説明

組成物および物品

【課題】 表面硬度、可撓性、耐熱性および透明性に優れる硬化物層を形成しうる、重合時の硬化収縮率が低く、なおかつ低粘度で作業性が良好な組成物、およびその組成物の硬化物層を有する物品を提供する。
【解決手段】 ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、またはポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれるオリゴマー(A)、および数平均分子量が250〜850のポリカーボネートジオール(b1)と(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステル(b2)とを反応して得られるポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート(B)を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面硬度、可撓性、耐熱性および透明性に優れた硬化物層を形成しうる、重合時の硬化収縮率が低く、かつ低粘度で作業性が良好な組成物、および該組成物の硬化物層を有する薄型物品に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性組成物は、有機溶剤を使用せず、しかも紫外線・電子線等の活性エネルギー線を照射することにより短時間で硬化し、強靭性、柔軟性、耐候性、耐薬品性等の優れた特性を有する硬化物層を各種基材表面に形成することができる。
そのため、この活性エネルギー線硬化性組成物は、木工用、塩ビ床材用、インキ用、プラスチック成型品用、プラスチックフィルム用、光ファイバー被覆材用、光ディスク被覆材用、注型用等、多くの産業用途に使用されている。
【0003】
このような硬化性組成物としては、例えばアクリル系オリゴマー、モノマーおよび光重合開始剤から構成される組成物が知られている。その主成分であるアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
その中でも、特にウレタンアクリレートは、原料であるイソシアネート成分、ポリオール成分、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル成分の種類が多く、目的に応じて幅広い設計が可能であることから、種々の分野において用いられている。
例えば、プレコート鋼板用コーティング材、プラスチックフィルム用コーティング材、印刷インキ、接着剤等に有用な硬化性組成物として、ポリカーボネートジオールを原料としたウレタンアクリレート系組成物が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。これらの組成物は低収縮であり、かつその硬化物は柔軟で基材との密着性や可撓性に優れる。
また一方で、光ディスク基材やフィルムコンデンサー用として、ポリカーボネートジオールジアクリレート系組成物も開示されている(例えば、特許文献5、特許文献6を参照)
【0004】
【特許文献1】特開昭63−264621号公報
【特許文献2】特開平3−247618号公報
【特許文献3】特開平3−273017号公報
【特許文献4】特開平6−145276号公報
【特許文献5】特開昭63−210118号公報
【特許文献6】特開平10−88029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1〜4に記載の組成物の硬化物は、その表面硬度や耐熱性が低いという課題があった。
また、前記特許文献5、6に記載の組成物は硬化収縮率が大きいことから、その組成物の硬化物層を有する物品は反る傾向にある。特に膜厚100μm程度の厚膜の硬化物層を有する物品は、反りの影響で寸法精度が十分ではなく、また脆くて可撓性に劣るという課題もあった。
本発明の目的は、表面硬度、可撓性、耐熱性および透明性に優れる硬化物層を形成しうる、重合時の硬化収縮率が低く、かつ低粘度で作業性が良好な組成物およびその組成物の硬化物層を有する物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、およびポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーより選ばれるオリゴマー(A)(以下、成分(A)という)、および数平均分子量が250〜850のポリカーボネートジオール(b1)(以下、成分(b1)という)と(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステル(b2)(以下、成分(b2)という)とを反応して得られるポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート(B)(以下、成分(B)という)を含有する組成物、およびその組成物の硬化物層を有する物品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、硬化収縮率が極めて低く、しかも優れた表面硬度と可撓性という相反する特性を有し、更に透明性にも優れる硬化物を得ることができるものである。そこで、本発明の組成物は、光ディスクや光学シート等の精密な光学物品の表面改質材として好適に用いることができる。
また、本発明の物品は、前述した特性を有する硬化物層を有することから、特に寸法安定性が重要となる光ディスクやフレネルレンズ、プリズムシート等の光学物品用途に特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の組成物は、硬化収縮率および粘度が低く、かつ表面硬度、可撓性および透明性に優れる硬化物を得るのに好適なものである。
【0009】
本発明で用いる成分(A)は、組成物に低収縮性を、得られる硬化物層に可撓性、記録膜保護性能および機械的強度を付与する成分である。
【0010】
成分(A)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、およびポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれるものであれば、特に限定されるものではない。
【0011】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、例えばイソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカリンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物やこれらの化合物の二量体もしくは三量体の一種または二種以上の混合物に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルの一種単独または二種以上の混合物を反応させたウレタンポリ(メタ)アクリレート;
【0012】
ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA等のアルカンジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール;前記各種アルカンジオールから得られる共重合ポリエーテルジオール;ポリブタジエンジオール;前記ジオールと、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸又はこれら多塩基酸の酸無水物との反応によって得られるポリエステルジオール;前記ジオールと、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトンとの反応によって得られるポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール;ポリカーボネートジオール;エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のアミノアルコールとγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状カルボン酸エステルとの反応で得られるアミドジオール;スピログリコール化合物等の一種または二種以上の混合物からなるアルコールと前記ジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーに、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させたウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0013】
また、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノキシフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシフルオレンエタノールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸を反応させたエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
さらに、使用可能なポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、例えばネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1−メチルブチレングリコール等のジオールと、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸またはこれら多塩基酸の酸無水物と、(メタ)アクリル酸およびその誘導体との反応によって得られるポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0015】
本発明に用いる成分(B)は、成分(b1)と、成分(b2)とを反応して得られるポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレートである。
この成分(B)は、低粘度でありながら硬化性に優れており、成分(A)の希釈剤として有用である。またこの成分(B)は、成分(A)と併用することにより硬化物に表面硬度および可撓性をも付与する成分である。
本発明において、成分(B)は、一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0016】
成分(B)を得るために用いる成分(b1)は、得られる硬化物層の表面硬度および可撓性を向上させるものである。
この成分(b1)の数平均分子量は、250〜850の範囲であり、好ましくは250〜500の範囲である。成分(b1)の数平均分子量が250より低いと、組成物の硬化収縮率が上昇し得られる硬化物の可撓性が低下する傾向である。また、その数平均分子量が850を超えると、組成物の粘度が高くなり得られる硬化物の表面硬度や耐熱性が低位となる傾向にある。
本発明の組成物において、成分(b1)は、一種単独でまたは二種以上を併用して用いることができる。
【0017】
成分(b1)の具体例としては、例えば数平均分子量250〜850の範囲で、分子内に水酸基を2個有するポリカーボネートであればよく、特に限定されるものではない。その中でも、高純度なものが得られることから、炭酸エステルとジオールとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオールを用いることが好ましい。
ここでいう炭酸エステルの具体例としては、例えばエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートおよびジフェニルカーボネート等が挙げられる。
これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0018】
また、ここでいうジオールの具体例としては、例えば1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリメチルヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0019】
なおそれらジオールの中でも、得られる組成物の粘度が低くなることから、アルカンジオールが好ましい。さらに、得られる組成物が低粘度となり、かつ得られる硬化物の可撓性に優れることから、ジオールとして1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとを併用することがより好ましい。
【0020】
成分(B)を得るために用いる成分(b2)は、前記成分(b1)をエステル化し、活性エネルギー線硬化性を導入するための必須成分である。これにより、低粘度で活性エネルギー線硬化性に優れたポリカーボネート誘導体が合成可能である。
【0021】
成分(b2)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、ラクトン変性(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸等の(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を併せ持つ化合物や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
これらは、一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0022】
本発明に用いる成分(B)は、成分(b1)と成分(b2)とを反応させることにより得ることができる。その反応手法としては、酸触媒を用いた脱水エステル化反応、酸クロライドを経由したエステル化反応、(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応等、公知の手法が挙げられる。
例えば成分(b1)と成分(b2)とをエステル交換反応により合成する場合には、前述した成分(b1)と成分(b2)との混合物、およびエステル交換反応触媒の存在下、80〜220℃の温度で炭酸エステルを還流させながら反応の進行とともに生成するアルコールを留去すればよい。
【0023】
ここで使用可能なエステル交換反応触媒としては、特に限定されず、ポリカーボネートを製造する場合に用いられる公知の触媒を用いることができる。
エステル交換反応触媒の具体例としては、例えば酸化チタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタン等の炭素数4〜40のアルコキシまたはアリールオキシチタン化合物等のチタン系化合物;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレート、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシド等のアルコキシ基またはアリールオキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物等のスズ系化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩等のオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモン等のアンチモン系化合物;酢酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシドまたはアリーロキシド、ジルコニウムアセチルアセトン等のジルコニウム系化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシド等の亜鉛系化合物;
【0024】
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム等のホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水素化合物;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシド等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar−OLi、NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアリーロキシド;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル等のホウ素系化合物;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ素、ジフェニル−エチル−エトキシケイ素等のケイ素系化合物;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムフェノキシド等のゲルマニウムの化合物;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛および有機鉛のアルコキシドまたはアリールオキシド等の鉛の化合物;酢酸マンガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガン等のマンガン系化合物;トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム等の炭素数3〜30のアルコキシアルミニウム化合物等が挙げられる。
これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0025】
それらの中でも、反応性の点から、チタン系化合物、スズ系化合物、アンチモン系化合物、ジルコニウム系化合物、および亜鉛系化合物が好ましく、さらに反応性の制御がしやすいことから、チタン系化合物がより好ましい。
【0026】
本発明の組成物において、成分(A)と成分(B)の含有量は特に限定されないが、成分(A)および成分(B)の合計量100質量%中、成分(A)/成分(B)(質量比)=15〜95/85〜5であることが好ましく、20〜90/80〜10であることがより好ましく、20〜60/80〜40であることが特に好ましい。
成分(A)の含有量が15質量%以上の場合、すなわち成分(B)の含有量が85質量%以下の場合には、組成物の硬化収縮率が低く、低収縮性および可撓性が良好となる傾向にある。また、その上限値が95質量%以下の場合、すなわち成分(B)の含有量が5質量%以上の場合には、組成物が低粘度で作業性が良好となる傾向にある。
【0027】
以上が本発明の組成物の構成成分であるが、本発明の組成物には、所望する特性を損なわない範囲であれば、必要に応じて、各種モノマーや添加剤等を含有させてもよい。
例えば本発明の組成物には、硬化性や架橋密度の調整を目的として、成分(A)および成分(B)以外のエチレン性不飽和化合物(C)(以下、成分(C)という)を併用することができる。
【0028】
この成分(C)の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性トリメチロールプロパントリアクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル;
【0029】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、水添ビスフェノールAのカプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトンnモル付加物(n=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル等のジ(メタ)アクリル酸エステル;
【0030】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;
【0031】
酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリルアミド、 N,N−ジメチルアクリルアミド、 N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド;フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールおよび(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂に、(メタ)アクリル酸またはその誘導体を反応させたエポキシ(メタ)アクリレート;アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、スピログリコール化合物等の一種または二種以上の混合物からなるアルコール類の水酸基に、有機ジイソシアネート化合物を付加し、残ったイソシアネート基に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させた前記成分(A)および成分(B)以外のウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0032】
これらの中でも、得られる組成物の硬化収縮率が低く、得られる硬化物の表面硬度に優れることから、分子内に環状構造を有する化合物が好ましい。
【0033】
この分子内に環状構造を有する化合物の具体例としては、例えば、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0034】
本発明において、成分(C)の含有量は特に限定されないが、成分(A)、(B)および(C)の合計量100質量%中、0.01〜40質量%の範囲が好ましく、15〜30質量%の範囲がより好ましい。成分(C)の含有量が40質量%を超えると、組成物の硬化収縮率が高くなる傾向にある。
【0035】
本発明の組成物には、効率よく硬化させる目的で、光重合開始剤や熱重合開始剤等の重合開始剤(以下、成分(D)という)を適宜配合して用いてもよい。
その中でも、本発明の組成物は、省エネルギー・短時間硬化が可能であることから光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0036】
成分(D)の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
これらは一種単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
【0037】
本発明において、成分(D)の含有量は特に限定されないが、成分(A)、(B)および(C)の合計量100質量部に対して、硬化性の観点から0.001質量部以上であることが好ましく、深部硬化性と得られる硬化物の難黄変性の観点から10質量部以下であることが好ましい。
更に、成分(D)の含有量は、下限値が0.01質量部以上であることがより好ましい。また、その上限値は5質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
また、本発明の組成物には、必要に応じて、本発明の所望する性能を損なわない範囲で、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することもできる。
【0039】
更に、本発明の組成物には、組成物の貯蔵安定性向上や、硬化物の変色や変質を避けるために、酸化防止剤や光安定剤を添加することが好ましい。
【0040】
この具体例としては、例えば、各種市販されている、住友化学(株)製スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーBP−76、スミライザーMDP−S、スミライザーGM、スミライザーBBM−S、スミライザーWX−R、スミライザーNW、スミライザーBP−179、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、スミライザーTNP、スミライザーTPP−R、スミライザーP−16;旭電化工業(株)製アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60AO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010;チバスペシャリティーケミカルズ(株)製チヌビン770、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン622、チヌビン111、チヌビン123、チヌビン292;日立化成工業(株)製ファンクリルFA−711M、FA−712HM等が挙げられる。
【0041】
これら酸化防止剤や光安定剤の添加量は特に限定されないが、それぞれ成分(A)、(B)および(C)の合計量100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲で添加することが好ましく、0.01〜3質量部の範囲がより好ましい。
【0042】
その他、本発明の組成物には、例えば熱可塑性高分子、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等、公知の添加剤等を必要に応じて、適宜配合してもよい。
【0043】
本発明の組成物の粘度は、塗工方法や得られる硬化物層の厚みに応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
例えば、本発明の組成物をコーティング材として用いる場合、本発明の組成物の粘度は、25℃において30〜10000mPa・sの範囲であることが好ましい。このような粘度範囲であれば、基材上に硬化膜厚が3〜500μmの硬化物層を容易に形成することができる。
【0044】
本発明の組成物の塗工方法は、所望する厚さの硬化物層を形成するのに好適な方法を適宜選択すればよく、例えばスピンコート法、ロールコート法、フローコート法、フィルムキャスティング法等の公知の方法が挙げられる。
【0045】
本発明の組成物は、活性エネルギー線の照射および/または加熱により重合硬化させることができる。
その中でも、省エネルギー・短時間硬化が可能であり、基材にかかる負荷が小さく、寸法安定性に優れる物品が得られることから、本発明の組成物は、活性エネルギー線の照射により重合硬化させることが好ましい。
【0046】
ここでいう活性エネルギー線の種類としては、例えばα,βおよびγ線等、公知の活性エネルギー線が挙げられる。
本発明の組成物を硬化させる際の活性エネルギー線を照射する雰囲気下は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。
【0047】
本発明の組成物は、硬化収縮率が極めて低く、しかも優れた表面硬度と可撓性という相反する特性を有し、更に透明性にも優れる硬化物層を形成できるものである。
また、活性エネルギー線により加熱せずに短時間で硬化が可能な組成物である。
そこで、本発明の組成物は、寸法安定性が重要となる光ディスクやフレネルレンズ、プリズムシート等の光学物品用途に特に好適に用いることができる。
これら光学物品用途には、硬化収縮により基材の反りが生じないよう、本発明の組成物の中でも、特に硬化収縮率が7.5%以下の組成物を使用することが好ましい。
本発明の組成物の硬化収縮率が7.5%以下であれば、基材との密着性が良好となる傾向にあり、また組成物の硬化時の収縮による基材の反りを低減できる傾向にある。
【0048】
なお、ここでいう硬化収縮率とは、下記方法にて算出された値を意味する。
[硬化収縮率の算出法]
20℃における硬化前の液比重(X)と、硬化して得られた硬化物層の20℃における比重(X)をそれぞれ測定し、下記の数式(1)により求めた値を硬化収縮率(%)とする。
硬化収縮率(%)=〔(X−X)/X〕×100 …(1)
【0049】
次に本発明の物品について、以下詳細に説明する。
本発明の物品は、基材上に前述した組成物の硬化物層を有する物品である。
【0050】
基材の材質としては、特に限定されず、例えば、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状シクロオレフィンポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等、公知のプラスチック;ガラス;セラミックス;木材;金属;等公知のものが挙げられる。
【0051】
例えば、光学用途物品を得る場合には、環状シクロオレフィンポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の透明プラスチックや、透明ガラス等の材質の基材が好適に用いられる。
【0052】
また、該基材の厚みも、特に限定されるものではなく、所望に応じて適宜選択すればよい。
一般に、基材の反りや変形等は、基材の厚みが薄いほど、組成物の硬化収縮率の影響を受けやすい。本発明の組成物は硬化収縮率が極めて低いことから、特に基材の反りが発生しやすい厚みが薄い基材に好適に用いることができる。
そのような観点から、本発明の物品に用いる基材の厚みは、1.5mm未満であることが好ましく、1.2mm未満であることがより好ましい。
【0053】
次に本発明の物品に形成される硬化物層の厚みは、特に限定されないが、物品の表面を十分に保護できる傾向にあることから、その下限値が3μm以上であることが好ましい。また、得られる物品の反りや変形を抑制しやすい傾向にあることから、その上限値が500μm以下であることが好ましい。より好ましくは、10〜300μmの範囲である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。
【0055】
《合成例1》[ウレタンアクリレート(UA1:成分A)の製造]
(1)攪拌機、温度調節器、温度計および凝縮器を備えた内容積5リットルの三つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(住友バイエルエレタン社製デスモジュールI)1110g(5モル)、およびジブチル錫ジラウレート0.5gを仕込んでウオーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
【0056】
(2)N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシブタナミド80g(0.5モル)とポリブチレングリコール(繰返し単位n=12;平均分子量:850)1530g(1.8モル)を均一に混合溶解させた液を側管付きの滴下ロートに仕込み、この滴下ロート内の液を、上記(1)のフラスコ中の内容物を撹拌しつつ、フラスコ内温を65〜75℃に保ちながら4時間等速滴下により滴下し、同温度で2時間撹拌して反応させた。
【0057】
(3)次いで、フラスコ内容物の温度を60℃に下げた後、別の滴下ロートに仕込んだ2-ヒドロキシエチルアクリレート626g(5.4モル相当量)とハイドロキノンモノメチルエーテル0.75gと2,6−ジターシャリブチル−4−メチルフェノール0.75gを均一に混合溶解させた液をフラスコ内温を55〜65℃に保ちながら2時間等速滴下により滴下した後、フラスコ内容物の温度を75〜85℃に保って4時間反応させて、ウレタンアクリレート(UA1)を3348g得た。この反応の終点は、反応率が99%以上であることを残存イソシアネート当量の測定により判断した。
【0058】
《合成例2》[ポリカーボネートジアクリレート(PCDA1:成分B)の製造]
攪拌装置を備えた3L丸底フラスコに、旭化成ケミカルズ(株)製PCDX−01(エチレンカーボネート、1,6−ヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールを原料として、チタン系触媒を用いて合成されたポリカーボネートジオール;数平均分子量492)を738g(1.5モル)と、トリエチルアミン318.75g(3.15モル)と、塩化メチレン2.01Lとを仕込み、窒素気流下にアクリル酸クロライド285.11g(3.15モル)を内温10℃で、1時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間攪拌した後、メタノール9.61g(0.3モル)を添加した。そして、水2Lで洗浄を2回行い、次いで10質量%食塩水2.01kgで洗浄を1回行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウム100gで乾燥させ、ろ過した後、得られたろ液をシリカゲルカラムにて精製し、35℃の水浴で加熱しながらエバポレーターで減圧濃縮して、ポリカーボネートジアクリレート(PCDA1)を370g得た。
【0059】
《合成例3》[ポリカーボネートジアクリレート(PCDA2:成分B)の製造]
PCDX−01のかわりに、旭化成ケミカルズ(株)製PCDX−02(エチレンカーボネート、1,6−ヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールを原料として、チタン系触媒を用いて合成されたポリカーボネートジオール;数平均分子量299)を449g(1.5モル)を用いる以外は、合成例2と同様にして、ポリカーボネートジオールジアクリレート(PCDA2)を285g得た。
【0060】
《合成例4》[ポリカーボネートジアクリレート(PCDA3:成分C)の製造]
PCDX−01のかわりに、旭化成ケミカルズ(株)製L6001(エチレンカーボネート、1,6−ヘキサンジオールを原料として、鉛系触媒を用いて合成されたポリカーボネートジオール、数平均分子量1000)1500gを用いる以外は、合成例2と同様にして、ポリカーボネートジオールジアクリレート(PCDA3)を800g得た。
【0061】
このようにして合成例1〜4で得られたウレタンアクリレートおよびポリカーボネートジオールジアクリレートを使用して、以下実施例を行った。
【0062】
なお、実施例中の反り角とは、光ディスクの最外周における硬化物層側への半径方向の最大反り角を意味する。また、負(−)の値の場合は、硬化物層とは反対側に反った場合の最大反り角を意味する。
実施例および比較例において得られた、活性エネルギー線硬化性組成物および光ディスクについて、以下の評価を行った。
【0063】
〔評価項目および評価方法〕
1.組成物について
<粘度>
得られた組成物について、25℃における粘度をE型粘度計(東機産業(株)製、TVE−20)を用いて測定する。
<硬化収縮率>
硬化前および硬化後の比重を各々測定し、下記定義に基づいて算出した硬化収縮率に基づいて評価する。
○:7.5%以下
×:7.5%超
[硬化収縮率の算出法]
20℃における硬化前の液比重(X)と、硬化して得られた硬化物層の20℃における比重(X)をそれぞれ測定し、下記の数式(1)により求めた値を硬化収縮率(%)とする。
硬化収縮率(%)=〔(X−X)/X〕×100 …(1)
【0064】
2.硬化物層について
<表面硬度>
得られた光ディスクの硬化物層についてJIS K−5400に準拠し、鉛筆硬度を測定し、下記基準に基づいて評価する。
○:2B以上硬い
×:2Bより柔らかい
<可撓性>
得られた光ディスクから硬化物層を剥離し、それを100μ×10mm×100mmの大きさに調整し、これを試験片とする。次いで、得られた試験片について、標線間距離を50mmとする以外は、JIS K7127−1989に準拠し、23℃、50%RHの環境下において、引張破壊強さ(単位:MPa)と引張破壊伸び(単位:%)を測定し、下記基準に基づいて評価する。
・引張破壊強さ
○:20MPa以上
×:20MPa未満
・引張破壊伸び
○:5%以上
×:5%未満
<透明性>
得られた光ディスクから剥離した硬化物層について、日立製作所(株)製分光光度計U−3400を用いて、初期の波長400nmにおける光線透過率を測定し、下記基準に基づいて評価する。
○:光線透過率が80%以上
×:光線透過率が80%未満
【0065】
3.光ディスクについて
<反り角>
得られた光ディスクについて、ジャパンイーエム(株)製DLD−3000光ディスク光学機械特性測定装置を用いて、20℃、相対湿度50%RH環境下にて、初期の反り角を測定する。
次いで、得られた光ディスクを80℃、相対湿度85%RH環境下に100時間放置し、更に、20℃、相対湿度50%RH環境下に100時間放置した後、初期反り角と同様にして、再度環境試験後の反り角を測定する。
なお、初期および環境試験後の反り角については、下記基準に基づいて評価する。
○:±0.3度以内
×:±0.3度を超える
4.プリズムシートについて
<密着性>
得られたプリズムシートのレンズ部に、カミソリで基材に達する傷を2mm間隔で縦横それぞれ11本入れて、100個の升目を作り、セロハンテープ(幅25mm、ニチバン社製)をレンズ面に密着させて急激に剥がした後、剥がれたレンズ部の升目の数を数えて以下の基準に基づいて評価する。
○:剥がれた升目の数が5個未満
×:剥がれた升目の数が5個以上
<耐熱性>
5mm厚の板ガラス(30cm×30cm)上に、20cm×20cmにカットしたプリズムシートをレンズ面が該板ガラス側になるように設置し、さらにそのプリズムシートの上に、該プリズムシートと同サイズで1mm厚の板ガラスを積層する。
この状態のまま、積層したものを60℃で6時間加熱し、プリズムシートのレンズ面の外観変化を目視にて観察し、以下の基準に基づき評価する。
○:レンズ面の外観変化なし
×:レンズ面にシミ、シワ、白化等の異常が発生
【0066】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
成分(A)として合成例1で得られたUA1を50質量部、成分(B)として合成例2で得られたPCDA1を30質量部、成分(C)としてテトラヒドロフルフリルアクリレート20質量部、および成分(D)として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン3質量部を混合溶解し、組成物を得た。
得られた組成物の粘度は、25℃において2200mPa・sであり、淡黄色透明で粘稠な液体であった。
また、得られた組成物の硬化収縮率は6.0%であり、許容範囲である7.5%以下であった。
【0067】
(2)硬化物層を有する光ディスクの作製および評価
評価用光ディスク基材の作製:
帝人化成(株)製パンライトAD9000TG(ポリカーボネート樹脂)を射出成型して得た光ディスク形状を有する透明円盤状鏡面基板(直径12cm、板厚1.1mm、反り角0度)の片面に、バルザース(株)製スパッタリング装置CDI−900により、銀合金を膜厚20nmとなるようにスパッタリングし、鏡面に銀合金反射膜を有する評価用光ディスク基材(以下、基材と略記)を得た。
得られた基材の銀合金反射膜上に、上記(1)で得られた組成物を、スピンコーターを用いて平均硬化膜厚が100μmとなるように塗工した。得られた塗膜を、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製、Dバルブランプを用いて、窒素気流雰囲気下(酸素濃度500ppm)、積算光量2000mJ/cmのエネルギー量で硬化させて、硬化物層を有する光ディスクを得た。
得られた光ディスクの各種評価結果は、表1に示す。
【0068】
(3)プリズムシートの作製および評価
プリズム頂角60度の断面を有する二等辺三角形のプリズム列を、ピッチ50μmで多数連続して形成したニッケル金型上に、上記(1)で得られた組成物を適量流し込んだ。片面に易接着処理したPETフィルム(東洋紡社製:商品名A4100、厚さ188μm)を、その処理面がプリズム型側となるように、組成物を挟み込んで重ね合わせ、プリズムの稜線方向にスキージでしごいて平坦化した。
ついで、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製、Dバルブランプを用いて、PETフィルム側から、積算光量1000mJ/cmのエネルギー量でUVを照射、前記組成物を硬化させた。その後、金型から、プリズムが賦型されたPETフィルムを剥離して、プリズムシートを得た。
得られたプリズムシートの各種評価結果は、表1に示す。
【0069】
[実施例2〜4、比較例1〜3]
表1の実施例2〜4および比較例1〜3の欄に示す組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、光ディスク、およびプリズムシートを得た。
得られた光ディスクおよびプリズムシートについては、実施例1と同様に評価した結果を、表1の評価結果欄にそれぞれ示した。
【0070】
【表1】

【0071】
なお、表1中の注記は下記のことを意味する。
注1:試験片が脆すぎて、測定不可能。
注2:反り角が測定装置の測定可能範囲(±1度)を超えたため、測定不可能。
【0072】
また、表1中の略号は、以下の通りである。
UA1:合成例1で得られたウレタンアクリレート
UA−306H:ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートから合成されるウレタンアクリレート(共栄社化学(株)製)
V540:ビスコート#540(大阪有機化学工業(株)製エポキシアクリレート)
M6200:アロニクスM6200(東亞合成(株)製ポリエステルアクリレート)
PCDA1:合成例2で得られたポリカーボネートジオールジアクリレート
PCDA2:合成例3で得られたポリカーボネートジオールジアクリレート
PCDA3:合成例4で得られたポリカーボネートジオールジアクリレート
TCDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
R604:トリメチロールプロパン変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬(株)製)
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
HCPK:1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、およびポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーより選ばれるオリゴマー(A)、および数平均分子量が250〜850のポリカーボネートジオール(b1)と(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステル(b2)とを反応して得られるポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート(B)を含有する組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物の硬化物層を有する物品。

【公開番号】特開2006−70145(P2006−70145A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254565(P2004−254565)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】