられている。又、第1の型部材81の外方側を覆うように、第1の外枠部材83が台座部87に固定されている。
【0012】
第2の型部材82は、第2の型部材82の下方側に配置された台座部88に固定されている。又、第2の型部材82の外方側を覆うように、カーリング部材85が台座部88にスプリングを介して取り付けられている。更に、カーリング部材85の外方側を覆うように、第2の外枠部材84がスプリングを介して取り付けられている。更に、第2の外枠部材84の外方側を覆うように、位置決めリング89が第2の外枠部材84の底部にスプリングを介して取り付けられている。
このように構成された成形装置80の第2の型枠部材82上に、図15で示した板紙原紙70を載置する。尚、板紙原紙70の水平方向の載置位置は、位置決めリング89によって規制される。そして、載置された板紙原紙70に対して台座部87を下方に降下させることによって、第1の型部材81と第2の型部材82とのプレス加工等によって、図14で示した紙容器60が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−71656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような従来の紙容器の製造方法では、あらかじめ原紙の断裁、又はトムソン抜き加工によって製造された板紙原紙を一枚ずつ成形装置に供給する必要がある。従って、板紙原紙の供給時に位置ずれが発生する可能性があり、製造された紙容器の品質が不安定なものとなっていた。
【0015】
又、紙容器の生産効率は、板紙原紙を自動的に供給する装置の供給スピードによって決定されるため、必ずしも生産効率が良いとは言えなかった。
【0016】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、製造品質の安定した、プレス成形による紙容器の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、プレス成形による紙容器の製造方法であって、帯状の原紙を供給する工程と、原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成し、移送する工程と、罫線が形成されて移送された原紙から、罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートを連続的に打ち抜く工程と、打ち抜かれたブランクシートの各々を、その位置でプレス加工する工程とを備えたものである。
【0018】
このように構成すると、ブランクシートを打ち抜いた位置でプレス加工される。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、ブランクシートが打ち抜かれて開口が連続的に形成された原紙を検査して、開口の各々の間の残存部分の有無を検出する工程と、残存部分が存在しない旨の検出結果に応答して、プレス加工を停止する工程とを更に備えるものである。
【0020】
このように構成すると、ブランクシートの打ち抜き不良が判断される。
【0021】
請求項3記載の発明は、プレス成形による紙容器の製造方法であって、帯状の原紙を供給する工程と、原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成すると共に、罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートとなるように一部分を残して切断し、移送する工程と、移送された原紙から、一部分を切断してブランクシートを得る工程と、得られたブランクシートをその位置でプレス加工する工程とを備えたものである。
【0022】
このように構成すると、ブランクシートは原紙の状態で移送される。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、ブランクシートはコーナーが丸められた矩形形状を有し、一部分は、コーナーの4箇所に位置するものである。
【0024】
このように構成すると、移送時のブランクシートの位置が安定する。
【0025】
請求項5記載の発明は、プレス成形による紙容器の製造装置であって、帯状の原紙を供給する原紙供給手段と、供給された原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成した後、移送する罫線形成手段と、移送された原紙から、罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートを打ち抜くブランクシート打抜手段と、打ち抜かれたブランクシートを、その位置でプレス加工するプレス手段とを備えたものである。
【0026】
このように構成すると、ブランクシートを打ち抜いた位置でプレス加工される。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、罫線形成手段は、第1金型よりなり、ブランクシート打抜手段及びプレス手段は、第2金型よりなり、第1金型と第2金型とは、一対の上下移動装置に取付けられるものである。
【0028】
このように構成すると、第1金型と第2金型とは同期して、原紙及びブランクシートに作用する。
【0029】
請求項7記載の発明は、請求項5又は請求項6記載の発明の構成において、ブランクシートが複数打ち抜かれて、複数の開口が形成された原紙を検査し、開口の各々の間の残存部分の有無を検出する検出手段と、残存部分が存在しない旨の検出結果に応答して、各手段の動作を停止する制御手段とを更に備えたものである。
【0030】
このように構成すると、ブランクシートの打ち抜き不良が判断される。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、ブランクシートを打ち抜いた位置でプレス加工されるため、製造品質が安定する。
【0032】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、ブランクシートの打ち抜き不良が判断されるため、不良品の発生が防止され、品質が向上する。
【0033】
請求項3記載の発明は、ブランクシートは原紙の状態で移送されるため、ブランクシートの供給が容易となる。
【0034】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、移送時のブランクシートの位置が安定するため、効率的な移送となる。
【0035】
請求項5記載の発明は、ブランクシートを打ち抜いた位置でプレス加工されるため、製造品質が安定する。
【0036】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、第1金型と第2金型とは同期して、原紙及びブランクシートに作用するため、生産効率が向上すると共に、装置全体がコンパクトになる。
【0037】
請求項7記載の発明は、請求項5又は請求項6記載の発明の効果に加えて、ブランクシートの打ち抜き不良が判断されるため、不良品の発生と流出が防止され、品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の第1の実施の形態による紙容器の製造装置を示す概略図である。
【図2】図1で示した紙容器の製造方法における原紙の加工工程を示す図である。
【図3】図1で示したプレス装置の概略断面図であって、プレス前の状態を示すものである。
【図4】図3で示したプレス装置の概略断面図であって、プレス中の状態を示すものである。
【図5】この発明の第2の実施の形態による紙容器の製造装置を示す概略図である。
【図6】図5で示した紙容器の製造方法における原紙の加工工程を示す図である。
【図7】図5で示した製造装置の第2金型における第1製造状態を示す概略断面図である。
【図8】図5で示した製造装置の第2金型における第2製造状態を示す概略断面図である。
【図9】図5で示した製造装置の第2金型における第3製造状態を示す概略断面図である。
【図10】図5で示した製造装置の第2金型における第4製造状態を示す概略断面図である。
【図11】図5で示した製造装置の第2金型における第5製造状態を示す概略断面図である。
【図12】図5で示した製造装置の第2金型における第6製造状態を示す概略断面図である。
【図13】図5で示した製造装置の検出器を示す概略図であって、原紙の残存部分が存在しない状態を示すものである。
【図14】従来の紙容器を示す斜視図である。
【図15】図14で示した紙容器を成形するための板紙原紙の外観形状を示す図である。
【図16】図15で示した板紙原紙の線条の拡大断面図である。
【図17】図14で示した紙容器を成形するための成形装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1はこの発明の第1の実施の形態による紙容器の製造装置を示す概略図であり、図2は図1で示した紙容器の製造方法における原紙の加工工程を示す図であって、(1)は原紙供給位置(A1)直後の状態を示すものであり、(2)は罫線形成・切断位置(A2)直後の状態を示すものであり、(3)はプレス加工位置(A3)直後の状態を示すものである。
【0040】
これらの図を参照して、この実施の形態による製造装置10を構成する各装置及び動作について、上流側から順に説明する。
【0041】
原紙供給位置A1に配置されたロール状に巻回された帯状の原紙6は、原紙供給手段である供給装置11によって表面のコーティング処理等がされた後、下流側の罫線形成・切断位置A2へ連続的に供給される。尚、原紙供給位置A1においては、図2の(1)で示すように、原紙6には切断加工が施されていない状態となっている。
【0042】
供給装置11の下流側の罫線形成・切断位置A2に配置された罫線形成・切断装置12は、トムソン刃と一対のプレス面とを有し、供給された原紙6を挟むように配置された一対の罫線形成・切断金型21a、21bを備えている。そして、上方側に配置された罫線形成・切断金型21aは、上下移動自在に構成された上下移動装置22に取り付けられている。
【0043】
そして、上下移動装置22の降下によって罫線形成・切断金型21a、21bにプレスされた原紙6は、図2の(2)で示すように、コーナーが丸められた矩形形状を有するブランクシート8となるように切断される。この時、ブランクシート8のコーナーの4箇所の一部分24を残した状態で切断される。
【0044】
又、罫線形成・切断金型21a、21bにプレスされた原紙6は、上述した切断と同時に、原紙6の対応する位置(ブランクシート8となる部分)に、成形時の皺を吸収するための罫線25が形成される。罫線25は、従来例の図16で示した線条の構造と同一のものであり、ブランクシート8のコーナー部分の各々に放射状に形成される。
【0045】
そして、このようなブランクシート8部分が形成された原紙6は、ブランクシート8と共に下流側のプレス加工位置A3に配置されたプレス装置13へ移送される。この時、ブランクシート8のコーナーの4箇所の一部分24が切断されていない状態であるため、移送時のブランクシート8の原紙6に対する位置が安定する。従って、効率的に移送することが出来る。
【0046】
次に、プレス装置13の詳細な構造について説明する。
【0047】
図3は図1で示したプレス装置の概略断面図であって、プレス前の状態を示すものである。
【0048】
図を参照して、図1で示した罫線形成・切断装置12の下流側のプレス加工位置A3に配置されたプレス装置13は、従来例の図17で示した成形装置と基本的に同一構造であるが、プレス装置13には帯状の原紙6が連続的に移送される点が相違している。
【0049】
そして、原紙6のブランクシート8の部分が第1の型部材81と第2の型部材82との間に位置する所定の位置になった時、原紙6の移送を一旦停止し、図示しない上下移動装置によって台座部87を降下させる。すると、第1の型部材81と第2の型部材82とによって原紙6のブランクシート8の部分がプレスされる。
【0050】
図4は図3で示したプレス装置の概略断面図であって、プレス中の状態を示すものである。
【0051】
図を参照して、台座部87を降下させると、第1の外枠部材83と位置決めリング89とによって、ブランクシート8の外側(図の左右側)に位置する原紙6を挟持した状態で、第1の型部材81と第2の型部材82とでブランクシート8の部分がプレスされる。
【0052】
上述した通り、プレス装置13に移送される原紙6のブランクシート8の部分は、コーナーの一部分24を残した状態で切断されており、位置決めリング89の内縁側に位置している。そのため、第1の型部材81と第2の型部材82とのプレスによって、この一部分が切断される。即ち、ブランクシート8として打ち抜かれる。そして、打ち抜かれたブランクシート8は、その位置で従来例と同様にプレス加工される。
【0053】
このように、プレス装置13によるプレス加工時においては、ブランクシート8は原紙の状態で移送される。従って、従来のようにブランクシート8毎に供給する必要が無くなり、ブランクシート8の供給が容易となると共に、生産効率が向上する。
【0054】
再度図1及び図2を参照して、罫線形成・切断位置A2から移送された原紙6のブランクシート8は、上述した通り、プレス装置13によって残存部が打ち抜かれてプレス加工される。その後、プレス加工された紙容器60が下流へと移送されることによって、紙容器60の製造が完了する。
【0055】
又、プレス装置13の下流側の検出位置A4に配置された検出器14は、コの字形状に形成されており、その先端部分の各々に光電管センサー29を備えている。そして、プレス装置13の打ち抜き及びプレス加工に伴って排出される、複数のブランクシート部分が打ち抜かれて複数の開口27a、27bが形成された原紙6の中央部分を光電管センサー29で挟み込むように配置されている。
【0056】
又、製造装置10においては、図示しない制御装置を備えている。この制御装置は、検出器14からの検出結果に対応して、各装置の動作を停止することが出来るように構成されている。
【0057】
検出器14は、図2の(3)で示すように、光電管センサー29によって原紙6の開口27a、27bが正常に形成された場合に発生する残存部分28の有無を検出する。そして、原紙6の残存部分28が存在しない旨が検出されると、不良状態であると判断し、図示しない制御装置によって製造装置を構成する各装置が停止される。従って、不良品の発生と流出が防止されると共に、ブランクシートが確実に打ち抜かれている旨が確認出来るため、紙容器60の品質が向上する。
【0058】
このように構成された製造装置10においては、プレス加工時にブランクシート8の一部分24を千切るようにプレスするため、得られたブランクシート8の品質が若干不安定となる虞がある。即ち、製造された紙容器60の品質も若干不安定となる虞があるが、このような問題を解決する製造装置について、以下に説明する。
【0059】
図5はこの発明の第2の実施の形態による紙容器の製造装置を示す概略図であり、図6は図5で示した紙容器の製造方法における原紙の加工工程を示す図であって、(1)は原紙供給位置(B1)直後の状態を示すものであり、(2)は罫線形成位置(B2)直後の状態を示すものであり、(3)は打抜・プレス加工位置(B3)直後の状態を示すものである。
【0060】
これらの図を参照して、この実施の形態による製造装置30を構成する各装置及び動作について、上流側から順に説明する。
【0061】
原紙供給位置B1に配置されたロール状に巻回された帯状の原紙6は、原紙供給手段である供給装置11によって表面のコーティング処理等がされた後、下流側の罫線形成位置B2へ連続的に供給される。尚、原紙供給位置B1においては、図6の(1)で示すように、原紙6には切断加工が施されていない状態となっている。
【0062】
供給装置11の下流側に配置された成形装置31は、その上流側に位置する罫線形成手段である一対の第1金型41a、41bと、下流側に位置するブランクシート打抜手段及びプレス手段である一対の第2金型42a、42bとを備えている。そして、第1金型41aと第2金型42aとは、一対の上下移動装置43に取り付けられている。
【0063】
供給装置11から供給された原紙6は、罫線形成位置B2において、成形装置31の第1金型41a、41bによって、図6の(2)で示すように成形時の皺を吸収するための罫線25が所定の位置に形成される。即ち、図2の(2)とは異なり、原紙における切断部分が全く無い状態である。そして、罫線25が形成された原紙6は、下流側の打抜・プレス加工位置B3へ移送される。
【0064】
ここで、打抜・プレス加工位置B3に配置された第2金型42a、42bの詳細な構造について説明する。
【0065】
図7は図5で示した製造装置の第2金型における第1製造状態を示す概略断面図である。
【0066】
図を参照して、上方側に位置する第2金型42aは、その加圧端面52が後述する第2金型42bの下型部材55の加圧端面56に相互に対向する、台座部47に対して上下方向に移動自在な上型部材51を備えている。上型部材51の加圧端面52は、例えば、従来例の図14で示す紙容器60の底部61及び側壁部62に対応した形状に形成されている。尚、台座部47は、図5で示した上下移動装置43に取り付けられており、上下移動装置43の上下移動に伴って上下方向に移動自在となるように構成されている。
【0067】
又、上型部材51の外周側には昇降部材53が配置されており、昇降部材53の下端面の外端縁には、図示しない下外径刃先が設けられている。更に、昇降部材53の外周側には、台座部47に対して上下方向に移動自在な外枠部材54が配置されている。
【0068】
下方側に位置する第2金型42bは、その加圧端面56が第2金型42aの上型部材51の加圧端面52に相互に対向する下型部材55を備えている。下型部材55の加圧端面56は、上型部材51の加圧端面52に対応した形状に形成されている。
【0069】
又、下型部材55の外周側には、その上端面が昇降部材53の下端面の下方に位置する、台座部48に対して上下方向に移動自在なカーリング部材57が配置されている。更に、カーリング部材57の外周側には、その上端面が外枠部材54の下端面の下方に位置する固定部材58が配置されている。尚、固定部材58の上端面の内端縁には、図示しない上外径刃先が設けられている。
【0070】
このように構成された第2金型42a、42bによる、原紙6に対するブランクシート打ち抜き及びプレス加工方法について説明する。
【0071】
まず、第2金型42a、42bの間に移送された原紙6を、図6の(2)で示した罫線25の部分がこれらの間となる所定の位置で一旦停止する。そして、図示しない上下移動装置によって図の矢印で示すように第2金型42aを降下させると、以下の図8で示す第2製造状態となる。
【0072】
図8は図5で示した製造装置の第2金型における第2製造状態を示す概略断面図である。
【0073】
図を参照して、第1製造状態から降下された第2金型42aの昇降部材53及び外枠部材54の各々の下端面と、第2金型42bのカーリング部材57及び固定部材58の各々の上端面とによって、図の左右方向における原紙6の罫線形成部分の両端部が挟持される。そして、この挟持状態のまま、図の矢印で示すように更に第2金型42aを降下させると、以下の図9で示す第3製造状態となる。
【0074】
図9は図5で示した製造装置の第2金型における第3製造状態を示す概略断面図である。
【0075】
図を参照して、第2製造状態から第2金型42aを更に降下させると、上型部材51及び昇降部材53が、第2金型42bのカーリング部材57を押し下げて移送時の原紙6の面より下方に位置する。この時、第2金型42aの昇降部材53の下外径刃先と、第2金型42bの固定部材58の下外径刃先とが摺接して原紙6が所望の形状に切断され、ブランクシート8が打ち抜かれる。上述した通り、原紙6は図7で示した第1製造状態において所定の位置で停止しているので、打ち抜かれたブランクシート8には図示しない罫線が少なくとも形成されている。そして、ブランクシート8を打ち抜いた状態のまま、図の矢印で示すように更に第2金型42aを降下させると、以下の図10で示す第4製造状態となる。
【0076】
図10は図5で示した製造装置の第2金型における第4製造状態を示す概略断面図である。
【0077】
図を参照して、第3製造状態から第2金型42aを更に降下させると、第2金型42aの上型部材51と第2金型42bの下型部材55との各々の加圧端面によって、ブランクシート8が容器形状にプレスされる。そして、第4製造状態から、図の矢印で示すように更に第2金型42aを降下させると、以下の図11で示す第5製造状態となる。
【0078】
図11は図5で示した製造装置の第2金型における第5製造状態を示す概略断面図である。
【0079】
図を参照して、第4製造状態から第2金型42aを更に降下させると、第2金型42aの昇降部材53のみが、第2金型42bのカーリング部材57を押し下げて降下する。すると、昇降部材53の下型部材55側の面と下型部材55の昇降部材53側の面とによって、ブランクシート8の外周部分が90°下方に折り曲げられる。
【0080】
そして、ブランクシート8の端部が、昇降部材53とカーリング部材57とによって形成されるカール溝67内に位置するまで第2金型42aを降下させ、その位置から第2金型42aを上昇させると、以下の図12で示す第6製造状態となる。
【0081】
図12は図5で示した製造装置の第2金型における第6製造状態を示す概略断面図である。
【0082】
図を参照して、第5製造状態から第2金型42aを上昇させると、昇降部材53及びカーリング部材57が上昇する。すると、図11で示したブランクシート8の端部がカール溝67によって巻かれ、縁巻63が形成される。これによって、従来例の図14で示したような、縁巻63を有する紙容器60が製造される。
【0083】
このように、第2金型42a、42bによって、原紙6はブランクシート8を打ち抜いた位置でプレス加工される。従って、従来のようにブランクシート8が位置ずれする虞が無くなるため、製造品質が安定する。
【0084】
再度図5及び図6を参照して、上述した通り、供給装置11から供給された原紙6は、罫線形成位置B2で成形装置31の第1金型41a、41bによって罫線が形成される。その後、罫線が形成された原紙6は移送されて、打抜・プレス加工位置B3で成形装置31の第2金型42a、42bによってブランクシートの打ち抜き及びプレス加工され、下流に移送される。このようにして、紙容器60の製造が完了する。
【0085】
又、上述した通り、第1金型41a、41bと第2金型42a、42bとが一対の上下移動装置43に取り付けられているため、第1金型41a、41bと第2金型42a、42bとは同期して原紙6及びブランクシート8に作用することになる。従って、生産効率が向上すると共に、成形装置31及び製造装置30がコンパクトになる。
【0086】
又、成形装置31の下流側の検出位置B4には、検出器14が配置されていると共に、製造装置30は図示しない制御装置を備えている。検出器14及び制御装置は、図1及び図2で示した第1の実施の形態によるものと同一である。
【0087】
ここで、検出器14及び制御装置の詳細な動作及び効果について説明する。
【0088】
図13は図5で示した製造装置の検出器を示す概略図であって、(1)は正常状態の原紙を示すものであって、(2)は不良状態の原紙を示すものである。
【0089】
まず(1)を参照して、正常状態の原紙6にあっては、開口27aと開口27bとの間に残存部分28が形成されている。即ち、打ち抜かれたブランクシートが所望の形状となっている。従って、検出器14が光電管センサー29によって、通過する原紙6の残存部分28の存在を常に確認することで、安定した品質の紙容器が製造されている旨が確認出来る。
【0090】
次に(2)を参照して、不良状態の原紙6にあっては、開口27aの一部と開口27bの一部とが重ね合わさった状態となっている。即ち、上流側に位置する開口27bの位置で打ち抜かれたブランクシートは、その一部が欠けた状態になっていることを意味する。従って、この位置のブランクシートで製造された紙容器は不良品となる。
【0091】
そこで、検出器14が光電管センサー29によって、通過する原紙6に(1)で示した残存部分28が存在しない旨を検出すると、図示しない制御装置によって製造装置の各装置が停止される。このように、検出器14と制御装置とによって、ブランクシートの打ち抜き不良が判断されて製造装置の各装置を停止するため、不良品の発生が防止されると共に、ブランクシートが確実に打ち抜かれている旨が確認出来るので、紙容器の品質が向上する。
【0092】
尚、上記の各実施の形態では、製造する紙容器は縁巻を有しているが、縁巻の無い紙容器を製造する際にも同様に適用出来ることは言うまでも無い。
【0093】
又、上記の各実施の形態では、ブランクシートはコーナーが丸められた矩形形状に形成されているが、例えば、多角形状又は円形状等、他の形状であっても良い。
【0094】
更に、上記の各実施の形態では、製造装置は特定の検出器及び制御装置を備えているが、検出器は原紙の開口の各々の間の残存部分の有無を検出出来るものであれば良い。又は、検出器及び制御装置は無くても良い。
【0095】
更に、上記の第1の実施の形態では、製造装置は特定構造のプレス装置を備えているが、移送される原紙のブランクシートの一部分を切断してブランクシートを得ると共に、その位置でプレス加工出来るものであれば、他の構造であっても良い。
【0096】
更に、上記の第1の実施の形態では、原紙からブランクシートとなるように切断する際に残す一部分はブランクシートのコーナーの4箇所に位置しているが、プレス加工時に切断出来れば、この一部分は他の部分に位置していても良い。
【0097】
更に、上記の第1の実施の形態では、罫線形成・切断装置の金型とプレス装置の金型とは別の上下移動装置に取り付けられているが、これらは一対の上下移動装置に取り付けられていても良い。
【0098】
更に、上記の第2の実施の形態では、製造装置は特定構造の第2金型を備えているが、ブランクシートを打ち抜くと共に、打ち抜かれたブランクシートを、その位置でプレス加工出来るものであれば、他の構造であっても良い。
【0099】
更に、上記の第2の実施の形態では、第1金型と第2金型とは一対の上下移動装置に取り付けられているが、これらは別々の上下移動装置に取り付けられていても良い。
【符号の説明】
【0100】
6…原紙
8…ブランクシート
10、30…製造装置
11…供給装置
12…罫線形成・切断装置
13…プレス装置
14…検出器
24…一部分
25…罫線
27…開口
28…残存部分
31…成形装置
41…第1金型
42…第2金型
43…上下移動装置
60…紙容器
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形による紙容器の製造方法であって、
帯状の原紙を供給する工程と、
前記原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成し、移送する工程と、
前記罫線が形成されて移送された前記原紙から、前記罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートを連続的に打ち抜く工程と、
前記打ち抜かれた前記ブランクシートの各々を、その位置でプレス加工する工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項2】
前記ブランクシートが打ち抜かれて開口が連続的に形成された前記原紙を検査して、前記開口の各々の間の残存部分の有無を検出する工程と、
前記残存部分が存在しない旨の検出結果に応答して、前記プレス加工を停止する工程とを更に備える、請求項1記載の紙容器の製造方法。
【請求項3】
プレス成形による紙容器の製造方法であって、
帯状の原紙を供給する工程と、
前記原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成すると共に、前記罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートとなるように一部分を残して切断し、移送する工程と、
前記移送された前記原紙から、前記一部分を切断して前記ブランクシートを得る工程と、
前記得られた前記ブランクシートをその位置でプレス加工する工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項4】
前記ブランクシートはコーナーが丸められた矩形形状を有し、
前記一部分は、前記コーナーの4箇所に位置する、請求項3記載の紙容器の製造方法。
【請求項5】
プレス成形による紙容器の製造装置であって、
帯状の原紙を供給する原紙供給手段と、
前記供給された前記原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成した後、移送する罫線形成手段と、
前記移送された前記原紙から、前記罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートを打ち抜くブランクシート打抜手段と、
前記打ち抜かれた前記ブランクシートを、その位置でプレス加工するプレス手段とを備えた、紙容器の製造装置。
【請求項6】
前記罫線形成手段は、第1金型よりなり、
前記ブランクシート打抜手段及び前記プレス手段は、第2金型よりなり、
前記第1金型と前記第2金型とは、一対の上下移動装置に取付けられる、請求項5記載の紙容器の製造装置。
【請求項7】
前記ブランクシートが複数打ち抜かれて、複数の開口が形成された前記原紙を検査し、前記開口の各々の間の残存部分の有無を検出する検出手段と、
前記残存部分が存在しない旨の検出結果に応答して、前記各手段の動作を停止する制御手段とを更に備えた、請求項5又は請求項6記載の紙容器の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−212882(P2011−212882A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81188(P2010−81188)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】