説明

紙葉類識別装置および方法

【課題】紙葉類の色識別、透かし識別を行い、片面にのみ印刷された色相インキの微妙な特性を検知することで紙葉類の真偽を精密に判別する紙葉類識別装置および方法を提供する。
【解決手段】紙葉類に光を所定角度で照射する第1、第3の光源と、垂直方向から照射する第2の光源と、第1、第3の光源の光による色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第1、第2の受光素子と、紙葉類を挟んで第2の光源と対向する第3の受光素子と、第1の光源の光による第1の受光素子及び第3の光源の光による第2の受光素子の受光出力に基づく色相インキ印刷領域に依存する第1の色合いを算出する第1の算出手段と、第2の光源の光による第1の受光素子及び第3の光源の光による第3の受光素子の受光出力に基づく色相インキ印刷領域に依存しない第2の色合いを算出する第2の算出手段と、第1の算出手段及び第2の算出手段の算出結果に基づき紙葉類を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類識別装置および方法に関し、特に、紙葉類の色識別、透かし識別を行うと共に、紙葉類の片面にのみ印刷された色相インキの微妙な特性を検知し、識別することで紙葉類の真偽を精密に判別する紙葉類識別装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精度なスキャナー、プリンタ及びコンピュータ等の装置の普及により、これらの装置を用いて紙幣、小切手等の有価証券が偽造され悪用されるという問題があり、これら偽造券を確実に識別する方法や装置の提供が望まれている。
【0003】
最近では、偽造が複写によるものである場合は、容易に偽であることが識別できる識別方法や識別装置の研究が急速に進められており、また、偽造防止を目的とした種々の抄紙方法や印刷技術が提供され、偽造を困難とする紙幣等が提供されている。
例えば、特許文献1には、同一波長の受光素子を角度を変えて複数配置し、紙幣に照射した光を複数の受光素子で受光し、夫々を比較することで紙幣の凹凸を判別する凹版印刷物とその他の印刷物との識別方法が提案されている。
【0004】
この提案は、対象の印刷物の表面に、一定の検出ラインに沿って、順次、点状の光を照射し、その入射点に立てた仮想法線を中心として入射光と対称となる角度位置付近の複数位置での各受光量の相互関係が、入射点が平坦である場合の相互関係と認められる関係にあるか否かを順次判定し、検出完了後の検出結果が平坦でない場合の関係にあるとの判定が対象の印刷物によって決まる一定の割合を越えた場合に凹版印刷物と判定するような構成としたものである。
【0005】
また、特許文献2には、見る角度によって色相が変わる色相インキを使用した印刷物に対して赤と緑の一組の光を色相インキ部へ照射し、2つの受光角度の異なる受光センサで測定し、色と反射角度の違いから色相インキを判別する印刷物読み取り方法と装置が提案されている。
【0006】
この提案は、観測点Aでは、例えば赤色光のフォトセンサ出力が緑色光のフォトセンサ出力よりも大きく、かつ観測点Bではその大小が反転している場合に、被判定印刷物は特定の色相変化インキを使用している正規の印刷物であると判定し、反転が見られない場合は偽物であると判定するような構成としたものである。
【0007】
また、特許文献3には、単一の発光素子の光について反射と透過の両方の光を受光し、透かしを判別する紙幣等の真偽識別装置が提案されている。
【0008】
この提案は、紙幣等の透かしのパターンを夫々透過光及び反射光を利用した2つの光学的読取り手段にて読み取り、双方の読み取りデータを比較し、一致するか否かにより、紙幣等の真偽を識別するような構成としたものである。
【0009】
また、特許文献4には、紙葉類の上面及び下面の各反射パターンデータを加算したパターンデータと紙葉類の透過パターンデータとの差に基づき紙葉類の上下両面間に介設された偽造防止ストライプを検知し、紙葉類の真偽判別を行うように構成された紙葉類の認識装置が提案されている。
【特許文献1】特開平06−171071号公報
【特許文献2】特開平09−062894号公報
【特許文献3】特開平06−203244号公報
【特許文献4】特開平06−060242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記提案の特許文献1では、所定照射光による紙幣表面反射光を角度を変えて受光し、夫々を比較した判定結果の割合が規定値以上であるか否かで紙幣の凹凸を判別する方法が開示され、特許文献2では、赤と緑の一組の光を色相インキ部へ照射し、2つの受光角度の異なる受光センサで測定した各色の受光量に反転が見られるか否かにより色相インキを判別する方法が開示されている。
【0011】
また、特許文献3には、単一発光素子の発光による反射と透過の両方の光を受光して透かしを判別する方法が開示され、特許文献4には、紙葉類の上下面の各反射パターンデータを加算したパターンデータと紙葉類の透過パターンデータとの差に基づき紙葉類の上下両面間に介設された偽造防止ストライプを検知する方法が開示されている。
【0012】
しかしながら、上記特許文献1乃至特許文献4で示される提案には、色相インキの一種であるパールインキ(視角によりパール光沢のある半透明な模様が浮かび上がるようなインキ)がパールインキの種類(メーカ等の違い等)によって視角により変化する色が異なる、またはパールインキに照射する光の波長や照射角度によって、その反射光の受光出力が異なるようなパールインキの微妙な特性を検知して紙葉類に印刷されたパールインキを精密に識別する方法は提案されていない。
【0013】
また、公知の紙葉類識別方法によるセンサー(反射型光センサーと透過型光センサー)配置の方法で紙葉類の透かしや色合いを識別し、紙葉類の片面にしか印刷されていないパールインキ(色相インキ)を識別可能とするためには、紙葉類の片面側のパールインキを検出するための反射型光センサーの配置と、紙葉類の透かしを検出するための透過型光センサーの配置とを1セットとすると、紙葉類両面を検出するために2セットの反射型光センサーと透過型光センサーとを必要とし、各センサーの制御が複雑となると共に、消費電力の増大、装置の長大化、装置のコストアップとなる。
【0014】
また、装置の長大化を回避するために各センサーの配置位置を狭めると各センサーの発光素子の照射光が干渉するという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は、紙葉類の色識別、透かし識別を行うと共に、紙葉類の片面にのみ印刷された色相インキの微妙な特性を検知し、識別することで紙葉類の真偽を精密に判別する紙葉類識別装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、視角により色相が変化する色相インキ印刷領域を有する紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、前記紙葉類の表面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第1の光源と、前記紙葉類の表面に対して垂直方向から複数の色の光を切り替え照射する第2の光源と、前記第1の光源からの光の前記紙葉類の表面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第1の受光素子と、前記紙葉類の裏面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第3の光源と、前記第3の光源からの光の前記紙葉類の裏面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第2の受光素子と、前記紙葉類の裏面側に前記第2の光源と対向して配置される第3の受光素子とを具備し、前記第1の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第2の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存する第1の色合いを算出する第1の算出手段と、前記第2の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第3の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存しない第2の色合いを算出する第2の算出手段と、前記第1の算出手段及び前記第2の算出手段の算出結果に基づき前記紙葉類を判別する紙葉類判別手段とを具備することを特徴とする。
【0017】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1の光源、前記第2の光源および前記第3の光源は、それぞれ赤色と緑色を切り替えて発光する2色発光光源であり、前記第1の算出手段は、前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との比である第1の比率を算出し、前記第2の算出手段は、前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との比である第2の比率を算出し、前記紙葉類判別手段は、前記第1の比率と前記第2の比率との比率を算出し、前記第1の比率と前記第2の比率との比率の値に基づき前記紙葉類を判別することを特徴とする。
【0018】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記紙葉類の表裏、正逆の挿入方向および金種を判別する金種挿入方向判別手段と、前記金種挿入方向判別手段の判別出力に基づき前記紙葉類の透かし領域を特定する透かし領域特定手段と、前記透かし領域特定手段で特定された前記透かし領域における前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力、または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力をそれぞれ検知する最大受光出力検知手段と、前記最大受光出力検知手段で検知された最大受光出力に基づき前記第1の受光素子、前記第2の受光素子及び前記第3の受光素子の受光出力を補正する補正手段とを更に具備することを特徴とする。
【0019】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記補正手段は、各受光素子の赤色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での赤色の受光出力に基づき補正し、各受光素子で検出された緑色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での緑色の受光出力に基づき補正することを特徴とする。
【0020】
また、請求項5の発明は、請求項3または4の発明において、前記紙葉類判別手段は、前記第1の算出手段で算出された前記第1の比率と前記第2の算出手段で算出された前記第2の比率との比の値に基づき前記紙葉類を判別する第1の判別手段と、前記金種挿入方向判別手段により前記紙葉類の金種及び挿入方向が判別できたか否かを判別する第2の判別手段と、前記透かし領域における前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力に基づく前記紙葉類の透かしパターンから前記紙葉類を判別する第3の判別手段とを更に具備し、前記第1の判別手段乃至前記第3の判別手段の判別結果に基づき前記紙葉類を判別することを特徴とする。
【0021】
また、請求項6の発明は、視角により色相が変化する色相インキ印刷領域を有する紙葉類の識別を行う紙葉類識別方法において、前記紙葉類の表面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第1の光源と、前記紙葉類の表面に対して垂直方向から複数の色の光を切り替え照射する第2の光源と、前記第1の光源からの光の前記紙葉類の表面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第1の受光素子と、前記紙葉類の裏面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第3の光源と、前記第3の光源からの光の前記紙葉類の裏面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第2の受光素子と、前記紙葉類の裏面側に前記第2の光源と対向して第3の受光素子とを配設し、前記第1の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第2の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存する第1の色合いを第1の算出手段で算出し、前記第2の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第3の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存しない第2の色合いを第2の算出手段で算出し、前記第1の算出手段及び前記第2の算出手段の算出結果に基づき前記紙葉類を紙葉類判別手段で判別することを特徴とする。
【0022】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記第1の光源、前記第2の光源および前記第3の光源は、それぞれ赤色と緑色を切り替えて発光する2色発光光源であり、前記第1の算出手段は、前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との比である第1の比率を算出し、前記第2の算出手段は、前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との比である第2の比率を算出し、前記紙葉類判別手段は、前記第1の比率と前記第2の比率との比の値に基づき前記紙葉類を判別することを特徴とする。
【0023】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明において、更に、前記紙葉類の表裏、正逆の挿入方向および金種を金種挿入方向判別手段で判別し、前記金種挿入方向判別手段の判別に基づき前記紙葉類の透かし領域を透かし領域特定手段で特定し、前記透かし領域特定手段で特定された前記透かし領域における前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力、または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力を最大受光出力検知手段でそれぞれ検知し、前記最大受光出力検知手段で検知された最大受光出力に基づき前記第1の受光素子、前記第2の受光素子及び前記第3の受光素子の受光出力を補正手段で補正することを特徴とする。
【0024】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記補正手段は、各受光素子の赤色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での赤色の受光出力に基づき補正し、各受光素子で検出された緑色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での緑色の受光出力に基づき補正することを特徴とする。
【0025】
また、請求項10の発明は、請求項8または9の発明において、前記紙葉類判別手段は、更に、前記第1の算出手段で算出された前記第1の比率と前記第2の算出手段で算出された前記第2の比率との比の値に基づき前記紙葉類を第1の判別手段で判別し、前記金種挿入方向判別手段により前記紙葉類の金種及び挿入方向が判別できたか否かを第2の判別手段で判別し、前記透かし領域における前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力に基づく前記紙葉類の透かしパターンから前記紙葉類を第3の判別手段で判別し、前記第1の判別手段乃至前記第3の判別手段の判別結果に基づき前記紙葉類を判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の紙葉類識別装置および方法によれば、紙葉類に印刷された色相インキの色相が変化する角度で複数の色の光をそれぞれ紙葉類に順次照射し、その照射光が紙葉類で反射する反射光を受光し、受光量に対応して検出される受光出力を所定の適正値で補正し、補正した受光出力に基づき一方の色の受光出力に対する他の色の受光出力との比率を算出し、その算出結果と判定基準との比較により紙葉類に印刷された色相インキの微妙な特性の識別を行うので、紙葉類の真偽をより精密に判別することができる。
【0027】
また、紙葉類の表面に対して所定の角度で複数の色の光を照射する第1の光源と、紙葉類の表面に対して垂直方向から複数の色の光を照射する第2の光源と、第1の光源からの照射光による紙葉類の色相インキ印刷領域の反射光の色相が変化する角度で受光する第1の受光素子と、紙葉類の裏面に対して所定の角度で複数の色の光を照射する第3の光源と、第3の光源からの照射光による紙葉類の色相インキ印刷領域の反射光の色相が変化する角度で受光する第2の受光素子と、紙葉類の裏面側に第2の光源と対向して配置される第3の受光素子とを具備するので、紙葉類の片面にのみ印刷された色相インキを公知の紙葉類識別方法によるセンサー(反射型光センサーと透過型光センサー)配置方法で検知する場合と比べて発光素子と受光素子との配置個数が最少限の個数で済み、装置の長大化を抑えることができる。
【0028】
また、紙葉類の片面にのみ印刷された色相インキを検知するセンサー(発光素子や受光素子)の発光素子と受光素子との配置個数が最小限の個数で構成されるのでセンサー(発光素子や受光素子)を制御するための回路が簡易な構成となり、製造コストも安価となる。
【0029】
更に、色相インキを検知するセンサーの各素子を狭めて配置した場合であっても公知の紙葉類識別方法によるセンサー配置方法と比べて各発光素子の発光による受光素子での干渉を抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係わる紙葉類識別装置および方法の一実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明に係わる紙葉類識別装置100の要部の構成例を概略的に示した構成図である。
【0032】
図1に示すように、紙葉類識別装置100は、紙葉類識別装置100全体を統括制御するマイクロコンピュータ95と、紙葉類識別装置100の図示せぬ紙幣挿入口から挿入された紙幣1を搬送する紙幣搬送機構80(破線で囲まれた部分)と、紙幣搬送機構80によって搬送される紙幣1の上面(表面)及び下面(裏面)に赤色と緑色の光を順次照射し、その照射光が紙幣1を透過する透過光の受光量や紙幣1で反射する反射光の受光量に対応した受光出力値(受光データ)を検出する光学検知部10(一点鎖線で囲まれた部分)とで構成されている。
【0033】
なお、図1には示してないが、紙葉類識別装置100には、挿入された紙幣1の金種や挿入方向(挿入された紙幣1の表裏、正逆方向)を特定するための磁気センサーと、透過型光センサーと、反射型光センサーとが光学検知部10とは他に備えられており、磁気センサーは、挿入紙幣1の磁気を検出し、透過型光センサーと反射型光センサーは、挿入紙幣1に光を照射して挿入紙幣1を透過する透過光、もしくは挿入紙幣1からの反射光の各受光量に対応した受光出力を検出する。
【0034】
前述の各光センサーにより検出される透過光と反射光の受光出力は、各光の受光量に対応した電気信号の信号レベルで各光センサーから所定時間間隔で出力され、メモリ70の連続したアドレスで割り当てられた所定の記憶領域に順に格納され、挿入紙幣1の走査ライン上の各計測位置での受光データとして一時的に記憶保持される。
【0035】
また、前述で示した磁気センサーと、各光センサーと、光学検知部10とは他に、前述の各センサーが挿入紙幣1の計測を開始する位置を決定するための開始センサーと、紙葉類識別装置100に紙幣1が挿入されたことを検知する紙幣挿入検出センサーとが配置されており、紙葉類識別装置100に紙幣1が挿入されたことを紙幣挿入検出センサーが検出し、開始センサーが各センサーによる計測開始位置に挿入紙幣1が到達したことを検出することで磁気センサー、透過型光センサー、反射型光センサー、光学検知部10による挿入紙幣1の計測が開始される。
【0036】
前述の光学検知部10と、紙幣挿入検出センサーとは他の各センサーを本実施例では、総称して単に「磁気センサー/透過光識別センサー等」といい、公知の紙幣識別方法では、この磁気センサー/透過光識別センサー等の検出結果に基づき紙幣の真偽識別を行う。
【0037】
なお、磁気センサー/透過光識別センサー等の検出結果に基づく公知の紙幣識別方法の説明については、本発明に係わる紙葉類識別装置100の要部ではないので省略する。
【0038】
また、本実施例においては、説明の便宜上、透過型光センサーと、反射型光センサーとを光学検知部10とは他に備えた構成としたが、光学検知部10で挿入紙幣1の金種と挿入方向を特定するための挿入紙幣1の透過光と反射光との受光データの検出を行うような構成としてもよい。
【0039】
マイクロコンピュータ95は、制御部30と、金種及び挿入方向判定部40(金種挿入方向判別手段)と、受光データ補正部45(最大受光出力検知手段、補正手段)と、透かし領域データ特定部46(透かし領域特定手段)と、パールデータ判定部50と、透かしデータ判定部60と、メモリ70とを備えている。
【0040】
メモリ70は、光学検知部10で検出される挿入紙幣1の各面の2色(赤、緑)の反射光と透過光との受光データと、図示せぬ磁気センサー/透過光識別センサー等で検出される挿入紙幣1の各面の反射光と透過光の受光デーと磁気データと、予め設定された透かし領域データアドレス参照表と、パールインキ印刷部データアドレス参照表等の各種参照表や参照データと、各種処理プログラム等を記憶する。
【0041】
なお、透かし領域データアドレス参照表には、金種毎の真正紙幣を表裏、正逆の挿入方向でそれぞれ紙葉類識別装置10に挿入し、その際に光学検知部10の後述するパール光検出センサーと、非パール光検出センサーと、透かしセンサーとによってそれぞれ検出される真正紙幣の透かし領域の受光データが格納されるメモリ70の記憶領域の始点と終点のアドレスを取得したアドレス情報が真正紙幣の金種と挿入方向に対応して参照できるように予め設定されている。
【0042】
また、パールインキ印刷部データアドレス参照表には、透かし領域データアドレス参照表と同様に、金種毎の真正紙幣を表裏、正逆の挿入方向でそれぞれ紙葉類識別装置10に挿入し、その際に光学検知部10のパール光検出センサーと、非パール光検出センサーとによってそれぞれ検出される真正紙幣のパールインキが印刷された領域の受光データが格納されるメモリ70の記憶領域の始点と終点のアドレスを取得したアドレス情報が真正紙幣の金種と挿入方向に対応して参照できるように予め設定されている。
【0043】
金種及び挿入方向判定部40は、磁気センサー/透過光識別センサー等により検出された挿入紙幣1の磁気データと、透過光と反射光の各受光データとに基づき挿入紙幣1の金種と挿入方向の判定処理を行う。
【0044】
受光データ補正部45は、後述の透かし領域データ特定部46が金種及び挿入方向判定部40で判定出力された挿入紙幣1の金種と挿入方向の判定結果に基づき特定した挿入紙幣1の透かし領域の赤色反射光及び緑色反射光の各受光量から最大受光量を検出し、この最大受光量を基に光学検知部10で検出された挿入紙幣1の全ての反射光データに対して補正を行う。
【0045】
具体的には、光学検知部10で検出された挿入紙幣1の透かし領域での赤色反射光の受光量と緑色反射光の受光量との和が最大となる最大受光量を検出し、この最大受光量が予め定められた規定値となるように補正し、この補正に対応して光学検知部10で検出された全ての反射光データに対する補正を行う。
【0046】
透かし領域データ特定部46は、金種及び挿入方向判定部40による挿入紙幣1の金種と挿入方向の判定結果に基づき透かし領域データアドレス参照表を参照して挿入紙幣1の透かし領域の受光データが格納されたメモリ70の記憶領域を特定し、挿入紙幣1の透かし領域の受光データをメモリ70から読み出す。
【0047】
パールデータ判定部50は、受光データ補正部45で補正された反射光データから求めた挿入紙幣1の各面の各計測位置でのインキの色合いやパールインキ成分と、その判定基準とに基づき挿入紙幣1の真偽判定処理を行う。
【0048】
なお、本発明に係わる紙葉類識別装置100が真券と判定する真正紙幣の片面には、パールインキが印刷された色相インキ印刷領域が形成されており、この色相インキ印刷領域のパールインキは、前述でも説明したように色相インキの一種で、視角によりパール光沢のある半透明な模様が浮かび上がるようなインキであり、ある特定波長の光を特定の角度で照射した場合に特殊な色で反射するインキである。
【0049】
パールインキは、パールインキの種類(メーカーの違い等)によって、変化する色が異なるが、本実施例における真正紙幣に印刷されたパールインキは、具体的には、真正紙幣を垂直方向から見ると無色(印刷されていないように見える)に見え、斜め方向から見るとピンク色に見えるように真正紙幣の片面に印刷された色相インキ印刷領域が形成されている。
【0050】
本願発明者らは、各波長の光を真正紙幣のパールインキが印刷された色相インキ印刷領域(以下、「パールインキ印刷部」という。)に照射し、その反射光の測定実験を行った結果、赤色光を所定の角度で真正紙幣のパールインキ印刷部に照射したところ、その反射光が他の無地の部分の反射光に比べて光量が顕著に大きく、また、緑色光を照射した場合の反射光の光量は、パールインキ印刷部と他の無地の部分とでは殆ど変らないことの実験結果を得た。
【0051】
このことからパールデータ判定部50は、挿入紙幣1の各面の各計測位置でのインキの色合いを識別すると共に、真正紙幣のパールインキ印刷部のパールインキの微妙な特性に基づき挿入紙幣1に印刷されたパールインキを精密に識別する。
【0052】
透かしデータ判定部60は、透かし領域データ特定部46により特定された挿入紙幣1の透かし領域の受光データに基づき挿入紙幣1の真偽判定処理を行う。
【0053】
光学検知部10は、紙幣搬送機構80によって搬送される挿入紙幣1を挟んで紙幣搬送路6に垂直の上下側に光源11、12、14と受光素子13、15、16がそれぞれ配置されており、紙幣搬送路6に垂直の上側には、紙幣1上面にパールインキ印刷部が形成されている場合は、パールインキ印刷部のパールインキの色相変化が最大となるように紙幣1上面に対して所定角度の斜め方向から光を照射するように配置された2色LED(赤、緑)の上光源11(第1の光源)と、上光源11からの照射光による紙幣1上面でのパールインキ印刷部の反射光の色相変化を最大で受光できるように上光源11と対向して配置された受光素子13(第1の受光素子)と、紙幣1上面に対して垂直方向から光を照射するように配置された2色LED(赤、緑)の上光源12(第2の光源)とがそれぞれ配置されている。
【0054】
また、紙幣搬送路6に垂直の下側には、紙幣搬送路6に沿って搬送される紙幣1下面にパールインキ印刷部が形成されている場合は、パールインキ印刷部のパールインキの色相変化が最大となるように紙幣1下面に対して所定角度の斜め方向から光を照射するように配置された2色LED(赤、緑)の下光源14(第3の光源)と、下光源14からの照射光による紙幣1下面でのパールインキ印刷部の反射光の色相変化を最大で受光できるように配置された受光素子16(第2の受光素子)と、上光源12に対向した位置で上光源12からの照射光が紙幣1を透過する透過光を受光する受光素子15(第3の受光素子)とが配置されている。
【0055】
受光素子15は、下光源14の照射光による紙幣1下面での反射光の受光も可能である。
【0056】
なお、挿入紙幣1に形成されたパールインキ印刷部のパールインキの色相変化が最大となるように挿入紙幣1の各面に対して所定角度の斜め方向から光を照射する発光素子11(第1の光源)、14(第3の光源)と、各発光素子11、14からの照射光による挿入紙幣1の各面でのパールインキ印刷部の反射光の色相変化を最大で受光できるように配置された、発光素子11に対応した受光素子13(第1の受光素子)と、発光素子14に対応した受光素子16(第2の受光素子)とでそれぞれ構成された挿入紙幣1の各面の各反射光を検出する手段を説明の便宜上、「パール光検出センサー」といい、上光源12(第2の光源)と受光素子13(第1の受光素子)、または下光源14(第3の光源)と受光素子15(第3の受光素子)とで構成され、挿入紙幣1の各面の各反射光を検出する手段を説明の便宜上、「非パール光検出センサー」といい、上光源12(第2の光源)と受光素子15(第3の受光素子)とで構成され、挿入紙幣1を透過する透過光を検出する手段を説明の便宜上、「透かしセンサー」という。
【0057】
各光源11、12、14は、マイクロコンピュータ95の制御部30からの指令信号に基づきD/Aコンバータ18でデジタル信号からアナログ信号の指令信号に変換され、アンプ17がアナログの指令信号に対応して各光源に流す電流の増減制御を行い、各光源の発光量が調整できるように構成されている。
【0058】
受光素子13、15、16は、例えばフォトダイオード等の受光素子であり、各受光素子で受光される反射光や透過光の受光量に対応した信号レベルで出力される電気信号が各受光素子13、15、16に対応したそれぞれのアンプ19、21、23で増幅され、各アンプ19、21、23に対応したそれぞれのA/Dコンバータ20、22、24で各デジタル信号へ変換されてバス90を介してメモリ70の所定の記憶領域へ記憶される。
【0059】
なお、受光素子15には、可視光の他、赤外、紫外のいずれの波長も適用可能であり、発光素子12は、受光素子15に適用される各波長に対応して当該各波長が送出可能な装置に置き換えた構成とする。
【0060】
紙幣搬送機構80は、紙幣挿入口から挿入された紙幣1を搬送する搬送ベルト81と、搬送ベルト81を支持するローラ82、83と、ローラ82または83を所望の回転方向へ、所望の回転速度で、所望の回転数等で駆動させ、搬送ベルト81を所望の方向へ、所望の搬送速度で、所望の搬送距離だけ移動させることが可能な搬送モータ84とを備えている。
【0061】
なお、搬送モータ84は、前述で示したローラ82または83の駆動制御を制御部30からの指令信号に基づき行う。
【0062】
前述した紙葉類識別装置100の各部間のデータ信号や制御信号等の授受は、バス90を介してマイクロコンピュータ95の制御部30の指令信号に基づき行われ、制御部30が全体を統括制御する。
【0063】
前述の図1で示した紙葉類識別装置100の構成図の他に、紙葉類識別装置100の処理動作をより分かりやすくするために紙葉類識別装置100の回路構成の概略図を図2に示す。
【0064】
図2は、紙葉類識別装置100の回路構成の一例を概略的に示した回路ブロック図であり、図2に示すように、光学検知部10(一点鎖線で囲まれた部分)は、前述でも示したように紙幣搬送路6に垂直の上側に2色LED(赤(R)、緑(G))の上光源11、12と、紙幣搬送路6に垂直の下側に2色LED(赤(R)、緑(G))の下光源14が配置されており、各光源の2色LED(赤、緑)は、各色のLEDに流す電流の増減制御が可能なD/Aコンバータ18とアンプ回路17を介してマイクロコンピュータ95と接続されている。
【0065】
また、D/Aコンバータ18とアンプ回路17は、各色のLEDに対応してD/Aコンバータ18R(赤色LEDに対応)、D/Aコンバータ18G(緑色LEDに対応)、アンプ回路17R(赤色LEDに対応)、アンプ回路17G(緑色LEDに対応)で構成されている。
【0066】
なお、各光源や受光素子には照射角度を偏光するプリズムやレンズを配置することも可能である。
【0067】
また、受光素子13は、A/Dコンバータ20とアンプ回路19を介してマイクロコンピュータ95と接続され、受光素子15は、A/Dコンバータ22とアンプ回路21を介してマイクロコンピュータ95と接続され、受光素子16は、A/Dコンバータ24とアンプ回路23を介してマイクロコンピュータ95とぞれぞれ接続されている。
【0068】
各受光素子13、15、16は、受光した反射光や透過光の各受光量に応じた電気信号を出力し、各受光素子から出力される電気信号は、各受光素子に対応したそれぞれのアンプ19、21、23で増幅され、各アンプ19、21、23に対応したそれぞれのA/Dコンバータ20、22、24でデジタル信号へ変換されてマイクロコンピュータ95のメモリ70へ記憶される。
【0069】
また、挿入された紙幣1の搬送制御を行う搬送モータ84は、マイクロコンピュータ95に接続され、マイクロコンピュータ95の制御部30から送信される指令信号に基づき紙幣搬送機構80のローラ82または83の駆動制御を行う。
【0070】
エンコーダ85は、搬送モータ84と接続され、また、アンプ回路86を介してマイクロコンピュータ95にも接続されており、搬送モータ84の駆動に対応してエンコード化したパルス信号をアンプ回路86で増幅してマイクロコンピュータ95へ出力する。
【0071】
また、紙幣挿入検出センサー87は、アンプ回路88を介してマイクロコンピュータ95と接続され、紙葉類識別装置100に挿入された紙幣1を検出し、検出信号をアンプ回路88で増幅してマイクロコンピュータ95へ出力する。
【0072】
また、紙葉類識別装置100には、前述でも説明したように挿入紙幣1の磁気を検出する磁気センサーと、挿入紙幣1に照射された光の透過光を検出する透過型光センサーと、挿入紙幣1に照射された光の反射光を検出する反射光センサー等を示す磁気センサー/透過光識別センサー等89がアンプ回路91を介してマイクロコンピュータ95と接続され、各センサーで検出された磁気データや受光データがアンプ回路91で増幅されてマイクロコンピュータ95へ入力される。
【0073】
この磁気センサー/透過光識別センサー等89の複数のセンサーにより挿入紙幣1から検出した磁気データや受光データと公知の紙幣識別方法により挿入紙幣1の真偽識別が可能である。
【0074】
なお、磁気センサー/透過光識別センサー等89を用いた公知の紙幣識別方法については、本発明に係わる紙葉類識別装置100の要部ではないので説明を省略する。
【0075】
ところで、このように構成された紙葉類識別装置100に挿入された紙葉類の真偽を精密に判別する方法について、本発明に係わる真正紙幣の構成に基づき簡単に説明する。
【0076】
図3は、紙葉類識別装置100が真券と識別する真正紙幣2の概略的な構成と、光学検知部10の各センサーによって検出される真正紙幣2の各受光データに対応した波形信号の一例を示す図である。
【0077】
図3において、図3(a)は、真正紙幣2の構成例を示す図、図3(b)は、パール光検出センサーによる真正紙幣2の各色(赤、緑)の反射光の波形信号を示す図、図3(c)は、図3(b)で示した赤色反射光に対する緑色反射光の比率の波形信号を示す図、図3(d)は、非パール光検出センサーによる真正紙幣2の各色(赤、緑)の反射光の波形信号を示す図、図3(e)は、図3(d)で示した赤色反射光に対する緑色反射光の比率の波形信号を示す図、図3(f)は、図3(e)で示した非パール光検出センサーによる赤色と緑色の各反射光の比率と図3(c)で示したパール光検出センサーによる赤色と緑色の各反射光の比率との比の波形信号を示す図である。
【0078】
図3(a)に示すように、真正紙幣2には透かし領域5が形成され、真正紙幣2の長手方向の両端にはパールインキ印刷部3、4が形成されており、紙幣搬送機構80によって所定の搬送方向(図中の矢印方向)に紙幣搬送路6に沿って搬送される。
【0079】
なお、パールインキ印刷部3、4は、真正紙幣2の片面にのみ印刷されている。
【0080】
真正紙幣2が紙幣搬送路6に沿って光学検知部10内に搬送されると、マイクロコンピュータ95の制御部30の指令信号に基づき光学検知部10内に配置された光源11、12、14及び受光素子13、15、16による真正紙幣2の各面の各計測位置での2色(赤、緑)の反射光、または2色(赤、緑)の透過光の受光量が計測され、各受光量に対応したそれぞれの受光出力値の反射光データまたは透過光データの各受光データが収集される。
【0081】
挿入された真正紙幣2に対して上光源11、または下光源14の2色(赤、緑)LEDをそれぞれ順次発光させ、真正紙幣2の各色の反射光を受光素子13、または16で受光すると、すなわちパール光検出センサーで挿入真正紙幣2の各面の反射光を受光すると図3(b)に示すような赤色反射光の受光量に対応した受光出力が波形信号101で検出され、緑色反射光の受光量に対応した受光出力が波形信号102で検出され、パール光検出センサーによる赤色反射光の受光出力に対する緑色反射光の受光出力の比率(以下、「赤緑比率(斜光)」という)が図3(c)に示すような波形信号103として算出される。
【0082】
なお、パール光検出センサーによる挿入真正紙幣2の受光データに基づく赤緑比率(斜光)からは、パールインキ印刷部3、4のパールインキに依存する色合い(第1の色合い)の情報を得ることができる。
【0083】
すなわち、赤色照射光による真正紙幣2のパールインキ印刷部3、4での赤色反射光は、他の無地の部分の赤色反射光に比べて光量が顕著に大きく、また緑色照射光による真正紙幣2でのパールインキ印刷部3、4の緑色反射光の光量は、パールインキ印刷部3、4と他の無地の部分とでは殆ど変らないという真正紙幣2のパールインキの特性からパール光検出センサーによる受光データに基づく赤緑比率(斜光)にその特性が表れる。
【0084】
具体的には、図3(a)、(b)に示すように、パール光検出センサーの赤色照射光による挿入真正紙幣2の赤色反射光の受光出力は、真正紙幣2のパールインキ印刷部3、4が透かし領域5の無地の部分よりも大な値で検出され、他の領域では、真正紙幣2に印刷された模様の色に応じて、赤色の印刷領域では受光出力が大きく、黒色の印刷領域では小さく、それぞれの色に応じた受光出力が得られる。
【0085】
また、パール光検出センサーの緑色照射光による挿入真正紙幣2の緑色反射光の受光出力は、パールインキ印刷部3、4と他の無地の部分とでは殆ど変らず、また、パールインキ印刷部3、4の緑色反射光の受光出力は、赤色反射光の受光出力よりも小さい。
【0086】
更に、他の領域では、真正紙幣2に印刷された印刷模様の色に応じて緑色の印刷領域で受光出力が大きく、黒色の印刷領域で小さく、それぞれの色に応じた受光出力が得られる。
【0087】
なお、図3(b)乃至(e)において、真正紙幣2の模様が印刷された部分で検出される受光出力の信号波形は、真正紙幣2の印刷模様の色の変化に対応して変化するものであるが、この部分は本発明の要部ではないので、真正紙幣2の模様が印刷された部分の受光出力の詳細な信号波形の記載を省略し、説明の便宜上、ハッチング模様の矩形で示すこととする。
【0088】
パール光検出センサーによる真正紙幣2の赤色反射光の受光出力に対する緑色反射光の受光出力の比率(赤緑比率(斜光))を算出すると、図3(a)、(c)に示すように、真正紙幣2のパールインキ印刷部3、4は、透かし領域5の無地の部分と比べて小さな値となるようなパールインキに依存する色合い(第1の色合い)の情報を得ることができる。
【0089】
挿入真正紙幣2に対して非パール光検出センサーによる真正紙幣2の各面の反射光を受光すると、すなわち、真正紙幣2に対して上光源12の2色(赤、緑)LEDを順次発光させ、受光素子13で受光する、または下光源14の2色(赤、緑)LEDを順次発光させ、受光素子15で受光すると、図3(d)に示すような赤色反射光の受光出力が波形信号104で検出され、緑色反射光の受光出力が波形信号105で検出され、非パール光検出センサーによる赤色反射光の受光出力に対する緑色反射光の受光出力の比率(以下、「赤緑比率(垂直光)」という)が図3(e)に示すような波形信号106として算出される。
【0090】
なお、非パール光検出センサーによる挿入真正紙幣2の反射光データに基づく赤緑比率(垂直光)からは、パールインキ印刷部3、4のパールインキに依存しない色合い(第2の色合い)の情報を得ることができる。
【0091】
具体的には、図3(a)、(d)に示すように、非パール光検出センサーの赤色光と緑色光とを順次発光させ真正紙幣2に照射し、その反射光の受光出力を順次検出すると、真正紙幣2のパールインキ印刷部3、4の受光出力は、透かし領域5の無地の部分の受光出力と殆ど変らず、また、他の領域では、真正紙幣2に印刷された模様の色に応じて2色(赤、緑)LEDの発光色に対応した色の印刷領域で受光出力が大きく、黒色の印刷領域で小さく、それぞれの色に応じた受光出力が得られる。
【0092】
また、非パール光検出センサーによる赤色反射光の受光出力に対する緑色反射光の受光出力の比(赤緑比率(垂直光))は、図3(a)、(e)に示すようにパールインキ印刷部3、4と透かし領域5の無地の部分とでは殆ど変らないというパールインキに依存しない色合い(第2の色合い)の情報を得ることができる。
【0093】
図3(e)で示した非パール光検出センサーによる赤緑比率(垂直光)に対する図3(c)で示したパール光検出センサーによる赤緑比率(斜光)の比(以下、「赤緑比率比」という。)を算出すると、真正紙幣2のパールインキ印刷部3、4が他の領域(透かし領域や模様が印刷された領域)に比べて、図3(f)の107−a、107−bに示すような顕著な差異で検出される。
【0094】
このようなことから本発明に係わる紙葉類識別装置100は、前述で示したパール光検出センサーにより検出した挿入紙幣1の反射光の受光出力に基づく赤緑比率(斜光)を算出することで、真正紙幣2に印刷されたパールインキ印刷部3、4のパールインキに依存する色合い(第1の色合い)を含む情報を得、非パール光検出センサーにより検出した挿入紙幣1の反射光の受光出力に基づく赤緑比率(垂直光)を算出することで、真正紙幣2に印刷されたパールインキ印刷部3、4のパールインキに依存しないインキの色合い(第2の色合い)を含む情報を得、非パール光検出センサーにより検出した挿入紙幣1の反射光の受光出力に基づく赤緑比率(垂直光)とパール光検出センサーにより検出した挿入紙幣1の反射光の受光出力に基づく赤緑比率(斜光)との比(赤緑比率比)を算出することで、真正紙幣2に印刷されたパールインキ印刷部3、4の微妙なパールインキの特性を検知し、単なる個々の反射型光センサーの受光出力による色相インキの判別方法とは異なり、紙幣に印刷されたパールインキの微妙な特性の判別結果に基づくより精密な真偽判別を行う。
【0095】
さて、紙葉類識別装置100が、挿入された紙幣1の真偽をより精密に判別する処理動作について図4乃至図12に示すフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0096】
図4は、紙葉類識別装置100が、挿入紙幣1の真偽識別を行う処理動作のメインフローチャートを示す図である。
【0097】
図4のフローチャートに示すように、紙葉類識別装置100の図示せぬ紙幣挿入口から紙幣1が挿入されたことを紙幣挿入検出センサー87が検知すると(ステップS401でYES)、マイクロコンピュータ95の制御部30の指令信号に基づき搬送モータ84が搬送ベルト81を支持するローラ82または83の駆動制御を行い、挿入紙幣1が紙幣搬送路6に沿って搬送されるとともに、磁気センサー/透過光識別センサー等89や光学検知部10の各センサーが挿入紙幣1から検出する磁気データや受光データを記憶するためのメモリ70の各記憶領域が初期化される(ステップS402)。
【0098】
メモリ70には、紙幣搬送路6の所定位置に配置された磁気センサー/透過光識別センサー等89や光学検知部10で検出される挿入紙幣1の磁気データや受光データを記憶する記憶領域(詳細は、後述する)が割り当てられており、これらの各記憶領域が初期化されると、磁気センサー/透過光識別センサー等89や光学検知部10の各センサーが動作し(ステップS403でYES)、各センサーで検出された挿入紙幣1の磁気データや受光データ(反射光データや透過光データ)がメモリ70の所定の記憶領域に順次記憶される(ステップS404、ステップS405)。
【0099】
磁気センサー/透過光識別センサー等89による挿入紙幣1からの各データの収集は、各センサーによる従来技術の検出及び収集方法と同様に行われる。
【0100】
光学検知部10は、マイクロコンピュータ95の制御部30の指令信号に基づき搬送紙幣1の上面及び下面の各計測位置で紙幣1の各面に対して所定角度の斜め方向、もしくは垂直方向から赤色光と緑色光の2色の光を順次照射し、照射した各色光が紙幣1の各面で反射する反射光、もしくは紙幣1を透過する透過光を受光し、受光量に対応した受光出力値を受光データ(反射光データ、透過光データ)としてメモリ70の所定の記憶領域に順次記憶する。
【0101】
なお、光学検知部10による挿入紙幣1の受光データの収集は、磁気センサー/透過光識別センサー等89のデータ収集と同時に行われるものである。
【0102】
また、光学検知部10の各センサーを挿入紙幣1の金種と挿入方向を判定するための挿入紙幣1の受光データ検出手段として用いることも可能である。
【0103】
また、ステップS405における「光学検知部10による挿入紙幣1の受光データ収集」の処理動作の詳細は、後述する。
【0104】
挿入紙幣1の各計測位置での各データが各センサーにより検出され、メモリ70の各記憶領域に順次記憶されて挿入紙幣1の1枚分の各データ収集が終了すると(ステップS406でYES)、マイクロコンピュータ95の金種及び挿入方向判定部40が磁気センサー/透過光識別センサー等89で検出された磁気データと透過光や反射光の受光データに基づき挿入紙幣1の表裏、正逆の挿入方向と金種を特定し、特定結果を出力する(ステップS407でYES)。
【0105】
また、ステップS407において、磁気センサー/透過光識別センサー等89で検出された各データに基づき金種や挿入方向が特定できない場合、具体的には、予め真正紙幣の各金種と各金種の挿入方向に対応して磁気センサー/透過光識別センサー等89で検出される磁気データと透過光や反射光の受光データとが、挿入紙幣1から検出された磁気データと透過光や反射光の受光データとに一致しない場合は(ステップS407でNO)、挿入された紙幣1を偽券と判定する(ステップS414)。
【0106】
なお、真正紙幣の各金種と各金種の挿入方向に対応して磁気センサー/透過光識別センサー等89で検出される磁気データと透過光や反射光の受光データは、予めメモリ70の所定の記憶領域に参照データとして記憶されており、金種及び挿入方向判定部40は、この参照データを参照して挿入紙幣1の金種と挿入方向を特定する。
【0107】
ステップS407において、挿入紙幣1の金種と挿入方向が特定されると、受光データ補正部45が特定された挿入紙幣1の金種及び挿入方向に対応して求まる挿入紙幣1の透かし領域の特定の反射光データに基づき光学検知部10により収集された全ての反射光データの色補正処理を行う(ステップS408)。
【0108】
なお、挿入紙幣1の透かし領域の反射光データは、透かし領域データ特定部46により金種及び挿入方向判定部40が判定出力した挿入紙幣1の金種と挿入方向の判定結果と、透かし領域データアドレス参照表とが参照されてメモリ70から読み出される。
【0109】
この色補正は、光学検知部10の各光源11、12、14や受光素子13、15、16の経時劣化による発光量や受光感度のばらつき、または周囲の温度変化や各光源、各受光素子に付着した埃による発光量や受光感度のばらつきによる識別判定のばらつきを抑えるために光学検知部10で収集した全ての反射光データの受光出力値に対して補正を行う。 なお、ステップS408における「光学検知部10で収集された反射光データの色補正処理」の詳細は、後述する。
【0110】
受光データ補正部45により光学検知部10で収集された全ての反射光データが色補正されると、パールデータ判定部50が色補正された反射光データ(色補正データ)に基づき挿入紙幣1が偽券でないか否かを判定する(ステップS409)。
【0111】
具体的には、色補正データから求めた挿入紙幣1の各面の各計測位置におけるインキの色合いやパールインキ成分と、その判定基準とに基づき挿入紙幣1が偽券でないか否かの判定を行い、偽券(ステップS410でYES)または偽券でない(ステップS410でNO)旨を判定する。
【0112】
なお、ステップS409におけるパールデータ判定部50による「色補正後の反射光データに基づく真偽判定処理」の詳細は、後述する。
【0113】
また、挿入紙幣1が偽券でないと判定されると(ステップS410でNO)、透かしデータ判定部60が挿入紙幣1の透かし領域の受光データ(反射光データ、透過光データ)に基づき挿入紙幣1が真券であるか否かの判定処理を行い(ステップS411)、真券(ステップS412でYES、ステップS413)、または偽券(ステップS412でNO、ステップS414)と判定して処理を終了する。
【0114】
なお、ステップS411における透かしデータ判定部60による「透かし領域の真偽判定処理」の詳細は、後述する。
【0115】
ここで、前述したステップS405における「光学検知部10による挿入紙幣1の受光データ収集の処理」の動作の詳細を図5乃至図8を参照しながら説明し、ステップS408における受光データ補正部45による「光学検知部10で収集された反射光データの色補正処理」の詳細を図9を参照しながら説明し、ステップS409におけるパールデータ判定部50による「色補正後の反射光データに基づく真偽判定処理」の詳細を図10乃至図11を参照しながら説明し、ステップS411における透かしデータ判定部60による「透かし領域の真偽判定処理」の詳細を図12を参照しながら説明する。
【0116】
図5は、マイクロコンピュータ95の制御部30の指令信号に基づき光学検知部10による受光データ収集処理の動作を示す概略フローチャートであり、図6乃至図8は、図5の概略フローチャートの各ステップにおける処理動作の詳細を示すフローチャートである。
【0117】
図5のフローチャートに示すように、光学検知部10による挿入紙幣1の各面の各計測位置での受光データ(反射光データ、透過光データ)の収集処理動作は、挿入紙幣1上面のパール光検出センサーと非パール光検出センサーによる2色(赤、緑)の各反射光データの収集(ステップS501)、挿入紙幣1下面のパール光検出センサーと非パール光検出センサーによる2色(赤、緑)の各反射光データの収集(ステップS502)、透かしセンサーによる2色(赤、緑)の各透過光データの収集(ステップS503)の順で挿入紙幣1の計測開始位置から計測終了位置まで順次行われ、挿入紙幣1が光学検知部10を通過することで(ステップS504でYES)、光学検知部10による挿入紙幣1の1枚分のデータ収集処理が終了する。
【0118】
ステップS501における「パール光検出センサーと非パール光検出センサーによる挿入紙幣1上面の反射光データの収集」の処理動作は、具体的には、上光源11の2色(赤、緑)のLEDを順次発光させ、受光素子13で受光される挿入紙幣1上面の各色の反射光量に対応した受光出力値のデータを収集し、次に上光源12の2色(赤、緑)のLEDを順次発光させ、受光素子13で受光される挿入紙幣1上面の各色の反射光量に対応した受光出力値のデータを収集する。
【0119】
具体的には、図6のフローチャートに示すように、挿入紙幣1の各計測位置に対応してマイクロコンピュータ95の制御部30が上光源11の赤色LEDのトランジスタをON(ステップS601、602、603)、赤色LEDのD/Aコンバータ18R(図2参照)へ電流設定値を出力して上光源11の赤色LEDを発光させ(ステップS604)、受光素子13の受光出力が安定したところで(ステップS605でYES)、搬送紙幣1上面の反射光に対応して受光素子13から出力される受光出力信号をアンプ回路19で増幅し、A/Dコンバータ20でデジタルの反射光データに変換し、マイクロコンピュータ95のメモリ70の所定の記憶領域に記憶する。
【0120】
このパール光検出センサーによる挿入紙幣1上面の赤色反射光データが記憶されるメモリ70の所定の記憶領域は、具体的には、NAMDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に対応付けられた記憶領域であり、NAMDAT(SIDE、LED、COL、ADR)の各変数は、SIDEが上光源を示す「0」と下光源を示す「1」の値、LEDが上光源11を示す「0」と上光源12を示す「1」の値、COLが赤色LEDを示す「0」と緑色LEDを示す「1」の値、ADRが挿入紙幣1のデータ収集位置の情報を示す値でそれぞれ対応付けられて管理されており、上光源11の赤色LED発光による挿入紙幣1上面の反射光データは、SIDE=0、LED=0、COL=0、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)の記憶領域に記憶される。
【0121】
上光源11の赤色LED発光による紙幣1上面の計測位置での反射光データの収集が終わると、上光源11の赤色LEDのトランジスタをOFF、赤色LEDのD/Aコンバータ18Rの電流設定値を0にし(ステップS606)、次に上光源11の緑色LEDを発光させ、前述と同様に挿入紙幣1上面の反射光に対応して受光素子13から出力される受光出力信号をアンプ回路19、A/Dコンバータ20を介してメモリ70のNAMDAT(SIDE、LED、COL、ADR)、各変数の値がSIDE=0、LED=0、COL=1、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)の記憶領域に記憶する。
【0122】
なお、上光源11の緑色LEDを発光させる場合は、緑色LEDのトランジスタをON(ステップS603)、緑色LEDのD/Aコンバータ18G(図2参照)へ電流設定値を出力し(ステップS604)、受光素子13の受光出力が安定したところで(ステップS605でYES)、搬送紙幣1上面で反射する反射光を受光素子13で受光する。
【0123】
上光源11の2色発光による紙幣1上面の反射光データの収集が終了すると(ステップS608でYES)、次に上光源12の赤色LED、緑色LEDの順で発光させ、前述の上光源11の2色発光による紙幣1上面の反射光データ収集の処理動作と同様に、上光源12の赤色LED発光による紙幣1上面の反射光データをメモリ70のNAMDAT(SIDE、LED、COL、ADR)、各変数値がSIDE=0、LED=1、COL=0、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)の記憶領域に順次記憶し、挿入紙幣1の1枚分データが各記憶領域に記憶される。
【0124】
次に上光源12の緑色LED発光による紙幣1上面の反射光データをメモリ70のNAMDAT(SIDE、LED、COL、ADR)、各変数値がSIDE=0、LED=1、COL=1、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)の記憶領域に順次記憶し、挿入紙幣1の1枚分データが各記憶領域に記憶される。
【0125】
挿入紙幣1の計測位置での紙幣1上面の反射光データが記憶されると、上光源12の緑色LEDのトランジスタをOFF、緑色LEDのD/Aコンバータ18Gの電流設定値を0に設定し(ステップS606)、次に図5で示したステップS502における「パール光検出センサーと非パール光検出センサーによる挿入紙幣1下面の2色(赤、緑)の各反射光データの収集」の処理を行う。
【0126】
具体的には、下光源14の2色(赤、緑)のLEDを順次発光させ、受光素子16で受光される挿入紙幣1下面の各計測位置での各色の反射光データと受光素子15で受光される挿入紙幣1下面の各計測位置での各色の反射光データとを所定の記憶領域に順次記憶し、挿入紙幣1の1枚分の各計測位置での反射光データを収集する。
【0127】
挿入紙幣1下面のパール光検出センサーと非パール光検出センサーによる各色の反射光データの収集処理は、図7のフローチャートに示すように、下光源14の赤色LEDのトランジスタをON(ステップS701、702、703)、赤色LEDのD/Aコンバータ18R(図2参照)へ電流設定値を出力し、下光源14の赤色LEDを発光させ(ステップS704)、受光素子16の受光出力が安定したところで(ステップS705でYES)、紙幣1下面の反射光に対応して受光素子16から出力される受光出力信号をアンプ回路23で増幅し、A/Dコンバータ24でデジタルの反射光データに変換し、メモリ70のNAMDAT(SIDE、PTX、COL、ADR)の記憶領域へ記憶する。
【0128】
なお、NAMDAT(SIDE、PTX、COL、ADR)の変数PTXは、受光素子16の指定を示す「0」と受光素子15の指定を示す「1」の各値が設定され、このパール光検出センサーによる挿入紙幣1下面の赤色反射光データは、SIDE=1、PTX=0、COL=0、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)のNAMDAT(SIDE、PTX、COL、ADR)の記憶領域に記憶される。
【0129】
下光源14の赤色LED発光による紙幣1下面の反射光データの収集が終わると、赤色LEDのトランジスタをOFF、D/Aコンバータ18Rの電流設定値を0に設定後(ステップS706)、下光源14の緑色LEDを発光させ、前述と同様に挿入紙幣1下面の反射光に対応して受光素子16から出力される受光出力信号をアンプ回路23、A/Dコンバータ24を介してメモリ70のNAMDAT(SIDE、PTX、COL、ADR)、各変数の値がSIDE=1、PTX=0、COL=1、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)の記憶領域に記憶する。
なお、下光源11の緑色LEDの発光は、緑色LEDのトランジスタをON(ステップS703)、D/Aコンバータ18G(図2参照)へ電流設定値を出力し(ステップS704)、受光素子16の受光出力が安定後(ステップS705でYES)、紙幣1下面での反射光を受光素子16で受光する。
【0130】
下光源14の2色発光及び受光素子16による紙幣1下面の反射光データの収集、すなわちパール光検出センサーによる挿入紙幣1下面の2色(赤、緑)の各反射光データの収集が終了すると(ステップS708でYES)、次に非パール光検出センサーによる挿入紙幣1下面の2色(赤、緑)の各反射光データの収集を行う。
【0131】
具体的には、前述の下光源14の2色発光及び受光素子16による紙幣1下面の反射光データ収集の処理動作と同様に、下光源14の2色(赤、緑)LEDを順次発光させ、紙幣1下面で反射する反射光を受光素子15で受光し、受光素子15から出力される受光出力信号をアンプ回路23、A/Dコンバータ24を介してメモリ70のNAMDAT(SIDE、PTX、COL、ADR)に記憶する。
【0132】
なお、下光源14の赤色LED発光及び受光素子15による紙幣1下面の反射光データは、SIDE=1、PTX=1、COL=0、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)のNAMDAT(SIDE、PTX、COL、ADR)の記憶領域へ、緑色LED発光及び受光素子15による紙幣1下面の反射光データは、SIDE=1、PTX=1、COL=1、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)のNAMDAT(SIDE、PTX、COL、ADR)の記憶領域へそれぞれ記憶され、下光源14の緑色LEDのトランジスタをOFF、D/Aコンバータ18Gの電流設定値を0に設定し(ステップS706)、次に図5で示したステップS503の透かしセンサーによる挿入紙幣1を透過する各色の透過光を受光素子15で受光して透過光データを収集する。
【0133】
具体的には、図8のフローチャートに示すように、上光源12の2色(色、緑)のLEDを順次発光させ、挿入紙幣1を透過する透過光を受光素子15で受光し、挿入紙幣1の各計測位置での各色の透過光データを挿入紙幣1の1枚分について収集する。
【0134】
先ず、赤色LEDのトランジスタをON、D/Aコンバータ18Rへの電流値を設定して上光源12の赤色LEDを発光させ(ステップS801、802、803)、受光素子15の受光出力が安定後(ステップS804でYES)、搬送紙幣1の透過光が受光素子15で検出されて出力される受光出力信号をアンプ回路21、A/Dコンバータ22を介してメモリ70のNAMDAT2(COL、ADR)に対応付けられたメモリ70の記憶領域に記憶する(ステップS805乃至806)。
【0135】
なお、NAMDAT2(COL、ADR)の各変数は、COLが赤色LEDを示す「0」と緑色LEDを示す「1」の値、ADRが挿入紙幣1のデータ収集位置の情報を示す値でそれぞれ対応付けられて管理されており、上光源12の赤色LED発光及び受光素子15による挿入紙幣1の透過光データをCOL=0、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)のNAMDAT2(COL、ADR)の記憶領域へ記憶する。
【0136】
上光源12の赤色LED発光による紙幣1の計測位置での透過光データの収集を終えると(ステップS807でNO)、上光源12の緑色LEDを発光させ、前述と同様に紙幣1を透過する透過光を受光素子15で受光し、透過光データをCOL=1、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)のNAMDAT2(COL、ADR)の記憶領域へ記憶するとともに緑色LEDのトランジスタをOFF、D/Aコンバータ18Gの電流設定値を0にし(ステップS805)、上光源12の2色発光及び受光素子15による搬送紙幣1の透過光データ収集の処理動作は終了する(ステップS806乃至ステップS807でYES)。
【0137】
このようにパール光検出センサーと非パール光検出センサーによる挿入紙幣1の各面の各計測位置での反射光データの収集、透かしセンサーによる挿入紙幣1の透過光データの収集が挿入紙幣1が光学検知部10を通過するまで繰り返し行われることで、挿入紙幣1の1枚分の反射光データと透過光データとの受光データが収集される。
【0138】
前述に示した図4のメインフローチャートに示すように、紙葉類識別装置100が、挿入された紙幣1の各計測位置での磁気センサー/透過光識別センサー等89や光学検知部10による磁気データと反射光データや透過光データの受光データが検出され、挿入紙幣1の1枚分の各受光データがメモリ70の所定の記憶領域に記憶されると(ステップS406でYES)、マイクロコンピュータ95の金種及び挿入方向判定部40が磁気センサー/透過光識別センサー等89で検出された磁気データと受光データに基づき挿入紙幣1の金種と挿入方向(表裏、正逆)を判定する(ステップS407でYES)。
【0139】
金種及び挿入方向判定部40で挿入紙幣1の金種と挿入方向が判定されると、判定された挿入紙幣1の金種と挿入方向に基づき透かし領域データ特定部46が透かし領域データアドレス参照表を参照して挿入紙幣1の透かし領域の受光データが格納されたメモリ70の記憶領域を特定し、挿入紙幣1の透かし領域の反射光データをメモリ70から読み出す。
そして受光データ補正部45が透かし領域データ特定部46により読み出された挿入紙幣1の透かし領域の反射光データに基づき透かし領域における赤色反射光データと緑色反射光データの各受光出力値が予め定められた規定値となるように挿入紙幣1の全ての反射光データに対して補正を行う。
【0140】
具体的には、挿入紙幣1の金種と挿入方向に応じて光学検知部10の各パール光検出センサーにより検出されメモリ70に格納される挿入紙幣1の透かし領域の各反射光データのうちの赤色反射光の受光出力値と緑色反射光の受光出力値との和が最大(最大受光出力)となる計測位置での各色の受光出力値(最大受光出力値)が補正基準値である255の値となるように挿入紙幣1から収集した全ての反射光データの受光出力値を補正する(ステップS408)。
【0141】
なお、赤色反射光データの受光出力値を「受光出力値(赤色)」といい、緑色反射光データの受光出力値を「受光出力値(緑色)」という。
【0142】
この色補正による挿入紙幣1の各計測位置での補正値は、次式1及び式2で算出する。
【0143】
赤色反射光データを色補正する場合は、次式1で算出する。
【0144】
挿入紙幣1の各計測位置での補正値(赤色)=各計測位置での反射光データの受光出力値(赤色)/最大受光出力値(赤色)×255。
【0145】
また、緑色反射光データを色補正する場合は、次式2で算出する。
【0146】
挿入紙幣1の各計測位置での補正値(緑色)=各計測位置での反射光データの受光出力値(緑色)/最大受光出力値(緑色)×255。
【0147】
なお、「255」の値は、補正基準値を「255」として設定した値であり、「100」でもよく、特に限定されるものではない。
【0148】
この色補正の処理動作の詳細は、図9のフローチャートに示すように、まず、透かし領域データ特定部46によりメモリ70のNAMDAT(SIDE、LED、COL、ADR)から読み出された挿入紙幣1の透かし領域の反射光データに基づき受光データ補正部45が各パール光検出センサーで検出された透かし領域内の各計測位置での赤色反射光データの受光出力値と緑色反射光データの受光出力値との和が最大(最大受光出力)となる計測位置をそれぞれ求め、それら計測位置での受光データが格納されたメモリ70のアドレスを最大受光出力に対応した各色の反射光データを読み出すポインターとしてメモリ70のMAXADR(SIDE、LED)の記憶領域に記憶する(ステップS901)。
【0149】
なお、MAXADR(SIDE、LED)の変数SIDEは、上光源の指定を示す「0」または下光源の指定を示す「1」の各値が設定され、変数LEDは、上光源11の指定(SIDE=0の時)もしくは受光素子16の指定(SIDE=1の時)を示す「0」、または上光源12の指定(SIDE=0の時)もしくは受光素子15の指定(SIDE=1の時)を示す「1」の各値が設定されるようにそれぞれ対応付けられている。
【0150】
具体的には、挿入紙幣1の透かし領域内の各計測位置での上光源11と受光素子13から成るパール光検出センサーで検出された赤色反射光データの受光出力値(赤色)と緑色反射光データの受光出力値(緑色)との和を順次算出し、赤色反射光データの受光出力値(赤色)と緑色反射光データの受光出力値(緑色)との和が最大(最大受光出力)となる各色の反射光データの受光出力値と、各色の反射光データがメモリ70に格納されているアドレスを特定して、特定したアドレスを最大受光出力に対応した受光データの位置情報としてMAXADR(SIDE、LED)、SIDE=0、LED=0に格納する。
【0151】
また、上光源12と受光素子13から成る非パール光検出センサーで検出された赤色反射光データの受光出力値(赤色)と緑色反射光データの受光出力値(緑色)との和が最大となる位置情報を前述と同様な方法で算出し、そのアドレスをMAXADR(SIDE、LED)、SIDE=0、LED=1に格納する。
【0152】
また、下光源14と受光素子16から成るパール光検出センサー及び下光源14と受光素子15から成る非パール光検出センサーでそれぞれ検出された赤色反射光データの受光出力値(赤色)と緑色反射光データの受光出力値(緑色)との和が最大(最大受光出力)となるアドレスを前述と同様な方法で特定し、下光源14と受光素子16から成るパール光検出センサーによる最大受光出力の各色の反射光データのアドレスをMAXADR(SIDE、LED)、SIDE=1、LED=0に格納し、下光源14と受光素子15から成る非パール光検出センサーによる最大受光出力の各色の反射光データのアドレスをMAXADR(SIDE、LED)、SIDE=1、LED=1にそれぞれ格納する。
【0153】
挿入紙幣1の透かし領域における各パール光検出センサーで検出された赤色反射光データの受光出力値(赤色)と緑色反射光データの受光出力値(緑色)との和が最大となる位置情報がメモリ70のMAXADR(SIDE、LED)にそれぞれ格納されると、次に挿入紙幣1の各面の各計測位置で収集された赤色及び緑色の各反射光データの受光出力値の色補正を赤色反射光データについては上式1により、緑色反射光データについては上式2により算出し、算出結果をメモリ70のPALDATに対応付けられた記憶領域に格納する。
具体的には、次式3で算出する。
【0154】
PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)=NAMDAT(SIDE、LED、COL、ADR)×255/NAMDAT(SIDE、LED、COL、MAXADR(SIDE、LED))。
【0155】
上式3において、挿入紙幣1上面の計測開始位置における上光源11と受光素子13から成るパール光検出センサーで検出された赤色反射光データの受光出力値(赤色)の補正値をSIDE=0、LED=0、COL=0、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出し、緑色反射光データの受光出力値(緑色)の補正値をSIDE=0、LED=0、COL=1、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出して各記憶領域PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に記憶する(ステップS902乃至ステップS908でYES)。
【0156】
また、上式3において、挿入紙幣1上面の計測開始位置における上光源12と受光素子13から成る非パール光検出センサーで検出された赤色反射光の受光出力値(赤色)の補正値をSIDE=0、LED=1、COL=0、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出し、緑色反射光データの受光出力値(緑色)の補正値をSIDE=0、LED=1、COL=1、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出して各記憶領域PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に記憶し(ステップS909、ステップS910でNO)、前述で示したステップS905乃至ステップS910と同様な処理を挿入紙幣1上面の計測開始終了位置(ADR=0、1、2、・・・、n)になるまで繰り返すことで挿入紙幣1上面の各パール光検出センサーで検出された赤色及び緑色反射光データの受光出力値の補正値が算出され、算出された各補正値が所定の記憶領域PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に記憶される(ステップS904乃至ステップS912でYES)。
【0157】
挿入紙幣1上面の各パール光検出センサーで検出された赤色及び緑色反射光データの受光出力値の補正値を算出し、算出した各補正値を所定の記憶領域PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に記憶すると、挿入紙幣1下面の各パール光検出センサーで検出された赤色及び緑色反射光データの受光出力値についても前述と同様な色補正処理を行う。
【0158】
具体的には、上式3において、挿入紙幣1下面の計測開始位置における下光源14と受光素子16から成るパール光検出センサーで検出された赤色反射光データの受光出力値(赤色)の補正値をSIDE=1、LED=PTX=0、COL=0、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出し、緑色反射光データの受光出力値(緑色)の補正値をSIDE=1、LED=PTX=0、COL=1、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出して各記憶領域PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に記憶する(ステップS913、ステップS914でNO、ステップS903乃至ステップS908)。
【0159】
また、上式3において、挿入紙幣1下面の計測開始位置における下光源14と受光素子15から成る非パール光検出センサーで検出された赤色反射光の受光出力値(赤色)の補正値をSIDE=1、LED=PTX=1、COL=0、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出し、緑色反射光データの受光出力値(緑色)の補正値をSIDE=1、LED=PTX=1、COL=1、ADR=0、MAXADR(SIDE、LED)で算出して各記憶領域PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に記憶し(ステップS909、ステップS910でNO、ステップS905乃至ステップS910)、前述で示したステップS905乃至ステップS910と同様な処理を挿入紙幣1下面の計測開始終了位置(ADR=0、1、2・・・、n)になるまで繰り返すことで挿入紙幣1下面の各パール光検出センサーで検出された赤色及び緑色反射光データの受光出力値の補正値が算出され、算出された各補正値が所定の記憶領域PALDAT(SIDE、LED、COL、ADR)に記憶される(ステップS904乃至ステップS912、ステップS912でYES)。
【0160】
このように、受光データ補正部45による光学検知部10で収集された挿入紙幣1の各面の各色の反射光データの色補正処理が終了すると、色補正処理された各色の反射光データ(以下、「色補正データ」という。)に基づき挿入紙幣1が偽券であるか否かの判定処理を行う(図4のステップS409参照)。
【0161】
この判定処理は、パールデータ判定部50が挿入紙幣1の各面の各計測位置での色補正データから求めたインキの色合いやパールインキ成分と、その判定基準とに基づき挿入紙幣1が偽券であるか否かの判定処理を行う。
【0162】
具体的には、図10のフローチャートに示すように、真偽識別フラグBILNGや各カウンタNGCNT、PNG、パールインキ成分の最小値PLMIN、挿入紙幣1上下面を指定するSIDE等の各値を記憶する各記憶領域を初期化した後(ステップS1001)、パール光検出センサーにより収集された挿入紙幣1の各面の各計測位置での反射光データの赤色補正データと緑色補正データとの比率(赤緑比率(斜光))COLDAT0と、非パール光検出センサーにより収集された挿入紙幣1の各面の各計測位置での反射光データの赤色補正データと緑色補正データとの比率(赤緑比率(垂直光))COLDAT1と、赤緑比率(斜光)と赤緑比率(垂直光)との比率(赤緑比率比)OUTDATとをそれぞれ算出し(ステップS1002、ステップS1003、ステップS1004、ステップS1005)、各算出値と真正紙幣から予め取得したそれぞれの許容値(上限値、下限値)との比較結果を「色合い及びパールインキ成分判定処理」で算出し、比較結果に基づき紙幣1が偽券であるか否かの判定処理を行う。
【0163】
なお、「色合い及びパールインキ成分判定処理」の詳細については後述する。
【0164】
算出された赤緑比率(垂直光)COLDAT1からは、挿入紙幣1に印刷されたインキの色合いを含む情報を、赤緑比率比OUTDATからは、挿入紙幣1に印刷されたパールインキ成分の情報を得ることができることから、予め多くの真正紙幣から収集した真正紙幣上の各面各計測位置での色合い(赤緑比率(垂直光)COLDAT1)値やパールインキ成分(赤緑比率比OUTDAT)値に基づき、各値のばらつき考慮して真正紙幣の赤緑比率(垂直光)COLDAT1値の下限値CLOWLMT(KIN、INS、ADR)と上限値CHILMT(KIN、INS、ADR)、赤緑比率比OUTDAT値の下限値LOWLMT(KIN、INS、ADR)と上限値HILMT(KIN、INS、ADR)を設定し、挿入紙幣1上の各計測位置での赤緑比率(垂直光)COLDAT1値(色合い)や赤緑比率比OUTDAT値が真正紙幣の赤緑比率(垂直光)COLDAT1値(色合い)や赤緑比率比OUTDAT値の各下限値や上限値を超えた回数をカウントすることで挿入紙幣1に形成されたインキの色合いやパールインキ成分と、判定基準とに基づく真偽の識別が可能となる。
【0165】
なお、パールインキが印刷されていない領域(例えば無地領域や着色印刷領域等)では、赤緑比率比OUTDAT値が大きな値(例えば255近傍)を示し、パールインキが印刷されている領域では、小さな値を示す。
【0166】
赤緑比率(斜光)COLDAT0は、次式4で算出する。
【0167】
COLDAT0=PALDAT(SIDE、0、1、ADR)/PALDAT(SIDE、0、0、ADR)×255。
【0168】
上式4において、上光源11の発光と受光素子13の受光(パール光検出センサー)による挿入紙幣1上面の各計測位置での反射光データの赤色補正データと緑色補正データとの赤緑比率(斜光)は、SIDE=0、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)で示され、下光源14の発光と受光素子16(パール光検出センサー)による挿入紙幣1下面の各計測位置での反射光データの赤色補正データと緑色補正データとの赤緑比率(斜光)は、SIDE=1、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)で示される。
【0169】
また、赤緑比率(垂直光)COLDAT1は、次式5で算出する。
【0170】
COLDAT1=PALDAT(SIDE、1、1、ADR)/PALDAT(SIDE、1、0、ADR)×255。
【0171】
上式5において、上光源12の発光と受光素子13の受光(非パール光検出センサー)による挿入紙幣1上面の各計測位置での反射光データの赤色補正データと緑色補正データとの赤緑比率(垂直光)は、SIDE=0、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)で示され、下光源14の発光と受光素子15(非パール光検出センサー)による挿入紙幣1下面の各計測位置での反射光データの赤色補正データと緑色補正データとの赤緑比率(垂直光)は、SIDE=1、ADR=n(nは、計測開始位置の0値〜計測終了位置のn値の計測位置に対応する値)で示される。
【0172】
また、赤緑比率(斜光)COLDAT0と赤緑比率(垂直光)COLDAT1との赤緑比率比OUTDATは、次式6で算出する。
【0173】
OUTDAT=COLDAT0/COLDAT1×255。
【0174】
挿入紙幣1の各面の各計測位置での赤緑比率(垂直光)COLDAT1と赤緑比率比OUTDATとが算出されると、各算出値と真正紙幣から予め取得したそれぞれの許容値(上限値、下限値)との比較結果を「色合い及びパールインキ成分判定処理」で算出する(ステップS1006)。
【0175】
この「色合い及びパールインキ成分判定処理」は、図11のフローチャートに示すように、非パール光検出センサーにより収集された挿入紙幣1の赤色反射光データの赤色補正データと緑色反射光データの緑色補正データとの赤緑比率(垂直光)COLDAT1値が真偽判定基準の下限値CLOWLMT(KIN、INS、ADR)や上限値CHILMT(KIN、INS、ADR)を超えた場合(ステップS1101でNO、ステップS1102でNO)、すなわち挿入紙幣1の各面の各計測位置での色合いが真正紙幣から収集した色合いの許容範囲を超えた場合は、カウンタCNGCNTをカウントアップし(ステップS1103)、挿入紙幣1の各面の各計測位置での赤緑比率(斜光)COLDAT0と赤緑比率(垂直光)COLDAT1との赤緑比率比OUTDATが真偽判定基準の下限値LOWLMT(KIN、INS、ADR)や上限値HILMT(KIN、INS、ADR)を超えた場合(ステップS1104でNO、ステップS1105でNO)、すなわち挿入紙幣1の各面の各計測位置でのパールインキ成分を示す値が真正紙幣から収集したパールインキ成分を示す値の許容範囲を超えた場合は、カウンタNGCNTをカウントアップし(ステップS1106)、更に、その計測位置が挿入紙幣1のパールインキが印刷された領域内であれば(ステップS1107でYES)、カウンタPNGをカウントアップ後(ステップS1108)、挿入紙幣1の赤緑比率比OUTDATの最小値PLMINを検出し(ステップS1109、ステップS1110)、挿入紙幣1の1枚分の各カウンタ値CNGCNT、NGCNT、PNG及び赤緑比率比OUTDATの最小値PLMINを検出する。
【0176】
なお、各計測位置が挿入紙幣1のパールインキが印刷された領域内であるか否かの判別は、メモリ70に格納されたパールインキ印刷部データアドレス参照表を参照することで判別することができる。
【0177】
図10のフローチャートに示すように、挿入紙幣1の1枚分の各カウンタ値NGCNT、PNG及び赤緑比率比OUTDATの最小値PLMINが検出されると(ステップS1008でYES)、これらの値に基づき挿入紙幣1の真偽判定を行う。
【0178】
具体的には、挿入紙幣1のパールインキ成分値が許容範囲を超えたカウント値NGCNT、すなわち、挿入紙幣1全体のパール光データの欠損数が所定の真偽判定基準値TLMTを超えたか否かを判別し(ステップS1009)、超えた場合は(ステップS1009でNO)、真偽識別フラグBILNGを「1」と設定後(ステップS1013)、挿入紙幣1を偽券と判定し処理を終了する。
【0179】
また、カウント値NGCNTが所定の真偽判定基準値TLMTの範囲内であれば(ステップS1009でYES)、挿入紙幣1のパールインキが印刷された領域におけるパールインキ成分値が許容範囲を超えたカウント値PNG、すなわち、挿入紙幣1のパールインキ領域の欠損数が所定の真偽判定基準値PNGLMTを超えたか否かを判別し(ステップS1010)、超えた場合は(ステップS1010でNO)、真偽識別フラグBILNGを「1」と設定後(ステップS1013)、挿入紙幣1を偽券と判定し処理を終了する。
【0180】
また、カウント値PNGが所定の真偽判定基準値PNGLMTの範囲内であれば(ステップS1010でYES)、挿入紙幣1の赤緑比率比OUTDATの最小値PLMINが所定の真偽判定基準値PLLMTより大きいか否かを判別し(ステップS1011)、小さい場合は(ステップS1011でNO)、真偽識別フラグBILNGを「1」と設定後(ステップS1013)、挿入紙幣1を偽券と判定し処理を終了する。
【0181】
これまで述べたように、本発明の紙葉類識別装置および方法は、光学検知部10の各光源や受光素子の経時劣化、または付着した埃による発光量や受光感度のばらつきによる識別判定のばらつきを抑えるために光学検知部10で収集した挿入紙幣1の全ての反射光データに対して色補正を行い、色補正データに基づく挿入紙幣1に印刷された各計測位置でのインキの色合いやパールインキ成分の算出値と基準値との比較によりパールインキの特性を精密に識別するので、挿入紙幣1に印刷されたパールインキが真券に印刷された特有のパールインキなのか、それ以外のインキなのかを高精度で判別することができる。
【0182】
色補正後の反射光データ(色補正データ)に基づき挿入紙幣1が偽券でないと判定されると(ステップS410でNO)、挿入紙幣1の透かし領域の反射光データ及び透過光データに基づき紙幣1が真券であるか否かの判定処理を行う(ステップS411)。
【0183】
ステップS411における「透かし領域の真偽判定処理」は、具体的には、挿入紙幣1の透かし領域の透過光データに基づき透かし模様に対応した透かしパターンが検知されているか否かの判別と、透かし領域の反射光データに基づき透かしパターンが検知されているか否かの判別結果に基づき真偽の判定を行う。
【0184】
例えば、透かし領域が形成された真正紙幣と透かし領域が形成されていない偽券とに光を照射して各透過光の受光出力を検出してみると、真正紙幣の場合は、透かしパターンが検知されるのに対し、偽券の場合は、透かしパターンが検知されないので透かしパターンが検知されたか否かに基づき真正紙幣と偽券との識別が容易にできる。
【0185】
しかし、透かし領域に表面複写もしくは、いたずら書きされた偽券の場合は、透かしパターンが検知されるので、透過光により透かしパターンが検知されたか否かに基づく真正紙幣と偽券との識別が困難となる。
【0186】
一方、透かし領域が形成された真正紙幣と透かし領域が形成されていない偽券とに光を照射して各反射光の受光出力を検出してみると、真正紙幣、偽券共に透かしパターンを検知することはできないが、透かし領域に表面複写もしくは、いたずら書きされた偽券の場合は、透かしパターンが検知されるので、透過光と反射光による透かしパターンが検知されたか否かを判別することで真正紙幣と偽券との識別が可能となる。
【0187】
このようなことから、ステップS411における「透かし領域の真偽判定処理」の動作は、図12のフローチャートに示すように、透かしセンサーを構成する上光源12の赤色LEDの発光と受光素子15の受光により検出した挿入紙幣1の透かし領域の赤色透過光データに基づき透かしパターンが検知されない場合は(ステップS1201、ステップS1202でNO)、真偽識別フラグBILNGをカウントアップ後(ステップS1207)、挿入紙幣1を偽券と判定し、処理を終了する。
【0188】
ステップS1202において、透かしパターンが検知された場合は(ステップS1202でYES)、上光源12の赤色LEDの発光及び受光素子13の受光により検出した挿入紙幣1上面の透かし領域の赤色反射光データに基づき透かしパターンが検知された場合は(ステップS1203でNO)、真偽識別フラグBILNGをカウントアップ後(ステップS1207)、挿入紙幣1を偽券と判定し、処理を終了する。
【0189】
ステップS1203において、透かしパターンが検知されない場合は(ステップS1203でYES)、下光源14の赤色LEDの発光及び受光素子15の受光により検出した挿入紙幣1下面の透かし領域の赤色反射光データに基づき透かしパターンが検知された場合は(ステップS1204でNO)、真偽識別フラグBILNGをカウントアップ後(ステップS1207)、挿入紙幣1を偽券と判定し、処理を終了する。
【0190】
ステップS1204において、透かしパターンが検知されない場合は(ステップS1204でYES)、上光源12または下光源14の各緑色LEDを発光及び受光素子13または受光素子15の受光により検出した挿入紙幣1上面または下面の透かし領域の緑色透過光または反射光データに基づき前述のステップS1202乃至ステップS1204の判定動作を繰り返した後、透かし領域の真偽判定処理を終了する(ステップS1206でYES)。
【0191】
このように、挿入紙幣1の透かし領域の透過光データ、反射光データに基づく判定処理を組み合わせた処理を行うことで挿入紙幣1の真偽判定ができ、透過光データ、反射光データを2波長の発光により収集することで挿入紙幣1の真偽識別の精度がより向上する。
【0192】
図13は、これまで説明した紙葉類識別装置100とは他の本発明に係わる紙葉類識別装置200の構成例を示す構成図であり、図14は、紙葉類識別装置200の回路構成の一例を示す回路ブロック図である。
【0193】
紙葉類識別装置200の構成例は、片面にのみパールインキが印刷された紙幣を表裏の挿入方向を特定して挿入させることで紙幣に印刷されたパールインキを精密に真偽識別するように構成したものである。
【0194】
図13及び図14に示すように、紙葉類識別装置200は、挿入紙幣1上面に対して斜め方向及び垂直方向から2色(赤、緑)の光を照射する上光源11(第1の光源)、12(第2の光源)及び挿入紙幣1上面の反射光を受光する受光素子13(第1の受光素子)とを配置した光学検知部210を有するように構成されたものである。
【0195】
なお、図13及び14に示す紙葉類識別装置200において、図1及び図2に示した紙葉類識別装置100と同様な構成及び動作する各部については、説明の便宜上、同一の符号を付して前述の説明を参照するものとし、構成及び動作の説明は、省略する。
【0196】
図13及び図14に示すように、光学検知部210を備えた紙葉類識別装置200の構成としても、挿入紙幣1上面のパールインキに依存する、またはパールインキに依存しない色合いやパールインキが印刷された領域のパールインキ成分や色合いに基づき挿入紙幣1の真偽の判別を行うことで、挿入紙幣1の真偽識別の精度をより向上させることができる。
【0197】
具体的には、図15に示す紙葉類識別装置200の真偽識別処理動作の概略フローチャートに示すように、所定の挿入方向(表裏)で紙幣1が挿入されると、紙幣挿入検出センサー87が紙幣1が挿入されたことを検知し(ステップS1501でYES)、搬送モータ84が起動されて挿入紙幣1を搬送し、メモリー70の所定の記憶領域を初期化後(ステップS1502)、磁気センサー/透過光識別センサー等89、光学検知部10等の各センサーが起動する(ステップS1503でYES)。
【0198】
挿入紙幣1上面の各計測位置での磁気データや透かし領域のデータを磁気センサー/透過光識別センサー等89で検出し、2色(赤、緑)の反射光データを光学検知部10等の各センサーで検出して挿入紙幣1の1枚分の各データをメモリー70の所定の記憶領域に順次記憶する(ステップS1504、ステップS1505)。
【0199】
なお、ステップS1505における「光学検知部210によるデータ収集」の処理動作は、前述の図6で示した「パール光検出センサー、非パール光検出センサーによる挿入紙幣1上面の反射光データ収集」の処理動作と同様であり、詳細説明は省略する。
【0200】
各センサーによる挿入紙幣1の1枚分の各データ収集後(ステップS1506でYES)、金種及び挿入方向判定部40により判定された挿入紙幣1の金種と挿入方向に応じた挿入紙幣1上面の透かし領域の特定の反射光データに基づき色補正を行い(ステップS1508)、色補正処理された各色補正データに基づき挿入紙幣1の真偽判定処理を行い(ステップS1509)、判定結果に基づき真券(ステップS1510でYES)または偽券の判定を行う(ステップS1510でNO)。
【0201】
なお、ステップS1508における「光学検知部210で収集された反射光データの色補正処理」は、前述の図9で示した「光学検知部10で収集した反射光データの色補正処理」におけるSIDE=0の場合の処理動作と同様であり、ステップS1509における「色補正後の反射光データに基づく真偽判定処理」は、前述の図10、11で示した「色補正後の反射光データに基づく真偽判定処理」におけるSIDE=0の場合の処理動作及び「色合い及びパールインキ成分判定処理」の処理動作と同様であるので詳細説明は省略する。
【0202】
このように、紙葉類識別装置200では、挿入紙幣1の透かし領域の透過光に基づく真偽判定の処理は行わないが、挿入紙幣1上面の2色の反射光に基づく色合い識別、パールインキ成分の識別及びパールインキ領域の識別を行うので挿入紙幣1の識別精度がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】本発明に係わる紙葉類識別装置100の構成例を示す構成図
【図2】紙葉類識別装置100の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図3】紙幣1の構成と紙幣1より検出される受光データの波形信号の一例を示す図
【図4】紙葉類識別装置100が挿入紙幣1を真偽識別する処理動作を示すメインフローチャート
【図5】光学検知部10による挿入紙幣1の受光データ収集の処理動作を示すメインフローチャート
【図6】パール光検出センサー、非パール光検出センサーによる挿入紙幣1上面の反射光データ収集の処理動作を示すフローチャート
【図7】パール光検出センサー、非パール光検出センサーによる挿入紙幣1下面の反射光データ収集の処理動作を示すフローチャート
【図8】挿入紙幣1の透過光データ収集の処理動作を示すフローチャート
【図9】収集した反射光データの色補正の処理動作を示すフローチャート
【図10】色補正後の反射光データに基づく真偽判定の処理動作を示すフローチャート
【図11】色合い及びパールインキ成分判定の処理動作を示すフローチャート
【図12】挿入紙幣1の透かし領域の真偽判定の処理動作を示すフローチャート
【図13】本発明に係わる紙葉類識別装置200の構成例を示す構成図
【図14】紙葉類識別装置200の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図15】紙葉類識別装置200が挿入紙幣1を真偽識別する処理動作を示す概略フローチャート
【符号の説明】
【0204】
1 挿入紙幣
2 真正紙幣
3、4 パールインキ
5 透かし領域
6 紙幣搬送路
10、210 光学検知部
11、12 上光源
13、15、16 受光素子
14 下光源
17、19、21、86、88、91 アンプ(回路)
17R アンプ(回路)(赤色LED用)
17G アンプ(回路)(緑色LED用)
18 D/Aコンバータ
18R D/Aコンバータ(赤色LED用)
18G D/Aコンバータ(緑色LED用)
20、22、24 A/Dコンバータ
30、31 制御部
40 金種及び挿入方向判定部
45 受光データ補正部
46 透かし領域データ特定部
50、51 パールデータ判定部
60 透かしデータ判定部
70 メモリ
80 紙幣搬送機構
81 搬送ベルト
82、83 ローラ
84 搬送モータ
85 エンコーダ
87 紙幣挿入検出センサー
89 磁気センサー/透過光識別センサー等
90 バス
95、96 マイクロコンピュータ
100、200 紙葉類識別装置
101 パール光検出センサーによる赤色反射光の受光出力信号波形
102 パール光検出センサーによる緑色反射光の受光出力信号波形
103 パール光検出センサーによる赤緑比率(斜光)の信号波形
104 非パール光検出センサーによる赤色反射光の受光出力信号波形
105 非パール光検出センサーによる緑色反射光の受光出力信号波形
106 非パール光検出センサーによる赤緑比率(垂直光)の信号波形
107 赤緑比率比の信号波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視角により色相が変化する色相インキ印刷領域を有する紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、
前記紙葉類の表面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第1の光源と、
前記紙葉類の表面に対して垂直方向から複数の色の光を切り替え照射する第2の光源と、
前記第1の光源からの光の前記紙葉類の表面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第1の受光素子と、
前記紙葉類の裏面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第3の光源と、
前記第3の光源からの光の前記紙葉類の裏面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第2の受光素子と、
前記紙葉類の裏面側に前記第2の光源と対向して配置される第3の受光素子と
を具備し、
前記第1の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第2の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存する第1の色合いを算出する第1の算出手段と、
前記第2の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第3の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存しない第2の色合いを算出する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段及び前記第2の算出手段の算出結果に基づき前記紙葉類を判別する紙葉類判別手段と
を具備することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記第1の光源、前記第2の光源および前記第3の光源は、
それぞれ赤色と緑色を切り替えて発光する2色発光光源であり、
前記第1の算出手段は、
前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との比である第1の比率を算出し、
前記第2の算出手段は、
前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との比である第2の比率を算出し、
前記紙葉類判別手段は、
前記第1の比率と前記第2の比率との比率を算出し、前記第1の比率と前記第2の比率との比率の値に基づき前記紙葉類を判別する
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記紙葉類の表裏、正逆の挿入方向および金種を判別する金種挿入方向判別手段と、
前記金種挿入方向判別手段の判別出力に基づき前記紙葉類の透かし領域を特定する透かし領域特定手段と、
前記透かし領域特定手段で特定された前記透かし領域における前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力、または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力をそれぞれ検知する最大受光出力検知手段と、
前記最大受光出力検知手段で検知された最大受光出力に基づき前記第1の受光素子、前記第2の受光素子及び前記第3の受光素子の受光出力を補正する補正手段と
を更に具備することを特徴とする請求項2記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
各受光素子の赤色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での赤色の受光出力に基づき補正し、
各受光素子で検出された緑色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での緑色の受光出力に基づき補正すること
を特徴とする請求項3記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記紙葉類判別手段は、
前記第1の算出手段で算出された前記第1の比率と前記第2の算出手段で算出された前記第2の比率との比の値に基づき前記紙葉類を判別する第1の判別手段と、
前記金種挿入方向判別手段により前記紙葉類の金種及び挿入方向が判別できたか否かを判別する第2の判別手段と、
前記透かし領域における前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力に基づく前記紙葉類の透かしパターンから前記紙葉類を判別する第3の判別手段と
を更に具備し、
前記第1の判別手段乃至前記第3の判別手段の判別結果に基づき前記紙葉類を判別することを特徴とする請求項3または4記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
視角により色相が変化する色相インキ印刷領域を有する紙葉類の識別を行う紙葉類識別方法において、
前記紙葉類の表面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第1の光源と、
前記紙葉類の表面に対して垂直方向から複数の色の光を切り替え照射する第2の光源と、
前記第1の光源からの光の前記紙葉類の表面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第1の受光素子と、
前記紙葉類の裏面に対して所定の角度で複数の色の光を切り替え照射する第3の光源と、
前記第3の光源からの光の前記紙葉類の裏面における反射光を前記色相インキ印刷領域の色相が変化する角度で受光する第2の受光素子と、
前記紙葉類の裏面側に前記第2の光源と対向して第3の受光素子とを配設し、
前記第1の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第2の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存する第1の色合いを第1の算出手段で算出し、
前記第2の光源からの光の前記第1の受光素子の受光出力と前記第3の光源からの光の前記第3の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存しない第2の色合いを第2の算出手段で算出し、
前記第1の算出手段及び前記第2の算出手段の算出結果に基づき前記紙葉類を紙葉類判別手段で判別する
ことを特徴とする紙葉類識別方法。
【請求項7】
前記第1の光源、前記第2の光源および前記第3の光源は、
それぞれ赤色と緑色を切り替えて発光する2色発光光源であり、
前記第1の算出手段は、
前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との比である第1の比率を算出し、
前記第2の算出手段は、
前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との比または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との比である第2の比率を算出し、
前記紙葉類判別手段は、
前記第1の比率と前記第2の比率との比の値に基づき前記紙葉類を判別する
ことを特徴とする請求項6記載の紙葉類識別方法。
【請求項8】
更に、前記紙葉類の表裏、正逆の挿入方向および金種を金種挿入方向判別手段で判別し、
前記金種挿入方向判別手段の判別に基づき前記紙葉類の透かし領域を透かし領域特定手段で特定し、
前記透かし領域特定手段で特定された前記透かし領域における前記第1の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第1の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第1の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力、または前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第2の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力および前記第3の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第3の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力との和が最大となる最大受光出力を最大受光出力検知手段でそれぞれ検知し、
前記最大受光出力検知手段で検知された最大受光出力に基づき前記第1の受光素子、前記第2の受光素子及び前記第3の受光素子の受光出力を補正手段で補正する
ことを特徴とする請求項7記載の紙葉類識別方法。
【請求項9】
前記補正手段は、
各受光素子の赤色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での赤色の受光出力に基づき補正し、
各受光素子で検出された緑色の受光出力を前記最大受光出力検知手段により最大受光出力が検知された位置での緑色の受光出力に基づき補正すること
を特徴とする請求項8記載の紙葉類識別方法。
【請求項10】
前記紙葉類判別手段は、
更に、前記第1の算出手段で算出された前記第1の比率と前記第2の算出手段で算出された前記第2の比率との比の値に基づき前記紙葉類を第1の判別手段で判別し、
前記金種挿入方向判別手段により前記紙葉類の金種及び挿入方向が判別できたか否かを第2の判別手段で判別し、
前記透かし領域における前記第2の光源が赤色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力と前記第2の光源が緑色に発光されたときの前記第3の受光素子の受光出力に基づく前記紙葉類の透かしパターンから前記紙葉類を第3の判別手段で判別し、
前記第1の判別手段乃至前記第3の判別手段の判別結果に基づき前記紙葉類を判別することを特徴とする請求項8または9記載の紙葉類識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−146321(P2006−146321A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331828(P2004−331828)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000152859)株式会社日本コンラックス (24)
【Fターム(参考)】