説明

組電池とその製造方法

【課題】複数の素電池を並列接続した並列ブロックをさらに直列接続する際、素電池の接続部分の電圧降下を低減し、薄型、小型化した組電池とその製造方法を提供する。
【解決手段】リード板2を介して各並列ブロック9を保護回路に接続する組電池8において、リード板2をU字に折り曲げ加工することなく、リード板の表裏に並列ブロック9を溶接接合することにより、リード板2長を短くしてリード板2の電圧降下を抑制することができる。また、リード板2をU字に折り曲げ加工しないので、組電池の組立精度が向上し、小型化、組電池のパッケージングが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素電池を並列に接続した並列ブロックをさらに直列に接続している組電池とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンに代表されるAV機器分野では、小型かつ高出力が可能なリチウムイオン電池が使用されている。ノートパソコンの用途においては、所定の出力、容量を確保するために、複数の素電池を並列に接続した並列ブロックをさらに直列に複数ブロック接続した組電池の形態にして使用されている。
【0003】
並列ブロックを直列接続する際には、リード板を介して行い、リード板を保護回路に接続するが、リード板の表裏に並列ブロックを接続することは、溶接の関係で困難であるので、従来は、リード板の1面の両端に直列接続する並列ブロックを溶接してから、リード板を折り曲げることにより、省スペースな組電池を形成していた。
【0004】
図10は従来の2並列3直列の電池パックの一例を表す構成図である。素電池1はリード板2a,2bを介して、2個の素電池を並列に接続した並列ブロック9をさらに直列に3ブロック接続して組電池8とし、組電池8はリード板2a,2bを介して保護回路基板3とを接続している。
【0005】
リチウムイオン電池では、素電池1を複数個接続してなる組電池8において、いかなる誤使用の場合にも安全が確保されるように、電池パック10内に保護回路基板3を具備し、過充電、過放電、および過電流を防止している。その中でも最も危険度の高い過充電を防止するために、素電池1を並列に接続した並列ブロック9を直列に接続する構成としている。
【0006】
並列ブロック9はリード板2a,2bを介して保護回路基板3に接続しており、過充電が起こらないように各並列ブロック9の電圧を保護回路基板3で監視している。
図11は従来の並列ブロックの接続状態を表す展開図である。組電池8は図11に示すように、まず、リード板2aと並列ブロック9aを構成する2つの素電池1の負極である外装缶底部1bの電極を接続し、リード板2bの一端と並列ブロック9aを構成する2つの素電池1の正極である蓋部1aの電極を接続し、リード板2bの他端に隣接する並列ブロック9bを構成する2つの素電池1の負極である外装缶底部1bの電極を接続する。
【0007】
次に、別のリード板2b’の一端と並列ブロック9bを構成する2つの素電池1の正極である蓋部1aの電極を接続し、リード板2b’の他端を隣接する並列ブロック9cを構成する2つの素電池1の負極である外装缶底部1bの電極に接続し、さらに、リード板2a’と並列ブロック9cを構成する2つの素電池1の正極である蓋部1aに接続する。
【0008】
リード板2a,2b,2a’,2b’と素電池1の各接続は、スポット溶接によって接続される。パラレルギャップの溶接用電極棒12を素電池1の一点鎖線で示す位置において、リード板2a,2b,2a’,2b’の上から押圧して大電流を流すことにより、金属の接触抵抗と固有比抵抗による発熱を利用し、金属の融点まで金属の温度を高めて溶接させる。
【0009】
このように接続された素電池1とリード板2a,2b,2a’,2b’は、リード板2bおよびリード板2b’をU曲げすることにより、素電池1を2並列3直列の直線上にフォーミングし組電池8とする。製作された組電池8は、リード板2a,2b,2a’,2b’の一端をはんだ付け等により保護回路基板3に接続されたのちにケースに収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−100416号公報
【特許文献2】特開2006−49096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の組電池の製造方法によると、リード板をU曲げしているために、次のような課題がある。PCなどのAV機器に放電する際に、組電池からリード板を介して電流が流れ、リード板の金属固有の比抵抗により、リード板において電圧降下が発生する。U曲げされているリード板(2b,2b’:図10参照)は、U曲げされていないリード板(2a,2a’)と比較して約2倍の長さになり、約2倍の電圧降下が発生するという問題がある。PCなどのAV機器の高容量化が進むと、電圧降下がますます無視できなくなる。
【0012】
また、製造工程においてU曲げが発生すると、折り曲げ工程の増加に加えて、組電池フォーミング後の組立精度のばらつきが生じやすく、曲げ部分が規格以上に組電池の外形より突出し、小型化が阻害されると共に、組電池のパッケージングが困難、あるいは不能になるという問題点があった。
【0013】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、複数の素電池を並列に接続した並列ブロックをさらに直列に連結し、リード板を介して各並列ブロックを保護回路に接続する組電池において、リード板の電圧降下を抑制ながら、組電池の組立精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明の組電池は、リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極を接続した複数の素電池が並列および直列に連結された組電池において、1枚のリード板の一方の面と前記第1の素電池の蓋部の電極とを接続し、当該リード板の他方の面と前記第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続していることを特徴とする。
【0015】
さらに、前記リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続する組電池であって、前記リード板がスリットで区切られた複数の分割リードで構成されることが好ましい。
【0016】
さらに、前記リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続する組電池であって、前記リード板が複数の分割リードとなって外装缶底部の電極に接続されていることが好ましい。
【0017】
さらに、前記リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続する組電池であって、前記リード板の縁部が円弧状に溶接されても良い。
さらに、前記リード板が、前記一方の面方向に突出する凸形状と、前記凸形状の周辺に形成される平坦部と、保護回路基板に接続される端子とを有し、前記凸形状が前記素電池の蓋部の電極と接続し、前記平坦部が前記素電池の外装缶底部の電極とレーザ溶接で接続することが好ましい。
【0018】
さらに、前記平坦部が前記凸形状の隣接する1箇所に設けられることが好ましい。
さらに、前記凸形状を形成する支持部は、前記凸形状が前記素電池の蓋部の電極に接続される面から離れるほど、前記凸形状の外側に広がることが好ましい。
【0019】
また、本発明の組電池の製造方法は、リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極を接続した複数の素電池が並列および直列に連結された組電池の製造方法であって、スリットで区切られた複数の分割リードで構成されたリード板を折り曲げる第1工程と、前記リード板の一方の面で、折り曲げた状態の複数の分割リードのうち中央に前記第1の素電池の蓋部の電極を接続する第2工程と、前記リード板の他方の面で、折り曲げた状態の複数の分割リードのうち両端一対に前記第2の素電池の外装缶底部の電極に接続する第3工程と、前記第2,第3工程の後に折り曲げた前記リード板を元の状態に折り返す第4工程とを有することを特徴とする。
【0020】
さらに、前記第2,第3工程において、リード板の縁部に沿って円弧状に溶接しても良い。
また、本発明の組電池の製造方法は、複数の凸形状と前記凸形状に隣接して設けられる平坦部とを備えるリード板を介して複数の素電池が並列および直列に連結される組電池の製造方法であって、複数の前記素電池の蓋部に設けられる電極それぞれと前記凸形状とをスポット溶接して複数の前記素電池が並列接続される並列ブロックを複数形成する工程と、前記並列ブロックの外装缶底部に設けられる電極と別の前記並列ブロックが接続された前記リード板の前記平坦部とを重ね合わせる工程と、前記凸形状により生じる前記並列ブロック間の隙間から前記平坦部にレーザを照射して前記外装缶底部に設けられる電極と前記平坦部とをレーザ溶接して前記並列ブロックを直列接続する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、リード板をU字折り曲げ加工することなく、リード板の表裏に並列ブロックを溶接接合することができるので、リード板を介して各並列ブロックを保護回路に接続する組電池において、リード板の電圧降下を抑制ながら、組立精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の組電池の構造を説明する図
【図2】第1実施形態における組電池の構造を説明する図
【図3】第2実施形態における組電池の製造方法を説明する図
【図4】第2実施形態における別のリード板を用いた組電池を説明する図
【図5】第3実施形態におけるリード板の構成を示す斜視図
【図6】第3実施形態における組電池の構成を示す斜視図
【図7】第3実施形態における組電池のリード板接続状態を示す図
【図8】第3実施形態の組電池の製造方法における蓋部とリード板の凸形状とを接合する工程を説明する図
【図9】第3実施形態の組電池の製造方法における外装缶底部とリード板の平坦部とを接合する工程を説明する図
【図10】従来の2並列3直列の電池パックの一例を表す構成図
【図11】従来の並列ブロックの接続状態を表す展開図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
図1(a),図1(b)は本発明の組電池の構造を説明する図であり、図1(a)は組電池の正面図、図1(b)は素電池の正面図を示す。図1(a)において、本実施形態に係る組電池8の例として2並列3直列の電池パック10を構成する場合を示す。2個の素電池1を並列に接続した並列ブロック9を直列に3ブロック接続して組電池8とし、組電池8における核素電池1はリード板2を介して保護回路基板3と接続している。
【0024】
図1(b)に示すように、素電池1は正極となる電極の蓋部1aと、素電池1の負極となる電極の外装缶底部1bとを備えており、さらにリング状の絶縁板1cを備えることが好ましい。組電池8に構成した場合に、絶縁板1cを設けていると、素電池1の外装缶底部1bが隣接する並列ブロック9の外装缶底部1bと接触しショートすることを防止することができる。
【0025】
また、リード板2は、一方の素電池1の正極である蓋部1aと他方の素電池1の蓋部1aを接続して保護回路基板3へつなぎ込むリード板2a’と、一方の素電池1の負極である外装缶底部1bと他方の素電池1の外装缶底部1bを接続して保護回路基板3へつなぎ込むリード板2aと有している。
【0026】
さらに、リード板2の一方の面が、一方の素電池1の蓋部1aと他方の素電池1の蓋部1aを接続し、リード板2の他方の面が、一方の素電池1の外装缶底部1bと他方の素電池1の外装缶底部1bを接続して保護回路基板3へつなぎ込むとともに、2個の素電池1を並列に接続した並列ブロック9を直列接続とするリード板2cからなる。
【0027】
これにより、例えばリチウムイオン素電池を複数個接続してなる組電池において、いかなる誤使用の場合にも安全なように、電池パック内に保護回路基板3を具備し、過充電、過放電、および過電流を防止している。その中でも最も危険度の高い過充電を防止するために、素電池を並列に接続した並列ブロックを直列に接続する構成としている。
【0028】
また、リード板を介して各並列ブロックを保護回路に接続する組電池において、リード板をU字に折り曲げ加工することなく、リード板の表裏に並列ブロックを溶接接合することができるので、リード板長を短くしてリード板の電圧降下を抑制することができる。また、リード板をU字に折り曲げ加工しないので、組立精度が向上し、小型化、組電池のパッケージングが容易となる。
【0029】
以下、実施形態として、主にリード板2の構成を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図2は第1実施形態における組電池の構造を説明する図である。
【0030】
本第1実施形態のリード板は、図2(a)に示すように、リード板2が素電池と接続する側がスリットで区切られて3本に分割されており、分割リード板中央部2dと両端の分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fを有している。分割リード板中央部2dは、一方の面を素電池1の正極である蓋部1aに接続し、分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fは、他方の面を素電池1の負極である外装缶底部1bに接続する。
【0031】
素電池1の外装缶はDI(Drawing & Ironing)法によって円筒缶に成形するのが一般的であり、金属のコイル材をカップ形状に絞り加工し、さらに側壁を数段階のしごき加工で引き延ばして缶胴を成形する。
【0032】
また、リード板2は金属板であり、材質は特に限定されるものではないが、Ni、CuもしくはFeを使用する。また、外装缶との溶接容易性を高めるために、NiFe(NiメッキFe鋼板)、NiCu(NiメッキCu鋼板)、もしくはCu板とNi板の貼り合わせによるクラッド鋼板を用いることもできる。リード板の厚みは、0.1〜0.15mmであり、材質固有の比抵抗と電池パックの電流容量から、厚みを選択することができる。
【0033】
リード板の厚みは、リード板の金属固有の比抵抗に合わせて薄くすることが可能である。例えば、Ni板の場合、厚みは0.15mm程度であるが、Cu板を使用するとさらに薄くすることが可能である。
【0034】
なお、素電池1の外装缶底部1bを複数に分割されたリード板(分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2f)で接続する理由は、リード板が薄い場合に、溶接時や溶接後に破断する可能性があり、それを防止するために本発明では接続点数、接続面積を増やすことで、接続信頼性を高めている。
【0035】
また、外装缶底部には、あらかじめ外装缶内部にある負極電極と集電板を介して外装缶底部に溶接している溶接ポイントがある。その溶接ポイントは、外装缶底部の中心付近に設けるのが一般的であり、リード板と外装缶底部の接続ポイントが前記溶接ポイントと重なるのを防止するため、後述するように本発明では外装缶底部の中心から円周方向に避けることで、接続信頼性を高めている。
【0036】
次にリード板と素電池の接続方法について、図2(b)に示す溶接時の状態を表す展開図を用いて説明する。スリットで区切られた3本の分割リードを、分割リード板中央部2dと両端の分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fを図の破線を支点として一旦90度以上に開口する。分割リード板中央部2dは、並列ブロック9として並列に接続する2つの素電池1の正極である蓋部1aに重ね合わせる。また、分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fは、直列に接続する別の配列ブロック9’の2つの素電池1の負極である外装缶底部1bに重ね合わせる。この状態を保持したまま、スポット溶接によって接続される。
【0037】
例えば、パラレルギャップの溶接用電極棒12(図11参照)を1点鎖線で示す位置においてリード板2の上から押圧して、大電流を流すことで金属の接触抵抗と固有比抵抗による発熱を利用し、金属の融点まで金属の温度を高めて溶接させる。図2(b)に示す、「×」で示す位置が溶接したポイントの例で、例えば、素電池1の蓋部1aは1箇所、外装缶底部1bは素電池1の並列方向に線対称に4箇所設けている。
【0038】
このように接続された素電池1とリード板2は、図2(b)の破線を支点として、分割リード板中央部2dと両端の分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fを折り返して、元の状態になるように閉じ、図2(c)に示すように隣接する素電池1を直線上に連結し、組電池8にフォーミングする。
【0039】
また、抵抗溶接の溶接容易性を高めるために、溶接用電極棒は平坦のままでリード板に突起を出すことにより、リード板の溶接部位に溶接電流を集中させてもよい。
第1実施形態によれば、複数の素電池を並列に接続した並列ブロックをさらに直列に連結し、リード板を介して各並列ブロックを保護回路に接続する組電池において、リード板を分割リードにして、素電池の外装缶底部と接続することにより、落下衝撃時に複数の分割リードのうち、1本の接続が外れたとしても接続を維持することが可能であり高い信頼性の組電池を実現できる。同時に、リード板長を抑制することができるため、リード板での電圧降下を抑制すると共に、組立精度を向上させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態における組電池の製造方法を説明する図であり、図3(a)は製造に用いるセット治具、図3(b)は押圧治具の加圧時の状態、図3(c)は溶融時の照射ビームを示す図である。
【0041】
本実施形態2において用いるリード板2は、前述の実施形態1と同様に、素電池1と接続する側がスリットで区切られて3本に分割され、分割リード板中央部2dと両端の分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fで構成されている。
【0042】
リード板2と素電池1の接続方法として、図3(a)に示すように素電池1とリード板2をセット治具5のセット下治具5aにセットする。このセット下治具5aには、素電池1とリード板2を位置決めできるように、所定の寸法の掘り込みが設けてあり、素電池1とリード板2を所定の位置にセットする。
【0043】
リード板2は、分割リード板中央部2dを図3(a)のRの位置を支点として一旦折り曲げた後に、セット下治具5aの所定の位置に挿入する。次に、セット上治具5bを、セット下治具5aの上から被せるように嵌合する。セット上治具5bには、セット下治具5aの掘り込みに相当する位置に対向して、同様に掘り込みが設けられており、素電池1とリード板2の仮位置決めをすることができる。
【0044】
次に、図3(b)に示すように、A面において、分割リード板中央部2dを挟み込むように、並列ブロック9の2つの素電池1の正極である蓋部1aに押圧治具6を押し当てる。さらに、押圧治具6をB面に対して、分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fは、直列に接続するもう一方の並列ブロック9’の2つの素電池1の負極である外装缶底部1bに押し当てる。
【0045】
この状態を保持したまま、接続方法としては、レーザを使用したレーザ溶接を使用する。分割リード板中央部2dと並列ブロック9の2つの素電池1の蓋部1aとの接続は、図3(b)の太線(溶融部分)に示すように、分割リード板中央部2dの縁部に沿って、図3(c)に示す照射ビームの矢印の方向から、YAGレーザ等のビームを照射して、分割リード板中央部2dと蓋部1aの両金属を溶融させて接続させる。
【0046】
さらに、分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fと並列ブロック9’の2つの素電池1の外装缶底部1bとの接続は、図3(b)の太線(溶融部分)に示すように、分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fのそれぞれの縁部に沿って、YAGレーザ等のビームを照射して、分割リード板第1端部2e、分割リード板第2端部2fと外装缶底部1bの両金属を溶融させて接続させる。
【0047】
図3(b)の太線(溶融部分)で示す位置が溶接したポイントの例で、例えば、素電池1の蓋部1aは、分割リード板中央部2dの縁部に沿って素電池1の中心線に対して線対称になるように2箇所、また外装缶底部1bは、素電池1の中心線に対して線対称に4箇所設けている。
【0048】
このように接続された素電池とリード板は、図3(a)のRを支点として分割リード板中央部2dと両端の分割リード板第1端部2eおよび分割リード板第2端部2fを折り返し元の状態になるように閉じ、図2(c)に示したように隣接する素電池1を直線上に連結し、組電池9にフォーミングする。
【0049】
なお、リード板2は金属板であり、材質は特に限定されるものではないが、Ni、CuもしくはFeを使用する。また、外装缶との溶接容易性を高めるために、NiFe(NiメッキFe鋼板)、NiCu(NiメッキCu鋼板)、もしくはCu板とNi板の貼り合わせによるクラッド鋼板を用いることもできる。一般的には、素電池外装缶の材料は、NiFe(NiメッキFe鋼板)を使用しているため、リード板の材料をNiCu(NiメッキCu鋼板)、もしくはCu板とNi板の貼り合わせによるクラッド鋼板を用いる場合には、異種金属接続になる。その場合には、レーザ照射を融点の高いNi側すなわち素電池側からウィービングすることで、融点の低いCuが溶け落ちることを防止する。また、レーザ照射を融点の高いNi側すなわち素電池側の方を長い時間照射してもよい。
【0050】
また、リード板2を図4(a)に示すリード板4のように、外形を円形状にしても構わない。ここで、図4は第2実施形態における別のリード板を用いた組電池を説明する図である。図4(a)に示すように、リード板4は円弧状のスリットで分割されており、内輪部4aと外輪部4bに分割して構成される。図4(b)の溶接する状態を表す展開図に示すように、内輪部4aは、一方の素電池1の蓋部1aに接続し、外輪部4bは、他方の素電池1の外装缶底部1bに接続する。図4(c)は組電地の部分透過斜視図でリード板を示す。
【0051】
図4(b)の展開図では、矢印で示す溶融部分(黒色部分)の位置が溶接したポイントの例で、例えば、素電池1の蓋部1aは、リード板4の内輪部4aの外周の円弧状に沿って溶接され、外装缶底部1bは、リード板4の外輪部4bの外周の円弧状に沿って溶接される。
【0052】
さらに、素電池1の蓋部1aとリード板4の内輪部4aとの円弧状の溶接ポイントは、素電池1の中心線Lに対してLa側に集中させ、外装缶底部1bとリード板4の外輪部4bとの円弧状の溶接ポイントは、素電池1の中心線Lに対してLb側に集中させている。
【0053】
本第2実施形態によれば、リード板4と素電池1を接続する際に、リード板4の材質を銅、銅合金などの低抵抗な材料を選択することができ、リード板の接続抵抗の低減することが可能である。
【0054】
また、レーザ溶接によって、短時間に接続することが可能となり、抵抗溶接よりも接続面積を大きくすることにより、接続信頼性に優れた組電池の製造が実現できる。さらに、溶接ポイントを素電池1の中心線Lに対して線対称に線上に、また円弧状に設けることで、振動等の衝撃が素電池1に対して均一に作用するので、耐久性、信頼性に優れた組電池が実現できる。
【0055】
(第3実施形態)
1枚の平板であるリード板の表裏両面に、直列接続される並列ブロックの正極と負極とを溶接して接続することが困難であったため、上記実施形態では、正極を接続する部分と負極を接続する部分とにリード板を分割し、分割された部分を広げた状態でそれぞれの部分に並列ブロックを溶接し、それを1枚のリード板の形状に戻すことにより、U字形状に折り曲げ加工することなく、素電池を並列接続して並列ブロックを形成し、並列ブロックを直列接続して組電池を製作していた。
【0056】
本実施形態では、リード板を曲げ加工してあらかじめリード板に凸形状を形成することにより、並列ブロックを直列接続した状態で、並列ブロック間にレーザを照射可能な隙間を形成することを特徴とする。この構成により、1枚の平板であるリード板の表裏両面に、直列接続される並列ブロックの正極と負極とを溶接して接続することが可能となるものである。
【0057】
以下、図5〜図7を用いて、第3実施形態におけるリード板の構造およびこのリード板を用いた組電池について説明する。
図5は第3実施形態におけるリード板の構成を示す斜視図である。図6は第3実施形態における組電池の構成を示す斜視図であり、図6(a)は組電池全体の構成を示す斜視図、図6(b)は図6(a)のC部を拡大して一部を透視的に示す概念図である。図7は第3実施形態における組電池のリード板接続状態を示す図である。
【0058】
図5に示すように、本実施形態のリード板15は、平板な板状のリード板を曲げ加工して凸形状16を形成した構造である。凸形状16は突出した外側の面が素電池の正極である蓋部に接続される。凸形状16の周辺部に設けられる平坦部19は凸形状16の突出方向に対する反対側の面で素電池の負極である外装缶底部に接続される。また、リード板15には端子17が設けられており、端子17が保護回路基板に接続されることにより、リード板15に接続された並列ブロックが保護回路に接続される構成である。図では、2つの素電池が並列に接続される並列ブロックを直列接続する場合に用いられるリード板15を例示しているため、凸形状16と平坦部19との組を2つ設ける構成である。3つ以上の素電池が並列に接続される並列ブロックに用いる場合には、凸形状16と平坦部19との組を3つ以上直列に設ければ良い。また、図では、凸形状16と平坦部19との組の直列接続を平坦部19間で行う構成となっているが、凸形状16間で行うことも、その両方で行うこともでき、接続構成は任意である。
【0059】
次に、図5〜図7を用いて、本実施形態の組電池の構成について説明する。ここで、組電池として、2つの素電池を並列接続した並列ブロックを3つ直列に接続する構成を例として説明する。
【0060】
並列ブロック9を構成する素電池1の正極である蓋部1aは、リード板15の凸形状16の面16aとスポット溶接等で接続され、並列ブロック9を構成する素電池1をリード板15を介して並列接続している。並列ブロック9間のリード板15においては、平坦部19の面16aに対する裏面側である面19aにて、素電池1の負極である外装缶底部1bと平坦部19とがレーザ溶接により接続され、並列ブロック9を構成する素電池1をリード板15を介して並列接続すると共に、2つの並列ブロック9を直列接続している。また、組電池の両端部においては、並列ブロック9を構成する素電池1の蓋部1aまたは外装缶底部1bがリード板15を介して並列接続される。さらに、各リード板15には端子17が形成されており、端子17を保護回路基板(図視せず)に接続することにより、保護回路基板で各並列ブロック9の電圧を監視して、過充電、過放電、過電流の防止に用いている。
【0061】
ここで、凸形状15の支持部22は蓋部1aと接する面および平坦部19と直交していても良いが、蓋部1aと接する面から離れるほど凸形状15の外側に広がる形状とすることにより、レーザ溶接時に平坦部19を外装缶底部1bに密着させる力が増し、溶接時の接合強度が向上するため好ましい。
【0062】
平坦部19の面16aと外装缶底部1bとのレーザ溶接は、リード板15の凸形状16により生じる並列ブロック9間の隙間から、レーザ溶接部21にレーザ20を照射することにより行う。
【0063】
本実施形態では、蓋部1aと凸形状16とを接続させて並列ブロック9に接続されたリード板15を別の並列ブロック9の外装缶底部1bに重ね合わせた状態で、リード板15の凸形状16により生じる並列ブロック9間の隙間からレーザ20を照射する。これにより、平坦部19の面19aと外装缶底部1bとがレーザ溶接部21でレーザ溶接される。このように、リード板15をU字に曲げ加工することなく、リード板15の表裏にそれぞれ並列ブロック9を接合することで並列ブロック9を直列接続することができるため、リード板15長が長くなることを抑制して電圧降下を抑制することができる。また、U字に曲げ加工せずリード板15の表裏にそれぞれ並列ブロック9を接合することができるため、組立精度を高く維持することができ、パッケージングを容易に行うことができると共に、並列ブロック9間にリード板15を収めることができるので、組電池の小型化を阻害することもない。
【0064】
なお、平坦部19は凸形状16の周辺2箇所に形成しても良いが、凸形状16に隣接して1つの平坦部19を形成し、1つの平坦部19で外装缶底部1bの1端部とリード板15とを接合することが好ましい。この構成により、リード板15の平坦部19以外の領域は固定されず自由に動作することができるため、組電池に振動等の衝撃が伝達されたとしても、自由な端部でリード板15に入力される振動等を逃がすことができ、また、自由な端部で衝撃を吸収することができるため、リード板15の接続に対する耐震性,耐衝撃性が向上し、組電池の接続信頼性が向上される。
【0065】
また、一般的に、接続強度と液漏れ防止の観点から、レーザ溶接部21における溶接深さは、0.08mm〜0.10mm程度にすることが好ましい。素電池の一般的な大きさから平坦部の幅は5.0mm程度となり、リード板15厚を0.15mmとした場合、接合強度を確保するために、レーザ溶接部21のレーザ照射方向と平行な長さは0.3mm程度が必要となる。素電池1の外装が外装缶底部1bの周囲に露出するため、外装の内側でレーザ溶接部21の長さを0.3mm程度確保するのに必要なレーザ20の照射角を確保するためには、例えば、蓋部1aの正極の高さを0.45mmとすると、凸形状16高さを1.0mm以上にする必要がある。
【0066】
次に、図8,図9を用いて、本実施形態の組電池の製造方法を説明する。ここでは、2つの素電池を並列接続した並列ブロックを3つ直列に接続する組電池を例として、その製造方法を説明する。
【0067】
図8は第3実施形態の組電池の製造方法における蓋部とリード板の凸形状とを接合する工程を説明する図であり、図8(a)は斜視図、図8(b)は平面図である。図9は第3実施形態の組電池の製造方法における外装缶底部とリード板の平坦部とを接合する工程を説明する図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は素電子の並列方向と平行な方向から見た平面図、図9(c)は外装缶底部のリード板接合状態を示す透視平面図である。
【0068】
まず、リード板15を用いて2つの素電池1を並列接続する並列ブロック9を形成する。ここで、2つの素電池1の正極である蓋部1aと、1つのリード板15に形成された2つの凸形状16とを面16aでスポット溶接することにより、2つの素電池1を並列に接続した並列ブロック9を形成し、同様に3つの並列ブロック9を形成する(図8)。凸形状16において、スリット18は必ずしも必要ないが、凸形状16にスリット18を設けることにより、凸形状16と蓋部1aとの間に電流経路が確保され、スポット溶接が容易となり好ましい。
【0069】
次に、蓋部1aとスポット溶接されたリード板15を用いて並列ブロック9を直列に接続する。並列ブロック9を構成する素電池1の負極である外装缶底部1bを、別の並列ブロック9の蓋部1aと接合されたリード板15の平坦部19の面19a側と重ね合わせる。この状態で、凸形状16により生じた並列ブロック9間の隙間から、平坦部19にレーザ20を照射することにより、レーザ溶接部21で平坦部19と外装缶底部1bとをレーザ溶接する。このように、外装缶底部1bと並列ブロック9に接合されたリード板15とを接合し、2つの並列ブロック9を接合する(図9)。さらに、同様の方法でもう一つの並列ブロックを直列接続する。
【0070】
最後に、3つの並列ブロック9の直列接続の端部に露出する2つの素電池1の外装缶底部1bをリード板15で接合して、2つの素電池を並列接続した並列ブロックを3つ直列に接続する組電池が製造される。
【0071】
その後、それぞれのリード板15の端子17を保護回路基板(図示せず)に接続し、組電池をパッケージングして電池パックが製造される。
本実施形態の製造方法では、蓋部1aと凸形状16とを接続させて並列ブロック9に接続されたリード板15を別の並列ブロック9の外装缶底部1bに重ね合わせた状態で、リード板15の凸形状16により生じる並列ブロック9間の隙間から、レーザ20を照射する。この方法により、平坦部19の面16aと外装缶底部1bとがレーザ溶接部21でレーザ溶接されるため、リード板15をU字に曲げ加工することなく、リード板15の表裏にそれぞれ並列ブロック9を接合することで並列ブロック9を直列接続することができるため、リード板15長が長くなることを抑制して電圧降下を抑制することができる。また、U字に曲げ加工せずリード板15の表裏にそれぞれ並列ブロック9を接合することができるため、組立精度を高く維持することができ、パッケージングを容易に行うことができると共に、並列ブロック9間にリード板15を収めることができるので、組電池の小型化を阻害することもない。
【0072】
なお、前述した各実施形態において、本発明の組電池およびその製造方法は、PC等に組み込まれる電池パックを例示して説明したが、これに限られるものではなく、PC以外のAV機器、電動工具など電子機器分野における電池パックにも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の組電池とその製造方法は、小型、低抵抗であっても耐落下衝撃の接続信頼性が要求される組電池の製造等において有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 素電池
1a 蓋部(正極)
1b 外装缶底部(負極)
1c 絶縁板
2,2a,2a’,2b,2b’,2c リード板
2d 分割リード板中央部
2e 分割リード板第1端部
2f 分割リード板第2端部
3 保護回路基板
4 円形状のリード板
4a 内輪部
4b 外輪部
5 セット治具
5a セット下治具
5b セット上治具
6 押圧治具
8 組電池
9,9’,9a,9b,9c 並列ブロック
10 電池パック
11 保持筒
12 溶接用電極棒
13 リング状の接続部品
14 保持キャップ
15 リード板
16 凹形状
16a 面
17 端子
18 スリット
19 平坦部
19a 面
20 レーザ
21 レーザ溶接部
22 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極を接続した複数の素電池が並列および直列に連結された組電池において、
一枚のリード板の一方の面と前記第1の素電池の蓋部の電極とを接続し、当該リード板の他方の面と前記第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続していることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続する組電池であって、
前記リード板がスリットで区切られた複数の分割リードで構成されたことを特徴とする請求項1記載の組電池。
【請求項3】
前記リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続する組電池であって、
前記リード板が複数の分割リードとなって外装缶底部の電極に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の組電池。
【請求項4】
前記リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極とを接続する組電池であって、
前記リード板の縁部が円弧状に溶接されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の組電池。
【請求項5】
前記リード板が、
前記一方の面方向に突出する凸形状と、
前記凸形状の周辺に形成される平坦部と、
保護回路基板に接続される端子と
を有し、前記凸形状が前記素電池の蓋部の電極と接続し、前記平坦部が前記素電池の外装缶底部の電極とレーザ溶接で接続することを特徴とする請求項1記載の組電池。
【請求項6】
前記平坦部が前記凸形状の隣接する1箇所に設けられることを特徴とする請求項5記載の組電池。
【請求項7】
前記凸形状を形成する支持部は、前記凸形状が前記素電池の蓋部の電極に接続される面から離れるほど、前記凸形状の外側に広がることを特徴とする請求項5または請求項6記載の組電池。
【請求項8】
リード板を介して第1の素電池の蓋部の電極と第2の素電池の外装缶底部の電極を接続した複数の素電池が並列および直列に連結された組電池の製造方法であって、
スリットで区切られた複数の分割リードで構成されたリード板を折り曲げる第1工程と、前記リード板の一方の面で、折り曲げた状態の複数の分割リードのうち中央に前記第1の素電池の蓋部の電極を接続する第2工程と、前記リード板の他方の面で、折り曲げた状態の複数の分割リードのうち両端一対に前記第2の素電池の外装缶底部の電極に接続する第3工程と、前記第2,第3工程の後に折り曲げた前記リード板を元の状態に折り返す第4工程とを有することを特徴とする組電池の製造方法。
【請求項9】
前記第2,第3工程において、
リード板の縁部に沿って円弧状に溶接することを特徴とする請求項8記載の組電池の製造方法。
【請求項10】
複数の凸形状と前記凸形状に隣接して設けられる平坦部とを備えるリード板を介して複数の素電池が並列および直列に連結される組電池の製造方法であって、
複数の前記素電池の蓋部に設けられる電極それぞれと前記凸形状とをスポット溶接して複数の前記素電池が並列接続される並列ブロックを複数形成する工程と、
前記並列ブロックの外装缶底部に設けられる電極と別の前記並列ブロックが接続された前記リード板の前記平坦部とを重ね合わせる工程と、
前記凸形状により生じる前記並列ブロック間の隙間から前記平坦部にレーザを照射して前記外装缶底部に設けられる電極と前記平坦部とをレーザ溶接して前記並列ブロックを直列接続する工程と
を有することを特徴とする組電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−222484(P2011−222484A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282503(P2010−282503)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】