説明

素子内信号積算機能を持つ超高速撮像素子

【課題】再現性のある現象を低照明下で超高速度撮影できる「映像信号積算素子」の画素内の折り畳みCCDメモリーを微細CMOSプロセス(1層のシリサイドしか提供されていない)で作る。
【解決手段】従来技術では2層のポリシリコン(またはシリサイド)を交差させて作っていた電極を1層のポリシリコンで作る。駆動電圧送付のためのバスラインも1層の金属層で作る。電極を逆Z字型とする。逆Z字の上辺(左辺)と下辺(右辺)をつなぐ縦のつなぎ部分がCCDのチャンネルストップと重なるように置く。この部分にコンタクトポイント126をペアにして置く。コンタクトポイントを通して駆動電圧を送るための金属バスライン133〜136を波形にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
再現性のある高速度現象で、1回の撮影では速度に対応した十分な光量が得られない場合の撮影に好適である。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者らは「映像信号積算素子(Image Signal Accumulation Sensor、以下「ISAS」と呼ぶ)」を発案した(非特許文献1)。ISASの2行2列の4個の画素100を図1に示している。
【0003】
【非特許文献1】Takeharu Goji Etoh,Dao Vu Truong Son,Toshiaki Koike Akino,Toshiro Akino,Kenji Nishi,Masatoshi Kureta,Masatoshi Arai,Ultra−high−Speed Image Signal Accumulation Sensor,Sensors,ISSN 1424−8220,Vol.10,4100−4113,2010.
【0004】
ISASでは全画素の画素内に、撮影した多数の連続画像信号をその場記録するために、アナログメモリーとして使うCCDを折りたたんで作り込んでいる。全画素で一斉にこのメモリーCCDに画像信号を並列記録するので、究極の超高速度撮像素子を作ることができる。これについて説明する。
【0005】
この撮像素子は裏面照射型である。裏面に入射した光により生成した光電子が、表側に作られた各画素回路の電荷収集ゲート101に集まる。これが信号電荷(画像信号)となる。ここからインプットゲート102を通して、CCD103のインプットゲートに隣接するCCDエレメント104に送られる。CCD103がアナログのCCDメモリーである。
【0006】
次の時間ステップでは、CCD上の信号電荷は下方へ1CCDエレメントだけ移動すると同時に、その時間ステップで生成した2番目の信号電荷がインプットゲートに隣接するCCDエレメントに送られる。
【0007】
これを繰り返すと、図1の例では折りたたまれたCCDエレメントの数は86であるから、連続的に撮影された86個の画像信号が各画素内で全画素一斉にその場記録される。すなわち86フレーム分の連続画像が撮影できる。
【0008】
このときインプットゲートに隣接するCCDエレメントがCCDメモリーの始端104となり、その直上のCCDエレメントが末端105となる。このとき末端エレメントに1枚目の画像信号が記録されており、始端エレメントには最後の86枚目の画像信号が記録されている。
【0009】
次に積算機能について説明する。1度目の撮影が終わった後、この撮像素子から画像信号を呼び出さないで、そのまま2度目の撮影を開始する。2度目の撮影の最初の画像信号が始端エレメント104に入るとき、1度目の撮影の最初の画像信号が末端エレメント105から始端エレメント104に降りてくる。これにより1度目と2度目の撮影における1フレーム目の画像信号が始端エレメント104で自動的に加算されて記録される。この過程を86回繰り返す。これにより2回の撮影で得られた86フレーム分の画像信号が加算されて記録される。さらに3度目、4度目と撮影を継続すれば、撮影回数分だけ加算された86フレーム分の画像信号が記録される。
【0010】
その後、記録された画像信号が1回の読み出し操作で撮像素子から外部のバッファメモリーに読み出され、連続した映像として再生される。
【0011】
全画素がその周辺にその場記録(In−situ Storage)のためのCCDメモリーを持っているという点で、ISASは、本発明の発明者らが発明した「画素周辺記録型撮像素子(In−situ Storage Image Senor、以下「ISIS」と呼ぶ)」と同じである(特許文献1、非特許文献2、図2参照)。これにより最高100万フレーム/秒の撮影速度を持つビデオカメラの開発に成功した。図2に示すように既に発明したISISでは折り畳みCCDではなく、「斜行直線CCD(Slanted Linear CCD)106」を画素周辺記録デバイスとして用いた。したがってこの素子を以後SL−ISISと呼ぶ。
【0012】
ISASは、その場記録のためのCCDを折りたたんで画素内に入れているという点ではISISの一種である。CCDメモリーの始端と末端の要素が直接接続されていることに特徴がある。
【0013】
【特許文献1】出願番号2001−92313、武藤秀樹、江藤剛治、高速撮像素子及び高速撮影装置
【0014】
【非特許文献2】Etoh,T.G.,Poggemman,D.,Kreider,G.,Mutoh,H.,Theuwissen,A.J.P.,Ruckelshausen,A.,Kondo,Y.,Maruno,H.,Takubo,K.,Soya,H.,Takehara,K.,Okinaka,T.,Takano,Y.,An image sensor which captures 100 consecutive frames at 1,000,000frame/s.IEEE Transaction on Electron Devices,2003,Vol.50,pp.144−151.
【0015】
ISASの特徴である多数回の撮影で得られた画像信号を加算するという方法は、通常のビデオカメラでも、再現性の高い現象を厳しい光量不足の条件下で撮影する場合に対して使われてきた。たとえば脳科学の実験で、同じ場所を刺激すれば、刺激は脳表面を同じように伝わる。これを映像として捉える場合には、微弱な蛍光を高速で撮影する必要がある。繰り返し撮影し、映像データを加算することにより刺激の伝播を可視化することができる。
【0016】
このような場合、これまでは同じ現象を多数回繰り返し撮影し、各回の撮影の都度画像信号を撮像素子外に読み出し、ADコンバータでデジタル化し、外部のメモリー(バッファメモリー)に記録して、加算していた。これにより、読み出し信号レベルSは加算回数に比例して増大する。ただし、読み出しの度ごとに読み出しノイズ(離散化ノイズ含む)も信号に加算される。しかし読み出しノイズのレベルNは加算回数の平方根に比例して増大するので、SN比は加算回数の平方根に比例して改善する。したがって1回の撮影実験では、信号レベルが読み出し雑音レベルに比べて十分大きくない場合でも、繰り返し実験により意味のある変化を、積算された信号から検出することができる。
【0017】
ビデオ撮影システムの最も大きなノイズ源は読み出しノイズである。とくに並列高速読み出しを使う通常の高速度ビデオカメラでは、撮影速度が速いほど読み出し速度も速くなり、読み出しノイズが高くなる。
【0018】
これに対して、CCDメモリーによる画素内映像信号積算方式を用い、冷却することにより、ほぼノイズレスで信号積算することができる。さらに、画素内映像信号積算方式では、読み出しノイズの介入はただ1度の読み出し時のみである。しかも撮影後、ゆっくりと読み出すことができるので、読み出しノイズは撮影速度に無関係に低くできる。これらの相乗効果で、CCDメモリーによる画素内積算するISASでは、高速連続読み出し素子に比べて、読み出しノイズを激減させることができ、SN比を劇的に改善することができる。
【0019】
このように、ISASはISISの一種であるが、映像信号積算機能という科学技術計測においては非常に有効な特徴を持つ。
【0020】
ただしSL−ISISの直線CCDメモリーは、これ以上単純化できない最も単純なCCDメモリー構造である。基本性能は単純な構造ほど良い。したがって映像信号積算機能が不要な場合にはSL−ISISはISASより優れている。
【0021】
SL−ISISとISASに共通の課題として、各画素に対して多数のメモリー要素を作り込むので、画素サイズが大きくなり、同じ受光面積に対しては、画素数が少なくなるという課題がある。1画素当たりに作り込むメモリー要素の数を減らせば画素サイズが小さくなるが連続撮影枚数が少なくなる。すなわち、画素数と連続撮影枚数が競合する。
【0022】
ISASでは、CCDを無理なく折りたたむ技術の開発が必要になる。2相駆動CCDであれば簡単に折り畳むことができる(非特許文献1参照)。しかし2相駆動CCDは取り扱い信号容量が低い。取り扱い信号容量の大きい4相駆動CCDでは、図3(a)に示すように、CCD上の隣接する駆動電極をチャンネルストップ111上で交差させることで、隣接するCCD上の転送方向を逆向きにすることができる。
【0023】
図3(a)では、4相駆動の4つの電極A1、A2、A3、A4(107から110)が示されている。チャンネルストップ111上でA1とA2、A3とA4を交差させると、転送方向が逆向きとなる。
【0024】
図1と図3の関係について補足する。図3は図1のCCDメモリー部の拡大図である。図1では1個のCCDメモリーエレメントが1個の小さな枠で示されている。4相駆動CCDの1エレメントは、チャンネル上の4個の連続する電極で構成される。したがって図1の1個のCCDエレメントは、図3の連続する4個の電極からなる。
【0025】
3相駆動でも、3つの電極のうち、隣り合う2つを交差させることで隣接するCCDの転送方向を逆向きにすることができる。
【0026】
また、図3(b)に示すように、隣接するCCD間のチャンネルストップ112を1電極分取り除いて水平の転送路113とし、その下に水平方向にチャンネルストップ114を置くとともに、このチャンネルストップ上で隣接する電極115、116を交差させることにより、CCDを折り曲げ、信号電荷を水平方向に転送して、下向きの転送方向のCCDから、上向きの転送方向のCCDに信号電荷の転送方向を180°転向させることができる。このようにしてCCDを無理なく折りたたむことができる。
【0027】
水平方向で見ると、チャンネルストップを挟んで上のCCDでは左向きに、下のCCDでは右向きに信号が転送される。すなわち水平方向にも逆方向の信号転送になっている。
【0028】
本発明との関係で重要な点を指摘する。図3(a)、図3(b)に示すISASの電極構造では、チャンネルストップ上で電極が交差しているので、この部分で上下に重なった2層の電極を用いなければならない。後術するが、この点を改善することが本発明の主目的である。
【0029】
最近は微細CMOS加工技術により、1層の多結晶シリコン(以後「ポリシリコン」と呼ぶ)のエッチングにより、0.2ミクロン程度のギャップを作り、電極を電気的に分離することによりCCDを作ることができる。ギャップの幅については最大0.4ミクロンが限界であることが示されている(非特許文献3)。
【0030】
【非特許文献3】P.R.Rao,X.Wang,A.J.P.Theuwissen,CCD structures implemented in standard 0.18μm CMOS technology,Electronics Letters,Vol.44,No.8,10 April 2008.
【0031】
ギャップの幅が0.2ミクロン程度以下であれば問題なく転送することができる。0.3ミクロン程度でもプロセスのばらつきが少なければ問題ない。また、もう少しデザインルールが大きい古いプロセスであって、ギャップが0.4ミクロン程度であっても、ギャップに適切な濃度の不純物をドープすることにより、ポテンシャルの凹部を浅くすることによりCCDを作ることができる。
【0032】
微細CMOSプロセスでは電極としてポリシリコンのかわりに金属ケイ化物(以後「シリサイド」と呼ぶ)を用いることが多いが、この場合も同様である。以下、ポリシリコン電極の場合を例として説明するが、シリサイドを用いる場合の説明も含んでいることにする。
【0033】
微細CMOSプロセスを使うことによりCCDメモリー要素のサイズを小さくし、同じ連続撮影枚数に対しては画素サイズを小さくすることができる。これにより画素数と連続撮影枚数の競合関係を緩和することができる。
【0034】
また機能性CMOS回路を撮像素子の受光面内、もしくは受光面外に作り込むことにより、純CCD撮像素子では作れない様々の機能、例えば列並列ADコンバータによる高速度読み出し機能等を持つ素子を作ることができる。
【0035】
ただし最近の微細CMOSプロセスでは、ポリシリコン層は1層である。その上に多くの金属層が乗る構造となっている。電極は加工が容易なポリシリコンで作ることが多い。図3の電極の交差部を作るには2層のポリシリコン層が必要である。ポリシリコン層が1層の微細CMOSプロセスで、図3の折り畳みCCDを作ることはできない。
【0036】
図1のISAS、図2のISISでは、各画素のメモリーだけでなく、撮影後の信号の読み出し時にも、垂直読み出しCCD117、118を使って信号を受光面外に置かれた水平読み出しCCD119、120に読み出し、さらに読み出しアンプ121、122まで転送している。CCDを使うとノイズは少ないが、信号を順次手渡しで送るので、受光面内の一番調べたい領域の信号だけを高速で読み出す等の柔軟な信号読み出し機能を作り込むことが難しい。
【0037】
最近のCMOS撮像素子では、各画素で得られた画像信号を、CMOS読み出しに付随するノイズレベル以上になるように増幅してから読み出し回路に転送することにより、低ノイズと柔軟な信号読み出しの両方を実現することができる。
【0038】
CCDを一切使わず、画素内メモリー部もCMOS構造とし、多数のキャパシタをメモリーとし、電荷収集ゲートからCMOSスイッチで画像信号を順次キャパシタに送る方法もある。CMOSキャパシタに信号を送るときにトランジスターで発生するノイズに対してSN比を上げるためには、信号を増幅してからキャパシタに送る必要がある。そうすると画素内メモリーとして使うキャパシタのサイズが大きくなる。したがって同じフレーム数(画素内メモリーエレメントの数)を確保しようとすれば、画素内メモリー領域のサイズが大きくなるので画素サイズが大きくなる。したがって画素内メモリーはCCDにする方が有利である。撮影後の信号の読み出し時には、信号は撮像素子外に読み出され、空間的に十分余裕のある外部のバッファメモリーに記録されるので、増幅してから読み出せば良い。
【0039】
CMOS読み出し回路については多くの書物で解説されている。またISASにおけるCCDメモリーとCMOS読み出し回路の配置については、非特許文献1にも例が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
既に述べてきたように、折り畳みCCDをメモリーとするISASには以下の課題がある。
【0041】
画素サイズが大きいので、画素数が一般の撮像素子に比べて小さくなる。また同じ受光面積に対しては、画素数を大きくすると連続撮影枚数が少なくなる。微細CMOSプロセスで画素内CCDメモリーを作るとこの課題はある程度緩和される。しかし信号転送容量の大きい3相駆動CCDや4相駆動CCDをメモリーとするISASを作るには、電極を交差させる必要があった。しかし微細CMOSプロセスでは微細加工が容易なポリシリコン層は1層しか提供されていないので、2層ポリシリコン電極を用いて電極を交差させることができない。
【0042】
以上より、微細CMOSプロセスで提供されている1層のポリシリコン(またはシリサイド)電極を用いて、電気的に見て実質的に電極が交差していることと同じ効果を持つ3相もしくは4相駆動の折り畳みCCDを作る技術を提供することが課題である。これにより、折り畳みCCDを画素内メモリーとするISASを微細CMOSプロセスで作ることができ、同じ受光面積に対しては、画素数が同じであれば連続撮影枚数を増加させることができ、同じ連続撮影枚数であれば画素数を増やすことができる。
【0043】
また読み出しをCMOS回路にすることができるので、CCDを画素内メモリーとし、読み出しをCMOS回路とする、低ノイズ(CCDメモリー)と柔軟な読み出し機能(CMOS読み出し)を備えた超高速度撮像素子を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0044】
電荷結合素子(以下CCDと呼ぶ)であって、チャンネルストップで隔てられて隣接する2本の転送路のそれぞれの上に、転送路の延在方向に0.4ミクロン以下の距離を隔てて配置されている2個の電極の組を少なくとも一組備え、該2個の電極のうち、第1の電極は、第2の転送路上では第1の転送路上で第2の電極が置かれている位置に置かれ、第2の電極は、第2の転送路上では第1の転送路上で第1の電極が置かれている位置に置かれており、かつ第1の電極はチャンネルストップ上で接続しており、一方、第2の電極は第1の電極の接続部により隔てられていることを特徴とするとともに、該第1の電極と第2の電極がともに絶縁層の直上に配置された第1の導電層からなることを特徴とするCCDにより、 微細LSIで一般的に使われている微細加工の容易なポリシリコン等からなる第1の導電層をエッチングするだけで、0.4ミクロン以下のギャップを持つ第1の電極と第2の電極を同時に作成することにより、2層のポリシリコン等を使うことなく電荷転送可能な滑らかな電位分布を持つCCDを作ることができ、第1電極と第2電極がチャンネルストップ上で交互に入れ替わる位置にある(いわゆる千鳥配置になっている)ことにより、隣接する転送路上ではCCDの転送方向が逆になっており、これによりCCDを無駄なスペースなく折りたたんで画素の中に配置し、こうして折りたたんで作成したメモリーCCDの始端と末端を接合することにより、撮像素子内で映像信号積算ができるので、再現性の高い現象に対して、微弱光下でも非常に高いSN比で撮影できる超高速映像信号積算素子を提供する。
【0055】
辺ABと辺DCが平行の平行四辺形ABCDと合同の平行四辺形A’B’C’D’を、平行四辺形ABCDの位置から、該2個の並行四辺形が重ならない位置までDからAに向かう方向に平行移動し、線分A’D’を延長した直線が辺ABと交点Eを持つという条件を満たす範囲でAからBに向かう方向に平行移動し、線分CBを延長した直線と辺D’C’の交点をE’とするとき、AEA’B’C’E’CDで囲まれる8辺形と類似の形状を持つ電極を少なくとも1個備えるCCDにより、
この電極を隣接する転送路と直角方向に重ならないように多数配置することにより、隣接する転送路上で電荷の転送方向が列または行ごとに交互に変わるCCDの電極配置に無駄がなくなり、電極密度を高くすることができ、これにより、より高画素の映像信号積算素子を提供する。
【0056】
この場合、各電極形状はステップ状になる。この場合、ステップの立ち上がり部分は垂直とは限らない。例えば負の角度であればZ型となる。またステップが立ち下がりであれば逆Z型となる。
【0057】
この技術を水平方向の転送に適用することにより、転送方向を180度に近い角度で転換することができる。
【0058】
さらに、各電極と、該電極に駆動電圧を送付するための上部の金属線とのコンタクトポイントがチャンネルストップ上に配置されていることを特徴とするCCDにより、
転送路上にコンタクトポイントを作ることによるダメージや、ショットキー効果による駆動電圧のシフトなどによる信号の不完全転送のリスクが減る。
【0059】
電極形状がステップ型であるので、立ち上がり、もしくは立ち下がり部をチャンネルストップと一致させ、水平部がチャンネル上になるように配置すると、立ち上がり部(立ち下がり部)にコンタクトポイントを置くことができる。
【0060】
さらに各電極と、該電極に駆動電圧を送付するための上部の金属線とのコンタクトポイントが、電極1個につき2個以上配置されていることを特徴とするCCDにより、コンタクト不良の確率が無視できる程度に小さい素子を提供する。
【0061】
通常の電極形状のように、水平の1枚の電極があり、これとチャンネルストップの交点にコンタクトポイントを作る場合は、1個の交点に2個のコンタクトポイントを作ることは難しい。本発明の場合は、ステップ型の電極の、縦に長い立ち上がり部(立ち下がり部)にコンタクトポイントを作るので、2個のコンタクトポイントを作るのは容易である。
【0062】
該電極は通常多結晶シリコンまたは金属ケイ化物からなる。
【0063】
さらに、受光面外部から電極に駆動電圧を送付する金属線が、CCDピッチを周期とする周期的に屈曲する形状であることを特徴とするCCDにより、本発明の電極配置に対して、1層の金属配線で駆動電圧を送ることができる。
【0064】
本発明の撮像素子を備える撮影装置により、再現性の強い現象に対し、非常に弱い照明条件でも超高速連続撮影でき、かつ多画素の撮像素子、およびこれを用いた高速撮影装置を提供する。
【実施例】
【第1実施例】
【0065】
CCDの駆動原理については多くの書物で解説されているのでここでの説明は割愛する。またCCDをメモリーとするISISやISASの駆動方法等は特許文献1等で詳述している。したがって本実施例の説明では、本特許の新規性を示すための折り畳みCCDの電極構造、配線構造について説明する。
【0066】
本発明のISASの第1実施例の平面図を図4〜図10に示す。本実施例のメモリーCCDは4相駆動である。これらの図は、図1のISASの平面図におけるCCDメモリー領域のみを拡大して示している。
【0067】
まず通常の撮像素子プロセスと同様に、基盤への注入によりp−wellを作り、その中にCCDチャンネル、チャンネルストップを形成する。図4はこうして作ったチャンネル124とチャンネルストップ125である。
【0068】
その後、基盤表面の酸化により絶縁膜を作り、その上にポリシリコン層を載せる。これをエッチングして図5に示す電極を作る。こうして1層のポリシリコンで4層駆動のための4種類の電極A1、A2、A3、A4(107、108、109、110)を作る。この場合、各電極は逆Z字状である。図5にはコンタクトポイント126も示されている。以下、詳しく説明する。
【0069】
図6は図4、図5のCCDメモリーのうち、画素の中央の水平チャンネルストップ127に沿う方向転換部のチャンネルとチャンネルストップの拡大図である。
【0070】
この上に図7の電極が乗る。図6と図7を重ねて示したものが図8である。このようにすると、一層のポリシリコン電極で図3(b)に示す転送方向転換を実現できる。
【0071】
各電極の左辺(上辺)と右辺(下辺)を結ぶ立ち下がり部128はチャンネルストップ125上に位置している。また幅の狭い横長の長方形の通常のCCD電極と異なり、立ち上がり部の長さが長いので、この部分に縦に2個が1組になったコンタクトポイントを作った。
【0072】
ここで1本のチャンネルストップに注目すると、その上のコンタクトポイントは、2個を1組として、第1相駆動電極用129、第3相駆動電極用131、第1相駆動電極用、第3相駆動電極用というように交互に並んでいる。隣のチャンネルストップ上では、第2相駆動電極用130、第4相駆動電極用132、第2相駆動電極用、第4相駆動電極用というように交互に並んでいる。
【0073】
これらのコンタクトポイントを通して、金属バスラインから受光面内の電極に駆動電圧を送付する。コンタクトポイントが交互に並んでいるために、図9、図10に示す第1相から第4相までのA1、A2、A3、A4電極の駆動電圧送付用の金属バスライン133、134、135、136は、CCDピッチを周期として屈曲、または波状になっている。この形状は一見複雑に見えるが、このことにより、1層の金属配線により4相全ての駆動電圧を送ることができる。
【0074】
また金属バスラインは1層で良いので、上層の金属層は、金属バスラインに低抵抗で駆動電圧を送るための太いバスラインや、各画素からの信号読み出しのための金属配線等に当てることができる。
【第2実施例】
【0075】
図11〜図14の電極構造は、3相駆動CCDでCCDメモリー部を作った場合を示している。この場合第1電極のコンタクトポイント139をチャンネル上に置いた。これにより、チャンネルへのダメージおよびショットキー効果による駆動電圧のバイアスのリスクはあるが、金属配線構造は単純化できる。
【0076】
第1相電極142がZ型ではなく、通常の幅の狭い長方形であるので、縦方向にはコンタクトポイント139を1個しか作れない。しかし第2相電極140と第3相電極142が切れ切れになっているのに対し、第1相電極は横につながっているので、飛び飛びに多数のコンタクトポイントを持っている。したがってコンタクトポイントがつながらないリスクはない。
【0077】
図14に示すように金属配線142、143、144が1層で全て直線になっていることは歩留まり率を上げる上で大きな効果がある。
【その他の実施例】
【0078】
本発明の電極と金属線の配置については他にも様々な配置がある。たとえば金属バスラインは水平方向に配置しても良い。
【0079】
1組の電極の一方が連続ステップ型(パルス型)で、他の一方が、チャンネル上だけに置かれた切れ切れの台形電極でも良い。この場合は、切れ切れの電極の方は、金属層でブリッジして電気的に接合する必要がある。この場合は、ポリシリコン層は1層だけであるが、ブリッジのための層と、駆動電圧を送るための層と併せて、最低2層の金属層が必要である。
【0080】
また2層の金属層によるバスラインから電極に駆動電圧を送る場合は、上層の金属層からは、下層の金属配線の間を縫って、しかも下層の金属層を利用して駆動電圧を送る必要がある。したがって立体構造が複雑になるとともに、上層の金属層から駆動電圧を受ける電極と、下層の金属層から駆動電圧を受ける電極との間の電気的バランスが悪くなる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】2行×2列の映像信号積算素子(ISAS)の画素
【図2】3行×3列の斜行直線画素周辺記録型撮像素子(ISIS)
【図3】転送方向転換のための交差する電極ペアを持つ4相駆動CCD
【図4】ISASの1画素のCCDメモリー部のチャンネルとチャンネルストップ(4相駆動)
【図5】ISASの1画素のCCDメモリー部の電極形状と配置(4相駆動)
【図6】CCDメモリー部のチャンネルとチャンネルストップの拡大図(4相駆動)
【図7】CCDメモリー部の電極とコンタクトポイント(4相駆動)
【図8】CCDメモリー部のチャンネル、チャンネルストップ、電極とコンタクトポイント(4相駆動)
【図9】CCDメモリー部の金属バスライン(4相駆動)
【図10】CCDメモリー部の電極、コンタクトポイントと金属配線(4相駆動)
【図11】CCDメモリー部のチャンネルとチャンネルストップの拡大図(3相駆動)
【図12】CCDメモリー部の電極とコンタクトポイント(3相駆動)
【図13】CCDメモリー部のチャンネル、チャンネルストップ、電極とコンタクトポイント(3相駆動)
【図14】CCDメモリー部の電極、コンタクトポイントと金属配線(3相駆動)
【符号の説明】
【0082】
100 ISASの画素
101 電荷収集ゲート
102 インプットゲート
103 CCDメモリー
104 CCDメモリーの始端(インプットゲートに隣接するCCDエレメント)
105 CCDメモリーの末端
106 斜行直線CCD
107、108、109、110 4相駆動CCDの4つの電極A1、A2、A3、A4
111、112 チャンネルストップ
113 CCDの方向転換のための局所水平転送路
114 水平のチャンネルストップ
115、116 交差する電極
117、118 垂直読み出しCCD
119、120 水平読み出しCCD
121、122 読み出しアンプ
123 ISASのCCDメモリー領域
124 チャンネル
125 チャンネルストップ
126 コンタクトポイント
127 画素の中央の水平チャンネルストップ
128 Z型電極の立ち上がり部(上辺と下辺の繋ぎ部分)
129、130、131、132 第1、第2、第3、第4相駆動電極のためのコンタクトポイント
133、134、135、136 第1、第2、第3、第4相駆動電圧送付のための金属バスライン
138 3相駆動CCDでメモリー部を作る場合の第1相電極のコンタクト
140、141、142 3相駆動CCDでメモリー部を作る場合の第1、第2、第3相電極
143、144、145 3相駆動CCDでメモリー部を作る場合の第1、第2、第3相金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷結合素子(以下CCDと呼ぶ)であって、チャンネルストップで隔てられて隣接する2本の転送路のそれぞれの上に、転送路の延在方向に0.4ミクロン以下の距離を隔てて配置されている2個の電極の組を少なくとも一組備え、該2個の電極のうち、第1の電極は、第2の転送路上では第1の転送路上で第2の電極が置かれている位置に置かれ、第2の電極は、第2の転送路上では第1の転送路上で第1の電極が置かれている位置に置かれており、かつ第1の電極はチャンネルストップ上で接続しており、一方、第2の電極は第1の電極の接続部により隔てられていることを特徴とするとともに、該第1の電極と第2の電極がともに絶縁層の直上に配置された第1の導電層からなることを特徴とするCCD。
【請求項2】
辺ABと辺DCが平行の平行四辺形ABCDと合同の平行四辺形A’B’C’D’を、平行四辺形ABCDの位置から、該2個の並行四辺形が重ならない位置までDからAに向かう方向に平行移動し、線分A’D’を延長した直線がABと交点Eを持つという条件を満たす範囲でAからBに向かう方向に平行移動し、線分CBを延長した直線と辺D’C’の交点をE’とするとき、AEA’B’C’E’CDで囲まれる8辺形と類似の形状を持つ電極を少なくとも1個備えるCCD。
【請求項3】
請求項2のCCDであって、各電極と、該電極に駆動電圧を送付するための上部の金属線とのコンタクトポイントがチャンネルストップ上に配置されていることを特徴とするCCD。
【請求項4】
請求項2のCCDであって、各電極と、該電極に駆動電圧を送付するための上部の金属線とのコンタクトポイントが、電極1個につき2個以上配置されていることを特徴とするCCD。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかを満たすCCDであって、該電極が多結晶シリコンまたは金属ケイ化物からなることを特徴とするCCD。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかを満たすCCDであって、180度に近い角度で屈曲する部分を備えるCCD。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかを満たすCCDであって、受光面外部から電極に駆動電圧を送付する金属線が、CCDピッチを周期とする周期的に屈曲する形状であることを特徴とするCCD。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかを満たすCCDであって、先端と末端が接合していることを特徴とするCCD。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかのCCDを備える撮像素子。
【請求項10】
請求項9の撮像素子を備える撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−258906(P2011−258906A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146856(P2010−146856)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(390005164)株式会社フォトロン (18)
【Fターム(参考)】