説明

組成物を細胞にデリバリーするための医学用システム及び方法

本発明は、組成物を細胞にデリバリーするための医学用装置と方法を提供する。組成物は、人工ウイルスベクター、特に好ましくは人工アデノ随伴ウイルスベクターを含む。そのような組成物は、人工ウイルスベクターを血液−脳バリヤーを通してデリバリーするのに有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
この出願は、その全体を引用により本明細書に編入する、2004年6月21日出願の米国仮出願連続番号60/581,730の利益を主張する。
背景
脳への生物学上活性な因子のデリバリーは、様々な神経障害を治療する重要且つ挑戦的な側面である。いくつかの神経障害の治療のために、脳細胞が、DNA、例えば失われた遺伝子を発現する(即ち、遺伝子治療)、及び/又はRNA、例えば小干渉RNA(siRNA)を発現することを誘導する生物学上活性な因子(例えば、治療剤)を脳にデリバリーすることが望まれる。
【0002】
神経障害の治療のための遺伝子治療に対するいくつかのアプローチは、非ウイルス又はウイルスベクターの脳組織への直接の外科的デリバリーを含むが、非ウイルス及びウイルスベクターは一般に血液−脳バリヤー(BBB)を通過しないため、通常は必要とされる。これらのアプローチは、脳の標的化されたエリアへのウイルスベクターの十分な分配と拡散を達成する困難により、そして患者内で免疫反応を生じさせるウイルスベクターの可能性により、制限される。ベクターの脳組織への拡散の増強を達成するための一つのアプローチは、「対流増強デリバリー(convection enhanced delivery)」の技術を用いることであり、それにより、非ウイルス又はウイルスベクターは、低い流速にて長い期間にわたり、ベクターを組織へ分配することを増強するための圧力と流量を提供するポンプを用いて投与される。対流増強デリバリーは、齧歯類及び霊長類の脳の実質上の三次元領域への分子及びウイルス粒子のデリバリーを生じることが示されたが、ヒトの脳の三次元体積へのこのデリバリーアプローチのスケールアップは、技術的挑戦として残されたままである。特定の神経疾患(例えば、アルツハイマー病)の遺伝子又は蛋白質デリバリー又は抑圧デリバリーを用いた有効な治療は、ヒト大脳のほとんどへの生物学上活性な因子のデリバリーを、おそらくは必要とする。他の神経障害、例えば、パーキンソン病及びハンチントン病においては、疾患のプロセスにより本質的には影響される脳の解剖組織の制限された領域、例えば、黒質又は線条体があるとしても、そして疾患の主要な兆候をもたらすとしても(例えば、運動異常、硬直(rigidity)等)、患者は、疾患プロセスが追加の兆候を誘導する、脳の広い領域の処置からさらに利益をおそらくは得ることになる(例えば、機能低下及び認識不足)。
【0003】
例えば、視床下核への遺伝子治療のデリバリーのためのアデノ随伴ウイルス(AAV)の使用を含む、定位神経外科手術を用いて脳へ遺伝子又は遺伝子抑圧剤をデリバリーするためのウイルスベクターを用いたアプローチは、相当有望であることが示された。しかしながら、遺伝子又は蛋白質抑圧治療を運ぶウイルスベクターをデリバリーするための定位神経外科手術の有用性は、以下の因子の一つ又はそれ以上により制限され得る。定位神経外科手術は、いつも低レベルの外科手術の危険性を含み、例えば、血管を偶発的に穿孔することであり、脳出血及び死をもたらし得る。ウイルスベクターの脳組織の大きな領域への分散は、対流増強デリバリー及び最適のベクター、カテーテルデザイン、及び外科手術の技術を用いてさえも、何が血流、例えば分配系を用いて達成され得るかに関して、おそらくは制限される。治療用の十分な量のウイルス粒子(例えば、キャプシッドプラスDNA有効搭載量)の製造は、ありそうであるが、DNAのみの生産に比較してコストがかかる。ウイルス粒子(即ち、キャプシッド蛋白質)は免疫原性であるかもしれず、感作された個体において逆の作用を引き起こす。脳に投与されたときのいくつかのウイルス(例えば、AAV)に対しての免疫応答は最小らしいが、繰り返しの治療投与に特別な有力な限界を残す。
【0004】
単なる皮下注射よりも非侵入性の経路により生物学上活性な因子を投与することは、有利である。このアプローチにより、生物学上活性な因子はBBBを通して内生BBB輸送系により脳に対して生物学上活性な因子を標的化することにより、デリバリーすることができる。脳中のDNA又はRNAの発現は、血液に注射された生物学上活性な因子がBBB、例えば受容体媒介性トランスサイトーシス(RMA)によってのみならず、脳細胞膜(BCM)、例えば、受容体媒介性エンドサイトーシス(RME)を通して脳中の標的細胞に輸送されることを必要とする。さらに、内生BBB輸送系を、脳に対して非侵入性に生物学上活性な因子を標的化するために用いることは、血流中で安定な生物学上活性な因子の適切な製剤の開発も必要とする。
【0005】
プラスミドDNA又はアンチセンスRNAを含む組成物を用いて、血液−脳バリヤーを通って脳細胞へ、全霊長類の脳に遺伝子治療をデリバリーするための有効な方法は、最近、米国特許番号6,372,250(Pardridge)により開示された。プラスミドDNAを全霊長類の脳にデリバリーするためのこの方法の報告された能力は、印象的な技術的ブレイクスルーからなる。しかしながら、開示された方法の治療用途は本明細書において以下に示す因子の一つ又はそれより多くにより制限されるかもしれない。プラスミド又はDNAからの遺伝子発現は、一般に一時的である(例えば、日又は週の期間に制限される)。開示された組成物の皮下デリバリーは、全てのからだの器官の意図されない処置をもたらし得るので、副作用をもたらす可能性がある。最後に、皮下デリバリーは、脳に意図された用量がからだの他の部分へデリバリーされるために、用量の損失をもたらし得る。
【0006】
即ち、生物学上活性な因子を脳へデリバリーするための新規な組成物及び方法が必要とされる。
発明の概要
一つの側面において、本発明は、血液−脳バリヤーを通して生物学上活性な因子をコードするDNAをデリバリーするための医学的システムを提供する。
【0007】
一つの態様において、上記システムは、患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテル;及びカテーテルへ、生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む組成物を輸送する手段;及び血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分を含む。
【0008】
別の態様において、上記システムは、患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテル;及びカテーテルへ受容体特異的リポソームを含む組成物をデリバリーするための手段を含むが、受容体特異的リポソームは、外部表面及び内部区画を有し、リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤を含み、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっている。
【0009】
別の側面において、本発明は、脳中での発現のための血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための方法を提供する。当該方法は、受容体特異リポソームであって、リポソームは外部表面及び内部区画を有し、リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているものを含む組成物を患者に投与することを含む。
【0010】
別の側面において、本発明は、DNAを細胞にデリバリーするための方法を提供する。当該方法は、受容体特異的ナノコンテナーを含む組成物であって、受容体特異的ナノコンテナーは外部表面及び内部区画を有し、ナノコンテナーの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;細胞上に位置する受容体を標的とする一つ又はそれより多い受容体特異的標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっている、組成物を患者に投与することを含む。
【0011】
別の側面において、本発明は、脳中での発現のための血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための方法を提供する。当該方法は、生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;及び血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分を含む組成物を患者に投与することを含む。
【0012】
別の側面において、本発明は、病原性蛋白質により引き起こされる神経変性障害を治療する方法を提供する。
一つの態様において、上記方法は、患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;及び血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分を含む組成物をカテーテルにデリバリーすることを含む。
【0013】
別の態様において、上記方法は、患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして受容体特異リポソーム及び受容体特異リポソームのための薬学上受容可能な担体を含む組成物をカテーテルにデリバリーすることを含むが、但し、受容体特異的リポソームは外部表面及び内部区画を有し、リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているものを含む。
【0014】
別の側面において、本発明は、蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患を治療する方法を提供する。
一つの態様において、上記方法は、患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイウス(AAV)ベクター、及び血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分を含む組成物をカテーテルにデリバリーすることを含む。
【0015】
別の態様において、上記方法は、患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして受容体特異的リポソーム及び受容体特異リポソームのための薬学上受容可能な担体を含む組成物をカテーテルにデリバリーすることを含むが、但し、受容体特異的リポソームは外部表面及び内部区画を有し、リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているものを含む。
【0016】
別の側面において、本発明は、脳中での発現のための血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための組成物を提供する。当該組成物は、受容体特異リポソームであって、外部表面及び内部区画を有するリポソームであり、但し、リポソームの内部区画内に人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが位置し;AAVベクターは、生物学上活性な因子をコードし、一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているものを含む。
【0017】
別の側面において、本発明は、DNAを細胞にデリバリーするための組成物を提供する。当該組成物は、受容体特異的ナノコンテナーであって、但し、受容体特異的ナノコンテナーは外部表面及び内部区画を有し、ナノコンテナーの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、AAVベクターは生物学上活性な因子をコードするDNAを含み;細胞上に位置する受容体を標的とする一つ又はそれより多い受容体特異的標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているコンジュゲーション剤を含む。
【0018】
別の側面において、本発明は、脳中での発現のための血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための組成物を提供する。当該組成物は、生物学上活性な因子をコードする人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;及び血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分を含む。
【0019】
別の側面において、本発明は、生物学上活性な因子をコードする人工AAVベクター;及びそのようなベクターを作成して使用するための方法を提供する。
一つの態様において、本発明は、5プライムから3プライムの方向に向かって、5プライムAAV−ITR;生物学上活性な因子をコードする単鎖DNA;内部AAV−ITR;生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAの逆相補体;及び3プライムAAV−ITRを含む人工AAVベクターを提供する。そのようなベクターを作成する方法も提供される。
【0020】
別の側面において、本発明は、生物学上活性な因子をコードする直鎖状二重鎖DNAのデリバリーのための人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、各鎖の5プライムエンド及び3プライムエンドにAAV−ITRを有する直鎖状DNAを含む人工AAVベクターを提供する。
【0021】
本発明は、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターの対流増強デリバリー、定位神経外科手術デリバリー、及び/又はプラスミドDNA又はRNAを有する組成物の血液−脳バリヤーを通した皮下デリバリーを含む、生物学上活性な因子のデリバリーのための他の方法を超えた利点を提供することができる。
【0022】
遺伝子又は遺伝子抑圧因子を患者の脳へデリバリーするための人工AAVベクターの使用は、プラスミドDNAをデリバリーすること、又は実際のAAVウイルス粒子をデリバリーすることを超えた多数の利点を有し得る。プラスミドDNAよりも、AAVベクターのDNAを脳へデリバリーする一つの可能な利点は、霊長類の脳内でのAAVによりデリバリーされた遺伝子構築物の発現が少なくとも3から4年は継続することが知られていることであり、一方、プラスミドからの遺伝子構築物の発現は一時的である。AAVウイルス粒子のデリバリーを超えた合成AAVベクターのDNAをデリバリーする利点は、いくつかあり得る。第1に、まさにDNAのデリバリーはAAVウイルスキャプシッドの患者脳へのデリバリーを回避できる。AAVウイルスキャプシッド蛋白質が免疫応答をおそらくは誘導するから、ウイルス粒子をデリバリーする必要が無しで済むということが、治療に対する逆免疫反応の危険のほとんどを回避することができる。さらに、DNAのデリバリーは、AAVキャプシッドを作成してDNAをウイルスキャプシッドにパッケージするための操作されて且つ培養された細胞の使用を必要とする難しい製造工程である、完全なAAV粒子を生産する必要性を回避できる。最後に、AAV粒子よりもDNAをデリバリーすることは、約4,700塩基のDNAという、AAVキャプシッド内にパッケージできるDNAの長さに対する自然の制限を回避できる。このサイズの制限は遺伝子抑圧のための構築物のデリバリーに関する問題ではないが(例えば、小干渉RNAをコードするDNA)、欠落した遺伝子の配列が4,700塩基を超えるなら、それは欠落した遺伝子のデリバリーの制限になり得て、AAVの遺伝子治療のためのベクターとしての使用に関する制限として注目された。
定義
「アルファ−シヌクレイン、BACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/又はアトロピン−1蛋白質」は、それぞれ、アルファ−シヌクレイン(パーキンソン病)、ベータ部位APP−分割酵素(BACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む))(アルツハイマー病)、ハンチンチン(ハンチントン病)、アタキシン−1(脊髄小脳変形症1型)、アタキシン−3(脊髄小脳変形症3型)、及び/又は歯状核赤核(DRPLA)遺伝子により発現され及び/又はコードされるアミノ酸配列を含む、蛋白質又はその変異蛋白質誘導体を意味する。
【0023】
本明細書において使用される「細胞」は、その生物学上の意味にて使用され、そして多細胞生物全体を意味しない。細胞は生物中に存在してよく、ヒトであってよいが、好ましくは哺乳類起源、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、サル(ape)、モンキー、ブタ、イヌ、ネコ、等が好ましい。しかしながら、小干渉RNAを生成するためのいくつかの工程は、原核生物(例えば、細菌細胞)又は真核生物(例えば、哺乳類細胞)の使用を必要とするかもしれず、それにより、用語「細胞」の範囲にも含まれる。
【0024】
「相補性」は、一つ又はそれより多くの核酸(DNA又はRNA)を含む分子がワトソンクリック対又は他の非伝統的種類の何れかにより一つ又はそれより多くの核酸を含む別の分子と水素結合を形成できることを意味する。
【0025】
用語「均等な」DNAは、異なる生物(例えば、ヒト、齧歯類、霊長類、ウサギ、ブタ及び微生物)中の同じ蛋白質をコードするDNAに対して相同性(一部又は全体)を有する天然に生じるDNAを含むことを意味する。均等なDNA配列は、例えば、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域、イントロン、イントロン−エクソンジャンクション、小干渉RNA標的化部位及び等などの領域も含むことができ、任意に、感染性ウイルス、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)のDNAに取り込まれる。
【0026】
用語「機能上均等な」は、参照配列又は蛋白質に機能上類似あらゆる誘導体を意味する。特に、用語「機能上均等な」は、生物学上の機能には顕著な逆作用なしにヌクレオチド塩基が付加されるか、欠失するか、又は置換された誘導体を含む。
【0027】
本明細書において使用される用語「生物学上活性な」は、「因子(agent)」又は「siRNA」と共に使用され、因子又はsiRNAが例えば細胞の代謝、細胞の構造、細胞の機能を修飾することを含むあらゆる様式にて細胞を修飾し、及び/又は、因子又はsiRNAを含む細胞が検出されることを可能にさせ得ることを意味する。生物学上活性な因子及び/又はsiRNAの例は、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及びその混合物を含む。生物学上活性な因子又はsiRNAは、治療用(即ち、疾患を治療又は予防できる)又は非治療用(即ち、疾患の治療又は予防には向けられない)であってよい。非治療用の生物学上活性な化合物は、例えば、特定の細胞の存在を検出し、細胞を識別し、そして/又は標的グループが特定の組織を標的とするように機能するか否かを検出するために使用することができるマーカーを含む、検出用因子又は診断用因子を含む。本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」は、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドの何れかのあらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態を意味し、そして二重鎖及び単鎖のDNA及びRNA、その混合物を含む。ポリヌクレオチドは、例えば、コーディング配列及びノンコーディング配列、例えば、制御配列を含む異なる機能を有するヌクレオチド配列を含んでよい。コーディング配列、ノンコーディング配列、及び制御配列は、以下に定義される。ポリヌクレオチドは、天然源から直接得ることができ、あるいは、組換え、酵素的又は化学的技術の助けを借りて製造することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、ベクターの一部又は断片であり得る。
【0028】
「コーディング配列」又は「コーディング領域」は、ポリペプチドをコードし、そして適切なプロモーターの下に配置されたときに、コードされたポリペプチドを発現するポリヌクレオチドである。コーディング領域の境界は、一般には、その5−プライムエンドの翻訳開始コドンと3プライムエンドの翻訳停止コドンにより決定される。制御配列は、作動可能なように連結されたコーディング領域の発現を制御するヌクレオチド配列である。制御配列の非現定例は、プロモーター、転写開始部位、翻訳開始部位、翻訳停止部位、転写終結因子(例えば、ポリアデニル化シグナルを含む)、及び介在配列(イントロン)を含む。「作動可能に連結された(operably linked)」は、そう記載された成分がそれらの意図された様式にて機能するようにそれらを許容する関係にある並列を意味する。制御配列は、コーディング領域の発現が制御配列とに適合可能な条件下で達成されるような様式にて連結される(joined)場合に、コーディング配列に作動可能に連結される。用語「遺伝子」は、コーディング配列又はコーディング領域を含むポリヌクレオチドを含むことを意味する。
【0029】
用語「ベクター」は、当業界で一般に知られており、プラスミドDNA、ファージDNA、ウイルスDNA、等を含み、本発明のDNAが挿入され得て、そしてRNAが転写され得る、DNA媒体として機能することができる。用語「ベクター」は、所望の核酸をデリバリーするのに使用されるこれらの核酸及び/又はウイルスに基づく技術の何れかを意味する。莫大な種類のベクターが存在して、当業界で公知である。
【0030】
用語「発現」は、遺伝子がRNAに転写されるプロセスを規定する;RNAはさらに成熟小干渉RNA又は細胞が蛋白質を生成し得るmRNAにさらに加工されてよい。
用語「発現ベクター」は、上で記載されたようなベクター又は媒体を規定するが、細胞への形質転換後に挿入された配列の発現を可能にするようにデザインされる。クローン化された遺伝子(挿入された配列)は、通常、プロモーターのようなコントロール要素配列のコントロール下に配置される。そのようなコントロール配列下のクローン化された遺伝子の配置は、しばしば、コントロール要素又は配列に作動可能に連結されたと称される。
【0031】
「プロモーター」は、細胞内でRNAポリメラーゼを直接又は間接に結合することができて且つ下流の(3−プライム方向)コーディング配列の転写を開始することができるDNA制御領域を意味する。本発明の目的のためには、プロモーターは、その3プライム末端において転写開始部位により結合されて、上流に伸びることにより(5−プライム方向)、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルにて転写を開始するのに必要な塩基又は要素の最小の数を含む。プロモーターは、転写開始部位(S1ヌクレアーゼにより都合よく規定される)並びにRNAポリメラーゼの結合に必須の蛋白質結合ドメイン(コンセンサス配列)において見いだされる。真核生物のプロモーターは、しばしば、いつもではないが、「TATA」ボックス及び「CAAT」ボックスを含む。原核生物のプロモーターは、−10及び−35コンセンサス配列を含み、転写を開始するために機能する。
【0032】
「相同性」は、2つ又はそれより多い核酸分子のヌクレオチド配列が部分的又は全体に同一であることを意味する。
「高度に保存された配列領域」は、標的遺伝子内の一つ又はそれより多くの領域のヌクレオチド配列が1つの世代が他方とは顕著に異ならないか又は一つの生物システムが他方とは顕著に異ならないことを意味する。
【0033】
「阻害する」又は「阻害的(inhibitory)」は、標的遺伝子の活性又は標的遺伝子をコードするmRNAs又は均等なRNAsのレベルが用意された小干渉RNAの不在下で観察されるのよりも低く低下することを意味する。好ましくは、阻害は、小干渉RNAの不在下よりも少なくとも10%未満、25%未満、50%未満、75%未満、85%未満、又は95%未満である。
【0034】
「阻害された発現」又は「蛋白質の抑圧」は、アルファ−シヌクレイン、BACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/又はアトロピン−1蛋白質のmRNAレベルの低下を意味し、即ち、各蛋白質のレベルの疾患又は症状の兆候のある程度の回復までの低下を意味する。
【0035】
「RNA」は、リン酸−リボース(糖)バックボーンによりつながれたリボヌクレオチドからなる分子であるリボ核酸を意味する。「リボヌクレオチド」は、グアニン、シトシン、ウラシル又はアデニン又はベータ−D−リボ−フラノースモイエティの2’位においてヒドロキシル基を有するいくつかのヌクレオチドを意味する。当業界では知られているとおり、遺伝子コードは、チミジンをDNA塩基中の塩基として用い、そしてRNA中ではウラシルを用いる。当業者は、書かれたDNA配列を書かれたRNA配列に変換するために、又はその逆において、書かれた核酸配列中においてチミジンをウラシルに如何に置換するかを知っている。
【0036】
「患者」は生物を意味し、外植された(explanted)細胞のドナー又はレシピエント又は細胞自身である。「患者」は、発明の核酸分子が投与され得る生物も意味する。好ましくは、患者は、哺乳類又は哺乳類細胞、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、サル、モンキー、ブタ、イヌ、ネコ、等であるか、又は移植のために使用されるこれら動物の細胞である。より好ましくは、患者はヒト又はヒト細胞である。
【0037】
用語「シヌクレイン」は、アルファ−シヌクレイン(特に、ヒト又はマウス)又はベータ−シヌクレイン(特に、ヒト又はマウス)を意味してよい。ヒトアルファ−シヌクレインをコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号AF163864にて利用可能である。ヒトアルファ−シヌクレイン配列の2つのバリアントが、受け入れ番号NM000345及び受け入れ番号NM_007308にて利用可能である。マウスアルファ−シヌクレインは受け入れ番号AF163865にて利用可能である。
【0038】
用語「BACE1」は、ベータ部位アミロイド前駆体蛋白質分割酵素タイプ1(特に、人又はマウス)を意味してよい。BACE1のいくつかのバリアントは配列決定され、バリアントA,B,C,及びDを含む。いくつかの科学文献においては、BACE1はASP2及びメンパシン2(Mempasin2)としても知られる。ヒトBACE1、及びそれに近縁のバリアントをコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号NM_138971、受け入れ番号NM_138972、受け入れ番号NM_138973、及び受け入れ番号NM_012104にて利用可能である。マウス相同体の配列は受け入れ番号NM_011792にて利用可能である。
【0039】
用語「ハンチンチン」はハンチントン病遺伝子(IT−15)(特に、ヒト又はマウス)によりコードされる蛋白質産物を意味してよい。ヒトIT−15をコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号AH003045にて利用可能である。マウスの配列は受け入れ番号U24233にて利用可能である。
【0040】
用語「アタキシン−1」は、脊髄小脳変形症1型遺伝子(特に、ヒト又はマウス)によりコードされる蛋白質産物を意味してよい。ヒトSCA−1をコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号NM_000332にて利用可能である。マウスのsca1は受け入れ番号NM_009124にて利用可能である。
【0041】
用語「アタキシン−3」は、脊髄小脳変形症3型遺伝子(特に、ヒト又はマウス)によりコードされる蛋白質産物を意味してよい。ヒトSCA−3をコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号NM_004993(スプライスバリアント1)及び受け入れ番号NM_030660(スプライスバリアント2)にて利用可能である。(マウスの相同体の配列はまだ利用可能ではない。)
用語「アトロピン−1」は、歯状核赤核(DRPLA)遺伝子(特に、ヒト又はマウス)によりコードされる蛋白質産物を意味してよい。ヒトDRPLAをコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号XM_032588にて利用可能である。マウスの配列は受け入れ番号XM_132846にて利用可能である。
【0042】
用語「代謝の先天的エラー」は、からだが通常は食物をエネルギーに変換(即ち、食物を代謝)できない稀な遺伝的障害を意味する。当該障害は、通常、食物の成分を分解する生化学経路に関与する酵素の欠陥により引き起こされる。
【0043】
用語「リソソーム蓄積症」(LSD)は、リソソームの酵素の何れかの機能発現の欠陥により特徴付けされる遺伝的疾患を意味する。
用語「リソソーム」は、多くの物質を分解することができる多数の異なる消化酵素を含む真核生物の膜結合器官を意味する。
【0044】
用語「修飾」は、参照配列又は蛋白質に実質上類似の誘導体を含む。
「小干渉RNA」は、特定の遺伝子標的に対して基質結合領域中に相補性を有する分子であって、標的RNAを分割するように宿主細胞中で特異的に酵素をガイドするように作用する分子である。即ち、その配列の特異性及びそのRNA標的に対する相同性のために、小干渉RNAはRNA鎖の分割を誘導することができて、それにより標的RNA分子を不活性化することができるが、なぜならばもはや転写されないからである。これらの相補領域は、小干渉RNAの標的RNAへの十分なハイブリダイゼーションを可能にさせ、即ち分割を許容する。100%の相補性が生物活性にはしばしば必要であり、よって好まれるが、90%ほどの相補性も、この発明においては有用である。本出願において記載された特定の小干渉RNAは限定することを意味せず、そして当業者は、この発明の小干渉RNAにおいて重要な全ては、一つ又はそれより多い標的核酸領域に相補な特定の基質結合部位を有することであることを認識する。対立遺伝子間を選択する場合に、長さの選択ももっとも重要な因子であるが、なぜならば、パーセント相補性及び対立遺伝子の相違を識別する能力に関与する他の因子だからである。
【0045】
小干渉RNAsは、標的RNA(通常はメッセンジャーRNA)の一部に相補性を有する(即ち、塩基対を形成できる)二重鎖RNA因子である。通常、そのような相補性は、100%であるが、所望ならそれより低く、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であり得る。例えば、21塩基のうちの19塩基が塩基対合してよい。いくつかの例においては、様々な対立遺伝子バリアント間の選択が望まれる場合、標的遺伝子に対する100%相補性が必要とされ、それにより、他の対立遺伝子配列から標的配列を有効に識別される。対立遺伝子間で選択される場合、長さの選択も重要な因子であるが、なぜならばそれはパーセント相補性及び対立遺伝子の相違を識別する能力に関係する他の因子だからである。
【0046】
小核酸RNA配列は、相補塩基対相互作用を通して小干渉RNAと標的RNAを結び合わせるのに十分な長さである必要がある。発明の小干渉RNAは、長さを変えてよい。小干渉RNAの長さは、好ましくは、10ヌクレオチドより長いか又は等しく、標的RNAと安定に相互作用するのに十分な長さであり;特定すれば15−30ヌクレオチド;より特定すれば15から30ヌクレオチドの間のあらゆる整数、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、及び30である。「十分な長さ」は、予測された条件下で意図された機能を提供するのに十分長い長さである15ヌクレオチドより長いか又は等しいオリゴヌクレオチドを意味する。「安定に相互作用する」は、小干渉RNAと標的核酸との相互作用を意味する(例えば、生理条件下で標的内の相補ヌクレオチドと水素結合を形成することにより)。
【0047】
5プライムから3プライム方向へのDNA鎖中の「逆相補性」は、ワトソン−クリック又は他の塩基対ルールに従い対応する相補塩基と逆の配置にあるDNA鎖である。
特定の態様の詳細な説明
本発明は、DNAを標的部位(例えば、細胞へ又は血液−脳バリヤーを通して)へデリバリーするための医学用のシステムと方法を提供する。当該細胞はインビボ又はエクスビボであってよい。本明細書にて使用される用語「エクスビボ」は、被験者の体から除去された、例えば、単離された細胞を意味する。エクスビボ細胞は、例えば、初代細胞(例えば、被験者から最近単離され且つ組織培養培地中で限定された成長又は保持が可能な細胞)、及び培養細胞(例えば、組織培養培地中で継続した成長又は保持が可能な細胞)を含む。本明細書にて使用される用語「インビボ」は、被験者の体の中の細胞を意味する。
【0048】
医学用システムは、患者の脳を供給する血管内に位置するその遠位エンドを有する神経血管カテーテルを含む。任意に、上記システムは、上記組成物を患者の血流にデリバリーための移植可能なポンプをさらに含む。医学用システムは、本明細書にて記載される組成物をカテーテルにデリバリーするための手段をさらに含む。そのような組成物を細胞へ又は血液−脳バリヤーを通して脳内での発現のためにデリバリーする方法も、本明細書にて記載される。
【0049】
簡単に言えば、本発明において開示されて使用された組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(単鎖また二重鎖ベクター;好ましくは単鎖ベクター)であって、生物学上活性な因子をコードするDNA;及び血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーする成分(例えば、本明細書にて記載された受容体−特異的リポソーム)を含む。いくつかの態様において、人工AAVベクターは、5プライムから3プライム方向に、5プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR);生物学上活性な因子をコードするDNA;及び3プライムAAV−ITRを含む。別の態様において、人工AAVベクターは、5プライムから3プライム方向に、5プライムAAV−ITR;内部AAV−ITR;生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAの逆相補鎖;及び3プライムAAV−ITRを含む。また別の態様において、人工AAVベクターは、各鎖の5プライム及び3プライムエンドにAAV−ITRを有する直鎖状二重鎖DNAを含む。好ましくは、人工AAVベクターは、キャプシッドをコードするためのコーディング配列を含まず、即ち、好ましいベクターはウイルスキャプシッド構造内に封入されない。人工AAVベクターを作成する方法も開示される。
【0050】
DNAが小干渉RNAをコードする態様に関して、上記組成物は、とりわけ、病原性蛋白質により誘導される様々な神経変性障害を治療するのに有用であり得る。DNAが蛋白質をコードする態様に関して、上記組成物は、とりわけ、蛋白質の不在により誘導される様々な神経変性障害を治療するのに有用であり得る。
【0051】
いくつかの態様において、上記組成物は、受容体特異的リポソーム及び受容体特異的リポソームに関して薬学上受容可能な担体を含み、受容可能特異的リポソームは:外部表面と内部区画を有するリポソーム;リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜を標的とする因子;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤を含み、但し、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面に接続されている。
【0052】
別の態様において、上記組成物は、受容体特異的ナノコンテナー(即ち、数ナノメートルまたはそれ未満の桁で少なくとも一つの寸法を有するコンテナー)及び受容体特異的ナノコンテナーのための薬学上受容可能な担体を含み、但し、受容可能特異的ナノコンテナーは、外部表面と内部区画を有するナノコンテナー;ナノコンテナーの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;細胞上に位置する受容体を標的とする一つ又はそれより多い受容体特異的標的因子;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤を含み、但し、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりナノコンテナーの外部表面に接続されている。
医学用装置
本発明は、患者の血流に組成物をデリバリーするための神経血管カテーテル及び任意の移植可能なポンプを含む医学用装置を提供する。神経血管カテーテルの遠位のデリバリーエンドは、脳を供給する血管の中に配置される。急な使用のためには、神経血管カテーテルの近位エンドを導入点(例えば、大腿動脈)にて患者のからだの外に残し、そして適切な液体溶液中の組成物を患者の脳にデリバリーするように外科医により使用される。この場合のデリバリーは急であるが、それにもかかわらず、本明細書の以下において記載されるとおり、治療は長く続くかもしれない。
【0053】
あるいは、神経血管カテーテルの近位エンドは任意の移植可能なポンプに取り付けることができ、そしてポンプとカテーテルの両方を長期にわたりからだに移植する。後者の場合、外科医が経皮により組成物の丸剤注射を患者の脳を供給する血管へのカテーテルを通して繰り返すことにより、ポンプは「カテーテルアクセス点」を提供する。ポンプは、ヘパリン化塩溶液を供給するか、組織プラスミノーゲン活性化因子(pTA)、又は丸剤注射のためのカテーテルの使用の間において神経血管カテーテルを通して低速で連続してポンプ注入される類似の因子を希釈するために使用される液体リザーバーを提供する。目的は、カテーテルの遠位エンドに血液クロットが形成されてカテーテルの内腔を塞いで患者に塞栓症ストロークの危険をポーズする(posing)ことを阻止するためである。
病原性蛋白質により誘導される神経変性障害
いくつかの神経変性障害、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳変形症1型及び3型、及び歯状核赤核(DRPLA)に関して、疾患の全体の病理の進行に関与する蛋白質は同定されている。これらの神経変性疾患に関して現在治療法はない。これらの疾患は段々と衰弱し、最後には死に至る。
【0054】
これらの神経変性疾患(特に、アルツハイマー病及びパーキンソン病)のさらなる問題は、それらの罹患率が増加し続け、即ち、重大な好適な健康問題を巻き起こしている。最近の研究は、それぞれ、これらの疾患の各々の病理における主要な因子として、アルファ−シヌクレイン(パーキンソン病)、ベータ−アミロイド分割酵素1(BACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む))(アルツハイマー病)、ハンチンチン(ハンチントン病)、及びアタキシン−1(脊髄小脳変形症1型)に焦点が注がれている。
【0055】
パーキンソン病及びアルツハイマー病の神経変性の進行は、シナプスの損傷及びアストログリオーシスに付随する選択された神経細胞集団の広範囲の損失により特徴付けされる。アルツハイマー病の病理上の顕著な特徴は、アミロイドプラークの形成、神経繊維のもつれ(tangles)及び神経の糸(neurophil thread)の形成を含む;パーキンソン病の病理上顕著な特徴は、レビー小体と呼ばれる神経内含有物の形成及び黒質中のドーパミン作用性ニューロンの損失を含む。細胞の機能不全と死を誘発する機構は不明であるが、一般的見解は、神経の変性が特定の神経細胞蛋白質、アルファ−シヌクレイン(パーキンソン病)及びアミロイド前駆体蛋白質(APP)(アルツハイマー病−BACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む)によりベータ−アミロイドにプロセシングされる)の蓄積に続く毒性作用によりもたらされるということである。
【0056】
アルファ−シヌクレインはパーキンソン病において影響を及ぼすが、なぜならばそれがレビ小体において豊富に見いだされ、トランスジェニックマウス内でのその過剰発現がパーキンソン病様の病理を導き、そしてこの分子内の変異が家族性パーキンソン病に関連するからである。アルファシヌクレインはベータ及びガンマシヌクレインを含む大きなファミリーの分子に属し、140アミノ酸の非アミロイドシナプス蛋白質であり、アミロイドプラークに見いだされる35アミノ酸の非アミロイド成分蛋白質の前駆体である。
【0057】
アルツハイマー病は、知力の低下、記憶喪失、錯乱及び失見当により特徴付けされる脳の進行性の変性障害である。この病理に寄与する細胞機構のうち2種類の原繊維(fibrillar)蛋白質が脳内に沈着する:ポリマー化されたtau蛋白質から構成される細胞内神経原繊維のもつれ、及び主としてベータアミロイドから構成される豊富な細胞外フィブリル(fibrils)。ベータアミロイドはAbetaとしても知られており、ベータ及びガンマのセクレターゼ分割部位においてアミロイド前駆体蛋白質(APP)の蛋白質分解プロセシングにより生じて、2つの主要な形態のAbeta(Abeta40及びAbeta42)の細胞障害性及びアミロイド形成能力を生じさせる。即ち、Abetaのプラーク生産形態のアミロイドへのプロセシングを阻止することは、この疾患を抑制するか又は阻止する臨床上の標的であるBACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む)をつくる疾患の形成及び進行に決定的に影響するかもしれない。類似の報告は、プレセニリンが異常なプロセシングを再度指図する(redirecting)候補の標的であることを示唆する。
【0058】
ハンチントン病は、致死性で遺伝性の神経変性障害であり、不随意の「衝撃性」動作、鬱病(depression)、及び痴呆により特徴付けられる。原因は、DNA中のCAGトリヌクレオチドの広範囲に長いシリーズからなる単一の遺伝子内の変異であると確認された。このCAGリピートは、遺伝子が生産する蛋白質をコードする遺伝子の領域内にある。即ち、結果のハンチンチン蛋白質も、「CAG」がコードするアミノ酸グルタミンから構成される広く長い領域を含む。簡単に言うと、ハンチントン病の原因としてこの変異が正確に位置決めされた(pinpointed)後には、他の遺伝子内での類似のCAGリピートの拡張が探索されて、多数の他の致死性で遺伝性の神経変性疾患の原因であることがわかった。これらのいわば「ポリグルタミン」疾患のリストは、今、少なくとも11より多くのものを含み、脊髄小脳変形症1型、2型、及び3型、球脊髄性筋萎縮症(SBMA又はケネディー病)及び歯状核赤核(DRPLA)を含む。拡張されたCAGリピートを含む特定の遺伝子は各疾患において異なるが、それが、各疾患を引き起こす脳中の拡張されたポリグルタミン蛋白質の生産物である。兆候は、一般に、若いころから(in early)中年期の成人までに出現し、そのごの10年から15年後に死ぬ。これらの致死性の疾患の有効な治療法は現在存在しない。
【0059】
ニューロン中の異常な蛋白質の生産をシャットオフすることがポリグルタミン疾患において治療法となることを示唆する相当な証拠が存在する。これらの疾患の原因は、変異蛋白質による新規な機能の獲得であることが知られており、当該蛋白質のオリジナルの機能の損失はない。脊髄小脳変形症1型(SCA1)に関するヒトの拡張されたトランス遺伝子を有するマウスは、若い成人において重度の萎縮症になる(Clark,H.,et al.,Journal of Neuroscience 17:7385−7395(1997))が、対応するマウスの遺伝子がノックアウトされたマウスは萎縮症にならず、そして他の主要な異常性を示さない(Matilla,A.,et al.,Journal of Neuroscience 18:5508−5516(1998))。異常なアタキシン1蛋白質が生成されるが細胞核に入れないように遺伝子操作されたSCA1のトランスジェニックマウスは、萎縮症を発症しない(Klement,I.,et al.,Cell 95:41−53(1998))。最後に、テトラサイクリンを投与することにより(通常は、マウス及びヒトにおいて、当該抗生物質の投与は上記疾患に効果がない)変異体ヒトトランス遺伝子が人工的に「ターンオフ」し得るように操作されたハンチントン病のトランスジェニックマウスモデルが作成された。これらのマウスが兆候を発症し始めた後で、テトラサイクリンの長期の投与による異常性蛋白質生産のシャットオフ生産がそれらの挙動において改善を導く(Yamamoto,A.,et al.,Cell 101:57−66(2000))。これは、異常なハンチンチン蛋白質のヒトにおける発現の低下がハンチントン病の新たに診断された患者における進行を阻止したかもしれないというのみならず、その兆候を既に罹患している患者の生活の質を改善するかもしれないことを示唆する。
【0060】
様々なグループが、siRNAsの有効性を最近研究している。Calpenら(Human Molecular Genetics,11(2):175−184(2002))は、別のCAGリピートを含むヒトアンドロジェン受容体遺伝子のmRNA転写物の細胞発現を阻害するそれらの能力に関して様々な異なる二重鎖RNAsを評定した。かれらの仕事は、CAGリピートに対してフランキング配列が二重鎖RNAs中に存在したときにのみ、CAGリピートを含む二重鎖RNAsにより遺伝子特異的阻害が起こったことを見いだした。かれらは、拡張されたポリグルタミン領域による蛋白質の発現により誘導されたカスパーゼ−3活性化を、構築された二重鎖RNAsが救済できたことを示すこともできた。Xia,Maoら(Nature Biotechnology,20:1006−1010(2002))は、緑色蛍光蛋白質をコードするmRNAを標的とするsiRNAsを発現する構築された組換えアデノウイルスを用いて、融合されたポリグルタミン蛍光蛋白質を発現する、工作された神経PC12クローン細胞のポリグルタミン(CAG)発現の阻害を証明した。
【0061】
特定の蛋白質を生産するmRNA標的に対して相補な小干渉RNAのデザインと使用が、特定のmRNAsの翻訳を阻止するための分子生物学者により採用される最近の手段である。翻訳の前に蛋白質の発現を干渉するための分子生物学者により用いられる他の手段は、アルツハイマー病(例えば、PCT国際公開番号WO01/16312 A2(McSwiggen et al.)を参照)及びパーキンソン病(例えば、PCT国際公開番号WO99/50300A1(Trojanowski et al.)及びWO01/60794A2(Eliezer)を参照)に関する治療標的に対するリボザイムを用いたmRNA配列の分割を含む。PCT国際公開番号WO2004/047872 A2(Kaemmerer)及び米国特許出願番号2004/0220132 A1(Kaemmerer)は、カテーテルの放出部分が脳の予め決定された注入部位に隣接するように留まるように外科手術によりカテーテルを移植し、そして少なくとも一つの神経変性蛋白質の生産を阻害する少なくとも一つの物質を予め決定された用量にてカテーテルの放出部分を通して放出する工程を含む、神経変性障害を治療するための、装置、小干渉RNA、及び方法を開示する。PCT国際公開番号WO2004/047872 A2(Kaemmerer)及び米国特許出願番号2004/0220132 A1(Kaemmerer)は、さらに、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳変形症1型及び3型、及び歯状核赤核のような神経変性障害を治療するための、小干渉RNAベクター、及び方法を開示する。
小干渉RNA(siRNA)
以前に示されたとおり、本明細書に記載される小干渉RNA(又はsiRNA)は、15から30ヌクレオチドの長さの二重鎖RNAのセグメントである。それは、RNA干渉として知られる細胞反応を誘導するために使用される。RNA干渉においては、二重鎖RNAをダイサーと呼ばれる細胞内酵素で消化し、siRNA二重鎖を生成する。当該siRNA二重鎖は別の細胞内酵素複合体に結合して、それにより如何なるmRNA分子がsiRNA配列に相同(又は相補)なものは何でも標的化するように活性化される。活性化された酵素複合体は標的化mRNAを分割し、それを破壊し、そしてその相当する蛋白質生成物の合成を指示するために使用されることを阻止する。最近の証拠は、RNA干渉がウイルス感染に対する防御(多くのウイルスが外来RNAを細胞へ導入する)のためのみならず、極めて基礎的なレベルにおける遺伝子制御のためでもある、古来の内在的機構であることを示唆する。RNA干渉は、植物、昆虫、下等動物、及び哺乳類において起こることが示され、そして他の遺伝子サイレンシング技術、例えばアンチセンス又はリボザイムよりも劇的に効率よいことが見いだされた。バイオテクノロジーを用いれば、siRNAは、細胞へ、侵入する二重鎖RNAウイルスからダイサーにより生産されるはずのものと類似のRNAの短い二重鎖分子を導入する(又は細胞が生産するように誘導する)ことを含む。人工の誘導されたRNA干渉プロセスが、次にその点から続く。
【0062】
小干渉RNAを患者の脳にデリバリーするために、好ましい方法は、siRNA分子自体よりもsiRNAをコードするDNAを脳の細胞内へ導入することになる。特定の生物学上活性なsiRNAをコードするDNA配列は、(a)標的mRNAの小さくて接近可能な部分に関する配列(公的なヒトゲノムデータベース内で利用可能;また、Chi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:6343−6346(2003)およびrockefeller.edu/labheads/tuschl/sirna.html及びdarmacon dot comにてワールドワイドウエブも参照)、及び(b)DNAが細胞により転写されたときに対応するRNA配列の生産をもたらすDNAを如何にして特定するかについてのよく知られた科学上の規則を知った際に、特定され得る。
【0063】
DNA配列が一度特定されたなら、実験室の供給者からオーダーされた合成分子から実験室内で構築でき、そしてDNAの細胞へのデリバリーのためのいくつかの別の「ベクター」の一つに標準生物学手法を用いて挿入することができる。患者の脳のニューロンにデリバリーされたなら、それらのニューロン自体が、挿入されたDNAをRNAに転写することにより、治療用のsiRNAになるRNAを生産することになる。結果は、細胞自身が標的化遺伝子を沈黙化するsiRNAを生産する、ということになる。結果は、細胞により生産された標的化蛋白質の量の低下になる。
【0064】
本発明によれば、冒された細胞内で生産された特定のmRNAに対する小干渉RNAがニューロン内の疾患に関連する蛋白質の生産を阻止する。本発明によれば、標的細胞に小干渉RNAをデリバリーするようにデザインされた特別にあつらえられたベクターの使用である。デザインされた小干渉RNAの成功は、神経変性疾患を治療するための脳の標的化された細胞へのそれらのデリバリーの成功に基づいて予測される。
【0065】
小干渉RNAはヒト細胞へ特定のmRNA分子を標的化可能であることが示された。ヒト細胞をトランスフェクトし、そして標的RNAの分割を誘導してコードされた蛋白質の生産を妨害する小干渉RNAを生産するための、小干渉RNAを構築することができる。
【0066】
本発明の小干渉RNAベクターは、神経病原蛋白質自体の生産を抑圧するか、又は神経病原蛋白質の生産又はプロセシングに関与する蛋白質の生産を抑圧することにより、病原性蛋白質の生産を阻止する。治療剤の患者への繰り返しの投与は、患者の生活の質を改善するために十分多い数のニューロンの変化を成し遂げることが必要かもしれない。個々のニューロン内では、しかしながら、治療上の利益を提供するに十分な変化は長年にわたる。神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、又は脊髄小脳変形症1型に冒された多くの患者の絶望的な状況は、治療からの利益が治療のデリバリーと投与の危険よりも勝るような強い見込みを提供する他の治療剤及び投与の経路により神経病原性蛋白質の生産のいくらかの低下を成し遂げることは可能かもしれないが、ニューロンのインビボにおける直接のトランスフェクションを含む成功した治療法の開発は、小干渉RNAベクターの標的細胞へのデリバリーに基づいた最良のアプローチを提供するかもしれない。
【0067】
siRNAをコードする例示のDNA配列を表1に掲載する。
【0068】
【表1】

【0069】
細胞培養実験により、上記配列の各々がヒト細胞により発現される対応遺伝子のmRNAのレベルを抑圧することにおいて有効であるsiRNAをコードすることが確認された。
重要なことは、本明細書に例示された抗−アタキシン−1小干渉RNA、抗−BACE1小干渉RNA、及び抗−ハンチンチン小干渉RNA、並びに神経変性疾患を治療するための他の小干渉RNAは、発明の態様の当然のいくつかの例(just but some examples)である。神経科学において経験をした者には知られている、神経外科手法を動物と共に用いる実験は、候補の小干渉RNAを同定するために使用することができる。mRNA及びこれらの経験的な方法により同定された対応する小干渉RNAの標的部位は、主題の神経変性疾患の患者に投与されたときに多大な治療効果を導くものになる。
【0070】
本発明の核酸分子に関して、小干渉RNAは、実際の蛋白質コーディング配列内か又は5プライム非翻訳領域あるいは3プライム非翻訳領域内の何れかにおいて、標的蛋白質の生産をコードするmRNA配列内の相補配列を標的とする。ハイブリダイゼーションの後に、siRNAによりガイドされた宿主の酵素がmRNA配列を分割することができる。パーフェクトか又は高度の相補性が、小干渉RNAが有効になるのには必要である。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン−クリック塩基対)を形成できる核酸分子内の連続する残基のパーセンテージを示す(例えば、10のうちの5、6、7、8、9、10が50%、60%、70%、80%、90%及び100%相補性)。「パーフェクトの相補性」は、核酸配列の連続する残基全てが第2の核酸配列中の連続する残基の同じ数と水素結合することを意味する。しかしながら、siRNA配列中の単一のミスマッチ又は塩基置換は小干渉RNAの遺伝子サイレンシング活性を実質上低下させ得ることに注目するべきである。
【0071】
アルファ−シヌクレイン、BACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン1、アタキシン−3及び/又はアトロピン−1のRNAs内の特定の部位を標的とする小干渉RNAは、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳変形症1型、脊髄小脳変形症3型及び/又は歯状核赤核を細胞又は組織中で治療するための新規な治療上のアプローチを代表する。
【0072】
本発明の好ましい態様において、小干渉RNAは、15から30ヌクレオチドの長さである。特定の態様において、核酸分子は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、及び30である。好ましい態様において、siRNA配列の長さは、19−30塩基対の間であり得て、より好ましくは、21から25塩基対の間であり、そしてより好ましくは、21から23塩基対の間であり得る。
【0073】
好ましい態様において、発明は、所望の標的のRNAに関して高い程度の特異性を呈する、核酸に基づく遺伝子阻害剤のクラスを生成するための方法を提供する。例えば、小干渉RNAは、好ましくは、アルファ−シヌクレイン、BACE1(そのバリアント、例えばバリアントA,B,C,及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又はアトロピン−1のRNAをコードする標的RNAの高保存配列領域を標的とし、疾患又は症状の特異的な処置が発明の一つ又はいくつかの核酸分子に提供され得るようにする。さらに、一般には、アデニン塩基の対(AA)で始まる標的配列内の領域を同定することにより(実施例を参照)、干渉RNA配列が選択される。siRNAsは適切な転写酵素又は発現ベクターを用いてインビトロ又はインビボにおいて構築することができる。
【0074】
脳内のニューロンへの外来のDNAのデリバリーのための好ましいベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、例えば組換えアデノ随伴ウイルス血清型2又は組換えアデノ随伴ウイルス血清型5である。あるいは、他のウイルスベクター、例えば、ヘルペスシンプレックスウイルスを外来DNAの中枢神経系ニューロンへのデリバリーに使用してよい。
【0075】
siRNAsは、DNAオリゴヌクレオチドを用いてインビトロにおいて構築することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、サイレンサーsiRNA内に含まれるT7プロモーターのプライマーの5’エンドに相補な8塩基の配列を含むように構築することができる(アンビオンコンストラクションキット1620)。各遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを供給されたT7プロモータープライマーにアニールさせ、そして、クレノー断片によるフィルイン反応がRNAへの転写のための完全長DNA鋳型を生成する。インビトロ転写反応により、2つのインビトロ転写されたRNAs(一方が他方に対してアンチセンス)が生成され、そして二重鎖RNAを作成するために互いにハイブリダイズされる。二重鎖RNA産物はDNase(DNA転写鋳型を除去するため)及びRNase(二重鎖RNAのエンドをポリッシュするため)により処理されて、カラム精製されることにより、細胞内にデリバリーされて試験できるsiRNAが提供される。
【0076】
哺乳類細胞内でsiRNAsを発現するsiRNAベクターの構築は、一般には、siRNAの構造を模した短いヘアピンRNAの発現を推進するためにRNAポリメラーゼIIIプロモーターを用いる。このヘアピンをコードする挿入物は、短いスペーサー配列により分離された2つのインバーテッドリピートを有するようにデザインされる。一つのインバーテッドリピートは、siRNAが標的とするmRNAに相補性である。3’エンドに付加された6つの連続するチミジンの糸は、pol III転写鋳型部位として機能する。細胞内部に入ったら、当該ベクターは構成的にヘアピンRNAを発現する。ヘアピンRNAは標的遺伝子の発現のサイレンシングを誘導するsiRNAに加工されて、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる。
【0077】
あらゆる適切なRNAポリメラーゼIII(pol III)プロモーターを、小さなヘアピンsiRNAの発現を推進するためにsiRNA発現ベクター中で用いてよい。例示のプロモーターは、限定ではないが、よく特性決定されたヒト及びマウスのU6プロモーター及びヒトH1プロモーターを含む。RNA pol IIIは、哺乳類細胞において小さなRNAsを相対的に大量に発現し、そして3−6ウリジンの糸を取り込んだ際に転写を終結させるから、siRNAの発現を推進するために用いられた。
【0078】
siRNA発現プラスミド及び/又はウイルスベクターの構築に使用されるポリメラーゼ鎖反応(PCR)は、公知の技術を用いて実施することができる。例えば、米国特許番号4,683,195(Mullis et al.):4,683,202(Mullis);4,800,159(Mullis et al.);及び4,965,188(Mullis et al.)を参照。一般に、PCRは、ハイブリダイズ条件下での核酸サンプルの処理(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼ存在下)を含み、検出される特定の配列の各鎖のための一つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いる。合成される各プライマーの伸長産物は、2つの核酸鎖の各々に相補であり、プライマーはハイブリダイズする特定の配列の各鎖に相補である。各プライマーから伸長合成された産物は、同じプライマーを用いた伸長産物の次の合成のための鋳型としても機能し得る。十分な数の伸長産物の合成のラウンドの後に、検出されるべき配列が存在するか否かについて、サンプルを分析する。増幅された配列の検出は、電気泳動後のDNAのEtBr染色による可視化によるか、又は公知技術により検出可能な標識等を用いて実施してよい。PCR技術に関する総説(PCR Protocols,A Guide to Methods and Amplification,Michael et al.Eds,Acad Press,1990を参照)。
蛋白質の不在下で誘導される神経性疾患
代謝の先天的エラーとして知られる稀な遺伝的障害は、からだが食物をエネルギーに変換する(即ち、食物を代謝する)ことが不可能になる。当該障害は、通常、食物の成分を分解する生化学経路に関与する酵素の欠陥により引き起こされる。さらに、リソソーム蓄積症(LSD)は、リソソームの酵素の何れかの機能発現の欠陥により特徴付けされる遺伝的疾患を意味する。
【0079】
そのような疾患は、遺伝子治療により治療されるかもしれない。特に、欠陥のある遺伝子又は失われた遺伝子は当業者には知られている方法により同定されるかもしれず、のちに、置換遺伝子を用意して失われた部位へ供給されるかもしれない。
【0080】
欠陥のある酵素をコードする例示のポリヌクレオチド、及び欠陥酵素に付随する疾患を表2に掲載する。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【0087】
【表8】

【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

【0091】
表2に掲載された欠陥酵素をコードするポリヌクレオチドは、本発明の人工AAVベクターに含まれ得るポリヌクレオチドの例である。しかしながら、表2に掲載されたポリヌクレオチドに限定されることを意図しないものであり、当業者は、蛋白質の不在により誘導される追加の疾患を同定し、そして欠陥酵素をコードする追加のポリヌクレオチドを同定することができる。
【0092】
さらに、当業者は、本明細書に掲載された(例えば、表2)に相同なポリヌクレオチドが本発明の人工AAVベクター内に含まれ得ることを認識するはずである。例えば、一次構造の顕著なレベルを表2に掲載されたポリヌクレオチド中に存在するコーディング領域と分かち合うコーディング領域を有するポリヌクレオチド(例えば、顕著なレベルの同一性)を使用することができる。同一性のレベルは、コードされた蛋白質の仮想活性部位をコードする残基が見当に合っているように2つのヌクレオチド配列を一直線に並べる(aligned)ことにより決定され、そしてさらにそれらの配列の長さに沿ってそれらが共通に有するヌクレオチドの数を最大にするように一直線に並べる;見当の合ったコード蛋白質の仮想活性部位をコードする残基を配置するため且つ共有するヌクレオチドの数を最大にするためにアラインメントを作成することにおいて、片方か又は両方のギャップが許容されるが、それでもなお各配列中のヌクレオチドはそれらの正確な順序にて保持されなければならない。好ましくは、BLAST検索計算式のblastnプログラムを用いて2つのヌクレオチド配列を比較され、Altshulら(Nucl.Acids Res.,25,3389−3402(1997))に記載され、そしてナショナルキャンサーフォーバイオテクノロジーインフォメーションにて利用可能である(例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/にてワールドウエブサイト上)。好ましくは、全てのBLAST検索パラメーターの欠損値を用いる。BLAST欠損計算式を用いた2つのヌクレオチド配列の比較においては、構造上の類似性を「同一性」と呼ぶ。好ましくは、2つのヌクレオチド配列は、好適さが増す順に、好ましくは少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、そして99%同一性を有する。
人工AAVベクター
人工AAVベクターは、生物学上活性な因子をコードするDNAを含み、そして遺伝子又は遺伝子抑圧剤を患者のニューロンにデリバリーするのに使用することができる。即ち、人工AAVベクターは遺伝子をデリバリーするためのカセット、又は遺伝子抑圧剤をデリバリーするためのカセットを含むのが好ましい。例えば、失われた遺伝子を患者の脳に供給するために意図された遺伝子治療の場合、発現カセットは、プロモーター要素、失われた遺伝子をコードする配列、及びポリアデニル化シグナル配列を含むことができる。別の例において、患者の脳内で内生遺伝子の発現を抑圧することを意図された遺伝子抑圧する治療の場合、発現カセットは、プロモーター要素、小干渉RNA(siRNA)をコードする配列、及び終結配列を含むことができる。
【0093】
一つの態様において、人工AAVベクターは、二重鎖ベクターである。二重鎖ベクターはいずれかの種類の発現カセットを含んでよく、アデノ随伴ウイルスゲノムからのインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR)の5プライムコピー、続く遺伝子又は遺伝子抑圧剤に関する発現カセット(その同一性は治療される神経障害しだいである)、続くAAV−ITRの3プライムコピーによる3プライムエンドを含む。
【0094】
別の態様において、人工AAVベクターは、何れかの種類の発現カセットを含んでよく、単鎖ベクターである。単鎖ベクターは、アデノ随伴ウイルスゲノムからのインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR)の5プライムコピー、続く遺伝子又は遺伝子抑圧剤に関する発現カセット(その同一性は治療される神経障害しだいである)、続くAAV−ITRの3プライムコピーによる3プライムエンドを含む単鎖DNAセグメントを含む。任意に及び好ましくは、何れかの種類の発現カセットを含む全DNA配列は逆相補の順序で繰り返され、それにより、DNA配列が5プライムAAV−I、発現カセット、内部AAV−ITR、発現カセットの逆相補体、及び3プライムAAV−ITRを含む。3プライムAAV−ITRは5プライムAAV−ITRの逆相補体であり(例えば、本明細書中の実施例1に例示されるとおり)、そして3プライム又は5プライムの何れかのAAV−Iを内部AAV−ITRとして用いることができる。結果の「自己相補性」人工AAVベクターが好ましいが、なぜならば、それがDNAによりニューロンのより有効なトランスフェクションを生じさせるかもしれないからである。例えば、Fu et al.,Molecular Therapy 8:911−917(2003)を参照。
【0095】
当業者には、二重鎖の人工AAVベクターの態様と単鎖自己相補性人工AAVベクターの態様が、単鎖自己相補ベクターが発現カセットの相補鎖をつなぐ単一の単鎖AAV−ITRを有する(一方の鎖の3プライムエンドを相補鎖の5プライムエンドに共有結合させる−図2に模式的に示される)ために完全な人工AAVベクターが、発現カセットの相補鎖間で水素結合によりそれ自身の上に「フォールドバック」した一つの単DNA鎖である、ということのみにおいて相違することを認識する。二重鎖人工AAVベクターの場合には、各エンドにおいて鎖をつなぐ非共有結合により発現カセットの5プライムエンドと3プライムエンドにおいて二重鎖のAAV−ITRsが存在する(図3に模式的に例示されるとおり)。
【0096】
二重鎖の人工AAVベクターを製造する例示の方法が開示される。当該方法は、5−プライムAAV−ITR、発現カセット、及び3−プライムAAV−ITRをあらゆる適当なDNAプラスミド中に標準DNAクローニング方法を用いて集合させ;5−プライムAAV−ITR、発現カセット、3−プライムAAV−ITRをプラスミドから解放するが、DNAを5プライムAAV−ITRのすぐ5プライムの位置及び3プライムAAV−ITRのすぐ3プライムの位置において切断する制限酵素によりプラスミドを消化することにより解放し;そして標準の方法を用いて5−プライムAAV−ITR、発現カセット、及び3−プライムAAV−ITRからなる直鎖状DNA断片を精製する工程を含む。任意に、結果の直鎖状二重鎖人工AAVベクターをさらに加熱処理工程により加工してよく、例えば、精製された直鎖状DNA断片を加熱し(例えば、65℃又はそれ以上に10分間又はそれより長く加熱)、次に冷却する(例えば、10分間又はそれより長い時間をかけてDNA断片をゆっくりと室温に冷却する)ことを含む。図4に模式的に例示されるとおり、これらの加熱及び冷却の工程は、AAV ITRsが二次構造に集合することを許容し、この二重鎖人工AAVベクターからの長期間の遺伝子発現を助ける。
【0097】
上で本明細書に記載された単鎖DNAを製造する例示の方法も開示される。一つの方法は、5−プライムAAV−ITR、発現カセット、及び3−プライムAAV−ITRをあらゆる適当なDNAプラスミド中に標準DNAクローニング方法を用いて集合させ;標準インビトロ転写方法を用いてDNAプラスミドから所望の単鎖DNAの単鎖RNA転写物を生成させ;標準逆転写反応方法を用いて逆転写によりRNA転写物から単鎖DNAを生成させ;RNase酵素を用いたRNA消化により反応産物からRNA転写物を取り出し;そして標準DNA精製方法、例えばゲル精製又はカラム親和法により反応産物から結果の単鎖DNA産物を精製する工程を含む。
【0098】
別の方法は、5−プライムAAV−ITR、発現カセット、及び3−プライムAAV−ITRをあらゆる適当なDNAプラスミド中に標準DNAクローニング方法を用いて集合させ;5−プライムAAV−ITRのすぐ5−プライムにてプラスミド配列中の公知の一カ所にてDNAを切断する制限酵素によりプラスミドを消化することにより環状プラスミドを直鎖状化し;直鎖状化されたプラスミドの各鎖の5−プライムエンドに親和性タグ(例えば、ビオチン分子)を化学的にコンジュゲートし;3−プライムAAV−ITRのすぐ3−プライムにてプラスミド配列中の公知の一カ所にてDNAを切断する制限酵素によりDNA配列を切断するが、制限酵素が異なるサイズの2つの直鎖状二重鎖DNA分子をもたらすようにし;サイズによりあらゆる適切なサイズ分離方法(例えば、カラム濾過又はゲル電気泳動)を用いてDNA分子の集団を分離して所望の二重鎖DNAを回収し;そしてDNAを融解することにより、その2つの相補鎖を2つの単鎖に分離し、そして混合物をタグのための親和性カラムに通す(例えば、ビオチン分子を親和性タグとして用いたときはストレプトアビジン親和性カラム)が、工程3においてタグを付加された鎖がカラム上に捕捉されて、一方タグのない単鎖は所望の最終産物としてフロースルーするようにする。この方法は、最終産物中の配列エラーを導入するかもしれない如何なるDNA又はRNA重合工程も含まないので有利で有り得る。
【0099】
自己相補性AAVの場合、上記方法は、5−プライムAAV−ITR、発現カセット、内部AAV−ITR、同じ発現カセットの逆相補体、及び3−プライムAAV−ITRをあらゆる適当なDNAプラスミド中に標準DNAクローニング方法を用いて集合させ;(5−プライムAAV−ITRから3−プライムAAV−ITRまでの)DNA配列を切断する制限酵素によりプラスミドを消化することにより環状プラスミドを直鎖状化し;サイズによりあらゆる適切なサイズ分離方法を用いて工程2からの所望のDNA配列を回収し;二重鎖DNAを融解することにより、その2つの相補鎖を2つの単鎖に分離し;そして融解されたDNAの温度を(好ましくはゆっくりと)低下させることにより、単鎖が自己アニールによりヘアピン形態になることを許容する工程を含む。結果の単鎖(「センス」又は「アンチセンス」鎖)は最終産物として有用であるが、何れかの鎖が5−プライムから3−プライム方向へ所望の発現カセットのコピーを含むからである。
組成物
組成物が血液−脳バリヤーを通してデリバリーされる態様に関して、当該組成物は、例えば、米国特許番号6,372,250(Pardrige)に例えば記載されたようなリポソーム、及び薬学上受容可能な担体を含む。好ましくは、当該リポソームは受容体特異的リポソームであって、当該受容体特異的リポソームは:外部表面及び内部区画を有し;リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖)を含み、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっている。リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む受容体特異的リポソームは、人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターをプラスミドDNAの代わりに用いること以外、米国特許番号6,372,250(Pardrige)に記載された一般法により製造することができる。
【0100】
本明細書にて使用される「標的化剤」は、直接に又は間接に細胞の表面へ、例えば細胞表面に存在する分子、例えば受容体に相互作用する化学種(chemical species)を意味する。当該相互作用は、例えば、イオン結合、水素結合、ファンデルワース力、又はそれらの組み合わせであり得る。標的化剤の例は、例えば、サッカライド、ポリペプチド(ホルモンを含む)、ポリヌクレオチド、脂肪酸、及びカテコールアミンを含む。本明細書にて使用される用語「サッカライド」は、単独の糖質モノマー、単独の、グルコース、又は2つ又はそれより多い共有結合された糖質モノマー、即ちオリゴサッカライドを意味する。4またはそれより多い糖質モノマーを含むオリゴサッカライドは、直鎖状であるか分枝し得る。オリゴサッカライドの例は、ラクトース、マルトース、及びマンノースを含む。本明細書にて使用される「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを意味し、特定の長さのアミノ酸ポリマーを意味しない。即ち、例えば、用語ペプチド、オリゴペプチド、蛋白質、抗体、及び酵素はポリペプチドの定義に含まれる。この用語はポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化(例えば、サッカライドの付加)、アセチル化、リン酸化などなども含む。
【0101】
本明細書にて記載されるリポソームは、血液−脳バリヤーを通して生物学上活性な因子をデリバリーすることができ、脳の中で発現される。リポソームとナノ粒子は因子の封入のために普通に使用されるナノコンテナーの例示の形態である。リポソームは、好ましくは、200ナノメーター未満の直径を有する50から150ナノメーターの間の直径を有するナノコンテナーが好ましい。特に好ましいのは、約80ナノメーターの外部直径を有するリポソーム又は他のナノコンテナーである。適切な種類のリポソームが、中性脂質、例えば1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロール−3−ホスホコリン(POPC)、ジホスファチジルホスホコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、又はコレステロールと、少量(1%)のカチオン酸、例えばジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)により作成される。
【0102】
発明は好ましいナノコンテナーとしてリポソームを用いて記載されてきたが、当業者は、他のナノコンテナーを用いてよいことを認識する。例えば、上記リポソームは、ナノ粒子、又はDNAを封入して核酸をヌクレアーゼから防御することができるが製剤がなお血液中にあるか又は血液中から標的細胞の細胞内区画への移動中にある直径<200nmのあらゆる他の分子ナノコンテナーに置き換えてよい。また、コンジュゲート剤、例えばPEG鎖を用いる代わりに、一つ又はそれより多くの他のポリマー物質、例えば、スフィンゴミエリンをリポソーム又はナノコンテナーの表面に接続することができ、そして「輸送可能なペプチド」のコンジュゲートのため及び血液からの製剤の除去を遅延させて血漿のファーマコキネティクスを最適化するための骨格を提供する二重の目的にかなう。さらに、本発明は、特定の標的受容体を有する細胞又は器官のあらゆる群にDNAをデリバリーすることを意図する。当該リポソームはDNAを器官、例えば肝臓、肺及び膵臓にデリバリーするために使用してよい。
【0103】
当該リポソームは静脈内投与のためのあらゆる適切な薬学担体と組み合わせてよい。組成物の静脈内投与は最小限の侵入性であるから好ましい経路である。他の投与経路が望まれるなら可能である。適切な薬学上受容可能な担体は、塩水、Trisバッファー、リン酸バッファー、又は他の水性溶液を含む。適切な用量は、当業者によく知られている手法により確立することができる。
【0104】
当業者は、レミントンズファーマシューティカルサイエンス(17版、Mack Publishing Co.,Easton,PA,(1985)及びグッドマンアンドギルマンズザファーマシューティカルベーシスオブセラピュティクス(8版、Pergamon Press,Elmsford,NYm1990)として広く知られており利用可能な源にて論じられる原理及び手法を熟知している。
【0105】
本発明の好ましい態様において、組成物又は前駆体又はその誘導体は、ヒト又は他の動物へデリバリーされた投与に適合された薬学組成物として標準法に従い製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は滅菌アイソトニック水性バッファー中の溶液である。
【0106】
必要なら、組成物は、可溶化剤と注射のための部位においてあらゆる痛みを改善するための局所麻酔剤を含んでもよい。一般に、当該成分は、別々に又は混合されて、ユニット用量形態にて、例えば、乾燥凍結粉末として又は水不含濃縮物として密封封入されたコンテナー、例えば、活性因子の量を示すアンプル又はsachette中に供給する。組成物が注入(infusion)により投与されるなら、滅菌薬学グレードの水又は塩水を含む注入ボトル中に調合することができる。組成物を注射(injection)により投与するなら、投与の前に成分が混合されるように、注射のための滅菌水又は塩水のアンプルを用意することができる。
【0107】
静脈内投与以外の場合、組成物は、湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤をマイナーな量にて含むことができる。組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、ポリマー又は徐放性製剤であり得る。組成物は当業界で知られている伝統的な結合剤及び担体と共に製剤化することができる。製剤は標準の担体、例えば、薬学グレードのマニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカライドナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、等、因子の製造においてよく確立された官能性を有する不活性担体を含むことができる。様々な伝統的なシステムが公知であり、本発明の組成物を投与するために使用することができ、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル等への封入を含む。
【0108】
また別の好ましい態様において、組成物は中性又は塩形態として製剤化することができる。薬学上受容可能な塩は、遊離アミノ基、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、オキサロ酸、酒石酸等に由来するものにより形成されたもの、及び遊離カルボキシル基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、鉄水酸化物、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン又は類似物により形成されたものを含む。
【0109】
特定の障害又は症状の治療に有効な本発明の組成物の量は、障害又は症状の性質に依存し、そして組成物の投与においてよく確立された標準臨床技術により決定することができる。製剤に用いられる正確な用量は投与経路及び疾患又は障害の重度にも依存することになり、医師(practitioner)の判断及び患者の要求に従い決定されるべきである。頭蓋内投与のための適切な用量範囲は、一般に、単一注射容量の1から3000マイクロリットルにてデリバリーされるマイクロリットルあたり、ウイルスベクター約10から1015感染ユニットである。マイクロリットルあたりの追加量の感染ユニットのベクターは、一般に、約10、50、100、200、500、1000又は2000マイクロリットルにてデリバリーされるウイルスベクターの約10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014感染ユニットを含む。適切な用量はインビトロ又はインビボ試験システム由来の用量応答曲線から推定してよい。
【0110】
他に規定しない限り、本明細書にて使用される化学用語及び命名は、発明の属する分野の当業者により共通に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、細胞培養、感染、分子生物学の手法等は当業界で用いられる共通の方法である。そのような標準技術は、例えば、Sambrookら(1989,Molecular Cloning − A laboratory Manual,Cold Spring Harbor.Laboratories)及びAusubelら(1994,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,New York)のような文献のマニュアル見いだすことができる。
【0111】

実施例
実施例1:
出願人は、ベータ−アミロイド分割酵素(BACE1)の発現を抑圧するsiRNAをコードするDNAを開発した。神経細胞中でのBACE1の抑圧は、アミロイド前駆体蛋白質からのベータ−アミロイド断片の生産を完全に破壊することが知られている。溶解性ベータ−アミロイド断片はアルツハイマー病の認識に関する機能不全と神経変性の原因であると信じられており、そしてこれらの断片の不溶性凝集物はアルツハイマー脳の中に特徴的なプラークの中に含まれることが知られている。抗−BACE1 siRNAをコードするDNAの発現カセットが、AAV−ITRsを周囲に含む構築物中に工作された(engineered)。本明細書中に例示された態様において、ITRsはAAV2由来である。しかしながら、当業者には、他の血清型由来のITRsも使用可能なはずであることが明らかである。BACE1メッセンジャーRNAの発現の低下と細胞培養におけるBACE1酵素の活性の低下をこの抗−BACE1 siRNAが事実もたらすことを示すデータが得られている。(この明細書中の以下の実施例2−4を参照)。
【0112】
開示された方法に従うと、抗−BACE1 siRNAをコードするAAV−ITRを周囲にもつDNAが血液−脳バリヤーを通して脳細胞中へ輸送のために製剤化されたリポソーム内部へパッケージされ得る。結果の組成物は、アルツハイマー病の患者の脳を供給する血管の一つ又はそれより多くに、神経血管カテーテルによりデリバリーされるはずである。ベータ−アミロイド及びベータ−アミロイドプラーク自体を脳が逃れるための浄化(clearance)機構はアルツハイマー病を阻止するのに十分なほど明らかではないが、「源における」ベータ−アミロイドの生産により浄化機構が良好にベータ−アミロイドの患者の脳に対して有する作用を低下させ得ると予測される。結果として、疾患の進行が遅延するか又は停止し、そして患者が安定して恐らくは改善すると仮定される。
【0113】
即ち、神経血管による脳全域のこのDNAのデリバリーは患者におけるアルツハイマー病の治療のための手段を提供し得る。治療が安全で副作用のないことが証明されたら、予防治療としても有力になるかもしれない。即ち、アルツハイマー病の可能な未来の発生に対して集団中の全ての加齢する(aging)人々に予防的に「接種する」ために使用されるかもしれない。
【0114】
本発明の生物学上の成分の合成AAVのDNA配列の様々な態様はそれがアルツハイマー病の治療に関するように、以下のとおりである。「AAV−U6−MB1749」(配列番号:8)はMB1749のDNAコードを含む合成AAVの配列であり、アルツハイマー病の治療法としてのベータ−アミロイド分割酵素タイプ1(BACE1)の発現を抑圧するのに有効なsiRNAである。
【0115】
【表12】

【0116】
【表13】

【0117】
「AAV−H1−MB1749」(配列番号:9)はMB1749のDNAコードを含む合成AAVの配列であり、U6よりむしろヒトH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーターにより推進される発現を伴う。
【0118】
【表14】

【0119】
【表15】

【0120】
「SC−AAV−U6−MB1749」(配列番号:10)はMB1749のDNAコードを含む合成自己相補性AAVの配列であり、ヒトU6 RNAポリメラーゼIIIプロモーターにより推進される発現を伴う。
【0121】
【表16】

【0122】
【表17】

【0123】
【表18】

【0124】
【表19】

【0125】
「SC−AAV−H1−MB1749」(配列番号:11)はMB1749のDNAコードを含む合成自己相補性AAVの配列であり、ヒトH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーターにより推進される発現を伴う。
【0126】
【表20】

【0127】
【表21】

【0128】
【表22】

【0129】
AAV−U6−MB1749 DNA構築物(配列番号:8)が生成されてAAVウイルス粒子中にパッケージされ、そしてアミロイド−前駆体蛋白質に関するヒト遺伝子を運ぶトランスジェニックマウスの脳に定位に注射された。ウイルス媒介性遺伝子治療がこれらのマウスにおいてアルツハイマー病のマニフェステーションを低下させるかもしれない。
実施例2:siRNAを用いたインビトロのBACE1 mRNAの抑圧
Neuro2aマウス神経細胞系においてBACE1のメッセンジャーRNAの発現をインビトロにて有効に抑圧するsiRNA配列を同定して、MB1749と命名した。MB1749は「マウスBace1配列位置1749」を意味し、マウスBACE1 cDNA配列(ジェンバンク受け入れ番号NM_011792.2)中のヌクレオチド1749から1769に相当する。ヌクレオチド配列は以下のとおりである。
配列番号:12:5’−AAGACTGTGGCTACAACATTC−3’
この配列はBACE1のヒトcDNA配列の4つのバリアント全て(A,B,C,及びD)に同一(100%相同)であり、そしてジェンバンクの様々なヒトBACE1 cDNA配列内の以下の位置に見いだされる:
【0130】
【表23】

【0131】
BACE1発現を沈黙化させる候補のsiRNAとしてMB1749配列を選択する部分において、当該配列を、ncbi.nlm.nih dot govにてBLASTサイトにてワールドウエブサイト上でヘルスナショナルセンターフォーバイオテクノロジーインフォメーションにより提供されるBLASTソフトウエアを用いて、ホモサピエンスの全ての他の公知のゲノミックDNA配列と比較した。
【0132】
Neuro2a細胞培養による試験のために、二重鎖MB1749siRNAをインビトロ転写方法を用いて構築した。以下の2つの合成DNAオリゴヌクレオチドをMWG−Biotech社から得た(DNA合成サービス):
【0133】
【化1】

【0134】
当該siRNAを、これらのDNAオリゴヌクレオチドから、アンビオン社(サイレンサーsiRNA構築キット、カタログ番号1620)により市販されて提供される試薬を用いて製造者に指示書に従い以下のとおりに生成した:供給されたT7プロモータープライマーを上記の2つのDNAオリゴヌクレオチド転写鋳型にハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたオリゴの3−プライムをDNAポリメラーゼのクレノー断片により伸長することにより、二重鎖のsiRNA転写鋳型を創製した。センス及びアンチセンスのsiRNA鋳型をT7 RNAポリメラーゼにより転写し、そして結果のRNA転写物をハイブリダイズさせることにより、二重鎖RNAを創製した(リーダー配列、二重鎖RNAの19マー、及び2つの3−プライム末端ウリジンからなる)。リーダー配列はリボヌクレアーゼ消化により除去し、そしてDNA鋳型はデオキシリボヌクレアーゼ処理により除去した。結果の二重鎖siRNA産物を供給されたガラスファイバーカラムに結合及び溶出して精製した。
【0135】
MB1749 siRNAを、インビトロにおいて、マウスNeuro2a細胞に、MB1749抗−BACE1 siRNAと共にこれらの試験目的のために構築されたDNAプラスミド(pTracerBace)による同時トランスフェクション培養物により試験した。pTracerBaceプラスミドは、ヒトBACE1 cDNAのカセット及び増強された緑色蛍光蛋白質(eGFP)の追加の発現カセットを含む。Neuro2a細胞を6ウエルのプレート上に植えて、標準培養条件(10%子ウシ胎児血清を含むDMEM培地、37℃にて湿潤加湿器中で5%二酸化炭素)下で50%−70%コンフルエントまで生育させた。次に、細胞にMB1749 siRNAをTransit−TKOトランスフェクション試薬(ミルスカタログ番号2154)を用いてトランスフェクトし、そしてpTracerBaceプラスミドをTransit−Neuroトランスフェクション試薬(ミルスカタログ番号2144)を用いて製造者の推奨に従いトランスフェクトした。細胞にさらなる生育培地を24時間後に与えた(fed)。約42時間後に、全細胞RNAをRNeasyキット(キアゲン、カタログ番号74104)を製造者のプロトコルに従い回収したが、可能性のある汚染ゲノミックDNAのDNaseIを用いた消化を含んだ。
【0136】
BACE1 mRNAの抑圧は、定量性逆転写ポリメラーゼ鎖反応(qRT−PCR)アッセイを用いて評価した。10マイクログラム(10μg)の全細胞RNAを50マイクロリットル反応にてcDNAに逆転写した(ストラタジーンProSTAR First Strand RT−PCRキット、カタログ番号200420)。逆転写酵素を省いた平行の反応を用いて次のPCR反応へのゲノミックDNAのキャリーオーバーのないことを確認した。6マイクロリットルの反応産物をTaqMan DNAポリメラーゼPCR反応試薬と混合し、次に、等しく3つの別々のチューブに分割し、BACE1のcDNAの臓腑供養のPCRプライマー、齧歯類GAPDH cDNA、又はeGFP cDNAをそれぞれ加えた。PCR反応を稼動させ、RotorGene 3000(リアルタイムPCRマシン(コルベットリサーチ、モートレイクNSW,オーストラリア)を用いて増幅データを回収した。pTracerBaceプラスミドのみ(siRNAなし)をトランスフェクトされたNeuro2a細胞からの反応産物の希釈シリーズを用いて、各cDNA(BACE1,GAPDH,及びeGFP)に関して標準曲線を制定し(establish)、そしてプラスミドプラスMB1749抗−BACE1 siRNAをトランスフェクトされたNeuro2a細胞内の各遺伝子のcDNAの量を各標準のパーセンテージとして計算した。
【0137】
この実験は別々の細胞培養を用いて別々の実験室職員により3つの別々の機会に実施した。
【0138】
【表24】

【0139】
これらの結果は、MB1749 siRNA配列がマウス神経細胞系においてBACE1のmRNAの発現をインビトロにて実質上抑圧することを示す。
実施例3:AAV−抗Bace1を用いたBACE1 mRNAのインビトロにおける抑圧
トランスフェクトされた細胞中でのMB1749 siRNAの生産をコードするDNAを含む発現ベクターを遺伝子工作した。このベクターは、以下のDNA配列をpSilencer1.0−U6プラスミド(アンビオン,カタログ番号7207)に、ApaIとEcoRI制限部位の間に挿入することにより生成した。
【0140】
【化2】

【0141】
結果のプラスミドは、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、MB1749に相当する短いヘアピン転写物をコードするDNA配列、及び6つのチミンヌクレアーゼの連続からなるRNAポリメラーゼIII終結配列からなる発現カセットを含む。形質導入された細胞が内部でMB1749 siRNAを発現してそれによりBACE1メッセンジャーRNAの発現を抑圧することを誘導することにおけるこのDNA配列の有効性を、Neuro2a細胞の培養物において試験した。Neuro2a細胞培養物にpSilencerMB1749プラスミドとpTracerBaceプラスミドをTransit−Neuralトランスフェクション試薬及び上記の手法を用いて同時トランスフェクトした。約42時間後に、全細胞RNAを細胞から回収し、そして上記のとおり定量性リアルタイムRT−PCRを用いて分析した。この分析は3通り実施して、以下の結果を得た:
【0142】
【表25】

【0143】
これらのデータは、MB1749 siRNA配列がpSilencerMB1749プラスミドをトランスフェクトされた細胞内でMB1749発現カセットから生成されたことを示し、そしてこの発現カセットはインビトロにおいてBACE1のmRNAの発現を実質上抑圧することを示す。
【0144】
MB1749発現カセット(RNAポリメラーゼIIIプロモーター、MB1749に相当する短いヘアピン転写物をコードするDNA配列、及びRNAポリメラーゼIII終結配列からなる)を、アデノ随伴ウイルスベクター(ジーンディテクト社、オークランド、ニュージーランド、カタログ番号GD1001−RV)へ、キメラAAV血清型1/2と共に工作した。MDT1749.4を形質導入された細胞がMB1749siRNAを内部で生産してそれによりBACE1メッセンジャーRNAの発現を抑圧するように導入されることを確認するため、HEK293細胞(標準的実験室細胞系)の培養物にMDT1749.4ウイルスを感染させ、そして次にpTracerBaceプラスミドを1日後にトランスフェクトした(2日目)。全細胞RNAをこれらの細胞から約48時間後に回収して(4日目)、定量性リアルタイムRT−PCRを用いて上記の通りに分析した。陰性対照として、他のHEK293細胞培養物にpTracerBaceプラスミドと、MB1749のコーディング配列がスクランブルされ、即ちBACE1に対するsiRNAとして不活性であることを除いてMDT1749.4に同一の比較用AAVウイルスベクターをトランスフェクトした。この分析は、2つの別のロットのMDT1749.4ウイルスストック及び2つの別々のロットのスクランブル対照ウイルスストックを用いて実施したところ、結果は以下のとおりであった:
【0145】
【表26】

【0146】
これらのデータは、MB1749 siRNA配列がMDT1749.4アデノ随伴ウイルスを感染させた細胞内で生成されたことを示し、そしてこの発現がインビトロにおいてBACE1のmRNAの実質上の発現をもたらすことを示す。MDT1749.4アデノ随伴ウイルスのBACE1酵素の生産及びベータ−アミロイド生成に対する効果の試験として、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにて神経病理が現在進行中である。
実施例4:siRNAを用いたインビトロにおけるBACE1蛋白質酵素の抑圧
細胞へのMB1749 siRNAのトランスフェクションが事実BACE1蛋白質発現の抑圧並びにBACE1メッセンジャーRNA生産の抑圧をもたらすことを確認するために、BACE活性をHEK293細胞からの蛋白質抽出物中にて測定した。HEK293細胞を35mmのディッシュに植え、そしてpTracerBaceプラスミドとpSilencer−MB1749(MB1749 siRNAを生産するためのDNAコードを含む)又は製造者(アンビオン、カタログ番号7207、挿入された如何なるsiRNAもない)から得たオリジナルのpSilencerプラスミドの何れかを、Transit−Neuralトランスフェクション試薬を用いて同時トランスフェクトした。48時間後に、細胞を回収して、細胞溶解物から抽出された蛋白質をBeta−Secretase活性キット(R&Dシステムズ、カタログ番号FP002)を用いてBACE酵素活性に関してアッセイした。簡単に言えば、このアッセイは、BACE分割活性に関する基質である標識されたペプチドを蛋白質抽出物に加えることを含む。当該ペプチド基質は蛍光リポーター分子(EDANS)と蛍光クエンチング分子(DABCYL)にコンジュゲートされており、ペプチド上での2つの分子の物理的近接が蛍光放射を阻止するようになっている。BACEによりペプチド基質の分割は物理的にEDANSとDABSYL分子を分離させ、蛍光シグナルの放出を可能にする。
【0147】
細胞サンプルから得られた蛋白質抽出物は均等な蛋白質濃度(pTracerBace及びpSilencer−MB1749をトランスフェクトされた細胞に関して0.13mg/mL、そしてpTracerBace及び「空の」pSilencerをトランスフェクトされた細胞に関して0.11mg/mL)である。これらの蛋白質抽出物の3通りのサンプルをマイクロプレートのウエルに入れ(R&Dシステムズキットにより供給された)たが、ウエルあたり50マイクロリットルで、50マイクロリットルの反応バッファーと5マイクロリットルの標識されたペプチド基質をそれに加え、製造者のプロトコルに従った。サンプルを37℃においてインキュベートし、そしてフェニックス蛍光マイクロプレートリーダーを用いてウエルから放射された蛍光を10分間隔で測定した。結果を図1に示す。
【0148】
このアッセイ方法はBACE1酵素活性に特異的ではないが、BACE2酵素活性を反映することに注目するのは重要である。MB1749 siRNAがBACE1(BACE2配列に対してたった58%の相同性しかない[19塩基のうちの8がミスマッチ])に特異的であるから、細胞中のあらゆるBACE2蛋白質の生産がMB1749トランスフェクションにより影響されていないらしく、このアッセイにおいて測定された全BACE酵素活性に寄与し続けるらしい。結果的に、当該アッセイは、これらの細胞中でのMB1749によるBACE1蛋白質の量を過小評価するらしい。
【0149】
これらの結果は、活性なBACE1蛋白質の生産がMB1749 siRNAをトランスフェクトされた細胞においては低下することを示す。
さらに、アルツハイマー病の動物モデルにおけるいくつかの前臨床研究は、脳のベータ−アミロイドレベルを低下させる治療が認識の実行の改善ももたらすことを示した(例えば、Schenk,Nature Reviews Neuroscience,3:824−828(2002)を参照)。これらの研究は免疫のアプローチを用いており、ベータ−アミロイド形成を阻止するよりも、ベータ−アミロイドに対する免疫応答によりベータ−アミロイドの低下を誘発する。これらの前臨床結果に基づいて、抗−ベータ−アミロイドワクチンのヒト臨床試験が開始された;しかし、これらの試験は、治療に対する反応として数人の患者が脳の炎症を発したとき(髄膜脳炎)に中止された。
【0150】
BACE1の抑圧が実行可能であること、及びそれがアルツハイマー病を治療するのに安全で有効な方法であるかもしれないという様々なインビトロ研究及び動物研究からの証拠が存在する。Robertsらは、Human Molecular Genetics,10:1317−24(2001)において、BACE1発現を欠くマウス(BACE1ノックアウトマウス)がそれらの脳中においてベータ−アミロイドを生産できないが、表現型上は正常であることを示した。さらに、Luoらは、Nature Neuroscience 4:231−232(2001)において、BACE1ノックアウトマウスをヒトアミロイド前駆体蛋白質(APP)を過剰発現するTg2576トランスジェニックマウスと交配したときに、子孫がベータ−アミロイドを生産できないことを示した。顕著なのは、Ohnoらが、Neuron,41:27−33(2004)において、Tg2576マウスとBACE1ノックアウトの交配もベータ−アミロイド依存性の病理から子孫を救済する結果をもたらし、海馬の記憶の欠損と神経の興奮の機能しない制御からの救済を含む。
【0151】
Basiらは、Journal of Biological Chemistry,278:31512−20(2003)において、siRNAを用いることにより標準実験室細胞系(ヒト胚腎臓細胞HEK293)においてBACE1発現を抑圧できることを示し、そしてKaoらは、Journal of Biological Chemistry,279:1942−49(2004)において、siRNAを用いることにより野生型とAPPトランスジェニックマウスの両方からの一次皮質ニューロンの培養においてインビトロにてBACE1の発現を抑圧できることを示した。
実施例5:
以下の実施例は、生物学上活性なRNA転写物をコードする人工の自己相補性アデノ随伴ウイルスベクター(scAAV)を含む端鎖DNAが作成できる、プラスミドDNAを構築するための例示の方法である。この実施例において、プラスミドDNAを作成するプロセスは8工程を含む。プラスミドDNAがこれらの8つの工程により作成できたら、次に、大量のプラスミドDNA(例えば、マイクログラム、ミリグラム、又はグラムのプラスミドDNA)を当業者に知られている方法により、例えば、細菌を当該プラスミドで形質転換し、大量の細菌を生育させ、次に細菌培養液から大量のプラスミドDNAを回収することにより、作成することができる。大量のプラスミドDNAから、大量の人工の自己相補AAVをさらなる2つの工程により作成することができる。これらの工程の全ては、以下に記載される。
材料
scAAVを含む単鎖DNAが生成され得る「pPvuABCBAPvu」と呼ばれるプラスミドDNAを以下の出発物質を用いて作成する:
1)ストラタジーン社(ラホーヤ、CA)から市販されているファージミッドプラスミドpBluescript II KS,カタログ#212207。
【0152】
2)インビトロジェン(カールスバッド、CA)から市販されているプラスミドpCMV−myc−cyto−GFP,カタログ#V820−20。
3)ストラタジーン社(ラホーヤ、CA)から市販されているプラスミドpAAV−LacZ,カタログ#240071。
【0153】
4)アンビオン社(オースチン、TX)から市販されているプラスミドpSilencer1.0,カタログ#7207。
本明細書において以下に記載されるとおり、当業者に知られている方法を用いて、制限酵素を用いてこれらのプラスミドを切断する。用いられた制限酵素は:AlwNI,PvuII,AvaII,PstI,KpnI,Bsu36I,ScaI,SfiI,NheI,BssSI,EcoRI,Bst1107I,SpeI,及びSspIであり、ニューイングランドバイオラブズ社(ベヴァリー、MA)から入手可能である。
【0154】
本明細書において以下に記載されるとおり、DNA修飾酵素及びDNA連結酵素を用いて、DNA断片を当業者に知られている方法を用いて集合させる(assemble)。これらの酵素は、T4 DNAポリメラーゼ、及びT4リガーゼであり、プロメガ社(マジソン、WI)からそれぞれカタログ#M4211及びカタログ#M1801にて入手可能である。
【0155】
さらに、以下のカスタムDNAオリゴヌクレオチドを用いて、プラスミドへのライゲーションのためのDNA断片を構築する。
【0156】
【化3】

【0157】
さらに、以下のカスタムDNAオリゴヌクレオチドを、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)プライマーとして、上記の工程の結果を評価し、そしてあとの工程に進む成功したプラスミドクローンを選択するために使用される。
【0158】
【化4】

【0159】
また、以下のカスタムDNAオリゴヌクレオチドを、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)プラスミドとして、pPvuABと呼ばれるプラスミドを生成するためにpBlueAlwNIと呼ばれるプラスミドへの挿入のためにPCR産物を生成するために使用され、以下に記載されるとおりである。
【0160】
【化5】

【0161】
プラスミドpPvuABCBPvuを構築するための方法:
工程1−1:これは、プラスミドpBluescript II KS+に見いだされる予め存在するAlwNI制限部位を除去するために必要な2つの工程の最初である。プラスミドpBluescript II KS+を、9つのヌクレオチド「...CAGNNNCTG...(式中、「N」はあらゆるデオキシリボヌクレオチドを表す)」の二重鎖DNA配列を認識して切断する、制限酵素AlwNIにより直鎖状化する。プラスミドをT4 DNAポリメラーゼで処理することにより、直鎖状化されたプラスミドの突出した5−プライムエンド及び3−プライムエンドを平滑化する。結果は、切断されたエンドから3つの「NNN」ヌクレオチドの損失である。プラスミドのエンドを、次に、T4 DNAリガーゼで連結する。結果はプラスミドのエンドの再接合であり、今、配列「...CAGCTG...」が形成される。結果のプラスミドはpBlueMod1と呼ばれる。
【0162】
工程1−2:予め存在するAlwNIにおけるpBluescript II KS+のDNA配列がヌクレオチドの別の「CAG」配列が5−プライム方向において前に来るので、プラスミドpBlueMod1は、なおも、AlwNI制限部位「...CAGCAGCTG...」を含む。このAlwNI制限部位を除くため、プラスミドpBlueMod1を用いて工程1の手法を再び実施する。即ち、pBlueMod1を酵素AlwNIにより直鎖状化する。プラスミドをT4 DNAポリメラーゼで処理することにより、直鎖状化されたプラスミドの突出した5−プライムエンド及び3−プライムエンドを平滑化する。結果は、切断されたエンドから3つの中間の「CAG」ヌクレオチドの損失である。プラスミドのエンドを、次に、T4 DNAリガーゼで連結する。結果はプラスミドのエンドの再接合であり、配列「...CAGCTG...」が形成される。この配列は前にTGGがあり、後ろにGTAが続き、結果の「TTGCAGCTGGTA」配列(配列番号:24)はもはやAlwNI酵素の認識部位を形成しない。結果のプラスミドは、もはやAlwNIにより切断することができず、pBlueMod2と呼ばれる。
【0163】
工程2:この工程の目的は、追加のDNA断片がのちの工程において挿入できるようにpBlueMod2に制限部位を挿入するためである。挿入された制限部位は酵素AlwNI及びBsu36Iのための部位である。挿入物を構築するため、Oligo2AfとOligo2Ar(上で掲載)を共に単一の試験管内で混合し、摂氏65度に5分間加熱し、次に、冷却して室温にすることにより、各種類の2つのオリゴがアニールして短い二重鎖DNA分子の形成を誘導する。二重鎖DNAのエンドをキナーゼで処理することにより、エンドをリン酸化し、次に、二重鎖DNAを、PstI及びKpnI制限酵素による切断により直鎖状化されていたpBlueMod2プラスミドDNAに連結する。結果のプラスミドをpBlueAlwNIと呼ぶ。pBlueAlwNIの構築の成功は、プライマーPCR2Cf及びPCR2Crを用いたPCRにより仮想pBlueAlwNIプライマーからのPCR産物を増幅して確認することができる。433塩基対のPCR産物のサイズが正確なpBlueAlwNIプラスミドクローンによりもたらされる。
【0164】
工程3:この工程の目的は、プラスミドpCMV−myc−cyto−GFP中の緑色蛍光蛋白質をコードする配列内からの制限酵素PstIとBssSIの制限部位を除去することである。これは、緑色蛍光蛋白質のアミノ酸配列を保存するが異なるDNA配列を使用するDNA挿入物であって、PstI及びBssSI認識配列により適合される如何なる配列をも欠く挿入物を構築することにより行われる。当該挿入物を構築するために、Oligo3AfとOligo3Ar(上で掲載)を共に単一の試験管内で混合し、摂氏65度に5分間加熱し、次に、冷却して室温にすることにより、各種類の2つのオリゴがアニールして短い二重鎖DNA分子の形成を誘導する。二重鎖DNAのエンドをキナーゼで処理することにより、エンドをリン酸化し、次に、二重鎖DNAを、SfiI及びNheI制限酵素による切断により直鎖状化されていたpCMV−myc−cyto−GFPプラスミドDNAに連結する。結果のプラスミドをpCMV−GFP−Modと呼ぶ。pCMV−GFP−Modの構築の成功は3つの様式により確認することができる:a)プラスミドをPstIとBssSIにより切断してサイズ130、555、及び4926塩基対の3つのDNA断片をもたらす(BssSIは上記プラスミドを3カ所で切断するが、PstIは全く切断しないからである)、b)プラスミドをPVuIIにより切断してサイズ1055及び4556塩基対の2つのDNA断片をもたらすが、pCMV−myc−cyto−GFP中の#670位のPvuII部位が除去されているからであり、及びc)pCMV−GFP−Modをトランスフェクトされた細胞が蛍光顕微鏡により見える緑色蛍光蛋白質を発現することを確認することによる。
【0165】
工程4:この工程の目的は、プラスミドpCMV−GFP−ModからのCMV−GFPコーディング配列を得て、そしてそれをpAAV−LacZプラスミドに挿入することである。これは、プラスミドpCMV−GFP−Modを制限酵素EcoRI及びPvuIIを用いて切断して、結果の1714塩基対断片を電気泳動及びゲルからのDNA断片の溶出により、当業者に知られている方法を用いて行う。1714塩基対断片のエンドはT4 DNAポリメラーゼによる処理により平滑化し、そして平滑化されたエンドを制限酵素EcoRIとBst11071により直鎖状化されたpAAV−LacZへ連結する。CAG−GFPの3−プライムエンドとポリA発現カセットがEcoRI制限部位に位置するように並べて挿入物が連結されたプラスミドを同定するために、結果のクローンをふるいにかける。結果のプラスミドをpAAV−U6−GFP−CMVと呼ぶ。pAAV−U6−GFP−CMVの構築の成功は、予測によれば1896塩基対及び3291塩基対のDNA断片をそれぞれ生じるEcoRIとScaIにより候補プラスミドを切断することにより確認することができる。逆の不所望の向きの挿入物を含むクローンはEcoRIにより切断されず、サイズ5187塩基対の単一のDNA断片をもたらす。
【0166】
工程5:工程5の目的は、BACE1を標的とするsiRNAを構成する短いヘアピンRNA転写物をコードするDNA配列(アルツハイマー病の治療法として患者内でBACE1酵素の発現を抑圧するため)をpAAV−U6−GFP−CMVプラスミドへ挿入することである。これは、BACE1を標的とするヘアピンRNAをコードするDNAが先に構築されたプラスミドpSilencer−抗BACE1を酵素SpeI及びEcoRIにより切断し、そして結果の386塩基対の断片をゲル電気泳動及びゲルからのDNA断片の溶出により行う。BACE1を標的とするヘアピンRNAをコードするDNAの構築は、米国特許出願公開番号2004/0220132 A1(Kaemmerer)に開示されている。断片をプラスミドpAAV−U6−GFP−CMV(工程4において構築された)へ、pAAV−U6−GFP−CMVに見いだされる唯一のSpeI及びEcoRI制限部位の間に連結する。結果のプラスミドをpAAV−抗BACE1−GFPと呼ぶ。それは、今、2つのPvuII制限部位の間に、5−プライムから3−プライムに向かって以下をコードするDNA配列を含む:PvuII部位、AAVインバーテッドターミナルリピート配列、U6 RNA pol IIIプロモーター、抗BACE1ヘアピン配列、U6転写終結配列、ポリアデニル化シグナル配列の逆相補体、GFP蛋白質コードの逆相補体、CMVプロモーターの逆相補体、AAVインバーテッドターミナルリピート配列、PvuII部位。即ち、それは、5−プライムから3−プライムに向かって、抗−BACE1 siRNAの発現カセット、及び逆方向にリポーター遺伝子GFPの発現カセットを含む。
【0167】
工程6:この工程の目的は、pAAV−抗BACE1−GFPから、5−プライムPvuII部位から伸長するDNA断片及び5−プライムAAVインバーテッドターミナルリピート配列を、CMVプロモーターの逆相補体を通して得ることであるが、3−プライムAAVインバーテッドターミナルリピートは含まない。この断片を次にpBlueAlwNIへPstI制限部位とBsu36I制限部位の間に挿入することにより、pPvuABと呼ぶプラスミドを生成する。pAAV−抗Bsu1−GFPからの断片は、DNA配列のPCR増幅により、PCR6Af及びPCR6Arをプライマー(上記)として用いて得る。結果の2549塩基対のPCR産物は、PCRプライマーPCR6Af及びPCR6Arのデザインのため、そのエンドにPstI及びBsu36I制限部位を含む。当該断片をこれらの酵素で切断して、次に、PstI及びBsu36Iにより直鎖状化されてあったpBlueAlwNI内に連結する。pPvuABの構築の成功は、候補のプラスミドを、成功クローンに関してはサイズ130、942、及び4335の3つの断片をもたらし、不所望の方向に挿入物を有する不成功のクローンに関してはサイズ130、2350、及び2927の3つの断片をもたらし、そして挿入物を獲得しなかった不成功のクローンに関してはサイズ130と2780の2つの断片をもたらす制限酵素SspIにより切断することにより確認できる。
【0168】
工程7:この工程の目的は、pAAV−抗BACE1−GFPからの断片をプラスミドpBlueAlwNIに挿入し、今度は(this time)、断片がpAAV−抗BACE1−GFP中のPvuII制限部位の間に全DNA配列からなる。これは、プラスミドpAAV−抗BACE1−GFPを制限酵素PvuIIにより切断し、そして2590塩基対のDNA断片をゲル電気泳動及びゲルからのDNA断片の溶出により行う。当該断片を、次に、工程2において導入された唯一の制限部位においてAlwNI酵素を用いて直鎖状化されていたpBlueAlwNIプラスミドへ平滑末端連結する。所望の方向に挿入物を有するプラスミドを制限酵素EcoRI及びPstIによる切断により確認するが、所望の方向で挿入物を有するプラスミドにおいてはサイズ539及び4975塩基対の2つの断片をもたらすが、不所望の方向に挿入物を含むプラスミドにおいてはサイズ2059及び3455の断片をもたらし、そして挿入物を有さないプラスミドにおいてはサイズ2924の一つの断片をもたらす。所望の方向において挿入物を含む結果として生じたプラスミドをpPvuABCと呼ぶ。それは、5−プライムから3−プライムの方向に、以下をコードするDNA配列を含む:PvuII部位、AAVインバーテッドターミナルリピート配列、U6 RNA pol IIIプロモーター、抗BACE1ヘアピン配列、U6転写終結配列、ポリアデニル化シグナル配列の逆相補体、GFP蛋白質コードの逆相補体、CMVプロモーターの逆相補体、AAVインバーテッドターミナルリピート配列、AlwNI部位。pBlueAlwNI中のオリジナルAlwNI部位の3−プライム半分は挿入物の連結により復元されたが、挿入物の3−プライムエンドがAlwNI認識部位の「CAG.......」部分を再供給したからである。
【0169】
工程8:プラスミドpPvuABCBAPvuの製造における最終工程は、プラスミドpPvuABからのPvuAB部分をプラスミドpPvuABCへ平滑クローン化(blunt clone)して、所望のプラスミドpPvuABCBAPvuを生成することである。これは、プラスミドpPvuABを酵素PstI及びBsu36Iにより切断し、そしてサイズ2479塩基対の結果の断片を回収することにより達成される。この挿入物のエンドを、T4 DNAポリメラーゼによる処理により平滑化する。挿入物を、次に、制限酵素AlwNIにより切断されて直鎖状化されていたプラスミドpPvuABCへ平滑末端連結される。PvuIIによる切断により挿入物の所望の方向を有するプラスミドを同定するため、結果のプラスミドをふるいにかける。PvuIIによる切断の場合、所望の挿入物を有するプラスミドクローンは、サイズ182、237、586、1921、及び5085塩基対の5つのDNA断片を生じる。不所望の方向に挿入物を有するプラスミドクローンは、サイズ182、586、1921、2595、及び2727塩基対の長さの5つの断片を生じる。挿入物を有さないプラスミドクローンは、サイズ182、232、586、1921、及び2590塩基対の長さの5つの断片を生じる。所望の方向に挿入物を有する結果のプラスミドは、5−プライムから3−プライムの方向に、以下をコードする5085塩基対のDNA配列を含む:PvuII部位、AAVインバーテッドターミナルリピート配列、U6 RNA pol IIIプロモーター、抗BACE1ヘアピン配列、U6転写終結配列、ポリアデニル化シグナル配列の逆相補体、GFP蛋白質コードの逆相補体、CMVプロモーターの逆相補体、AAVインバーテッドターミナルリピート配列、CMVプロモーター、GFP蛋白質コード、ポリアデニル化シグナル配列、U6転写終結配列の逆相補体、抗BACE1ヘアピン配列の逆相補体、U6 RNA pol IIIプロモーターの逆相補体、AAVインバーテッドターミナルリピート配列、PvuII部位。
プラスミドpPvuABCBAPvuから人工AAVを構築する方法:
プラスミドpPvuABCBAPvuからの抗−BACE1 RNA転写物をコードする人工の自己相補アデノ随伴ウイルスベクター(scAAV)を含む単鎖DNAを得るためには、2つの工程しか必要ない。
【0170】
工程1:プラスミドpPvuABCBAPvuを制限酵素PvuIIにより切断し、そしてサイズ5085塩基対のDNA断片を当業者に知られている方法、例えば、ゲル電気泳動及びゲルからの溶出により、回収して精製する。
【0171】
工程2:5085の二重鎖DNA断片を希釈水溶液に注ぎ、99℃に5から10分間温め、次に、室温に冷却する。加熱は二重鎖DNAの2つの鎖が分離するか又は「融解」して離れることを引き起こす。分離して希釈溶液中にあると、これらの2つの鎖各々が、それらの相補鎖と再アニールしてサイズ5085塩基対の二重らせんを形成するより、たぶん自己アニールして、約2542塩基対の長さの大きなDNAヘアピンを形成する。オリジナルの二重鎖DNAの各鎖からの、結果の大きなDNAヘアピン分子は同一であり、そして各々は所望の単鎖自己相補性の人工AAVベクターである。
【0172】
本発明の一つの態様においては、結果の単鎖DNAを次に動物又はヒト患者への静脈内又は動脈内投与のためペギル化イムノリポソームへパッケージされて、動物又はヒト患者の血液−脳バリヤーを通って中枢神経系内の細胞へ輸送され、中枢神経系の疾患の治療を提供する。例えば、BACE1酵素を標的とする小干渉RNAへ細胞が加工するするRNAヘアピンをコードするDNA配列を含むpPvuABCBAPvuプラスミドにより生産された、結果の単鎖DNAを、アルツハイマー病の治療法としてヒト患者において血液−脳バリヤーを通してデリバリーできる。
【0173】
匹敵する様式において、遺伝子産物の不在又は欠損により引き起こされる疾患(先天性代謝異常、リソソーム貯蔵障害を含む)の治療がなされて、5−プライムエンドにプロモーターを作動可能に連結され、そして3−プライムエンドにポリアデニル化シグナル配列を作動可能に連結された、欠落したか又は欠損している遺伝子産物をコードする配列を、siRNA及び緑色蛍光蛋白質のコード配列の代わりに、プラスミドpPvuAB及びpPvuABCへ挿入することにより、本発明の態様として動物又はヒト患者へデリバリーされ得る。これらの2つのプラスミドから、フォームpPvuABCBAPvuの単一のプラスミドを次に上記の工程8に記載された方法により作成してよい。次に、自己相補性AAVをそのpPvuABCBAPvuプラスミドから上記の方法を用いて生産し、そして動物又はヒト患者への静脈内又は動脈内投与のためペギル化イムノリポソームへパッケージされて、当該単鎖DNAが血液−脳バリヤーを通って中枢神経系内の細胞へ輸送される原因となる。この投与治療法は、遺伝子欠損により引き起こされた疾患の中枢神経系の表明(manifestations)、並びに当該疾患の組織的表明の治療を提供する。
実施例6
実施例5に記載された人工アデノ随伴ウイルスベクターを米国特許番号6,372,250(Pardridge)に記載されたのと類似の様式にて製造してリポソーム内にパッケージされることにより、組成物を提供する。当該組成物をヒトアルツハイマー病の認められた動物モデルであるTg2576トランスジェニックマウスの尾部の静脈に注射する。当該マウスを実質上のベータ−アミロイドプラークが非投与対象において観察されると予測される齢までフォローアップする。当該マウスを次に犠牲にしたところ、非投与マウスよりも投与マウスにおいて、より少ないベータ−アミロイドプラークが観察される。
実施例7
以下の実施例は本発明の一つの態様により二重鎖人工AAVベクターを製造するための例示の方法である。この実施例においては、本明細書に開示された実施例5の工程1から工程5の方法に従い、プラスミドpAAV−抗BACE1−GFPを構築した。結果のプラスミドは、2つのPvuII制限部位の間に所望のDNAセグメント含む。特に、プラスミドは、5−プライムから3−プライムに向かって、PvuII部位、AAVヘアピン配列、U6転写終結配列、ポリアデニル化シグナル配列の逆相補体、GFP蛋白質コードの逆相補体、CMVプロモーターの逆相補体、AAVインバーテッドターミナルリピート配列及びPvuII部位をコードするDNA配列を含む。即ち、それは、5−プライムから3−プライムの方向に、抗−BACE1 siRNAの発現カセット、及びリポーター遺伝子GFPの発現カセットを逆の方向に含む(図5参照)。
【0174】
プラスミドpAAV−抗BACE1−GFP中のAAV ITRsを周囲に有する発現カセットを単離するために、75μgのプラスミドを制限酵素PvuIIとScaIにより、当業者によく知られた方法を用いて消化した。ScaIは当該プラスミドバックボーンを2つの類似の断片に消化して、プラスミドバックボーンと所望の挿入物の間にさらなる識別を可能にさせた。直鎖状断片をキアゲンのキアゲンIIゲル精製キットを用いてゲル精製した。直鎖状断片のパーセント回収及び質を260nmと280nmの吸収を測定することにより分光測光法により測定した。この定量を通して、出発製品(product)の60%が回収されて精製された直鎖状断片が十分な質であった(A260/A280=1.9)ことが確定された。
【0175】
AAV ITRsが二次構造をとることを許容するため、4.5μgの直鎖状断片(90ng/μl)を65℃に10分間加熱することにより温度処理し、そして最短で10分かけて室温にゆっくりと冷却した。次のインビトロ実験における使用のための対照として、未処理の直鎖状断片を室温に10分間そのままにして加熱された断片を冷却した。未処理の直鎖状断片及び処理された(加熱されて冷却された)断片の予測されるコンフォメーションをそれぞれ図3と図4に示す。室温におけるインキュベーションの直後に、これらの人工AAVベクターを一時的にHEK293にトランスフェクトした。
【0176】
トランスフェクション実験の目的は、人工AAVベクターをトランスフェクトされた細胞内でのEGFP発現の長命性(longevity)を、EGFP発現カセット(pTRACER−CMA2,インビトロジェンコーポレーション、カールスバッド、CA、により入手可能)を含む環状プラスミドをトランスフェクトされた細胞内のEGFP発現の長命性と比較することであった。この実験は、本発明の人工AAVベクターで処理された細胞内でのEGFP発現が環状プラスミドpTRACER−CMV2で処理された細胞内でのEGFP発現よりも長く続いき得たか否かを観察するためにデザインされた。
方法:HEK293細胞のトランスフェクション:
HEK293T(ATCC#CRL11268)を、4.5g/Lのグルコースを含み、そして10%FBS及びペニシリンとストレプトマイシンを追加されたDMEM中で培養した。HEK293T細胞のトランスフェクションの前日に6ウエル組織培養プレートに5x10細胞/ウエルの密度にて接種した。この接種密度は、トランスフェクションの日に約80%コンフルエントのウエルを生じた。
【0177】
HEK293T細胞にTransit TKO(ミルス)をトランスフェクトし、製造者の推奨に従った。簡単に言えば、6μLのTransit−TKOを200μLのOpti−Mem還元血清培地に5mLポリスチレンチューブ中で加えた、ボルテックス混合した。希釈されたトランスフェクション試薬を室温において15分間インキュベーションした。1マイクログラムの適切なDNAを各チューブに加え、DNAを穏やかに混合して室温において20分間インキュベーションした。サンプルは:(1)偽トランスフェクトされた(HO);(2)pTRACERプラスミド(1μg);(3)人工AAVベクター(1μg);及び(4)温度処理された(例えば、加熱されて冷却された)人工AAVベクター(1μg)を含んだ。インキュベーション後に、細胞上の培地を除去し、そして2mLの正常な生育培地(DMEM,高グルコース、10%FBS,ペニシリン/ストレプトマイシン)に置き換えた。DNA複合体をゆっくりと細胞に滴下により加え、穏やかな振動により混合した。トランスフェクトされた細胞を37℃において5%COを含む湿潤加湿器中でインキュベートした。EGFP発現後に、トランスフェクトされた細胞の写真を2−4日ごとにトランスフェクションの30日後まで撮った。全ウエルを表すエリアを写真に撮った。写真を撮った日に、全てのトランスフェクト細胞上の培地を新鮮な正常生育培地に置き換えた。
【0178】
トランスフェクトされた細胞中のEGFP発現の比較を可能にするため、デジタル写真の全てを同じパラメーターで撮った。イメージの分析は、人工AAVベクターからのEGFP発現の持続を明らかにした。さらに、加熱して冷却した人工AAVベクターは、細胞をトランスフェクトしてEGFP発現を持続することに関して、実質上はいっそう有効であった。これは、図6に示すとおりトランスフェクションの6日及び23日後に回収されたイメージにて明らかである。
【0179】
図6において観察され得るとおり、95%を超えるプラスミド由来のEGFP発現がトランスフェクションの12日後に消失した。最後の温度処理工程(例えば、加熱及び冷却)なしに生産された人工AAVベクターはほんの僅かな細胞においてのみEGFP発現を生じた;しかしながら、EGFP発現はそれらの細胞中で持続した。観察された持続は、トランスフェクトされた細胞の少数においてAAV−ITRsの二次構造の形成、続いて二次構造が上記細胞中でITRsを達成したためにEGFPの発現が持続する指標として解釈され得る。温度処理工程(例えば、加熱及び冷却)を含む開示方法に従い製造された人工AAVベクターは、トランスフェクションの27日後に連続するEGFP発現をもたらした。連続する発現は温度処理工程(例えば、加熱及び冷却)によるAAV−ITRsの二次構造の形成の指標として解釈でき、EGFPの持続する発現に資するこれらの構造が人工AAVベクターによりトランスフェクトされた実質上全ての細胞に存在した。
【0180】
実験はトランスフェクションの27日後に終了したが、顕著な細胞の損失がこの時間点の後に起こり始めたからであった。温度処理された人工AAVベクターからの発現を上記プラスミドからの発現と比較すると、発現の持続における100%を超える増加(日数)が人工AAVベクターから得られた。
【0181】
この実施例は、顕著で安定な発現が主題の発明の態様である人工AAVベクターから得られて、開示された方法に従い生産できることを例示する。この人工AAVベクターからの発現は、環状プラスミドからの発現よりも長く持続すると観察された。
【0182】
本明細書において引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物、及び電子上利用可能なマテリアル(例えば、ジェンバンクアミノ酸及びヌクレオチド配列サブミッション;及び蛋白質データバンク(pdb)サブミッション)は、引用により本明細書に取り込まれる。前記の詳細な説明及び実施例は、理解の明確化のためのみに提供された。不必要な限定はそこから理解されるべきでない。発明は、特許請求の範囲により規定された発明の範囲内に含まれる当業者には自明の様々なバリエーションに関して示されて記載された正確な詳細に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図1は、実施例4に記載されたとおりに、測定された蛍光(y軸、蛍光ユニット)対時間(x軸、分)のグラフ描写による、トランスフェクトされたHEK293細胞からの蛋白質抽出物中の全BACE酵素活性を示す。バックグラウンド値(アッセイ試薬のみ、細胞なし)をシンボル「◆」で表す。MB1749のsiRNA及びpTracerBaceの値をシンボル「●」で表す。pSilencer対照及びpTracerBaceの値をシンボル「△」で表す。
【図2】図2は、単鎖DNAのデリバリーのための自己相補性人工AAVベクターの一つの態様を模式的に表す。人工AAVベクターは、5プライムから3プライム方向に向かって、5プライムAAV−ITR(ITR);単鎖DNA(α−BACE1/pCMV^EGFP);内部AAV−ITR(ITR);単鎖DNAの逆相補体(α−BACE1/pCMV−EGFP);及び3プライムAAV−ITR(ITR)を含む。
【図3】図3は、直鎖の二重鎖DNAのデリバリーのための人工AAVベクターの一つの態様を模式的に表す。直鎖の二重鎖のDNA(α−BACE1/pCMV−EGFP)は、AA−ITRs(ITR)を各鎖の5プライムエンド及び3プライムエンドに有する。
【図4】図4は、少なくとも1回の加熱及び冷却サイクルにおいて加熱処理された図3中に示された直鎖の二重鎖DNAのデリバリーのための人工AAVベクターの一つの態様を模式的に表す。模式図は、内部ハイブリダイズするように各ITRの自己相補部分を許容するようにITRsが折り畳まれる、ITRsの二次構造を示す。
【図5】図5は、実施例7の工程1から5により生産されて実施例7において使用されたとおりの、プラスミドpAAV−抗BACE1−GFPの一つの態様の模式的描写を表す。当該プラスミドは、2つのPvuII制限部位の間に、5プライムから3プライム方向に向かって、5−プライムAAV−ITR(ITR)、DNAセグメント(α−BACE1/pCMV−EGFP)、及び3プライムAAV−ITR(ITR)を含む。
【図6】図6は、pTRACER CMV2環状プラスミド(図6a及び6d);本発明の直鎖状二重鎖人工AAVベクター(図6b及び6e);又は65度に加熱して室温に冷却した本発明の直鎖状二重鎖人工AAVベクター(図6c及び6f)をトランスフェクトされたHEK293T細胞の蛍光顕微鏡イメージの写真を示す。当該写真は、実施例7に記載された、トランスフェクション6日後(図6a−6c)とトランスフェクション23日後(図6d−6f)のHEK293T細胞内のEGFPの発現を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテル;及び
カテーテルへ、生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む組成物を輸送する手段;及び
血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分
を含むカテーテルに組成物をデリバリーするための手段
を含む、血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための医学用システム。
【請求項2】
患者の血流への組成物のデリバリーのための移植可能なポンプをさらに含む、請求項1記載の医学用システム。
【請求項3】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAのデリバリーのためであり、そして、人工AAVベクターが5−プライムエンド及び3−プライムエンドにAAV−ITRsを有する単鎖DNAを含む、請求項1記載の医学用システム。
【請求項4】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAのデリバリーのためであり、そして、人工AAVベクターが5−プライムから3−プライムの方向に向かって、
5プライムAAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNA;
内部AAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAの逆相補体;及び
3プライムAAV−ITR
を含む、請求項1記載の医学用システム。
【請求項5】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする直鎖状二重鎖DNAのデリバリーのためであって、人工AAVベクターが、各鎖の5−プライムエンド及び3−プライムエンドにAAV−ITRsを有する直鎖状二重鎖DNAを含む、請求項1記載の医学用システム。
【請求項6】
人工AAVベクターが少なくとも1回の加熱及び冷却のサイクルにより加熱処理される、請求項5記載の医学用システム。
【請求項7】
患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテル;及び
カテーテルへ受容体特異的リポソームを含む組成物をデリバリーするための手段であって、
外部表面及び内部区画を有するリポソーム;
リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードするDNAを含む;
一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び
一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているもの
を含む上記組成物デリバリー手段を含む
血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための医学用システム。
【請求項8】
患者の血流への組成物のデリバリーのための移植可能なポンプをさらに含む、請求項7記載の医学用システム。
【請求項9】
リポソームの外部表面が最大200ナノメーターの直径を有する球を規定する、請求項7記載の医学用システム。
【請求項10】
少なくとも5で最大で1000の血液−脳バリヤー又は脳細胞膜標的化因子がリポソーム表面上にコンジュゲートされている、請求項7記載の医学用システム。
【請求項11】
少なくとも25で最大で40の血液−脳バリヤー又は脳細胞膜標的化因子がリポソーム表面上にコンジュゲートされている、請求項7記載の医学用システム。
【請求項12】
コンジュゲーション剤がポリエチレングリコール、スフィンゴミエリン、ビオチン、ストレプトアビジン、有機ポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7記載の医学用システム。
【請求項13】
コンジュゲーション剤の分子量が少なくとも1000ドルトンから最大で50,000ドルトンである、請求項7記載の医学用システム。
【請求項14】
人工AAVベクターが配列番号:8−11からなる群から選択される配列を含む、請求項7記載の医学用システム。
【請求項15】
生物学上活性な因子をコードするDNAが配列番号:1−7からなる群から選択される配列を含む、請求項7記載の医学用システム。
【請求項16】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項7記載の医学用システム。
【請求項17】
DNAが蛋白質をコードする、請求項7記載の医学用システム。
【請求項18】
脳中での発現のための血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための方法であって、受容体特異的リポソームを含む組成物を患者の脳に投与することを含み、但し、当該受容体当該リポソームは、
外部表面及び内部区画を有するリポソーム;
リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードするDNAを含む;
一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び
一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているもの
を含む、上記方法。
【請求項19】
組成物を静脈内又は動脈内投与する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
リポソームの外部表面が最大で200ナノメートルの直径を有する球を規定する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
少なくとも5で最大で1000の血液−脳バリヤー又は脳細胞膜標的化因子がリポソーム表面上にコンジュゲートされている、請求項18記載の方法。
【請求項22】
少なくとも25で最大で40の血液−脳バリヤー又は脳細胞膜標的化因子がリポソーム表面上にコンジュゲートされている、請求項18記載の方法。
【請求項23】
コンジュゲーション剤がポリエチレングリコール、スフィンゴミエリン、ビオチン、ストレプトアビジン、有機ポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項24】
コンジュゲーション剤の分子量が少なくとも1000ドルトンから最大で50,000ドルトンである、請求項18記載の方法。
【請求項25】
DNAを細胞にデリバリーするための方法であって、受容体特異的ナノコンテナーを含む組成物を患者に投与することを含み、但し、当該受容体ナノコンテナーは、
外部表面及び内部区画を有する受容体ナノコンテナー;
ナノコンテナーの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、人工AAVベクターは生物学上活性な因子をコードする;
細胞上に位置する受容体を標的とする一つ又はそれより多い受容体特異的標的剤;及び
一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているコンジュゲーション剤
を含む、上記方法。
【請求項26】
組成物を静脈内又は動脈内投与する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
リポソームの外部表面が最大で200ナノメートルの直径を有する球を規定する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
細胞が脳細胞、肝臓細胞、肺細胞、及び膵臓細胞からなる群から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAのデリバリーのためであり、そして、人工AAVベクターが5−プライムエンド及び3−プライムエンドにAAV−ITRsを有する単鎖DNAを含む、請求項25記載の方法。
【請求項30】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAのデリバリーのためであり、そして、人工AAVベクターが5−プライムから3−プライムの方向に向かって、
5プライムAAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNA;
内部AAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAの逆相補体;及び
3プライムAAV−ITR
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項31】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする直鎖状二重鎖DNAのデリバリーのためであって、人工AAVベクターが、各鎖の5−プライムエンド及び3−プライムエンドにAAV−ITRsを有する直鎖状二重鎖DNAを含む、請求項25記載の方法。
【請求項32】
人工AAVベクターが少なくとも1回の加熱及び冷却のサイクルにより加熱処理される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項25記載の方法。
【請求項34】
短いヘアピンRNAが細胞内で発現される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
DNAが蛋白質をコードする、請求項25記載の方法。
【請求項36】
蛋白質が細胞内で発現される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
脳中での発現のための血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための方法であって、患者に組成物を投与することを含み、組成物が、
生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;及び血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分を含む、上記方法。
【請求項38】
組成物が静脈内又は動脈内投与される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
人工AAVベクターが配列番号:8−11からなる群から選択される配列を含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
生物学上活性な因子をコードするDNAが配列番号:1−7からなる群から選択される配列を含む、請求項37記載の方法。
【請求項41】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項37記載の方法。
【請求項42】
短いヘアピンRNAが脳内で発現される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
DNAが蛋白質をコードする、請求項37記載の方法。
【請求項44】
蛋白質が脳内で発現される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
病原性蛋白質により引き起こされる神経変性障害を治療する方法であって、当該方法は、
患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして
生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;及び
血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分
を含む組成物をカテーテルにデリバリーすること
を含む、上記方法。
【請求項46】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項45記載の方法。
【請求項47】
短いヘアピンRNAが脳内で発現される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
病原性蛋白質により引き起こされる神経変性障害を治療する方法であって、当該方法は、
患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして
受容体特異リポソーム及び受容体特異リポソームのための薬学上受容可能な担体を含む組成物をカテーテルにデリバリーすることを含むが、
但し、受容体特異的リポソームは、
外部表面及び内部区画を有するリポソーム;
リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで、あって、但し、人工AAVベクターは生物学上活性な因子をコードするDNAを含む;
一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び
一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているコンジュゲーション剤
を含む、上記方法。
【請求項49】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項48記載の方法。
【請求項50】
短いヘアピンRNAが脳内で発現される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患を治療する方法であって、当該方法は、
患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして
生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイウス(AAV)ベクター;及び
血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分
を含む組成物をカテーテルにデリバリーすること
を含む方法。
【請求項52】
DNAが蛋白質をコードする、請求項51記載の方法。
【請求項53】
蛋白質が脳内で発現される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
神経疾患が代謝の先天的エラーである、請求項51記載の方法。
【請求項55】
蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患を治療する方法であって、当該方法は、
患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして
受容体特異的リポソーム及び受容体特異リポソームのための薬学上受容可能な担体を含む組成物をカテーテルにデリバリーすること
を含むが、但し、受容体特異的リポソームは
外部表面及び内部区画を有するリポソーム;
リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、人工AAVベクターは生物学上活性な因子をコードするDNAを含み;
一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び
一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているコンジュゲーション剤
を含む、上記方法。
【請求項56】
DNAが蛋白質をコードする、請求項55記載の方法。
【請求項57】
蛋白質が脳内で発現される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
神経疾患が代謝の先天的エラーである、請求項55記載の方法。
【請求項59】
脳中での発現のための血液−脳バリヤーを通してDNAをデリバリーするための組成物であて、当該組成物は受容体特異的リポソームを含み、但し、受容体特異的リポソームは
外部表面及び内部区画を有するリポソーム;
リポソームの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、AAVベクターは生物学上活性な因子をコードし;
一つ又はそれより多い血液−脳バリヤー及び脳細胞膜標的剤;及び
一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているコンジュゲーション剤
を含む、上記組成物。
【請求項60】
リポソームの外部表面が最大200ナノメーターの直径を有する球を規定する、請求項59記載の組成物。
【請求項61】
少なくとも5で最大で1000の血液−脳バリヤー又は脳細胞膜標的化因子がリポソーム表面上にコンジュゲートされている、請求項59記載の組成物。
【請求項62】
少なくとも25で最大で40の血液−脳バリヤー又は脳細胞膜標的化因子がリポソーム表面上にコンジュゲートされている、請求項59記載の組成物。
【請求項63】
コンジュゲーション剤がポリエチレングリコール、スフィンゴミエリン、ビオチン、ストレプトアビジン、有機ポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項59記載の組成物。
【請求項64】
コンジュゲーション剤の分子量が少なくとも1000ドルトンから最大で50,000ドルトンである、請求項59記載の組成物。
【請求項65】
DNAを細胞にデリバリーするための組成物であって、当該組成物は受容体特異的ナノコンテナーを含み、但し、受容体特異的ナノコンテナーは
外部表面及び内部区画を有するナノコンテナー;
ナノコンテナーの内部区画内に位置する人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、AAVベクターは生物学上活性な因子をコードするDNAを含み;
細胞上に位置する受容体を標的とする一つ又はそれより多い受容体特異的標的剤;及び
一つ又はそれより多いコンジュゲーション剤であって、各標的剤はコンジュゲーション剤の少なくとも一つによりリポソームの外部表面につながっているコンジュゲーション剤
を含む、上記組成物。
【請求項66】
リポソームの外部表面が最大200ナノメーターの直径を有する球を規定する、請求項65記載の組成物。
【請求項67】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAをデリバリーするためのものであって、当該人工AAVベクターは5−プライムエンド及び3−プライムエンドにAAV−ITRsを有する単鎖DNAを含む、請求項65記載の組成物。
【請求項68】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAをデリバリーするためのものであって、当該人工AAVベクターは5−プライムから3−プライムの方向に向かって:
5プライムAAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNA;
内部AAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAの逆相補体;及び
3プライムAAV−ITR
を含む、請求項65記載の組成物。
【請求項69】
人工AAVベクターが生物学上活性な因子をコードする直鎖状二重鎖DNAをデリバリーするためのものであって、当該人工AAVベクターは各鎖の5−プライムエンド及び3−プライムエンドにAAV−ITRsを有する直鎖状二重鎖DNAを含む、請求項65記載の組成物。
【請求項70】
人工AAVベクターが少なくとも1回の加熱及び冷却のサイクルにより加熱処理される、請求項69記載の組成物。
【請求項71】
血液−脳バリヤーを通して脳内での発現のためにDNAをデリバリーするための組成物であって、
生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター;及び
血液−脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分
を含む、上記組成物。
【請求項72】
人工AAVベクターが配列番号:8−11からなる群から選択される配列を含む、請求項71記載の組成物。
【請求項73】
生物学上活性な因子をコードするDNAが配列番号:1−7からなる群から選択される配列を含む、請求項71記載の組成物。
【請求項74】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項71記載の組成物。
【請求項75】
DNAが蛋白質をコードする、請求項71記載の組成物。
【請求項76】
人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、5−プライムから3−プライムの方向に向かって:
5プライムAAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNA;
内部AAV−ITR;
生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAの逆相補体;及び
3プライムAAV−ITR
を含むベクター。
【請求項77】
人工AAVベクターが配列番号:10−11からなる群から選択される配列を含む、請求項76記載のベクター。
【請求項78】
生物学上活性な因子をコードするDNAが配列番号:1−7からなる群から選択される配列を含む、請求項76記載のベクター。
【請求項79】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項76記載のベクター。
【請求項80】
DNAが蛋白質をコードする、請求項76記載のベクター。
【請求項81】
生物学上活性な因子をコードする直鎖状二重鎖DNAのデリバリーのための人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、各鎖の5−プライムエンド及び3−プライムエンドにAAV−ITRsを有する直鎖状二重鎖DNAを含む、人工AAVベクター。
【請求項82】
人工AAVベクターが少なくとも1回の加熱及び冷却のサイクルにより加熱処理される、請求項81記載のベクター。
【請求項83】
生物学上活性な因子をコードするDNAが配列番号:1−7からなる群から選択される配列を含む、請求項81記載のベクター。
【請求項84】
DNAが短いヘアピンRNAをコードする、請求項81記載のベクター。
【請求項85】
DNAが蛋白質をコードする、請求項81記載のベクター。
【請求項86】
人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成するための方法であって、
5−プライムから3−プライム方向に向かって、5−プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR)、生物学上活性な因子をコードするDNA、及び3−プライムAAV−ITRをDNAプラスミド中にDNAクローニング方法により集合させ;
インビトロ転写方法を用いてDNAプラスミドから単鎖DNAの単鎖RNA転写物を生成させ;
逆転写反応方法を用いて逆転写によりRNA転写物から単鎖DNAを生成させ;
RNase酵素を用いたRNAの消化により反応産物からRNA転写物を取り出すこと
を含む方法。
【請求項87】
ゲル精製、カラム親和法、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるDNA精製方法により反応産物から単鎖DNA産物を精製することをさらに含む、請求項86記載の方法。
【請求項88】
人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成するための方法であって、
5−プライムから3−プライム方向に向かって、5−プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR)、生物学上活性な因子をコードするDNA、及び3−プライムAAV−ITRをDNAプラスミド中にDNAクローニング方法により集合させ;
5−プライムAAV−ITRのすぐ5−プライムにてプラスミド配列中の公知の一カ所にてDNAを切断する制限酵素によりプラスミドを消化することにより環状プラスミドを直鎖状化し;
直鎖状化されたプラスミドの各鎖の5−プライムエンドに親和性タグを化学的にコンジュゲートし;
3−プライムAAV−ITRのすぐ3−プライムにてプラスミド配列中の公知の一カ所にてDNAを切断する制限酵素によりDNA配列を切断するが、制限酵素が異なるサイズの2つの直鎖状二重鎖DNAセグメントをもたらすようにし;
サイズによりサイズ分離方法を用いてDNA分子の集団を分離して二重鎖DNAを回収し;そして
DNAを融解することにより、その2つの相補鎖を2つの単鎖に分離し、そして混合物をタグのための親和性カラムに通すが、タグを付加された鎖がカラム上に捕捉されて、一方タグのない単鎖は所望の最終産物としてフロースルーするようにすること
を含む方法。
【請求項89】
親和性タグがビオチン分子を含み、そして親和性カラムがストレプトアビジン親和性カラムを含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
サイズ分離方法が、カラム濾過又はゲル電気泳動、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項88記載の方法。
【請求項91】
人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成するための方法であって、
5−プライムから3−プライム方向に向かって、5−プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR)、生物学上活性な因子をコードするDNA、及び3−プライムAAV−ITRをDNAプラスミド中にDNAクローニング方法により集合させ;
5−プライムAAV−ITRのすぐ5−プライムにてプラスミド配列中の公知の一カ所にてDNAを切断する制限酵素によりプラスミドを消化することにより環状プラスミドを直鎖状化し;
直鎖状化されたプラスミドの各鎖の5−プライムエンドに親和性タグを化学的にコンジュゲートし;
3−プライムAAV−ITRのすぐ3−プライムにてプラスミド配列中の公知の一カ所にてDNAを切断する制限酵素によりDNA配列を切断するが、制限酵素が異なるサイズの2つの直鎖状二重鎖DNAセグメントをもたらすようにし;
サイズによりサイズ分離方法を用いてDNA分子の集団を分離して二重鎖DNAを回収すること
を含む方法。
【請求項92】
サイズ分離方法が、カラム濾過又はゲル電気泳動、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項91記載の方法。
【請求項93】
回収された二重鎖DNAを少なくとも1回の加熱及び冷却のサイクルにより加熱処理する、請求項91記載のベクター。
【請求項94】
自己相補性人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成するための方法であって、
5−プライムから3−プライム方向に向かって、5−プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR)、生物学上活性な因子をコードするDNA、内部AAV−ITR、生物学上活性な因子をコードするDNAの逆相補体、及び3−プライムAAV−ITRをDNAプラスミド中にDNAクローニング方法により集合させ;
5−プライムから3−プライム方向に向かって、5−プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV−ITR)、生物学上活性な因子をコードするDNA、内部AAV−ITR、生物学上活性な因子をコードするDNAの逆相補体、及び3−プライムAAV−ITRを含むDNA配列を制限酵素により切り出すことにより環状プラスミドを直鎖状化し;
サイズによりサイズ分離方法を用いて二重鎖DNAを回収し;
二重鎖DNAを融解することにより、その2つの相補鎖を2つの単鎖に分離し;そして
融解されたDNAの温度を低下させることにより、単鎖が自己アニールによりヘアピン形態になることを許容すること
を含む方法。
【請求項95】
サイズ分離方法が、カラム濾過又はゲル電気泳動、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項94記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−503590(P2008−503590A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518252(P2007−518252)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/022156
【国際公開番号】WO2006/002283
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】