説明

組成物

【課題】
本発明の目的は肌を柔軟に、なめらかに整え、皮膚のバリア機能を高める化粧品剤を得ることにある。
【解決手段】
γリノレン酸を含む油と、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルと、糖セラミドと、リン脂質と、水相を含む乳化組成物が本課題を有効的に解決する。
さらにはγリノレン酸を含む油が、ボラージ、月見草、ユキノシタの植物種子、カニンガメラ属、モルティエレラ属、ムコール属の微生物、スピルリナ属の藻類から抽出した油であり、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルがN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)等のジエステルであり、乳化の処理を30MPa以上で行った場合にさらに効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚のバリア機能を高める乳化剤型の化粧品に関する。
【0002】
化粧品は、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために使用されるものである。
皮膚を美化し、魅力を増し、すこやかに保つための方法の1つとして、肌を柔軟に、なめらかに整え、皮膚のバリア機能を高めることが化粧品の目的を達成する1つの方法である。
このために種々の改良がなされているが充分な結果は得られていない。
γリノレン酸は、皮膚乾燥症、アトピー性皮膚炎、老人性掻痒症などの皮膚症状改善や美白作用があることが知られており、また、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルは乳化、可溶化安定化に極めて優れ、高いエモリエント効果を有することは知られている。
【特許文献1】特開昭61−130237号公報
【特許文献2】特開平03−275697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は肌を柔軟に、なめらかに整え、皮膚のバリア機能を高める化粧品を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、γリノレン酸を含む油と、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルと、糖セラミドと、リン脂質と、水相を含む乳化組成物が上記課題を解決することがわかった。
以下に詳細に説明する。
【0005】
γリノレン酸を含む油とは、遊離脂肪酸のみならず、エステルの構成脂肪酸として存在をも含み、化学的に合成して得ることもできるが、ボラージ(ルリジサ)、月見草、ユキノシタ等の植物種子やスピルリナ(Spirulina)属等の藻類、カニンガメラ(Cunninghamella)属、モルティエレラ(Mortierella)属、ムコール(Mucor)属等の微生物から得ることもでき、これらの市販されている例えば、DSMニュートリションジャパン社製、商品名ロプファボラージ油 タイプ25 、日清オイリオグループ社製、商品名月見草油、出光興産社製、商品名グラノイルCS等が挙げられる。
γリノレン酸を含む油の配合量はγリノレン酸の含有量や製剤の目的、他の原料の種類や配合量によって変化するが、0.01〜20%が好ましい。
【0006】
油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルについて、記載すると、まず、長鎖アシル基としては炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基で例えばラウリン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸等の単一組成の脂肪酸によるアシル基の他に、ヤシ油脂肪酸,牛脂脂肪酸,硬化牛脂脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸あるいは合成により得られる脂肪酸(分枝脂肪酸を含む)のアシル基であってもよい。
酸性アミノ酸としてはアスパラギン酸、グルタミン酸から選ばれる。
これにエステル結合するアルコールは、炭素数8〜30の飽和、不飽和、分岐の脂肪族アルコール類、コレステロール、ラノステロール、スティグマステロールおよびこれらの水添物およびこれらの配合物などのコレステロール類が例示でき、これらの単独または混合物のモノ或いはジエステルあるいはその混合物が利用される。
実際にはN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)が本発明に用いるのに市販もされており、物性的にも利用価値が高い。
油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルの配合量は油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルの種類や製剤の目的、他の原料の種類や配合量によって変化するが、0.01〜20%が好ましい。
【0007】
このほかの油相成分も必要により配合する。
油分を例示すれば、天然動植物油脂例えば、オリーブ油、ミンク油、ヒマシ油、パーム油、牛脂、ヤシ油、ヒマシ油、カカオ油、マカデミアナッツ油等;蝋例えば、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等;高級アルコール例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等;高級脂肪酸例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸ィン、固形パラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等;合成エステル油例えば、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートイソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール;シリコーン誘導体例えば、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0008】
本発明における糖セラミドとしては、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミド等が挙げられ、、牛、馬等の哺乳動物の組織から抽出すること、米糠等から抽出すること、又は化学合成により得ることができる。例えば、グリコシルセラミドは、コメ及び米糠、小麦、大豆、こんにゃく芋などの穀物、豆類及び芋類から得ることができる。
糖セラミドの配合量は糖セラミドの種類や製剤の目的、他の原料の種類や配合量によって変化するが、0.0001〜10%が好ましい。
【0009】
リン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられ、また、これらのものを含有する組成物、すなわち、大豆レシチン、卵黄レシチン、コーンレシチンやこれらの水素添加物なども挙げることができる。
リン脂質の配合量はリン脂質の種類や製剤の目的、他の原料、特に油相のの種類や配合量によって変化するが、0.01〜10%が好ましい。
【0010】
このほか界面活性剤は、配合しなくても乳化するので、必ずしも必要ではないが、剤型、製造方法や目的に応じて配合する。
アニオン界面活性剤(アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤:カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤)等が例示される。
【0011】
次に水相成分であるが、まず、多価アルコールであるが、多価アルコールを例示すれば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、それ以上のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、それ以上のポリプロピレングリコール類、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のブチレングリコール類、グリセリン、ジグリセリン、それ以上のポリグリセリン類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコール類、グリセリン類のエチレンオキシド(以下、EOと略記)、プロピレンオキシド(以下、POと略記)付加物、糖アルコール類のEO、PO付加物、ガラクトース、グルコース、フルクトース等の単糖類とそのEO、PO付加物、マルトース、ラクトース等の多糖類とそのEO、PO付加物などの多価アルコールが挙げられる。
多価アルコールは、保湿剤としての機能も重要であるが、後述するようにD相乳化法を行う場合には多価アルコールが50%以上で特に、グリセリンが多価アルコールの30%以上を占めるように配合することが好ましい。
【0012】
このほか、水溶性、油溶性の各種有効成分、粉体等必要な原料を配合する。
これらの原料を基にして乳化組成物を作成する。乳化物の作成は、特段限定されることはなく、通常用いられる方法を使用できる。
しかしながら、有効性を高めるために、乳化方法にD相乳化法を用いると界面活性剤を用いる量を減少させることが可能であり、1つの有効な手段である。
しかし、この場合、水相が50%以上の多価アルコールを含むようにし、且つ多価アルコールの30%以上がグリセリンである方が好ましい。
また、特開2008−290951号に記載の組み合わせも有効である。
【0013】
さらにD相乳化法あるいはそれ以外の乳化法を用いる場合でも、高圧で乳化することは有効である。
この高圧乳化機とは、流路に高圧を加えることにより高い剪断力を与えることが可能な装置であり、さらに、流路を折り曲げたり、複数の流路を合一させることで液に衝撃力を与える構造を有していてもよい。高圧乳化機は、種類は問わないが、例えば、マントン−ゴーリン型高圧ホモジナイザー、ジェット水流反転型高圧乳化機、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディスク社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)、DeBee2000(BEEインターナショナル社製)、超音波乳化機等が挙げられ、高圧乳化機を二種以上組み合わせて使うことや、複数回処理することも有効である。
特に30MPa以上で処理することによって微粒子化され有効性が高まることがわかった。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を記載する。なお、実施例、比較例の数字は重量部である。
実施例1

米由来糖セラミド 注1) 1.0
水素添加大豆リン脂質 注2) 1.0
グリセリン 40.0
スクワラン 2.0
N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル 4.0
・ベヘニル・2−オクチルドデシル) 注3)
モルティエレラ油 注4) 2.0

水 49.9
パラオキシ安息香酸メチル 0.1

1)Aの原料をそれぞれ計量し、を80℃まで撹拌しながら、加温した。
2)これを高圧乳化装置(マイクロフルイディックス社製、型番M−110−E/H)処理圧55MPaで乳化した。
3)撹拌しながら冷却し、50℃でBを加えた後、35℃まで冷却した。
【0015】
実施例2

馬由来糖セラミド 注5) 1.0
水素添加大豆リン脂質 注2) 1.0
グリセリン 20.0
70%ソルビトール水溶液 10.0
スクワラン 2.0
N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル 4.0
・オクチルドデシル)
月見草油 2.0

水 39.9
1,3ブチレングリコール 10.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
1)Aの原料をそれぞれ計量し、を80℃まで撹拌しながら、加温した。
2)これを高圧乳化装置(マイクロフルイディックス社製、型番M−110−E/H)処理圧55MPaで乳化した。
3)撹拌しながら冷却し、50℃でBを加えた後、35℃まで冷却した。
【0016】
実施例3

スクワラン 10.00
ミリスチン酸オクチルドデシル 10.00
パルミチン酸セチル 2.00
バチルアルコール 3.00
ステアリルアルコール 2.00
ステアリン酸 0.50
シリコン油 0.50

6.0%コロイド性含水ケイ酸塩水溶液 10.00
2.0%結晶性セルロース水溶液 10.00
グリセリン 8.00
1,3−ブチレングリコール 6.00
ポリエチレングリコール 2.00
ヒアルロン酸ナトリウム 0.10
フェノキシエタノール 0.20
パラオキシ安息香酸メチル 0.20
1%加水分解コンキオリン水溶液 0.50
精製水 35.00

実施例1 10.00

製法は、
1)A,B,C,Dをそれぞれ計量した。
2)A,Bを各々80℃まで加温溶解、均一混合した。
3)Aを撹拌しながらBに加えた。
4)これをホモジナイザー(プライミクス社製、型番T.K.オートミクサー20型)3000rpmで10分間乳化した。
5)ゆっくり撹拌しながら冷却し、50℃でCを加えた後、35℃まで冷却した。
【0017】
なお、各実施例で用いた原料は以下の商品を用いた。
注1)一丸ファルコス社製、商品名水溶性セラミドRC
注2)日光ケミカルズ社製、商品名レシノールS−10M
注3)味の素社製、商品名エルディウPS−306
注4)出光興産社製、商品名グラノイルCS
注5)ラボラトワール・セロビオロジック社製、商品名ビオセラミドCH
【0018】
実施例1〜3について、それぞれ20名の女性に1ヵ月間使用してもらったところ、肌が柔軟になり、なめらかさを増し、肌の肌理が理想的な状態になり、皮膚水分量も適切な量を保っていた。以上の結果より、皮膚のバリア機能を高まっていることが推察された。
γリノレン酸を含む油、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステル、糖セラミド等がそれぞれ持っている効果より高い相乗効果を発揮している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γリノレン酸を含む油と、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルと、糖セラミドと、リン脂質と、水相を含む乳化組成物
【請求項2】
γリノレン酸を含む油が、ボラージ、月見草、ユキノシタの植物種子、カニンガメラ属、モルティエレラ属、ムコール属の微生物、スピルリナ属の藻類から抽出した油の1種以上である請求項1の乳化組成物。
【請求項3】
乳化の処理を30MPa以上で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項2の乳化組成物。
【請求項4】
油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルが、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)から選択される1種以上である請求項1乃至請求項3の乳化組成物。
【請求項5】
水相が50%以上の多価アルコールを含む請求項1乃至請求項4の乳化組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の乳化組成物を含む化粧品

【公開番号】特開2012−250965(P2012−250965A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127125(P2011−127125)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】