説明

経路出力装置およびプログラム

【課題】 よりユーザが裏道を有効に利用することができる経路出力装置等を提供する。
【解決手段】 算出された経路をユーザが通行する通行しないにかかわらず、ユーザの判断により選択して通行した裏道等の経路情報を渋滞はまり率と共に記憶する(図4のS260)。この渋滞はまり率というのは、総行程中の平均車速の半分以下であった時間の合計を求め、その合計の総行程時間に占める割合である。また、既に記憶されている、同一の出発地点および目的地点の経路情報に対応する渋滞はまり率よりも、新たに記憶しようとしている経路情報の渋滞はまり率の方が低い場合のみ記憶する。したがって、以降、従来では案内されることがなかったような裏道が案内され、目的地到着までの時間が短縮されたり、運転の快適性が向上したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より適切な経路を出力する経路出力装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーションシステム等の経路出力装置の中には裏道(幹線道路等を避けて通る道)を検索して選択できるものがある。このような経路出力装置における裏道の検索は、地図データを構成するリンクに設定されたコストを一時的に変更して経路探索を行うことによって実現されている。つまり、側道や脇道等に対応するリンクのような比較的高いコストが設定されているリンクを、国道や県道のような幹線道路のリンクと同等またはこれらを下回るようなコストに一時的に設定して経路探索を行うことによって実現されている。
【0003】
また、探索した経路が走行された際の所用時間とその経路情報とを走行履歴記憶手段へ記憶しておき、その記憶しておいた所用時間と新たに探索した経路の予想所要時間とを比較し、所要時間の短い方の経路を推奨経路として表示手段に表示する経路出力装置も提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−310969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、裏道を構成する側道や脇道等に関しては、一般的にVICS(Vehicle Information and Communication System)からの渋滞情報を得ることができないため、渋滞を避ける意図で裏道を選択したとしても、側道や脇道等が渋滞していて余計に時間を要してしまうというおそれがあった(上述した前者の経路出力装置)。
【0005】
また、上述した後者の経路出力装置は、推奨経路として探索された経路が走行された場合のみ所要時間とその経路情報とを走行履歴記憶手段へ記憶するようになっているため、推奨経路として探索されなかった経路が走行されたとしても、走行履歴記憶手段へ所要時間や経路情報が記憶されない。つまり、ユーザの通行実績が以後の経路案内で反映されづらいものであった。
【0006】
本発明はこのような問題にかんがみなされたものであり、よりユーザが裏道等を有効に利用することができる経路出力装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の経路出力装置は、位置情報取得手段と、速度情報取得手段と、記憶手段と、第一の制御手段と、第二の制御手段とを備える。位置情報取得手段は自己の位置を特定するための位置情報を取得し、速度情報取得手段は自己の移動速度を特定するための速度情報を取得し、記憶手段は情報を記憶する。また、第一の制御手段は、速度情報取得手段が取得した速度情報に基づき、所定経路における所定移動速度以下または以上であった時間を合計して合計時間を求め、所定経路の総行程時間に占める合計時間の割合を算出し、その算出した割合を位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて求めた経路情報とともに記憶手段に記憶させる。また、第二の制御手段は記憶手段が記憶する経路情報を少なくとも一つ読み出して出力する。なお、ここで言う「経路情報」というのは、この経路情報に基づいて所定経路を少なくとも案内可能な情報であり、具体的には例えば、出発地点から目的地点までのリンク情報が考えられる。
【0008】
したがって、第二の制御手段が読み出した経路情報が次回以降の経路案内の際に利用されることにより、ユーザが実際に通行した経路が案内される。つまり、経路案内装置等によって提示された経路をユーザが通行する通行しないにかかわらず、ユーザの判断により選択して通行した裏道等の経路情報が記憶される。そして、その記憶された経路情報が活用されることにより、目的地到着までの時間が短縮されたり、運転の快適性が向上したりする。また、上述したような方法で割合を算出して経路情報と共に記憶手段に記憶させるため、その割合を考慮して経路情報を利用することにより長時間の渋滞状態を回避可能な経路を通行することが可能になり、その場合は特に運転の快適性が向上する。
【0009】
ところで、第一の制御手段の具体的な動作は、割合および経路情報を記憶手段に記憶させる際、今回記憶させる予定の経路情報の出発地おび目的地と同一の出発地および目的地である経路情報を記憶手段が記憶する経路情報の中から探し、その見つかった経路情報に対応する記憶手段が記憶する割合と、今回記憶させる割合とを比較するようになっているとよい。そして、第一の制御手段は、その比較結果に基づいて割合および経路情報を記憶手段へ記憶させるか否かを判断して、その判断結果に応じた処理を実行するようになっているとよい(請求項2)。なお、記憶手段が記憶する経路情報の中に該当するものが見つからなかった場合は、今回記憶させる予定の情報を記憶手段へ無条件に記憶させればよい。
【0010】
このような経路出力装置であれば、同一の出発地および目的地である経路情報について、上述した割合が低いもの(または高いもの)に対応する情報だけが記憶手段へは記憶されるため、記憶手段の記憶可能な領域の使用を最小限に抑えることができる。また、経路情報を記憶手段から読み出す際に、経路情報のみを考慮するだけで記憶手段に記憶された情報の中で最も低い割合(または最も高い割合)の経路情報を読み出すことができるため、読み出し時の処理負荷が軽減される。
【0011】
一方、上述した割合の大小を考慮せずに経路情報を第一の制御手段が記憶手段へ記憶させるようになっている場合には、第二の制御手段は、記憶手段が記憶する経路情報の中から、所定の出発地と目的地である経路情報を上述した割合に基づき読み出して出力するようになっているとよい(請求項3)。
【0012】
このようになっていれば、上述した割合の中で最も低いもの(または最も高いものを)が選ばれて出力されるため、第二の制御手段が出力した情報の中からさらに上述した割合を考慮して経路情報を選択するという処理が不要になる。
【0013】
ところで、第一の制御手段が上述した割合を算出する際に用いる「所定移動速度」は例えば0km/hであるとよい(請求項4)。
このような場合、上述した割合の意味するものが、「総行程時間に占める、移動速度が0km/hであった時間合計の割合」となり、時間の観点でどの程度、停止していたかを表すことになる。このため、この割合を考慮することにより、停止していた時間の割合が少ない経路(つまり、渋滞や信号等による停止時間の少ない経路)に関する情報を経路出力装置が出力可能となる。
【0014】
また、第一の制御手段が上述した割合を算出する際に用いる「所定移動速度」は、例えば、所定経路の総行程における平均移動速度の半分の速度であるとよい(請求項5)。
このような場合、上述した割合の意味するものが、「総行程時間に占める、移動速度が平均移動速度の半分の移動速度以下(または半分以上)であった時間合計の割合」となり、時間の観点でどの程度、比較的遅い速度(または比較的早い速度)であったかを表すことになる。このため、この割合を考慮することにより、比較的低速で移動していた時間の割合が少ない経路(つまり、渋滞や信号等による停止時間および低速走行の時間の少ない経路)に関する情報を経路出力装置が出力可能となる。
【0015】
ところで、通常、経路出力装置は、経路を探索するために必要な情報を取得する情報取得手段が取得した情報に基づいて所定位置から所定目的地までの推奨経路を探索し、その探索した経路情報を出力する機能(第三の制御手段により実現される機能)を備えていることが多い。このため、この機能によって出力される経路情報と、上述した第二の制御手段が出力した経路情報とが最終的に択一的に経路出力装置から出力されるようになっているとよい。つまり、経路出力装置は、ユーザからの操作を受け付ける受付手段が受け付けた所定の操作に基づき、第二の制御手段または第三の制御手段の何れか一方が機能するようになっているとよい(請求項6)。
【0016】
また、第一の制御手段については、受付手段が所定の操作を受け付けた際に機能するようになっているとよい(請求項7)。
このようになっていれば、ユーザの意志により上述した割合と経路情報とを記憶手段へ記憶させることができる。つまり、例えば、裏道登録のようなことをユーザの意志により行うことができる。
【0017】
また、ユーザに対して上述した割合と経路情報とを記憶手段へ記憶させることを提案するようになっていてもよい。具体的には、例えば、請求項8に記載のように、ユーザへ情報を報知する報知手段を制御する第四の制御手段が、現在時刻が予め定められた時間帯か否かを判定し、現在時刻が予め定められた時間帯であると判定した場合、上述した所定の操作をユーザに行わせるための情報を報知手段へ報知させるようになっているとよい。
【0018】
このようになっていれば、例えば、朝夕のラッシュ時に上述した提案がなされ、その提案に対してユーザが所定の操作を行えばラッシュ時の裏道登録がなされる。つまり、ラッシュ時という渋滞の発生度合いが高い時間帯に登録された裏道であれば、ユーザが最も裏道を通りたいと思う時間帯に有効な裏道が記憶手段に記憶されることになる。したがって、記憶手段へ記憶させる情報の価値を向上させることができる。
【0019】
また、請求項9に記載のように、ユーザへ情報を報知する報知手段を制御する第五の制御手段が、情報取得手段が取得する情報が更新されたか否かを判定し、情報取得手段が取得する情報が更新されたと判定した場合、所定の操作をユーザに行わせるための情報を報知手段へ報知させるようになっていてもよい。
【0020】
このようになっていれば、例えば道路情報を蓄えているDVD−ROMが交換された際に、新たな道路情報に基づいた経路情報が記憶手段に記憶されることになり、より記憶手段が記憶する情報の精度や価値が向上する。
【0021】
ところで、記憶手段は一般的に記憶できる情報量に限度がある。このため、請求項10に記載のように、第一の制御手段は、経路情報を記憶手段に記憶させる際、経路情報に対応させて当該時点の時刻情報を記憶させるようになっているとよい。そして、当該経路出力装置は、さらに、所定のタイミングで、記憶手段に記憶されている時刻情報に基づき、経路情報が有効であるか否かを判定し、経路情報が有効でないと判定した場合に、時刻情報に対応する経路情報を記憶手段から削除する第六の制御手段を備えるようになっているとよい。
【0022】
このようになっていれば、記憶手段が記憶する情報の量を効果的に制御することができ、記憶手段が記憶可能な情報量の限度に達してしまい新たな情報が記憶できないというようなことを防止することができる。
【0023】
また、請求項11に記載のような、請求項1〜請求項10の何れかに記載の経路出力装置における第一の制御手段として機能させるプログラムを、経路出力装置が内蔵するコンピュータに実行させるようになっていてもよい。このようになっていれば、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、ROM、RAM等のコンピュータが読みとり可能な記録媒体にプログラムを記録し、そのプログラムを必要に応じてコンピュータにロードして起動することによりコンピュータを経路出力装置の第一の制御手段として機能させることができる。また、プログラムはネットワーク等を用いて流通させることも可能であるため、経路出力装置の機能向上も容易である。
【0024】
また、請求項12に記載のような、請求項1〜請求項10の何れかに記載の経路出力装置における第二の制御手段として機能させるプログラムを、経路出力装置が内蔵するコンピュータに実行させるようになっていてもよい。このようになっていても同様の効果を奏する。
【0025】
なお、請求項8に記載の第四の制御手段や、請求項9に記載の第五の制御手段や、請求項10に記載の第六の制御手段として機能させるプログラムを、経路出力装置が内蔵するコンピュータに実行させるようになっていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0027】
[構成および動作の説明]
図1は、本発明の経路出力装置が有する機能が組み込まれたナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。
【0028】
ナビゲーション装置20は車両に搭載され、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、操作スイッチ群22と同様に各種指示を入力可能であってナビゲーション装置20とは別体となったリモートコントロール端末(以下、リモコンと称す)23aと、リモコン23aからの信号を入力するリモコンセンサ23bと、パケット通信網等に接続して外部と通信を行う外部通信機24と、地図データや音声データ等が記録された地図記憶媒体からデータを入力する地図データ入力器25と、地図や各種情報の表示を行うための表示部26と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部27と、利用者が発話した音声に基づく電気信号を出力するマイクロフォン28と、上述した位置検出器21,操作スイッチ群22,リモコンセンサ23b,外部通信機24,地図データ入力器25,マイクロフォン28からの入力に応じて各種処理を実行し、外部通信機24,表示部26,音声出力部27を制御する制御部29とを備えている。
【0029】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を出力するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ21bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ21cと、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサ21dとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21dからの出力信号に基づいて制御部29が、車両の位置,方位,速度等を算出する。なお、GPS受信機21aからの出力信号に基づいて現在位置を求める方式は様々な方式があるが、単独測位方式、相対測位方式の何れであってもよい。
【0030】
操作スイッチ群22は、表示部26の表示面と一体に構成されたタッチパネル及び表示部26の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等から構成される。尚、タッチパネルと表示部26とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式,電磁誘導方式,静電容量方式,あるいはこれらを組み合わせた方式など各種の方式があるが、その何れを用いてもよい。
【0031】
外部通信機24は、路側に設置された光ビーコンや電波ビーコン等を介してVICSの情報センタから事故情報や渋滞情報等を取得する。
地図データ入力器25は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための装置である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ、名称データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。なお、地図データ記憶媒体からこれらのデータを入力する代わりに、通信ネットワークを介してこれらのデータを入力するようになっていてもよい。
【0032】
表示部26は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ,CRTなどがあるが、その何れを用いてもよい。表示部26の表示画面には、位置検出器21にて検出した車両の現在位置と地図データ入力器25より入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種施設のマーク等の付加データとを重ねて表示することができる。また、施設のガイド等も表示できる。
【0033】
音声出力部27は、地図データ入力器25より入力した施設のガイドや各種案内の音声を出力することができる。
マイクロフォン28は、利用者が音声を入力(発話)するとその入力した音声に基づく電気信号(音声信号)を制御部29に出力するものである。利用者はこのマイクロフォン28に様々な音声を入力することにより、ナビゲーション装置20を操作することができる。
【0034】
制御部29は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。例えば、位置検出器21からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器25を介して読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部26に表示する処理や、地図データ入力器25に格納された地図データと、操作スイッチ群22やリモコン23a等の操作に従って設定された目的地とに基づいて現在位置から目的地までの最適な経路を算出する経路算出処理や、その算出した経路を表示部26に表示させたり音声出力部27に音声として出力させることにより経路を案内する経路案内処理等を実行する。
【0035】
また、制御部29が備えるSRAMの記憶領域には、裏道に関する情報を記憶するためのテーブル用の領域が存在する。この領域に定義されたテーブルについて、図2のテーブル模式図を用いて説明する。
【0036】
図2に示す裏道テーブル61は、裏道を走行した際に記録された情報を蓄積するためのテーブルである。裏道テーブル61のレコードは、レコードの識別子の項目であるレコードID61aと、レコードを記録した日時の項目である記録日時61bと、走行経路の出発地点のノード番号の項目である出発地点ノード61cと、走行経路の到着地点のノード番号の項目である到着地点ノード61dと、どの程度渋滞にはまっていたかを示す割合の項目である渋滞はまり率61eと、走行経路を構成するリンク列の項目である経路情報61fとから構成される。
【0037】
この裏道テーブル61に記録されるレコードは、後述する経路記録処理において生成されて挿入されるものである。
次に、制御部29が実行する処理のうち、本実施例のナビゲーション装置20に特徴的な処理である経路算出処理、経路記録処理および裏道テーブル削除処理について以下に説明する。なお、従来のナビゲーション装置が実行する、経路案内処理等の一般的な処理については説明を省略する。
【0038】
(1)経路算出処理
まず、経路算出処理について図3のフローチャートを用いて説明する。経路算出処理は、ユーザによって操作スイッチ群22やリモコン23aが操作されて目的地点が入力された際に制御部29が実行を開始する処理である。
【0039】
制御部29が経路算出処理の実行を開始すると、まず、位置検出器21から出力された信号に基づいて算出した現在地点(出発地点)付近のノードおよびユーザによって入力された目的地点付近のノードと同一のデータを有するレコードが裏道テーブル61に存在するか否かを判定する(S110)。この判定は、裏道テーブル61のレコードにおける出発地点ノード61cのデータおよび到着地点ノード61dのデータがそれぞれ参照されて判定される。なお、出発地点ノード61cのデータの代わりに、経路情報61fの項目のデータを構成する何れかのリンクに対応するノードを用いて判定してもよい。つまり、経路途中に出発地点がある場合も上記判定を満たすようにしてもよい。
【0040】
このS110において、条件を満たすレコードが裏道テーブル61に存在しないと判定した場合は(S110:NO)、従来より行われているダイクストラ法等の経路探索アルゴリズムを用いて経路探索を行う(S120)。そして、この経路探索を行うことにより見つかった経路のいくつかを候補経路として、その概略を表示部26に表示させる(S130)。そして、本処理(経路算出処理)を終了する。
【0041】
一方、S110において、条件を満たすレコードが裏道テーブル61に存在すると判定した場合も(S110:YES)、従来より行われているダイクストラ法等の経路探索アルゴリズムを用いて経路探索を行う(S140)。そして、この経路探索を行うことにより見つかった経路のいくつかと、裏道テーブル61から見つかったレコードの情報によって定まる経路(裏道経路)とを候補経路として、その概略を表示部26に表示させる(S150)。そして、本処理(経路算出処理)を終了する。
【0042】
(2)経路記録処理
次に、経路記録処理について図4のフローチャートを用いて説明する。経路記録処理は、上述した経路算出処理によって表示部26に表示させた経路のうちの何れかが、ユーザによって操作スイッチ群22やリモコン23aが操作されて選択された際に、制御部29が実行を開始する処理である。なお、本処理と並行して、ユーザによって選択された経路を案内する経路案内処理が開始される。この経路案内処理については説明を省略する。
【0043】
制御部29が経路記録処理の実行を開始すると、まず、以前行った、対象の目的地までの裏道登録から一定時間が経過したか否かを判定する(S210)。この判定は、本経路記録処理の実行に先立って実行された経路算出処理の際に用いた、位置検出器21から出力された信号に基づいて算出した現在地点(出発地点)付近のノードおよびユーザによって入力された目的地点付近のノードと同一のデータを有するレコードを裏道テーブル61から検索し、検索して見つかったレコードにおける記録日時61bの項目のデータが現在日時に比較して1ヶ月以上経過しているか否かを判定することである。そして、その判定結果が「1ヶ月以上経過している」という結果であった場合には、前回の裏道登録から一定時間が経過していると判定し(S210:YES)、その判定結果が「1ヶ月以上経過していない」という結果であった場合には、前回の裏道登録から一定時間が経過していないと判定する(S210:NO)。なお、裏道テーブル61を検索した際、該当するレコードが見つからなかった場合は、前回の裏道登録から一定時間が経過していると判定する(S210:YES)。
【0044】
ここで、前回の裏道登録から一定時間が経過していないと判定した場合には(S210:NO)、現在時刻が予め設定されている所定の時間帯であるか否かを判定する(S215)。この「予め設定されている所定の時間帯」というのは、制御部29に記憶されている時間帯であり、ユーザによって操作スイッチ群22やリモコン23aが操作されて入力されたものである。具体的には、AM7:00〜AM9:00や、PM5:00〜PM7:00というような渋滞時間帯が主に設定されている。
【0045】
このS215において、現在時刻が予め設定されている所定の時間帯であると判定した場合は(S215:YES)、後述するS230へ処理を移行する。一方、現在時刻が予め設定されている所定の時間帯でないと判定した場合は(S215:NO)、本処理(経路記録処理)を終了する。
【0046】
上述したS210において、前回の裏道登録から一定時間が経過していると判定した場合には(S210:YES)、地図データが更新されたか否かを判定する(S220)。この判定は、地図データ入力器25が入力する地図データが更新されたか否か、つまり、地図データ記憶媒体から地図データを入力する場合は地図データ記憶媒体が記憶する地図データのバージョンが上がったか否かを判定することであり、通信ネットワークを介して地図データを入力する場合はその地図データのバージョンが上がったか否かを判定することである。
【0047】
このS220において、地図データが更新されていると判定した場合は(S220:YES)、地図データが更新されたことをユーザに報知し(S225)、裏道の新規開拓を行うように促す(S230)。なお、これらの報知は、表示部26にその旨を文字等によって表示させたり、音声出力部27に音声を出力させることによって行う。
【0048】
一方、S220において、地図データが更新されていないと判定した場合は(S220:NO)、裏道の新規開拓を行うようにユーザに促す報知のみを行う(S230)。
続いて、裏道の新規開拓を行う旨の指示が、ユーザによって操作スイッチ群22やリモコン23aが操作されて入力されたか否かを判定する(S235)。裏道の新規開拓を行う旨の指示が入力されなかった場合は(S235:NO)、本処理(経路記録処理)を終了する。
【0049】
一方、裏道の新規開拓を行う旨の指示が入力された場合は(S235:YES)、車両の通行情報の記録を開始する(S240)。ここで言う車両の通行情報というのは、車両の通行する経路に対応するリンク情報および1秒毎の車速の情報であり、制御部29内の所定の一時記憶領域に記憶する。
【0050】
続いて、車両が目的地に到着すると車両の通行情報の記録を終了し(S245)、渋滞はまり率を算出する(S250)。この「渋滞はまり率」というのは、制御部29内の所定の一時記憶領域に記憶された情報に基づいて総行程中の平均車速の半分以下であった時間の合計を求め、その合計の総行程時間に占める割合を算出したものである。
【0051】
続いて、本経路記録処理の実行に先立って実行された経路算出処理の際に用いた、位置検出器21から出力された信号に基づいて算出した現在地点(出発地点)付近のノードおよびユーザによって入力された目的地点付近のノードと同一のデータを有するレコードを裏道テーブル61から検索し、検索して見つかったレコードにおける渋滞はまり率61eの項目のデータよりも、S250で算出した渋滞はまり率のほうがも低いか否かを判定する(S255)。なお、裏道テーブル61を検索した際、該当するレコードが見つからなかった場合は、S250で算出した渋滞はまり率の方が低いと判定する(S255:YES)。
【0052】
このS255において、S250で算出した渋滞はまり率のほうが裏道テーブル61を検索することにより見つかったレコードのものよりも低いと判定した場合は(S255:YES)、制御部29内に記憶しておいた経路情報やS250で算出した渋滞はまり率等に基づいて、裏道テーブル61に記憶させるためのレコードを構成し(図2参照)、裏道テーブル61にレコードを記憶させる。そして、本処理(経路記録処理)を終了する。
【0053】
一方、S250で算出した渋滞はまり率のほうが裏道テーブル61を検索することにより見つかったレコードのものよりも高いと判定した場合は(S255:NO)、本処理(経路記録処理)を終了する。
【0054】
(3)裏道テーブル削除処理
次に、裏道テーブル削除処理について図5のフローチャートを用いて説明する。裏道テーブル削除処理は、予め定めておいた期間(例えば、一ヶ月)が経過した都度、制御部29が実行を開始する処理である。なお、この「予め定めておいた期間」というのは、ユーザが操作スイッチ群22やリモコン23aを操作することによって変更することができる。
【0055】
制御部29が裏道テーブル削除処理の実行を開始すると、まず、裏道テーブル61から最も小さいレコードIDのレコードを読み出す(S310)。そして、この読み出しに失敗したか否かを判定する(S320)。この読み出しに失敗した場合は、本処理(裏道テーブル削除処理)を終了する。一方、この読み出しに成功した場合は、その読み出したレコードにおける記録日時61bの項目のデータが、現在日時からみて半年以上経過した値であるか否かを判定する(S330)。
【0056】
記録日時61bの項目のデータが、現在日時からみて半年以上経過した値であると判定した場合は(S330:YES)、当該レコードを裏道テーブル61から削除し(S340)、次に小さいレコードIDを有するレコードを裏道テーブル61から読み出す(S350)。そして、上述したS320へ処理を戻す。
【0057】
一方、S330において、記録日時61bの項目のデータが、現在日時からみて半年以上経過した値でないと判定した場合は(S330:NO)、次に小さいレコードIDを有するレコードを裏道テーブル61から読み出す(S350)。そして、上述したS320へ処理を戻す。
【0058】
[実施形態の効果]
以上、本実施形態の構成および動作について説明したが、本実施形態のナビゲーション装置20によれば、ユーザの意志で実際に通行した経路のうち、渋滞はまり率が低い経路についてはその経路情報が裏道テーブル61に記憶される(図4のS260)。そして、次回以降の経路案内の際に、ユーザが指定した目的地と同一の目的地までの経路が裏道テーブル61に存在すればその裏道もユーザが選択可能な案内経路として表示部26に表示される(図3のS150)。
【0059】
つまり、ナビゲーション装置20によって算出された経路をユーザが通行する通行しないにかかわらず、ユーザの判断により通行した裏道等の経路情報が記憶されて活用される。したがって、従来では案内されることがなかったような裏道等が案内され、目的地到着までの時間が短縮されたり、運転の快適性が向上したりする。また、上述したような方法で渋滞はまり率が算出されて経路情報と共に裏道テーブル61に記憶されるため、より長時間の渋滞状態を回避可能な経路を通行することが可能になり、その場合は特に運転の快適性が向上する。
【0060】
また、ナビゲーション装置20は、新たに経路情報を記憶する際、渋滞はまり率が低い経路情報だけが裏道テーブル61へ記憶され、既に記憶されている経路情報の渋滞はまり率の方が低ければ、新たな経路情報は破棄される(図4のS255:NO)。このため、裏道テーブル61の記憶領域を圧迫することを防止できる。また、経路情報を裏道テーブル61から読み出す際に、該当する出発地および目的地までの経路情報であるか否かのみを考慮するだけでその目的地までの最も低い渋滞はまり率の経路情報を裏道テーブル61から読み出すことができるため、読み出し時の制御部29の処理負荷が軽減される。
【0061】
また、現在時刻が予め定められた時間帯である場合や地図データが更新された場合には、ユーザに対して新しい裏道を通るように促すようになっているため(図4のS215:YES,S230)、ユーザがこのような提案に従えば、積極的に利用価値の高い経路情報が裏道テーブル61に記憶される。
【0062】
また、ナビゲーション装置20は、裏道テーブル61に記憶されている情報が半年以上前に記憶されたものであるか否かを判定し(図5のS330)、半年以上前に記憶されたものである場合には裏道テーブル61からその情報を削除するようになっている(図5のS340)。このため、古い裏道情報が裏道テーブル61に蓄積され続けて裏道テーブル61が記憶可能な情報量の限度に達してしまい新たな情報が記憶できない、というようなことを防止することができる。
【0063】
[他の実施形態]
以下、他の実施形態について説明する。
(イ)上述した実施形態では、同一の出発地点および目的地点に対して最も低い渋滞はまり率の経路情報のみを裏道テーブル61へ記憶させるようになっていたが、渋滞はまり率を考慮しないで、裏道テーブル61へ経路情報を記憶させるようになっていてもよい。もしくは考慮しても、渋滞はまり率が低いものが例えば上位3つだけ裏道テーブル61に記憶されているように考慮し、経路情報を記憶させるようになっていてもよい。このようになっていれば、経路案内の際に、ユーザに対して裏道を複数提案することができ、ユーザの経路選択の範囲が広がる。
【0064】
(ロ)上述した実施形態では、渋滞はまり率の算出方法として、総行程中の平均車速の半分以下であった時間の合計を求め、その合計の総行程時間に占める割合を算出するという方法を採用したが、渋滞はまり率の算出方法は、これに限らない。例えば、総行程中における停車時間の合計を求め、その合計の総行程時間に占める割合を算出するという算出方法でもよいし、総行程中の平均車速の3分の1以下であった時間の合計を求め、その合計の総行程時間に占める割合を算出するというような算出方法でもよい。
【0065】
(ハ)上記実施形態では、一ヶ月に一度、裏道テーブル削除処理を実行するようになっていたが、常に、裏道テーブル削除処理を実行するようになっていてもよい。また、半年以上前に記憶された情報を削除するようになっていたが、例えば、3ヶ月以上に記憶された情報を削除するようになっていてもよいし、1年以上前に記憶された情報を削除するようになっていてもよい。これらの値は、ユーザによって設定できるようになっているとよい。また、このような削除方法の代わりに、裏道テーブル61に経路情報の利用回数を記憶するようにしておいて利用回数の少ない情報を削除するようにしてもよい。
【0066】
[特許請求の範囲の用語等との対応]
上記実施形態の用語と特許請求の範囲に記載の用語との対応を示す。位置検出器21が位置情報取得手段に相当し、距離センサ21cが速度情報取得手段に相当し、制御部29が、記憶手段、第一の制御手段、第二の制御手段、第三の制御手段、第四の制御手段、第五の制御手段および第六の制御手段に相当する。また、地図データ入力器25が情報取得手段に相当し、操作スイッチ群22およびリモコン23が受付手段に相当し、表示部26および音声出力部27が報知手段に相当する。また、上記実施形態の「渋滞はまり率」が特許請求の範囲で言うところの「割合」に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】裏道テーブルの構成を説明するためのテーブル模式図である。
【図3】経路算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】経路記録処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】裏道テーブル削除処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
20…ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…距離センサ、21d…地磁気センサ、22…操作スイッチ群、23a…リモコン、23b…リモコンセンサ、24…外部通信機、25…地図データ入力器、26…表示部、27…音声出力部、28…マイクロフォン、29…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己の位置を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段と、
自己の移動速度を特定するための速度情報を取得する速度情報取得手段と、
情報を記憶する記憶手段と、
前記速度情報取得手段が取得した前記速度情報に基づき、所定経路における所定移動速度以下または以上であった時間を合計して合計時間を求め、前記所定経路の総行程時間に占める前記合計時間の割合を算出し、その算出した割合を前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて求めた前記所定経路の経路情報とともに前記記憶手段に記憶させる第一の制御手段と、
前記記憶手段が記憶する前記経路情報を少なくとも一つ読み出して出力する第二の制御手段と、
を備えることを特徴とする経路出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路出力装置において、
前記第一の制御手段は、前記割合および前記経路情報を前記記憶手段に記憶させる際、今回記憶させる予定の前記経路情報の出発地おび目的地と同一の出発地および目的地である前記経路情報を前記記憶手段が記憶する前記経路情報の中から探し、その見つかった前記経路情報に対応する前記記憶手段が記憶する前記割合と、今回記憶させる前記割合とを比較し、その比較結果に基づいて前記割合および前記経路情報を前記記憶手段へ記憶させるか否かを判断して、その判断結果に応じた処理を実行すること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の経路出力装置において、
前記第二の制御手段は、前記記憶手段が記憶する前記経路情報の中から、所定の出発地と目的地である前記経路情報を前記割合に基づき読み出して出力すること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の経路選択装置において、
前記所定移動速度は0km/hであること、
を特徴とする経路選択装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の経路選択装置において、
前記所定移動速度は前記所定経路の総行程における平均移動速度の半分の速度であること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の経路出力装置において、
当該経路出力装置は、さらに、
経路を探索するために必要な情報を取得する情報取得手段と、
ユーザからの操作を受け付ける受付手段と、
前記情報取得手段が取得した前記情報に基づいて、所定位置から所定目的地までの推奨経路を探索し、その探索した経路情報を出力する第三の制御手段と、
を有し、
前記第二の制御手段および前記第三の制御手段は、前記受付手段が受け付けた所定の操作に基づき、何れか一方が機能すること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項7】
請求項6の何れかに記載の経路出力装置において、
前記第一の制御手段は、前記受付手段が所定の操作を受け付けた際に機能すること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項8】
請求項7に記載の経路出力装置において、
当該経路出力装置は、さらに、
ユーザへ情報を報知する報知手段と、
前記報知手段を制御する第四の制御手段と、
を備え、
前記第四の制御手段は、現在時刻が予め定められた時間帯か否かを判定し、現在時刻が予め定められた時間帯であると判定した場合、前記所定の操作をユーザに行わせるための情報を前記報知手段へ報知させること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項9】
請求項7に記載の経路出力装置において、
当該経路出力装置は、さらに、
ユーザへ情報を報知する報知手段と、
前記報知手段を制御する第五の制御手段と、
を備え、
前記第五の制御手段は、前記情報取得手段が取得する情報が更新されたか否かを判定し、前記情報取得手段が取得する情報が更新されたと判定した場合、前記所定の操作をユーザに行わせるための情報を前記報知手段へ報知させること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の経路出力装置において、
前記第一の制御手段は、前記経路情報を前記記憶手段に記憶させる際、前記経路情報に対応させて当該時点の時刻情報を前記記憶手段へ記憶させるようになっており、
当該経路出力装置は、さらに、
所定のタイミングで、前記記憶手段に記憶されている前記時刻情報に基づき、前記経路情報が有効であるか否かを判定し、前記経路情報が有効でないと判定した場合に、前記時刻情報に対応する前記経路情報を前記記憶手段から削除する第六の制御手段を備えること、
を特徴とする経路出力装置。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1〜請求項10の何れかに記載の経路出力装置における前記第一の制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1〜請求項10の何れかに記載の経路出力装置における前記第二の制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−162291(P2006−162291A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350174(P2004−350174)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】