説明

細胞観察画像の画像解析方法、画像処理プログラム及び画像処理装置

【課題】細胞の外形や内部構造等の情報から細胞の移動形態を分類する手段を提供する
【解決手段】撮像装置により撮影された観察画像から観察細胞Cの輪郭を抽出し、観察細胞の形状特徴に基づいて観察細胞Cの細胞変形方向VPを算出するとともに、所定時間の経過後に撮影された観察画像から観察細胞Cの細胞移動方向VRを算出し、細胞変形方向VPと細胞移動方向VRとに基づいて観察細胞Cの移動形態を分類する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の時系列観察装置において細胞の分類またはトラッキングに利用される細胞観察の画像処理手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞の外形や内部構造などの形態情報は、これらの形態情報を個別に抽出し、その特徴に基づき細胞を分類する細胞分類に利用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2007−303886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら個別の形態情報は、対象細胞が赤血球なのか白血球なのかなど、細胞の種別を分類する細胞分類学としては有用ではあるものの、細胞の動的挙動解析に直接利用できるものではなかった。例えば、細胞が形状や内部構造の変化を伴って移動する場合の移動形態は大きく分けて二通りあると考えられている。すなわち、細胞の一部(足)を伸ばして足がかりを作りその方向に体を移動させるものと、細胞形状を歪ませあるいは内部構造を移動させて外形の接着部位(足)を引きずるように移動するものが存在する。従来の細胞分類手法では、仮に足を形態情報として抽出できたとても、その細胞がどちらの移動形態の細胞なのか判断することができなかった。
【0004】
また、細胞を観察する上で重要な画像処理アルゴリズムである細胞トラッキングでは、細胞の全方位について計算を行った場合の計算量の多さ(処理負担)や、観察細胞の誤認識を避けるために移動予測を必要とする。この際、一般的に時系列予測だけでは困難な場合が多く、細胞の種類や移動特性を人間が手動で入力するなどの方法が採られていた。そのため、運動解析に至る操作が煩雑であるとともに、入力を誤った場合の修正処理に多大な処理負担を要するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、細胞の外形や内部構造などの情報から、あらかじめ細胞の移動形態を分類する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を例示する第1の態様に従えば、撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得し、取得した観察画像から観察細胞の輪郭を抽出し、輪郭が抽出された観察細胞の形状特徴に基づいて観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、観察画像と所定時間を隔てて撮像装置により撮影された第2観察画像とから観察細胞の細胞移動方向を算出し、算出された細胞変形方向と細胞移動方向とに基づいて観察細胞の移動形態を分類することを特徴とする細胞観察画像の画像解析方法が提供される。
【0007】
本発明を例示する第2の態様に従えば、撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得し、取得した観察画像から観察細胞の輪郭を抽出し、輪郭が抽出された観察細胞の内部構造の偏りに基づいて観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、観察画像と所定時間を隔てて撮像装置により撮影された第2観察画像とから観察細胞の細胞移動方向を算出し、算出された細胞変形方向と細胞移動方向とに基づいて観察細胞の移動形態を分類することを特徴とする細胞観察画像の画像解析方法が提供される。
【0008】
本発明を例示する第3の態様に従えば、撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得するステップと、取得された観察画像から観察細胞の輪郭を抽出するステップと、輪郭が抽出された観察細胞の形状特徴に基づいて観察細胞の細胞変形方向を算出するステップと、観察画像と所定時間を隔てて撮像装置により撮影された第2観察画像とから観察細胞の細胞移動方向を算出するステップと、算出された細胞変形方向と細胞移動方向とに基づいて観察細胞の移動形態を分類するステップと、分類された観察細胞の種別を外部に出力するステップとを備えてなることを特徴とする細胞観察画像の画像処理プログラムが提供される。
【0009】
本発明を例示する第4の態様に従えば、撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得するステップと、取得した観察画像から観察細胞の輪郭を抽出するステップと、輪郭が抽出された観察細胞の内部構造の偏りに基づいて観察細胞の細胞変形方向を算出するステップと、観察画像と所定時間を隔てて撮像装置により撮影された第2観察画像とから観察細胞の細胞移動方向を算出するステップと、算出された細胞変形方向と細胞移動方向とに基づいて観察細胞の移動形態を分類するするステップと、分類された観察細胞の種別を外部に出力するステップとを備えてなることを特徴とする細胞観察画像の画像処理プログラムが提供される。
【0010】
本発明を例示する第5の態様に従えば、細胞を撮影する撮像装置と、撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得して観察画像を解析する画像解析部と、画像解析部により解析された解析結果を出力する出力部とを備え、画像解析部が、観察画像から観察細胞の輪郭を抽出し、輪郭が抽出された観察細胞の形状特徴に基づいて観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、観察画像と所定時間を隔てて撮像装置により撮影された第2観察画像とから観察細胞の細胞移動方向を算出し、算出された細胞変形方向と細胞移動方向とに基づいて観察細胞の移動形態を分類するように構成したことを特徴とする細胞観察の画像処理装置が提供される。
【0011】
本発明を例示する第6の態様に従えば、細胞を撮影する撮像装置と、撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得して観察画像を解析する画像解析部と、画像解析部により解析された解析結果を出力する出力部とを備え、画像解析部が、観察画像から観察細胞の輪郭を抽出し、輪郭が抽出された観察細胞の内部構造の偏りに基づいて観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、観察画像と所定時間を隔てて撮像装置により撮影された第2観察画像とから観察細胞の細胞移動方向を算出し、算出された細胞変形方向と細胞移動方向とに基づいて観察細胞の移動形態を分類するように構成したことを特徴とする細胞観察の画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記のような細胞観察画像の画像解析方法、画像処理プログラム、画像処理装置によれば、撮像装置により撮影された細胞の外形や内部構造などの情報から、細胞運動解析に直接利用することのできる情報を取り出し、あらかじめ細胞の移動形態を分類することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の細胞観察の画像処理装置を適用したシステムの一例として、培養観察システムの概要構成図及びブロック図を、それぞれ図2及び図3に示す。
【0014】
この培養観察システムBSは、大別的には、筐体1の上部に設けられた培養室2と、複数の培養容器10を収容保持する棚状のストッカー3と、培養容器10内の試料を観察する観察ユニット5と、培養容器10をストッカー3と観察ユニット5との間で搬送する搬送ユニット4と、システムの作動を制御する制御ユニット6と、画像表示装置を備えた操作盤7などから構成される。
【0015】
培養室2は、培養する細胞の種別や観察目的等に応じた培養環境を形成する部屋でありサンプル投入後は密閉状態に保持される。培養室2に付随して、温度調整装置21、加湿器22、CO2ガスやN2ガス等のガスを供給するガス供給装置23、循環ファン24、培養室2の温度や湿度等を検出する環境センサ25などが設けられている。各機器の作動は制御ユニット6により制御され、培養室2の培養環境が、操作盤7において設定された培養条件に合致した状態に維持される。
【0016】
ストッカー3は、前後方向及び上下方向にそれぞれ複数に仕切られた棚状に形成され、各棚に固有の番地が設定されている。培養容器10は、培養する細胞の種別や目的に応じて適宜選択して使用できるが、図2ではディッシュを用いた例を示しており、細胞試料は液体培地とともに培養容器10に注入される。培養容器10にはコード番号が付与され、ストッカー3の指定番地に対応づけて収容される。
【0017】
搬送ユニット4は、培養室2の内部に上下方向に移動可能に設けられたZステージ41、Zステージ41に前後方向に移動可能に取り付けられたYステージ42、Yステージ42に左右方向に移動可能に取り付けられたXステージ43などからなり、Xステージ43の先端側に、培養容器10を持ちあげ支持する支持アーム45が設けられている。搬送ユニット4の作動は制御ユニット6により制御され、X,Y,Zステージ43,42,41を作動させて、培養容器10をストッカー3と観察ユニット5との間で搬送可能になっている。
【0018】
観察ユニット5は、試料台15の下側から培養容器10全体をバックライト照明する第1照明部51、試料台15の上方から顕微観察系5の光軸に沿って培養容器中の試料を照明する第2照明部52、及び試料台15の下方から顕微観察系5の光軸に沿って培養容器中の試料を照明する第3照明部53と、試料のマクロ観察を行うマクロ観察系54、試料のミクロ観察を行う顕微観察系55、及び画像処理装置100などから構成される。培養容器10が載置される試料台15は、透光性材料で構成され、顕微観察系55の観察領域に透明な窓部16が設けられている。
【0019】
マクロ観察系54は、観察光学系54aと観察光学系により結像された試料の像を撮影するCCDカメラ等の撮像装置54cとを有し、第1照明部51の上方に位置して培養室2内に設けられている。マクロ観察系54は、第1照明部51によりバックライト照明された培養容器10の上方からの全体観察画像(マクロ像)を撮影する。
【0020】
顕微観察系55は、対物レンズや中間変倍レンズ、蛍光フィルタ等からなる観察光学系55aと、観察光学系55aにより結像された試料の像を撮影する冷却CCDカメラ等の撮像装置55cとを有し、下部フレーム1bの内部に配設されている。対物レンズ及び中間変倍レンズは、それぞれ複数設けられるとともに、詳細図示を省略するレボルバやスライダなどの変位機構を用いて複数倍率に設定可能に構成される。顕微観察系55は、第2照明部52により照明されて細胞を透過した透過光、若しくは第3照明部53により照明されて細胞により反射された反射光、または第3照明部53により照明されて細胞が発する蛍光を顕微鏡観察した顕微観察像(ミクロ像)を撮影する。
【0021】
画像処理装置100は、マクロ観察系の撮像装置54c及び顕微観察系の撮像装置55cから入力された信号をA/D変換するとともに、各種の画像処理を施して全体観察画像または顕微観察画像の画像データを生成する。また、画像処理装置100は、これらの観察画像の画像データに画像解析を施し、タイムラプス画像の生成や細胞の移動形態分類、移動方向予測、細胞の運動状態の解析等を行う。画像処理装置100は、具体的には、次述する制御ユニット6のROM62に記憶された画像処理プログラムを実行することにより構築される。なお、画像処理装置100については、後に詳述する。
【0022】
制御ユニット6は、CPU61と、培養観察システムBSの作動を制御する制御プログラムや各部を制御するためのデータ等が設定記憶されたROM62と、画像データ等を一時記憶するRAM63などを有し、これらがデータバスにより接続されて構成される。制御ユニット6の入出力ポートには、培養室2における温度調整装置21、加湿器22、ガス供給装置23、循環ファン24及び環境センサ25、搬送装置4におけるX,Y,Zステージ43,42,41の各軸の駆動機構、観察ユニット5における第1,第2,第3照明部51,52,53、マクロ観察系54及び顕微観察系55、操作盤7における操作パネル71や表示パネル72などが接続されている。CPU61には上記各部から検出信号が入力され、ROM62に予め設定された制御プログラムに従って上記各部を制御する。
【0023】
操作盤7には、キーボードやスイッチ、光ディスクの読み書き装置などの入出力機器が設けられた操作パネル71、操作画面や画像データ等を表示する表示パネル72が設けられており、表示パネル72を参照しながら操作パネル71で観察プログラムの設定や条件選択、動作指令等を入力することにより、CPU61を介して培養観察システムBSの各部の作動が制御される。CPU61は、有線または無線の通信規格に準拠して構成された通信部65を介して、外部接続されるコンピュータ等との間でデータの送受信が可能になっている。RAM63には、観察プログラムの動作条件、例えば培養室2の環境条件や、培養容器10ごとの観察スケジュール、観察ユニット5における観察種別や観察位置、観察倍率等の観察条件などが記録される。また、培養室2に収容された各培養容器10のコード番号とストッカー3の収納番地などの培養容器10の管理データや、画像解析に用いる各種データが記録される。RAM63には、観察ユニット5により撮影された画像データを記録する画像データ記憶領域が設けられ、各画像データには培養容器10のコード番号と撮影日時等を含むインデックス・データとが対応付けて記録される。
【0024】
このように概要構成される培養観察システムBSでは、操作盤7において設定された観察プログラムの設定条件に従い、CPU61がROM62に記憶された制御プログラムに基づいて各部の作動を制御するとともに、培養容器10内の試料の撮影を自動的に実行する。すなわち、観察プログラムがスタートされると、CPU61はRAM63に記憶された環境条件値を読み込み、環境センサ25により検出される培養室2の温度や湿度、二酸化炭素濃度などの培養環境が条件値と一致するように温度調整装置21、加湿器22、ガス供給装置23等の作動を制御する。
【0025】
また、CPU61は、RAM63に記憶された観察条件を読み込み、観察スケジュールに基づいて搬送ユニット4のX,Y,Zステージ43,42,41を作動させてストッカー3から観察対象の培養容器10を試料台15に搬送し、観察ユニット5による観察を開始させる。例えば、観察プログラムにおいて設定された観察がマクロ観察である場合には、培養容器10をマクロ観察系54の光軸上に位置決めして試料台15に載置し、第1照明部51の光源を点灯させて、培養容器10の上方から撮像装置54cにより全体観察像を撮影させる。撮像装置54cから制御ユニット6に入力された信号は、画像処理装置100により処理されて全体観察画像が生成され、その画像データが撮影日時等のインデックス・データなどとともにRAM63に記録される。観察プログラムにおいて設定された観察が培養容器10内の特定位置の試料のミクロ観察である場合には、培養容器10を顕微観察系55の光軸上に位置決めして試料台15に載置し、第2照明部52または第3照明部53の光源を点灯させて、特定位置の顕微観察像を撮像装置55cに撮影させる。撮像装置55cから制御ユニット6に入力された信号は、画像処理装置100により処理されて顕微観察画像が生成され、その画像データが撮影日時等のインデックス・データなどとともにRAM63に記録される。
【0026】
CPU61は、上記のような観察を、ストッカー3に収容された複数の培養容器の試料について、観察プログラムに基づいた5分〜2時間程度の時間間隔の観察スケジュールで全体観察像や顕微観察像の撮影を順次実行する。なお、本実施形態では、撮影の時間間隔は一定であってもよいし、異なっていてもよい。撮影された全体観察像や顕微観察像の画像データは、培養容器10のコード番号とともにRAM63の画像データ記憶領域に記録される。RAM63に記録された画像データは、操作パネル71から入力される画像表示指令に応じてRAM63から読み出され、指定時刻の全体観察画像や顕微観察画像(単体画像)、あるいは指定時間領域の全体観察像や顕微観察像のタイムラプス画像が表示パネル72に表示される。
【0027】
[細胞移動形態の分類手法]
以上のように構成される培養観察システムBSにおいて、画像処理装置100は、細胞の移動形態(移動特性)を分類する機能を有しており、細胞の分類やトラッキングなどに補助的に利用される。細胞の移動形態の分類は、細胞の形状または内部構造から推定される細胞変形方向と、実際の細胞の移動を検出した細胞移動方向の二つの情報を使って行われる。
【0028】
本明細書においては、細胞変形方向を算出する手法として、観察対象の細胞が撮影された画像から、細胞の形状特徴に基づいて細胞変形方向を算出する手法と、細胞の内部構造の偏りに基づいて細胞変形方向を算出する手法とを提示する。以下、I:形状特徴に基づく細胞変形方向、II:内部構造の偏りに基づく細胞変形方向について、基本的な概念から説明する。
【0029】
(最外輪郭の抽出)
細胞変形方向の算出に先立って、細胞の最外輪郭抽出処理を行う。図4は、この最外輪郭抽出処理の状況を例示する模式図であり、撮像装置55c(54c)により取得された画像(a)を画像処理し、(b)に示すように細胞の最も外側の輪郭を抽出する。この最外輪郭抽出処理には、例えば、動的輪郭方(SnakesやLevel Set法など)や分散フィルタなどを利用する。なお、本明細書においては、移動形態の分類を行う観察対象の細胞を「観察細胞」と表記する。
【0030】
(I:形状特徴に基づく細胞変形方向の算出)
細胞の形状特徴に基づく細胞変形方向の算出は、前処理により最外輪郭が抽出された観察細胞に、細胞の輪郭形状をモデル化した細胞モデルを適応させ、適応した細胞モデルを利用して導出する。細胞モデルを利用した細胞変形方向の具体的算出手法として、(1)観察細胞に適応した細胞モデルの重心位置と輪郭が抽出された観察細胞の重心位置のずれに基づく算出手法、(2)観察細胞に適応した細胞モデルの輪郭形状と観察細胞の輪郭形状の差異に基づく算出手法を提案する。
【0031】
まず、観察細胞への細胞モデルの適応は、例えば、図5,図6に楕円形状の細胞モデルMcを適応した事例を示すように、前処理で抽出された観察細胞Cの最外輪郭に対して楕円モデルへの近似を行う。ここでいう楕円近似は、最小二乗法やモーメント計算による方法が例として挙げられる。または観察細胞Cの輪郭内部を埋めたものと最も相関の高い楕円モデルを推定してもよい。この細胞モデルMcを利用して観察細胞穂変形方向を推定する。
【0032】
(1)細胞モデルの重心位置と観察細胞の重心位置のずれに基づく細胞変形方向の算出手法は、図5に示すように、観察細胞Cに対して細胞モデルMcを適用するとともに、観察細胞Cの輪郭形状からその重心位置Gを図形処理して求め、細胞モデルMcの重心位置と観察細胞Cの重心位置のずれから細胞変形方向を導出する。例えば、図5のように、観察細胞の輪郭形状の重心Gが、楕円近似した細胞モデルMcの重心すなわち楕円中心Oから長軸の右側に偏っている場合、楕円中心Oから重心Gの偏心方向を細胞変形方向(細胞の予測移動方向)として算出する。
【0033】
(2)細胞モデルの輪郭形状と観察細胞の輪郭形状の差異に基づく細胞変形方向の算出手法は、楕円形状の細胞モデルMcに対して細胞輪郭が複雑な場合を考える。この場合、細胞モデルMcからはみ出した細胞輪郭の位置及び大きさから、突出量が最も大きい箇所の存在する方位が観察細胞Cの移動する方向であると推定し、これを細胞変形方向とする。例えば、図6に示すように、細胞モデルMcの中心からはみ出し最大部分の領域の方位が求められ、この方位が細胞変形方向と算出される。
【0034】
これらの算出手法は、細胞が移動する際に体の一部(足)を伸ばして足がかりを作る特徴や、細胞形状を歪ませて接着面が残る特徴を利用したものである。このようにして得られた細胞変形方向をベクトル化させ、「細胞変形方向」VP1とする(VP1は単位ベクトル)。なお、細胞モデルMcの構成例として楕円形状を例示したが、観察対象となる細胞の形態的な特徴に応じて適宜な形状を用いることができ、例えば、三角形や矩形、星形、弓形などが例示される。
【0035】
(II:内部構造の偏りに基づく細胞変形方向の算出)
細胞の内部構造の偏りに基づく細胞変形方向の算出は、前処理により最外輪郭が抽出された観察細胞の輪郭形状に対する細胞密度の分布を算出し、算出された細胞密度分布に基づいて観察細胞の細胞変形方向を算出する。
【0036】
細胞密度は、もっとも簡単な計測手法として、顕微観察画像における細胞輪郭内側の輝度値の分散で表現することができる。細胞は移動する際に内部を移動する方向へと組織を移動させる(またはその逆に移動させる)傾向がある。そこで、細胞輪郭内における細胞密度を輝度値の分散から求め、図7に示すように、細胞輪郭内において分散の小さい領域から分散の大きい領域に向かう方向を計算し、これを観察細胞Cの「細胞変形方向」VP2とする(VP2は単位ベクトル)。
【0037】
(細胞移動方向の検出)
次に、観察細胞Cの移動に対して十分微小な時間を隔てた時刻t+1,t+2,t+3・・・(またはt-1,t-2,t-3・・・)の細胞観察画像(第2観察画像)を取得し、時刻tの観察細胞Cに最も近い位置の細胞を対応する観察細胞として順次検出する。また、時刻tの観察細胞Cの位置と各時刻における観察細胞の位置とから移動量および移動方向を算出し、算出された観察細胞の実移動方向を各時刻における観察細胞の「細胞移動方向」VRとする(VRは単位ベクトル)。なお、各時刻における移動量及び移動方向から観察細胞Cの平均移動方向を算出し、これを観察細胞の細胞移動方向VRとしてもよい。
【0038】
ここで、時刻tの細胞に対応する時刻t+1の細胞の検出には、時刻の刻み幅が観察細胞Cの移動に対して十分短く、細胞の変形も少ないことから、時刻tの観察細胞Cをテンプレートとし、その近傍における時刻t+1の画像に対してマッチング(相関や差分など)をとる(テンプレートマッチング)。これを時刻t+1の画像に対する時刻t+2の細胞の検出と繰り返し、短時間あたりの細胞の移動方向を決定する。
【0039】
(細胞移動形態の分類)
次に、上記のようにして求めた観察細胞Cの細胞変形方向(VP1,VP2)と、細胞移動方向(VR)との内積をとり、
1=VP1・VR
2=VP2・VR
を算出する。そして、この内積の算出結果により、観察細胞Cの移動形態を次のように分類する。図1(a)(b)に、細胞変形方向VP(VP1,VP2)及び細胞移動方向VRと、細胞の移動形態の関係を模式的に表す説明図を示す。
【0040】
1が1に近い場合、またはP2が−1に近い場合。
この場合には、図1(a)に示すように、観察細胞Cは、体の一部(足)を伸ばして足がかりを作り、その方向に体を移動させるタイプであると判断される。
【0041】
1が−1に近い場合、またはP2が1に近い場合。
この場合には、図1(b)に示すように、観察細胞Cは、細胞の形状を歪ませあるいは内部構造を移動方向に移動させて、外形の接着部位(足)を引きずるように移動するタイプであると判断される。
【0042】
従って、以上のような解析手法を用いることにより、撮像装置により撮影された観察細胞Cの外形や内部構造などの情報から、観察細胞Cの移動形態を容易に分類することができる。
【0043】
[アプリケーション]
次に、培養観察システムBSの画像処理装置100において実行される画像解析の具体的なアプリケーションについて、図8〜図12の各図を併せて参照しながら説明する。ここで、図8は移動予測の画像処理を実行する画像処理装置100の概要構成を示すブロック図、図9は移動予測の画像処理プログラムGPにおけるメインフローを示すフローチャート、図10〜図12はメインフローにおいて選択される予測アルゴリズムA,B,Cに対応したフローチャートである。
【0044】
画像処理装置100は、撮像装置55c(54c)により観察細胞Cが撮影された観察画像を取得して観察画像を解析する画像解析部120と、画像解析部120により解析された解析結果を出力する出力部130とを備え、画像解析部120により導出された観察細胞Cの移動形態を、例えば表示パネル72に出力して表示させるように構成される。画像処理装置100は、ROM62に予め設定記憶された画像処理プログラムGPがCPU61に読み込まれ、CPU61によって画像処理プログラムGPに基づく処理が順次実行されることによって構成される。
【0045】
ここで、画像解析部120は、画像解析プログラムGPのメインフローにおいてAまたはBのアルゴリズムが選択された場合に、取得した時刻tの観察画像から観察細胞Cの輪郭を抽出し、輪郭が抽出された観察細胞Cの形状特徴に基づいて細胞変形方向VP1及び観察細胞Cの細胞移動方向VRを算出し、これら細胞変形方向VP1及び細胞移動方向VRに基づいて観察細胞Cの移動形態を分類する。一方、画像解析プログラムGPのメインフローにおいてCのアルゴリズムが選択された場合には、画像解析部120は、取得した観察画像から観察細胞Cの輪郭を抽出し、輪郭が抽出された観察細胞Cの輪郭形状に対する内部構造の偏りに基づいて細胞変形方向VP2及び観察細胞Cの細胞移動方向VRを算出し、これら細胞変形方向VP2及び細胞移動方向VRに基づいて観察細胞Cの移動形態を分類する。そして、分類された観察細胞Cの移動形態に基づき、さらに進んで観察細胞Cの予測移動方向を導出する。
【0046】
上記のような画像解析部120による画像解析処理は、これから観察を始める細胞の画像を画像装置により取得して実行可能であるほか、既にRAM63に保存されている画像データを読み出して実行することも可能である。そこで、本実施例では、現時点である時刻tに取得された観察画像を基準とし、この時刻tの観察画像と、微小時間前の時刻t-1に取得され、既にRAM63に保存されている第2観察画像とから、観察細胞Cの移動形態の分類及び移動予測を行う場合について、図13に示す表示パネル72への移動予測インターフェースの表示画像構成例を参照しながら説明する。
【0047】
このインターフェースでは、操作パネル71において「細胞の移動予測」が選択され、実行されると、まず、表示パネル72に「ディッシュ選択」枠721が表示されてストッカー3に格納された培養容器10のコード番号一覧表が表示され、観察対象の培養容器10の選択が行われる。図13では、操作パネル71に設けられたカーソルによってコード番号Cell-0002の培養細胞ディッシュ(培養容器)が選択された状態を示す。
【0048】
培養容器が選択されると、CPU61は、搬送ユニット4のX,Y,Z各ステージを作動させてストッカー3から観察対象の培養容器10を観察ユニット5に搬送する。そして、顕微観察系55による顕微観察像を撮像装置55cにより撮影させ、その画像を「観察位置」枠722に表示させる。
【0049】
次に、観察対象とする細胞(観察細胞)が含まれる観察画像を取得するため、観察画像の領域設定が行われる。図13では、観察者が操作パネル71に付帯して設けられたマウスを利用して中央右よりの網掛け領域を指定した状態を示す。これにより、観察者が指定した領域の画像が観察画像として画像解析部120に取得される(ステップS1)。
【0050】
取得された観察画像は、画像解析部120により瞬時に細胞の最外輪郭抽出処理(セグメンテーション)が施され(ステップS2)、表示パネル72の「観察画像」枠723に、最外輪郭が抽出された細胞の画像が表示される。そこで、図13に示すように、観察画像において、移動方向予測を行う観察細胞(注目細胞)をマウス等を用いて指定する(ステップS3)。このとき、観察画像枠723の下側に「移動予測オプション」枠724が形成され、その枠内に「移動予測手法」枠725が形成されてどの予測アルゴリズムを適用して移動予測を行うか、移動予測手法の選択ボタン725a,725b,725cが表示される。
【0051】
図示する実施例では、予測アルゴリズムとして、
A:最外輪郭偏心方向による予測・・・すなわち、I:形状特徴に基づく細胞変形方向の算出(1)で説明した、細胞モデルMcの重心位置Oと観察細胞Cの重心位置Gのずれに基づいて細胞の移動形態を分類し、移動方向を予測する手法。
B:楕円はみ出し方向による予測・・・すなわち、I:形状特徴に基づく細胞変形方向の算出(2)で説明した、細胞モデルMcの輪郭形状と観察細胞Cの輪郭形状の差異に基づいて細胞の移動形態を分類し、移動方向を予測する手法。
C:細胞組織密度方向による予測・・・すなわち、II:内部構造の特徴に基づく細胞変形方向の算出で説明した、観察細胞Cの内部構造の特徴に基づいて細胞の移動形態を分類し、移動方向を予測する手法。
の3種類の中から予測手法を選択設定可能に構成しており、A:最外輪郭偏心方向による予測手法の選択ボタン725a、B:楕円はみ出し方向による予測手法の選択ボタン725b、C:細胞組織密度方向による予測手法の選択ボタン725cがメイン画面に表示されるように構成している。
【0052】
ステップS4では、観察者が選択ボタン725a,725b,725cのいずれかを選択することにより予測アルゴリズムA,B,Cの選択が行われ、この選択に応じて、ステップS5で、S5A:最外輪郭偏心方向による予測アルゴリズムのフロー、S5B:楕円はみ出し方向による予測アルゴリズムのフロー、S5C:細胞組織密度方向による予測アルゴリズムのフローのいずれかに分岐する。
【0053】
(S5A:最外輪郭偏心方向による予測アルゴリズムのフロー)
最外輪郭偏心方向による予測アルゴリズムは、図10に示すように、まず、ステップS11において、観察細胞の最外輪郭に対して細胞モデルMcの近似処理が実行され、例えば図5に点線で示したように、観察細胞Cに楕円形状の細胞モデル(楕円モデル)Mcが適応される。次いで、ステップS12において、細胞モデルMcの重心位置(楕円中心)Oと、観察細胞Cの輪郭形状における重心位置Gとが算出される。ステップS13では、細胞モデルMcの重心位置Oから輪郭形状の重心位置Gに向かう方向が算出され、細胞変形方向VP1が算出されて、ステップS15に進む。
【0054】
上記ステップS11〜S13による細胞変形方向VP1の算出と並行して(または別途独立して)、ステップS51において既にRAM63に記憶されていた時刻t-1の観察画像が取得され、ステップS52において時刻tの観察細胞Cに最も近い位置の細胞を対応する観察細胞として検出する。次いで、ステップS53において時刻tの観察細胞Cの位置と時刻t-1における観察細胞Cの位置とから、当該観察細胞Cの実際の移動方向、すなわち細胞移動方向VRを算出してステップS15に進む。なお、前述したように複数の時刻(t,t-1,t-2,t-3・・・)間の移動量及び移動方向から平均移動方向を算出し、これを細胞移動方向VRとしてもよく、時刻tから微小時間経過後のt+1の画像を新たに取得して細胞移動方向VRを算出してもよい。
【0055】
ステップS15では、ステップS13で得られた細胞変形方向VP1と、ステップS53で得られた細胞移動方向VRとから内積P1=VP1・VRが算出される。そして、ステップS16において、P1に基づいて観察細胞Cの移動形態が分類される。すなわち、算出されたP1が1に近い場合には、観察細胞Cは、図1(a)に示すように移動方向に体を伸ばす細胞輪郭(足)移動型、P1が−1に近い場合には、観察細胞Cは、図1(b)に示すように接着部を引きずるように移動する細胞内部移動型であると判断され、観察細胞の移動形態(細胞移動モデル)が決定される。
【0056】
そして、ステップS16で決定された移動形態に基づき、ステップS18において、細胞モデルMcの中心Oから細胞輪郭の重心Gに向かう方向(P1が1に近い場合)または逆方向(P1が−1に近い場合)が観察細胞Cの移動予測方向と決定され、メインフローに戻ってステップS6に進む。
【0057】
ステップS6では、表示画面に「細胞移動モデル」枠726、及び「注目細胞のトラッキング」枠727が形成される。「細胞移動モデル」枠726の枠内には、ステップS16において決定された観察細胞Cの移動形態(細胞内部移動型726a、または細胞輪郭(足)移動型726b)がドットの点灯や点滅表示により示される。「注目細胞のトラッキング」枠727の枠内には、ステップS3において指定された観察細胞Cのクローズアップ表示と、ステップS18において決定された観察細胞Cの予測移動方向がベクトル表示により表示される。なお、観察画像内に位置する全細胞について移動予測を実行する場合には、「観察画像」枠723の下側に形成された「全細胞移動予測ベクトル表示」の選択ボタンをオンに設定することによって、図示するように観察画像中の各細胞に移動ベクトルが重ねて表示される。
【0058】
(S5B:楕円はみ出し方向による予測アルゴリズムのフロー)
楕円はみ出し方向による予測アルゴリズムは、図11に示すように、ステップS21において、観察細胞の最外輪郭に対して細胞モデルMcの近似処理が実行され、例えば図6に点線で示したように、観察細胞Cに楕円形状の細胞モデル(楕円モデル)Mcが適応される。次いで、ステップS22において、細胞モデルMcからはみ出した観察細胞Cの領域の位置と大きさが算出される。続くステップS23では、細胞モデルMcの中心から突出量が最大の領域の方位が求められ、この方位が細胞変形方向VP1と算出されて、ステップS25に進む。
【0059】
ステップS21〜S23による細胞変形方向VP1の算出と並行して(または独立して)、ステップS51においてRAM63に記憶されていた時刻t-1の観察画像が取得され、ステップS52において時刻tの観察細胞Cに最も近い位置の細胞を対応する観察細胞として検出し、ステップS53において時刻tの観察細胞Cの位置と時刻t-1における観察細胞Cの位置とから細胞移動方向VRを算出して、ステップS25に進む。
【0060】
ステップS25では、ステップS23で得られた細胞変形方向VP1と、ステップS53で得られた細胞移動方向VRとから内積P1=VP1・VRが算出される。そして、ステップS26において、算出されたP1に基づいて観察細胞Cの移動形態を分類する。すなわち、算出されたP1が1に近い場合には、観察細胞Cは、図1(a)に示すように移動方向に体の一部(足)を伸ばして足がかりを作る細胞輪郭(足)移動型、P1が−1に近い場合には、観察細胞Cは、図1(b)に示すように体を歪ませて接着部を引きずるように移動する細胞内部移動型であると判断され、細胞の移動形態(細胞移動モデル)が決定される。
【0061】
そして、ステップS26で決定された移動形態に基づき、ステップS28において、細胞モデルMcの中心から突出量が最大の領域に向かう方向(P1が1に近い場合)または逆方向(P1が−1に近い場合)が、観察細胞Cの移動予測方向と決定され、メインフローに戻ってステップS6に進む。
【0062】
以降の処理は、前述した最外輪郭偏心方向による予測アルゴリズムの場合と同様である。すなわち、ステップS6において、表示画面に「細胞移動モデル」枠726、及び「注目細胞のトラッキング」枠727が形成され、「細胞移動モデル」枠726の枠内に観察細胞Cの移動形態(細胞内部移動型726a、または細胞輪郭(足)移動型726b)、「注目細胞のトラッキング」枠727の枠内に、観察細胞Cのクローズアップ表示と予測移動方向とが表示される。
【0063】
(S5C:細胞組織密度方向による予測アルゴリズムのフロー)
細胞組織密度方向による予測アルゴリズムは、図12に示すように、まず、ステップS31において、観察細胞輪郭内の輝度値の分散を算出することにより細胞内部の密度分布を算出する。次いで、ステップS32において輝度値の分散が小さい領域から大きい領域に向かう方向を算出し、観察細胞Cの細胞変形方向VP2を求める。これにより図7に示したように、輪郭形状が複雑な細胞であっても、細胞内部の構造特徴により細胞密度の低い領域から高い領域に向かう細胞変形方向VP2を求められ、ステップS35に進む。
【0064】
ステップS31,S32による細胞変形方向VP2の算出と並行して、前述同様のステップS51〜ステップS53が実行され、この処理により細胞移動方向VRが算出されてステップS35に進む。
【0065】
ステップS35では、ステップS32で得られた細胞変形方向VP2と、ステップS53で得られた細胞移動方向VRとから内積P2=VP2・VRが算出される。そして、ステップS36において、算出されたP2に基づいて観察細胞Cの移動形態を分類する。すなわち、算出されたP2が−1に近い場合には、観察細胞Cは、図1(b)に示すように細胞の内部構造を体の内部で移動させ、当該内部構造の移動方向に移動してゆく細胞内部移動型であると判断され、P2が1に近い場合には、観察細胞Cは、図1(a)に示すように移動方向に体の一部を伸ばす細胞輪郭(足)移動型であると判断され、細胞の移動形態(細胞移動モデル)が決定される。
【0066】
そして、ステップS36で決定された移動形態に基づき、ステップS38において、細胞密度が小さい領域から大きい領域に向かう方向(P2が−1に近い場合)または逆方向(P2が1に近い場合)が、観察細胞Cの移動予測方向と決定され、メインフローに戻ってステップS6に進む。
【0067】
以降の処理は、既述した最外輪郭偏心方向による予測アルゴリズムの場合と同様であり、ステップS6において、表示画面に「細胞移動モデル」枠726及び「注目細胞のトラッキング」枠727が形成され、「細胞移動モデル」枠の枠内に観察細胞Cの移動形態(細胞内部移動型726a、または細胞輪郭(足)移動型726b)、「注目細胞のトラッキング」枠の枠内に、観察細胞Cのクローズアップ表示及び予測移動方向が表示される。
【0068】
このようなアプリケーションによれば、観察対象に応じて好適な予測アルゴリズムを選択することができ、いずれの予測アルゴリズムを適用した場合にも、「細胞移動モデル」枠726の表示を見ることにより、観察細胞Cの移動形態を直ちに理解することができ、「注目細胞のトラッキング」枠727を見ることにより、観察対象の細胞の移動方向を詳細に把握することができる。
【0069】
そして、以上説明したように、本発明の画像処理プログラムGP、この画像処理プログラムが実行されることより構成される画像解析方法及び画像処理装置100によれば、撮像装置により撮影された少数の観察画像から細胞の移動形態を分類することができ、細胞の分類及び移動予測を簡明な構成で、高速に処理可能な手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】細胞変形方向と細胞移動方向とにより分類される細胞の移動形態を説明するための説明図である。
【図2】本発明の適用例として示す培養観察システムの概要構成図である。
【図3】上記培養観察システムのブロック図である。
【図4】細胞の輪郭抽出を行う輪郭抽出処理の状況を例示する模式図である。
【図5】細胞モデルの重心と観察細胞の重心のずれから移動方向を導出する移動予測手法の概念図である。
【図6】細胞モデルからはみ出した観察細胞の位置から移動方向を導出する移動予測手法の概念図である。
【図7】観察細胞の密度分布から移動方向を導出する移動予測手法の概念図である。
【図8】画像処理装置の概要構成を示すブロック図である。
【図9】画像処理プログラムにおけるメインフローを示すフローチャートである。
【図10】メインフローにおいて選択される予測アルゴリズムAに対応したフローチャートである。
【図11】メインフローにおいて選択される予測アルゴリズムBに対応したフローチャートである。
【図12】メインフローにおいて選択される予測アルゴリズムCに対応したフローチャートである。
【図13】画像処理プログラムを実行した場合に表示パネルに表示される細胞移動トラッキング・インターフェースの表示画像の構成例である。
【符号の説明】
【0071】
BS 培養観察システム GP 画像処理プログラム
C 観察細胞 Mc 細胞モデル
P(VP1,VP2) 細胞変形方向 VR 細胞移動方向
5 観察ユニット 6 制御ユニット
54 マクロ観察系 54c 撮像装置
55 顕微観察系 55c 撮像装置
61 CPU 62 ROM
63 RAM 100 画像処理装置
120 画像解析部 130 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得し、
取得した前記観察画像から前記観察細胞の輪郭を抽出し、
輪郭が抽出された前記観察細胞の形状特徴に基づいて前記観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、
前記観察画像と所定時間を隔てて前記撮像装置により撮影された第2観察画像とから前記観察細胞の細胞移動方向を算出し、
算出された前記細胞変形方向と前記細胞移動方向とに基づいて前記観察細胞の移動形態を分類することを特徴とする細胞観察画像の画像解析方法。
【請求項2】
前記形状特徴は、前記観察細胞の輪郭を近似した細胞モデルの重心位置と、前記観察細胞の輪郭形状の重心位置とのずれに関する特徴量であることを特徴とする請求項1に記載の細胞観察画像の画像解析方法。
【請求項3】
前記形状特徴は、前記観察細胞の輪郭を近似した細胞モデルの形状と、前記観察細胞の輪郭形状との差異に関する特徴量であることを特徴とする請求項1に記載の細胞観察画像の画像解析方法。
【請求項4】
撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得し、
取得した前記観察画像から前記観察細胞の輪郭を抽出し、
輪郭が抽出された前記観察細胞の内部構造の偏りに基づいて前記観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、
前記観察画像と所定時間を隔てて前記撮像装置により撮影された第2観察画像とから前記観察細胞の細胞移動方向を算出し、
算出された前記細胞変形方向と前記細胞移動方向とに基づいて前記観察細胞の移動形態を分類することを特徴とする細胞観察画像の画像解析方法。
【請求項5】
前記内部構造の偏りが、前記観察細胞の細胞密度であることを特徴とする請求項4に記載の細胞観察画像の画像解析方法。
【請求項6】
撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得するステップと、
取得された前記観察画像から前記観察細胞の輪郭を抽出するステップと、
輪郭が抽出された前記観察細胞の形状特徴に基づいて前記観察細胞の細胞変形方向を算出するステップと、
前記観察画像と所定時間を隔てて前記撮像装置により撮影された第2観察画像とから前記観察細胞の細胞移動方向を算出するステップと、
算出された前記細胞変形方向と前記細胞移動方向とに基づいて前記観察細胞の移動形態を分類するステップと、
分類された前記観察細胞の種別を外部に出力するステップと
を備えてなることを特徴とする細胞観察画像の画像処理プログラム。
【請求項7】
前記形状特徴は、前記観察細胞の輪郭を近似した細胞モデルの重心位置と、前記観察細胞の輪郭形状の重心位置とのずれに関する特徴量であることを特徴とする請求項6に記載の細胞観察画像の画像処理プログラム。
【請求項8】
前記形状特徴は、前記観察細胞の輪郭を近似した細胞モデルの形状と、前記観察細胞の輪郭形状との差異に関する特徴量であることを特徴とする請求項6に記載の細胞観察画像の画像処理プログラム。
【請求項9】
撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得するステップと、
取得した前記観察画像から前記観察細胞の輪郭を抽出するステップと、
輪郭が抽出された前記観察細胞の内部構造の偏りに基づいて前記観察細胞の細胞変形方向を算出するステップと、
前記観察画像と所定時間を隔てて前記撮像装置により撮影された第2観察画像とから前記観察細胞の細胞移動方向を算出するステップと、
算出された前記細胞変形方向と前記細胞移動方向とに基づいて前記観察細胞の移動形態を分類するするステップと、
分類された前記観察細胞の種別を外部に出力するステップと
を備えてなることを特徴とする細胞観察画像の画像処理プログラム。
【請求項10】
前記内部構造の偏りが、前記観察細胞の細胞密度であることを特徴とする請求項9に記載の細胞観察画像の画像処理プログラム。
【請求項11】
細胞を撮影する撮像装置と、前記撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得して前記観察画像を解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された解析結果を出力する出力部とを備え、
前記画像解析部が、前記観察画像から前記観察細胞の輪郭を抽出し、輪郭が抽出された前記観察細胞の形状特徴に基づいて前記観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、前記観察画像と所定時間を隔てて前記撮像装置により撮影された第2観察画像とから前記観察細胞の細胞移動方向を算出し、算出された前記細胞変形方向と前記細胞移動方向とに基づいて前記観察細胞の移動形態を分類するように構成したことを特徴とする細胞観察の画像処理装置。
【請求項12】
前記形状特徴は、前記観察細胞の輪郭を近似した細胞モデルの重心位置と、前記観察細胞の輪郭形状の重心位置とのずれに関する特徴量であることを特徴とする請求項11に記載の細胞観察画像の画像処理装置。
【請求項13】
前記形状特徴は、前記観察細胞の輪郭を近似した細胞モデルの形状と、前記観察細胞の輪郭形状との差異に関する特徴量であることを特徴とする請求項11に記載の細胞観察画像の画像処理装置。
【請求項14】
細胞を撮影する撮像装置と、前記撮像装置により観察細胞が撮影された観察画像を取得して前記観察画像を解析する画像解析部と、前記画像解析部により解析された解析結果を出力する出力部とを備え、
前記画像解析部が、前記観察画像から前記観察細胞の輪郭を抽出し、輪郭が抽出された前記観察細胞の内部構造の偏りに基づいて前記観察細胞の細胞変形方向を算出するとともに、前記観察画像と所定時間を隔てて前記撮像装置により撮影された第2観察画像とから前記観察細胞の細胞移動方向を算出し、算出された前記細胞変形方向と前記細胞移動方向とに基づいて前記観察細胞の移動形態を分類するように構成したことを特徴とする細胞観察の画像処理装置。
【請求項15】
前記内部構造の偏りが、前記観察細胞の細胞密度であることを特徴とする請求項14に記載の細胞観察画像の画像処理装置。

【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−26392(P2010−26392A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189994(P2008−189994)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】