細胞のサイトカインレセプター放出を引き起こす生物学的薬剤を用いた炎症の治療法
本開示は、サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こす生物学的薬剤の使用に関する発明を記載する。本発明の一つの局面は、N末端において例示的物質の長さを伸長すると産物の発現および産生が少なくとも10倍に促進されるという予想外の知見に基づく。伸長したタンパク質は、慢性関節リウマチのような炎症状態を治療するための薬学的組成物を調製するために使用することができる。本発明のもう一つの局面は、IL-1 I型レセプター、IL-1 II型レセプターおよびIL-6レセプターのような天然の酵素標的としてこれまでに知られていないサイトカインレセプターの放出を引き起こす生物学的薬剤の同定に基づく。本開示は、サイトカインレセプター放出タンパク質を治療用薬剤として開発するために有用な産物、アッセイ、発現系、精製方法、および産生プロトコールを提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、U.S. Express Mail Label EK 304526603 USにて2003年9月23日付けでU. S. Patent & Trademark Officeに出願された仮出願の優先恩典を主張する。この出願はTetsuya Gatanagaを第一発明者としてMeyer Pharmaceuticals LLCにより出願され(Docket Cyto-1)、「サイトカインレセプター開裂酵素を用いた炎症状態の治療」と題された。
【0002】
米国での手続きのため、先行出願ならびに発行済みの米国特許第6,569,664号および第6,593,456号は参照として全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
背景
炎症性事象は、先進国の人口のかなりの割合に対して有害な影響を及ぼす疾患状態の病理学において中心的役割を担う。このプロセスは、一つの細胞がもう一つの細胞において事象を開始するためのシグナルを発して炎症の続発症を開始することができるようにするポリペプチドの系であるサイトカインによって介在される。通常、この系は、感染性物質、有害な環境中物質、または悪性に形質転換した細胞からの防御反応の一環として機能する。しかし、炎症がその防御的役割の要求を上回ると、炎症は、関節炎、敗血症性ショック、炎症性腸疾患、および一連のその他のヒト疾患状態のような有害な臨床的影響を開始することができる。
【0004】
メトトレキセートおよびスルファサラジンのような分子量の小さい抗リウマチ薬は、約2/3の関節炎患者において、炎症を制御するには不十分である。過去10年間に開発された新しい生物学的薬剤は、従来の薬剤に対して不応性の患者の大部分において有効であることが証明されている。このような物質の標的は、しばしば、一つの細胞からもう一つの細胞にシグナルを伝達するリガンドを捕捉するか、またはエフェクター細胞の表面のレセプターを遮断してサイトカインシグナルの伝達を阻止し、それによって炎症事象を未然に防ぐかのいずれかの、サイトカイン経路の一つである。
【0005】
炎症状態を治療するための主な生物学的薬剤は、Amgen Corp.より販売されているエンブレル(登録商標)(エタネルセプト)である。これは、二量体としてIgG Fc領域に結合するヒトTNFレセプターの細胞外部分を含むキメラ分子である。この化合物はTNFの細胞表面TNFレセプターへの結合に干渉して、炎症状態の臨床的治療においてTNF経路の調節が重要であることを示している。
【0006】
エンブレル(登録商標)は、中等度ないし重度の慢性関節リウマチ、若年性リウマチ性関節炎、および乾癬性関節炎患者の治療に関して米国で許可されている。2003年には、強直性脊椎炎の治療に関して承認が期待される。2001年のエンブレル(登録商標)の売上高は7億5千万ドルであった。需要の伸びに合わせた増産が進められている。現在の適用における米国市場での予測売上高は、現在の適用だけで、2005年までに少なくとも40億ドルに達すると予想される。
【0007】
関節炎の治療のために現在米国で許可されているその他の生物学的薬剤は、TNF-αリガンドを結合するキメラ抗体であるレミケード(登録商標)(インフリキシマブ);ヒト化抗TNF-α抗体であるヒューミラ(商標)、およびインターロイキン-1レセプターのアンタゴニストである組換え型IL-1Raのキネレット(商標)(アナキンラ)である。
【0008】
偶然にも、サイトカインリガンドは、炎症に関与する細胞から放出されるサイトカイン経路の唯一のコンポーネントではない。標的エフェクター細胞上にあるサイトカインのレセプターは一部の炎症状態でも放出される(Gatanaga et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 87 : 8781-8784, 1990; Brakebusch et al., J. Biol. Chem. 269: 32488,1994)。
【0009】
GatanagaおよびGrangerは、1997年までに、ヒトTNFレセプター(p55およびp75の両イソ型)を細胞表面から開裂させるポリペプチドを単離していた(米国特許第6,569,664号)。彼らは、この酵素が敗血症性ショックの治療のための抗炎症性物質として使用できることを実証して、さらに関節炎、悪液質、および炎症性心疾患のようなその他の炎症状態の治療に使用できることを提唱した。その後、GatanagaおよびGrangerは、TNFレセプター放出に関連するタンパク質をコードした9つの組換え型cDNAクローンを単離した(米国特許第6,593,456号)。
【0010】
炎症状態を持つ対象の中には現在販売されている医用薬に対して応答しない者があり、また既存の生物学的薬剤の消費者コストは年間10,000ドルを上回ることもある。多くのサイトカイン経路を阻害して、かつ、より低いコストで生産することができる新しい生物学的薬剤の需要がある。
【発明の開示】
【0011】
概要
本開示は、サイトカインレセプターを細胞の表面から放出される生物学的薬剤の使用に関する発明を提供する。
【0012】
本発明の一つの局面は、例示的な生物学的薬剤であるMP8をより短くではなくより長くするすることによって、スケールが改善され、それによって少なくとも10倍産生することができるという予想外の知見に基づく。
【0013】
この発見は、多くの新しい目的のためのMP8伸長型(またはこのようなタンパク質をコードする核酸)の使用を可能とする:薬学的組成物を調製する段階、サイトカインレセプターを細胞表面から放出させる段階、サイトカインレセプターから細胞内へのシグナル伝達を阻害する段階、サイトカインレセプター放出阻害能に関して物質をスクリーニングする段階、サイトカインレセプターを細胞表面から放出させるタンパク質を産生する段階、または伸長MP8もしくはそれをコードする核酸を投与することによって対象の炎症を治療する段階。
【0014】
この状況における伸長MP8の一つの好ましい態様は、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドである。断片および変異型は、配列番号:53とはある程度の配列同一性(下記に示す)を持つが配列番号:41とは共通の配列を持たないとして定義することができる。固有配列の断片および変異型、ならびにそれらをコードする核酸も、既知の配列および産物が含まれないという条件において、本発明の一つの局面としての重要な組成物である。
【0015】
伸長MP8を使用する免疫アッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイおよびPCRアッセイ;伸長MP8およびそれに関連する核酸の医学分野での使用、つまり炎症性疾患を治療するための医用薬の調製における使用も意図される。
【0016】
本発明のもう一つの局面は、IL-1 I型レセプター、Il-1 II型レセプターおよびIL-6レセプターのような天然の酵素標的としてこれまでに知られていないサイトカインレセプターの放出を引き起こす生物学的薬剤の同定に基づく。
【0017】
本発明のこの局面の一つの態様は、これらのレセプターの一つ(またはそれらから得られるペプチド)を配列番号:1〜29から選択されるコード配列から発現するタンパク質、配列番号30〜59および80の任意の一つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む遺伝子組み換え技術によって産生されたタンパク質、または任意で配列番号:30〜42を超えて伸長するその断片のいずれかを含む組成物と接触させる段階を伴う。
【0018】
関連する態様は炎症を抑制するための方法であって、一般に炎症性細胞をIL-6レセプタープロテアーゼまたはIL-1レセプタープロテアーゼ(またはメタロプロテアーゼ)と接触させる段階を含み、IL-6またはIl-1レセプターの特異的放出を引き起こすための方法として参照することができる。もう一つの態様は、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病のような炎症状態を治療するための医用薬の調製におけるこのようなプロテアーゼの使用である。
【0019】
本発明のもう一つの局面は、溶液中のサイトカインレセプター放出酵素活性を測定するためのアッセイ方法である。溶液は、酵素(溶液中に含まれる場合)がペプチドを開裂する条件下において、本質的にp55 TNFレセプター、p75 TNFレセプター、IL-6レセプター、IL-1 I型レセプターまたはIL-1 II型レセプターから選択されるヒトサイトカインレセプターの8〜20個の連続するアミノ酸からなるペプチドと混合されて、ペプチドの開裂が測定され、それによって酵素活性が測定される。好ましい態様において、ペプチドは蛍光発光体および蛍光消光剤で標識されて、開裂は標識されたペプチドの蛍光の変化を測定することによって測定される。
【0020】
本発明のその他の局面は、当業者には本明細書の以下の説明および添付される特許請求の範囲から明らかとなる。
【0021】
詳細な説明
レセプター開裂酵素およびそれらを調節するタンパク質の市販の可能性については既に述べられている(米国特許第6,569,664号および第6,593,456号)。本開示は、臨床的および商業的に実用可能な治療戦略としてレセプターの開裂の促進に役立つ多くの画期的な改善を提供する。
【0022】
本発明の発見の一つは、元々の例示的クローンであるMP8(配列番号:9)の開発から得られた。研究目的のため、それは大腸菌(E. coli)において発現されて、インビトロおよび小動物での試験に適した量が得られた。しかし、ヒト臨床試験のために量産化する試みにより、発現したタンパク質の大半が封入体に含まれた状態で産生されて、収量に好ましくない影響を及ぼすという事実が明らかとなった。封入体からタンパク質を回収し、再生して活性タンパク質とするための多大な試みは失敗に終わった−タンパク質は不安定であり、回収された生物活性はごく少量であった。酵母を用いてMP8を作成するための代替的な試みは、このタンパク質が明らかに合成と同じくらいの速さで分解するために、徒労に終わった。この時点で、量産化の方法の問題は産物の製品化にとって重大な障壁であった。
【0023】
溶液は全く予想しなかった供給源から得られた。元々のMP8クローンは長い方のリーディングフレームのC末端部分であった(図20)。完全なリーディングフレームを大腸菌で発現させた際に半分よりも多いタンパク質が可溶性画分に産生されたことが明らかとなり、直接の精製および量産が可能となった。従って、本開示は、発現、産生および精製を促進するために、完全長のMP8およびN末端においてMP8コア配列を超えて伸長させたその他の変異型を提供する。
【0024】
活性な完全長のタンパク質は切断されたMP8タンパク質よりも格段に産生し易いという知見は、全く予測外であった。比較的小さなタンパク質は大抵、発現が容易であり、しかも、溶解度が高く、従って、通常は、完全長のMP8は元々のMP8クローンよりも発現および精製が困難であると予想される。さらに、別な方法で回収不能なMP8は、依然、完全長分子のコンポーネントであり、自己触媒が問題に寄与する限り、完全長のタンパク質が安定であることを確信するための理由はない。現在入手可能な発現系を用いて元々のMP8クローンを完全長の配列に変更することは臨床的な試験および使用のための産物の開発において重要な分岐点であった。
【0025】
本発明のもう一つの発見は、TNFレセプター放出タンパク質のファミリーに関する特異性試験のさらなる改善から得られた。特に、MP8はTNFレセプターばかりでなく、IL-6レセプターおよびIL-1レセプターの一つまたは双方のイソ型を開裂することも見出された。
【0026】
これには複数の重要な意味がある。例えば、MP8(配列番号:41または53)およびこのタンパク質ファミリーのその他のメンバーのいくつかは、TNF経路が病理の重要な部分ではない時の状態の治療のために開発されることができることを示している。IL-6は多発性硬化症および骨関節炎において中心的役割を果たすものとして意味付けられている。従って、IL-6のシグナル伝達を阻害するMP8のような生物学的薬剤はこれらの状態、ならびにTNF療法を目的とするレミケード(登録商標)およびエンブレル(登録商標)のような治療に不応性のその他の状態(または患者の状態がこのような治療に不応性となっている場合)のための治療用薬剤となる可能性がある。実際、MP8は多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)において有効であることが示されている(実施例13、図18)。
【0027】
もう一つの意味は、本発明の生物学的薬剤がTNFに加えてサイトカイン経路に影響を及ぼすことによって既存の生物学的薬剤と有効に相乗作用を示し得ることである。その他の試験は、エンブレル(登録商標)(TNF経路を阻害)およびキネレット(登録商標)(IL-1経路を阻害)がいずれも、一部の生物学的および臨床的状況において、それらが併用される場合よりもより有効であることを実証している。MP8をTNF阻害剤と併用することによって、臨床医は、根底にある病理へのより包括的なアプローチとして、TNF、IL-1、IL-6、および多分、その他のシグナル伝達経路に対して同時に影響を及ぼして疾患状態を調節することができ得る。
【0028】
従って、本発明は、MP8のようなサイトカインレセプター放出タンパク質がレミケード(登録商標)のようなTNF特異抗体などのTNF遮断物質、可溶性TNFコンポーネントを含むTNF結合タンパク質(エンブレル(登録商標)など)、TNFリガンドのドミナントネガティブな変異型、および当技術分野において公知であり得るまたは今後開発され得るその他のTNF阻害方法と同時にまたは順次使用される薬学的組成物、キット、または治療の方法を意図する。
【0029】
これらの生物学的薬剤の商業的開発から得られた本発明のさらなる局面は、サイトカインレセプター開裂を引き起こす酵素活性を測定するためのペプチドアッセイである(実施例4)。これにより、一部のレセプター開裂酵素の活性が精製され、用量によって標準化され、酵素阻害物質のスクリーニングに使用されることが可能となる。
【0030】
本開示は、サイトカインレセプター開裂を介在する生物学的薬剤が多くの異なる状態のための治療的および商業的な可能性を持つことを示す幅広い動物モデルデータを提供する。このデータは、本発明の生物学的薬剤が様々な種類の炎症性疾患の治療のために現在一般大衆に提供されている治療用製剤を上回る重要な利点を持つことを示す。利点のいくつかは以下の通りである:
・サイトカインレセプターの開裂はTNF経路を2通りの方法で阻害する:第一に、レセプターはエフェクター細胞の膜から除去されるので、シグナル伝達に関与することはできない。第二に、レセプターの放出されたリガンド結合部位はエンブレル(登録商標)およびレミケード(登録商標)と同等の方法で任意のインカミング(incoming)TNFリガンドを中和する。
・レセプター放出は酵素開裂によって引き起こされるので、本発明の生物学的薬剤はエンブレル(登録商標)のようなレセプターアンタゴニストが化学量論的量で到達するところを触媒量で到達する可能性を持つ。このことは、酵素の単一分子が多くのTNFリガンドおよびレセプターを不活化して、その結果、投与される薬剤の一分子当たりの効果が増大することを意味する。
・本発明の生物学的薬剤は、通常、炎症を調節するために作用する天然のヒトタンパク質として製剤化することができる。このことは、それらが免疫原性でないことを意味する。さらに、細胞から放出されるレセプターは生理学的に自然な方法でインカミングサイトカインを中和する内因性(非組換え型)の化合物である。
・本発明の分子は、その他の特異的な生物学的薬剤と同じく、副作用性質の可能性が低い。5つの異なる動物疾患モデルにおいて、安全性の懸念は生じていない。生物学的薬剤の特異性は臨床試験の早期完了を促進する。
・例示的クローンであるMP8-FLは比較的小さなタンパク質であり、その他の生物学的薬剤の特異性および臨床的恩典を保持しつつ、質量当たりの大きな効果をもたらす。小さなサイズは、炎症を起こした関節近くへの投与を可能とする皮内送達を含めて、臨床製剤化において幅広い選択肢を提供する。
・この報告のデータは、本発明のプロテアーゼによって放出されるサイトカインレセプターが投与後数日間にわたって持続することを示す。このことは、週1回(またはそれよりも少ない)この酵素の投与が完全な治療効果に十分であり得ることを意味する。
・本発明の製剤は現在確立されている薬剤とは異なるメカニズムによって作用するので、単に代替品としての可能性を持つばかりでなく、その他の治療用薬剤の効果を高めて、適用の数を増やし、それによって市場規模を拡大することも可能である。
・現在までに調べられたクローンはすべて、細菌発現によって産生された場合に機能活性を保持する。このタンパク質は、明らかに、レミケード(登録商標)のような抗体製剤またはエンブレル(登録商標)のような免疫グロブリン誘導体のように哺乳動物細胞内でのグリコシル化を必要としない。用量当たりの生産コストが適度であることは、競争力のある重要な利点である。
【0031】
本発明の概要および添付される特許請求の範囲に基づき、実施例の項の例証を指標として、当業者は本発明の実践においてどの技術が用いられるかを容易に認識する。以下の詳細な説明は当業者のさらなる便宜のために提供される。
【0032】
定義および基礎的技術
炎症を抑制するために作用する本発明の物質は、本開示において、酵素またはタンパク質を開裂または放出するサイトカインレセプターとして様々に記載される。それらの用語は互換的であり、明確に要求される場合を除いて、何らかの特定の生化学的または生物学的活性を要求することを意味するものではない。例えば、本発明のクローニングされたタンパク質(MP8-FL2およびその誘導体など)は、それ自体、タンパク分解活性を持ち得て、または(もう一つのタンパク質の発現または活性化を引き起こすなどの)非直接的な方法で炎症細胞からの一つまたは複数の不特定のサイトカインレセプターの放出を引き起こし得る。見かけのタンパク分解活性の実証は、タンパク質の酵素機能に直接的に起因し得るか、または活性な生物学的薬剤の相対濃度を測定するための代理として作用する同時精製産物に起因することができる。治療上の恩典は化合物が効果を発揮するメカニズムを理解しなくても経験的に調べることができるため、明確に記載されない限り、主な産物を参照するために用いられる用語は本発明の化合物の治療上の使用を制限することを意味するものではない。
【0033】
本発明の全般的説明において用いられる名称は、そうでないことが明確に記載または意味されない限り、機能的に同等なすべての断片、変異型および相同体を含むことを意味する。例えば、具体的な作業用例証において「コアMP8」という記載は配列番号:41の配列を持つポリペプチド(通常はHISタグを持つ)を意味する;そうでない場合は、一般的に配列番号:41と一定の同一性および適切な生物学的機能を持つ断片および相同体を示す。具体的な作業用例証における「完全長のMP8」または「MP8-FL」という記載は、配列番号:53の配列を持つポリペプチド(任意で、HISタグを持つ)を意味する。そうでない場合は、一般に、配列番号:53の断片であって配列番号:41の配列を超えて完全な配列番号:53までの任意の長さで伸長する配列を持つ任意の断片、ならびにそれらと一定の同一性および適切な生物学的機能を持つ相同体を示す。作業用の例証以外の「MP8」という記載は、そうでないことが明確に記載または意味される場合を除いて、互換的に完全長のMP8およびコアMP8(その断片および変異型を含む)を示す。
【0034】
「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかまたはそれらの類似体の任意の長さのヌクレオチドの重合型を指す。非制限的な例には以下が含まれる:遺伝子または遺伝子断片、mRNA、cDNA、組換え型または合成ポリヌクレオチドのその他の型、プラスミド、ベクター、核酸プローブ、およびプライマー。その用語は二本鎖および一本鎖分子を互換的に示す。そうでないことが明記または要求されない限り、本明細書に説明される本発明のポリヌクレオチドである任意の態様は二本鎖型、および二本鎖型を形成することが公知であるまたは推定される2つの相補的一本鎖型のそれぞれの両方を含む。
【0035】
「ハイブリダイゼーション」は、一つまたは複数のポリヌクレオチドが反応してヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化する複合体を形成する反応を指す。ハイブリダイゼーション反応は異なる「ストリンジェンシー」の条件下で実施することができる。関連する条件には、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような反応混合液中のさらなる溶質の存在が含まれる。ストリンジェンシー増大の条件は、10×SSC(0.15M NaCl、15mMクエン酸緩衝液)中で30℃;6×SSC中で40℃、6×SSC中で50℃、6×SSC中で60℃、または0.5×SSC中で約40℃、もしくは50%ホルムアミドを含む6×SSC中で約30℃である。
【0036】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列同一性のパーセントは、比較する配列を並べて、続いて整列した各位置における共通残基の数を数えて算出する。挿入または欠失の存在についてペナルティーは設定しないが、整列させる配列の一つに明らかに多くのアミノ酸残基を収容しなければならない場合のみそれらを可能とする。比較する配列の一つが「連続的」であることが示される場合、比較においてその配列中のギャップは許可されない。同一性パーセントは、比較または参照配列の残基と同一である試験配列の残基に関して与えられる。
【0037】
本明細書で用いられるように、ポリヌクレオチドの「発現」はRNA転写産物を示す。その後のタンパク質またはその他のエフェクター化合物への翻訳も起こり得るが、明記される場合を除いて、必須ではない。「遺伝的変化」は、遺伝子要素が細胞内に人為的に導入されて、その結果、遺伝子要素が発現もしくは複製し、または細胞の子孫によってその要素が遺伝し得るプロセスを示す。
【0038】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸ならびにそれらの相同体および誘導体の重合体を指すために互換的に用いられる。それらは天然の供給源から単離され得て、または遺伝子組み換え技術による発現もしくは化学的合成によって作成することができる。
【0039】
タンパク質の折りたたみおよび生物学的機能はアミノ酸配列における挿入、欠失および置換を伴うことができることが理解される。いくつかのアミノ酸置換は一層容易に許容される。例えば、疎水性側鎖、芳香族側鎖、極性側鎖、正もしくは負の電荷を持つ側鎖、または2つもしくはそれよりも少ない炭素原子を含む側鎖を持つアミノ酸の同様の特性の側鎖を持つもう一つのアミノ酸による置換は、2つの配列の本質的な同一性を変動させることなく起こることができる。相同領域を決定するための方法および相同性の程度を判定するための方法については、Altschul et al.、Bull. Math. Bio. 48: 603-616, 1986;およびHenikoff et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919, 1992に述べられている。ポリペプチドの機能性を保持する、または(活性、安定性の向上、または免疫原性の低下のような)新しい有用な特性を付与する置換は特に好ましい。
【0040】
「抗体」(互換的に複数形で用いられる)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも一つの抗原認識部位を介してポリペプチドのような標的に特異的に結合することのできる免疫グロブリン分子である。本明細書で用いられるように、この用語は無傷の抗体ばかりでなく、抗体の断片、キメラ、および所望の特異性に関する少なくとも一つの抗原結合部位を含む相当物を含む。
【0041】
「単離された」ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその他の物質は、その物質もしくは類似の物質が自然に発生するまたは最初の得られる場所に含まれ得るその他のコンポーネントの少なくともいくつかを欠く物質の調製物を指す。従って、例えば、単離された物質は供給源混合物からそれを濃縮するための精製技術を用いて調製することができる。濃縮は、溶液の体積当たりの重量のような絶対的な基準に基づいて測定することができ、または、供給源混合物に含まれる第二の潜在的干渉物質に関連して測定することができる。物質は、化学合成または遺伝子組み換え発現のような、人為的な構築プロセスによって単離された状態で提供されることもできる。
【0042】
「臨床試料」という用語は、対象から得られて、診断試験のようなインビトロの操作において有用な様々な試料タイプを含む。定義には、外科的切除、病理学標本、または生検標本として得られた充実組織試料、臨床的な対象から得られた細胞または培養から得られたそれらの子孫、血液、血清、血漿、脊髄液、滑液および尿のような液体試料、ならびに疾患の潜在的指標を含むこのような試料の任意の画分または抽出物が含まれる。
【0043】
特記する場合を除いて、本発明の実践は分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の通常の技術を用いる。
【0044】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、化学合成または遺伝子組み換え発現を含む任意の適切な技術によって調製することができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本開示に提供されるデータを用いて、〜50よりも少ない塩基対の配列は、商用のサービスを介して、または三エステル法もしくは亜リン酸法のような公知の合成方法によって、化学的合成で簡便に調製される。適切な方法は、モノヌクレオシドホスホラミダイド結合単位を用いた固相合成である(米国特許第4,415,732号)。アンチセンス療法での使用のために、ポリヌクレオチドは薬学的調製物に高い安定性をもたらす化学的手法によって調製することができる。非限定的な例として、チオールで誘導体形成したヌクレオシド(米国特許第5,578,718号)、および修飾した骨格を持つオリゴヌクレオチド(米国特許第5,541,307号および第5,378,825号)が含まれる。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、所望の配列を持つ鋳型のPCR増幅によって得ることもできる。所望の配列にまたがるオリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングして鋳型に戻し、DNAポリメラーゼによって伸長させ、続いて、鋳型と伸長したオリゴヌクレオチドが解離するように高温で融解する。所望の量の増幅ポリヌクレオチドが得られるまで、このサイクルを反復する(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)。適切な鋳型には、ジャーカット(Jurkat)T細胞ライブラリ、およびサイトカインレセプターの放出を引き起こす遺伝子を含むその他のヒトまたは動物発現ライブラリが含まれる。ジャーカットT細胞ライブラリは、American Type Culture Collection、10801 University Blvd.、Manassas VA 20110、U.S.A.(ATCC #TIB-152)から入手可能である。生産規模の量の大きなポリヌクレオチドは、所望の配列を適切なクローニングベクターに挿入してクローンを複製することによって、極めて簡便に得られる。例示的なクローニングおよび発現方法を実施例2に例証する。
【0047】
好ましいポリヌクレオチド配列は、好ましさに関して昇べきに、本開示に例示される配列の一つと50%、70%、80%、90%または100%同一である。例示的配列と比較して同一または相同な配列における連続する残基の長さは、好ましさに関して昇べきに約15、30、50、75、100、200、500または1000残基であり、クローン全体の長さまでとすることができる。(ハイブリダイゼーション特性またはコードするものに関して)コードされるポリペプチドの保存的置換を引き起こすまたは機能を保持するヌクレオチドの変化は特に好ましい置換である。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドは、細胞または組織試料中の変化したレセプター放出活性の測定に用いることができる。これには、レセプター放出に影響を及ぼす核酸が試料中に含まれる場合、ポリヌクレオチドのこの核酸との特異的なハイブリダイズを可能とする条件下において試料をポリヌクレオチドと接触させる段階、および段階a)の結果としてハイブリダイズしたポリヌクレオチドを測定する段階を伴う。試験の特異性は複数の方法の一つにおいて示すことができる。一つの方法は、標的とは結合するが試料中に含まれる可能性のあるその他の核酸とは結合しないように、十分な長さであり、検出される配列と十分に同一である配列を持つ本発明のポリヌクレオチドである特異的プローブの使用を伴う。このプローブは、典型的には、後に検出することができるように(直接的または二次試薬を介して)標識される。適切な標識には、32Pおよび33P、化学発光試薬および蛍光試薬が含まれる。ハイブリダイゼーション反応後、ハイブリダイズしたプローブの量が測定できるように未反応のプローブを洗い流す。シグナルは分岐プローブを用いて増幅することができる(米国特許第5,124,246号)。もう一つの方法において、ポリヌクレオチドはPCR反応のためのプライマーである。特異性は、関心の対象の配列を増幅するペアプローブの能力によって示される。適切な回数のPCRサイクル後、得られる増幅産物の量は試料中に元々含まれる標的配列の量に相関する。
【0049】
このような試験は、研究、および疾患状態の診断または評価の双方において有用である。例えば、サイトカインのシグナル伝達は腫瘍細胞の排除において役割を担い、癌は疾患を起こした組織内のサイトカインレセプター放出を活性化することによって排除プロセスを回避し得る。従って、いくつかの状況下において、レセプター放出に影響を及ぼす分子の高発現は癌の進行と関連する可能性がある。レセプター放出活性を高めるために遺伝子療法が実施される場合のように、診断試験は療法のモニタリングにも有用である。
【0050】
本発明のポリヌクレオチドは、以下に説明するように、ポリペプチド産生のために真核生物または原核生物発現系で発現することもでき、または医用薬の調製に使用することもできる。
【0051】
ポリペプチド
本発明の短いポリペプチドは固相化学合成によって調製することができる。固相化学合成の原理は、Dugas & Penney, Bioorganic Chemistry, Springer-Verlag NY pp 54-92 (1981)および米国特許第4,493,795号に見出することができる。自動固相ペプチド合成は、PE-Applied Biosystems 430Aペプチド合成装置(Applied Biosystems, Foster City CAより販売)のような装置を用いて実施することができる。
【0052】
長いポリペプチドは発現クローニングによって簡便に得られる。所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは転写および翻訳のための要素を制御するために機能的に結合されて、次いで、適切な宿主細胞の導入される。発現は、大腸菌(ATCC アクセッション番号31446または27325)のような原核生物、酵母ピチアパストリス(Pichia pastoris)のような真核微生物、または昆虫もしくは哺乳動物細胞のような高度真核生物において達成され得る。米国特許第5,552,524号には多くの発現系が記載されている。発現クローニングは、Lark Technologies, Houston TXのような商用サービスに依頼することができる。タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーおよびHPLCのような、タンパク質化学の分野における標準的方法によって産生宿主細胞から精製される。発現産物は、任意で、アフィニティー精製を促進するための配列タグを付けて産生されて、このタグは後に除去することができる。
【0053】
好ましい配列は、本開示に例示される配列の一つと、好ましさに関して昇べきに、40%、60%、80%、90%または100%同一である。固有のヒトポリヌクレオチドと比較して同一または相同な配列の長さは、好ましさに関して昇べきに約7、10、15、20、30、50、100または200残基であり、コード領域全体の長さまでとすることができる。
【0054】
ポリペプチドは、ペプチド開裂アッセイにおいてサイトカインレセプター放出調製能に関して調べることができる。ポリペプチドをレセプター(好ましくはC75またはTHP1細胞のような細胞の表面に発現)と接触させて、ポリペプチドがレセプターの開裂および放出を増加または減少させる能力を測定する。
【0055】
本発明のポリペプチドは抗体を産生するための免疫原として用いることができる。大きなタンパク質は抗体のカクテルを産生し、短いペプチド断片は無傷タンパク質の小さな領域に対する抗体を産生する。抗体クローンは、アミノ酸約10個の長さの短い重複ペプチドを産生することによって、タンパク質結合部位に関してマッピングすることができる。重複ペプチドは、GenosysのSPOTS(商標)キットを製造業者の説明書に従って使用して、標準的なF-Moc化学によりナイロン膜の支持体上に調製することができる。
【0056】
本発明のポリペプチドは、以下に説明するように、治療の状況においてサイトカインのシグナル伝達に影響を及ぼすために用いることもできる。
【0057】
変異型
使用者は、質量に対する活性の比率を高めるため、グリコシル化部位を変化させるため、産生効率を高めるため、またはその他の任意の価値のある目的のために、本開示に提供されるプロトタイプ配列の断片、変異型、またはその他の相同体を作成することを決定してもよい。
【0058】
TNFレセプター放出を引き起こす本発明に開示されるタンパク質の断片(例えば、配列番号:41および53)は、マッピング機能のための標準的な方法を用いることによって容易に同定することができる。組換えタンパク質をNまたはC末端で切断し、続いて、それぞれ、実施例4および5に例証するようなペプチド開裂アッセイまたはレセプター放出アッセイのような処理能力の高い方法で実施できる適切なアッセイを用いて機能を調べる。切断は活性が消失するまで継続して、その時点でタンパク質の最小機能単位が特定される。同定されたサイズまでのタンパク質の任意の部分を含む断片は、少なくともタンパク質の機能性コアを含む融合構築物であることから、多分、機能性であろう。
【0059】
コード配列に一つまたは複数のアミノ酸変化を組み込んだ変異型を作成するために、当業者は特定のヌクレオチドまたはコドンを変化させて活性を再検査することができる。任意で、使用者は公知の相同性データを部位特異的突然変異誘発における先導としてもよい。例えば、MP8の変異型を作成するために、使用者は脊椎動物において保存される領域(配列番号:89)または哺乳動物おいて保存される領域(配列番号:90)における突然変異を回避するよう望み得る。かなりの変異(配列番号:89または90における多くのx)を示す領域は、欠失または付加を伴う可能性が高いことがある。この戦略を用いて、使用者は配列同一性の程度(または遺伝子配列のプロトタイプ配列とハイブリダイズする能力)によって特定可能な相同体を得る。機能性MP8変異型は一つまたは複数の保存モチーフ(配列番号:91〜102)を含んでもよく、特にコアタンパク質(配列番号:97〜102)に含んでもよく、分子のこの領域はレセプター放出活性と関連する。
【0060】
特定の変化が望ましい場合を除いて、配列内の特定の位置に突然変異をターゲティングする必要はない。機能性変異型の大量採取を作成するための効率的方法は、ランダム突然変異戦略を使用することである。標準的な指導書であるProtocols in Molecular Biology(Ausubel et al. eds.)およびMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Sambrook et al. eds.)は、化学的突然変異誘発、カセット式変異誘発、縮重オリゴヌクレオチド、相互プライミングオリゴヌクレオチド、リンカースキャニング突然変異、アラニンスキャニング突然変異、および誤りがちPCRを用いた技術について記載している。その他の有効な方法には、Stratageneの大腸菌変異誘発株(Greener et al., Methods Mol. Biol. 57: 375, 1996)、およびMaxygenのDNA混合技術(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8: 724, 1997; Harayama, Trends Biotechnol. 16: 76, 1998;米国特許第5,605,793号および第6,132,970号)が含まれる。使用者が特許請求の範囲の可変性の外側限度近くの変異型(即ち、配列番号:2と〜90%同一のみ)を調べようとする限り、代表的な配列を変異および機能性試験の連続サイクルに供することができ−または、DNA混合技術のようにより急激な変化を生じる突然変異戦略を選択することができる。
【0061】
特許請求されるタンパク質の変異型を得る際に使用される当業者が入手可能な複数の市販のサービスおよびキットがある。例示の目的で、この種類の突然変異誘発プロジェクトのために特別に設計された複数の市販の系に関する情報をこの修正に添付する(証拠1):InVitrogen(商標)Life Technologiesより販売されているGeneTailor(商標)部位特異的突然変異誘発系(証拠1);BD Biosciences/Clontechより販売されているBD Diversify(商標)PCRランダム突然変異誘発キット;MJ Research Inc.より販売されているTemplate Generation System(商標)、Stratageneより販売されている大腸菌の変異誘発株であるXL1-Red(商標);および同じくStratageneより販売されているGeneMorph(登録商標)ランダム突然変異誘発キット。任意のこれらの種類の系を実施例1および4に述べるような適切な機能アッセイと併用することによって、変異型を処理能力の高い方法で作成および検査することができる。
【0062】
突然変異誘発の各反復の後、使用者は得られた変異型を既述のように生物学的活性に関してスクリーニングして、サイトカインレセプター放出を引き起こす能力を保持しているクローンを選択することができる。任意で、選択されたクローンは、元々の配列からの所望の程度の変異が得られるまで、さらなる突然変異誘発過程に供することができる。
【0063】
伸長配列
本開示の重要な発見の一つは、コアタンパク質を超えてMP8の配列を伸長させるとタンパク質の産生および回収が10倍に向上することを示す知見である(実施例15)。従って、本発明の一つの局面は、完全長の配列(配列番号:53)の、先にコア配列(配列番号:41、およびその機能性亜断片)に限って意図された目的のための使用である。使用者は、完全長のMP8配列の断片および変異型であって、コア断片よりも長いが完全オープンリーディングフレームよりは短い中間のサイズの断片および変異型を容易に作成することができる。これらの多くは、コアタンパク質よりも産生が大幅に容易であるという特性を配列番号:53と共有する。
【0064】
このような有用な中間の大きさの断片を見出するために、2つの試験が実施される。第一に、サイトカインレセプター放出を引き起こす能力を保持しているかどうかを調べるために、候補である組換え断片について試験を行う。使用者は、候補である断片が実施例15に概述される戦略に従って大腸菌、ピチアパストリスまたはその他の発現系での大規模生産に適しているかどうかも調べる。一般的には、どの組換えタンパク質が適切であるかを調べるために完全な精製プロトコールを実施する必要はない:より簡単に、コード配列を系にクローニングして発現を誘発し、可溶性抽出物を使用する系に適した状態で調製する。その後、直ちに、適切な特異抗体を用いて抽出物中の標的タンパク質の量に関して抽出物をイムノアッセイすることができる。
【0065】
同様に、コアタンパク質を超えて伸長する配列番号:53の変異型は、前節で述べた突然変異戦略を用いて作成し、生物活性および発現の容易さの双方について試験することができる。変異型タンパク質は、配列番号:53と一定の同一性(例えば、70%、80%または90%同一)を有するが、それよりも長く(1個、10個もしくは50個、またはそれよりも多いアミノ酸)、配列番号:41とは同じ程度の同一性を有さないアミノ酸配列を含むか、または、からなる。
【0066】
または、あるいは加えて、変異型は、例えば配列番号:41のN末端方向にもう一つのタンパク質の配列を含む融合タンパク質として構築され得る。二番目の配列は、配列番号:53のN末端の100個の残基に代わることができて、適切な発現系において回収可能な可溶性タンパク質としてタンパク質の産生を促進する。候補の二番目の配列は、可溶性であり、一般的な発現系において容易に産生可能であり、しかも、MP8の生物活性に干渉する可能性が低いことが公知である無害のヒトタンパク質、例えばアルブミンまたはその他の血清タンパク質から得ることができる。その他の候補配列は、例えば、TNFリガンド、隣接する細胞表面レセプターのためのリガンド、または一本鎖抗体のように、標的組織近傍に融合タンパク質の蓄積を促進し得る。融合タンパク質への組み込みに適したタンパク質配列は、既述の試験系を用いて経験的に調べることができる。
【0067】
抗体
本発明のタンパク質に対するポリクローナル抗体は、脊椎動物に免疫原の型の本発明のポリペプチドを注入することによって作成することができる。ポリペプチドの免疫原性は、KLHのような担体と結合またはフロイントのアジュバントのようなアジュバントと混合することによって高めることができる。所望ならば、技術の組み合わせによって特異抗体の活性をさらに高めることができ、それらには、プロテインAクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびイムノアフィニティークロマトグラフィーが含まれ得る。
【0068】
モノクローナル抗体は、Harrow & Lane(1988)、米国特許第4,491,632号、第4,472,500号、および第4,444,887号、ならびにMethods in Enzymology 73B:3(1981)のような標準的参照文献に従って作成することができる。つまり、哺乳動物を免疫して、抗体産生細胞(通常は脾細胞)を回収する。細胞は、非産生性ミエローマと融合、エプスタイン・バーウイルスに導入、または腫瘍DNAで形質転換することによって、不死化する。処置した細胞をクローニングして培養し、所望の特性を持つ抗体を産生するクローンを選択する。
【0069】
抗体は、断片を用いて、必要ならば、不要な活性を選択またはこれを吸収除去することによって、分子の特定の領域について産生することができる。例えば、コアMP8に対する抗体は、配列番号41またはその一部からなるタンパク質を免疫原として用いることによって産生することができる。完全長に対する抗体は、配列番号:53の一部であって配列番号:41を含まない部分を用いて免疫することによって;または完全な配列番号:53を用いて免疫して配列番号:41を用いて不要な活性に対して選択または吸収することによって、産生することができる。
【0070】
特異抗体分子(任意で、一本鎖可変領域の型)を得るその他の方法は、免疫担当細胞またはウイルス粒子のライブラリを標的抗原と接触させる段階、および明確に選択されるクローンを産生する段階を伴う。免疫担当ファージは、免疫グロブリン可変領域セグメントを表面に発現するように構築することができる。Marks et al, New Eng. J. Med. 335: 730, 1996、International Patent Applications WO 9413804、WO 9201047、WO 90 02809、およびMcGuiness et al., Nature Biotechnol. 14: 1449, 1996を参照されたい。
【0071】
本発明の抗体は、レセプター放出を引き起こすと考えられるタンパク質に関する免疫アッセイにおいて用いることができる。免疫アッセイの一般的技術は、「The Immunoassay Handbook」、Stockton Press NY, 1994;および「Methods of Immunological Analysis」、Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993)に記載されている。抗体は、試料中に含まれる可能性のある任意の調節物質とは特異的に結合するが存在し得るその他のタンパク質とは結合しない条件下において、試験試料と混合する。形成される複合体をインサイチューにおいて(米国特許第4,208,479号および第4,708,929号)、または未反応の試薬と物理的に分離することによって(米国特許第3,646,346号)測定することができる。分離アッセイは、一般に、複合体の検出および定量を促進するための標識した標的試薬(競合アッセイ)または標識抗体(サンドイッチアッセイ)を伴う。適切な標識は、125Iのような放射性同位体、β-ガラクトシダーゼのような酵素、およびフルオレセインのような蛍光標識である。本発明の抗体は、免疫組織学により固定した組織切片においてレセプター放出を引き起こす分子を検出するために用いることもできる。抗体を組織と接触させて、未反応の抗体を洗い流し、続いて、一般的には標識した抗免疫グロブリン試薬を用いて、結合した抗体を検出する。免疫組織学は調節物質の存在ばかりでなく、組織内での位置も示す。
【0072】
サイトカインレセプターの放出を引き起こす分子の検出は、研究目的および臨床的使用において関心の対象である。レセプター開裂酵素の高発現は癌の進行と関連する可能性がある。診断的試験は、治療コースにおいて投与されるレセプター放出を引き起こす物質のモニタリングにおいても有用である。
【0073】
本発明の抗体は、医用薬の調製にも使用することができる。治療の可能性を持つ抗体には、レセプタープロテアーゼの消失を促進またはその生理学的作用を遮断することによって、レセプター放出活性に影響を及ぼす抗体が含まれる。以下の項に記載されるアッセイに従って、望ましい活性に関して抗体をスクリーニングすることができる。
【0074】
スクリーニングアッセイ
本発明は、本発明のレセプター放出化合物の活性を調節して、それによってサイトカインのシグナル伝達に影響を及ぼす産物の選択および開発のためのスクリーニング方法を提供する。
【0075】
本発明に組み入れられるスクリーニング方法は、レセプタープロテアーゼの作用にタンパク質レベルで干渉する物質をスクリーニングするための方法である。この方法は、(C75RまたはTHP細胞のような)サイトカインレセプターを発現する細胞をレセプター放出活性を持つ本発明のポリペプチドと共にインキュベートする段階を伴う。本アッセイにおいて分子にレセプター放出活性を付与するために2つの選択肢がある。一つの選択肢では、ポリペプチドは試験される物質と共に試薬として細胞の培地に加えられる。もう一つの選択肢では、細胞は分子を多量に発現するように遺伝的に変化されて、アッセイでは試験物質を細胞と接触させることのみを必要とする。この選択肢によって、多くの試験化合物に関する処理能力の高いスクリーニングが可能となる。
【0076】
いずれにしても、レセプター放出活性を亢進または減少させる化合物を特定するために、被験物質を加えた場合および加えない場合についてレセプター放出速度を比較する。(ポリペプチドを発現しない細胞を用いて)添加するポリペプチドが存在しない状態でレセプター放出に対する物質の活性を調べる並行実験を実施すべきである。これにより、試験物質の活性が加えられるレセプター放出分子に対する影響を介して発現するのか、またはその他の何らかのメカニズムを介して発現するのかが明らかとされる。
【0077】
本発明のもう一つのスクリーニング方法は、サイトカインレセプター開裂酵素がレセプター開裂部位にまたがる短いペプチドと混合されるアッセイを伴う。酵素活性は、例えば、ペプチドの分子量の変化(質量分析により検出可能)または蛍光消光ペアを用いたペプチドの標識により測定することができる。続いて、ペプチドの開裂の速度が酵素によって阻害されるかどうかを調べるために、この系に試験化合物を加える。このようなアッセイの例示を以下の実施例4に示す。
【0078】
スクリーニングアッセイは、レセプター放出に対する影響を介して、細胞上のサイトカインレセプターの量に影響を及ぼす能力を持つ小分子化合物の高処理スクリーニングとして有用である。所望の活性を持つ小分子化合物は、より安定である、および生産コストが低いなど、薬学的組成物の製造において有益な特性を持つ。
【0079】
医用薬およびその使用
先に述べた通り、本発明に組み入れられる一部の製剤の有用性はサイトカインからのシグナル伝達に影響を及ぼすことである。レセプター放出を促進する製剤は細胞表面のサイトカインレセプターを減少させる作用を持ち、それによって、シグナル伝達を抑制する。逆に、レセプター放出を阻害する製剤はサイトカインレセプターの開裂を阻止して、シグナル伝達を増強する。
【0080】
シグナル伝達に影響を及ぼす能力は、サイトカインシグナル伝達が状態の病理に寄与する臨床状態の管理において重要な関心の対象である。このような条件には以下が含まれる:
・心不全。IL-1βおよびTNFは、炎症プロセスの持続、炎症細胞の補充および活性化における中心的介在物質であると考えられている。うっ血性心不全、移植拒絶反応、心筋炎、敗血症、および熱傷性ショックの場合、炎症は心機能を抑制する。
・悪液質。癌のような慢性疾患の経過において発生する全般的な体重減少および消耗。サイトカインは、食欲、エネルギー消費および代謝速度に影響を及ぼすと考えられる。
・クローン病。多くのサイトカインによって介在される炎症プロセスは、リンパ浮腫およびリンパ球浸潤の結果として生じる腸管壁の肥厚をもたらす。
・エンドトキシンショック。大腸菌のようなグラム陰性細菌からのエンドトキシンの放出によって誘発されるショックは、サイトカイン介在性の炎症を伴う。
・関節炎。TNF、IL-6、IL-1およびその他のサイトカインは一酸化窒素シンターゼの発現を促進して、慢性関節リウマチおよびその他の関節炎サブタイプの疾患の病原に関与すると考えられる。
【0081】
関心の対象のその他の状態には、病理の一部が炎症または炎症およびその他の生物学的系の交差によって引き起こされる状態を含む。非限定的な例として、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、動脈硬化症、敗血症、潰瘍性大腸炎、動脈硬化症、微生物感染によって発生する炎症、ならびにI型糖尿病、重症筋無力症、および全身性エリテマトーデスのような自己免疫性病因を持つ疾患が含まれる。
【0082】
レセプター開裂活性を促進する本発明のポリペプチドは、サイトカインシグナル伝達を抑制または正常化する目的で投与することができる。例えば、うっ血性心不全またはクローン病の場合、このポリペプチドは炎症の続発症を緩和するために定期的に投与される。治療は、任意で、小分子の抗炎症剤(メチルトレキセートなど)、またはシグナル伝達に影響を及ぼす(エンブレル(登録商標)のようなサイトカイン遮断薬、またはキネレット(登録商標)のようなレセプターアンタゴニストなど)もしくはその他の方法で炎症の程度を緩和するその他の物質と併用される。
【0083】
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子療法によってサイトカインレセプターの開裂を促進するために使用することもできる。コード配列は、ヒト細胞における転写および翻訳のための制御エレメントと機能的に結合される。続いて、疾患部位の細胞におけるコード配列の導入および発現を促進する型で提供される。局所注入に適した型には、裸のDNA、陽イオン性脂質で包装されたポリヌクレオチド、および(アデノウイルスおよびAAV構築物のような)ウイルスベクターの型のポリヌクレオチドが含まれる。当業者に公知である遺伝子療法の方法は、米国特許第5,399,346号、第5,827,703号および第5,866,696号に記載される方法を含む。
【0084】
サイトカインが疾患の緩解に有益な役割を担うと考えられる場合、サイトカインシグナル伝達に影響を及ぼす能力も関心の対象である。特に、TNFおよびその他のサイトカインは固形腫瘍の壊死において有益な役割を担う。従って、本発明の産物は、レセプター放出を阻害して、それによってサイトカインシグナル伝達を高めて有益な影響を強化するために、癌患者に投与することができる。
【0085】
レセプター放出を阻害する本発明の態様は、アンチセンスポリヌクレオチドを含む。持続性の阻害活性を付与する方法は、アンチセンス遺伝子療法を実施することである。細胞の内側でRNAを発現して、次に標的遺伝子の転写を抑制する遺伝子構築物が設計される(米国特許第5,759,829号)。ヒトの場合、アンチセンス療法のより頻繁な型は、エフェクターアンチセンス分子を標的mRNAのセグメントに対して相補的な短い安定ポリヌクレオチド断片として(米国特許第5,135,917号および第5,789,573号)−この場合はレセプター放出分子をコードする転写物として−直接投与することである。レセプター放出を阻害する本発明のもう一つの態様は、前節で記載されたように構築されたリボザイムである。mRNAの翻訳の阻害におけるリボザイムの機能については、米国特許第4,987,071号および第5,591,610号に記載されている。
【0086】
本発明の産物が本開示で述べられるインビトロアッセイにおいて適切なレセプター放出活性を持つことが明らかとなったら、サイトカイン介在性の疾患プロセスに関する動物モデルを用いてその有用性についても調べることが好ましい。以下の実施例は、敗血症、関節炎、多発性硬化症、浮腫および喘息の動物モデルを提供する。当業者は、サイトカインシグナル伝達または炎症に対する影響を調べるためのその他の動物モデルを認識するであろう: 例えば、Weyrich et al.(J. Clin. Invest 91: 2620, 1993)およびGarcia-Criado et al.(J. Am. Coll. Surg. 181: 327, 1995)の心虚血血流再建モデル;Steinberg et al.(J. Heart Lung Transplant. 13: 306, 1994)の肺虚血血流再建モデル、International Patent Application WO 9635418の肺炎症モデル;Sharar et al.(J. Immunol. 151: 4982, 1993)の細菌性腹膜炎モデル、およびMeenan et al.(Scand J. Gastroenterol. 31: 786, 1996)の大腸炎モデル。
【0087】
薬学的調製物における活性成分としての使用のために、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体は、一般に、それらが調製される混合物に含まれるその他の反応性または潜在的に免疫原性の成分から精製される。典型的には、各活性成分は、機能アッセイ、クロマトグラフィー、またはSDSポリアクリルアミド電気泳動法により調べられるように、少なくとも約90%の均一性、より好ましくは95%または99%の均一性で提供される。以下に、対象に関して標準的指導書に記載される通り、薬学的調製物の調製に関して一般的に許容される手順に従って、活性成分を医用薬に調合する。医用薬の調合または製剤化の段階は意図する用途および投与方法に一部依存して、滅菌する段階、無害および無干渉の適切な賦形剤、緩衝液およびその他の担体と混合する段階、凍結乾燥または凍結する段階、用量単位に分割する段階、送達装置に封入する段階を含み得る。医用薬は、典型的には、治療される炎症性疾患ならびに投薬および投与の局面のような意図される使用に関する書面による情報を添付した、または書面による情報と関連付けられた適切な容器に包装される。
【0088】
投与モードは治療される状態の特徴に依存する。適度な投薬が必要であることが予想される状態および(心不全のように)十分な血流がある部位の状態には、全身性の投与が許容可能である。例えば、静脈内投与、筋肉内注射、または舌下もしくは鼻腔内での吸収のために医用薬を製剤化してもよい。時に、活性成分の濃度を高めて、疾患プロセスに関与しないその他の組織のサイトカインレセプターに対する影響を最小限に抑えるために、活性成分を疾患部位(炎症を起こした関節の近くなど)に局所的に投与することが可能である。 または、活性成分の疾患部位での蓄積を促進するように薬学的組成物を製剤化してもよい。例えば、活性成分は、標的細胞の細胞表面タンパク質に結合することのできる抗体またはリガンドを提示するリポソームまたはその他のマトリックス構造に内包することができる。適切なターゲティング物質には、組織特異的レセプターのための抗体またはリガンド(例えば、肺ターゲティングのためのセロトニン)が含まれる。サイトカインシグナル伝達を抑制する組成物に関して、標的組織は異常に密度の高いそれぞれのレセプターを示す可能性が高いことから、適切なターゲティング分子はサイトカイン自身であってもよい。
【0089】
本発明の組成物の有効量は、レセプター放出活性を少なくとも約10%、典型的には少なくとも約25%、より好ましくは約50%、75%、または90%変化させる量である。レセプター放出の増加が望ましい場合、好ましい組成物はレセプター放出を少なくとも2倍に増加させる。活性化合物の最少有効量は治療される疾患に依存し、エフェクター分子の最少有効量は使用に関して選択され、その場合、投与は全身性または局所性である。有効量は、以下に示す動物試験の結果から、治療される対象のために適宜スケーリングして推定することができる。
【0090】
以下の実施例は当業者にさらなる指標として提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0091】
実施例
実施例1:天然のレセプター開裂酵素活性の単離
先ず、炎症細胞内に存在するレセプター開裂活性は、表面にサイトカインレセプターを発現するように形質転換した細胞を用いたアッセイ系を使用して単離した。
【0092】
ヒトp75 TNFレセプターのcDNAは、報告されたp75 TNF-R配列の58〜2380の位置をカバーして90〜1475の位置の完全長のp75 TNF-Rコード配列を含むヒト単球U-937細胞由来γgt10 cDNAライブラリからクローニングした。続いて、2.3kbのp75 TNF-R cDNAをpcDNA3真核細胞性発現ベクターにサブクローニングして、制限エンドヌクレアーゼマッピングにより確認した。トランスフェクトした細胞株はC75Rと命名した。p75 TNF-R発現の量は125I標識ヒト組換え型TNFを用いて測定して、細胞当たりレセプター60,000〜70,000個であり、親和性は5.6×10−10Mと推定された。
【0093】
レセプター開裂活性は、以下の通り、THP-1細胞(ATCC 45503)から得られた。RPMI-1640および1%FCS 1mL当たり1×106個の細胞を10−6M酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)で37℃において30分間、刺激した。IL-10およびエピネフリンのような、その他の刺激物質を代替として使用することもできる。細胞を洗浄して、新鮮な培地で2時間培養し、細胞を含まない上清を回収した。THP-1の上清を加えたプレインキュベートにより、125I-TNFのC75R細胞への特異的結合は87%減少した。上清中に放出された可溶性p75 TNF-RはELISAで測定した。レセプター開裂活性の1単位は、真の可溶性p75 TNF-R放出 1pgと定めた。プロテアーゼはTHP-1細胞表面からp55およびp75の双方のレセプターを放出させることが明らかとなった。
【0094】
刺激したTHP-1細胞から回収された固有のレセプター開裂活性は、以下の通り、精製した。先ず、培地から得られたタンパク質を100%飽和硫安塩析により濃縮して、改めてPBSに懸濁し、10mM Tris-HCl、60mM NaCl、pH 7.0で透析した。この試料をDEAE-Sephadex(登録商標)A-25カラムの陰イオン交換クロマトグラフィーにかけた。50mM Tris-HCl、pH 8.0中60〜250mMのNaClの線形濃度勾配でレセプター開裂酵素を溶出した。
【0095】
C75R開裂アッセイにおいて活性を示すDEAE画分はさらに精製することができる(WO 98/02140)。この画分を500μLに濃縮して、非変性条件下において6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動にかけた。ゲルを5mmの帯状に水平方向にスライスして、各スライス片をPBSで溶出した。
【0096】
図1は結果を示す。一番上の図では、レセプター開裂活性(C75R細胞を用いて測定)は抽出物中のタンパク質バルクよりも弱いイオン強度でDEAEカラムから溶出し(A280)、相対的に陽性plに一致する。下の2つの図では、レセプター活性は非変性ゲルにおいて所定の移動度を示した。続いて、精製した調製物について、レセプター開裂酵素の物理化学的性状および機能的性状を分析した。
【0097】
実施例2:レセプター開裂活性の遺伝子クローニング
THP-1、U-937、HL-60、ME-180、MRC-5、Raji、K-562と呼ばれる細胞株を含む異なる炎症細胞が、多量のレセプター開裂活性を発現することが見出されている。ジャーカット細胞は、10−2M PMAでの刺激後に850U/mLの開裂活性を示す)。この実施例では、ジャーカットT細胞(ATCC #TIB-152)の発現ライブラリを得て、サイトカインレセプター放出の調節に関与する遺伝子をクローニングするために使用した。
【0098】
COS-1細胞への反復トランスフェクションサイクルによってライブラリから配列を選択し、続いて、実施例1の通り、タンパク分解活性に関して上清をアッセイした。簡単に言うと、InVitrogen(商標)プラスミド抽出キットを製造業者の説明書に従って用いて、106個のジャーカット細胞のDNAを抽出した。cDNAをZAP Express(商標)/EcoR/ベクター(カタログ番号938201、Stratagene, LaJolla CAに挿入した。ライブラリを48グループのDNAに分割して、CaClトランスフェクト法を用いてCOS-1細胞に形質転換した。細胞が成長したら直ちにC75Rアッセイを実施して、5つの陽性群を選択した。これらの5群の各々からDNAを得て、1群当たり15枚のプレートを用いて大腸菌にトランスフェクトした。これらの細胞からDNAを調製して、続いて、再度COS-1細胞にトランスフェクトした。細胞を生育させて、開裂活性を再度測定した。2つの陽性群を選択して、大腸菌にトランスフェクトし、98個のコロニーを得た。これらの内の96個のコロニーからDNAを調製してCOS-1細胞にトランスフェクトした。C75Rアッセイを再度実施して、このアッセイにおいて9つのクローンがレセプター開裂活性を実質的に増加していることが見出された。これらのクローンはMP1〜MP9と命名して、続いて、DyeDeoxyシーケンシング技術によって配列決定した。
【0099】
(表1)サイトカインレセプター放出活性に関連するクローニングされた遺伝子
【0100】
実施例3:クローニングした配列の性状分析
配列を発現したヒト遺伝子のUniGene編集と比較した。配列番号:11〜25は、2003年1月25日付けUniGeneヒトビルド番号159を用いて2003年3月に分析された。データベースには108944個のアッセンブリの4056423配列が含まれた。
【0101】
(表2)クローン配列のUniGene一致
【0102】
以下の種オーソログおよび完全長のイメージクローンが同定されている(同一性パーセントおよび保存残基はNCBL Blastのウェブサイトにあるblastp BLOSUM62アルゴリズムにより算出して、ギャップコストは11とした(伸長1)。
【0103】
(表3)MP8関連配列
【0104】
図2は、種オーソログ(配列番号:57および81〜88)と比較した完全長ヒトMP8(配列番号:53)のアラインメントを示す。丸い点は、一番上のヒト配列と同一の残基を示す。表3に示される通り、オーソログは極めて類似しており、特に脊椎動物(配列番号:89)および哺乳動物(配列番号:90)で−とりわけN末端およびC末端方向に高い同一性を共有している。科を通して共通のモチーフが特定されている(配列番号:91〜102)。
【0105】
実施例4:蛍光共鳴エネルギー転移によるレセプター開裂活性の測定
サイトカイン特異的タンパク分解活性は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により速やかに定量することができる。TNFレセプターまたはその他のタンパク基質のアミノ酸配列を持つペプチドの両端を蛍光発光体および蛍光消光剤で標識する。続いてペプチドをレセプター開裂酵素の供給源と共にインキュベートして、蛍光を測定する。消光基は、通常、発光体からの蛍光を吸収する。しかし、ペプチドの酵素的開裂によって消光基が分離すると、それに比例して蛍光発光が増大する。
【0106】
実施例4〜14において、MP8は小規模な研究条件下で産生された。MP8 cDNA配列(配列番号:9)を、発現ベクターのN末端His Tag配列の次の、トロンビン部位が続く位置にクローニングした。タンパク抽出物をQ-Sepharose(登録商標)でクロマトグラフにかけて、ピークをNi-NTAを用いた高速クロマトグラフィーにより精製して、Q-Sepharose(登録商標)(HiTrap)カラムでエンドトキシン量を減少させた。エンドトキシン量は色素産生性LALアッセイを用いて測定した。
【0107】
図2は典型的MP8調製物のウェスタン分析を示す。抗Hisまたは抗MP8を用いた結果、産物の見かけの分子量は45〜50 kDaの範囲であった。
【0108】
開裂アッセイにおいて基質として用いたペプチドはタンパク質全体の公知のタンパク分解性開裂部位から得た。ペプチドはC末端を蛍光発光体(Edans-●)で標識して、N末端を消光ハプテン(Dabcyl-▲)で標識した。
【0109】
アッセイは、金属陽イオンであるZn++(0.1mM)およびCa++(2mM)を加えて実施して、EDTA(20mM)が含まれる場合の開裂に関して補正する。二価陽イオンへの依存性によって、このアッセイで測定される酵素活性がメタロプロテアーゼであることが確認される。アッセイ混合物は、プロテアーゼ阻害剤およびウシアルブミンのカクテルをさらに含む。開裂は、酵素をペプチドと共に37℃で3時間インキュベートした後の真の蛍光発光の変化として測定される。
【0110】
図4(A)は、精製したクローンMP8の典型的FRETアッセイの結果を示す。酵素活性は1mL当たりの蛍光単位として算出して、Zn++およびCa++の存在下において460nmにおいて蛍光の増大を引き起こす活性をEDTAの存在下において測定された活性に関して補正する。
【0111】
MP8はp55およびp75 TNFレセプター(TNF-R1およびTNF-R2)双方からペプチドを開裂する。これらのペプチドは細胞外領域に位置して、インビボではTNFレセプターが細胞から放出される際に開裂すると考えられる。MP8はIL-6レセプターペプチドも高親和性に開裂する。別途発表されたデータは、メタロプロテアーゼであるADAM-10およびMDC-9がp55またはp75 TNFレセプターのいずれも効率的に開裂しないことを示している。
【0112】
これは、以下の実施例においてレセプター開裂活性の定量のために用いられた標準的アッセイ方法である。
【0113】
図4(B)は、MP8がI型および2型ヒトIL-1レセプターの放出を引き起こす能力を測定するためにペプチドの開裂を測定する実験から得られたものである。
【0114】
図4(C)は異なるペプチド基質を用いた実験から得られたデータを編集したものであり、p55 TNFレセプターペプチドに対して標準化した相対的開裂活性を示す。クローンMP8は、その他のプロテアーゼの公知の開裂部位に位置する対照基質に比べて、炎症経路に関与する複数のレセプター(TNF-R p55およびp75イソ型、IL-6レセプター、およびIL-1レセプター)に対する特異性を示す。MMP-1は線維芽細胞コラゲナーゼであり、MMP-2はストロマリシンであり、MMP-3はゼラチナーゼAであり、MMP-11はコラゲナーゼIIIであり、レニンはアスパラギン酸プロテアーゼであり、マラリアはシステインプロテアーゼであり、CMVはセリンプロテアーゼである。
【0115】
図4(D)は、潜在的な阻害物質または活性物質を評価するためのFRETアッセイの使用を例証する実験から得られたものである。MP8タンパク質を阻害物質と混合して、FRETペプチドに加え、3時間後に開裂(蛍光増大)を測定した。
【0116】
阻害物質は以下の通りであった: 1,10フェナントロリン 40mM;ホスファラミドン 500μM;ヒドロキサマート(Pharmingen)2mM;TIMP-1(Chemicon)2.5μg/mL;TIMP-2(Chemicon)2.5μg/mL。ヒドロキサマートは小分子のメタロプロテアーゼ阻害物質である。TIMPは天然の組織メタロプロテアーゼ阻害物質である。
【0117】
実施例5:MP8はインビボにおいてTNFレセプター放出を引き起こす
クローンMP8が細胞表面からレセプターを開裂することのできるプロテアーゼであることを実証するために、MP8をTHP-1細胞と共にインキュベートした。この細胞株は、p55 TNFレセプターおよびp75 TNFレセプターの双方を発現する。37℃で45分間インキュベートした後、細胞を洗浄して細胞表面レセプターを免疫染色し、フローサイトメトリーによりカウントした。
【0118】
図5は、MP8が細胞の表面に存在するとp55およびp75 TNFレセプターの双方が開裂することを示す。
【0119】
この酵素がインビボにおいてTNFレセプターを開裂するかどうかを調べるために、精製したMP8の100,000FUを雌性Balb/cマウスに500μLのボーラス投与として皮下に注入した。対照マウスには生理食塩液を注入した。血清を定期的に採取して、R&D SystemのELISAキットを用いてサイトカイン量を測定した。
【0120】
図6は、クローニングした酵素が循環中への蓄積を引き起こす程度にTNFレセプターの分離を引き起こすことを示す。
【0121】
図7は2つの実験から得られたデータを編集したものであり、48時間の期間を通してのレセプター放出のキネティクスを示す。これらのデータは複数の重要な意味を持つ:
・インビボにおいて、p55およびp75の双方のTNFレセプターが開裂する−双方のレセプターを介したシグナル伝達が影響を受けることを意味する。
・クローニングされたMP8は循環TNFレセプター量を約100倍に増加させる。この酵素は2通りの方法−影響を及ぼす部位において炎症細胞の表面からTNFレセプターを除去することによって、またTNFリガンドの細胞外シンクを作成することによって、TNFシグナル伝達に影響を及ぼすはずである。
・MP8の作用は投与後48時間持続する−頻繁な投与が不要であることを意味する。
・ヒトレセプター開裂酵素は、明らかにその他の動物種のTNFレセプターを開裂することができる。このことは、この酵素ファミリーの治療物質としての効果を調べるためのモデルとしてのマウスの使用をバリデートするものである。
【0122】
実施例6:MP8は敗血症性ショックに対して保護作用を示す
サイトカイン介在性炎症に対する物質の有効性を調べるための古典的なモデルは、エンドトキシン誘発性敗血症性ショック(Morrison et al., J Infect Dis 162: 1063, 1990)である。このモデルにおいて調べると、クローニングされたMP8は、LPS刺激と同時に与えようが、3時間前に与えようが、敗血症性ショックに対して用量依存性の完全な保護作用を示すことが見出された。
【0123】
敗血症性ショックモデルにおける有効性を調べるため、MP8酵素はBiosource Internationalで作成された供給源物質からAlliance Protein Laboratoriesにより委託契約にて調製された。Nickel NTAカラムクロマトグラフィーおよびQ-Sepharose(登録商標)分析カラムクロマトグラフィーを用いて、酵素を精製した。エンドトキシン量はQ-Sepharose(登録商標)を用いて減少させた。酵素活性はFRETアッセイで測定して、エンドトキシンの混入は色素産生性LALアッセイで測定した。エンドトキシンは、300,000蛍光単位の酵素活性当たり0.16μgであった。
【0124】
敗血症性ショックの実験は以下の通り実施した。雌性Balb/cマウスを体重に従って6処置群に無作為化した。敗血症は、LPS 10μgおよびガラクトサミン 7mgを外側または背側尾静脈に注入して誘発した。一部の群は、予防効果の有無を調べるために、LPS刺激と同時または3時間前に50,000 FUのMP8で前処置した。
【0125】
図8は、試験における各処置群の死亡数を示すKaplan-Meier生存曲線である。いかなる処置または刺激もない場合は、動物に対する影響はなく、グラフは最も高い値を維持する。生命の危険のある刺激は、各動物の死亡に伴って段階的にグラフを下方に推移させる。処置が刺激からの保護作用を示す場合、生存曲線はグラフの最も高い値の近くに維持される。
【0126】
この実験の結果は、MP8はLPS刺激と同時に投与されようと、3時間前に投与されようと、50,000の用量でLPS誘発性敗血症性ショックからの十分な保護作用を示ことを示している。
【0127】
図9は、最小有効量を調べるためにMP8の量を滴定した実験を示す。酵素は、LPS刺激1時間前に110μLの液量で投与した。
【0128】
データは、MP8の保護作用が用量依存性であることを示す。LPS/ガラクトサミン刺激は、生理食塩液対照のみを処置したマウスでは常に致死的であった。30,000 FUの単回投与において、MP8は刺激した対象の一定の割合を保護することができた。300,000 FUでは、MP8は完全な保護作用を示した。
【0129】
実施例7:レセプター開裂酵素の保存時の安定性
この実施例に示すデータは、MP8が1カ月よりも長期の保存において、FRETアッセイでのタンパク分解活性および敗血症性ショックモデルでの保護作用の双方に関して、その全活性を保持することを示した。MP8は投与後少なくとも3日はLPS刺激からマウスを保護することができ、治療上重要な効果を示すためにレセプター放出酵素の頻繁な投与が不要であることを示している。
【0130】
MP8の安定性は、MP8のアリコートを4℃または−70℃で保存することによって検討した。酵素開裂活性を蛍光共鳴アネルギー転移ペプチド開裂アッセイで調べるために、定期的にアリコートを採取した。
【0131】
図10は、精製された状態において、MP8が超低温凍結と同様に標準的な冷蔵庫で安定であることを示す。1カ月保存後に検出可能な活性消失はなかった。MP8の臨床的効果の安定性を、敗血症性ショックモデルにおいて調べた。雌性Balb/cマウスに、−70℃で4日間、または4℃で7日間保存しておいたMP8の300,000 FUを注入した。1時間後、マウスを前記の通りLPS 10μgおよびガラクトサミン7mgで刺激した。
【0132】
図11は結果を示す。精製した酵素には安定な貯蔵期間があり、臨床上の効果を消失することなく凍結することができる。
【0133】
実施例8:インビボにおけるレセプター放出の持続性
この実施例では、動物にMP8の300,000 FUを3日前から皮下投与して、インビボにおけるレセプター開裂の持続性を調べた。その後、マウスをLPS 10μgおよびガラクトサミン7mgで通常通り、刺激した。
【0134】
図12(A)は、ドットブロット分析によって測定したマウスの循環からのMP8タンパク質のクリアランスを示す。初回クリアランス半減期は〜39時間である。
【0135】
図12(B)は、クローニングされた酵素が投与後3日まで大半のマウスを保護できることを示す。これは、この酵素が少なくともこの長い時間にわたってTNFレセプターを開裂し続けるか、または処置の影響(TNFレセプターの放出のような)がTNFシグナル伝達が複数の日数にわたって調節されるような方法で持続するためのいずれかである。いずれにしても、この結果は、臨床的な有効性のために酵素の頻繁な投与が不要であることを意味する。
【0136】
MP8発現の組織分布はノーザン分析によって調べた。MP8シーケンスに基づく標識したオリゴヌクレオチドを用いて、様々なヒト組織に由来するmRNA調製物を探索した。
【0137】
実質的な発現は末梢血に認められて、その他の組織では、マクロファージ様細胞およびその他の白血球において比較的豊富に認められた(肝、脾、小腸)。ある程度のMP8発現はすべての組織で認められて、このことはこの酵素が進行中の炎症のダウンレギュレート物質として機能するという見解と一致する。
【0138】
実施例10:MP8は実験的に誘発した関節炎を治療する
レセプター開裂酵素の潜在的な臨床上の有効性は、慢性関節リウマチの動物モデルであるコラーゲン誘発性関節炎において評価した。この実施例では、動物に対して、疾患物質の投与と同時にMP8の300,000 FUで毎日処置した。9匹中8匹の対照マウスが発症したが、MP8処置マウスは関節腫脹またはその他の関節炎の徴候を示さなかった。処置は、少なくとも、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト)の評価した用量と同様に有効であった。
【0139】
コラーゲン誘発性関節炎は、慢性関節リウマチのための潜在的治療物質について評価するための標準的モデルである(Courtenay et al., Nature 283: 666, 1980; Williams et al., Proc Natl Acad Sci USA 89: 9784, 1992; Gerlag et al., J Immunol 165: 1652, 2000)。関節炎は、コラーゲンで免疫することによって7〜9週齢の雌性DBA/1LacJマウスにおいて誘発した。0日目に、マウスに対して、フロイントの完全アジュバントに混合したウシII型コラーゲン100μgを尾の基部に注入した。 7日目に、コラーゲン 100μgの腹腔内注入によりマウスに追加投与を行った。滑膜炎を促進および同期化するために、14日目にマウスにリポポリサッカライド(LPS)の100μgを皮下注入した。関節腫脹は、四肢全肢および左右足根関節の径を定圧ゲージで測定することによって、盲検的にモニターした。以下の尺度を用いて関節炎指数も求めて、すべての肢について合計した。0≡正常;1≡1本の指の腫脹;2≡1本よりも多い指の腫脹;3≡関節のゆがみ;4≡強直。関節炎の実験は、委託契約下にてCalvert Preclinical Services, Inc., Olyphant PAにより実施された。
【0140】
図13は、MP8の300,000 FU、エンブレル(登録商標)の評価用量、または生理食塩液対照を初回コラーゲン注入の3日前から一日一回マウスに投与した実験の結果を示す。このモデルにおいて典型的である通り、必ずしもすべての動物がコラーゲン刺激に反応するとは限らない。この実験において、9匹中8匹の対照動物が関節炎の徴候を示した。しかし、MP8で処置した動物に、関節炎を発症した動物はいなかった。
【0141】
図14は、各群の動物において測定された関節腫脹および関節炎指数における平均増加を示す。MP8を予防的に投与した場合、本剤は動物が疾患の測定可能な任意の徴候を示すことを防いだ。
【0142】
実施例11:MP8は確立された関節炎の進行を防ぐ
この実施例では、クローンMP8について、確立された疾患を治療する能力を調べた。このプロトコールは、患者が炎症性滑膜炎の発症後に治療される慢性関節リウマチの臨床状況に近似する。
【0143】
0日目および7日目にマウスをコラーゲンで免疫して、続いて、14日目にLPSを追加投与した。MP8での処置は、関節炎が十分に確立された22日目に開始した。この時点で、関節炎を発症している動物を3群に無作為化して、発症していない動物は除外した。続いて、発症群の3群に生理食塩液対照、または異なる二用量のいずれかのMP8を連続18日間処置した。
【0144】
図15は結果を示す。結果は、対照群に比べて、MP8処置群の2群の関節炎を発症した関節における著しく有意な腫脹の軽減を示す(各群n=10;実験終了時にp<0.001、Studentの片側t検定)。対照動物では、22日目に毎日の処置を開始した後は関節腫脹がほとんど変化しなかった。一方、MP8で処置した動物はいずれの用量でも疾患の実質的な軽減を示した。
【0145】
図16は、ELISAで測定したマウス血清中のII型コラーゲンに対する抗体量を示す。低用量または高用量のMP8で処置した群は、対照群のほぼ半分の病原性抗体量を示した(いずれも、p<0.02)。高用量のMP8で処置した群は、実験終了時に病理組織学によって測定される通り、炎症性滑膜炎の程度も低かった。MP8処置群に毒性は検出されなかった。
【0146】
これらの実験は、レセプター開裂酵素の全身投与が、実験的に誘発した関節炎の治療において−確立された疾患においても−安全かつ有効であることを示す。MP8は循環自己抗体量を減少させ、関節腫脹を予防または回復させる。
【0147】
実施例12:MP8はカラゲナン誘発性の浮腫を阻害する
サイトカインレセプター放出酵素の有益な効果が関節炎を抑えるかどうかを調べるために、さらなる実験が実施された。カラゲナンに誘発される四肢浮腫モデルにおいて、全身性に投与されたMP8はサイトカイン介在性の水分貯留からの保護に関して、経口投与されたインドメタシンと少なくとも同等に有効であった。
【0148】
標準的モデル(Winter et al., Proc Soc Exp Biol Med 111: 544, 1962; Hansra et al., Inflammation 24: 141, 2000)に基づいて、実験は以下のように実施された。雄性Sprague Dawley系ラットを体重に従って3処置群に無作為化した。動物にMP8もしくは対照液を皮下投与するか、またはインドメタシンを経口投与した。1時間後、腫脹を誘発するために、1%カラゲナンの水懸濁液の滅菌液を左後肢に注入した。3時間後に、ウォータープレチスモグラフにおける水置換によって注入を行った肢の体積を測定した(平均±SEM;一群動物10匹)。
【0149】
図17は結果を示す。MP8は浮腫形成を62%阻害した(p≦0.05)。これに比して、インドメタシン(小分子の非ステロイド系抗炎症物質)は浮腫形成を49%しか阻害しなかった。
【0150】
実施例13:MP8は多発性硬化症の発症を予防する
多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎において、サイトカインレセプター放出酵素は症状の発生を12日から18日間遅延させることが見出されて、疾患の程度は約1/3に低減した。
【0151】
EAEモデル(Brown et al., Lab. Invest. 45: 278, 1981)は以下の通り実施された。雌性SJL/Jマウス(6週齢)を各群10匹の3群に無作為化した。ミエリンプロテオリピドペプチド(PLP)2mLを、さらに結核菌(M. tuberculosis)H37Raの20mgを含むフロイントの完全アジュバント3mLに乳化した。0日目に、合計60μgのPLPを尾の基部および足蹠に皮下注入してマウスを免疫した。0日目および2日目に、マウスに対して百日咳毒素400mgをさらに腹腔内投与した。MP8または生理食塩液対照を−3日から20日まで毎日皮下投与した。疾患の進行は、以下の尺度に従って21日目まで調べた:0≡正常;1≡尾のひきずりまたは後肢の脱力;2≡尾のひきずりおよび後肢の脱力の双方;3≡後肢の部分的麻痺;4≡後肢の完全麻痺;5≡切迫または屠殺。図18は結果を示す。MP8は臨床的に重要な4つの効果を示した。
・MP8は一定の割合の動物において疾患の発症を完全に予防した。
・疾患を発症した動物において、MP8は症状の発現を実質的に遅延させた。
・MP8は疾患の程度を1/3を超えて軽減した。
・投与動物は引き続き正常な体重増加を示した。
【0152】
(表4)MP8の実験的自己免疫脳脊髄炎に対する影響
【0153】
実施例14:MP8は実験的に誘発される喘息における細胞関与を制限する
炎症に関するさらなる動物モデルにおいて、クローンMP8について実験的に誘発された喘息に関連する病理学を調節する能力を調べた。
【0154】
0日、7日および14日に、10μgオバルブミンの1%水酸化アルミニウム溶液を用いてマウスを感作した。21日目に、マウスをエアロゾル状のアレルゲン(生理食塩液中5%重量/体積)で刺激した。MP8または対照の投与はエアロゾル刺激の1時間前、ならびにその後、24時間および48時間に実施した。24日目(刺激72時間後)に、肺胞液中の細胞を回収するために2×0.5mLの緩衝液を用いて麻酔下で肺を洗浄した。図19は結果を示す。MP8は、肺胞液に遊走する白血球数を減少させた。好酸球の割合も実質的に減少した。これらの結果は、MP8が気管支内攻撃の炎症性およびアレルギー性続発症を抑制したことを示している。
【0155】
実施例15:完全長MP8を用いた収量の予想外の向上
臨床試験のためにMP8の産生を増大させるために、プロセスの開発が行われた。MP8は大腸菌MP87株(HMS174 (DE3)/pMP87)において産生された。ごく少量のタンパク質が可溶型として発現して、残りは封入体として蓄積した。この方法で産生される可溶性タンパク質の量は研究使用には十分であり得るが、臨床または商用規模の産生には不十分である。
【0156】
従って、封入体中のMP8を再生するためのプロセスが開発された。MP8は、粗抽出物の遠心分離後に得られた不溶性画分からタンパク質を緩衝8M尿素に溶解することによって回収された。N末端ポリ-His配列(HISタグ)を用いてタンパク質を分離するため、Niアフィニティークロマトグラフィーにより変性産物を分画化した。アフィニティー精製後、細胞1g当たりMP8の1.8〜2.5mgが回収された(培養1L当たり65〜90mg)。アフィニティー精製されたタンパク質を、1mM EDTAを加えたpH 8.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液で希釈した。タンパク質を1ml/分の割合で冷(4℃)緩衝液に加えて、静かに撹拌しながら1〜2時間氷冷した。続いて、MP8をQ-Sepharose(商標)陰イオン交換カラムに吸着させて、塩の線形濃度勾配を用いて溶出した。この手順を用いて調製したMP8の一つの調製物をMP87-086-20と命名して、これはマウス敗血症モデルにおいて活性であった。しかし、この調製物およびその後の調製物は回収率が低く、大半の場合、広範囲にわたる分解の証拠が見られた。緩衝液にプロテアーゼ阻害剤のカクテルを加えても、または広範囲の実験においてその他のいかなる戦略を採用しても、得られた改善は取るに足らないものであった。大幅なプロセス開発後の可溶性画分および不溶性画分の双方からの典型的回収率は発酵1リットル当たりMP8〜7.5mg(総タンパク質3.3g)であった。この産物をMP8(7)として、活性物質に換算すると、先行の試験で用いた物質に相当する。
【0157】
代替の産生プロセスとして、MP8コード配列を酵母のピチアパストリスにクローニングした。しかし、実質的には、MP8タンパク質は細胞質または細胞外にタンパク質を蓄積する発現系では回収されなかった。これまでの証拠は、このタンパク質が合成と同じくらいの速さで分解されていることを示唆した。
【0158】
完全長のタンパク質の発現に関しては、この説明が全く異なることが明らかとなった。ヒトイメージ(商標)クローン4130677(表3)を得て、pQE81プラスミドのT5プロモーターおよびHISタグに続く位置にライゲートした。合成された完全長タンパク質(MP8-FL1)の少なくとも50%が可溶性タンパク質として産生されて、そのまま精製することができた。粗抽出物の上清を一つにまとめて、ニッケルアフィニティーカラムおよび陰イオン交換カラムから順次溶出し、その後、ダイアフィルトレーションによって濃縮した。産物の純度は〜90%であり、発酵1リットル当たり75mgのMP8-FL1が回収された。
【0159】
この顕著な収量の向上から、臨床試験では完全長のMP8に変更することが決定された。臨床目的のためのMP8FLを産生するために、Hisタグを除去して、bla遺伝子をnptllで置換し、得られたプラスミドを大腸菌HMS174株に導入してMP820株(HMS174/pMP820)を作出した(図20)。 現在の産生プロトコールは以下の通りである:作業用原液1mLを、50μg/mLカナマイシン加Turbo Prime Broth(商標)50mLに接種して、37℃で8時間インキュベートする。50mL培養を用いて、50μg/mLカナマイシン加Turbo Prime Broth(商標)500mLに接種して、37℃にて一晩インキュベートする。培養密度が2.3〜2.8 OD600に達したら温度を30℃まで下げて、IPTGを1mMまで加えて発現を誘導する。可溶性タンパク質の最大蓄積は、誘導3時間後に得られる。
【0160】
現在の精製プロトコールは、Triton X-100およびグアニジンHClを含むpH 7.8の緩衝液中で氷冷しながら細胞を2時間抽出することによって開始する。清澄化した抽出液を、SteamLine(商標)QXLまたはQ-Sepharose(商標)FFレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィーに供す。結合したMP8-FLを溶出して、Toyopearl(商標) Phenyl 650Mカラムを用いた疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製して、最終的な精製(例えば、もう一つの陰イオン交換段階)に供す。このプロセスによってMP820株から産生されるタンパク質をMP8-FL2と命名した。HISタグを用いないタンパク質の精製には精製にさらなる段階が必要であるが、それでもなお、収量はオリジナルのMP8クローンよりもかなり高い(図21)。発酵1リットル当たり約50mgのMP8-FL2が回収されて、純度は〜85ないし90%である(図22)。MP8-FL2のその他の性状を表5に示す:
【0161】
(表5)MP8-FL2の性状
【0162】
MP8生物活性の対照タンパク質として、その他の産物も産生されている。一つは完全長タンパク質(配列番号:53)のN末端断片であり、HISタグを用いて精製される。もう一つは、92,000 mol.wt.のタンパク質を産生するためにヒトフィブロネクチンの127ドメインを8倍に複製したフィブロネクチンポリタンパク質である。この合成フィブロネクチンポリタンパク質もニッケルアフィニティークロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製される。三番目の対照調製物は同質遺伝子系統の親細胞由来の抽出物であるMP8-FL2大腸菌構築物であり、MP8-FL2と同様の方法で陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに供した。
【0163】
実施例16:完全長MP8は有効な抗炎症物質である
MP8-FL2について、炎症の治療に適した生物活性を持つかどうかを調べるために、インビトロおよびインビボの双方で試験が行われている。
【0164】
図23は、MP8-FL2が細胞表面からのサイトカインの放出を引き起こすことを示す。細胞表面開裂活性を測定するために、MP8-FL2の25μgを2.5×106個の細胞と混合した。双方のTNFレセプターイソ型の放出は、酵素免疫アッセイにより、(処置群−無処置群)/無処置群として求めた。下のグラフは、オリジナルのMP8コアタンパク質[本発明者は、このグラフのMP8はAthena使用前に作成された材料に由来するものであり、MP87ではないと考えている。最初のMP87参照を添加するとこのことが明らかとなるであろう。]およびMP8-FL2の双方がTNFレセプターの開裂および放出を引き起こして、R1(p55)イソ型が優れていることを示す。MP8-FL2の同一調製物がR1(Dabcyl-N-V-K-G-T-E-D-S-G-Edans;配列番号:71)およびR2(Dabcyl-C-T-S-T-S-P-T-R-Edans;配列番号:73)の双方の開裂を引き起こし、これに対して、同一の方法で発現および精製した対応する合成フィブロネクチンポリタンパク質の対照タンパク質は活性を示さなかった。
【0165】
図24は、MP8-FL2が動物モデルにおいてカラゲナンに誘発される浮腫を抑制することを示す。実施例12の通り、雄性Sprague Dawley系ラットに試験タンパク質またはインドメタシン(抗炎症対照物質)を投与して、続いて後肢にカラゲナンを刺激投与した。MP8-FL2は肢の腫脹を著しく防止したが、合成フィブロネクチンポリタンパク質の対照タンパク質は防止しなかった。
【0166】
図25は、MP8-FL2が敗血症性ショックからの予防効果を示すことを示す。敗血症は、実施例3の通り、Balb/cマウスにおいて、LPS 10μgおよびガラクトサミン15mgを投与して誘発した。LPS刺激の1時間前に、無作為化した群に40μgまでのMP8-FL2で前処置した。データは、MP8-FL2がマウスを用量依存性に保護したことを示す。
【0167】
これらの実験は、MP8-FL2が抗炎症活性を持ち、臨床使用のための治療用薬剤として使用に適していることを実証する。
【0168】
配列情報
(表6)本開示に列記される配列
【0169】
特定の状況での本発明の実践はさらなる最適化を必要とする可能性があり、当業者は、特許請求される発明およびその同等物から逸脱することなく、通常の実験として達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】図1(A)はヒトTHP-1細胞からのサイトカインレセプター開裂活性の単離を示す。活性は、DEAE-Sepharose(登録商標)および非変性ゲルでの精製を介して、トランスフェクトした細胞の表面からのレセプター放出を引き起こす各画分の能力を測定することによって追跡した。図1(B)は、レセプター放出活性に関連する9つの異なるcDNAクローンの一つであるMP8のウェスタン分析である。1本のMP8バンドが分子量標準と同じ位置に見られる。
【図2】図2は、種オーソログ(配列番号:57および81〜88)と比較した完全長ヒトMP8(配列番号:53)のアラインメントを示す。丸い点は、一番上のヒト配列と同一の残基を示す。オーソログは極めて類似して、特に脊椎動物(配列番号:89)および哺乳動物(配列番号:90)では理想的な同一性を共有している。科を通して共有されるモチーフが特定されている(配列番号:91〜102)。
【図3】図3は、開裂したペプチド基質(配列番号:71、73、74および76)の質量分析およびペプチドシーケンシングにより調べられたレセプター開裂部位を示す。
【図4】図4(A)、4(B)および4(C)は、ペプチド開裂アッセイにおいて蛍光共鳴エネルギー転移により調べられたレセプター放出活性を示す。レセプター開裂部位の配列を持つペプチドの両端を蛍光発光体および蛍光消光剤で標識して、Zn++およびCa++の存在する状態および存在しない状態でメタロプロテアーゼ活性を測定する。レセプター開裂酵素のクローンMP8は、その他のプロテアーゼの公知の開裂部位にまたがる対照基質に比べて、炎症経路に関与する複数のレセプター(TNF-R p55およびp75イソ型、IL-6レセプター、およびIL-1レセプター)に対して特異性を示す。図4(B)、4(D)は、サイトカインレセプター開裂活性の潜在的な阻害物質または活性物質を評価するためのFRETアッセイの使用を示す。この例において、金属キレート剤は強力な阻害作用を持つ。
【図5】図5は、インビトロにおけるクローンMP8によるTNFレセプターのp55およびp75の双方のイソ型の開裂を示す。細胞表面から開裂すると、レセプターはELISAによって測定可能な培養上清に蓄積する。
【図6】図6は、インビボにおけるクローンMP8によるTNFレセプターの両イソ型の開裂を示す。Balb/cマウスに皮下注入後、両イソ型は正常値(生理食塩液対照)の100倍を超える値まで血清中に蓄積する。
【図7】図7は2つの実験から得られたデータを編集したグラフであり、48時間の期間を通してのレセプター放出のキネティクスを示す。その他の実験では、放出されたレセプターは少なくとも6日間、循環中に持続した。
【図8】図8は、敗血症性ショック実験の結果を示す。敗血症は、LPS 10μgおよびガラクトサミン7mgをBalb/cマウスに静脈内注入することによって誘発した。MP8は、LPS刺激と同時に投与しようと、3時間前に投与しようと、LPSに誘発される敗血症性ショックに対して十分な保護作用を示す。
【図9】図9は、MP8の抗炎症作用が用量依存性であり、30,000FUでは部分的保護作用を、300,000FUでは完全保護作用を示すことを示す。
【図10】図10は、4℃または−70℃で長期間保存した際の(ペプチド開裂アッセイで測定される)精製MP8のレセプター開裂活性を示す。
【図11】図11は、MP8の治療上の恩典も安定であることを示す。4℃または−70℃での保存後に精製した酵素は敗血症性ショックモデルにおいて依然保護作用を示した。
【図12】図12(A)は、MP8が〜39時間で循環から消失することを示す。図12(B)は、MP8の治療上の恩典が持続性であることを示す。それは敗血症性ショック刺激の3日前までに投与されると保護作用を示したが、これは残りのレセプター開裂活性が進行中の開裂を引き起こすのに十分であるため、または放出されたレセプターが複数の日数にわたってシグナル伝達を遮断するためである。
【図13】図13は、コラーゲンに誘発される関節炎(CIA)モデルを用いてMP8を調べた実験から得られたものである。DBA/1LacJマウスに対して、疾患誘発物質の3日前から毎日投与を行った。9匹中8匹の対照マウスが関節炎を発症したが、MP8処置マウスは関節腫脹またはその他の関節炎の徴候を示さなかった。投与は、少なくとも、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト)の評価した用量と同様に有効であった。
【図14】図14は、各群の関節腫脹および関節炎指数における平均増加を示す。MP8は、動物が疾患の測定可能なあらゆる徴候を発現することを阻止した。
【図15】図15は、確立された疾患を治療する能力に関してMP8を試験した実験から得られたものである。関節炎の動物を22日目に無作為化して、MP8または生理食塩液対照を毎日処置した。対照群に比べて、2群のMP8処置群の疾患を発症した関節では著しく有意な腫脹の軽減が認められた(p<0.001)。
【図16】図16は、マウス血清中のII型コラーゲンに対する抗体量を示す。MP8で処置した群の病原性抗体の量は、対照群のほぼ半分であった。
【図17】図17は、MP8がカラゲナンの注入によって誘発されるラットの肢浮腫を阻害することが明らかとなった実験から得られたものである。効果は、小分子の非ステロイド系抗炎症物質であるインドメタシンよりも優れていた。
【図18】図18は、MP8が多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の発症を阻止することが明らかとなった実験から得られたものである。クローニングされた酵素は症状の発現を遅延させて、疾患の程度は約1/3に軽減した。
【図19】図19は、実験的に誘発された喘息の動物モデルから得られた。マウスをオバルブミンを用いた免疫化によって感作して、続いて、エアロゾル状のアレルゲンで刺激した。MP8は、肺胞液に遊走する白血球が少ないことおよび好酸球の割合が減少したから示されるように、炎症性の続発症を抑制した。
【図20】図20は、完全長のMP8を最初に単離されたクローンおよび様々な対照タンパク質と比較する。一番下の図は、大腸菌(E. coli)におけるMP8-FLの発現に用いられたベクターのマップである。
【図21】図21は、商用生産のために完全長タンパク質に対して行われている顕著な改善の程度を示す。大腸菌は短い方のタンパク質の大半を封入体に発現して、封入体からの抽出および再生後であっても収量はごく少量であった。これに対して、完全長のタンパク質は可溶性の状態で産生されて、10倍効率的に産生することができる。
【図22】図22は、MP8コアタンパク質の精製調製物および完全長のMP8を比較するクーマシーブルーで染色したSDSポリアクリルアミドゲルである。
【図23】図23は、ペプチド開裂アッセイおよび細胞表面開裂アッセイにおいて完全長のMP8の活性を対照タンパク質と比較する。完全長のMP8はコアタンパク質の活性を保持する。
【図24】図24は、完全長のMP8が浮腫の動物モデルにおいて抗炎症物質として有効であることを示す。
【図25】図25は、完全長のMP8が敗血症性ショックモデルにおいて、致命的なLPS刺激からマウスを用量依存性に保護することを示す。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、U.S. Express Mail Label EK 304526603 USにて2003年9月23日付けでU. S. Patent & Trademark Officeに出願された仮出願の優先恩典を主張する。この出願はTetsuya Gatanagaを第一発明者としてMeyer Pharmaceuticals LLCにより出願され(Docket Cyto-1)、「サイトカインレセプター開裂酵素を用いた炎症状態の治療」と題された。
【0002】
米国での手続きのため、先行出願ならびに発行済みの米国特許第6,569,664号および第6,593,456号は参照として全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
背景
炎症性事象は、先進国の人口のかなりの割合に対して有害な影響を及ぼす疾患状態の病理学において中心的役割を担う。このプロセスは、一つの細胞がもう一つの細胞において事象を開始するためのシグナルを発して炎症の続発症を開始することができるようにするポリペプチドの系であるサイトカインによって介在される。通常、この系は、感染性物質、有害な環境中物質、または悪性に形質転換した細胞からの防御反応の一環として機能する。しかし、炎症がその防御的役割の要求を上回ると、炎症は、関節炎、敗血症性ショック、炎症性腸疾患、および一連のその他のヒト疾患状態のような有害な臨床的影響を開始することができる。
【0004】
メトトレキセートおよびスルファサラジンのような分子量の小さい抗リウマチ薬は、約2/3の関節炎患者において、炎症を制御するには不十分である。過去10年間に開発された新しい生物学的薬剤は、従来の薬剤に対して不応性の患者の大部分において有効であることが証明されている。このような物質の標的は、しばしば、一つの細胞からもう一つの細胞にシグナルを伝達するリガンドを捕捉するか、またはエフェクター細胞の表面のレセプターを遮断してサイトカインシグナルの伝達を阻止し、それによって炎症事象を未然に防ぐかのいずれかの、サイトカイン経路の一つである。
【0005】
炎症状態を治療するための主な生物学的薬剤は、Amgen Corp.より販売されているエンブレル(登録商標)(エタネルセプト)である。これは、二量体としてIgG Fc領域に結合するヒトTNFレセプターの細胞外部分を含むキメラ分子である。この化合物はTNFの細胞表面TNFレセプターへの結合に干渉して、炎症状態の臨床的治療においてTNF経路の調節が重要であることを示している。
【0006】
エンブレル(登録商標)は、中等度ないし重度の慢性関節リウマチ、若年性リウマチ性関節炎、および乾癬性関節炎患者の治療に関して米国で許可されている。2003年には、強直性脊椎炎の治療に関して承認が期待される。2001年のエンブレル(登録商標)の売上高は7億5千万ドルであった。需要の伸びに合わせた増産が進められている。現在の適用における米国市場での予測売上高は、現在の適用だけで、2005年までに少なくとも40億ドルに達すると予想される。
【0007】
関節炎の治療のために現在米国で許可されているその他の生物学的薬剤は、TNF-αリガンドを結合するキメラ抗体であるレミケード(登録商標)(インフリキシマブ);ヒト化抗TNF-α抗体であるヒューミラ(商標)、およびインターロイキン-1レセプターのアンタゴニストである組換え型IL-1Raのキネレット(商標)(アナキンラ)である。
【0008】
偶然にも、サイトカインリガンドは、炎症に関与する細胞から放出されるサイトカイン経路の唯一のコンポーネントではない。標的エフェクター細胞上にあるサイトカインのレセプターは一部の炎症状態でも放出される(Gatanaga et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 87 : 8781-8784, 1990; Brakebusch et al., J. Biol. Chem. 269: 32488,1994)。
【0009】
GatanagaおよびGrangerは、1997年までに、ヒトTNFレセプター(p55およびp75の両イソ型)を細胞表面から開裂させるポリペプチドを単離していた(米国特許第6,569,664号)。彼らは、この酵素が敗血症性ショックの治療のための抗炎症性物質として使用できることを実証して、さらに関節炎、悪液質、および炎症性心疾患のようなその他の炎症状態の治療に使用できることを提唱した。その後、GatanagaおよびGrangerは、TNFレセプター放出に関連するタンパク質をコードした9つの組換え型cDNAクローンを単離した(米国特許第6,593,456号)。
【0010】
炎症状態を持つ対象の中には現在販売されている医用薬に対して応答しない者があり、また既存の生物学的薬剤の消費者コストは年間10,000ドルを上回ることもある。多くのサイトカイン経路を阻害して、かつ、より低いコストで生産することができる新しい生物学的薬剤の需要がある。
【発明の開示】
【0011】
概要
本開示は、サイトカインレセプターを細胞の表面から放出される生物学的薬剤の使用に関する発明を提供する。
【0012】
本発明の一つの局面は、例示的な生物学的薬剤であるMP8をより短くではなくより長くするすることによって、スケールが改善され、それによって少なくとも10倍産生することができるという予想外の知見に基づく。
【0013】
この発見は、多くの新しい目的のためのMP8伸長型(またはこのようなタンパク質をコードする核酸)の使用を可能とする:薬学的組成物を調製する段階、サイトカインレセプターを細胞表面から放出させる段階、サイトカインレセプターから細胞内へのシグナル伝達を阻害する段階、サイトカインレセプター放出阻害能に関して物質をスクリーニングする段階、サイトカインレセプターを細胞表面から放出させるタンパク質を産生する段階、または伸長MP8もしくはそれをコードする核酸を投与することによって対象の炎症を治療する段階。
【0014】
この状況における伸長MP8の一つの好ましい態様は、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドである。断片および変異型は、配列番号:53とはある程度の配列同一性(下記に示す)を持つが配列番号:41とは共通の配列を持たないとして定義することができる。固有配列の断片および変異型、ならびにそれらをコードする核酸も、既知の配列および産物が含まれないという条件において、本発明の一つの局面としての重要な組成物である。
【0015】
伸長MP8を使用する免疫アッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイおよびPCRアッセイ;伸長MP8およびそれに関連する核酸の医学分野での使用、つまり炎症性疾患を治療するための医用薬の調製における使用も意図される。
【0016】
本発明のもう一つの局面は、IL-1 I型レセプター、Il-1 II型レセプターおよびIL-6レセプターのような天然の酵素標的としてこれまでに知られていないサイトカインレセプターの放出を引き起こす生物学的薬剤の同定に基づく。
【0017】
本発明のこの局面の一つの態様は、これらのレセプターの一つ(またはそれらから得られるペプチド)を配列番号:1〜29から選択されるコード配列から発現するタンパク質、配列番号30〜59および80の任意の一つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む遺伝子組み換え技術によって産生されたタンパク質、または任意で配列番号:30〜42を超えて伸長するその断片のいずれかを含む組成物と接触させる段階を伴う。
【0018】
関連する態様は炎症を抑制するための方法であって、一般に炎症性細胞をIL-6レセプタープロテアーゼまたはIL-1レセプタープロテアーゼ(またはメタロプロテアーゼ)と接触させる段階を含み、IL-6またはIl-1レセプターの特異的放出を引き起こすための方法として参照することができる。もう一つの態様は、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病のような炎症状態を治療するための医用薬の調製におけるこのようなプロテアーゼの使用である。
【0019】
本発明のもう一つの局面は、溶液中のサイトカインレセプター放出酵素活性を測定するためのアッセイ方法である。溶液は、酵素(溶液中に含まれる場合)がペプチドを開裂する条件下において、本質的にp55 TNFレセプター、p75 TNFレセプター、IL-6レセプター、IL-1 I型レセプターまたはIL-1 II型レセプターから選択されるヒトサイトカインレセプターの8〜20個の連続するアミノ酸からなるペプチドと混合されて、ペプチドの開裂が測定され、それによって酵素活性が測定される。好ましい態様において、ペプチドは蛍光発光体および蛍光消光剤で標識されて、開裂は標識されたペプチドの蛍光の変化を測定することによって測定される。
【0020】
本発明のその他の局面は、当業者には本明細書の以下の説明および添付される特許請求の範囲から明らかとなる。
【0021】
詳細な説明
レセプター開裂酵素およびそれらを調節するタンパク質の市販の可能性については既に述べられている(米国特許第6,569,664号および第6,593,456号)。本開示は、臨床的および商業的に実用可能な治療戦略としてレセプターの開裂の促進に役立つ多くの画期的な改善を提供する。
【0022】
本発明の発見の一つは、元々の例示的クローンであるMP8(配列番号:9)の開発から得られた。研究目的のため、それは大腸菌(E. coli)において発現されて、インビトロおよび小動物での試験に適した量が得られた。しかし、ヒト臨床試験のために量産化する試みにより、発現したタンパク質の大半が封入体に含まれた状態で産生されて、収量に好ましくない影響を及ぼすという事実が明らかとなった。封入体からタンパク質を回収し、再生して活性タンパク質とするための多大な試みは失敗に終わった−タンパク質は不安定であり、回収された生物活性はごく少量であった。酵母を用いてMP8を作成するための代替的な試みは、このタンパク質が明らかに合成と同じくらいの速さで分解するために、徒労に終わった。この時点で、量産化の方法の問題は産物の製品化にとって重大な障壁であった。
【0023】
溶液は全く予想しなかった供給源から得られた。元々のMP8クローンは長い方のリーディングフレームのC末端部分であった(図20)。完全なリーディングフレームを大腸菌で発現させた際に半分よりも多いタンパク質が可溶性画分に産生されたことが明らかとなり、直接の精製および量産が可能となった。従って、本開示は、発現、産生および精製を促進するために、完全長のMP8およびN末端においてMP8コア配列を超えて伸長させたその他の変異型を提供する。
【0024】
活性な完全長のタンパク質は切断されたMP8タンパク質よりも格段に産生し易いという知見は、全く予測外であった。比較的小さなタンパク質は大抵、発現が容易であり、しかも、溶解度が高く、従って、通常は、完全長のMP8は元々のMP8クローンよりも発現および精製が困難であると予想される。さらに、別な方法で回収不能なMP8は、依然、完全長分子のコンポーネントであり、自己触媒が問題に寄与する限り、完全長のタンパク質が安定であることを確信するための理由はない。現在入手可能な発現系を用いて元々のMP8クローンを完全長の配列に変更することは臨床的な試験および使用のための産物の開発において重要な分岐点であった。
【0025】
本発明のもう一つの発見は、TNFレセプター放出タンパク質のファミリーに関する特異性試験のさらなる改善から得られた。特に、MP8はTNFレセプターばかりでなく、IL-6レセプターおよびIL-1レセプターの一つまたは双方のイソ型を開裂することも見出された。
【0026】
これには複数の重要な意味がある。例えば、MP8(配列番号:41または53)およびこのタンパク質ファミリーのその他のメンバーのいくつかは、TNF経路が病理の重要な部分ではない時の状態の治療のために開発されることができることを示している。IL-6は多発性硬化症および骨関節炎において中心的役割を果たすものとして意味付けられている。従って、IL-6のシグナル伝達を阻害するMP8のような生物学的薬剤はこれらの状態、ならびにTNF療法を目的とするレミケード(登録商標)およびエンブレル(登録商標)のような治療に不応性のその他の状態(または患者の状態がこのような治療に不応性となっている場合)のための治療用薬剤となる可能性がある。実際、MP8は多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)において有効であることが示されている(実施例13、図18)。
【0027】
もう一つの意味は、本発明の生物学的薬剤がTNFに加えてサイトカイン経路に影響を及ぼすことによって既存の生物学的薬剤と有効に相乗作用を示し得ることである。その他の試験は、エンブレル(登録商標)(TNF経路を阻害)およびキネレット(登録商標)(IL-1経路を阻害)がいずれも、一部の生物学的および臨床的状況において、それらが併用される場合よりもより有効であることを実証している。MP8をTNF阻害剤と併用することによって、臨床医は、根底にある病理へのより包括的なアプローチとして、TNF、IL-1、IL-6、および多分、その他のシグナル伝達経路に対して同時に影響を及ぼして疾患状態を調節することができ得る。
【0028】
従って、本発明は、MP8のようなサイトカインレセプター放出タンパク質がレミケード(登録商標)のようなTNF特異抗体などのTNF遮断物質、可溶性TNFコンポーネントを含むTNF結合タンパク質(エンブレル(登録商標)など)、TNFリガンドのドミナントネガティブな変異型、および当技術分野において公知であり得るまたは今後開発され得るその他のTNF阻害方法と同時にまたは順次使用される薬学的組成物、キット、または治療の方法を意図する。
【0029】
これらの生物学的薬剤の商業的開発から得られた本発明のさらなる局面は、サイトカインレセプター開裂を引き起こす酵素活性を測定するためのペプチドアッセイである(実施例4)。これにより、一部のレセプター開裂酵素の活性が精製され、用量によって標準化され、酵素阻害物質のスクリーニングに使用されることが可能となる。
【0030】
本開示は、サイトカインレセプター開裂を介在する生物学的薬剤が多くの異なる状態のための治療的および商業的な可能性を持つことを示す幅広い動物モデルデータを提供する。このデータは、本発明の生物学的薬剤が様々な種類の炎症性疾患の治療のために現在一般大衆に提供されている治療用製剤を上回る重要な利点を持つことを示す。利点のいくつかは以下の通りである:
・サイトカインレセプターの開裂はTNF経路を2通りの方法で阻害する:第一に、レセプターはエフェクター細胞の膜から除去されるので、シグナル伝達に関与することはできない。第二に、レセプターの放出されたリガンド結合部位はエンブレル(登録商標)およびレミケード(登録商標)と同等の方法で任意のインカミング(incoming)TNFリガンドを中和する。
・レセプター放出は酵素開裂によって引き起こされるので、本発明の生物学的薬剤はエンブレル(登録商標)のようなレセプターアンタゴニストが化学量論的量で到達するところを触媒量で到達する可能性を持つ。このことは、酵素の単一分子が多くのTNFリガンドおよびレセプターを不活化して、その結果、投与される薬剤の一分子当たりの効果が増大することを意味する。
・本発明の生物学的薬剤は、通常、炎症を調節するために作用する天然のヒトタンパク質として製剤化することができる。このことは、それらが免疫原性でないことを意味する。さらに、細胞から放出されるレセプターは生理学的に自然な方法でインカミングサイトカインを中和する内因性(非組換え型)の化合物である。
・本発明の分子は、その他の特異的な生物学的薬剤と同じく、副作用性質の可能性が低い。5つの異なる動物疾患モデルにおいて、安全性の懸念は生じていない。生物学的薬剤の特異性は臨床試験の早期完了を促進する。
・例示的クローンであるMP8-FLは比較的小さなタンパク質であり、その他の生物学的薬剤の特異性および臨床的恩典を保持しつつ、質量当たりの大きな効果をもたらす。小さなサイズは、炎症を起こした関節近くへの投与を可能とする皮内送達を含めて、臨床製剤化において幅広い選択肢を提供する。
・この報告のデータは、本発明のプロテアーゼによって放出されるサイトカインレセプターが投与後数日間にわたって持続することを示す。このことは、週1回(またはそれよりも少ない)この酵素の投与が完全な治療効果に十分であり得ることを意味する。
・本発明の製剤は現在確立されている薬剤とは異なるメカニズムによって作用するので、単に代替品としての可能性を持つばかりでなく、その他の治療用薬剤の効果を高めて、適用の数を増やし、それによって市場規模を拡大することも可能である。
・現在までに調べられたクローンはすべて、細菌発現によって産生された場合に機能活性を保持する。このタンパク質は、明らかに、レミケード(登録商標)のような抗体製剤またはエンブレル(登録商標)のような免疫グロブリン誘導体のように哺乳動物細胞内でのグリコシル化を必要としない。用量当たりの生産コストが適度であることは、競争力のある重要な利点である。
【0031】
本発明の概要および添付される特許請求の範囲に基づき、実施例の項の例証を指標として、当業者は本発明の実践においてどの技術が用いられるかを容易に認識する。以下の詳細な説明は当業者のさらなる便宜のために提供される。
【0032】
定義および基礎的技術
炎症を抑制するために作用する本発明の物質は、本開示において、酵素またはタンパク質を開裂または放出するサイトカインレセプターとして様々に記載される。それらの用語は互換的であり、明確に要求される場合を除いて、何らかの特定の生化学的または生物学的活性を要求することを意味するものではない。例えば、本発明のクローニングされたタンパク質(MP8-FL2およびその誘導体など)は、それ自体、タンパク分解活性を持ち得て、または(もう一つのタンパク質の発現または活性化を引き起こすなどの)非直接的な方法で炎症細胞からの一つまたは複数の不特定のサイトカインレセプターの放出を引き起こし得る。見かけのタンパク分解活性の実証は、タンパク質の酵素機能に直接的に起因し得るか、または活性な生物学的薬剤の相対濃度を測定するための代理として作用する同時精製産物に起因することができる。治療上の恩典は化合物が効果を発揮するメカニズムを理解しなくても経験的に調べることができるため、明確に記載されない限り、主な産物を参照するために用いられる用語は本発明の化合物の治療上の使用を制限することを意味するものではない。
【0033】
本発明の全般的説明において用いられる名称は、そうでないことが明確に記載または意味されない限り、機能的に同等なすべての断片、変異型および相同体を含むことを意味する。例えば、具体的な作業用例証において「コアMP8」という記載は配列番号:41の配列を持つポリペプチド(通常はHISタグを持つ)を意味する;そうでない場合は、一般的に配列番号:41と一定の同一性および適切な生物学的機能を持つ断片および相同体を示す。具体的な作業用例証における「完全長のMP8」または「MP8-FL」という記載は、配列番号:53の配列を持つポリペプチド(任意で、HISタグを持つ)を意味する。そうでない場合は、一般に、配列番号:53の断片であって配列番号:41の配列を超えて完全な配列番号:53までの任意の長さで伸長する配列を持つ任意の断片、ならびにそれらと一定の同一性および適切な生物学的機能を持つ相同体を示す。作業用の例証以外の「MP8」という記載は、そうでないことが明確に記載または意味される場合を除いて、互換的に完全長のMP8およびコアMP8(その断片および変異型を含む)を示す。
【0034】
「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかまたはそれらの類似体の任意の長さのヌクレオチドの重合型を指す。非制限的な例には以下が含まれる:遺伝子または遺伝子断片、mRNA、cDNA、組換え型または合成ポリヌクレオチドのその他の型、プラスミド、ベクター、核酸プローブ、およびプライマー。その用語は二本鎖および一本鎖分子を互換的に示す。そうでないことが明記または要求されない限り、本明細書に説明される本発明のポリヌクレオチドである任意の態様は二本鎖型、および二本鎖型を形成することが公知であるまたは推定される2つの相補的一本鎖型のそれぞれの両方を含む。
【0035】
「ハイブリダイゼーション」は、一つまたは複数のポリヌクレオチドが反応してヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化する複合体を形成する反応を指す。ハイブリダイゼーション反応は異なる「ストリンジェンシー」の条件下で実施することができる。関連する条件には、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような反応混合液中のさらなる溶質の存在が含まれる。ストリンジェンシー増大の条件は、10×SSC(0.15M NaCl、15mMクエン酸緩衝液)中で30℃;6×SSC中で40℃、6×SSC中で50℃、6×SSC中で60℃、または0.5×SSC中で約40℃、もしくは50%ホルムアミドを含む6×SSC中で約30℃である。
【0036】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列同一性のパーセントは、比較する配列を並べて、続いて整列した各位置における共通残基の数を数えて算出する。挿入または欠失の存在についてペナルティーは設定しないが、整列させる配列の一つに明らかに多くのアミノ酸残基を収容しなければならない場合のみそれらを可能とする。比較する配列の一つが「連続的」であることが示される場合、比較においてその配列中のギャップは許可されない。同一性パーセントは、比較または参照配列の残基と同一である試験配列の残基に関して与えられる。
【0037】
本明細書で用いられるように、ポリヌクレオチドの「発現」はRNA転写産物を示す。その後のタンパク質またはその他のエフェクター化合物への翻訳も起こり得るが、明記される場合を除いて、必須ではない。「遺伝的変化」は、遺伝子要素が細胞内に人為的に導入されて、その結果、遺伝子要素が発現もしくは複製し、または細胞の子孫によってその要素が遺伝し得るプロセスを示す。
【0038】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸ならびにそれらの相同体および誘導体の重合体を指すために互換的に用いられる。それらは天然の供給源から単離され得て、または遺伝子組み換え技術による発現もしくは化学的合成によって作成することができる。
【0039】
タンパク質の折りたたみおよび生物学的機能はアミノ酸配列における挿入、欠失および置換を伴うことができることが理解される。いくつかのアミノ酸置換は一層容易に許容される。例えば、疎水性側鎖、芳香族側鎖、極性側鎖、正もしくは負の電荷を持つ側鎖、または2つもしくはそれよりも少ない炭素原子を含む側鎖を持つアミノ酸の同様の特性の側鎖を持つもう一つのアミノ酸による置換は、2つの配列の本質的な同一性を変動させることなく起こることができる。相同領域を決定するための方法および相同性の程度を判定するための方法については、Altschul et al.、Bull. Math. Bio. 48: 603-616, 1986;およびHenikoff et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919, 1992に述べられている。ポリペプチドの機能性を保持する、または(活性、安定性の向上、または免疫原性の低下のような)新しい有用な特性を付与する置換は特に好ましい。
【0040】
「抗体」(互換的に複数形で用いられる)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも一つの抗原認識部位を介してポリペプチドのような標的に特異的に結合することのできる免疫グロブリン分子である。本明細書で用いられるように、この用語は無傷の抗体ばかりでなく、抗体の断片、キメラ、および所望の特異性に関する少なくとも一つの抗原結合部位を含む相当物を含む。
【0041】
「単離された」ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその他の物質は、その物質もしくは類似の物質が自然に発生するまたは最初の得られる場所に含まれ得るその他のコンポーネントの少なくともいくつかを欠く物質の調製物を指す。従って、例えば、単離された物質は供給源混合物からそれを濃縮するための精製技術を用いて調製することができる。濃縮は、溶液の体積当たりの重量のような絶対的な基準に基づいて測定することができ、または、供給源混合物に含まれる第二の潜在的干渉物質に関連して測定することができる。物質は、化学合成または遺伝子組み換え発現のような、人為的な構築プロセスによって単離された状態で提供されることもできる。
【0042】
「臨床試料」という用語は、対象から得られて、診断試験のようなインビトロの操作において有用な様々な試料タイプを含む。定義には、外科的切除、病理学標本、または生検標本として得られた充実組織試料、臨床的な対象から得られた細胞または培養から得られたそれらの子孫、血液、血清、血漿、脊髄液、滑液および尿のような液体試料、ならびに疾患の潜在的指標を含むこのような試料の任意の画分または抽出物が含まれる。
【0043】
特記する場合を除いて、本発明の実践は分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の通常の技術を用いる。
【0044】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、化学合成または遺伝子組み換え発現を含む任意の適切な技術によって調製することができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本開示に提供されるデータを用いて、〜50よりも少ない塩基対の配列は、商用のサービスを介して、または三エステル法もしくは亜リン酸法のような公知の合成方法によって、化学的合成で簡便に調製される。適切な方法は、モノヌクレオシドホスホラミダイド結合単位を用いた固相合成である(米国特許第4,415,732号)。アンチセンス療法での使用のために、ポリヌクレオチドは薬学的調製物に高い安定性をもたらす化学的手法によって調製することができる。非限定的な例として、チオールで誘導体形成したヌクレオシド(米国特許第5,578,718号)、および修飾した骨格を持つオリゴヌクレオチド(米国特許第5,541,307号および第5,378,825号)が含まれる。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、所望の配列を持つ鋳型のPCR増幅によって得ることもできる。所望の配列にまたがるオリゴヌクレオチドプライマーをアニーリングして鋳型に戻し、DNAポリメラーゼによって伸長させ、続いて、鋳型と伸長したオリゴヌクレオチドが解離するように高温で融解する。所望の量の増幅ポリヌクレオチドが得られるまで、このサイクルを反復する(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)。適切な鋳型には、ジャーカット(Jurkat)T細胞ライブラリ、およびサイトカインレセプターの放出を引き起こす遺伝子を含むその他のヒトまたは動物発現ライブラリが含まれる。ジャーカットT細胞ライブラリは、American Type Culture Collection、10801 University Blvd.、Manassas VA 20110、U.S.A.(ATCC #TIB-152)から入手可能である。生産規模の量の大きなポリヌクレオチドは、所望の配列を適切なクローニングベクターに挿入してクローンを複製することによって、極めて簡便に得られる。例示的なクローニングおよび発現方法を実施例2に例証する。
【0047】
好ましいポリヌクレオチド配列は、好ましさに関して昇べきに、本開示に例示される配列の一つと50%、70%、80%、90%または100%同一である。例示的配列と比較して同一または相同な配列における連続する残基の長さは、好ましさに関して昇べきに約15、30、50、75、100、200、500または1000残基であり、クローン全体の長さまでとすることができる。(ハイブリダイゼーション特性またはコードするものに関して)コードされるポリペプチドの保存的置換を引き起こすまたは機能を保持するヌクレオチドの変化は特に好ましい置換である。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドは、細胞または組織試料中の変化したレセプター放出活性の測定に用いることができる。これには、レセプター放出に影響を及ぼす核酸が試料中に含まれる場合、ポリヌクレオチドのこの核酸との特異的なハイブリダイズを可能とする条件下において試料をポリヌクレオチドと接触させる段階、および段階a)の結果としてハイブリダイズしたポリヌクレオチドを測定する段階を伴う。試験の特異性は複数の方法の一つにおいて示すことができる。一つの方法は、標的とは結合するが試料中に含まれる可能性のあるその他の核酸とは結合しないように、十分な長さであり、検出される配列と十分に同一である配列を持つ本発明のポリヌクレオチドである特異的プローブの使用を伴う。このプローブは、典型的には、後に検出することができるように(直接的または二次試薬を介して)標識される。適切な標識には、32Pおよび33P、化学発光試薬および蛍光試薬が含まれる。ハイブリダイゼーション反応後、ハイブリダイズしたプローブの量が測定できるように未反応のプローブを洗い流す。シグナルは分岐プローブを用いて増幅することができる(米国特許第5,124,246号)。もう一つの方法において、ポリヌクレオチドはPCR反応のためのプライマーである。特異性は、関心の対象の配列を増幅するペアプローブの能力によって示される。適切な回数のPCRサイクル後、得られる増幅産物の量は試料中に元々含まれる標的配列の量に相関する。
【0049】
このような試験は、研究、および疾患状態の診断または評価の双方において有用である。例えば、サイトカインのシグナル伝達は腫瘍細胞の排除において役割を担い、癌は疾患を起こした組織内のサイトカインレセプター放出を活性化することによって排除プロセスを回避し得る。従って、いくつかの状況下において、レセプター放出に影響を及ぼす分子の高発現は癌の進行と関連する可能性がある。レセプター放出活性を高めるために遺伝子療法が実施される場合のように、診断試験は療法のモニタリングにも有用である。
【0050】
本発明のポリヌクレオチドは、以下に説明するように、ポリペプチド産生のために真核生物または原核生物発現系で発現することもでき、または医用薬の調製に使用することもできる。
【0051】
ポリペプチド
本発明の短いポリペプチドは固相化学合成によって調製することができる。固相化学合成の原理は、Dugas & Penney, Bioorganic Chemistry, Springer-Verlag NY pp 54-92 (1981)および米国特許第4,493,795号に見出することができる。自動固相ペプチド合成は、PE-Applied Biosystems 430Aペプチド合成装置(Applied Biosystems, Foster City CAより販売)のような装置を用いて実施することができる。
【0052】
長いポリペプチドは発現クローニングによって簡便に得られる。所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは転写および翻訳のための要素を制御するために機能的に結合されて、次いで、適切な宿主細胞の導入される。発現は、大腸菌(ATCC アクセッション番号31446または27325)のような原核生物、酵母ピチアパストリス(Pichia pastoris)のような真核微生物、または昆虫もしくは哺乳動物細胞のような高度真核生物において達成され得る。米国特許第5,552,524号には多くの発現系が記載されている。発現クローニングは、Lark Technologies, Houston TXのような商用サービスに依頼することができる。タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーおよびHPLCのような、タンパク質化学の分野における標準的方法によって産生宿主細胞から精製される。発現産物は、任意で、アフィニティー精製を促進するための配列タグを付けて産生されて、このタグは後に除去することができる。
【0053】
好ましい配列は、本開示に例示される配列の一つと、好ましさに関して昇べきに、40%、60%、80%、90%または100%同一である。固有のヒトポリヌクレオチドと比較して同一または相同な配列の長さは、好ましさに関して昇べきに約7、10、15、20、30、50、100または200残基であり、コード領域全体の長さまでとすることができる。
【0054】
ポリペプチドは、ペプチド開裂アッセイにおいてサイトカインレセプター放出調製能に関して調べることができる。ポリペプチドをレセプター(好ましくはC75またはTHP1細胞のような細胞の表面に発現)と接触させて、ポリペプチドがレセプターの開裂および放出を増加または減少させる能力を測定する。
【0055】
本発明のポリペプチドは抗体を産生するための免疫原として用いることができる。大きなタンパク質は抗体のカクテルを産生し、短いペプチド断片は無傷タンパク質の小さな領域に対する抗体を産生する。抗体クローンは、アミノ酸約10個の長さの短い重複ペプチドを産生することによって、タンパク質結合部位に関してマッピングすることができる。重複ペプチドは、GenosysのSPOTS(商標)キットを製造業者の説明書に従って使用して、標準的なF-Moc化学によりナイロン膜の支持体上に調製することができる。
【0056】
本発明のポリペプチドは、以下に説明するように、治療の状況においてサイトカインのシグナル伝達に影響を及ぼすために用いることもできる。
【0057】
変異型
使用者は、質量に対する活性の比率を高めるため、グリコシル化部位を変化させるため、産生効率を高めるため、またはその他の任意の価値のある目的のために、本開示に提供されるプロトタイプ配列の断片、変異型、またはその他の相同体を作成することを決定してもよい。
【0058】
TNFレセプター放出を引き起こす本発明に開示されるタンパク質の断片(例えば、配列番号:41および53)は、マッピング機能のための標準的な方法を用いることによって容易に同定することができる。組換えタンパク質をNまたはC末端で切断し、続いて、それぞれ、実施例4および5に例証するようなペプチド開裂アッセイまたはレセプター放出アッセイのような処理能力の高い方法で実施できる適切なアッセイを用いて機能を調べる。切断は活性が消失するまで継続して、その時点でタンパク質の最小機能単位が特定される。同定されたサイズまでのタンパク質の任意の部分を含む断片は、少なくともタンパク質の機能性コアを含む融合構築物であることから、多分、機能性であろう。
【0059】
コード配列に一つまたは複数のアミノ酸変化を組み込んだ変異型を作成するために、当業者は特定のヌクレオチドまたはコドンを変化させて活性を再検査することができる。任意で、使用者は公知の相同性データを部位特異的突然変異誘発における先導としてもよい。例えば、MP8の変異型を作成するために、使用者は脊椎動物において保存される領域(配列番号:89)または哺乳動物おいて保存される領域(配列番号:90)における突然変異を回避するよう望み得る。かなりの変異(配列番号:89または90における多くのx)を示す領域は、欠失または付加を伴う可能性が高いことがある。この戦略を用いて、使用者は配列同一性の程度(または遺伝子配列のプロトタイプ配列とハイブリダイズする能力)によって特定可能な相同体を得る。機能性MP8変異型は一つまたは複数の保存モチーフ(配列番号:91〜102)を含んでもよく、特にコアタンパク質(配列番号:97〜102)に含んでもよく、分子のこの領域はレセプター放出活性と関連する。
【0060】
特定の変化が望ましい場合を除いて、配列内の特定の位置に突然変異をターゲティングする必要はない。機能性変異型の大量採取を作成するための効率的方法は、ランダム突然変異戦略を使用することである。標準的な指導書であるProtocols in Molecular Biology(Ausubel et al. eds.)およびMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Sambrook et al. eds.)は、化学的突然変異誘発、カセット式変異誘発、縮重オリゴヌクレオチド、相互プライミングオリゴヌクレオチド、リンカースキャニング突然変異、アラニンスキャニング突然変異、および誤りがちPCRを用いた技術について記載している。その他の有効な方法には、Stratageneの大腸菌変異誘発株(Greener et al., Methods Mol. Biol. 57: 375, 1996)、およびMaxygenのDNA混合技術(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8: 724, 1997; Harayama, Trends Biotechnol. 16: 76, 1998;米国特許第5,605,793号および第6,132,970号)が含まれる。使用者が特許請求の範囲の可変性の外側限度近くの変異型(即ち、配列番号:2と〜90%同一のみ)を調べようとする限り、代表的な配列を変異および機能性試験の連続サイクルに供することができ−または、DNA混合技術のようにより急激な変化を生じる突然変異戦略を選択することができる。
【0061】
特許請求されるタンパク質の変異型を得る際に使用される当業者が入手可能な複数の市販のサービスおよびキットがある。例示の目的で、この種類の突然変異誘発プロジェクトのために特別に設計された複数の市販の系に関する情報をこの修正に添付する(証拠1):InVitrogen(商標)Life Technologiesより販売されているGeneTailor(商標)部位特異的突然変異誘発系(証拠1);BD Biosciences/Clontechより販売されているBD Diversify(商標)PCRランダム突然変異誘発キット;MJ Research Inc.より販売されているTemplate Generation System(商標)、Stratageneより販売されている大腸菌の変異誘発株であるXL1-Red(商標);および同じくStratageneより販売されているGeneMorph(登録商標)ランダム突然変異誘発キット。任意のこれらの種類の系を実施例1および4に述べるような適切な機能アッセイと併用することによって、変異型を処理能力の高い方法で作成および検査することができる。
【0062】
突然変異誘発の各反復の後、使用者は得られた変異型を既述のように生物学的活性に関してスクリーニングして、サイトカインレセプター放出を引き起こす能力を保持しているクローンを選択することができる。任意で、選択されたクローンは、元々の配列からの所望の程度の変異が得られるまで、さらなる突然変異誘発過程に供することができる。
【0063】
伸長配列
本開示の重要な発見の一つは、コアタンパク質を超えてMP8の配列を伸長させるとタンパク質の産生および回収が10倍に向上することを示す知見である(実施例15)。従って、本発明の一つの局面は、完全長の配列(配列番号:53)の、先にコア配列(配列番号:41、およびその機能性亜断片)に限って意図された目的のための使用である。使用者は、完全長のMP8配列の断片および変異型であって、コア断片よりも長いが完全オープンリーディングフレームよりは短い中間のサイズの断片および変異型を容易に作成することができる。これらの多くは、コアタンパク質よりも産生が大幅に容易であるという特性を配列番号:53と共有する。
【0064】
このような有用な中間の大きさの断片を見出するために、2つの試験が実施される。第一に、サイトカインレセプター放出を引き起こす能力を保持しているかどうかを調べるために、候補である組換え断片について試験を行う。使用者は、候補である断片が実施例15に概述される戦略に従って大腸菌、ピチアパストリスまたはその他の発現系での大規模生産に適しているかどうかも調べる。一般的には、どの組換えタンパク質が適切であるかを調べるために完全な精製プロトコールを実施する必要はない:より簡単に、コード配列を系にクローニングして発現を誘発し、可溶性抽出物を使用する系に適した状態で調製する。その後、直ちに、適切な特異抗体を用いて抽出物中の標的タンパク質の量に関して抽出物をイムノアッセイすることができる。
【0065】
同様に、コアタンパク質を超えて伸長する配列番号:53の変異型は、前節で述べた突然変異戦略を用いて作成し、生物活性および発現の容易さの双方について試験することができる。変異型タンパク質は、配列番号:53と一定の同一性(例えば、70%、80%または90%同一)を有するが、それよりも長く(1個、10個もしくは50個、またはそれよりも多いアミノ酸)、配列番号:41とは同じ程度の同一性を有さないアミノ酸配列を含むか、または、からなる。
【0066】
または、あるいは加えて、変異型は、例えば配列番号:41のN末端方向にもう一つのタンパク質の配列を含む融合タンパク質として構築され得る。二番目の配列は、配列番号:53のN末端の100個の残基に代わることができて、適切な発現系において回収可能な可溶性タンパク質としてタンパク質の産生を促進する。候補の二番目の配列は、可溶性であり、一般的な発現系において容易に産生可能であり、しかも、MP8の生物活性に干渉する可能性が低いことが公知である無害のヒトタンパク質、例えばアルブミンまたはその他の血清タンパク質から得ることができる。その他の候補配列は、例えば、TNFリガンド、隣接する細胞表面レセプターのためのリガンド、または一本鎖抗体のように、標的組織近傍に融合タンパク質の蓄積を促進し得る。融合タンパク質への組み込みに適したタンパク質配列は、既述の試験系を用いて経験的に調べることができる。
【0067】
抗体
本発明のタンパク質に対するポリクローナル抗体は、脊椎動物に免疫原の型の本発明のポリペプチドを注入することによって作成することができる。ポリペプチドの免疫原性は、KLHのような担体と結合またはフロイントのアジュバントのようなアジュバントと混合することによって高めることができる。所望ならば、技術の組み合わせによって特異抗体の活性をさらに高めることができ、それらには、プロテインAクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびイムノアフィニティークロマトグラフィーが含まれ得る。
【0068】
モノクローナル抗体は、Harrow & Lane(1988)、米国特許第4,491,632号、第4,472,500号、および第4,444,887号、ならびにMethods in Enzymology 73B:3(1981)のような標準的参照文献に従って作成することができる。つまり、哺乳動物を免疫して、抗体産生細胞(通常は脾細胞)を回収する。細胞は、非産生性ミエローマと融合、エプスタイン・バーウイルスに導入、または腫瘍DNAで形質転換することによって、不死化する。処置した細胞をクローニングして培養し、所望の特性を持つ抗体を産生するクローンを選択する。
【0069】
抗体は、断片を用いて、必要ならば、不要な活性を選択またはこれを吸収除去することによって、分子の特定の領域について産生することができる。例えば、コアMP8に対する抗体は、配列番号41またはその一部からなるタンパク質を免疫原として用いることによって産生することができる。完全長に対する抗体は、配列番号:53の一部であって配列番号:41を含まない部分を用いて免疫することによって;または完全な配列番号:53を用いて免疫して配列番号:41を用いて不要な活性に対して選択または吸収することによって、産生することができる。
【0070】
特異抗体分子(任意で、一本鎖可変領域の型)を得るその他の方法は、免疫担当細胞またはウイルス粒子のライブラリを標的抗原と接触させる段階、および明確に選択されるクローンを産生する段階を伴う。免疫担当ファージは、免疫グロブリン可変領域セグメントを表面に発現するように構築することができる。Marks et al, New Eng. J. Med. 335: 730, 1996、International Patent Applications WO 9413804、WO 9201047、WO 90 02809、およびMcGuiness et al., Nature Biotechnol. 14: 1449, 1996を参照されたい。
【0071】
本発明の抗体は、レセプター放出を引き起こすと考えられるタンパク質に関する免疫アッセイにおいて用いることができる。免疫アッセイの一般的技術は、「The Immunoassay Handbook」、Stockton Press NY, 1994;および「Methods of Immunological Analysis」、Weinheim: VCH Verlags gesellschaft mbH, 1993)に記載されている。抗体は、試料中に含まれる可能性のある任意の調節物質とは特異的に結合するが存在し得るその他のタンパク質とは結合しない条件下において、試験試料と混合する。形成される複合体をインサイチューにおいて(米国特許第4,208,479号および第4,708,929号)、または未反応の試薬と物理的に分離することによって(米国特許第3,646,346号)測定することができる。分離アッセイは、一般に、複合体の検出および定量を促進するための標識した標的試薬(競合アッセイ)または標識抗体(サンドイッチアッセイ)を伴う。適切な標識は、125Iのような放射性同位体、β-ガラクトシダーゼのような酵素、およびフルオレセインのような蛍光標識である。本発明の抗体は、免疫組織学により固定した組織切片においてレセプター放出を引き起こす分子を検出するために用いることもできる。抗体を組織と接触させて、未反応の抗体を洗い流し、続いて、一般的には標識した抗免疫グロブリン試薬を用いて、結合した抗体を検出する。免疫組織学は調節物質の存在ばかりでなく、組織内での位置も示す。
【0072】
サイトカインレセプターの放出を引き起こす分子の検出は、研究目的および臨床的使用において関心の対象である。レセプター開裂酵素の高発現は癌の進行と関連する可能性がある。診断的試験は、治療コースにおいて投与されるレセプター放出を引き起こす物質のモニタリングにおいても有用である。
【0073】
本発明の抗体は、医用薬の調製にも使用することができる。治療の可能性を持つ抗体には、レセプタープロテアーゼの消失を促進またはその生理学的作用を遮断することによって、レセプター放出活性に影響を及ぼす抗体が含まれる。以下の項に記載されるアッセイに従って、望ましい活性に関して抗体をスクリーニングすることができる。
【0074】
スクリーニングアッセイ
本発明は、本発明のレセプター放出化合物の活性を調節して、それによってサイトカインのシグナル伝達に影響を及ぼす産物の選択および開発のためのスクリーニング方法を提供する。
【0075】
本発明に組み入れられるスクリーニング方法は、レセプタープロテアーゼの作用にタンパク質レベルで干渉する物質をスクリーニングするための方法である。この方法は、(C75RまたはTHP細胞のような)サイトカインレセプターを発現する細胞をレセプター放出活性を持つ本発明のポリペプチドと共にインキュベートする段階を伴う。本アッセイにおいて分子にレセプター放出活性を付与するために2つの選択肢がある。一つの選択肢では、ポリペプチドは試験される物質と共に試薬として細胞の培地に加えられる。もう一つの選択肢では、細胞は分子を多量に発現するように遺伝的に変化されて、アッセイでは試験物質を細胞と接触させることのみを必要とする。この選択肢によって、多くの試験化合物に関する処理能力の高いスクリーニングが可能となる。
【0076】
いずれにしても、レセプター放出活性を亢進または減少させる化合物を特定するために、被験物質を加えた場合および加えない場合についてレセプター放出速度を比較する。(ポリペプチドを発現しない細胞を用いて)添加するポリペプチドが存在しない状態でレセプター放出に対する物質の活性を調べる並行実験を実施すべきである。これにより、試験物質の活性が加えられるレセプター放出分子に対する影響を介して発現するのか、またはその他の何らかのメカニズムを介して発現するのかが明らかとされる。
【0077】
本発明のもう一つのスクリーニング方法は、サイトカインレセプター開裂酵素がレセプター開裂部位にまたがる短いペプチドと混合されるアッセイを伴う。酵素活性は、例えば、ペプチドの分子量の変化(質量分析により検出可能)または蛍光消光ペアを用いたペプチドの標識により測定することができる。続いて、ペプチドの開裂の速度が酵素によって阻害されるかどうかを調べるために、この系に試験化合物を加える。このようなアッセイの例示を以下の実施例4に示す。
【0078】
スクリーニングアッセイは、レセプター放出に対する影響を介して、細胞上のサイトカインレセプターの量に影響を及ぼす能力を持つ小分子化合物の高処理スクリーニングとして有用である。所望の活性を持つ小分子化合物は、より安定である、および生産コストが低いなど、薬学的組成物の製造において有益な特性を持つ。
【0079】
医用薬およびその使用
先に述べた通り、本発明に組み入れられる一部の製剤の有用性はサイトカインからのシグナル伝達に影響を及ぼすことである。レセプター放出を促進する製剤は細胞表面のサイトカインレセプターを減少させる作用を持ち、それによって、シグナル伝達を抑制する。逆に、レセプター放出を阻害する製剤はサイトカインレセプターの開裂を阻止して、シグナル伝達を増強する。
【0080】
シグナル伝達に影響を及ぼす能力は、サイトカインシグナル伝達が状態の病理に寄与する臨床状態の管理において重要な関心の対象である。このような条件には以下が含まれる:
・心不全。IL-1βおよびTNFは、炎症プロセスの持続、炎症細胞の補充および活性化における中心的介在物質であると考えられている。うっ血性心不全、移植拒絶反応、心筋炎、敗血症、および熱傷性ショックの場合、炎症は心機能を抑制する。
・悪液質。癌のような慢性疾患の経過において発生する全般的な体重減少および消耗。サイトカインは、食欲、エネルギー消費および代謝速度に影響を及ぼすと考えられる。
・クローン病。多くのサイトカインによって介在される炎症プロセスは、リンパ浮腫およびリンパ球浸潤の結果として生じる腸管壁の肥厚をもたらす。
・エンドトキシンショック。大腸菌のようなグラム陰性細菌からのエンドトキシンの放出によって誘発されるショックは、サイトカイン介在性の炎症を伴う。
・関節炎。TNF、IL-6、IL-1およびその他のサイトカインは一酸化窒素シンターゼの発現を促進して、慢性関節リウマチおよびその他の関節炎サブタイプの疾患の病原に関与すると考えられる。
【0081】
関心の対象のその他の状態には、病理の一部が炎症または炎症およびその他の生物学的系の交差によって引き起こされる状態を含む。非限定的な例として、多発性硬化症、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、動脈硬化症、敗血症、潰瘍性大腸炎、動脈硬化症、微生物感染によって発生する炎症、ならびにI型糖尿病、重症筋無力症、および全身性エリテマトーデスのような自己免疫性病因を持つ疾患が含まれる。
【0082】
レセプター開裂活性を促進する本発明のポリペプチドは、サイトカインシグナル伝達を抑制または正常化する目的で投与することができる。例えば、うっ血性心不全またはクローン病の場合、このポリペプチドは炎症の続発症を緩和するために定期的に投与される。治療は、任意で、小分子の抗炎症剤(メチルトレキセートなど)、またはシグナル伝達に影響を及ぼす(エンブレル(登録商標)のようなサイトカイン遮断薬、またはキネレット(登録商標)のようなレセプターアンタゴニストなど)もしくはその他の方法で炎症の程度を緩和するその他の物質と併用される。
【0083】
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子療法によってサイトカインレセプターの開裂を促進するために使用することもできる。コード配列は、ヒト細胞における転写および翻訳のための制御エレメントと機能的に結合される。続いて、疾患部位の細胞におけるコード配列の導入および発現を促進する型で提供される。局所注入に適した型には、裸のDNA、陽イオン性脂質で包装されたポリヌクレオチド、および(アデノウイルスおよびAAV構築物のような)ウイルスベクターの型のポリヌクレオチドが含まれる。当業者に公知である遺伝子療法の方法は、米国特許第5,399,346号、第5,827,703号および第5,866,696号に記載される方法を含む。
【0084】
サイトカインが疾患の緩解に有益な役割を担うと考えられる場合、サイトカインシグナル伝達に影響を及ぼす能力も関心の対象である。特に、TNFおよびその他のサイトカインは固形腫瘍の壊死において有益な役割を担う。従って、本発明の産物は、レセプター放出を阻害して、それによってサイトカインシグナル伝達を高めて有益な影響を強化するために、癌患者に投与することができる。
【0085】
レセプター放出を阻害する本発明の態様は、アンチセンスポリヌクレオチドを含む。持続性の阻害活性を付与する方法は、アンチセンス遺伝子療法を実施することである。細胞の内側でRNAを発現して、次に標的遺伝子の転写を抑制する遺伝子構築物が設計される(米国特許第5,759,829号)。ヒトの場合、アンチセンス療法のより頻繁な型は、エフェクターアンチセンス分子を標的mRNAのセグメントに対して相補的な短い安定ポリヌクレオチド断片として(米国特許第5,135,917号および第5,789,573号)−この場合はレセプター放出分子をコードする転写物として−直接投与することである。レセプター放出を阻害する本発明のもう一つの態様は、前節で記載されたように構築されたリボザイムである。mRNAの翻訳の阻害におけるリボザイムの機能については、米国特許第4,987,071号および第5,591,610号に記載されている。
【0086】
本発明の産物が本開示で述べられるインビトロアッセイにおいて適切なレセプター放出活性を持つことが明らかとなったら、サイトカイン介在性の疾患プロセスに関する動物モデルを用いてその有用性についても調べることが好ましい。以下の実施例は、敗血症、関節炎、多発性硬化症、浮腫および喘息の動物モデルを提供する。当業者は、サイトカインシグナル伝達または炎症に対する影響を調べるためのその他の動物モデルを認識するであろう: 例えば、Weyrich et al.(J. Clin. Invest 91: 2620, 1993)およびGarcia-Criado et al.(J. Am. Coll. Surg. 181: 327, 1995)の心虚血血流再建モデル;Steinberg et al.(J. Heart Lung Transplant. 13: 306, 1994)の肺虚血血流再建モデル、International Patent Application WO 9635418の肺炎症モデル;Sharar et al.(J. Immunol. 151: 4982, 1993)の細菌性腹膜炎モデル、およびMeenan et al.(Scand J. Gastroenterol. 31: 786, 1996)の大腸炎モデル。
【0087】
薬学的調製物における活性成分としての使用のために、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体は、一般に、それらが調製される混合物に含まれるその他の反応性または潜在的に免疫原性の成分から精製される。典型的には、各活性成分は、機能アッセイ、クロマトグラフィー、またはSDSポリアクリルアミド電気泳動法により調べられるように、少なくとも約90%の均一性、より好ましくは95%または99%の均一性で提供される。以下に、対象に関して標準的指導書に記載される通り、薬学的調製物の調製に関して一般的に許容される手順に従って、活性成分を医用薬に調合する。医用薬の調合または製剤化の段階は意図する用途および投与方法に一部依存して、滅菌する段階、無害および無干渉の適切な賦形剤、緩衝液およびその他の担体と混合する段階、凍結乾燥または凍結する段階、用量単位に分割する段階、送達装置に封入する段階を含み得る。医用薬は、典型的には、治療される炎症性疾患ならびに投薬および投与の局面のような意図される使用に関する書面による情報を添付した、または書面による情報と関連付けられた適切な容器に包装される。
【0088】
投与モードは治療される状態の特徴に依存する。適度な投薬が必要であることが予想される状態および(心不全のように)十分な血流がある部位の状態には、全身性の投与が許容可能である。例えば、静脈内投与、筋肉内注射、または舌下もしくは鼻腔内での吸収のために医用薬を製剤化してもよい。時に、活性成分の濃度を高めて、疾患プロセスに関与しないその他の組織のサイトカインレセプターに対する影響を最小限に抑えるために、活性成分を疾患部位(炎症を起こした関節の近くなど)に局所的に投与することが可能である。 または、活性成分の疾患部位での蓄積を促進するように薬学的組成物を製剤化してもよい。例えば、活性成分は、標的細胞の細胞表面タンパク質に結合することのできる抗体またはリガンドを提示するリポソームまたはその他のマトリックス構造に内包することができる。適切なターゲティング物質には、組織特異的レセプターのための抗体またはリガンド(例えば、肺ターゲティングのためのセロトニン)が含まれる。サイトカインシグナル伝達を抑制する組成物に関して、標的組織は異常に密度の高いそれぞれのレセプターを示す可能性が高いことから、適切なターゲティング分子はサイトカイン自身であってもよい。
【0089】
本発明の組成物の有効量は、レセプター放出活性を少なくとも約10%、典型的には少なくとも約25%、より好ましくは約50%、75%、または90%変化させる量である。レセプター放出の増加が望ましい場合、好ましい組成物はレセプター放出を少なくとも2倍に増加させる。活性化合物の最少有効量は治療される疾患に依存し、エフェクター分子の最少有効量は使用に関して選択され、その場合、投与は全身性または局所性である。有効量は、以下に示す動物試験の結果から、治療される対象のために適宜スケーリングして推定することができる。
【0090】
以下の実施例は当業者にさらなる指標として提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0091】
実施例
実施例1:天然のレセプター開裂酵素活性の単離
先ず、炎症細胞内に存在するレセプター開裂活性は、表面にサイトカインレセプターを発現するように形質転換した細胞を用いたアッセイ系を使用して単離した。
【0092】
ヒトp75 TNFレセプターのcDNAは、報告されたp75 TNF-R配列の58〜2380の位置をカバーして90〜1475の位置の完全長のp75 TNF-Rコード配列を含むヒト単球U-937細胞由来γgt10 cDNAライブラリからクローニングした。続いて、2.3kbのp75 TNF-R cDNAをpcDNA3真核細胞性発現ベクターにサブクローニングして、制限エンドヌクレアーゼマッピングにより確認した。トランスフェクトした細胞株はC75Rと命名した。p75 TNF-R発現の量は125I標識ヒト組換え型TNFを用いて測定して、細胞当たりレセプター60,000〜70,000個であり、親和性は5.6×10−10Mと推定された。
【0093】
レセプター開裂活性は、以下の通り、THP-1細胞(ATCC 45503)から得られた。RPMI-1640および1%FCS 1mL当たり1×106個の細胞を10−6M酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)で37℃において30分間、刺激した。IL-10およびエピネフリンのような、その他の刺激物質を代替として使用することもできる。細胞を洗浄して、新鮮な培地で2時間培養し、細胞を含まない上清を回収した。THP-1の上清を加えたプレインキュベートにより、125I-TNFのC75R細胞への特異的結合は87%減少した。上清中に放出された可溶性p75 TNF-RはELISAで測定した。レセプター開裂活性の1単位は、真の可溶性p75 TNF-R放出 1pgと定めた。プロテアーゼはTHP-1細胞表面からp55およびp75の双方のレセプターを放出させることが明らかとなった。
【0094】
刺激したTHP-1細胞から回収された固有のレセプター開裂活性は、以下の通り、精製した。先ず、培地から得られたタンパク質を100%飽和硫安塩析により濃縮して、改めてPBSに懸濁し、10mM Tris-HCl、60mM NaCl、pH 7.0で透析した。この試料をDEAE-Sephadex(登録商標)A-25カラムの陰イオン交換クロマトグラフィーにかけた。50mM Tris-HCl、pH 8.0中60〜250mMのNaClの線形濃度勾配でレセプター開裂酵素を溶出した。
【0095】
C75R開裂アッセイにおいて活性を示すDEAE画分はさらに精製することができる(WO 98/02140)。この画分を500μLに濃縮して、非変性条件下において6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動にかけた。ゲルを5mmの帯状に水平方向にスライスして、各スライス片をPBSで溶出した。
【0096】
図1は結果を示す。一番上の図では、レセプター開裂活性(C75R細胞を用いて測定)は抽出物中のタンパク質バルクよりも弱いイオン強度でDEAEカラムから溶出し(A280)、相対的に陽性plに一致する。下の2つの図では、レセプター活性は非変性ゲルにおいて所定の移動度を示した。続いて、精製した調製物について、レセプター開裂酵素の物理化学的性状および機能的性状を分析した。
【0097】
実施例2:レセプター開裂活性の遺伝子クローニング
THP-1、U-937、HL-60、ME-180、MRC-5、Raji、K-562と呼ばれる細胞株を含む異なる炎症細胞が、多量のレセプター開裂活性を発現することが見出されている。ジャーカット細胞は、10−2M PMAでの刺激後に850U/mLの開裂活性を示す)。この実施例では、ジャーカットT細胞(ATCC #TIB-152)の発現ライブラリを得て、サイトカインレセプター放出の調節に関与する遺伝子をクローニングするために使用した。
【0098】
COS-1細胞への反復トランスフェクションサイクルによってライブラリから配列を選択し、続いて、実施例1の通り、タンパク分解活性に関して上清をアッセイした。簡単に言うと、InVitrogen(商標)プラスミド抽出キットを製造業者の説明書に従って用いて、106個のジャーカット細胞のDNAを抽出した。cDNAをZAP Express(商標)/EcoR/ベクター(カタログ番号938201、Stratagene, LaJolla CAに挿入した。ライブラリを48グループのDNAに分割して、CaClトランスフェクト法を用いてCOS-1細胞に形質転換した。細胞が成長したら直ちにC75Rアッセイを実施して、5つの陽性群を選択した。これらの5群の各々からDNAを得て、1群当たり15枚のプレートを用いて大腸菌にトランスフェクトした。これらの細胞からDNAを調製して、続いて、再度COS-1細胞にトランスフェクトした。細胞を生育させて、開裂活性を再度測定した。2つの陽性群を選択して、大腸菌にトランスフェクトし、98個のコロニーを得た。これらの内の96個のコロニーからDNAを調製してCOS-1細胞にトランスフェクトした。C75Rアッセイを再度実施して、このアッセイにおいて9つのクローンがレセプター開裂活性を実質的に増加していることが見出された。これらのクローンはMP1〜MP9と命名して、続いて、DyeDeoxyシーケンシング技術によって配列決定した。
【0099】
(表1)サイトカインレセプター放出活性に関連するクローニングされた遺伝子
【0100】
実施例3:クローニングした配列の性状分析
配列を発現したヒト遺伝子のUniGene編集と比較した。配列番号:11〜25は、2003年1月25日付けUniGeneヒトビルド番号159を用いて2003年3月に分析された。データベースには108944個のアッセンブリの4056423配列が含まれた。
【0101】
(表2)クローン配列のUniGene一致
【0102】
以下の種オーソログおよび完全長のイメージクローンが同定されている(同一性パーセントおよび保存残基はNCBL Blastのウェブサイトにあるblastp BLOSUM62アルゴリズムにより算出して、ギャップコストは11とした(伸長1)。
【0103】
(表3)MP8関連配列
【0104】
図2は、種オーソログ(配列番号:57および81〜88)と比較した完全長ヒトMP8(配列番号:53)のアラインメントを示す。丸い点は、一番上のヒト配列と同一の残基を示す。表3に示される通り、オーソログは極めて類似しており、特に脊椎動物(配列番号:89)および哺乳動物(配列番号:90)で−とりわけN末端およびC末端方向に高い同一性を共有している。科を通して共通のモチーフが特定されている(配列番号:91〜102)。
【0105】
実施例4:蛍光共鳴エネルギー転移によるレセプター開裂活性の測定
サイトカイン特異的タンパク分解活性は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により速やかに定量することができる。TNFレセプターまたはその他のタンパク基質のアミノ酸配列を持つペプチドの両端を蛍光発光体および蛍光消光剤で標識する。続いてペプチドをレセプター開裂酵素の供給源と共にインキュベートして、蛍光を測定する。消光基は、通常、発光体からの蛍光を吸収する。しかし、ペプチドの酵素的開裂によって消光基が分離すると、それに比例して蛍光発光が増大する。
【0106】
実施例4〜14において、MP8は小規模な研究条件下で産生された。MP8 cDNA配列(配列番号:9)を、発現ベクターのN末端His Tag配列の次の、トロンビン部位が続く位置にクローニングした。タンパク抽出物をQ-Sepharose(登録商標)でクロマトグラフにかけて、ピークをNi-NTAを用いた高速クロマトグラフィーにより精製して、Q-Sepharose(登録商標)(HiTrap)カラムでエンドトキシン量を減少させた。エンドトキシン量は色素産生性LALアッセイを用いて測定した。
【0107】
図2は典型的MP8調製物のウェスタン分析を示す。抗Hisまたは抗MP8を用いた結果、産物の見かけの分子量は45〜50 kDaの範囲であった。
【0108】
開裂アッセイにおいて基質として用いたペプチドはタンパク質全体の公知のタンパク分解性開裂部位から得た。ペプチドはC末端を蛍光発光体(Edans-●)で標識して、N末端を消光ハプテン(Dabcyl-▲)で標識した。
【0109】
アッセイは、金属陽イオンであるZn++(0.1mM)およびCa++(2mM)を加えて実施して、EDTA(20mM)が含まれる場合の開裂に関して補正する。二価陽イオンへの依存性によって、このアッセイで測定される酵素活性がメタロプロテアーゼであることが確認される。アッセイ混合物は、プロテアーゼ阻害剤およびウシアルブミンのカクテルをさらに含む。開裂は、酵素をペプチドと共に37℃で3時間インキュベートした後の真の蛍光発光の変化として測定される。
【0110】
図4(A)は、精製したクローンMP8の典型的FRETアッセイの結果を示す。酵素活性は1mL当たりの蛍光単位として算出して、Zn++およびCa++の存在下において460nmにおいて蛍光の増大を引き起こす活性をEDTAの存在下において測定された活性に関して補正する。
【0111】
MP8はp55およびp75 TNFレセプター(TNF-R1およびTNF-R2)双方からペプチドを開裂する。これらのペプチドは細胞外領域に位置して、インビボではTNFレセプターが細胞から放出される際に開裂すると考えられる。MP8はIL-6レセプターペプチドも高親和性に開裂する。別途発表されたデータは、メタロプロテアーゼであるADAM-10およびMDC-9がp55またはp75 TNFレセプターのいずれも効率的に開裂しないことを示している。
【0112】
これは、以下の実施例においてレセプター開裂活性の定量のために用いられた標準的アッセイ方法である。
【0113】
図4(B)は、MP8がI型および2型ヒトIL-1レセプターの放出を引き起こす能力を測定するためにペプチドの開裂を測定する実験から得られたものである。
【0114】
図4(C)は異なるペプチド基質を用いた実験から得られたデータを編集したものであり、p55 TNFレセプターペプチドに対して標準化した相対的開裂活性を示す。クローンMP8は、その他のプロテアーゼの公知の開裂部位に位置する対照基質に比べて、炎症経路に関与する複数のレセプター(TNF-R p55およびp75イソ型、IL-6レセプター、およびIL-1レセプター)に対する特異性を示す。MMP-1は線維芽細胞コラゲナーゼであり、MMP-2はストロマリシンであり、MMP-3はゼラチナーゼAであり、MMP-11はコラゲナーゼIIIであり、レニンはアスパラギン酸プロテアーゼであり、マラリアはシステインプロテアーゼであり、CMVはセリンプロテアーゼである。
【0115】
図4(D)は、潜在的な阻害物質または活性物質を評価するためのFRETアッセイの使用を例証する実験から得られたものである。MP8タンパク質を阻害物質と混合して、FRETペプチドに加え、3時間後に開裂(蛍光増大)を測定した。
【0116】
阻害物質は以下の通りであった: 1,10フェナントロリン 40mM;ホスファラミドン 500μM;ヒドロキサマート(Pharmingen)2mM;TIMP-1(Chemicon)2.5μg/mL;TIMP-2(Chemicon)2.5μg/mL。ヒドロキサマートは小分子のメタロプロテアーゼ阻害物質である。TIMPは天然の組織メタロプロテアーゼ阻害物質である。
【0117】
実施例5:MP8はインビボにおいてTNFレセプター放出を引き起こす
クローンMP8が細胞表面からレセプターを開裂することのできるプロテアーゼであることを実証するために、MP8をTHP-1細胞と共にインキュベートした。この細胞株は、p55 TNFレセプターおよびp75 TNFレセプターの双方を発現する。37℃で45分間インキュベートした後、細胞を洗浄して細胞表面レセプターを免疫染色し、フローサイトメトリーによりカウントした。
【0118】
図5は、MP8が細胞の表面に存在するとp55およびp75 TNFレセプターの双方が開裂することを示す。
【0119】
この酵素がインビボにおいてTNFレセプターを開裂するかどうかを調べるために、精製したMP8の100,000FUを雌性Balb/cマウスに500μLのボーラス投与として皮下に注入した。対照マウスには生理食塩液を注入した。血清を定期的に採取して、R&D SystemのELISAキットを用いてサイトカイン量を測定した。
【0120】
図6は、クローニングした酵素が循環中への蓄積を引き起こす程度にTNFレセプターの分離を引き起こすことを示す。
【0121】
図7は2つの実験から得られたデータを編集したものであり、48時間の期間を通してのレセプター放出のキネティクスを示す。これらのデータは複数の重要な意味を持つ:
・インビボにおいて、p55およびp75の双方のTNFレセプターが開裂する−双方のレセプターを介したシグナル伝達が影響を受けることを意味する。
・クローニングされたMP8は循環TNFレセプター量を約100倍に増加させる。この酵素は2通りの方法−影響を及ぼす部位において炎症細胞の表面からTNFレセプターを除去することによって、またTNFリガンドの細胞外シンクを作成することによって、TNFシグナル伝達に影響を及ぼすはずである。
・MP8の作用は投与後48時間持続する−頻繁な投与が不要であることを意味する。
・ヒトレセプター開裂酵素は、明らかにその他の動物種のTNFレセプターを開裂することができる。このことは、この酵素ファミリーの治療物質としての効果を調べるためのモデルとしてのマウスの使用をバリデートするものである。
【0122】
実施例6:MP8は敗血症性ショックに対して保護作用を示す
サイトカイン介在性炎症に対する物質の有効性を調べるための古典的なモデルは、エンドトキシン誘発性敗血症性ショック(Morrison et al., J Infect Dis 162: 1063, 1990)である。このモデルにおいて調べると、クローニングされたMP8は、LPS刺激と同時に与えようが、3時間前に与えようが、敗血症性ショックに対して用量依存性の完全な保護作用を示すことが見出された。
【0123】
敗血症性ショックモデルにおける有効性を調べるため、MP8酵素はBiosource Internationalで作成された供給源物質からAlliance Protein Laboratoriesにより委託契約にて調製された。Nickel NTAカラムクロマトグラフィーおよびQ-Sepharose(登録商標)分析カラムクロマトグラフィーを用いて、酵素を精製した。エンドトキシン量はQ-Sepharose(登録商標)を用いて減少させた。酵素活性はFRETアッセイで測定して、エンドトキシンの混入は色素産生性LALアッセイで測定した。エンドトキシンは、300,000蛍光単位の酵素活性当たり0.16μgであった。
【0124】
敗血症性ショックの実験は以下の通り実施した。雌性Balb/cマウスを体重に従って6処置群に無作為化した。敗血症は、LPS 10μgおよびガラクトサミン 7mgを外側または背側尾静脈に注入して誘発した。一部の群は、予防効果の有無を調べるために、LPS刺激と同時または3時間前に50,000 FUのMP8で前処置した。
【0125】
図8は、試験における各処置群の死亡数を示すKaplan-Meier生存曲線である。いかなる処置または刺激もない場合は、動物に対する影響はなく、グラフは最も高い値を維持する。生命の危険のある刺激は、各動物の死亡に伴って段階的にグラフを下方に推移させる。処置が刺激からの保護作用を示す場合、生存曲線はグラフの最も高い値の近くに維持される。
【0126】
この実験の結果は、MP8はLPS刺激と同時に投与されようと、3時間前に投与されようと、50,000の用量でLPS誘発性敗血症性ショックからの十分な保護作用を示ことを示している。
【0127】
図9は、最小有効量を調べるためにMP8の量を滴定した実験を示す。酵素は、LPS刺激1時間前に110μLの液量で投与した。
【0128】
データは、MP8の保護作用が用量依存性であることを示す。LPS/ガラクトサミン刺激は、生理食塩液対照のみを処置したマウスでは常に致死的であった。30,000 FUの単回投与において、MP8は刺激した対象の一定の割合を保護することができた。300,000 FUでは、MP8は完全な保護作用を示した。
【0129】
実施例7:レセプター開裂酵素の保存時の安定性
この実施例に示すデータは、MP8が1カ月よりも長期の保存において、FRETアッセイでのタンパク分解活性および敗血症性ショックモデルでの保護作用の双方に関して、その全活性を保持することを示した。MP8は投与後少なくとも3日はLPS刺激からマウスを保護することができ、治療上重要な効果を示すためにレセプター放出酵素の頻繁な投与が不要であることを示している。
【0130】
MP8の安定性は、MP8のアリコートを4℃または−70℃で保存することによって検討した。酵素開裂活性を蛍光共鳴アネルギー転移ペプチド開裂アッセイで調べるために、定期的にアリコートを採取した。
【0131】
図10は、精製された状態において、MP8が超低温凍結と同様に標準的な冷蔵庫で安定であることを示す。1カ月保存後に検出可能な活性消失はなかった。MP8の臨床的効果の安定性を、敗血症性ショックモデルにおいて調べた。雌性Balb/cマウスに、−70℃で4日間、または4℃で7日間保存しておいたMP8の300,000 FUを注入した。1時間後、マウスを前記の通りLPS 10μgおよびガラクトサミン7mgで刺激した。
【0132】
図11は結果を示す。精製した酵素には安定な貯蔵期間があり、臨床上の効果を消失することなく凍結することができる。
【0133】
実施例8:インビボにおけるレセプター放出の持続性
この実施例では、動物にMP8の300,000 FUを3日前から皮下投与して、インビボにおけるレセプター開裂の持続性を調べた。その後、マウスをLPS 10μgおよびガラクトサミン7mgで通常通り、刺激した。
【0134】
図12(A)は、ドットブロット分析によって測定したマウスの循環からのMP8タンパク質のクリアランスを示す。初回クリアランス半減期は〜39時間である。
【0135】
図12(B)は、クローニングされた酵素が投与後3日まで大半のマウスを保護できることを示す。これは、この酵素が少なくともこの長い時間にわたってTNFレセプターを開裂し続けるか、または処置の影響(TNFレセプターの放出のような)がTNFシグナル伝達が複数の日数にわたって調節されるような方法で持続するためのいずれかである。いずれにしても、この結果は、臨床的な有効性のために酵素の頻繁な投与が不要であることを意味する。
【0136】
MP8発現の組織分布はノーザン分析によって調べた。MP8シーケンスに基づく標識したオリゴヌクレオチドを用いて、様々なヒト組織に由来するmRNA調製物を探索した。
【0137】
実質的な発現は末梢血に認められて、その他の組織では、マクロファージ様細胞およびその他の白血球において比較的豊富に認められた(肝、脾、小腸)。ある程度のMP8発現はすべての組織で認められて、このことはこの酵素が進行中の炎症のダウンレギュレート物質として機能するという見解と一致する。
【0138】
実施例10:MP8は実験的に誘発した関節炎を治療する
レセプター開裂酵素の潜在的な臨床上の有効性は、慢性関節リウマチの動物モデルであるコラーゲン誘発性関節炎において評価した。この実施例では、動物に対して、疾患物質の投与と同時にMP8の300,000 FUで毎日処置した。9匹中8匹の対照マウスが発症したが、MP8処置マウスは関節腫脹またはその他の関節炎の徴候を示さなかった。処置は、少なくとも、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト)の評価した用量と同様に有効であった。
【0139】
コラーゲン誘発性関節炎は、慢性関節リウマチのための潜在的治療物質について評価するための標準的モデルである(Courtenay et al., Nature 283: 666, 1980; Williams et al., Proc Natl Acad Sci USA 89: 9784, 1992; Gerlag et al., J Immunol 165: 1652, 2000)。関節炎は、コラーゲンで免疫することによって7〜9週齢の雌性DBA/1LacJマウスにおいて誘発した。0日目に、マウスに対して、フロイントの完全アジュバントに混合したウシII型コラーゲン100μgを尾の基部に注入した。 7日目に、コラーゲン 100μgの腹腔内注入によりマウスに追加投与を行った。滑膜炎を促進および同期化するために、14日目にマウスにリポポリサッカライド(LPS)の100μgを皮下注入した。関節腫脹は、四肢全肢および左右足根関節の径を定圧ゲージで測定することによって、盲検的にモニターした。以下の尺度を用いて関節炎指数も求めて、すべての肢について合計した。0≡正常;1≡1本の指の腫脹;2≡1本よりも多い指の腫脹;3≡関節のゆがみ;4≡強直。関節炎の実験は、委託契約下にてCalvert Preclinical Services, Inc., Olyphant PAにより実施された。
【0140】
図13は、MP8の300,000 FU、エンブレル(登録商標)の評価用量、または生理食塩液対照を初回コラーゲン注入の3日前から一日一回マウスに投与した実験の結果を示す。このモデルにおいて典型的である通り、必ずしもすべての動物がコラーゲン刺激に反応するとは限らない。この実験において、9匹中8匹の対照動物が関節炎の徴候を示した。しかし、MP8で処置した動物に、関節炎を発症した動物はいなかった。
【0141】
図14は、各群の動物において測定された関節腫脹および関節炎指数における平均増加を示す。MP8を予防的に投与した場合、本剤は動物が疾患の測定可能な任意の徴候を示すことを防いだ。
【0142】
実施例11:MP8は確立された関節炎の進行を防ぐ
この実施例では、クローンMP8について、確立された疾患を治療する能力を調べた。このプロトコールは、患者が炎症性滑膜炎の発症後に治療される慢性関節リウマチの臨床状況に近似する。
【0143】
0日目および7日目にマウスをコラーゲンで免疫して、続いて、14日目にLPSを追加投与した。MP8での処置は、関節炎が十分に確立された22日目に開始した。この時点で、関節炎を発症している動物を3群に無作為化して、発症していない動物は除外した。続いて、発症群の3群に生理食塩液対照、または異なる二用量のいずれかのMP8を連続18日間処置した。
【0144】
図15は結果を示す。結果は、対照群に比べて、MP8処置群の2群の関節炎を発症した関節における著しく有意な腫脹の軽減を示す(各群n=10;実験終了時にp<0.001、Studentの片側t検定)。対照動物では、22日目に毎日の処置を開始した後は関節腫脹がほとんど変化しなかった。一方、MP8で処置した動物はいずれの用量でも疾患の実質的な軽減を示した。
【0145】
図16は、ELISAで測定したマウス血清中のII型コラーゲンに対する抗体量を示す。低用量または高用量のMP8で処置した群は、対照群のほぼ半分の病原性抗体量を示した(いずれも、p<0.02)。高用量のMP8で処置した群は、実験終了時に病理組織学によって測定される通り、炎症性滑膜炎の程度も低かった。MP8処置群に毒性は検出されなかった。
【0146】
これらの実験は、レセプター開裂酵素の全身投与が、実験的に誘発した関節炎の治療において−確立された疾患においても−安全かつ有効であることを示す。MP8は循環自己抗体量を減少させ、関節腫脹を予防または回復させる。
【0147】
実施例12:MP8はカラゲナン誘発性の浮腫を阻害する
サイトカインレセプター放出酵素の有益な効果が関節炎を抑えるかどうかを調べるために、さらなる実験が実施された。カラゲナンに誘発される四肢浮腫モデルにおいて、全身性に投与されたMP8はサイトカイン介在性の水分貯留からの保護に関して、経口投与されたインドメタシンと少なくとも同等に有効であった。
【0148】
標準的モデル(Winter et al., Proc Soc Exp Biol Med 111: 544, 1962; Hansra et al., Inflammation 24: 141, 2000)に基づいて、実験は以下のように実施された。雄性Sprague Dawley系ラットを体重に従って3処置群に無作為化した。動物にMP8もしくは対照液を皮下投与するか、またはインドメタシンを経口投与した。1時間後、腫脹を誘発するために、1%カラゲナンの水懸濁液の滅菌液を左後肢に注入した。3時間後に、ウォータープレチスモグラフにおける水置換によって注入を行った肢の体積を測定した(平均±SEM;一群動物10匹)。
【0149】
図17は結果を示す。MP8は浮腫形成を62%阻害した(p≦0.05)。これに比して、インドメタシン(小分子の非ステロイド系抗炎症物質)は浮腫形成を49%しか阻害しなかった。
【0150】
実施例13:MP8は多発性硬化症の発症を予防する
多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎において、サイトカインレセプター放出酵素は症状の発生を12日から18日間遅延させることが見出されて、疾患の程度は約1/3に低減した。
【0151】
EAEモデル(Brown et al., Lab. Invest. 45: 278, 1981)は以下の通り実施された。雌性SJL/Jマウス(6週齢)を各群10匹の3群に無作為化した。ミエリンプロテオリピドペプチド(PLP)2mLを、さらに結核菌(M. tuberculosis)H37Raの20mgを含むフロイントの完全アジュバント3mLに乳化した。0日目に、合計60μgのPLPを尾の基部および足蹠に皮下注入してマウスを免疫した。0日目および2日目に、マウスに対して百日咳毒素400mgをさらに腹腔内投与した。MP8または生理食塩液対照を−3日から20日まで毎日皮下投与した。疾患の進行は、以下の尺度に従って21日目まで調べた:0≡正常;1≡尾のひきずりまたは後肢の脱力;2≡尾のひきずりおよび後肢の脱力の双方;3≡後肢の部分的麻痺;4≡後肢の完全麻痺;5≡切迫または屠殺。図18は結果を示す。MP8は臨床的に重要な4つの効果を示した。
・MP8は一定の割合の動物において疾患の発症を完全に予防した。
・疾患を発症した動物において、MP8は症状の発現を実質的に遅延させた。
・MP8は疾患の程度を1/3を超えて軽減した。
・投与動物は引き続き正常な体重増加を示した。
【0152】
(表4)MP8の実験的自己免疫脳脊髄炎に対する影響
【0153】
実施例14:MP8は実験的に誘発される喘息における細胞関与を制限する
炎症に関するさらなる動物モデルにおいて、クローンMP8について実験的に誘発された喘息に関連する病理学を調節する能力を調べた。
【0154】
0日、7日および14日に、10μgオバルブミンの1%水酸化アルミニウム溶液を用いてマウスを感作した。21日目に、マウスをエアロゾル状のアレルゲン(生理食塩液中5%重量/体積)で刺激した。MP8または対照の投与はエアロゾル刺激の1時間前、ならびにその後、24時間および48時間に実施した。24日目(刺激72時間後)に、肺胞液中の細胞を回収するために2×0.5mLの緩衝液を用いて麻酔下で肺を洗浄した。図19は結果を示す。MP8は、肺胞液に遊走する白血球数を減少させた。好酸球の割合も実質的に減少した。これらの結果は、MP8が気管支内攻撃の炎症性およびアレルギー性続発症を抑制したことを示している。
【0155】
実施例15:完全長MP8を用いた収量の予想外の向上
臨床試験のためにMP8の産生を増大させるために、プロセスの開発が行われた。MP8は大腸菌MP87株(HMS174 (DE3)/pMP87)において産生された。ごく少量のタンパク質が可溶型として発現して、残りは封入体として蓄積した。この方法で産生される可溶性タンパク質の量は研究使用には十分であり得るが、臨床または商用規模の産生には不十分である。
【0156】
従って、封入体中のMP8を再生するためのプロセスが開発された。MP8は、粗抽出物の遠心分離後に得られた不溶性画分からタンパク質を緩衝8M尿素に溶解することによって回収された。N末端ポリ-His配列(HISタグ)を用いてタンパク質を分離するため、Niアフィニティークロマトグラフィーにより変性産物を分画化した。アフィニティー精製後、細胞1g当たりMP8の1.8〜2.5mgが回収された(培養1L当たり65〜90mg)。アフィニティー精製されたタンパク質を、1mM EDTAを加えたpH 8.0の50mMリン酸ナトリウム緩衝液で希釈した。タンパク質を1ml/分の割合で冷(4℃)緩衝液に加えて、静かに撹拌しながら1〜2時間氷冷した。続いて、MP8をQ-Sepharose(商標)陰イオン交換カラムに吸着させて、塩の線形濃度勾配を用いて溶出した。この手順を用いて調製したMP8の一つの調製物をMP87-086-20と命名して、これはマウス敗血症モデルにおいて活性であった。しかし、この調製物およびその後の調製物は回収率が低く、大半の場合、広範囲にわたる分解の証拠が見られた。緩衝液にプロテアーゼ阻害剤のカクテルを加えても、または広範囲の実験においてその他のいかなる戦略を採用しても、得られた改善は取るに足らないものであった。大幅なプロセス開発後の可溶性画分および不溶性画分の双方からの典型的回収率は発酵1リットル当たりMP8〜7.5mg(総タンパク質3.3g)であった。この産物をMP8(7)として、活性物質に換算すると、先行の試験で用いた物質に相当する。
【0157】
代替の産生プロセスとして、MP8コード配列を酵母のピチアパストリスにクローニングした。しかし、実質的には、MP8タンパク質は細胞質または細胞外にタンパク質を蓄積する発現系では回収されなかった。これまでの証拠は、このタンパク質が合成と同じくらいの速さで分解されていることを示唆した。
【0158】
完全長のタンパク質の発現に関しては、この説明が全く異なることが明らかとなった。ヒトイメージ(商標)クローン4130677(表3)を得て、pQE81プラスミドのT5プロモーターおよびHISタグに続く位置にライゲートした。合成された完全長タンパク質(MP8-FL1)の少なくとも50%が可溶性タンパク質として産生されて、そのまま精製することができた。粗抽出物の上清を一つにまとめて、ニッケルアフィニティーカラムおよび陰イオン交換カラムから順次溶出し、その後、ダイアフィルトレーションによって濃縮した。産物の純度は〜90%であり、発酵1リットル当たり75mgのMP8-FL1が回収された。
【0159】
この顕著な収量の向上から、臨床試験では完全長のMP8に変更することが決定された。臨床目的のためのMP8FLを産生するために、Hisタグを除去して、bla遺伝子をnptllで置換し、得られたプラスミドを大腸菌HMS174株に導入してMP820株(HMS174/pMP820)を作出した(図20)。 現在の産生プロトコールは以下の通りである:作業用原液1mLを、50μg/mLカナマイシン加Turbo Prime Broth(商標)50mLに接種して、37℃で8時間インキュベートする。50mL培養を用いて、50μg/mLカナマイシン加Turbo Prime Broth(商標)500mLに接種して、37℃にて一晩インキュベートする。培養密度が2.3〜2.8 OD600に達したら温度を30℃まで下げて、IPTGを1mMまで加えて発現を誘導する。可溶性タンパク質の最大蓄積は、誘導3時間後に得られる。
【0160】
現在の精製プロトコールは、Triton X-100およびグアニジンHClを含むpH 7.8の緩衝液中で氷冷しながら細胞を2時間抽出することによって開始する。清澄化した抽出液を、SteamLine(商標)QXLまたはQ-Sepharose(商標)FFレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィーに供す。結合したMP8-FLを溶出して、Toyopearl(商標) Phenyl 650Mカラムを用いた疎水性相互作用クロマトグラフィーによりさらに精製して、最終的な精製(例えば、もう一つの陰イオン交換段階)に供す。このプロセスによってMP820株から産生されるタンパク質をMP8-FL2と命名した。HISタグを用いないタンパク質の精製には精製にさらなる段階が必要であるが、それでもなお、収量はオリジナルのMP8クローンよりもかなり高い(図21)。発酵1リットル当たり約50mgのMP8-FL2が回収されて、純度は〜85ないし90%である(図22)。MP8-FL2のその他の性状を表5に示す:
【0161】
(表5)MP8-FL2の性状
【0162】
MP8生物活性の対照タンパク質として、その他の産物も産生されている。一つは完全長タンパク質(配列番号:53)のN末端断片であり、HISタグを用いて精製される。もう一つは、92,000 mol.wt.のタンパク質を産生するためにヒトフィブロネクチンの127ドメインを8倍に複製したフィブロネクチンポリタンパク質である。この合成フィブロネクチンポリタンパク質もニッケルアフィニティークロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製される。三番目の対照調製物は同質遺伝子系統の親細胞由来の抽出物であるMP8-FL2大腸菌構築物であり、MP8-FL2と同様の方法で陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに供した。
【0163】
実施例16:完全長MP8は有効な抗炎症物質である
MP8-FL2について、炎症の治療に適した生物活性を持つかどうかを調べるために、インビトロおよびインビボの双方で試験が行われている。
【0164】
図23は、MP8-FL2が細胞表面からのサイトカインの放出を引き起こすことを示す。細胞表面開裂活性を測定するために、MP8-FL2の25μgを2.5×106個の細胞と混合した。双方のTNFレセプターイソ型の放出は、酵素免疫アッセイにより、(処置群−無処置群)/無処置群として求めた。下のグラフは、オリジナルのMP8コアタンパク質[本発明者は、このグラフのMP8はAthena使用前に作成された材料に由来するものであり、MP87ではないと考えている。最初のMP87参照を添加するとこのことが明らかとなるであろう。]およびMP8-FL2の双方がTNFレセプターの開裂および放出を引き起こして、R1(p55)イソ型が優れていることを示す。MP8-FL2の同一調製物がR1(Dabcyl-N-V-K-G-T-E-D-S-G-Edans;配列番号:71)およびR2(Dabcyl-C-T-S-T-S-P-T-R-Edans;配列番号:73)の双方の開裂を引き起こし、これに対して、同一の方法で発現および精製した対応する合成フィブロネクチンポリタンパク質の対照タンパク質は活性を示さなかった。
【0165】
図24は、MP8-FL2が動物モデルにおいてカラゲナンに誘発される浮腫を抑制することを示す。実施例12の通り、雄性Sprague Dawley系ラットに試験タンパク質またはインドメタシン(抗炎症対照物質)を投与して、続いて後肢にカラゲナンを刺激投与した。MP8-FL2は肢の腫脹を著しく防止したが、合成フィブロネクチンポリタンパク質の対照タンパク質は防止しなかった。
【0166】
図25は、MP8-FL2が敗血症性ショックからの予防効果を示すことを示す。敗血症は、実施例3の通り、Balb/cマウスにおいて、LPS 10μgおよびガラクトサミン15mgを投与して誘発した。LPS刺激の1時間前に、無作為化した群に40μgまでのMP8-FL2で前処置した。データは、MP8-FL2がマウスを用量依存性に保護したことを示す。
【0167】
これらの実験は、MP8-FL2が抗炎症活性を持ち、臨床使用のための治療用薬剤として使用に適していることを実証する。
【0168】
配列情報
(表6)本開示に列記される配列
【0169】
特定の状況での本発明の実践はさらなる最適化を必要とする可能性があり、当業者は、特許請求される発明およびその同等物から逸脱することなく、通常の実験として達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】図1(A)はヒトTHP-1細胞からのサイトカインレセプター開裂活性の単離を示す。活性は、DEAE-Sepharose(登録商標)および非変性ゲルでの精製を介して、トランスフェクトした細胞の表面からのレセプター放出を引き起こす各画分の能力を測定することによって追跡した。図1(B)は、レセプター放出活性に関連する9つの異なるcDNAクローンの一つであるMP8のウェスタン分析である。1本のMP8バンドが分子量標準と同じ位置に見られる。
【図2】図2は、種オーソログ(配列番号:57および81〜88)と比較した完全長ヒトMP8(配列番号:53)のアラインメントを示す。丸い点は、一番上のヒト配列と同一の残基を示す。オーソログは極めて類似して、特に脊椎動物(配列番号:89)および哺乳動物(配列番号:90)では理想的な同一性を共有している。科を通して共有されるモチーフが特定されている(配列番号:91〜102)。
【図3】図3は、開裂したペプチド基質(配列番号:71、73、74および76)の質量分析およびペプチドシーケンシングにより調べられたレセプター開裂部位を示す。
【図4】図4(A)、4(B)および4(C)は、ペプチド開裂アッセイにおいて蛍光共鳴エネルギー転移により調べられたレセプター放出活性を示す。レセプター開裂部位の配列を持つペプチドの両端を蛍光発光体および蛍光消光剤で標識して、Zn++およびCa++の存在する状態および存在しない状態でメタロプロテアーゼ活性を測定する。レセプター開裂酵素のクローンMP8は、その他のプロテアーゼの公知の開裂部位にまたがる対照基質に比べて、炎症経路に関与する複数のレセプター(TNF-R p55およびp75イソ型、IL-6レセプター、およびIL-1レセプター)に対して特異性を示す。図4(B)、4(D)は、サイトカインレセプター開裂活性の潜在的な阻害物質または活性物質を評価するためのFRETアッセイの使用を示す。この例において、金属キレート剤は強力な阻害作用を持つ。
【図5】図5は、インビトロにおけるクローンMP8によるTNFレセプターのp55およびp75の双方のイソ型の開裂を示す。細胞表面から開裂すると、レセプターはELISAによって測定可能な培養上清に蓄積する。
【図6】図6は、インビボにおけるクローンMP8によるTNFレセプターの両イソ型の開裂を示す。Balb/cマウスに皮下注入後、両イソ型は正常値(生理食塩液対照)の100倍を超える値まで血清中に蓄積する。
【図7】図7は2つの実験から得られたデータを編集したグラフであり、48時間の期間を通してのレセプター放出のキネティクスを示す。その他の実験では、放出されたレセプターは少なくとも6日間、循環中に持続した。
【図8】図8は、敗血症性ショック実験の結果を示す。敗血症は、LPS 10μgおよびガラクトサミン7mgをBalb/cマウスに静脈内注入することによって誘発した。MP8は、LPS刺激と同時に投与しようと、3時間前に投与しようと、LPSに誘発される敗血症性ショックに対して十分な保護作用を示す。
【図9】図9は、MP8の抗炎症作用が用量依存性であり、30,000FUでは部分的保護作用を、300,000FUでは完全保護作用を示すことを示す。
【図10】図10は、4℃または−70℃で長期間保存した際の(ペプチド開裂アッセイで測定される)精製MP8のレセプター開裂活性を示す。
【図11】図11は、MP8の治療上の恩典も安定であることを示す。4℃または−70℃での保存後に精製した酵素は敗血症性ショックモデルにおいて依然保護作用を示した。
【図12】図12(A)は、MP8が〜39時間で循環から消失することを示す。図12(B)は、MP8の治療上の恩典が持続性であることを示す。それは敗血症性ショック刺激の3日前までに投与されると保護作用を示したが、これは残りのレセプター開裂活性が進行中の開裂を引き起こすのに十分であるため、または放出されたレセプターが複数の日数にわたってシグナル伝達を遮断するためである。
【図13】図13は、コラーゲンに誘発される関節炎(CIA)モデルを用いてMP8を調べた実験から得られたものである。DBA/1LacJマウスに対して、疾患誘発物質の3日前から毎日投与を行った。9匹中8匹の対照マウスが関節炎を発症したが、MP8処置マウスは関節腫脹またはその他の関節炎の徴候を示さなかった。投与は、少なくとも、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト)の評価した用量と同様に有効であった。
【図14】図14は、各群の関節腫脹および関節炎指数における平均増加を示す。MP8は、動物が疾患の測定可能なあらゆる徴候を発現することを阻止した。
【図15】図15は、確立された疾患を治療する能力に関してMP8を試験した実験から得られたものである。関節炎の動物を22日目に無作為化して、MP8または生理食塩液対照を毎日処置した。対照群に比べて、2群のMP8処置群の疾患を発症した関節では著しく有意な腫脹の軽減が認められた(p<0.001)。
【図16】図16は、マウス血清中のII型コラーゲンに対する抗体量を示す。MP8で処置した群の病原性抗体の量は、対照群のほぼ半分であった。
【図17】図17は、MP8がカラゲナンの注入によって誘発されるラットの肢浮腫を阻害することが明らかとなった実験から得られたものである。効果は、小分子の非ステロイド系抗炎症物質であるインドメタシンよりも優れていた。
【図18】図18は、MP8が多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の発症を阻止することが明らかとなった実験から得られたものである。クローニングされた酵素は症状の発現を遅延させて、疾患の程度は約1/3に軽減した。
【図19】図19は、実験的に誘発された喘息の動物モデルから得られた。マウスをオバルブミンを用いた免疫化によって感作して、続いて、エアロゾル状のアレルゲンで刺激した。MP8は、肺胞液に遊走する白血球が少ないことおよび好酸球の割合が減少したから示されるように、炎症性の続発症を抑制した。
【図20】図20は、完全長のMP8を最初に単離されたクローンおよび様々な対照タンパク質と比較する。一番下の図は、大腸菌(E. coli)におけるMP8-FLの発現に用いられたベクターのマップである。
【図21】図21は、商用生産のために完全長タンパク質に対して行われている顕著な改善の程度を示す。大腸菌は短い方のタンパク質の大半を封入体に発現して、封入体からの抽出および再生後であっても収量はごく少量であった。これに対して、完全長のタンパク質は可溶性の状態で産生されて、10倍効率的に産生することができる。
【図22】図22は、MP8コアタンパク質の精製調製物および完全長のMP8を比較するクーマシーブルーで染色したSDSポリアクリルアミドゲルである。
【図23】図23は、ペプチド開裂アッセイおよび細胞表面開裂アッセイにおいて完全長のMP8の活性を対照タンパク質と比較する。完全長のMP8はコアタンパク質の活性を保持する。
【図24】図24は、完全長のMP8が浮腫の動物モデルにおいて抗炎症物質として有効であることを示す。
【図25】図25は、完全長のMP8が敗血症性ショックモデルにおいて、致命的なLPS刺激からマウスを用量依存性に保護することを示す。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物を調製するための方法であって、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含み、サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を薬学的産物として製剤化する段階を含む方法。
【請求項2】
サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすための方法であって、細胞を配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸と接触させる段階を含む方法。
【請求項3】
サイトカインレセプターから細胞内へのシグナル伝達を阻害するための方法であって、細胞を配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸と接触させる段階を含む方法。
【請求項4】
細胞からのサイトカインレセプター放出阻害能に関して物質をスクリーニングするための方法であって、以下の段階を含む方法:
a)物質を配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドと混合する段階;
b)ポリペプチドを細胞と接触させる段階;および
c)物質が配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドによって引き起こされる細胞からのサイトカインレセプターの放出に影響を及ぼすか否かを判定する段階。
【請求項5】
サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質を産生するための方法であって、大腸菌(E. coli)において配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型をコードするDNAを発現させる段階を含む方法。
【請求項6】
対象の炎症を治療するための方法であって、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を対象に投与する段階を含む方法。
【請求項7】
ポリペプチドが配列番号:53に含まれる配列と少なくとも80%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチドが配列番号:53に含まれる配列と少なくとも90%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ポリペプチドがストリンジェントな条件下において配列番号:22からなるDNAに対してはハイブリダイズするが配列番号:9からなるDNAに対してはハイブリダイズしないDNAによってコードされる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
ポリペプチドが50%ホルムアミドを含有する6×SSC中で30℃において配列番号:22からなるDNAに対してはハイブリダイズするが配列番号:9からなるDNAに対してはハイブリダイズしないDNAによってコードされる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
ポリペプチドが配列番号:97〜102に列記されるモチーフの一つまたは複数を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
サイトカインレセプターがp55またはp75 TNFレセプターである、請求項2または3記載の方法。
【請求項13】
サイトカインレセプターがIL-1 I型レセプター、Il-1 II型レセプター、IL-6レセプター、IL-13レセプター、IL-15レセプターα鎖、IL-17レセプター、またはIL-18レセプターである、請求項2または3記載の方法。
【請求項14】
慢性関節リウマチを治療するための、請求項6記載の方法。
【請求項15】
強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための、請求項6記載の方法。
【請求項16】
ポリペプチドの配列が配列番号:53、57および81〜88のいずれにも含まれないという条件において、サイトカインレセプターを細胞の表面から放出させる、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含む単離されたタンパク質。
【請求項17】
サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こし、大腸菌におけるキメラタンパク質の可溶性タンパク質としての産生を促進するもう一つのタンパク質のアミノ酸配列に融合した、配列番号:53またはその断片もしくは変異型を含む単離されたキメラタンパク質。
【請求項18】
配列番号:53に含まれる配列と少なくとも80%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項11または12記載のタンパク質。
【請求項19】
請求項11〜13のいずれか一項記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項20】
核酸が配列番号:53、57および81〜88のいずれにも含まれないタンパク質をコードするという条件において、サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質をコードする配列番号:22またはその断片もしくは変異型を含む核酸であって、ストリンジェントな条件下において配列番号:22にはハイブリダイズするが配列番号:9にはハイブリダイズしない核酸。
【請求項21】
試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質を含むかどうかを判定するための免疫アッセイ法であって、以下の段階を含む方法:
a)配列番号:53には特異的であるが配列番号:41には特異的でない抗体が試料中に存在しているならば配列番号:53と複合体を形成する条件下において、試料を該抗体と混合する段階;および
b)段階a)において複合体が形成される場合に、試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質を含むことを判定する段階。
【請求項22】
試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むかどうかを判定するためのハイブリダイゼーション法であって、以下の段階を含む方法:
a)プローブが試料中に存在する配列番号:22を含む核酸に特異的にハイブリダイズする条件下において、試料を配列番号:22には含まれるが配列番号:9には含まれない少なくとも30個の連続する核酸を含む核酸プローブと混合する段階;および
b)段階a)においてハイブリダイゼーション複合体が形成される場合に、試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むことを判定する段階。
【請求項23】
試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸含むかどうかを判定するためのPCR法であって、以下の段階を含む方法:
a)プライマーが試料中に存在する配列番号:22を含む核酸を特異的に増幅する条件下において、試料を配列番号:22の少なくとも20個の連続する核酸を含むが配列番号:9の核酸は含まない増幅プライマーと混合する段階;および
b)段階a)において複合体が形成される場合に、試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むことを判定する段階。
【請求項24】
試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質を含むかどうかを判定するためのキットであって、配列番号:53には特異的であるが配列番号:41に対しては特異的でない抗体を含むキット。
【請求項25】
試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むかどうかを判定するためのキットであって、配列番号:22には含まれるが配列番号:9には含まれない少なくとも30個の連続する核酸を含む核酸プローブまたは増幅プライマーを含むキット。
【請求項26】
医用薬としての使用のための配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項27】
炎症を治療するための医用薬の調製における、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項28】
慢性関節リウマチを治療するための医用薬の調製における、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項29】
強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための医用薬の調製における、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項30】
タンパク質またはポリペプチドが配列番号:53に含まれる配列と少なくとも80%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項21〜24のいずれか一項記載のタンパク質、核酸または使用。
【請求項31】
IL-1 I型レセプター、IL-1 II型レセプター、またはIL-6レセプターの開裂を引き起こすための方法であって、該レセプターを以下の一つを含む組成物と接触させる段階を含み、該組成物がIL-1 I型、レセプターIL-1 II型レセプター、またはIL-6レセプターの細胞からの放出を引き起こす方法:
a)配列番号:1〜29から選択されるコード配列から、または配列番号:1〜29の任意の一つもしくはその断片と少なくとも90%同一である配列によって遺伝子組換え技術により発現させたタンパク質;
b)配列番号:30〜59および80の任意の一つまたはその断片と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む遺伝子組換え技術によって産生されたタンパク質;または
c)配列番号:1〜29の任意の一つと少なくとも90%同一である配列を含む組換え型核酸;または
d)配列番号:39〜59および80の任意の一つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする組換え型核酸。
【請求項32】
組成物が配列番号:30〜42の任意の一つに含まれる配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
組成物が配列番号:30〜42の任意の一つに含まれる配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
組成物が配列番号:43〜59および80の任意の一つまたはその断片に含まれるが配列番号:30〜42またはその断片には含まれない配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項31記載の方法。
【請求項35】
組成物が配列番号:43〜59および80の任意の一つまたはその断片に含まれるが配列番号:30〜42またはその断片には含まれない配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含む、請求項31記載の方法。
【請求項36】
サイトカインレセプターペプチドが遺伝子組換え技術によって哺乳動物宿主細胞により発現されたヒトIL-6レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
サイトカインレセプターペプチドがヒト細胞の表面において内因性に発現したIL-6レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
サイトカインレセプターペプチドが本質的にヒトIL-6レセプターの7〜20個の連続するアミノ酸からなる、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
サイトカインレセプターペプチドが組換え技術によって哺乳動物宿主細胞により発現されたヒトIL-1レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
サイトカインレセプターペプチドがヒト細胞の表面で内因的に発現したIL-1レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
サイトカインレセプターペプチドが本質的にヒトIL-1レセプターの7〜20個の連続するアミノ酸からなる、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
メタロプロテアーゼを用いて炎症細胞の表面からIL-6レセプターを開裂させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項43】
メタロプロテアーゼを用いて炎症細胞の表面からIL-1 I型またはIL-1 II型レセプターを開裂させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項44】
メタロプロテアーゼが配列番号:40もしくは52(MP7)のいずれか、または配列番号:41、53および57〜60(MP8)の任意の一つ、またはその断片と少なくとも90%同一である、ヒトサイトカインレセプターを開裂させるアミノ酸配列を含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項45】
IL-6レセプタープロテアーゼの炎症を治療するための医用薬の製造における使用。
【請求項46】
IL-1レセプタープロテアーゼの炎症を治療するための医用薬の製造における使用。
【請求項47】
慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための医用薬である、請求項45または46記載の使用。
【請求項48】
炎症細胞をIL-6レセプタープロテアーゼと接触させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項49】
炎症細胞をIL-1レセプタープロテアーゼと接触させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項50】
慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための医用薬である、請求項48または49記載の方法。
【請求項51】
溶液中のサイトカインレセプター放出酵素活性を測定するための方法であって、以下の段階を含む方法:
a)酵素(溶液中に含まれる場合)がペプチドを開裂する条件下において、溶液を本質的にp55 TNFレセプター、p75 TNFレセプター、IL-6レセプター、IL-1 I型レセプターまたはIL-1 II型レセプターから選択されるヒトサイトカインレセプターの8〜20個の連続するアミノ酸からなるペプチドと混合する段階;
b)ペプチドの開裂(発生する場合)を測定する段階;および
c)段階b)において測定される開裂から酵素活性を測定する段階。
【請求項52】
ペプチドの開裂が質量分析により測定される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
ペプチドが蛍光発光体および蛍光消光剤で標識されて、開裂が標識されたペプチドの蛍光の変化を測定することによって測定される、請求項51記載の方法。
【請求項54】
サイトカインレセプター放出酵素活性を測定するための、Zn++の存在しない状態(またはZn++キレート剤の存在する状態)でペプチドの開裂を測定する段階、およびZn++の存在する状態での開裂からZn++の存在しない状態での開裂を差し引く段階をさらに含む、請求項51〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
ペプチドがどのアミノ酸の間で開裂するかを判定する段階をさらに含む、請求項51〜54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
p55 TNFレセプターの開裂がNVKG配列およびTEDS配列の間で測定される、請求項51〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
p75 TNFレセプターの開裂がDAVC配列およびTSTS配列の間で測定される、請求項51〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
IL-6レセプターの開裂がDSAN配列およびATSL配列の間で測定される、請求項51〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
段階b)の前に溶液に加えられた化合物がサイトカインレセプター放出活性を調節できるかどうかを判定するための、請求項51〜58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
化合物がTNFレセプター、IL-6レセプター、またはIL-1レセプターペプチドの開裂を阻害または亢進するかどうかを判定する段階を含む、請求項59記載の方法。
【請求項1】
薬学的組成物を調製するための方法であって、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含み、サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を薬学的産物として製剤化する段階を含む方法。
【請求項2】
サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすための方法であって、細胞を配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸と接触させる段階を含む方法。
【請求項3】
サイトカインレセプターから細胞内へのシグナル伝達を阻害するための方法であって、細胞を配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸と接触させる段階を含む方法。
【請求項4】
細胞からのサイトカインレセプター放出阻害能に関して物質をスクリーニングするための方法であって、以下の段階を含む方法:
a)物質を配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドと混合する段階;
b)ポリペプチドを細胞と接触させる段階;および
c)物質が配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドによって引き起こされる細胞からのサイトカインレセプターの放出に影響を及ぼすか否かを判定する段階。
【請求項5】
サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質を産生するための方法であって、大腸菌(E. coli)において配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型をコードするDNAを発現させる段階を含む方法。
【請求項6】
対象の炎症を治療するための方法であって、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を対象に投与する段階を含む方法。
【請求項7】
ポリペプチドが配列番号:53に含まれる配列と少なくとも80%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチドが配列番号:53に含まれる配列と少なくとも90%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ポリペプチドがストリンジェントな条件下において配列番号:22からなるDNAに対してはハイブリダイズするが配列番号:9からなるDNAに対してはハイブリダイズしないDNAによってコードされる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
ポリペプチドが50%ホルムアミドを含有する6×SSC中で30℃において配列番号:22からなるDNAに対してはハイブリダイズするが配列番号:9からなるDNAに対してはハイブリダイズしないDNAによってコードされる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
ポリペプチドが配列番号:97〜102に列記されるモチーフの一つまたは複数を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
サイトカインレセプターがp55またはp75 TNFレセプターである、請求項2または3記載の方法。
【請求項13】
サイトカインレセプターがIL-1 I型レセプター、Il-1 II型レセプター、IL-6レセプター、IL-13レセプター、IL-15レセプターα鎖、IL-17レセプター、またはIL-18レセプターである、請求項2または3記載の方法。
【請求項14】
慢性関節リウマチを治療するための、請求項6記載の方法。
【請求項15】
強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための、請求項6記載の方法。
【請求項16】
ポリペプチドの配列が配列番号:53、57および81〜88のいずれにも含まれないという条件において、サイトカインレセプターを細胞の表面から放出させる、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含む単離されたタンパク質。
【請求項17】
サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こし、大腸菌におけるキメラタンパク質の可溶性タンパク質としての産生を促進するもう一つのタンパク質のアミノ酸配列に融合した、配列番号:53またはその断片もしくは変異型を含む単離されたキメラタンパク質。
【請求項18】
配列番号:53に含まれる配列と少なくとも80%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項11または12記載のタンパク質。
【請求項19】
請求項11〜13のいずれか一項記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項20】
核酸が配列番号:53、57および81〜88のいずれにも含まれないタンパク質をコードするという条件において、サイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質をコードする配列番号:22またはその断片もしくは変異型を含む核酸であって、ストリンジェントな条件下において配列番号:22にはハイブリダイズするが配列番号:9にはハイブリダイズしない核酸。
【請求項21】
試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質を含むかどうかを判定するための免疫アッセイ法であって、以下の段階を含む方法:
a)配列番号:53には特異的であるが配列番号:41には特異的でない抗体が試料中に存在しているならば配列番号:53と複合体を形成する条件下において、試料を該抗体と混合する段階;および
b)段階a)において複合体が形成される場合に、試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質を含むことを判定する段階。
【請求項22】
試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むかどうかを判定するためのハイブリダイゼーション法であって、以下の段階を含む方法:
a)プローブが試料中に存在する配列番号:22を含む核酸に特異的にハイブリダイズする条件下において、試料を配列番号:22には含まれるが配列番号:9には含まれない少なくとも30個の連続する核酸を含む核酸プローブと混合する段階;および
b)段階a)においてハイブリダイゼーション複合体が形成される場合に、試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むことを判定する段階。
【請求項23】
試料が細胞表面からのサイトカインレセプターの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸含むかどうかを判定するためのPCR法であって、以下の段階を含む方法:
a)プライマーが試料中に存在する配列番号:22を含む核酸を特異的に増幅する条件下において、試料を配列番号:22の少なくとも20個の連続する核酸を含むが配列番号:9の核酸は含まない増幅プライマーと混合する段階;および
b)段階a)において複合体が形成される場合に、試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むことを判定する段階。
【請求項24】
試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質を含むかどうかを判定するためのキットであって、配列番号:53には特異的であるが配列番号:41に対しては特異的でない抗体を含むキット。
【請求項25】
試料がサイトカインレセプターの細胞表面からの放出を引き起こすタンパク質をコードする核酸を含むかどうかを判定するためのキットであって、配列番号:22には含まれるが配列番号:9には含まれない少なくとも30個の連続する核酸を含む核酸プローブまたは増幅プライマーを含むキット。
【請求項26】
医用薬としての使用のための配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項27】
炎症を治療するための医用薬の調製における、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項28】
慢性関節リウマチを治療するための医用薬の調製における、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項29】
強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための医用薬の調製における、配列番号:53、または配列番号:41に含まれないその断片もしくは変異型を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項30】
タンパク質またはポリペプチドが配列番号:53に含まれる配列と少なくとも80%同一であるが、配列番号:41には含まれないアミノ酸配列を含む、請求項21〜24のいずれか一項記載のタンパク質、核酸または使用。
【請求項31】
IL-1 I型レセプター、IL-1 II型レセプター、またはIL-6レセプターの開裂を引き起こすための方法であって、該レセプターを以下の一つを含む組成物と接触させる段階を含み、該組成物がIL-1 I型、レセプターIL-1 II型レセプター、またはIL-6レセプターの細胞からの放出を引き起こす方法:
a)配列番号:1〜29から選択されるコード配列から、または配列番号:1〜29の任意の一つもしくはその断片と少なくとも90%同一である配列によって遺伝子組換え技術により発現させたタンパク質;
b)配列番号:30〜59および80の任意の一つまたはその断片と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む遺伝子組換え技術によって産生されたタンパク質;または
c)配列番号:1〜29の任意の一つと少なくとも90%同一である配列を含む組換え型核酸;または
d)配列番号:39〜59および80の任意の一つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする組換え型核酸。
【請求項32】
組成物が配列番号:30〜42の任意の一つに含まれる配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
組成物が配列番号:30〜42の任意の一つに含まれる配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
組成物が配列番号:43〜59および80の任意の一つまたはその断片に含まれるが配列番号:30〜42またはその断片には含まれない配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項31記載の方法。
【請求項35】
組成物が配列番号:43〜59および80の任意の一つまたはその断片に含まれるが配列番号:30〜42またはその断片には含まれない配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を含む、請求項31記載の方法。
【請求項36】
サイトカインレセプターペプチドが遺伝子組換え技術によって哺乳動物宿主細胞により発現されたヒトIL-6レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
サイトカインレセプターペプチドがヒト細胞の表面において内因性に発現したIL-6レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
サイトカインレセプターペプチドが本質的にヒトIL-6レセプターの7〜20個の連続するアミノ酸からなる、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
サイトカインレセプターペプチドが組換え技術によって哺乳動物宿主細胞により発現されたヒトIL-1レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
サイトカインレセプターペプチドがヒト細胞の表面で内因的に発現したIL-1レセプターである、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
サイトカインレセプターペプチドが本質的にヒトIL-1レセプターの7〜20個の連続するアミノ酸からなる、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
メタロプロテアーゼを用いて炎症細胞の表面からIL-6レセプターを開裂させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項43】
メタロプロテアーゼを用いて炎症細胞の表面からIL-1 I型またはIL-1 II型レセプターを開裂させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項44】
メタロプロテアーゼが配列番号:40もしくは52(MP7)のいずれか、または配列番号:41、53および57〜60(MP8)の任意の一つ、またはその断片と少なくとも90%同一である、ヒトサイトカインレセプターを開裂させるアミノ酸配列を含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項45】
IL-6レセプタープロテアーゼの炎症を治療するための医用薬の製造における使用。
【請求項46】
IL-1レセプタープロテアーゼの炎症を治療するための医用薬の製造における使用。
【請求項47】
慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための医用薬である、請求項45または46記載の使用。
【請求項48】
炎症細胞をIL-6レセプタープロテアーゼと接触させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項49】
炎症細胞をIL-1レセプタープロテアーゼと接触させる段階を含む、炎症を抑制するための方法。
【請求項50】
慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、心不全、動脈硬化症、喘息、重症筋無力症、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療するための医用薬である、請求項48または49記載の方法。
【請求項51】
溶液中のサイトカインレセプター放出酵素活性を測定するための方法であって、以下の段階を含む方法:
a)酵素(溶液中に含まれる場合)がペプチドを開裂する条件下において、溶液を本質的にp55 TNFレセプター、p75 TNFレセプター、IL-6レセプター、IL-1 I型レセプターまたはIL-1 II型レセプターから選択されるヒトサイトカインレセプターの8〜20個の連続するアミノ酸からなるペプチドと混合する段階;
b)ペプチドの開裂(発生する場合)を測定する段階;および
c)段階b)において測定される開裂から酵素活性を測定する段階。
【請求項52】
ペプチドの開裂が質量分析により測定される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
ペプチドが蛍光発光体および蛍光消光剤で標識されて、開裂が標識されたペプチドの蛍光の変化を測定することによって測定される、請求項51記載の方法。
【請求項54】
サイトカインレセプター放出酵素活性を測定するための、Zn++の存在しない状態(またはZn++キレート剤の存在する状態)でペプチドの開裂を測定する段階、およびZn++の存在する状態での開裂からZn++の存在しない状態での開裂を差し引く段階をさらに含む、請求項51〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
ペプチドがどのアミノ酸の間で開裂するかを判定する段階をさらに含む、請求項51〜54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
p55 TNFレセプターの開裂がNVKG配列およびTEDS配列の間で測定される、請求項51〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
p75 TNFレセプターの開裂がDAVC配列およびTSTS配列の間で測定される、請求項51〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
IL-6レセプターの開裂がDSAN配列およびATSL配列の間で測定される、請求項51〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
段階b)の前に溶液に加えられた化合物がサイトカインレセプター放出活性を調節できるかどうかを判定するための、請求項51〜58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
化合物がTNFレセプター、IL-6レセプター、またはIL-1レセプターペプチドの開裂を阻害または亢進するかどうかを判定する段階を含む、請求項59記載の方法。
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2008−514184(P2008−514184A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528211(P2006−528211)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031377
【国際公開番号】WO2005/030241
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506097748)マイヤー ファーマシューティカルズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031377
【国際公開番号】WO2005/030241
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506097748)マイヤー ファーマシューティカルズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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