説明

組立部材及びそれを用いた組立物。

【課題】形状がシンプルで、重量が軽く、組み立て時間が短時間で大きな平面形状、立体形状の組み立てが可能で、建築構造物の組み立て用としても、組立玩具としても適用可能な組立部材とそれを用いた組立物を提供することを目的とする。
【解決手段】組立部材1において、短い左右側辺部2、3、長い上下辺部4、5を備えた板状部材又は棒状部材であって、上辺部4の中央部に間隔をおいて下方に伸びる2つの係合溝6、7を形成し、下辺部5に前記上辺部4の中央部に形成した係合溝6、7よりそれぞれ外側の位置に上方に伸びる2つの係合溝8、9を形成し、前記上下辺部4、5に形成した係合溝6、7、8、9の溝幅を板状部材又は棒状部材の厚みより広くすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の構築用や組立玩具としても適用できるほぼ同一形状の板状部材からなる組立部材及びそれを用いて組み立てられる組立物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物の構築用のほぼ同一形状の組立部材としては、コンクリートブロック、煉瓦等の部材が知られている。また、組立玩具として、1つの部材に係合凹部と係合凸部を形成したほぼ同一形状の組立ブロックが知られている。
【特許文献1】特開2003−3494号公報
【特許文献2】特開平10−94681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の建築構造物の構築用のコンクリートブロックや煉瓦は、ほぼ同一形状であるため製造は容易であるが、重量が大きく取り扱いが不便であり、その連結にはモルタル、鉄筋等が必要となり使い勝手のよい組立部材ではなかった。また、従来の組立玩具は、その形状が複雑であり、大きく複雑な立体形状を組み立てるには多くの単位ブロックと時間が必要になるという問題があった。
【0004】
本発明は、前記従来技術の問題を解決する形状がシンプルで、重量が軽く、組み立て時間が短時間で大きな平面形状、立体形状の組み立てが可能で、建築構造物の組み立て用としても、組立玩具としても適用可能な組立部材及びそれを用いた組立物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本第1発明は、前記課題を解決するために、組立部材において、短い左右側辺部と長い上下辺部を備えた板状部材又は棒状部材であって、上辺部の中央部に間隔をおいて下方に伸びる2つの係合溝を形成し、下辺部に前記上辺部の中央部に形成した係合溝よりそれぞれ外側の位置に上方に伸びる2つの係合溝を形成し、前記上下辺部に形成した係合溝の溝幅を板状部材又は棒状部材の厚みより広くすることを特徴とする。
【0006】
本第2発明は、本第1発明の組立部材において、前記係合溝の深さを、前記板状部材又は棒状部材の幅の1/2以下、1/2、1/2以上の複数とすることを特徴とする。
【0007】
本第3発明は、本第1又は第2発明の組立部材において、前記係合溝間の間隔を、上辺部の中央部に形成した2つの係合溝間の間隔、下辺部の左側辺部側に形成した係合溝と上辺部の左側辺部側に形成した係合溝間の間隔、下辺部の右側辺部側に形成した係合溝と上辺部の右側辺部側に形成した係合溝間の間隔とを同一とすることを特徴とする。
【0008】
本第4発明は、本第1〜第3発明のいずれかの組立部材において、前記係合溝の厚み方向に対する伸びる方向を、板厚方向に平行、左側辺部側に傾斜、右側辺部側に傾斜、左右側辺部側の2つの傾斜が交差したものの複数とすることを特徴とする。
【0009】
本第5発明は、本第1〜第4発明のいずれかの組立部材において、前記組立部材の短い左右側辺部の長さ、長い上下辺部の長さ、厚みの寸法及び係合溝の位置を統一することを特徴とする。
【0010】
本第6発明は、本第1〜第5発明のいずれかの組立部材において、前記組立部材の角部を面取りし丸みをつけることを特徴とする。
【0011】
本第7発明は、組立物において、本第1〜第6発明の組立部材を用い、前記組立部材の係合溝同士の係合、係合溝と係合溝の形成されていない部分との係合により、複数種の多角形を組み合わせた平面形状、立体形状に組み立てられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の短い左右側辺部と長い上下辺部を備えた板状部材又は棒状部材であって、上辺部の中央部に間隔をおいて下方に伸びる2つの係合溝を形成し、下辺部に前記上辺部の中央部に形成した係合溝よりそれぞれ外側の位置に上方に伸びる2つの係合溝を形成し、前記上下辺部に形成した係合溝の溝幅を板状部材又は棒状部材の厚みより広くする構成により、組立部材の係合溝による係合、係合溝と係合溝の形成されていない部分との係合、互いの組立部材のなす角度が直角、鋭角、鈍角に係合でき、複数種の多角形を組み合わせた平面形状及び立体形状に組み立てることができる。
係合溝の深さを、前記板状部材又は棒状部材の幅の1/2以下、1/2、1/2以上の複数とする構成により、平面、及び曲面による複雑な立体形状の組み立てが容易にできる。
係合溝間の間隔を、上辺部の中央部に形成した2つの係合溝間の間隔、下辺部の左側辺部側に形成した係合溝と上辺部の左側辺部側に形成した係合溝間の間隔、下辺部の右側辺部側に形成した係合溝と上辺部の右側辺部側に形成した係合溝間の間隔とを同一とする構成により、多角形の組み立てを容易とすることができる。
係合溝の厚み方向に対する伸びる方向を、厚み方向に平行、左側辺部側に傾斜、右側辺部側に傾斜、左右側辺部側の2つの傾斜が交差の複数とする構成により、互いの組立部材のなす角度を直角、鋭角、鈍角に容易に係合できる。
組立部材の短い左右側辺部の長さ、長い上下辺部の長さ、厚みの寸法及び係合溝の位置を統一する構成により、製造が容易で取り扱いが容易な組立部材とすることができる。
組立部材の角部を面取りし丸みをつける構成により、意匠性が向上すると共に、組立玩具として適用する際の安全性を向上することができる。
このような組立部材により組み立てられる組立物は、平面、及び曲面による複雑な立体形状を表現でき、さらに、組立物は、相互的に支えあうように平面的または曲面的に組み合わせることで、外部荷重、自重、および地面または他の構造物に固定または吊ることによる反力に耐える構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図により説明する。図1は、本発明の組立部材の一実施形態の立面図である。なお、本発明の説明において、左右、上下という表現を用いるが、これはそれぞれの部位を説明するための表現であり、組み立ての際の関係を示すものではない。
【0014】
組立部材1は、短い左側辺部2、短い右側辺部3、長い上辺部4、長い下辺部5を有す所定厚みを有する板状部材又は棒状部材である。図では、板状部材を例として説明する。本発明の組立部材の材料としては、金属製、樹脂製、木製とどのような材料であっても良い。材料の選択は、その用途、要求される強度等に応じて適宜選択する。最近、環境保護の観点から間伐材の有効利用が叫ばれており、軽量で強度があり加工が容易であること、低コストであることからも、木製とすることが望ましい。組立部材1の角部を面取りし丸みを付けると、意匠性が向上し、かつ、組立玩具として用いる場合は、安全性が向上する。組立部材1に複数の色で着色しても良い。
【0015】
組立部材1の上辺部4の中央部には、間隔をおいて下方に伸びる2つの係合溝6、7が形成される。また、下辺部5には、上辺部4に形成した係合溝6、7よりそれぞれ外側の位置に上方に伸びる係合溝8、9が形成される。係合溝6、7、8、9の幅は、板厚より広くする。
【0016】
係合溝間6、7、8、9間の間隔を、上辺部4の中央部に形成した2つの係合溝6、7間の間隔、下辺部5の左側辺部2側に形成した係合溝8と上辺部4の左側辺部2側に形成した係合溝6間の間隔、下辺部5の右側辺部3側に形成した係合溝9と上辺部4の右側辺部3側に形成した係合溝7間の間隔とを同一とする。係合溝6、7間、8、6間、7、9間の間隔を同一とすることにより多角形の組み立てが容易にできる。
【0017】
図2(a)(b)(c)は、係合溝6、7、8、9の深さを示すもので、他の係合溝も同様であるので係合溝6を例として示したものである。係合溝6の深さを、上下辺部間の距離つまり幅に対して区分している。図2(a)は、係合溝6の深さが幅tの1/2以下を示し、図2(b)は、係合溝6の深さが幅tの1/2を示し、図2(c)は、係合溝6の深さが幅tの1/2以上を示す。1つの組立部材1に形成される係合溝6、7、8、9の深さを全部同じ深さで統一しても良いし、1つの組立部材に形成される係合溝6、7、8、9の深さを異なる深さの組み合わせとしても良い。組立部材1の係合溝の深さを複数種とすることにより、組み立てる際、一方の組立部材1の他方の組立部材1に対する突出量を変化させることができ、平面、及び曲面による複雑な立体形状に組み立てることができる。
【0018】
図3(a)(b)(c)(d)は、係合溝6、7、8、9の組立部材1の厚み方向に対する伸びる方向を示すもので、他の係合溝も同様であるので係合溝6を例として示したものである。図3(a)は、係合溝6の伸びる方向が厚み方向と平行なものを示す。係合溝6の伸びる方向が厚み方向と平行であるので、組立部材1同士のなす角度を直角に係合することができる。さらに、係合溝6の幅は、厚みより幅広であるので、組立部材1同士を傾斜させて係合することもできる。図3(b)は、係合溝6の伸びる方向を左側辺部2側に傾斜したものを示す。図3(c)は、係合溝6の伸びる方向を右側辺部3側に傾斜したものを示す。図3(d)は、係合溝6の伸びる方向を、左右側辺部2、3側の2つの傾斜を交差させたものを示す。図3(b)(c)(d)に示す係合溝6は、組立部材1同士のなす角度が鋭角、鈍角に係合する際に有効である。
【0019】
図4は、2つの組立部材1、1’を互いのなす角度が傾斜するように係合し組み立てた状態を示す。一方の組立部材1の上辺部4に形成した係合溝6に他方の組立部材1’の下辺部5に形成した係合溝8が係合している。2つの組立部材1、1’の係合溝6、7、8、9の深さが、板厚の1/2以下であるため、他方の組立部材1’の上辺部4’が一方の組立部材1の上辺部4より突出して組み立てられる。係合溝6、7、8、9の深さが、板厚の1/2であると、係合溝同士の係合では、2つの組立部材は水平に組み立てられる。係合溝6、7、8、9の深さが、板厚の1/2以上であると、図4に示されるものとは逆に一方の組立部材1の上辺部4が他方の組立部材1’の上辺部4’より突出して組み立てられる。
【0020】
図5は、本発明の組立部材1を用いた組立物の一例を示すものである。係合溝6、7、8,9の深さが板厚の1/2以下の6つの組立部材1を互いが傾斜するように組み立て中央に六角形を形成し、係合溝6、7、8、9も深さが板厚の1/2以下の6つの組立部材1を中央の六角形に係合して脚として組み立てている。中央の六角形と6つの脚とで中央の六角形の外側に6個の小さな3角形が形成され、相互的に支えあうように平面的または曲面的に組み合わせることで、外部荷重、自重、および地面または他の構造物に固定または吊ることによる反力に耐える構造となっている。
【0021】
図6は、本発明の組立部材1を用いた組立物の他の例を示すものである。係合溝6、7、8、9の深さが厚みの1/2以下の組立部材1を互いが直交するように組み立て大きな四角形と小さい四角形を組み合わせた立体形状の組立物を組み立てている。
【0022】
図7は、本発明の組立部材を用いた組立物の別の例を示す図である。係合溝6、7、8、9の深さが板厚の1/2以下の6つの組立部材1を互いが傾斜するように組み立て中央に六角形を形成し、係合溝6、7、8、9も深さが板厚の1/2以下の6つの組立部材1を中央の六角形の外側に係合して中央の六角形の外側に6個の3角形が形成され、相互的に支えあうように平面的または曲面的に組み合わせることで、外部荷重、自重、および地面または他の構造物に固定または吊ることによる反力に耐える構造となっている。
【0023】
以上のように本発明の組立部材は、単純な構成であるにもかかわらず、平面、及び曲面による複雑な立体形状の組立物を短時間に容易に組み立ることができ、建築等の構造物の構築部材や組立玩具としても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の組立部材の一例を示す立面図である。
【図2】本発明の組立部材の係合溝の深さを示す図である。
【図3】本発明の組立部材の厚み方向に対する係合溝の伸びる方向を示す図である。
【図4】本発明の組立部材の係合を示す図である。
【図5】本発明の組立部材を用いた組立物の一例を示す図である。
【図6】本発明の組立部材を用いた組立物の他の例を示す図である。
【図7】本発明の組立部材を用いた組立物の別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1:組立部材、2:左側辺部、3:右側辺部、4:上辺部、5:下辺部、6:係合溝、7:係合溝、8:係合溝、9:係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短い左右側辺部と長い上下辺部を備えた板状部材又は棒状部材であって、上辺部の中央部に間隔をおいて下方に伸びる2つの係合溝を形成し、下辺部に前記上辺部の中央部に形成した係合溝よりそれぞれ外側の位置に上方に伸びる2つの係合溝を形成し、前記上下辺部に形成した係合溝の溝幅を板状部材又は棒状部材の厚みより広くすることを特徴とする組立部材。
【請求項2】
前記係合溝の深さを、前記板状部材又は棒状部材の幅の1/2以下、1/2、1/2以上の複数とすることを特徴とする請求項1に記載の組立部材。
【請求項3】
前記係合溝間の間隔を、上辺部の中央部に形成した2つの係合溝間の間隔、下辺部の左側辺部側に形成した係合溝と上辺部の左側辺部側に形成した係合溝間の間隔、下辺部の右側辺部側に形成した係合溝と上辺部の右側辺部側に形成した係合溝間の間隔とを同一とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の組立部材。
【請求項4】
前記係合溝の厚み方向に対する伸びる方向を、厚み方向に平行、左側辺部側に傾斜、右側辺部側に傾斜、左右側辺部側の2つの傾斜が交差したものの複数とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組立部材。
【請求項5】
前記組立部材の短い左右側辺部の長さ、長い上下辺部の長さ、厚みの寸法及び係合溝の位置を統一することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組立部材。
【請求項6】
前記組立部材の角部を面取りし丸みをつけることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組立部材。
【請求項7】
前記請求項1〜6の組立部材を用い、前記組立部材の係合溝同士の係合、係合溝と係合溝の形成されていない部分との係合により、複数種の多角形を組み合わせた平面形状、立体形状に組み立てられることを特徴とする組立物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−156912(P2008−156912A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347311(P2006−347311)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年8月29日 インターネットアドレス「http://coe2006.exblog.jp/3666030」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月1日 インターネットアドレス「http://coe2006.exblog.jp/3918048」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年11月1日 インターネットアドレス「http://coe2006.exblog.jp/4108869」に発表
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】