説明

経粘膜吸収用薬物封入ナノ粒子

【課題】経口投与によって薬効を発揮できないか、または吸収性、副作用等で欠点を有する薬物、さらには吸収性、副作用などの点で改善を要する薬物について、粘膜経由の投与方法により局所も含め生体内への吸収性に優れ、高いバイオアベイラビリティを発揮し得る技術を提供すること。
【解決手段】表面にカルボキシル基を有するコアからなり、コアの内部に2価の金属塩、疎水性物質もしくは糖質の1種または2種以上および薬物を封入した経粘膜吸収用薬物封入ナノ粒子であり、特に表面にカルボキシル基を有するコアが、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、乳酸重合体(PLA)などの生分解性ポリマーであるナノ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物を封入したナノ粒子に関し、詳しくは経粘膜吸収用の薬物封入ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を経粘膜投与する目的は、経口投与の欠陥である、例えば、(1)消化管からの薬物の吸収が悪く、吸収がばらつき、肝で不活化される、(2)薬物が消化管の酵素によって不活化される、(3)急激な薬物の吸収で副作用が発現し、特に胃腸管や肝における副作用が強く出る、(4)薬物の徐放効果が得られない、などを改善するためである。
【0003】
薬物の皮膚および粘膜適用に関しては、すでに多くの技術が実用化されている。それらの問題点として、局所作用を目的としたものでは皮膚・粘膜への吸収・分布が不十分であること、皮下・粘膜下組織への浸透が十分でないことなどが挙げられ、また全身への吸収を目的として用いられる場合には、全身への吸収が十分でない薬物が多い。
【0004】
近年、経口投与では不活性化してしまい、注射投与を余儀なくされている生理活性蛋白質、ペプチドについて、経皮・経粘膜投与が試みられているが、吸収率の改善を確保するまでには到っていないのが現状である。
【0005】
生理活性蛋白質の一つとして、比較的低分子で、しかも化学的に安定なインスリンを用いて皮膚、粘膜経由の投与法について種々の研究が行われているが、その吸収率は確実なデータでは数パーセント程度にすぎず、皮膚経由の投与ではほとんど吸収されないとされている(非特許文献1)。
【0006】
また、生理活性物質をカルシウム含有水難溶性無機物粒子に封入した製剤(特許文献1)、生理活性蛋白質あるいはペプチドと亜鉛イオンとの沈殿物による水不溶性徐放性組成物(特許文献2)などが提案されている。しかしながら、これらの製剤は、薬物の吸収性、あるいは局所刺激等の点で十分なものとは言い難く、未だ実用化に至ったものはない。また、本発明が目的とする、表面にカルボキシル基を有するコアからなる薬物を封入した経粘膜吸収用ナノ粒子は知られていない。
【0007】
【特許文献1】国際特許公開WO 02/096396号公報
【特許文献2】特開2003−081865号公報
【非特許文献1】DRUG DELIVERY SYSTEM 今日のDDS 薬物送達システム(医薬ジャーナル)325〜331頁、1999年
【非特許文献2】臨床薬理(Jpn. J. Clin. Pharmacol. Ther.):26(1), p.127〜128(1995)
【非特許文献3】Yakugaku Zasshi:121(12), p.929〜948 (2001)
【非特許文献4】J. Controlled Release:79, p.81〜91(2002)
【0008】
上述したように、経口投与により不活性化する、あるいは吸収性が悪い、副作用が発現するなどの欠陥を有する非吸収性または難吸収性の薬物を、経粘膜投与に適用することができ、かつ薬物の吸収性に優れ、十分な活性を発揮し、副作用を最小限にする薬剤の開発が望まれている。特に、近年進歩が著しい抗原や抗体を含む蛋白医薬品や薬効を有する核酸関連物質の経口投与が可能になることは、医療の著しい飛躍に繋がる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、経口投与によって薬効を発揮できないか、または吸収性、副作用等で欠点を有する薬物、さらには注射剤、皮膚外用剤として使用されているが、吸収性、副作用などの点で改善を要する薬物について、粘膜経由の投与方法により局所も含め生体内への吸収性に優れ、高いバイオアベイラビリティを発揮し得る技術を提供することを課題とする。
【0010】
かかる課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討した結果、ナノテクノロジーを応用し、赤血球よりも遥かに小さい特殊なナノ粒子を作製し、それに薬物を封入させることに成功し、かくして得られた薬物封入ナノ粒子を粘膜経由による投与を行った場合、ナノ粒子が粘膜から吸収されることにより薬物の高いバイオアベイラビリティを発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明者らは、先に、生理活性タンパク質またはペプチドのナノ粒子を発明し、特許出願を行っている(特願2003−312031号)。また、脂溶性薬物または脂溶性化された水溶性薬物のナノ粒子を発明し、特許出願を行っている(特願2003−428462号)。本発明者らは、さらに、表面にカルボキシル基を有するコアからなる粒子に薬物を封入することに成功し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、経粘膜吸収を目的とし、優れた吸収性およびバイオアベイラビリティを有する、薬物含有ナノ粒子を提供する。
より具体的には、本発明は、
(1)表面にカルボキシル基を有するコアからなり、コアの内部に2価の金属塩、疎水性物質もしくは糖質の1種または2種以上および薬物を封入した経粘膜吸収用薬物封入ナノ粒子、
(2)表面にカルボキシル基を有するコアが、生分解性ポリマーまたは排泄型ポリマーである前記(1)に記載のナノ粒子、
(3)生分解性ポリマーが、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)または乳酸重合体(PLA)であり、排泄型ポリマーが、カルボキシル基が置換されたスチレンモノポリマー、ポリスチレン、メタクリル酸−スチレン共重合体またはジビニルベンゼン−スチレン共重合体である前記(2)に記載のナノ粒子、
(4)表面にカルボキシル基を有するコアが、カルボキシル基を有する脂質およびイオン性または非イオン性界面活性剤から形成される粒子である前記(1)に記載のナノ粒子、
(5)さらに2価の金属イオンを加えた前記(4)に記載のナノ粒子、
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のナノ粒子に2価または3価の金属イオンが結合された二次ナノ粒子、
(7)2価または3価の金属イオンがカルシウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、鉄イオンおよび銅イオンから選択されるものである前記(6)記載の二次ナノ粒子、
(8)前記(6)に記載の二次ナノ粒子に1価〜3価の塩基イオンが結合された三次ナノ粒子、
(9)1価〜3価の塩基イオンが炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、シュウ酸イオン、乳酸イオンおよび尿酸イオンから選択されるものである前記(8)に記載の三次ナノ粒子、
(10)粒子径が150nm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは20〜50nmである前記(1)〜(9)のいずれかに記載のナノ粒子、
(11)前記(1)から(10)のいずれかに記載のナノ粒子からなることを特徴とする経粘膜吸収用製剤、
(12)製剤が経口投与剤、口腔内投与剤、鼻腔内投与剤および坐剤から選択されるものである前記(11)に記載の経粘膜吸収用製剤、
(13)封入される薬物が経口投与によって非吸収性または難吸収性の薬物である前記(1)に記載のナノ粒子、
(14)非吸収性または難吸収性の薬物が蛋白質、ペプチド、多糖類、低分子糖類、極性の強い薬物および高度脂溶性の薬物から選択されるものである前記(13)に記載のナノ粒子、
(15)蛋白質またはペプチドが、インスリン、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン(EPO)、顆粒求コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、トロンボポエチン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、インターロイキン−11(IL−11)、抗TNF−α抗体、エタネルセプト、インフリキシマブ、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、レプチン、ニュートロフィン−3(NT−3)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、バソプレッシン、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、脳下垂体ペプチドホルモン、抗体、抗原および酵素から選択されるものである前記(14)に記載のナノ粒子、
(16)高度脂溶性の薬物が、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、テストステロン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール,酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロン、シクロスポリン、タクロリムス、パクリタキセル、塩酸イリノテカン、シスプラチン、メソトレキセート、カルモフール、デカフール、ドキソルビシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、セフニジル、ナリジクス酸、オフロキサシン、ノルフロキサシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、クロルプロマジン、ジアゼパム、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、ベシル酸アムロジン、カンデサルタンシレキセチル、アシクロビル、ビダラビン、エファビレンツ、アルプロスタジル、ジノプロストン、ビタミンA類(レチノール、レチノイン酸)、ジタミンD類、ビタミンE類およびビタミンK類から選択されるものである前記(14)に記載のナノ粒子、
(17)非吸収性または難吸収性の薬物が前記(15)および(16)に記載の薬物以外の抗炎症薬、抗微生物薬、抗癌薬、血管作動薬、脳循環・代謝改善薬、抗動脈硬化薬、免疫抑制薬および核酸関連物質から選択されるものである前記(14)に記載のナノ粒子、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提供するナノ粒子は、そこに含有される薬物を粘膜経由により生体内吸収させるものであり、その吸収性、バイオアベイラビリティに優れる。含有される薬物が経口投与によって非吸収性、難吸収性なので、経口投与が不可能あるいは可能であっても十分に目的を達成できない薬物を経口投与製剤、口腔内投与製剤、経鼻投与製剤、坐剤などの経粘膜製剤形態にすることにより目的を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、表面にカルボキシル基を有するコアの内部に2価の金属塩、疎水性物質、糖質の1種または2種以上および薬物を封入したナノ粒子(一次ナノ粒子)、それに2価または3価の金属イオンが結合された二次ナノ粒子、さらに二次ナノ粒子に1価〜3価の塩基イオンが結合した三次ナノ粒子からなり、これら一次ナノ粒子、二次ナノ粒子及び三次ナノ粒子のそれぞれからなる経粘膜吸収用製剤からなる。ここでコアとはナノ粒子と同義を表す。
【0015】
本発明の表面にカルボキシル基を有するコアの素材としては、生分解性ポリマーおよびカルボキシル基が置換された排泄型ポリマーであり、それ自体で粒子を形成しその内部に2価の金属塩、疎水性物質もしくは糖質の1種または2種以上および薬物を封入することができる空間を有し、かつ生体内で分解するポリマー、または生体内で分解しなくても体内から排泄されるポリマーであればいずれでもよい。また、あらかじめ粒子状を形成しているポリマーであっても良い。このようにして形成された生分解性ポリマーまたは排泄型ポリマー粒子は表面に複数個、好ましくは多数個のカルボキシル基を有している。
【0016】
本発明における生分解性ポリマーとしては、例えばポリエステル[例えばα−ヒドロキシ酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、2−ヒドロキシカプリル酸等)、α−ヒドロキシ酸の環状二量体類(例えば、グリコリド、ラクチド等)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸)、ヒドロキシトリカルボン酸(例えば、クエン酸)等の単独重合体(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等)またはこれらの2種以上の共重合体(例えば、乳酸/グリコール酸共重合体,2−ヒドロキシ酪酸/グリコール酸共重合体等)、あるいはこれら単独重合体および/または共重合体の混合物(例、乳酸重合体と2−ヒドロキシ酪酸/グリコール酸共重合体との混合物等)]、ポリグリコシド(例えば、ヒアルロン酸、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、酸化セルロース等)、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−L−グルタミン酸,ポリ−L−アラニン,ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸等)、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、無水マレイン酸系共重合体(例、スチレン/マレイン酸共重合体等)等が用いられる。これらの中では、ポリエステル、ポリグリコシドが好ましい。さらに、脂肪族のポリエステルが特に好ましい。脂肪族ポリエステルの中でα−ヒドロキシモノカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸等)、α−ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸)、α−ヒドロキシトリカルボン酸(例えば、クエン酸)等のα−ヒドロキシカルボン酸類の1種以上から合成され、遊離の末端カルボキシル基を有する重合体、共重合体、またはこれらの混合物などが用いられる。
【0017】
モノマーの結合様式としては、ランダム、ブロックあるいはグラフト結合のいずれでもよい。また、前記α−ヒドロキシモノカルボン酸類、α−ヒドロキシジカルボン酸類、α−ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有する場合、D−、L−、DL−体のいずれを用いてもよい。
【0018】
本発明の生分解性ポリマーとしては、カルボキシル基の数を考慮した場合、例えば乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、または乳酸重合体(PLA)が好ましく使用される。また、排泄型ポリマーとしては、体内へ取り入れたとき人体に害を与えず、体内から通常の排泄物と同様に排泄されるポリマーであればいずれでもよく、スチレンを主成分とするポリマーが好ましい。より具体的には、カルボキシル基が置換されたスチレンモノポリマー、ポリスチレン、メタクリル酸−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体などが好ましい。
【0019】
コアの内部に封入される2価の金属塩は、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム塩;酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛などの亜鉛塩;塩化鉄、硫化鉄などの鉄塩;塩化銅、硫化銅などの銅塩から選ばれる。なかでも亜鉛塩、特に塩化亜鉛が好ましい。疎水性物質は、脂質、非イオン性界面活性剤などであり、糖質としては、多糖、ムコ多糖、単糖などである。
【0020】
本発明における、表面にカルボキシル基を有するもうひとつのコアとしては、カルボキシル基を有する脂質およびイオン性または非イオン性界面活性剤から形成される粒子である。この場合、使用する薬物が水溶性である場合はさらに2価の金属イオンを加えるとよい。ここで、加えられる2価の金属イオンは亜鉛イオン、カルシウムイオン、鉄イオンまたは銅イオンのいずれかであり、亜鉛イオンが好ましく使用できる。
【0021】
さらに、カルボキシル基を有する脂質としては、炭素数6〜24の脂肪酸であり、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの飽和脂肪酸から選択される。イオン性または非イオン性界面活性剤としては、グリセリン、レシチン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート(Tween80)、ポリオキシエチレン(20)モノラウレート(Tween20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート(Tween85)、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質−ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体などの非イオン性界面活性剤、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのイオン性界面活性剤が挙げられる。
【0022】
これらの界面活性剤は1種または2種以上を選択して使用することができる。なかでも、グリセリン、レシチン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート(Tween80)、脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体が好ましく、この場合の脂肪酸としてはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パミルチン酸などの飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0023】
こうして得られた、表面にカルボキシル基を有するコアからなる粒子が一次ナノ粒子となる。この一次ナノ粒子を製造する段階で微細な粒子を含有する良好な乳化状態を得るために、乳化器として超音波発振器、フレンチプレッシャー、マントンゴーリンなどを使用し、圧力を強めることにより行うとよい。
【0024】
得られた一次ナノ粒子に2価または3価の金属イオンを結合させることにより二次ナノ粒子が得られる。2価または3価の金属イオンとしてはカルシウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオンまたは銅イオンであり、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム塩;酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛などの亜鉛塩;塩化鉄、硫化鉄などの鉄塩;塩化銅、硫化銅などの銅塩から導かれる。なかでもカルシウム塩、特に塩化カルシウムが好ましい。金属塩の配合量は一概に限定し得ないが、有効成分となる薬物に対し重量比で3.0〜0.01程度が好ましい。
【0025】
また、この二次ナノ粒子に1価〜3価の塩基イオンを結合させることにより三次ナノ粒子が得られる。1価〜3価の塩基イオンとしては炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、シュウ酸イオン、乳酸イオンまたは尿酸イオンなどであり、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩:リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなどのリン酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムなどのリン酸塩;シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸カルシウムなどのシュウ酸塩;乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウムなどの乳酸塩;尿酸ナトリウム、尿酸カリウム、尿酸カルシウムなどの尿酸塩などの塩基性塩から導かれ、なかでも炭酸塩、特に炭酸ナトリウムが好ましく使用される。塩基性塩の配合量は一概に限定し得ないが、前記金属塩に対してモル比で1.0〜0.05であることが好ましい。
【0026】
このようにして得られた一次ナノ粒子、二次ナノ粒子および三次ナノ粒子の粒子径は、粘膜からの吸収の点から150nm以下であれば良く、好ましくは100nm以下、さらに好ましく20〜50nmである。粒子径が200nmを超えると腸管から吸収しないことが判明した。
【0027】
本発明の経粘膜吸収用薬物封入ナノ粒子は、それを投与した場合、50%以上、好ましい薬物においては90%以上の薬物が小腸から吸収する。
【0028】
また、本発明の経粘膜吸収用薬物封入ナノ粒子は、脳血管関門を通過するので、脳循環・代謝改善薬などにも使用することが可能である。
【0029】
以下に、本発明が提供するナノ粒子の製造方法について説明する。
先ず、生分解性ポリマーを有機溶媒または含水有機溶媒に溶解し、この溶液に薬物、および2価の金属塩、疎水性物質もしくは糖質の1種または2種以上の基をそのまま、または溶媒に溶解して加え撹拌することにより一次ナノ粒子を得る。排泄型ポリマーを使用する場合は、該ポリマーの製造工程において薬物を封入することにより、薬物封入ポリマー粒子とすることができる。
【0030】
もうひとつのコアからなる一次ナノ粒子は、薬物と、カルボキシル基を有する脂質と界面活性剤とを有機溶媒または含水有機溶媒に溶解し、この溶液を多量の水に分散させ、この溶液を1〜30分間撹拌することにより得ることができる。一次ナノ粒子を製造する段階で微細な粒子を含有する良好な乳化状態を得るために、乳化器として超音波発振器、フレンチプレッシャー、マントンゴーリンなどを使用し、圧力を強めることにより行うとよい。
【0031】
かくして作製された一次ナノ粒子を含有する溶液に、2価または3価の金属塩を加え、1〜30分間撹拌して二次ナノ粒子を作製する。次いで、得られた二次粒子の溶液に1価〜3価の塩基性塩を加え、1分ないし24時間撹拌することにより三次ナノ粒子を得ることができる。
【0032】
かくして得られた一次ナノ粒子、二次ナノ粒子および三次ナノ粒子の溶液を、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥等をすることにより溶媒を除去し、製剤用組成物として適宜製剤基剤、添加剤等を使用することにより、所望の経粘膜吸収用製剤を調製することができる。ナノ粒子を含有する溶液にマンニトール、トレハロースなどの糖類を加えると分散性が良くなる。
【0033】
本発明の経粘膜吸収用製剤は、薬物を封入したナノ粒子が体内の粘膜部位に直接到達できる製剤形態であればいずれでもよく、経口投与剤、口腔内投与剤、鼻腔内投与剤および坐剤に大別される。
【0034】
経口投与剤としては、通常の経口投与製剤、例えば錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤などであるが、小腸内で薬物が放出されるように工夫された剤型、例えば腸溶性錠剤、腸溶性顆粒剤、腸溶性カプセル剤、腸溶性細粒剤が好ましい。
【0035】
また、口腔内投与剤および鼻腔内投与剤としては、口腔錠剤、口腔スプレー、点鼻剤、エアゾール、ゲル剤、クリーム剤、液剤、ローション剤などが挙げられ、さらに坐剤も経粘膜吸収用剤として有効に使用できる。
【0036】
これらの製剤の調製に使用される基剤、その他の添加剤成分としては、上記の本発明の経粘膜吸収用製剤を製造するために、製剤学的に使用されている基剤、成分を適宜選択、組合せて使用することができる。なお、点鼻剤の場合、ヒドロキシプロピルセルロースなどの経鼻吸収促進剤を配合すると好ましい。
【0037】
本発明のナノ粒子に封入する薬物としては、経口投与によって非吸収性であり、難吸収性の薬物を使用するのがよい。このような非吸収性、難吸収性とは、経口投与により不活性化したり、薬効を発揮し難くかったり、体内への吸収性が悪いことを意味し、蛋白質、ペプチド、多糖類、低分子糖類、極性の強い薬物、高度脂溶性の薬物などが該当する。
【0038】
蛋白質またはペプチドとしては、インスリン、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、トロンボポエチン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、インターロイキン−11(IL−11)、抗TNF−α抗体、エタネルセプト、インフリキシマブ、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、レプチン、ニュートロフィン−3(NT−3)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、バソプレッシン、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、脳下垂体ペプチドホルモン、抗体、抗原および酵素などが挙げられる。
【0039】
また、高度脂溶性の薬物としては、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、テストステロン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール,酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロン、シクロスポリン、タクロリムス、パクリタキセル、塩酸イリノテカン、シスプラチン、メソトレキセート、カルモフール、デカフール、ドキソルビシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、セフニジル、ナリジクス酸、オフロキサシン、ノルフロキサシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、クロルプロマジン、ジアゼパム、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、ベシル酸アムロジン、カンデサルタンシレキセチル、アシクロビル、ビダラビン、エファビレンツ、アルプロスタジル、ジノプロストン、ビタミンA類(レチノール、レチノイン酸)、ジタミンD類、ビタミンE類およびビタミンK類などが挙げられる。
【0040】
非吸収性、難吸収性の薬物としては、上記に具体的に示した以外の薬物として、非吸収性または難吸収性の抗炎症薬、抗微生物薬、抗癌薬、血管作動薬、脳循環・代謝改善薬、抗動脈硬化薬、免疫抑制薬および核酸関連物質を挙げることができる。
【実施例】
【0041】
本発明を以下の実施例、試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
実施例1:排泄型ポリマーナノ粒子を使用した経粘膜吸収試験
排泄型ポリマーであるポリスチレンのナノ粒子を用いて経粘膜吸収試験を行った。
【0043】
(1)ナノ粒子の調製
(イ)蛍光色素ローダミンを封入したポリスチレンナノ粒子Fluoresbrite(Polysciences社製)を使用し、粒子表面をカルボキシル基で修飾していない未修飾粒子を0次ナノ粒子とし、粒子表面をカルボキシル基で修飾した粒子を一次ナノ粒子とした。
(ロ)一次ナノ粒子を水に分散した液500μL(4mg/mL)に1M塩化カルシウム溶液20μLを加え30分間撹拌することにより、二次ナノ粒子を作製した。
(ハ)上記で得た二次ナノ粒子溶液に1M炭酸ナトリウム溶液4μLを添加し、30分間撹拌することにより、三次ナノ粒子を得た。
このようにして作製した0次ないし三次ナノ粒子を以下の実験に使用した。
【0044】
(2)粒子経の影響
3日間、水とグルコースを投与して腸内を空にしたddyマウスを使用した。マウスの空腸に、粒子径が50nm、100nmおよび200nmの二次ナノ粒子溶液(0.4mg)を投与した。投与10分後および40分後に投与部位の組織切片を作成し、蛍光顕微鏡により蛍光強度を観察した。結果を図1〜図3に示す。
図1は50nmのナノ粒子を投与した場合の結果を示すものであり、図1.1は投与10分後の結果を、図1.2は投与40分後の結果を示した。図2は100nmのナノ粒子を投与した場合の結果を示すものであり、図2.1は投与10分後の結果を、図2.2は投与40分後の結果を示した。また、図3は200nmのナノ粒子を投与した場合の結果を示すものであり、図3.1は投与10分後の結果を、図3.2は投与40分後の結果を示した。
図1.1および1.2から判明するように、50nmのナノ粒子では腸絨毛組織への高い吸収が認められた。一方、100nmは吸収される(図2.1および2.2)が、200nmの粒子では腸管からの吸収は見られなかった(図3.1および3.2)。
【0045】
(3)ナノ粒子表面の修飾による影響
ddyマウスの空腸に、粒子径が50nmの0次ないし三次ナノ粒子溶液(0.4mg)をそれぞれ投与した。投与10分後および25分後に投与部位の組織切片を作成し、蛍光顕微鏡により蛍光強度を観察した。結果を図4〜図7に示す。
図4は0次ナノ粒子を投与した場合の結果を示すものであり、図4.1は投与10分後の結果を、図4.2は投与25分後の結果を示した。図5は一次ナノ粒子を投与した場合の結果を示すものであり、図5.1は投与10分後の結果を、図5.2は投与25分後の結果を示した。図6は二次ナノ粒子を投与した場合の結果を示すものであり、図6.1は投与10分後の結果を、図6.2は投与25分後の結果を示した。また、図7は三次ナノ粒子を投与した場合の結果を示すものであり、図7.1は投与10分後の結果を、図7.2は投与40分後の結果を示した。
図4.1および4.2から判明するように0次ナノ粒子はほとんど吸収されず、一次ナノ粒子(図5.1および5.2)は吸収されるもののその度合いは少なく、二次ナノ粒子(図6.1および6.2)および三次ナノ粒子(図7.1および7.2)は高い吸収が見られた。
【0046】
(4)吸収速度
50nmの二次ナノ粒子を用いて、上記(3)と同様にddyマウスの空腸に投与し、組織切片の蛍光強度の時間変化を観察した。結果を図8に示す。
図8.1は投与10分後、図8.2は投与25分後、図8.3は投与40分後および図8.4は投与70分後の変化であるが、図から判明するように、蛍光強度が10分後で最高となり、その後時間とともに強度が低下し、70分後ではほぼ消失していた。すなわち、50nmの二次ナノ粒子は、投与後10分後において腸管で最高になり、70分後にはほぼ全て腸管から吸収されて行くことが判明した。
【0047】
(5)小腸粘膜からの吸収の確認
上記(2)の実験例で使用した二次ナノ粒子の3倍量および5倍量を同様に投与したところ、肝臓および腎臓に強い蛍光が観察された。これは二次ナノ粒子が腸壁から吸収され体内に十分に移行していることが確認された。
それらの結果を図9〜図11に示した。図9は二次ナノ粒子の1倍量投与における結果を示すものであり、図9.1は腸管での結果を、図9.2は肝での結果を、図9.3は腎での結果を示した。図10は二次ナノ粒子の3倍量投与における結果を示すものであり、図10.1は腸管での結果を、図10.2は肝での結果を、図10.3は腎での結果を示した。また、図11は二次ナノ粒子の5倍量投与における結果を示すものであり、図11.1は腸管での結果を、図11.2は肝での結果を、図11.3は腎での結果を示した。
【0048】
(6)腸管からの吸収部位
上記(2)と同様に、50nmの二次ナノ粒子をマウスの空腸に投与し、実体蛍光顕微鏡で投与部位の下部を観察した。粒子を0.3mg投与した場合には、回腸部分に蛍光は全く認められず、ほぼ全ての粒子は上部小腸で吸収されていることが判明した。
それらの結果を、図12および図13に示した。図12は投与60分後および90分後における投与部位下部の腸管の状態を示したものであり、図中矢印が注射部位である。また、図13は投与部位から深さの異なる部位での状態を示したものであり、図13.1は投与部位直下の10分後における状態を、図13.2は投与部位1cm下の25分後における状態を、図13.3は投与部位2.5cm下の40分後における状態を、また、図13.4は投与部位5cm下の70分後における状態を示した。
【0049】
一方、200nmの二次次ナノ粒子を同様に投与した場合では、下部小腸に強い蛍光が観察され、ほとんど吸収されていないことが判明した。
【0050】
実施例2:ヒトインスリンの二次ナノ粒子
ヒトインスリン(シグマ社製)1mgを0.01N塩酸100μLに溶解し、塩化亜鉛溶液(50mg/mL)10μLを加えて撹拌した。さらにミリスチン酸アセトン溶液(14mg/mL)27.7μLおよび蛍光標識脂肪酸(Molecular Probes、12-(N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)amino)dodecanoic acid)のアセトン溶液(10mg/mL)8.3μLを加え、撹拌した。2%Tween80溶液を100μL加えた後撹拌を行い、一次ナノ粒子を得た。この溶液に脱イオン水を加えて5mLとし、5M塩化カルシウム溶液15μLを加え、高圧ホモジナイザーで均一化処理を行い、二次ナノ粒子を作製した。粒子の大きさを動的光散乱粒子径測定装置(大塚電子 ELS-6000)で測定したところ、重量換算平均粒系は85nmであった。
【0051】
この二次ナノ粒子を実施例1の(2)に記載の方法と同様に行って、インスリン含有の二次ナノ粒子をマウスの空腸に投与し、投与部位を蛍光顕微鏡で観察したところ、粒子が腸管へ吸収されていることが確認された。図14参照。図14において、腸管(グリーンに着色)に粒子が吸着していることが判明した。
【0052】
実施例3:ヒトインスリンの三次ナノ粒子
実施例2で得られたインスリン封入の二次ナノ粒子を含む溶液に、1M炭酸ナトリウム溶液2mLを加え、1時間撹拌して三次ナノ粒子を作製した。粒子径は重量換算平均で90nmであった。
【0053】
実施例4:乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)を用いたインスリンナノ粒子
ヒトインスリン(シグマ社製)1mgを0.01N塩酸100μLに溶解し、この溶液に0.5M塩化第二鉄水溶液160μLを加えて撹拌した。この溶液を遠心分離した後上清を捨て、PLGA20mgをアセトン500μLに溶解した溶液を加え、強く撹拌した。さらに0.5M塩化亜鉛水溶液20μLを加えて撹拌後、1時間放置した。この溶液を5mLの精製水に撹拌させることにより100nm以下の一次ナノ粒子を得た。
【0054】
この一次ナノ粒子溶液に1M塩化カルシウム溶液20μLを加え30分間撹拌することにより、二次ナノ粒子を作製した。次いで、この二次ナノ粒子溶液に1M炭酸ナトリウム溶液4μLを添加し30分間撹拌することにより、三次ナノ粒子を得た。
【0055】
実施例5:レチノール(ビタミンA)のナノ粒子
レチノール(ビタミンA)6mgを溶解したエタノールまたはアセトン溶液10μLと大豆油100mgを混合した。この混合液を、グリセリン22mg、レシチン10mg、オレイン酸ナトリウム10mgおよびオレイン酸−ポリエチレングリコール共重合体12mgの水懸濁液中に添加し、総量で10mLとなるように調整した。この混合液を超音波発振器またはフレンチプレッシャーで乳化して、レチノール含有の一次ナノ粒子を作製した。次いで、オレイン酸ナトリウムに対し等モル量の塩化カルシウム水溶液を添加し、室温で1時間撹拌することにより二次ナノ粒子を作製した。次いで、塩化カルシウムに対し0.2〜2.0倍モル量の炭酸水素ナトリウムを添加し、3時間から一晩撹拌して三次ナノ粒子を作製した。
【0056】
実施例6:軟膏剤/ハイドロゲル剤の製造
実施例3で得られたヒトインスリン封入の三次ナノ粒子、白色ワセリン、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびパラオキシ安息香酸メチルの適量をとり、全量が均質になるまで混和し、軟膏剤およびハイドロゲル剤とした。
【0057】
実施例7:腸溶性錠剤の製造
実施例4で得られたヒトインスリン封入の三次ナノ粒子、乳糖、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、5%ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを適量とり、常法により練合、造粒、乾燥後打錠し、得られた錠剤に腸溶性コーティング皮膜を施し、腸溶性錠剤を製造した。
【0058】
実施例8:点鼻剤の製造
実施例4で得られたヒトインスリン封入の三次ナノ粒子を注射用蒸留水と均一に懸濁し、そこにカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびパラオキシ安息香酸メチルの適量を加え、全量が均質になるまで混和し点鼻剤とした。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、表面にカルボキシル基を有するコアに薬物を封入したナノ粒子であり、経口投与によって非吸収性、難吸収性な薬物を粘膜経由によって優れた吸収性およびバイオアベイラビリティをもたらすので、医療上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1.1】実施例1における50nmのナノ粒子を投与し、投与10分後の結果を示す写真である。
【図1.2】実施例1における50nmのナノ粒子を投与し、投与40分後の結果を示す写真である。
【図2.1】実施例1における100nmのナノ粒子を投与し、投与10分後の結果を示す写真である。
【図2.2】実施例1における100nmのナノ粒子を投与し、投与40分後の結果を示す写真である。
【図3.1】実施例1における200nmのナノ粒子を投与し、投与10分後の結果を示す写真である。
【図3.2】実施例1における200nmのナノ粒子を投与し、投与40分後の結果を示す写真である。
【図4.1】実施例1における0次ナノ粒子を投与し、投与10分後の結果を示す写真である。
【図4.2】実施例1における0次ナノ粒子を投与し、投与25分後の結果を示す写真である。
【図5.1】実施例1における一次ナノ粒子を投与し、投与10分後の結果を示す写真である。
【図5.2】実施例1における一次ナノ粒子を投与し、投与25分後の結果を示す写真である。
【図6.1】実施例1における二次ナノ粒子を投与し、投与10分後の結果を示す写真である。
【図6.2】実施例1における二次ナノ粒子を投与し、投与25分後の結果を示す写真である。
【図7.1】実施例1における三次ナノ粒子を投与し、投与10分後の結果を示す写真である。
【図7.2】実施例1における三次ナノ粒子を投与し、投与40分後の結果を示す写真である。
【図8.1】実施例1における吸収速度を検討した結果を示し、投与10分後における変化を示す写真である。
【図8.2】実施例1における吸収速度を検討した結果を示し、投与25分後における変化を示す写真である。
【図8.3】実施例1における吸収速度を検討した結果を示し、投与40分後における変化を示す写真である。
【図8.4】実施例1における吸収速度を検討した結果を示し、投与70分後における変化を示す写真である。
【図9.1】実施例1における二次ナノ粒子の1倍量投与における腸管での結果を示す写真である。
【図9.2】実施例1における二次ナノ粒子の1倍量投与における肝での結果を示す写真である。
【図9.3】実施例1における二次ナノ粒子の1倍量投与における腎での結果を示す写真である。
【図10.1】実施例1における二次ナノ粒子の3倍量投与における腸管での結果を示す写真である。
【図10.2】実施例1における二次ナノ粒子の3倍量投与における肝での結果を示す写真である。
【図10.3】実施例1における二次ナノ粒子の3倍量投与における腎での結果を示す写真である。
【図11.1】実施例1における二次ナノ粒子の5倍量投与における腸管での結果を示す写真である。
【図11.2】実施例1における二次ナノ粒子の5倍量投与における肝での結果を示す写真である。
【図11.3】実施例1における二次ナノ粒子の5倍量投与における腎での結果を示す写真である。
【図12】実施例1における腸管からの吸収部位を検討した結果を示し、投与60分後および90分後における投与部位下部の腸管の状態を示す写真である。
【図13.1】実施例1における腸管からの吸収部位を検討した結果を示し、投与部位直下の10分後における状態を示す写真である。
【図13.2】実施例1における腸管からの吸収部位を検討した結果を示し、投与部位1cm下の25分後における状態を示す写真である。
【図13.3】実施例1における腸管からの吸収部位を検討した結果を示し、投与部位2.5cm下の40分後における状態を示す写真である。
【図13.4】実施例1における腸管からの吸収部位を検討した結果を示し、投与部位5cm下の70分後における状態を示す写真である。
【図14】実施例2におけるインスリン含有の二次ナノ粒子をマウスの空腸に投与し、投与部位における蛍光顕微鏡の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にカルボキシル基を有するコアからなり、コアの内部に2価の金属塩、疎水性物質もしくは糖質の1種または2種以上および薬物を封入した経粘膜吸収用薬物封入ナノ粒子。
【請求項2】
表面にカルボキシル基を有するコアが、生分解性ポリマーまたは排泄型ポリマーである請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
生分解性ポリマーが、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)または乳酸重合体(PLA)であり、排泄型ポリマーが、カルボキシル基が置換されたスチレンモノポリマー、ポリスチレン、メタクリル酸−スチレン共重合体またはジビニルベンゼン−スチレン共重合体である請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
表面にカルボキシル基を有するコアが、カルボキシル基を有する脂質およびイオン性または非イオン性界面活性剤から形成される粒子である請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
さらに2価の金属イオンを加えた請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のナノ粒子に2価または3価の金属イオンが結合された二次ナノ粒子。
【請求項7】
2価または3価の金属イオンが、カルシウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、鉄イオンおよび銅イオンから選択されるものである請求項6記載の二次ナノ粒子。
【請求項8】
請求項6に記載の二次ナノ粒子に1価〜3価の塩基イオンが結合された三次ナノ粒子。
【請求項9】
1価〜3価の塩基イオンが、炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、シュウ酸イオン、乳酸イオンおよび尿酸イオンから選択されるものである請求項8に記載の三次ナノ粒子。
【請求項10】
粒子径が150nm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは20〜50nmである請求項1〜9のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のナノ粒子からなることを特徴とする経粘膜吸収用製剤。
【請求項12】
製剤が経口投与剤、口腔内投与剤、鼻腔内投与剤および坐剤から選択されるものである請求項11に記載の経粘膜吸収用製剤
【請求項13】
封入される薬物が経口投与によって非吸収性または難吸収性の薬物である請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項14】
非吸収性または難吸収性の薬物が蛋白質、ペプチド、多糖類、低分子糖類、極性の強い薬物および高度脂溶性の薬物から選択されるものである請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
蛋白質またはペプチドが、インスリン、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン(EPO)、顆粒求コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、トロンボポエチン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、インターロイキン−11(IL−11)、抗TNF−α抗体、エタネルセプト、インフリキシマブ、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、レプチン、ニュートロフィン−3(NT−3)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、バソプレッシン、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、脳下垂体ペプチドホルモン、抗体、抗原および酵素から選択されるものである請求項14に記載のナノ粒子。
【請求項16】
高度脂溶性の薬物が、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、テストステロン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール,酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロン、シクロスポリン、タクロリムス、パクリタキセル、塩酸イリノテカン、シスプラチン、メソトレキセート、カルモフール、デカフール、ドキソルビシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、セフニジル、ナリジクス酸、オフロキサシン、ノルフロキサシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、クロルプロマジン、ジアゼパム、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、ベシル酸アムロジン、カンデサルタンシレキセチル、アシクロビル、ビダラビン、エファビレンツ、アルプロスタジル、ジノプロストン、ビタミンA類(レチノール、レチノイン酸)、ジタミンD類、ビタミンE類およびビタミンK類から選択されるものである請求項14に記載のナノ粒子。
【請求項17】
非吸収性または難吸収性の薬物が請求項15および16に記載の薬物以外の抗炎症薬、抗微生物薬、抗癌薬、血管作動薬、脳循環・代謝改善薬、抗動脈硬化薬、免疫抑制薬および核酸関連物質から選択されるものである請求項14に記載のナノ粒子。

【図1.1】
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【図1.2】
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【図2.1】
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【図2.2】
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【図3.1】
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【図3.2】
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【図4.1】
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【図4.2】
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【図5.1】
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【図5.2】
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【図6.1】
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【図6.2】
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【図7.1】
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【図7.2】
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【図8.1】
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【図8.2】
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【図8.3】
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【図8.4】
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【図9.1】
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【図9.2】
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【図9.3】
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【図10.1】
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【図10.2】
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【図10.3】
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【図11.1】
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【図11.2】
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【図11.3】
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【図12】
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【図13.1】
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【図13.2】
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【図13.3】
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【図13.4】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−28031(P2006−28031A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205259(P2004−205259)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(303010452)株式会社LTTバイオファーマ (27)
【Fターム(参考)】