説明

紫外線硬化性樹脂組成物、当該硬化物、およびこれらから誘導される各種物品

【課題】紫外線によって容易に硬化し、低収縮性のため厚膜硬化が可能であり、しかも耐熱性、耐薬品性、表面硬度などの諸特性を満足しうる硬化物を実現するための紫外線硬化性樹脂組成物、および当該組成物から得られる硬化物を提供する。
【解決手段】一般式(1):
1Si(OR23 (1)
(式中、R1は少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、または少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)、ならびに炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)を含有することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物、当該組成物を紫外線硬化させて得られる硬化物、およびこれらから誘導される各種物品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル基、メタクリル基、アリル基、ビニル基等の炭素−炭素2重結合を持つ化合物は、重合開始剤の存在下に活性エネルギー線によって重合しうるため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として様々な分野で用いられている。しかしながら、薄膜で塗工すると硬化時に酸素による重合阻害が起こるため、硬化が不充分となり所望の性能が得られ難く、また硬化収縮が大きいため反りやクラックが発生しやすいことから厚膜硬化に適さないなどの問題点がある。
【0003】
これに対し、炭素−炭素2重結合を有する化合物とチオール基を有する化合物との反応(エン−チオール反応)は、重合開始剤の有無にかかわらず紫外線照射により進行すること、酸素による反応阻害を受けないこと、硬化収縮が小さいなどの利点がある。この反応を利用した硬化方法や硬化物に関しては、一分子中に炭素−炭素2重結合およびチオール基を有する不飽和チオール化合物の使用(例えば、特許文献1参照)や、一分子中に炭素−炭素2重結合を複数有する化合物とチオール基を複数有する化合物とからなる樹脂組成物(例えば、特許文献2〜5参照)などが提案されている。
【0004】
一方、有機材料の特性を一層向上させる手段として、有機材料に無機材料を複合化させることにより、無機材料の特性である高い耐熱性、耐薬品性、高い表面硬度などを付与させた、いわゆる有機−無機ハイブリッド化技術が近年注目されている。エン−チオール反応を利用した紫外線硬化性樹脂組成物に関しては、炭素−炭素2重結合を有するシリコーンとチオール基を有するシリコーンとからなる組成物(例えば、特許文献6〜9参照)が知られている。しかしながら、特許文献6〜9に記載された方法では、用いる無機成分がシリコーン(室温ではゴム状態)であるため充分な耐熱性、表面硬度が得られない。
【0005】
【特許文献1】特開昭49−51333号公報
【特許文献2】特開昭49−54491号公報
【特許文献3】特開昭50−27836号公報
【特許文献4】特開昭53−134096号公報
【特許文献5】特開2003−295431号公報
【特許文献6】特開昭56−110731号公報
【特許文献7】特開昭60−110752号公報
【特許文献8】特開平05−320511号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/209972号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エン−チオール反応を利用した硬化物であって、紫外線によって容易に硬化し、低収縮性のため厚膜硬化が可能であり、しかも耐熱性、耐薬品性、表面硬度などの諸特性を満足しうる硬化物を実現するための紫外線硬化性樹脂組成物を提供すること、および当該組成物から得られる硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、チオール基含有アルコキシシラン類の加水分解縮合物と、炭素−炭素2重結合を有する化合物とからなる組成物、およびその紫外線硬化物によって上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1):
1Si(OR23 (1)
(式中、R1は少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、または少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)(以下、成分(A)という)、ならびに炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)(以下、成分(B)という)を必須成分として含有することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物に関する。また本発明は、当該組成物を紫外線によって硬化してなる硬化物に関する。さらに本発明は、これらから誘導される各種物品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エン−チオール反応による紫外線硬化性を活用するとともに、耐熱性、耐薬品性、表面硬度などの諸特性が改善された硬化物を提供しうる紫外線硬化性樹脂組成物を提供できる。また該紫外線硬化性樹脂組成物から得られる本発明の硬化物は、コーティング剤(導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板またはプリズムなどの用途)、接着剤(液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルターまたは光ディスク基板などの用途)、封止材(発光素子、受光素子、光電変換素子、または光伝送関連部品などの用途)などとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる成分(A)は、一般式(1):
1Si(OR23 (1)
(式中、R1は少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、または少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる化合物である。チオール基含有アルコキシシラン類(a1)(以下、成分(a1)という)の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,4−ジメルカプト−2−(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリエトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリブトキシシリル)ブタン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリブトキシシランなどがあげられ、該例示化合物はいずれか単独で、または適宜に組み合わせて使用できる。該例示化合物のうち、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランは、加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため特に好ましい。
【0011】
また、成分(a1)に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどのトリアルキルアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのテトラアルコキシジルコニウム類などの金属アルコキシド類(a2)(以下、成分(a2)という)を使用しうる。成分(a2)は、いずれか単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、トリアルキルアルコキシシラン類、ジアルキルジアルコキシシラン類、テトラアルコキシシラン類を用いることで、成分(A)の架橋密度を調整することができる。アルキルトリアルコキシシラン類を用いることで、成分(A)中に含まれるチオール基の量を調整することができる。テトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類を用いることで、最終的に得られる紫外線硬化物の屈折率を高くすることができる。
【0012】
成分(a1)と成分(a2)を併用する場合は、[成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数](モル比:1分子あたりに含まれるチオール基の平均個数を示す)が0.2以上であることが好ましい。0.2未満である場合、得られる成分(A)中に含まれるチオール基の数が少なくなるため、紫外線硬化性が低下するとともに、硬化物の硬度などの物性についての改善効果も不充分となる傾向がある。また、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数](モル比:1分子あたりに含まれるアルコキシ基の平均個数を示す)が2.5以上3.5以下であることが好ましく、2.7以上3.2以下であることがより好ましい。2.5未満の場合、得られる成分(A)の架橋密度が低く、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。また、3.5を超える場合、成分(A)を製造する際、ゲル化しやすくなる傾向がある。
【0013】
本発明に用いられる成分(A)は、成分(a1)単独やこれに成分(a2)を併用して、それらを加水分解後、縮合させて得ることができる。加水分解反応によって、成分(a1)や成分(a2)に含まれるアルコキシ基が水酸基となり、アルコールが副生する。加水分解反応に必要な水の量は、[加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)が0.4以上10以下であればよく、好ましくは1である。0.4未満の場合、成分(A)中に加水分解されずに残るアルコキシ基があるため好ましくない。また、10を超える場合、後に行う縮合反応(脱水反応)の際に除くべき水の量が多くなるため、経済的に不利である。
【0014】
また、成分(a2)としてテトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類等、特に加水分解性および縮合反応性の高い金属アルコキシド類を併用する場合には、急速に加水分解および縮合反応が進行し、系がゲル化してしまう場合がある。この場合、成分(a1)の加水分解反応を終了させ、実質的にすべての水が消費された状態にした後、該成分(a2)を添加することによって、ゲル化を避けることができる。
【0015】
加水分解反応に用いる触媒としては、特に限定はされず、従来公知の加水分解触媒を任意に用いることができる。これらのうちギ酸は、触媒活性が高く、また引き続く縮合反応の触媒としても機能するので好ましい。ギ酸の添加量は、成分(a1)および成分(a2)の合計100重量部に対して、0.1〜25重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。25重量部よりも多いと、得られる紫外線硬化性樹脂組成物の安定性が低下する傾向があり、また後工程でギ酸を除去できるとしても該除去量が多くなる。一方、0.1重量部よりも少ないと、実質的に反応が進行しなかったり、反応時間が長くなる傾向がある。反応温度、時間は、成分(a1)や成分(a2)の反応性に応じて任意に設定できるが、通常0〜100℃程度、好ましくは20〜60℃、1分〜2時間程度である。該加水分解反応は、溶剤の存在下または不存在下に行うことができる。溶剤の種類は特に限定されず、任意の溶剤を1種類以上選択して用いることができるが、後述の縮合反応に用いる溶剤と同一のものを用いることが好ましい。成分(a1)や成分(a2)の反応性が低い場合は、無溶剤で行うことが好ましい。
【0016】
上記方法で加水分解反応を行うが、[加水分解されてできた水酸基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)が0.5以上になるように進行させることが好ましく、0.8以上に調整することがさらに好ましい。加水分解反応に続く縮合反応は、加水分解で生じた水酸基間だけでなく、該水酸基と残存アルコキシ基との間でも進行するため、少なくとも半分(モル比が0.5以上)が加水分解されていればよい。
【0017】
縮合反応においては、前記の水酸基間で水が副生し、また水酸基とアルコキシ基間ではアルコールが副生して、ガラス化する。縮合反応には、従来公知の脱水縮合触媒を任意に用いることができる。前記のように、ギ酸は触媒活性が高く、加水分解反応の触媒と共用できるため好ましい。反応温度、時間は成分(a1)や成分(a2)の反応性に応じてそれぞれ任意に設定できるが、通常は40〜150℃程度、好ましくは60〜100℃、30分〜12時間程度である。
【0018】
上記方法で縮合反応を行うが、[未反応の水酸基および未反応のアルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)や成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)が0.3以下になるように進行させることが好ましく、0.2以下に調整することがさらに好ましい。0.3を超える場合、未反応の水酸基およびアルコキシ基が紫外線硬化性樹脂組成物の保管中に縮合反応してゲル化したり、硬化後に縮合反応し揮発分が発生してクラックが発生するなど、硬化物の性能を損なう傾向があるため好ましくない。
【0019】
当該縮合反応は、成分(a1)(成分(a2)を併用する場合は両者)の濃度が2〜80重量%程度になるように溶剤希釈して行うことが好ましく、15〜60重量%であることがより好ましい。縮合反応によって生成する水およびアルコールの沸点より高い沸点を有する溶剤を用いると、反応系中よりこれらを留去することができるため好ましい。該濃度が2重量%未満である場合は、得られる紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる成分(A)が少なくなるため好ましくない。80重量%を超える場合は、反応中にゲル化したり、生成する成分(A)の分子量が大きくなり過ぎ、得られる紫外線硬化性樹脂組成物の保存安定性が悪くなる傾向がある。溶剤としては、任意の溶剤を1種類以上選択して用いることができる。縮合反応によって生成する水およびアルコールより高い沸点を有する溶剤を用いれば、反応系中よりこれらを留去することができるため好ましい。また、成分(B)も溶剤の一部として用いることができる。
【0020】
当該縮合反応の終了後、用いた触媒を除去すると、最終的に得られる紫外線硬化性樹脂組成物の安定性が向上するため好ましい。除去方法は、用いた触媒に応じて公知各種の方法から適宜に選択できる。例えば、ギ酸を用いた場合は、縮合反応の終了後、該沸点以上に加熱する、減圧するなどの方法により容易に除去でき、この点からもギ酸の使用が好ましい。
【0021】
本発明で用いられる成分(B)は、特に限定されず、従来公知の炭素−炭素2重結合を有する化合物を適宜用いることができる。炭素−炭素2重結合に係わる官能基としては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基などがあげられる。
【0022】
成分(B)の炭素−炭素2重結合は、成分(A)のチオール基と反応(エン−チオール反応)するが、当該反応は重合開始剤の有無により、反応機構が異なる。
【0023】
重合開始剤を用いない場合は、本反応は次の反応機構[反応式(1)]によると考えられている。
【0024】
【化1】

(式中、Raは成分(A)のチオール基以外の残基を、Rbは成分(B)の炭素−炭素2重結合以外の残基をそれぞれ示す。)。すなわち、炭素−炭素2重結合1個に対してチオール基1個が付加する反応である。
【0025】
一方、重合開始剤を用いる場合は、本反応は、前記の反応式(1)の付加反応に加えて、以下のような連鎖的ラジカル反応過程[反応式(2)〜(5)]、および反応式(6)で示す副反応を伴って進行するとされる。
【0026】
【化2】

(該式中、Iは重合開始剤を示す。)。すなわち、反応式(2):重合開始剤より紫外線によってラジカルが生成する段階、反応式(3):成分(A)のチオール基の水素が引き抜かれ、チイルラジカルが生成する段階、反応式(4):成分(A)に生成したチイルラジカルが成分(B)の炭素−炭素2重結合と反応、炭素ラジカルが生成する段階、反応式(5):炭素ラジカルが成分(A)のチオール基の水素を引き抜き、チイルラジカルが再生する段階を経由する。
【0027】
該副反応は、
【化3】

である。
【0028】
反応式(6):反応式(4)で生成した炭素ラジカルが成分(B)の炭素−炭素2重結合と反応し、炭素ラジカルが再生することによって、成分(B)同士の重合反応も同時に起こる。
【0029】
上記のように、重合開始剤を用いない場合は、成分(A)中のチオール基と成分(B)中の炭素−炭素2重結合は、1:1(モル比)で反応するが、重合開始剤を用いる場合には、1:1以上で反応することになる。
【0030】
上記の観点から、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物の調製に際しての成分(A)と(B)の使用割合は、重合開始剤の有無に応じて適宜に決定される。重合開始剤を用いない場合は、具体的には、[成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数](モル比)が、0.9〜1.1となるよう配合することが好ましく、より好ましくは1.0である。0.9未満である場合は、紫外線硬化後にも炭素−炭素2重結合が残存し、耐候性が低下する傾向がある。また、1.1を超える場合は、チオール基が残存し、その分解によって悪臭を発生させる場合がある。
【0031】
一方、重合開始剤を用いる場合は、具体的には、[成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数](モル比)が、0.01〜1.1となるよう配合することが好ましい。0.01未満である場合、用いる成分(A)の量が少なくなりすぎるため、本願発明所望の効果が得られにくくなる傾向がある。さらに、炭素−炭素2重結合が残存しやすくなり、硬化物の耐候性が低下する傾向もある。また、1.1を超える場合、チオール基が残存し、その分解によって悪臭を発生させる場合がある。
【0032】
また、炭素−炭素2重結合を有する官能基とチオール基との反応より優先して、炭素−炭素2重結合を有する官能基同士が重合する不都合が起こらないためには、成分(B)のうち、前記官能基がアリル基であるものが好ましい。アリル基を1つ含有する化合物としては、けい皮酸、モノアリルシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、ビスフェノールAモノアリルエーテル、ビスフェノールFモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテルなどがあげられる。アリル基を2つ含有する化合物としては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールFジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテルなどがあげられる。アリル基を3つ以上含有する化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルなどがあげられる。これらの化合物は、いずれか単独で、または組み合わせて使用できる。これらの中でも、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルがとくに好ましい。
【0033】
また、成分(B)として、前記化合物よりも高分子量のものを用いることができる。高分子量のものを用いた紫外線硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物の可撓性が向上する傾向がある。該高分子量物としては、メチルアリルシロキサンとジメチルシロキサンとからなる共重合物、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとからなる共重合物(ダイソー(株):商品名「エピクロマー」、日本ゼオン(株):商品名「Gechron」など)、アリル基末端ポリイソブチレンポリマー((株)カネカ:商品名「エピオン」)などがあげられる。これらの化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
成分(B)の使用に際しては、[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数]/[成分(B)のモル数](モル比:1分子あたりに含まれる炭素−炭素2重結合の平均個数を示す)が2以上であることが好ましい。2未満である場合、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化性が低くなり、かつ得られる硬化物の架橋密度が低くなるため、硬化物の耐熱性、表面硬度等の物性が低下する傾向がある。
【0035】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物を調製する際に使用可能な重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光カチオン開始剤、光ラジカル開始剤などを任意に選択できる。光カチオン開始剤としては、紫外線の照射により酸を発生する化合物であるスルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾイントシレート等があげられ、それらの市販品としては、たとえばサイラキュアUVI−6970、同UVI−6974、同UVI−6990(いずれも米国ユニオンカーバイド社製商品名)、イルガキュア264(チバスペシャルティケミカルズ社製)、CIT−1682(日本曹達(株)製)などがある。光カチオン重合開始剤の使用量は、該組成物100重量部に対し、通常10重量部程度以下、好ましくは1〜5重量部とされる。光ラジカル開始剤としては、ダロキュア1173、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907(いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製商品名)、ベンゾフェノン等があげられ、該組成物100重量部に対して15重量部程度以下、好ましくは1〜15重量部とされる。なお、得られる硬化物の耐候性低下が懸念される場合、特に高い耐候性、透明性が求められる光学部材などに用いられる場合には、光反応開始剤や光増感剤を使用しないほうがよい。
【0036】
また、紫外線硬化性樹脂組成物の安定性をより向上させるため、エン−チオール反応を抑制する化合物を配合できる。このような化合物としては、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等のリン系化合物;p−メトキシフェノ−ル、ハイドロキノン、ピロガロ−ル、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコ−ル、塩化第一銅、2、6ージ−tert−ブチル−p−クレゾ−ル、2、2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、2、2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等のラジカル重合禁止剤;ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2-エチルへキシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2‐メチルイミダール等のイミダゾール類があげられる。
【0037】
リン系化合物のうち、亜リン酸トリフェニルはエン−チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であり取り扱いが容易であるため好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物に配合する該化合物の量は、組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部程度であることが好ましい。0.1重量部に満たない場合は、エン−チオール反応を抑制する効果が不足し、また10重量部を超える場合は、得られる硬化物中の残存量が多くなり硬化物の物性が低下する傾向がある。
【0038】
ラジカル重合禁止剤のうち、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩は少量でもエン−チオール反応の抑制効果が高く、かつ得られる硬化物の色調に優れるため好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物に配合する該化合物の量は、組成物100重量部に対して、0.0001〜0.1重量部程度であることが好ましい。0.0001重量部に満たない場合は、エン−チオール反応を抑制する効果が不足し、また0.1重量部を超える場合は、紫外線硬化性が低下する傾向がある。
【0039】
3級アミン類のうち、ベンジルジメチルアミンは少量でもエン−チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であり取り扱いが容易であるため好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物に配合する該化合物の量は、組成物100重量部に対して、0.001〜5重量部程度であることが好ましい。0.001重量部に満たない場合は、エン−チオール反応を抑制する効果が不足し、また5重量部を超える場合は、成分(A)中の未反応の水酸基およびアルコキシ基が縮合反応してゲル化する傾向があるため好ましくない。
【0040】
紫外線硬化性樹脂組成物の有効成分(A)、(B)の濃度は、用途に応じて適宜に決定でき、必要に応じて溶剤を配合することができる。溶剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。紫外線硬化性樹脂組成物をコーティング剤として用いる場合は、溶剤で希釈し、所望の粘度とすればよい。また、紫外線硬化性樹脂組成物を1mm以上の厚膜に硬化させる場合や、接着剤として用いる場合には、成分(A)、(B)の合計濃度を90重量%以上にすることが好ましく、95重量%以上にすることがより好ましい。該合計濃度は、成分(A)および(B)の濃度と紫外線硬化性樹脂組成物の仕込み時に加えた溶剤の量とより計算で求めてもかまわないし、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点以上で2時間程度加熱し、加熱前後の重量変化により求めることもできる。該用途では、90重量%未満の場合、硬化、成形時に発泡したり、硬化物中に溶剤が残存する等により、硬化物の物性が低下する傾向がある。なお、成分(A)合成の際に溶剤を必須使用しているため、該用途に用いる際には、反応終了後、不揮発分含有量が90重量%以上となるよう溶剤を揮発させておけばよい。また、紫外線硬化性樹脂組成物を調製した後、用いた溶剤を揮発させて、有効成分(A)、(B)の合計濃度を高めることもできる。
【0041】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物の必須成分は、前記のようにして得られる成分(A)と、成分(B)からなるものであるが、本発明の別の態様としては、成分(a1)および任意成分(a2)をギ酸の存在下に加水分解した後、溶剤および成分(B)の存在下に縮合反応させて得られるものがあげられる。反応温度、反応時間、溶剤種などの条件は、いずれも前記成分(A)における場合と同様である。
【0042】
また、紫外線硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、前記成分(a1)および/またはその加水分解物(但し、該縮合物は除く)[以下、併せて成分(C)という]を配合できる。成分(C)は、成分(A)の合成に際して用いた成分(a1)をそのままで用いるか、その加水分解物を用いるか、これらを組み合わせて使用できる。成分(C)を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を、ガラス、金属等の無機基材に対するコーティング剤として用いると、該密着性をより向上できる利点がある。成分(C)の配合量は、該組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましい。0.1重量部未満の場合は、該紫外線硬化性樹脂組成物の無機基材に対する密着性向上効果が不充分となる傾向がある。また、20重量部を超える場合、成分(C)が加水分解、縮合反応する際の揮発分が多くなるため、該紫外線硬化性樹脂組成物が厚膜硬化できなる、または得られる硬化物が脆くなる等の傾向がある。このような成分(C)としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが、当該密着性向上効果の点で特に好ましい。
【0043】
また、紫外線硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、エポキシ基含有化合物(D)(以下、成分(D)という)を配合できる。成分(D)としては、従来公知のエポキシ基を持つ化合物を用いることができる。成分(D)を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を、プラスチック等の有機基材に対するコーティング剤として用いると、該密着性をより向上できる利点がある。成分(D)は、成分(A)のチオール基と反応し、化学結合によって硬化物中に組み込まれ、該硬化物の耐熱性等の物性低下を抑制できる利点がある。エポキシ基を2つ以上有する化合物である場合には、成分(A)との架橋密度が高くなり、物性低下が最小限となるためより好ましい。成分(D)の配合量は、紫外線硬化性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部程度であり、かつ[成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数と成分(D)に含まれるエポキシ基のモル数との合計](モル比)が、0.9〜1.1程度となるように配合することが好ましく、より好ましくは1.0である。0.1重量部に満たない場合は、有機基材に対する密着性向上効果が不充分となる傾向がある。また、20重量部を超える場合は、紫外線硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下したり、紫外線硬化性が低下するなどの傾向がある。成分(D)のうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個含有するものであり、かつ入手が容易であることより特に好ましい。
【0044】
また、紫外線硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、前記成分(a2)である金属アルコキシド類および/またはその加水分解物(但し、縮合物は含まず)(E)[以下、併せて成分(E)という]を配合できる。成分(E)は、成分(A)の合成に際して用いた金属アルコキシド類をそのままで用いるか、その加水分解物を用いるか、これらを組み合わせて使用できる。成分(E)を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を用いることで、得られる硬化物の屈折率を調整することができる。該紫外線硬化性樹脂組成物を高屈折率のコーティング剤として用いる場合には、成分(E)としてアルコキシチタン類、アルコキシジルコニウム類が好適である。成分(E)の配合量は、紫外線硬化性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部程度であることが好ましい。0.1重量部に満たない場合には、屈折率向上効果が不充分となる傾向がある。また、20重量部を超える場合は、成分(E)が加水分解、縮合反応する際の揮発分が多くなるため、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化時に発泡したり、反りやクラックが発生したり、得られる硬化物が脆くなるなどの傾向がある。
【0045】
さらに、紫外線硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種用途での必要性に応じて、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、フィラー等を配合してもよい。
【0046】
こうして得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて所望の硬化物を調製するためには、該組成物を所定の基材にコーティングし、または所定の型枠に充填し、溶剤を含む場合は該溶剤を揮発させた後、紫外線を照射すればよい。溶剤の揮発方法は溶剤の種類、量、膜厚等に応じて適宜決定すればよいが、40〜150℃程度、好ましくは60〜100℃に加熱し、常圧または減圧下で5秒〜2時間程度の条件とされる。紫外線の照射量は、紫外線硬化性樹脂組成物の種類、膜厚等に応じて適宜決定すればよいが、積算光量が50〜10000mJ/cm2程度となるよう照射すればよい。また、厚膜でコーティングや充填を行った場合には、前述のように該組成物に光反応開始剤や光増感剤を添加することにより、光硬化性を向上させることが好ましい。
【0047】
また、紫外線照射して得られた硬化物を、さらに加熱することで、硬化物の物性を一層向上させることができる。加熱の方法は適宜決定すればよいが、40〜300℃程度、好ましくは100〜250℃に加熱し、1分〜6時間程度の条件とされる。
【0048】
(コーティング剤への適用)
紫外線硬化性樹脂組成物を所望の基材にコーティングし、紫外線硬化させることでコーティング層を得ることができる。基材としては、ガラス、鉄、アルミ、銅、ITO等の無機基材、PE、PP、PET、PEN、PMMA、PSt、PC、ABS等の有機基材など、各種公知のものを適宜に選択使用できる。無機基材へコーティングする際、密着性が不足する場合には、前述のように成分(C)を併用することが好ましい。また有機基材へコーティンングする際、密着性が不足する場合には、前述のように成分(D)を併用することが好ましい。また、紫外線硬化性樹脂組成物を溶剤希釈することで、コーティング性をある程度向上させることもできる。上述のような紫外線硬化性樹脂組成物をコーティングし、紫外線硬化させることで、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等にコーティング層を形成させることができる。
【0049】
また、紫外線硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜の屈折率が基材より高い場合には、反射防止効果を付与することができる。成分(A)の製造に際して、成分(a2)を成分(a1)と併用したり、前述のように成分(E)として該金属アルコキシド類を用いることで、該紫外線硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜の屈折率を向上させることができる。そのため、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズムに対して適用されるコーティング層に反射防止効果を付与したい場合には、紫外線硬化性樹脂組成物に当該成分を適量添加しておくことが好ましい。
【0050】
(接着剤への適用)
所定の基材間に紫外線硬化性樹脂組成物を介在させ、ついで該組成物を紫外線硬化させることで目的とする接着層を得ることができる。基材としては、前記のコーティング層形成時に用いたものと同様のものを使用できる。ただし、接着層を紫外線硬化させるためには、少なくとも片面が紫外線を透過する必要がある。また、接着層の発泡を防ぐため、前述のように紫外線硬化性樹脂組成物中の揮発性分を10%未満、好ましくは5%未満にするか、張り合わせ前に揮発分を除去しておくことが好ましい。上述のような紫外線硬化性樹脂組成物で接着することで、接着層が透明な接着物が得られるため、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター、光ディスク基板等を作製するのに好適である。
【0051】
(封止材への適用)
紫外線硬化性樹脂組成物を厚膜塗布し、または所定の型枠に流し込んだ後、紫外線硬化させることで、透明な硬化物で封止された成形材料を得ることができる。このような材料は、発光素子、受光素子、光電変換素子、光伝送関連部品等の光学部品用途に、特に好適である。当該成形硬化物を作製する際には、前述のように、該組成物中に光硬化触媒や光増感剤を適量配合することや、該組成物中の揮発分含有率を10%未満、好ましくは5%未満にすることが好ましい。
【0052】
(透明基板への適用)
紫外線硬化性樹脂組成物をガラスクロス(基材)に含浸させ、紫外線硬化させることで透明基板を得ることができる。ガラスクロスとしては各種公知のものを適宜に選択使用できる。ガラスクロスとしては、各種公知のガラス繊維(Eガラス、Cガラス、ECRガラスなどから構成されるストランド、ヤーン、ロービングなど)から得られる各種の布帛が使用できるが、Eガラスから作られるガラスクロスが安価であり、入手性に優れるため特に好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物をガラスクロスに含浸させる方法についても特に限定はされず、各種公知の方法を採用でき、またコーティング法を採用してもよい。また、得られる透明基板を無色透明とするためには、紫外線硬化性樹脂組成物から得られる硬化物とガラスクロスとの屈折率の差を0.05以内にすることが好ましく、0.01以内にすることがより好ましく、同一にすることがさらに好ましい。また、紫外線硬化性樹脂組成物を溶剤希釈することで、ガラスクロスへの含浸性をより向上させることもできる。なお、ガラスクロスに対する紫外線硬化性樹脂組成物の使用割合は、得られる透明基板の用途に応じて適宜に決定でき、通常はガラスクロス100重量部あたり20〜500重量部とされる。また得られる透明基板の厚みも、該用途に応じて適宜に決定でき、通常は20μm〜1mmとされる。上述のような紫外線硬化性樹脂組成物をガラスクロスに含浸させ、紫外線硬化させることで得られる透明基板は、透明性、耐熱性に優れるため、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター、光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板等にコーティング層を作製するのに好適である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、部および%は特記しない限り重量基準である。
【0054】
製造例1(縮合物(A−1)の製造)
攪拌機、冷却管、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製:商品名「SH−6062」)190部、イオン交換水52.3部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸9.5部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大22℃温度上昇した。反応後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(日本乳化剤(株)製:商品名「MFG−AC」)287.36部を仕込み、加熱した。82℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールが留去され始めた。30分かけて105℃まで昇温し、縮合反応によって発生した水を留去した。さらに1時間30分、105℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの一部を留去することで、縮合物(A−1)を385.2g得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.15、濃度は32.0%であった。また、縮合物(A−1)のチオール当量は、398g/eqであった。
【0055】
製造例2(縮合物(A−2)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン190部、イオン交換水52.3部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸9.5部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大22℃温度上昇した。反応後、トルエン287.36部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。20分かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間、75℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去した。メタノール200.99部で希釈して、縮合物(A−2)を525.11部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.14、濃度は23.5%であった。また、縮合物(A−2)のチオール当量は、398g/eqであった。
【0056】
製造例3(縮合物(A−3)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン190部、イオン交換水52.30部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸9.50部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大22℃温度上昇した。反応後、ジエチレングリコールジメチルエーテル287.36部を仕込み、加熱した。75℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールが留去され始めた。さらに30分、75℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去することで、縮合物(A−3)を389.44部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.14、濃度は31.6%であった。また、縮合物(A−3)のチオール当量は、402g/eqであった。
【0057】
製造例4(縮合物(A−4)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン15.0部、フェニルトリメトキシシラン(東京化成(株)製)5.05部([成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=0.75、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=3)、イオン交換水5.51部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸1.00部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大20℃温度上昇した。反応後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート19.52部を仕込み、加熱した。82℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールが留去され始めた。30分かけて105℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間30分、105℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去することで、縮合物(A−4)を25.13部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.12、濃度は51.8%であった。また、縮合物(A−4)のチオール当量は、329g/eqであった。
【0058】
製造例5(縮合物(A−5)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン18.0部、ジフェニルジメトキシシラン(東京化成(株)製)2.24部([成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=0.91、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=2.9)、イオン交換水5.29部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸0.90部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大20℃温度上昇した。反応後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.23部を仕込み、加熱した。82℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールが留去され始めた。30分かけて105℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間30分、105℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去することで、縮合物(A−5)を29.0部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.10、濃度は46.5%であった。また、縮合物(A−5)のチオール当量は、316g/eqであった。
【0059】
製造例6(縮合物(A−6)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン12.0部、イオン交換水3.60部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸0.67部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大20℃温度上昇した。反応後、テトラブチルチタネート(東京化成(株)製)1.39部、ジエチレングリコールジメチルエーテル20.25部を仕込み、加熱した。75℃まで昇温し、30分間縮合反応を行った。なお、[[成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=0.94、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=3.1であった。さらに1時間、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去することで、縮合物(A−6)を29.39部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.17、濃度は27.8%であった。また、縮合物(A−6)のチオール当量は、481g/eqであった。
【0060】
製造例7(縮合物(A−7)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン180部、イオン交換水49.55部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸9.00部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大22℃温度上昇した。反応後、トルエン272.23部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。20分かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間、75℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−5mmHgで減圧して、トルエンを留去することで、縮合物(A−7)を124.49部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)に含まれるアルコキシ基のモル数](モル比)は0.16、濃度は93.7%であった。また、縮合物(A−7)のチオール当量は、136g/eqであった。
【0061】
製造例8(縮合物(A−8)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン15.0部、フェニルトリメトキシシラン5.05部([成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=0.75、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=3)、イオン交換水5.51部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸1.00部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大20℃温度上昇した。反応後、トルエン19.52部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。20分かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間、75℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−5mmHgで減圧して、トルエンを留去することで、縮合物(A−8)を13.84部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.16、濃度は94.0%であった。また、縮合物(A−8)のチオール当量は、181g/eqであった。
【0062】
製造例9(縮合物(A−9)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン18.0部、ジフェニルジメトキシシラン2.24部([成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=0.91、[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数]/[成分(a1)と成分(a2)の合計モル数]=2.9)、イオン交換水5.29部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸0.90部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大20℃温度上昇した。反応後、トルエン20.23部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。20分かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。さらに1時間、75℃で反応させた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−5mmHgで減圧して、トルエンを留去することで、縮合物(A−9)を14.41部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.16、濃度は93.6%であった。また、縮合物(A−9)のチオール当量は、157g/eqであった。
【0063】
実施例1〜20(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
製造例1で得られた縮合物(A−1)10部に対し、トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製:商品名「タイク」、[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数]/[成分(B)のモル数]=3)2.09部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)、亜リン酸トリフェニル(東京化成(株)製)0.20部を配し、紫外線硬化性樹脂組成物(F−1)とした。同様に、製造例1〜9で得られた縮合物(A−1〜9)を用い、下表に従って紫外線硬化性樹脂組成物(F−2〜F−20)とした。
【0064】
【表1】

【0065】
表中、DAP:ジアリルフタレート(ダイソー(株)製:商品名「ダイソーダップモノマー」、[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数]/[成分(B)のモル数]=2)、P−30M:ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー(株)製:商品名「ネオアリルP−30M」、[成分(B)に含まれる炭素−炭素2重結合のモル数]/[成分(B)のモル数]=3)、SH−6062:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製商品名)、SR−8EG:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(坂本薬品工業(株)製:商品名、エポキシ当量285g/eq)、エピコート828:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製商品名、エポキシ当量189g/eq)、Q−1301:N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬工業(株)製商品名)を示す。
【0066】
実施例21(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン25.0部、フェニルトリメトキシシラン8.42部、イオン交換水9.18部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸1.67部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大26℃温度上昇した。反応後、トルエン50.54部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。1時間かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。ここにトリアリルイソシアヌレート10.58gを加えた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−5mmHgで減圧して、トルエンを留去することで、紫外線硬化性樹脂組成物(E−19)を33.97部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計のモル数](モル比)は0.14、濃度は95.0%であった。
【0067】
実施例22(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン25.0g、フェニルトリメトキシシラン8.42部、イオン交換水9.18部([加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸1.67部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大26℃温度上昇した。反応後、トルエン50.54部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。1時間かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。ここにジアリルフタレート15.68部を加えた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−5mmHgで減圧して、トルエンを留去することで、紫外線硬化性樹脂組成物(E−20)を39.65部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.14、濃度は94.2%であった。
【0068】
実施例23(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
製造例1と同様の反応装置に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン25.0部、フェニルトリメトキシシラン8.42部、イオン交換水9.18部、[加水分解反応に用いる水のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)=1.0)、95%ギ酸1.67部を仕込み、室温で30分間加水分解反応させた。反応中、発熱によって最大26℃温度上昇した。反応後、トルエン50.54部を仕込み、加熱した。72℃まで昇温したところで、加水分解によって発生したメタノールとトルエンの一部が留去され始めた。1時間かけて75℃まで昇温し、縮合反応させて水を留去した。ここにペンタエリスリトールトリアリルエーテル10.88部を加えた後、70℃−150mmHgで減圧して、残存するメタノール、水、ギ酸を留去した。さらに70℃−5mmHgで減圧して、トルエンを留去することで、紫外線硬化性樹脂組成物(E−21)を34.69部得た。[未反応の水酸基およびアルコキシ基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)に含まれる各アルコキシ基の合計モル数](モル比)は0.14、濃度は93.9%であった。
【0069】
比較例1(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(荒川化学工業(株)製:商品名「ビームセット−700」)をそのまま用いた。
【0070】
比較例2(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部に対し、光ラジカル開始剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製:商品名「イルガキュアIrg−184」)0.5部を配合し、紫外線硬化性樹脂組成物とした。
【0071】
比較例3(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)製:商品名「PEMP」)10部に対し、トリアリルイソシアヌレート6.20部、亜リン酸トリフェニル0.20部を配合し、紫外線硬化性樹脂組成物とした。
【0072】
比較例4(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)10部に対し、ジアリルフタレート10.08部、亜リン酸トリフェニル0.20部を配合し、紫外線硬化性樹脂組成物とした。
【0073】
比較例5(紫外線硬化性樹脂組成物の製造)
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)10部に対し、ペンタエリスリトールトリアクリレート6.99部、亜リン酸トリフェニル0.20部を配合し、紫外線硬化性樹脂組成物とした。
【0074】
比較例6(熱硬化性組成物の製造)
特開2005−290286号公報の実施例3に従い、比較用の熱硬化性組成物を合成した。具体的には、ビスフェノールA型グリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート828」、エポキシ当量190g/eq)8部をテトラヒドロフラン8部に溶解し樹脂溶液とした。ついで、フェニルトリメトキシシラン18部、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン8部、蟻酸の10重量%水溶液8部、テトラヒドロフラン49部を攪拌しながら60℃で3時間還流し、熱硬化剤(旭電化工業(株)製、商品名「アデカオプトンCP−66」)1部および前記樹脂溶液16部を加え、熱硬化性組成物とした。
【0075】
(組成物の硬化性)
実施例1〜8、14〜18で得られた紫外線硬化性樹脂組成物を鋼板上に、硬化後膜厚が約15μmとなるようコーティングし、120℃で30分間溶剤乾燥させた。乾燥後、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製:商品名「UV−152」)を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が200mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。同様に、実施例9〜13、19〜23、比較例1〜5で得られた紫外線硬化性樹脂組成物についても、硬化後膜厚が約15μmとなるようコーティングし、紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製:商品名「UV−152」)を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が200mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。比較例6で得られた熱硬化性組成物は、硬化後膜厚が約15μmとなるようコーティングし、60℃で30分間溶剤乾燥させた。続いて、120℃で3時間、150℃で1時間熱硬化させた。得られた硬化物の硬化性は、JIS K−5401の一般試験法による鉛筆硬度試験により評価した。
【0076】
【表2】

【0077】
表2から明らかなように、比較例1の紫外線硬化性樹脂組成物はまったく硬化せず、比較例2の紫外線硬化性樹脂組成物は硬化が不充分であった。すなわち、一般的なラジカル重合による硬化では、開始剤なしで硬化を行うことができず、また硬化剤を配合しても厚膜では硬化しないことが分かる。これに対し、実施例1〜21、比較例3〜5の紫外線硬化性樹脂組成物は問題なく硬化しており、エン−チオール反応を用いた硬化系では開始剤なしで紫外線硬化可能であること、本願発明の硬化系でも、従来の有機−有機系と同等の硬化性を有することが分かる。また、比較例3〜5の硬化物に比べ、同一の成分(B)を用いて硬化させた実施例1〜21の硬化物では表面硬度が高いことから、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物はハードコート剤として好適であると認められる。
【0078】
(紫外線硬化性樹脂組成物の安定性)
実施例9、19、20で得られた紫外線硬化性樹脂組成物を褐色ビンに取って室温下で放置し、ゲル化までの日数によって紫外線硬化性樹脂組成物の安定性を評価した。
【0079】
【表3】

【0080】
表2および表3より明らかなように、実施例19、20の紫外線硬化性樹脂組成物は、実施例9の紫外線硬化性樹脂組成物と同等の硬化性を有し、安定性については大きく向上していることが分かる。このため、1液化した際に安定性が特に求められる用途においては、ベンジルジメチルアミンのような3級アミン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩のようなラジカル重合禁止剤を添加することで安定性を改善することが出来る。
【0081】
(硬化膜の耐候性)
実施例8〜10、比較例2〜5で得られた紫外線硬化性樹脂組成物をガラス板上に、硬化後膜厚が約5μmとなるようコーティングし、前記の紫外線照射装置を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が200mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。得られた硬化物に対し、さらに積算光量が20000mJ/cm2となるよう紫外線を照射し、照射後の着色の程度を目視評価した。評価基準は次の通りである。
○:ほとんど着色なし △:少し着色あり(やや黄色) ×:濃い着色あり(茶色)
【0082】
【表4】

【0083】
表4から明らかなように、比較例2の硬化物は茶色に、比較例3〜5の硬化物はやや黄色に着色している。これに対し、実施例8〜10の硬化物はほとんど着色がなく、本願発明の硬化物は、従来の有機−有機系に比べより耐候性に優れることが分かる。
【0084】
(無機材への密着性)
実施例9、14で得られた紫外線硬化性樹脂組成物を各種無機基材に硬化後膜厚が約15μmとなるようコーティングし、前記の紫外線照射装置を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が500mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。得られた硬化物について、JIS K−5400の一般試験法によるゴバン目セロハンテープ剥離試験により評価した。
【0085】
【表5】

【0086】
表2および表5より明らかなように、成分(C)を配合した実施例14の硬化物は、実施例9の硬化物に比べて、硬化性は同等であるとともに、無機基材への密着性が大きく向上していることが分かる。このことより、実施例14の紫外線硬化性樹脂組成物は、無機基材よりなる導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、プリズム等へのコーティング剤や、無機基材よりなる液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター、光ディスク基板の接着剤として好適であると認められる。
【0087】
(有機材への密着性)
実施例9、16、17で得られた紫外線硬化性樹脂組成物を各種無機基材に硬化後膜厚が約15μmとなるようコーティングし、前記の紫外線照射装置を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が500mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。得られた硬化物について、JIS K−5400の一般試験法によるゴバン目セロハンテープ剥離試験により評価した。
【0088】
【表6】

【0089】
表2および表6より明らかなように、成分(D)を配した実施例16、17の硬化物は、実施例9の硬化物に比べて、表面硬度が若干低下するものの、有機基材への密着性が大きく向上していることが分かる。このことより、実施例16、17の紫外線硬化性樹脂組成物は、有機基材よりなる導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等へのコーティング剤や、有機基材よりなる液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター、光ディスク基板の接着剤として好適であると認められる。
【0090】
(屈折率)
実施例8、9、15、18、比較例3で得られた紫外線硬化性樹脂組成物を、不揮発分が30重量%となるよう、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈した後、シリコン基板上に硬化後膜厚が約50nmとなるようコーティングし、120℃で15分間溶剤乾燥させた。乾燥後、前記の紫外線照射装置を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が200mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。また、比較例6で得られた熱硬化性組成物を、不揮発分が30重量%となるよう、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈した後、シリコン基板上に硬化後膜厚が約50nmとなるようコーティングし、60℃で10分間溶剤乾燥させた。続いて120℃で30分間熱硬化させた。得られた硬化物について、エリプソメーター(日本真空技術(株)製:商品名「ESM−1」)を用いて屈折率を測定した。
【0091】
【表7】

【0092】
表7より明らかなように、成分(a2)としてチタネートを配した実施例8の硬化物、および成分(E)としてチタネートを配した実施例15の硬化物は、実施例9の硬化物に比べて、屈折率が向上していることが分かる。このことより、実施例8、15の紫外線硬化性樹脂組成物は、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等の反射防止膜用コーティング剤として好適であると認められる。
【0093】
(透明基板の作製)
実施例18および比較例3で得られた組成物を、硬化後に(ガラスクロスの重量)/(組成物の重量)が100/200となるよう市販のガラスクロス(クリッパー ガラスクロス マイクロB、膜厚28μm、屈折率1.54)に含浸させ、前記の紫外線照射装置を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が2000mJ/cm2となるよう紫外線を照射することで、厚さ80μmの基板を得た。また、比較例6で得られた組成物をガラスクロスに含浸させ、60℃の乾燥器で溶剤を揮散させた後、120℃で3時間加熱し、150℃で1時間プレス成形することで厚さ80μmの基板を得た。得られた基板の外観を目視評価した。評価基準は以下の通りである。
○・・・ほぼ透明
△・・・半透明
×・・・不透明
また、該基板の柔軟性については、該基板を曲げた際にクラックが生じる曲率半径によって評価した。
【0094】
【表8】

【0095】
表8から明らかなように、比較例3で得られた基板は半透明であるのに対し、実施例18、比較例6で得られた基板はいずれもほぼ透明であった。また、比較例6の基板は曲率半径が5cm以下になるとクラックを生じるのに対し、実施例18、比較例3の基板はいずれも曲率半径が1cm以下となるよう曲げてもクラックが生じなかった。前記の各種試験結果より、比較例3、比較例6の基板に比べて実施例18の基板は諸物性に優れており、フレキシブルな液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター等の基材として用いるのにより好適であると認められる。
【0096】
(接着性)
実施例9、比較例2、3で得られた紫外線硬化性樹脂組成物を鋼板上に、硬化後膜厚が約5μmとなるようコーティングし、厚み2mmのポリカーボネート板または厚み2mmのガラス板で蓋をし、前記の紫外線照射装置を用い、365nmの紫外線検出器で蓋がない場合に積算光量が1000mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。得られた硬化物について、硬化性をJIS K−5401の一般試験法による鉛筆硬度試験により評価した。
【0097】
【表9】

【0098】
表9より明らかなように、比較例2の紫外線硬化性樹脂組成物はまったく硬化しなかったのに対し、比較例3、実施例9の紫外線硬化性樹脂組成物は問題なく硬化した。前記の各種試験結果より、比較例3の硬化物に比べて実施例9の硬化物は諸物性に優れており、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター、光ディスク基板の接着剤として用いるのにより好適であると認められる。
【0099】
(耐熱性)
実施例9、比較例3で得られた紫外線硬化性樹脂組成物を、硬化後膜厚が約1mmとなるようアルミカップに流し込み、前記の紫外線照射装置を用い、365nmの紫外線検出器で積算光量が5000mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。得られた硬化物を200℃の乾燥機で30分間加熱した。該硬化物を5mm×25mmにカットし、粘弾性測定器(セイコーインスツル(株)製、商品名「DMS6100」、測定条件:振動数1Hz、スロープ3℃/分)を用いて動的貯蔵弾性率を測定して、耐熱性を評価した。測定結果を図1に示す。図1から明らかなように、実施例9では比較例3に比べTgが向上しており、かつ、高温でも弾性率の低下が少なく、耐熱性に優れていることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例9および比較例3の組成物から得られる硬化物についての温度と動的貯蔵弾性率との相関関係を図示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
1Si(OR23 (1)
(式中、R1は少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、または少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解および縮合して得られる縮合物(A)、ならびに炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)を含有することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
縮合物(A)が、アルコキシシラン類(a1)をギ酸の存在下に加水分解した後、溶剤の存在下に縮合反応させて得られたものである請求項1記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
一般式(1):
1Si(OR23 (1)
(式中、R1は少なくとも1つのチオール基を有する炭素数1〜8の炭化水素基、または少なくとも1つのチオール基を有する芳香族炭化水素基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)をギ酸の存在下に加水分解した後、溶剤および炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)の存在下に縮合反応させて得られることを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
縮合物(A)が、その構成成分としてチオール基を有しない金属アルコキシド類(a2)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
アルコキシシラン類(a1)が3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
化合物(B)がアリル基含有化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、アルコキシシラン類(a1)および/またはその加水分解物(但し、縮合物は含まず)(C)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
成分(C)が、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび/またはその加水分解物(但し、縮合物は含まず)である請求項7記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、エポキシ基含有化合物(D)を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
エポキシ基含有化合物(D)が、当該1分子あたりエポキシ基を2つ以上有するものである請求項9記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、金属アルコキシド類(a2)および/またはその加水分解物(但し、縮合物は含まず)(E)を含有する請求項1〜10のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
成分(E)が、アルコキシシラン類、アルコキシチタン類、アルコキシジルコニウム類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項11記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
不揮発分含有率が90重量%以上である請求項1〜12のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
さらに、エン−チオール反応を抑制する化合物を含有する請求項1〜13のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項16】
請求項1〜14いずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線硬化させて得られたコーティング層を基材上に有することを特徴とする塗装物品。
【請求項17】
コーティング層が基材よりも屈折率が高くなるように形成されている請求項16記載の塗装物品。
【請求項18】
導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板またはプリズムの用途に適した請求項17記載の塗装物品。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物を被着物に塗布し、これと別の部材とを貼りあわせ、ついで紫外線硬化させて得られることを特徴とする多層構造体。
【請求項20】
液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルターまたは光ディスク基板の用途に適した請求項19記載の多層構造体。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物を封止材として用い、紫外線硬化させて得られることを特徴とする封止物品。
【請求項22】
発光素子、受光素子、光電変換素子、または光伝送関連部品の用途に適した請求項21記載の封止物品。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物をガラスクロスに含浸させた後、紫外線硬化させて得られることを特徴とする透明基板。
【請求項24】
導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、カラーフィルター、光ディスク基板または液晶セル用プラスチック基板の用途に適した請求項23記載の透明基板。

【図1】
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【公開番号】特開2007−291313(P2007−291313A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203024(P2006−203024)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年11月1日 社団法人高分子学会発行の「第14回 ポリマー材料フォーラム要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年11月10日 社団法人高分子学会発行の「第24回 無機高分子研究討論会●講演要旨集」に発表
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】