説明

組子板

【課題】各種の平面的な形状の構造体および立体的な形状の構造体に組立てることができる組子板を提供する。
【解決手段】細長い板状体16の一方の端部に、この板状体16の幅の半分の深さの第1の切込み21を形成し、反対側の端部には、上記第1の切込み21の整数倍のピッチで第1の切込み21よりも浅い第2の切込み22を形成する。このときに第1の切込み21の最奥部と第2の切込み22の最奥部との間の距離をこの板状体の厚さと等しい値に設定する。これによって、板状体16を互いに組合わせるときに、5種類の連結構造をとれるようにし、これらの連結構造31〜35を適宜選択することによって、複雑な平面構造あるいは立体構造の構造体を組立てるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組子板に係り、とくに細長い板状体から成る組子板であって、各種の平面的あるいは立体的な構造に組立てることが可能な組子板に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系の材料を用いた組子構造によって、従来より家具や建具が製造されている。また上記のような組子構造を用いた玩具等が提案されている。
【0003】
本願発明は、各種の平面状あるいは立体的な構造に組立てることが可能な組子板を提供するものである。
【特許文献1】特開2006−132288号公報
【特許文献2】特開2004−324375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、各種の構造の構造体を組立てることが可能な組子板を提供することである。
【0005】
本願発明の別の課題は、平面的あるいは立体的な各種の形状の構造体を組立てることが可能な組子板を提供することである。
【0006】
本願発明の別の課題は、平面的のみならず3次元の立体的な構造に組立てることが可能な組子板を提供することである。
【0007】
本願発明のさらに別の課題は、極めて簡潔な構造の組子板によって、しかも複雑な構造体を組立てることが可能な組子板を提供することである。
【0008】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の主要な発明は、細長い板状体から成る組子板であって、
前記板状体の幅方向の一方の端部に複数の切込みが形成されるとともに、
前記板状体の幅方向の他方の端部に前記一方の端部と前記板状体の長さ方向の対応する位置において切込みが形成され、
前記一方の端部の切込みの最奥部と前記他方の端部の切込みの最奥部との間の前記板状体の幅方向の距離が前記板状体の厚さと等しいことを特徴とする組子板に関するものである。
【0010】
ここで、前記一方の端部の切込みの深さが前記他方の端部の切込みの深さよりも大きくてよい。また前記一方の端部の切込みの深さが前記板状体の幅の半分の寸法であってよい。また前記一方の端部の切込みの幅および他方の端部の切込みの幅がロータリソーの歯幅と等しくてよい。また前記板状体の長さ方向における前記他方の切込みのピッチが前記板状体の長さ方向における前記一方の切込みのピッチの整数倍であってよい。
【0011】
また、前記一方の端部の切込みまたは前記他方の端部の切込みが他の組子板の一方の端部の切込みまたは他方の端部の切込みと、交差位置における前記板状体の幅方向が前記他方の組子板の前記板状体の幅方向と一致するように係合されてよい。また前記一方の端部の切込みまたは前記他方の端部の切込みが他の組子板の前記一方の端部の切込みの最奥部と前記他方の端部の切込みの最奥部とを連結する連結部の前記板状体の幅方向の両端を挟着して、交差位置における前記板状体の幅方向が前記他方の組子板の前記板状体の幅方向と直交するように係合されてよい。また前記連結部のところで切断または破断してよい。
【発明の効果】
【0012】
本願の主要な発明は、細長い板状体から成る組子板であって、板状体の幅方向の一方の端部に複数の切込みが形成されるとともに、板状体の幅方向の他方の端部に一方の端部と板状体の長さ方向の対応する位置において切込みが形成され、一方の端部の切込みの最奥部と他方の端部の切込みの最奥部との間の板状体の幅方向の距離が板状体の厚さと等しくしたものである。
【0013】
従ってこのような組子板によると、その一方の端部の切込みを他の組子板の一方の端部の切込みに係合させて組合わせることができる。また一方の端部の切込みを、他の組子板の他方の端部の切込みと係合させて組合わせることができる。また他方の端部の切込みを、他の組子板の他方の端部の切込みと係合させて組合わせることができる。
【0014】
さらに本願発明によると、一方の端部の切込みの最奥部と他方の端部の切込みの最奥部との間の連結部を他の組子板の一方の端部の切込みと係合させることができる。また一方の端部の切込みの最奥部と他方の端部の切込みの最奥部とを連結する連結部を他の組子板の他方の端部の切込みと係合させることが可能になる。
【0015】
従ってこのような多様な係合構造を適宜選択することによって、複雑な平面形状、立体形状等に組立てることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1は本実施の形態に係る組子板を構成する板状体を作製するための木質板10を示している。すなわち所定の長さの細長い木質板10であって、その厚さ方向の寸法が後述する組子板の幅と等しい木質板10を用意する。このような木質板10としては、天然の木質系の材料が用いられてよく、杉、桧、その他各種の天然材が任意に選択される。なおここで、木質板10はその木目の方向が長さ方向とほぼ一致するようになる。
【0017】
このような木質板10を図2に示すように、ロータリソー12によって細条に裁断する。すなわちロータリソー12を駆動軸13に固着し、駆動軸13を介して回転駆動するとともに、木質板10をその長さ方向にゆっくりと移動させ、これによってこの木質板10を順次細条に分断していく。図3は細条に分断された状態を示しており、ここでは複数の板状体16に分断されている。すなわち例えば、1枚の木質板10によって、16枚の板状体16を得ることができる。ここで各板状体16は、後述する組子板を製作する板状体である。従ってこの板状体16は、組子板の長さと等しく、またその厚さは組子板の厚さと等しくなる。すなわち木質板10を裁断する際に、組子板の厚さに相当する寸法で順次細条に分断していくことになる。
【0018】
このように木質板10をロータリソー12によって細条に分断して複数の板状体16を得たならば、これらを互いに重合わせた状態でその表面に、図4および図5に示すような第1の切込み21を形成し、裏面に図5Bに示すような第2の切込み18を形成する。従って両面の切込み21、22を形成した板状体16を横から見ると、図5Cに示すようになる。
【0019】
第1の切込み21を形成する状態が図4に示されている。すなわちロータリソー17を用いて溝加工を行なう。第1の切込み21の幅は、ロータリソー17の歯幅と等しい幅になっている。従ってロータリソー17を駆動軸18によって回転させながら、板状体16の束をロータリソー17に対して移動させると、ロータリソー17の歯幅と等しい幅の第1の切込み21が形成される。ここで第1の切込み21は、図5に示すように、小さなピッチで形成されることになる。
【0020】
板状体16の一方の端面に図5Aに示すように第1の切込み21を形成したならば、この後に板状体16を重合わせたまま逆様にし、これによって第1の切込み21が形成された面とは反対側の面を露出させ、この後にロータリソー17によって第2の切込み22を形成する。ここで第2の切込み22は、上記第1の切込み21を形成するピッチの整数倍のピッチで形成されるとともに、第2の切込み22は常に第1の切込み21と対応する位置に形成される。この状態は図5Cに示される。
【0021】
このようにして加工された組子板の板状体16は図6A、B、Cに示すようになる。すなわち一方の端面に第1の切込み21が形成され、他方の端面に第2の切込み22が形成される。そして他方の切込み22は常に一方の切込み21と対応する位置に形成されるようになる。ここで板状体16の厚さをTとし、幅をWとしたときに、第1の切込み21の深さはW/2になる。ここで第1の切込み21の幅がこの板状体16の厚さTと等しい値になる。また上記第1の切込み21間の突片の長さをPとすると、P+Tが切込み21のピッチになる。そして第1の切込み21の最奥部と第2の切込み22の最奥部との間の連結部25のこの板状体16の幅方向の寸法は、この板状体16の厚さTに等しくなるようにしている。
【0022】
ここで具体的な寸法の一例を述べると、W=9mm、T=2mm、P=3mmであって、このような寸法の板状体16によって組子板が構成される。
【0023】
図7は組子板を構成する板状体16の変形例を示している。ここでは、基本的な構造は図6に示す構造と同じであるが、板状体16の一方の端面に形成される第1の切込み21を5つ形成した後に所定の間隔を隔ててまた5つの第1の切込み21を5つ形成しており、第1の切込み21の形成が間欠的である。なおそれ以外の構成は図6に示す構成と同じくなっている。
【0024】
次に図6に示すように加工された板状体16から成る組子板を用いた組立て構造について説明する。図8は第1の連結構造31を示すものであって、この板状体16の一方の端面の切込み21を、他の組子板を構成する板状体16の一方の端部の第1の切込み21と係合させる動作を示している。この場合には、第1の切込み21の切込み深さがこの板状体16の幅の1/2になっているために、図8Bに示すように互いに組合されたときに、これらの板状体16の上縁の高さが互いに一致する。
【0025】
図9に示す係合構造は第2の連結構造32を示しており、板状体16の一方の端部の切込み21を他の組子板を構成する板状体16の他方の端部の切込み22に係合させるようにしている。ここで、上述の寸法の板の場合には、一方の切込み21がこの板状体16の幅の1/2すなわち4.5mmであるのに対し、第2の切込み22はその深さが2.5mmなので、図9Bに示すように一対の板状体16を係合させると、これら一対の板状体16のエッジの部分で2mmの段差を生ずる。
【0026】
図10に示す係合構造は第3の連結構造33を示しており、板状体16の第2の切込み22を、他の板状体16の第2の切込み22と組合わせたものである。すなわち一対の板状体16の第2の切込み22同士を互いに係合させたものである。ここで第2の切込み22はその深さが2.5mmであるから、2枚の板状体16のエッジの部分は図10Bに示すように4mmの段差を生ずる。
【0027】
またこのような板状体16は、図11に示す第4の連結構造41のように、交差位置における板状体16の幅方向が他の板状体16の幅方向と直交するように組立てることが可能である。すなわち一方の板状体16の第1の切込み21に対して、下側に位置する別の板状体16の連結部25を組合わせる。このときに上側に位置する板状体16は図11Bに示すように、その幅方向がZ方向に一致している。これに対して下側に位置する板状体16はその幅方向がY方向に一致する。従って互いに組合わされる一対の板状体16はそれらの幅方向が互いに直交するようにして組合わされることになる。
【0028】
図12は第5の連結構造35を示しており、板状体16の第2の切込み22を別の板状体16の連結部25と係合させた状態を示している。ここで図12Bに示すように、上側に位置する板状体16はその幅方向がZ方向と一致する。これに対して下側に位置する板状体16はその幅方向がY方向になる。従ってこの場合においても、図11に示す構成と同様であって、互いに組合わされる板状体の幅方向が直交するようにして組合わされることになる。なお図12に示す構成は、下側の板状体16の連結部25が上側の板状体16の浅い第2の切込み22に係合されるために、その組合わせ深さが浅くなる特徴がある。
【0029】
図13は、このような組子板を用いて、しかも図8に示す第1の連結構造と図11に示す第4の連結構造とを組合わせて立体的な構造としたものである。すなわち前後の2枚の横方向の連結用の板状体16が、左右の縦方向の板状体16と連結される部位に、第4の連結構造34を採用している。従って、第1〜第3の連結構造のみから成る組子板とは異なって、板状体16の幅方向が他方の組子板の板状体16の幅方向と直交するように組立てられることになり、極めて多様な組立て構造を発現することが可能になる。従ってこのような組立て構造を順次重ねていくことによって、複雑な平面形状あるいは立体形状の構造体を任意に組立てることが可能になる。
【0030】
なおここで、上記組子板を構成する板状体16は、図6あるいは図7に示すように、その一方の端部の第1の切込み21と反対側の端部の他方の切込み22との間が連結部25によって連結された構造になっている。ここで連結部25はその幅が非常に小さく、例えば上記実施の形態の寸法の場合には、その幅および厚さが2mmであって、連結部25の断面形状は、2×2mmの角柱状である。従ってこの部分で、板状体16を任意に切断することが可能であり、あるいはまた折って破断することができる。従ってこれにより、板状体16を任意の高さに簡単に切断できるようになる。
【0031】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態における板状体16の材料については各種の材料を任意に選択してよい。また板状体16の各部の寸法についても、本願の技術的思想の範囲内において各種の寸法を選択できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明は、各種の立体形状を組立てるために用いる組子板として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】組子板を構成する板状体を切出すための木質板の斜視図である。
【図2】木質板を細条に切断する状態を示す正面図である。
【図3】細条に分断された状態の斜視図である。
【図4】第1の切込み21を形成する動作を示す斜視図である。
【図5】第1の切込みおよび第2の切込みを形成した板状体の平面図、底面図、および正面図である。
【図6】第1の実施の形態の組子板の正面図、平面図、および側面図である。
【図7】変形例に係る組子板の正面図、平面図、側面図である。
【図8】第1の連結構造を示す斜視図である。
【図9】第2の連結構造を示す斜視図である。
【図10】第3の連結構造を示す斜視図である。
【図11】第4の連結構造を示す斜視図である。
【図12】第5の連結構造を示す斜視図である。
【図13】板状体から成る組子板によって形成された立体構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10 木質板
12 ロータリソー
13 駆動軸
16 板状体
17 ロータリソー
18 駆動軸
21 第1の切込み
22 第2の切込み
25 連結部
31 第1の連結構造
32 第2の連結構造
33 第3の連結構造
34 第4の連結構造
35 第5の連結構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い板状体から成る組子板であって、
前記板状体の幅方向の一方の端部に複数の切込みが形成されるとともに、
前記板状体の幅方向の他方の端部に前記一方の端部と前記板状体の長さ方向の対応する位置において切込みが形成され、
前記一方の端部の切込みの最奥部と前記他方の端部の切込みの最奥部との間の前記板状体の幅方向の距離が前記板状体の厚さと等しいことを特徴とする組子板。
【請求項2】
前記一方の端部の切込みの深さが前記他方の端部の切込みの深さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の組子板。
【請求項3】
前記一方の端部の切込みの深さが前記板状体の幅の半分の寸法であることを特徴とする請求項1または2に記載の組子板。
【請求項4】
前記一方の端部の切込みの幅および他方の端部の切込みの幅がロータリソーの歯幅と等しいことを特徴とする請求項1に記載の組子板。
【請求項5】
前記板状体の長さ方向における前記他方の切込みのピッチが前記板状体の長さ方向における前記一方の切込みのピッチの整数倍であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の組子板。
【請求項6】
前記一方の端部の切込みまたは前記他方の端部の切込みが他の組子板の一方の端部の切込みまたは他方の端部の切込みと、交差位置における前記板状体の幅方向が前記他方の組子板の前記板状体の幅方向と一致するように係合されることを特徴とする請求項1に記載の組子板。
【請求項7】
前記一方の端部の切込みまたは前記他方の端部の切込みが他の組子板の前記一方の端部の切込みの最奥部と前記他方の端部の切込みの最奥部とを連結する連結部の前記板状体の幅方向の両端を挟着して、交差位置における前記板状体の幅方向が前記他方の組子板の前記板状体の幅方向と直交するように係合されることを特徴とする請求項1に記載の組子板。
【請求項8】
前記連結部のところで切断または破断することを特徴とする請求項7に記載の組子板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−120292(P2010−120292A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296749(P2008−296749)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508345173)
【Fターム(参考)】