説明

索条の往復移動装置

【課題】 構造が簡単で、組付作業を楽に行うことができるとともに、いかなる場合にも、索条が正規のルートから脱落することがないようにした索条の往復移動装置を提供する。
【解決手段】 巻取ドラム9を枢着した基板7に、テンショナケース30を巻取ドラム9に近接させて着脱可能に装着し、テンショナケース30に、巻取ドラム9より互いに逆方向に延出する両索条15a、15bにそれぞれ圧接する1対のテンションローラ16、17と、各テンションローラを軸着したローラホルダ43とを、それぞれ緊張時の索条15a、15bとほぼ直交する方向に移動可能として装着するとともに、各テンションローラ16、17が索条15a、15bに圧接する方向に各ローラホルダ43を付勢する付勢手段49を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のスライドドア、サンルーフ、カーテン、窓ガラス等の移動部材を往復移動させるのに用いられる索条の往復移動装置、特にその索条用のテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスライドドアの開閉装置には、車体の側面パネルの前後部に配設した1対のガイド部材にワイヤ等の索条を掛け回し、その索条の両端末部を、両ガイド部材間において車体の側面パネルに装着した巻取ドラムに、互いに逆方向から巻き取るようにし、この巻取ドラムを、モータ等の駆動手段により、正逆回転させることにより、索条を往復回走させて、索条の中間部に止着したスライドドアを往復移動させるようにした索条の往復移動装置を用いたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような索条の往復移動装置においては、巻取ドラムを正逆回転させるとき、索条の巻き取られる方の端部は緊張し、逆に繰り出される方の端部は弛み、ときにはたるみを生じることがある。このようなたるみが生じると、そのたるんだ部分が案内手段から外れ、以後作動不能となることがある。
【0004】
このようなたるみを防止するため、上述の従来の装置においては、巻取ドラムの両側方において、索条にそれぞれテンションローラを圧接し、各テンションローラを、それぞれ別個の引張コイルばねをもって、索条と直交する方向に付勢するようにした索条用のテンショナが設けられている。
【特許文献1】特開平11−91355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来のテンショナは、1対のテンションローラと、それを付勢する引張コイルばねとを、巻取ドラムの両側方にそれぞれ別個に装着していたので、部品点数が多くなるだけでなく、組付作業工数が多くなるという問題がある。
【0006】
また、従来の装置においては、索条が、テンションローラの移動範囲を越えてたるんだ場合、そのたるんだ部分が案内手段等から外れ、以後作動不能となることがある。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、構造が簡単で、組付作業を楽に行うことができるとともに、いかなる場合にも、索条が正規のルートから脱落することがないようにした索条の往復移動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 1対のガイド部材に掛け回された索条を、前記両ガイド部材間に配設した巻取ドラムに、互いに逆方向から巻き取るようにし、前記巻取ドラムを一方向およびその逆方向に回転させることにより、前記索条を往復回走させて、索条に止着した移動部材を往復移動させるようにした索条の往復移動装置において、前記巻取ドラムより互いに逆方向に延出する索条の各部分にそれぞれ圧接する1対のテンションローラと、各テンションローラを軸着したローラホルダとを、それぞれ緊張時の索条とほぼ直交する方向に移動可能として装着するとともに、各テンションローラが索条に圧接する方向に各ローラホルダを付勢する付勢手段を設けたテンショナケースを、前記巻取ドラムを枢着した基板に、前記巻取ドラムに近接させて装着する。
【0009】
(2) 上記(1)項において、テンショナケースが、互いに対向するテンショナボディとテンショナカバーとを備えるものとし、それらの間に1対のテンションローラとローラホルダとを挟むとともに、それらの対向部に、緊張時の索条とほぼ直交する方向を向き、かつ各ローラホルダが同方向に摺動自在に嵌合された1対のガイド溝を設ける。
【0010】
(3) 上記(2)項において、巻取ドラムの両側方におけるテンショナボディとテンショナカバーとの両側部下縁間の空間を、テンショナボディの下縁よりテンショナカバーの下縁に向かって延出する底片により閉塞し、各ローラホルダがほぼ上下方向を向くガイド溝の下限位置に達したときの各テンションローラの両端の鍔部の外周と前記底片との間隙を、索条の線径より小とする。
【0011】
(4) 上記(3)項において、各底片の巻取ドラム側の端部を、巻取ドラムの外周面に近接させる。
【0012】
(5) 上記(3)または(4)項において、テンショナボディの内面における各ガイド溝の周縁に、該ガイド溝を囲む長円形リブを突設するとともに、該リブの下端から底片に至る縦リブを設け、該縦リブと各テンションローラとの間隙を、索条の線径より小とする。
【0013】
(6) 上記(2)〜(5)項のいずれかにおいて、テンショナカバーの外面に、巻取ドラムを覆うドラムカバーの一部を当接し、ドラムカバーとテンショナカバーとテンショナボディとを締着手段により共締めする。
【0014】
(7) 上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、テンショナケース内に、巻取ドラムの外周面に近接し、両索条の繰り出し開始部分を押さえる押え部材を設ける。
【0015】
(8) 上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、テンショナケース内における両ローラホルダの中間位置に、付勢手段であるねじりコイルばねにおける巻回部を枢支させ、該ねじりコイルばねにおける前記巻回部より両側方に延出する線材端末延出部を、前記両ローラホルダにほぼ同方向より当接させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a) 請求項1記載の発明によると、予め1対のテンションローラと付勢手段とを組み付けておいたテンショナケースを、巻取ドラムに近接させて基板に装着するだけで、1対のテンションローラを巻取ドラムに対する最適位置に簡単に取付けることができるので、組付作業を楽に行うことができるとともに、両テンションローラの取付位置のばらつきを防止し、索条に安定して張力を付与することができる。
【0017】
(b) 請求項2記載の発明によると、1対のテンションローラとローラホルダとを、テンショナボディとテンショナカバーとの間に挟んで保持するようにしたので、基板へのテンショナケースの組み付けが極めて容易であり、また構造を簡素化することができる。また、テンショナボディとテンショナカバーとの対向部に、1対のガイド溝を設け、これに各ローラホルダを摺動自在に嵌合することにより、より安定して、索条に張力を付与することができる。
【0018】
(c) 請求項3記載の発明によると、万一、索条がテンションローラの移動範囲を越えてたるんだ場合でも、そのたるんだ部分がテンションローラの両端の鍔部の外周と底片との間隙から外側に脱落することはなく、索条の脱落による作動不良のおそれをなくすことができる。
【0019】
(d) 請求項4記載の発明によると、索条の張力が解けた状態において、巻取ドラムの外周面から索条が脱落するのを確実に防止することができる。
【0020】
(e) 請求項5記載の発明によると、長円形リブにより、テンショナボディを補強して、ローラホルダを安定して案内することができるとともに、縦リブを設けたことにより、各テンションローラとテンショナボディとの間に索条が進入するのを確実に防止することができる。
【0021】
(f) 請求項6記載の発明によると、基板へのテンショナケースおよびドラムカバーの取付作業工数を低減することができる。
【0022】
(g) 請求項7記載の発明によると、索条の巻取部分以外の部分の配索時等に、巻取ドラムにおける索条の繰り出し開始部分を押え部材により押さえておくことができるので、作業性が向上する。また、作動時には、索条の繰り出し開始部分が巻取ドラムの外周から浮き上がるのが押え部材により阻止され、索条が巻取ドラムから脱落するのが効果的に防止される。
【0023】
(h) 請求項8記載の発明によると、単一のねじりコイルばねで、2個のテンションローラを効率よく付勢することができるので、部品点数を削減できるだけでなく、巻取ドラムの回転抵抗を軽減することができる。
すなわち、巻取ドラムをいずれの方向に回転させる場合にも、互いに逆方向から巻取ドラムに巻き取られている索条の一方の巻取側が緊張し、他方の繰り出し側が弛み、その繰り出し側のテンションローラが、ねじりコイルばねの一方の線材端末延出部により押動させられることにより、ねじりコイルばねがねじ戻されて、他方の巻取側のテンションローラを付勢する線材端末延出部の付勢力が弱められ、結果的に、巻取ドラムの回転抵抗が軽減される。
巻取ドラムの回転抵抗が軽減されることにより、巻取ドラムの駆動手段に掛かる負荷が軽減し、巻取ドラムを回転させるモータ等の駆動手段として、小出力の小型のものを使用することができるようになり、索条の往復移動装置全体の小型軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるスライドドアの開閉装置を装着した車両の左側面を示す斜視図である。
なお、車体の右側面におけるスライドドアに関しては、上記の構成と左右対称の同様の構成により開閉させるようにしてあるが、その図示および詳細な説明は省略する。
【0025】
図1に示すように、車体(1)の側面パネル(2)の中間部に設けた開口(3)を開閉するスライドドア(4)は、側面パネル(2)における開口(3)の上縁に設けたアッパーレール(図示略)、同じく下縁に設けたロアレール(図示略)、および側面パネル(2)の後部中位部に設けた前後方向(図1の左方が前方である)を向くウエストレール(5)により案内され、かつ開閉装置(6)により、開口(3)を閉塞する図1に示す全閉位置と、側面パネル(2)の外側面より若干外側方に移動しつつ、側面パネル(2)に沿って後方へ移動した全開位置(図示略)との間を移動可能となっている。
【0026】
図2は、開閉装置(6)の平面図、図3は、開閉装置(6)を車内側から見た側面図である。なお、図2および図3における右方向が前方、図2の上方が車外側、同じく図2の下方が車内側である。
図1〜図3に示すように、開閉装置(6)は、側面パネル(2)の車内側の面に固着した基板(7)に、左右方向を向く軸(8)をもって枢支した巻取ドラム(9)を、基板(7)に設けた正逆回転可能のモータ(10)により、減速機構(11)を介して、図3における時計方向である開方向、および図3における反時計方向である閉方向に回転させるようにしたドライブユニット(12)と、側面パネル(2)におけるウエストレール(5)の前後部に設けた1対のガイド部材(13)(14)と、スライドドア(4)の内面に一方の端末が止着され、そこから前方に延出して、前方のガイド部材(13)に平面視ほぼU字状に掛け回され、他方の端末部が巻取ドラム(9)の上部より反時計回りに巻き取られ、最終的に他方の端末が巻取ドラム(9)に止着されたワイヤまたはケーブル等からなる閉扉用の索条(15a)と、スライドドア(4)の内面に一方の端末が止着され、そこから後方に延出して、後方のガイド部材(14)に平面視ほぼU字状に掛け回され、他方の端末部が巻取ドラム(9)の上部より時計回りに巻き取られ、最終的に他方の端末が巻取ドラム(9)に止着された、索条(15a)と同様の開扉用の索条(15b)とを備えている。
【0027】
索条(15a)(15b)は、連続する1本の索条とし、その中間部をスライドドア(4)に止着するか、端末部をスライドドア(4)に止着し、巻取ドラム(9)に対する索条の巻数を増やし、巻取ドラム(9)に対して索条がずれないようにして実施してもよい。
この例では、開閉装置(6)が、索条(15a)(15b)を往復回走させて、索条(15a)(15b)に止着した移動部材であるスライドドア(4)を往復移動させるようにした、本発明の索条の往復移動装置をなしている。
【0028】
ドライブユニット(12)の基板(7)における巻取ドラム(9)の上方には、索条(15a)(15b)にテンションローラ(16)(17)を押圧させて、索条(15a)(15b)のたるみを防止するようにした索条のたるみ防止装置、すなわちテンショナ(18)が設けられている。
【0029】
このテンショナ(18)の構成を詳細に説明する前に、開閉装置(6)における他の構成と、開閉装置(6)全体の作用について簡単に説明すると、ガイド部材(13)(14)は、パッキン(19)(20)を介して側面パネル(2)に装着されたプーリホルダ(21)(22)と、各プーリホルダ(21)(22)に上下方向を向く軸(23)(24)をもって枢着され、かつ索条(15a)(15b)がほぼ半周に亘って掛け回されたガイドプーリ(25)(26)とからなっている。
【0030】
ドライブユニット(12)における基板(7)の周縁には、車内側を向く縁部(7a)が形成され、その縁部(7a)の複数箇所には、側面パネル(2)の車内側の面にねじ止めするための取付片(7b)が設けられている。なお、側面パネル(2)は、この例では、車外側のアウターパネル(図示略)と車外側のインナーパネル(図示略)との間に中空部を形成するようにした二重壁構造をなしている。
【0031】
基板(7)の後端部における上下の取付片(7b)(7b)間には、若干後方に傾斜して車内側を向く変形可能部(7c)を介して、後方を向くブラケット取付片(7d)が連設されている。このブラケット取付片(7d)には、前後方向を向く正面視コ字状のブラケット(27)の前端上下部に形成された取付片(27a)(27a)が、止めねじ(28)(28)をもって固着されている。
【0032】
ブラケット(27)の後端部には、後方のガイド部材(14)におけるプーリホルダ(22)が、ガイドプーリ(26)の軸(24)をもって枢着されている。
このガイド部材(14)におけるプーリホルダ(22)を、その索条(15b)の外側出口(22a)が、側面パネル(2)におけるアウターパネルに設けた開口(図示略)に望むようにし、かつプーリホルダ(22)がパッキン(20)を介してアウターパネルの車内側の面に圧接されるようにして、ブラケット(27)の後端上下部に形成された取付片(27b)(27b)を、アウターパネルの車内側の面に当接させて、ねじ止めすることにより、後方のガイド部材(14)を側面パネル(2)に簡単かつ確実に装着することができる。
【0033】
また、このとき、側面パネル(2)におけるインナーパネル(図示略)に取付けられた基板(7)と、アウターパネルにおける開口との位置関係に若干のばらつきがあったとしても、基板(7)における変形可能部(7c)が変形することにより、その変形可能部(7c)から後方に延出するブラケット取付片(7d)およびブラケット(27)により形成される延出部(29)が上下方向および左右方向に若干傾き、上記のばらつきを吸収して、いずれの場合にも、後方のガイド部材(14)を側面パネル(2)における正規の位置に簡単かつ確実に装着することができる。
【0034】
次に、開閉装置(6)の作用について説明する。
図1に示す閉扉状態において、図示を省略した車内側または車外側に設けた開扉操作スイッチを操作すると、モータ(10)が正転させられ、減速機構(11)を介して、巻取ドラム(9)が図3における時計方向である開方向に回転させられ、後方の索条(15b)が巻取ドラム(9)に巻き取られ、かつ前方の索条(15a)が巻取ドラム(9)から繰り出されて、両索条(15a)(15b)に止着されたスライドドア(4)が後方に向かって移動させられる。
スライドドア(4)が、予め定めた全開位置に達すると、図示および説明を省略した全開検出センサが作動し、モータ(10)の正転が停止させられ、スライドドア(4)は全開位置に保持される。
【0035】
スライドドア(4)が、全開位置または全開位置から全閉位置までの間の適宜の中間位置に停止している状態において、図示を省略した車内側または車外側に設けた閉扉操作スイッチを操作すると、モータ(10)が逆転させられ、減速機構(11)を介して、巻取ドラム(9)が図3における反時計方向である閉方向に回転させられ、この巻取ドラム(9)の閉方向の回転により、前方の索条(15a)が巻取ドラム(9)に巻き取られ、かつ後方の索条(15b)が巻取ドラム(9)から繰り出されて、両索条(15a)(15b)に止着されたスライドドア(4)は前方に向かって移動させられる。
スライドドア(4)が、全閉位置に達すると、図示および説明を省略したドアラッチにより全閉位置に係止されるとともに、全閉検出センサが作動し、モータ(10)の逆転が停止させられ、スライドドア(4)は全閉位置に保持される。
【0036】
次に、図3〜図10を参照して、テンショナ(18)について詳細に説明する。
図4は、テンショナの分解斜視図、図5は、開扉操作時のテンショナの状態を、テンショナカバーを外して示す側面図、図6は、閉扉操作時のテンショナの状態を、テンショナカバーを外して示す側面図、図7〜図10は、それぞれ図3におけるVII−VII、VIII−VIII、IX−IX、X−X線に沿う断面図である。
【0037】
図3〜図10、特に図4に明瞭に示すように、テンショナ(18)は、巻取ドラム(9)を枢着した基板(7)に、巻取ドラム(9)の上方に近接させて着脱可能に装着されたテンショナケース(30)を備えている。
テンショナケース(30)は、巻取ドラム(9)の上方を覆うように前後方向に延び、かつ互いに対向するテンショナボディ(31)とテンショナカバー(32)とを備えている。
【0038】
テンショナボディ(31)の中央部と前後の両側部とには、テンショナカバー(32)側を向くボス部(33)(34)(34)が設けられ、ボス部(33)(34)(34)の先端をテンショナカバー(32)の内面に当接させた状態で、前後のボス部(34)(34)とテンショナカバー(32)と基板(7)とを貫通するボルト(35)をもって、テンショナカバー(32)とテンショナボディ(31)と基板(7)とは、互いに締着されている(図3および図7参照)。
また、中央のボス部(33)の先端には、テンショナカバー(32)の中央部と、その外面に当接された、巻取ドラム(9)を覆うドラムカバー(36)の上部の取付片(36a)とが、ボルト(37)をもって共締めされている(図3および図8参照)。
【0039】
図4に示すように、テンショナボディ(31)とテンショナカバー(32)との両側部には、巻取ドラム(9)より前後両方向に延出する緊張時の索条(15a)(15b)とほぼ直交する方向を向くガイド溝(38)(38)がそれぞれ設けられている。
テンショナボディ(31)側のガイド溝(38)は、テンショナボディ(31)の内面に、緊張時の索条(15a)(15b)とほぼ直交する方向を向き、かつ車内側に向かって突出する長円形リブ(39)を設けることにより、その内側に形成されている。
また、テンショナカバー(32)側のガイド溝(38)は、テンショナカバー(32)の両側部に、緊張時の索条(15a)(15b)とほぼ直交する方向を向く長孔を設け、かつその長孔の周縁に車内側に向かって突出する長円形リブ(39)を設けることにより形成されている。
【0040】
テンショナボディ(31)における各ガイド溝(38)内の内側上部には、作業孔(40)が設けられている。この作業孔(40)は、両索条(15a)(15b)の端末をスライドドア(4)に止着する際に、後述するように各テンションローラ(16)(17)に、付勢手段であるねじりコイルばね(49)の付勢力が付与されていると、その止着作業が困難になるので、各テンションローラ(16)(17)を、それらを挿通する治具(図示略)をもって、ガイド溝(38)の上部に仮保持しておくためのものである。
【0041】
テンショナボディ(31)の前後部の下縁には、テンショナカバー(32)側に向かって延出するとともに、巻取ドラム(9)より前後両方向に延出する索条(15a)(15b)を、最もたるんだ状態(付勢手段により、付勢力が付与された状態)で受支する底片(41)(41)が設けられている。
テンショナボディ(31)の内面には、各長円形リブ(39)の下端から底片(41)に至る縦リブ(42)を設け、図9に示すように、この縦リブ(42)と各テンションローラ(16)(17)との間隙を、索条(15a)(15b)の線径より小とすることにより、各テンションローラ(16)(17)とテンショナボディ(31)との間に、索条(15a)(15b)が進入するのを確実に防止するようにしてある。
【0042】
テンショナボディ(31)とテンショナカバー(32)との互いに対向するガイド溝(38)(38)には、正面形がほぼ下向きコ字状をなすローラホルダ(43)の両側片(44)(44)の外側面に設けられた、突部である上下1対ずつのボス(45)(45)がほぼ上下方向に摺動自在に嵌合されている。
【0043】
各ローラホルダ(43)における両側片(44)(44)の上端部同士を連結する連結片(46)の上面は、山形断面形状のばね当接部をなし、かつその稜線部には、図9に示すように、上縁が中央に向かって下向き傾斜する1対の三角形状のリブ(47)(47)が設けられ、稜線部は前後方向から見て中央部が凹入するV溝状をなしている。
各ローラホルダ(43)内には、テンションローラ(16)(17)が、両側片(44)(44)における下方のボス(45)(45)を貫通する軸(48)をもって、回転自在に嵌合されている。
【0044】
図4および図9に示すように、各底片(41)の巻取ドラム(9)側の端部を、巻取ドラム(9)の外周面に近接させるとともに、各ローラホルダ(43)がほぼ上下方向を向くガイド溝(38)(38)の下限位置に達したときの各テンションローラ(16)(17)の両端の鍔部(16a)(16a)(17a)(17a)(図4参照)の外周と底片(41)との間隙(d)を、索条(15a)(15b)の線径より小とすることにより、索条(15a)(15b)が異常にゆるんだ場合でも、テンションローラ(16)(17)から脱落しないようにしてある。
【0045】
テンショナボディ(31)における中央のボス部(33)には、両テンションローラ(16)(17)を同時に付勢する付勢手段をなすねじりコイルばね(49)における線材を巻回して形成した巻回部(49a)が回転自在に外嵌されている。ねじりコイルばね(49)における巻回部(49a)より前後両側方に延出する線材端末延出部(49b)(49c)は、前後の両ローラホルダ(43)(43)における連結片(46)の上面中央に、いずれも上方より当接されている。
【0046】
図10に示すように、ねじりコイルばね(49)における両線材端末延出部(49b)(49c)の基部は、先端部が巻回部(49a)の中心軸線と直交する同一平面内に位置するように、巻回部(49a)の外端部から漸次中央に寄るように折曲されている。
また、テンショナボディ(31)における中央のボス部(33)から前後のガイド溝(38)(38)までの距離をほぼ等しくするとともに、ねじりコイルばね(49)の両線材端末延出部(49b)(49c)における巻回部(49a)から両ローラホルダ(43)への当接部までの長さをほぼ同一としてある。
このような構成としたことにより、ねじりコイルばね(49)の付勢力は、両線材端末延出部(49b)(49c)からローラホルダ(43)を介して、両テンションローラ(16)(17)に安定して作用し、両テンションローラ(16)(17)をバランスよく下方に向けて付勢することができる。
【0047】
図3〜図6、および図8に示すように、テンショナボディ(31)の内面における巻取ドラム(9)の直上には、巻取ドラム(9)の外周面に近接し、両索条(15a)(15b)の繰り出し開始部分を押さえる押え部材(50)が、一体的に形成されている。この押え部材(50)の下面は、側面視凸形の湾曲面をなしている。
【0048】
押え部材(50)の先端面には、突起(51)が突設されており、これをドラムカバー(36)の上部の取付片(36a)に設けた係合孔(52)に嵌合することにより、押え部材(50)を安定して両持ち支持することができる。
巻取ドラム(9)とテンショナケース(30)との位置決めは、基板(7)に設けた孔(7e)に、巻取ドラム(9)の軸(8)を嵌合し(図8参照)、かつ基板(7)に設けた孔(7f)に、テンショナボディ(31)に設けた突起(53)を嵌合し(図7参照)、さらに、押え部材(50)の突起(51)を、ドラムカバー(36)の上部の取付片(36a)に設けた若干上下方向に長い長孔とした上記係合孔(52)に嵌合することにより果たされている。
なお、押え部材(50)は、テンショナボディ(31)とテンショナカバー(32)またはドラムカバー(36)との間に、左右方向を向く軸をもって枢着して支持してもよい。
【0049】
テンショナ(18)を上記のような構成としたことにより、開扉操作時には、図5に示すように、巻取ドラム(9)の時計方向の回転により、開扉用の索条(15b)が緊張して、後部のテンションローラ(17)が、ねじりコイルばね(49)の付勢力に抗して持ち上げられ、逆に、巻取ドラム(9)から繰り出される閉扉用の索条(15a)はたるんで、前部のテンションローラ(16)は、ねじりコイルばね(49)の付勢力により、押し下げられる。
【0050】
閉扉操作時には、図6に示すように、巻取ドラム(9)の反時計方向の回転により、閉扉用の索条(15a)が緊張して、前部のテンションローラ(16)が、ねじりコイルばね(49)の付勢力に抗して持ち上げられ、逆に、巻取ドラム(9)から繰り出される開扉用の索条(15b)はたるんで、後部のテンションローラ(17)は、ねじりコイルばね(49)の付勢力により、押し下げられる。
【0051】
図5と図6とを比較するとわかるように、開扉操作時と閉扉操作時とにおいて、前後のテンションローラ(16)(17)の上下位置が交互に変わるものの、ねじりコイルばね(49)における両線材端末延出部(49b)(49c)の相互の角度はほとんど変わることがない。したがって、索条(15a)(15b)に対するテンションローラ(16)(17)の付勢力を、開扉操作時と閉扉操作時とにおいてほぼ均等に保つことができる。
【0052】
以上から明らかなように、本発明によると、予め1対のテンションローラ(16)(17)と付勢手段とを組み付けておいたテンショナケース(30)を、巻取ドラム(9)に近接させて基板(7)に装着するだけで、1対のテンションローラ(16)(17)を巻取ドラム(9)に対する最適位置に簡単に取付けることができるので、組付作業を楽に行うことができるとともに、両テンションローラ(16)(17)の取付位置のばらつきを防止し、索条(15a)(15b)に安定して張力を付与することができる。
また、各請求項に記載した構成により、発明の効果として上述したような特有の効果を奏することができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、幾多の変形した態様での実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両のスライドドアの開閉装置だけでなく、索条の両端末部を巻取ドラムに互いに逆方向から巻き取るようにし、巻取ドラムを回転させることにより、索条を往復回走させて、索条に止着した移動部材を往復移動させるようにしたあらゆる種類の索条の往復移動装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態であるスライドドアの開閉装置を装着した車両の左側面を示す斜視図である。
【図2】同じく、開閉装置のみの平面図である。
【図3】同じく、開閉装置のみを車内側から見た側面図である。
【図4】同じく、テンショナの分解斜視図である。
【図5】同じく、開扉操作時のテンショナの状態を、テンショナカバーを外して示す側面図である。
【図6】同じく、閉扉操作時のテンショナの状態を、テンショナカバーを外して示す側面図である。
【図7】図3におけるVII−VII線に沿う部分拡大端面図である。
【図8】図3におけるVIII−VIII線に沿う部分拡大端面図である。
【図9】図3におけるIX−IX線に沿う部分拡大端面図である。
【図10】図3におけるX−X線に沿う部分拡大端面図である。
【符号の説明】
【0056】
(1)車体
(2)側面パネル
(3)開口
(4)スライドドア(移動部材)
(5)ウエストレール
(6)開閉装置(索条の往復移動装置)
(7)基板
(7a)縁部
(7b)取付片
(7c)変形可能部
(7d)ブラケット取付片
(7e)(7f)孔
(8)軸
(9)巻取ドラム
(10)モータ
(11)減速機構
(12)ドライブユニット
(13)(14)ガイド部材
(15a)(15b)索条
(16)(17)テンションローラ
(16a)(17a)鍔部
(18)テンショナ
(19)(20)パッキン
(21)(22)プーリホルダ
(22a)外側出口
(23)(24)軸
(25)(26)ガイドプーリ
(27)ブラケット
(27a)(27b)取付片
(28)止めねじ
(29)延出部
(30)テンショナケース
(31)テンショナボディ
(32)テンショナカバー
(33)(34)ボス部
(35)ボルト
(36)ドラムカバー
(36a)取付片
(37)ボルト
(38)ガイド溝
(39)長円形リブ
(40)作業孔
(41)底片
(42)縦リブ
(43)ローラホルダ
(44)側片
(45)ボス
(46)連結片
(47)リブ
(48)軸
(49)ねじりコイルばね(付勢手段)
(49a)巻回部
(49b)(49c)線材端末延出部
(50)押え部材
(51)突起
(52)係合孔
(53)突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のガイド部材に掛け回された索条を、前記両ガイド部材間に配設した巻取ドラムに、互いに逆方向から巻き取るようにし、前記巻取ドラムを一方向およびその逆方向に回転させることにより、前記索条を往復回走させて、索条に止着した移動部材を往復移動させるようにした索条の往復移動装置において、
前記巻取ドラムより互いに逆方向に延出する索条の各部分にそれぞれ圧接する1対のテンションローラと、各テンションローラを軸着したローラホルダとを、それぞれ緊張時の索条とほぼ直交する方向に移動可能として装着するとともに、各テンションローラが索条に圧接する方向に各ローラホルダを付勢する付勢手段を設けたテンショナケースを、前記巻取ドラムを枢着した基板に、前記巻取ドラムに近接させて装着したことを特徴とする索条の往復移動装置。
【請求項2】
テンショナケースが、互いに対向するテンショナボディとテンショナカバーとを備え、それらの間に1対のテンションローラとローラホルダとを挟むとともに、それらの対向部に、緊張時の索条とほぼ直交する方向を向き、かつ各ローラホルダが同方向に摺動自在に嵌合された1対のガイド溝を設けた請求項1記載の索条の往復移動装置。
【請求項3】
巻取ドラムの両側方におけるテンショナボディとテンショナカバーとの両側部下縁間の空間を、テンショナボディの下縁よりテンショナカバーの下縁に向かって延出する底片により閉塞し、各ローラホルダがほぼ上下方向を向くガイド溝の下限位置に達したときの各テンションローラの両端の鍔部の外周と前記底片との間隙を、索条の線径より小とした請求項2記載の索条の往復移動装置。
【請求項4】
各底片の巻取ドラム側の端部を、巻取ドラムの外周面に近接させた請求項3記載の索条の往復移動装置。
【請求項5】
テンショナボディの内面における各ガイド溝の周縁に、該ガイド溝を囲む長円形リブを突設するとともに、該リブの下端から底片に至る縦リブを設け、該縦リブと各テンションローラとの間隙を、索条の線径より小とした請求項3または4記載の索条の往復移動装置。
【請求項6】
テンショナカバーの外面に、巻取ドラムを覆うドラムカバーの一部を当接し、ドラムカバーとテンショナカバーとテンショナボディとを締着手段により共締めした請求項2〜5のいずれかに記載の索条の往復移動装置。
【請求項7】
テンショナケース内に、巻取ドラムの外周面に近接し、両索条の繰り出し開始部分を押さえる押え部材を設けた請求項1〜6のいずれかに記載の索条の往復移動装置。
【請求項8】
テンショナケース内における両ローラホルダの中間位置に、付勢手段であるねじりコイルばねにおける巻回部を枢支させ、該ねじりコイルばねにおける前記巻回部より両側方に延出する線材端末延出部を、前記両ローラホルダにほぼ同方向より当接させた請求項1〜7のいずれかに記載の索条の往復移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−83531(P2006−83531A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266795(P2004−266795)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000148896)株式会社大井製作所 (127)
【Fターム(参考)】