説明

結晶シリコンインゴットの製造方法

【課題】結晶シリコンインゴットの製造方法が提供される。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る製造方法は、方向性凝固法を用いてシリコン原料を溶融及び冷却するために形成された鋳型を供給し、鋳型内部にバリア層を配置し、バリア層の上に1つ以上のシリコン種結晶を配置し、シリコン種結晶の上にシリコン原料を入れ、鋳型を加熱してシリコン融液を得て、鋳型を方向性凝固法で冷却することでシリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得ることを含む。鋳型は、シリコン原料が完全に溶融し且つシリコン種結晶が少なくとも部分的に溶融するまで加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、結晶シリコンインゴットの製造方法に関し、特に、欠陥密度が低く、鋳型(例えば、るつぼ)からの汚染を最小限にする結晶シリコンインゴットの製造方法、及び結晶シリコンインゴットの製造において用いられるシリコン種のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの太陽電池は、光の一部を吸収すると光起電力(PV)効果を生じる。シリコンは、地上で二番目に入手し易い化学元素であり、かつ低価格で、毒性がなく、しかも安定性が高いという利点を有するので、太陽電池用の原材料は、大抵がシリコンを含有している。シリコンはまた、半導体産業でも広く用いられる。
【0003】
太陽電池用シリコン材料としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及びアモルファスシリコンなどがある。一般に、多結晶シリコンが、従来の成長法(例えば、キロプロス法及びチョクラルスキー(CZ)法並びに浮遊帯域法(FZ))で製造された単結晶シリコンに比べて低価格であるという理由で選択される。
【0004】
一般に、多結晶シリコンを用いる太陽電池は、既知の技術を用いて製造される。この技術による製造方法は、簡単に言えば、最初に高純度のシリコン融液を鋳型(例えば、石英るつぼ)に入れ、次に鋳型を冷やしてシリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得る。そして、シリコンインゴットを太陽電池用途のウェハサイズの薄片に切断する。
【0005】
多結晶シリコンインゴットの製造工程中に、シリコン粒子間に欠陥が存在した場合、それは太陽電池の変換効率を低下させる。例えば、転位、粒界などの欠陥は、再結合の中心を形成して少数キャリア(例えば、電子機器)の寿命を短くする可能性が高い。言い換えると、多結晶シリコン内の欠陥密度は、構成要素の構造、特性、及びキャリアの輸送速度に大きな影響を及ぼす。このため、従来技術は、低い欠陥密度又は害の無い欠陥(例えば、双晶境界等)を有する多結晶シリコンインゴットの製造に、主として焦点を合わせている。
【0006】
しかし、周知の従来技術では、鋳型と接触する結晶シリコンインゴットの縁部への、るつぼからの汚染を低減させる技術を採用していなかったので、汚染を受けた部分を廃棄物として除去する必要があった。
【0007】
また、多くの周知の結晶シリコンインゴット製造方法では、単結晶のシリコン種を使用する。単結晶のシリコン種は、製造原価全体のうち高い割合を占める。太陽電池産業においても、単結晶シリコンの代わりに欠陥密度の低い多結晶シリコンを種として用いる従来技術は知られていないが、これによって結晶シリコンインゴットの製造において使用される種のコストを削減することができる。
【0008】
更に、低い欠陥密度又は害の無い欠陥を有するシリコンインゴットの既知の製造方法によると、製造原価が高くなることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の課題及び他の課題を解決しようとするものであり、以下に例示する本発明の実施形態により、欠陥密度の低い結晶シリコンインゴットを製造し、鋳型(例えば、るつぼ)からの汚染を最小限にする一つの方法が提供される。
【0010】
また、結晶シリコンインゴットの製造において、使用されたシリコン種をリサイクルして再使用する別の方法が提供される。
【0011】
さらに、低い欠陥密度又は害の無い欠陥を有する結晶シリコンインゴットの製造原価を削減する別の方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造方法は、方向性凝固法を用いてシリコン原料を溶融及び冷却するために形成された鋳型を供給し、鋳型の内部にバリア層を配置し、バリア層上に1つ以上のシリコン種結晶を配置し、シリコン種結晶の上にシリコン原料を入れ、シリコン原料が完全に溶融し且つシリコン種結晶が少なくとも部分的に溶融するまで鋳型を加熱することによってシリコン融液を得て、鋳型を方向性凝固法で冷却することでシリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得ることを含む。
【0013】
別の実施形態では、結晶シリコンインゴットの製造方法は、方向性凝固法を用いてシリコン原料を溶融及び冷却するために形成された鋳型を供給し、多層構造体のバリアが鋳型の底部と接触するようにして鋳型の内部に多層構造体を配置することを含む。多層構造体は、鋳型の底部に配置されたバリア層と、バリア層に接触する少なくとも1層のシリコン種結晶層とを含む。この方法は更に、シリコン種結晶層の上にシリコン原料を入れ、シリコン原料が完全に溶融し且つシリコン種結晶層が少なくとも部分的に溶融するまで鋳型を加熱することによってシリコン融液を得て、鋳型を方向性凝固法で冷却することでシリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得ることを含む。
【0014】
一実施形態では、バリア層は、1400℃より高い融点を有する材料から製造してもよい。この材料は、シリコン、高純度グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化物、窒化物、酸化物、他のセラミック材料、又は前記化合物の混合物にすることができる。
【0015】
一実施形態では、1つ以上のシリコン種結晶には、1つ以上の単結晶のシリコン種結晶及び/又は1つ以上の多結晶のシリコン種結晶が含まれる。
【0016】
一実施形態では、シリコン種結晶層は、1つ以上のシリコン種結晶を含む。
【0017】
一実施形態では、シリコン種結晶層及びシリコン種結晶は、欠陥密度が低いという特性を有する。欠陥密度特性が低いとは、1×10個/cm未満のエッチピット密度、2cmより大きな平均粒径、10ppma未満の不純物濃度、又はこれらの組み合わせで表すことができる。
【0018】
一実施形態では、バリア層での不純物の拡散性(すなわち、拡散係数)は、鋳型での不純物の拡散性よりも低い。
【0019】
別の実施形態では、結晶シリコンインゴットの製造方法は、方向性凝固法を用いてシリコン原料を溶融及び冷却するために形成された鋳型を供給し、鋳型の内部に少なくとも1つのシリコン種結晶を配置することを含み、各シリコン種結晶は、少なくとも1つのシリコン結晶粒を含み、1×10個/cm未満のエッチピット密度、2cmより大きな平均粒径、10ppma未満の不純物濃度、又はこれらの組み合わせを有する。この方法は更に、シリコン種結晶の上にシリコン原料を入れ、シリコン原料が完全に溶融し且つシリコン種結晶が少なくとも部分的に溶融するまで鋳型を加熱することによってシリコン融液を得て、鋳型を方向性凝固法で冷却することでシリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得ることを含む。
【発明の効果】
【0020】
これにより、従来の製造方法に比べて、本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、欠陥密度が低く、鋳型(例えば、るつぼ)による汚染が最小限にされた結晶シリコンインゴットを製造することができる。この方法は、更に、シリコン種結晶の再使用及びリサイクルを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】図1Aは、第1の実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図である。
【図1B】図1Bは、第1の実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図である。
【図1C】図1Cは、第1の実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図である。
【図1D】図1Dは、第1の実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図である。
【図1E】図1Eは、第1の実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図である。
【図2】図2は、シリコン種結晶を用いて製造されたシリコンインゴット及びシリコン種結晶を用いずに製造された別のシリコンインゴットのそれぞれについて示すグラフである。
【図3】図3は、第2の実施形態による結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図である。
【図4】図4は、第3の実施形態による結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に例示する実施形態の更に他の態様、特徴及び利点は、例示した実施形態を実施するために検討された最良の形態を含め、以下の記述から、いくつかの特定の実施形態などを説明することにより容易に明らかになる。例示した実施形態は、他の異なる実施形態を実施する余地があり、それらのいくつかの詳細は、例示した実施形態の趣旨及び範囲から逸脱しない種々の明白な点において変更することが可能である。したがって、図面及び説明は、実施例と考えられるべきものであり、これに限定されるものではない。
【0023】
例示した実施形態は、例として説明されたものであり、これに限定して説明されたものではない。添付の図面の図において、同じ符号は、類似の構成要素を表すものとする。
【0024】
図1A〜図1Eは、第1の実施形態による結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図の一例を示す。
【0025】
図1Aに示されるように、第1の実施形態によれば、結晶シリコンインゴットの製造方法は、最初に鋳型10を供給することを含む。鋳型10は、シリコン原料の溶融及び冷却において、方向性凝固法を実施するのに適するものとする。本実施例では、鋳型10は石英るつぼであってもよい。
【0026】
この方法は更に、鋳型10の内部にバリア層12と1つ以上のシリコン種結晶14a、14bとを配置することを含み、シリコン種結晶14a、14bは、バリア層12の上に配置される。1つ以上のシリコン種結晶には、単結晶(単結晶性の)シリコン種結晶(例えば、図1Aの14b)が含まれてもよく、これは、例えば、単結晶シリコンインゴット、テール部原料、再生シリコンウェハ等から切り出される。1つ以上のシリコン種結晶には、多結晶(多結晶性の)シリコン種結晶(例えば、図1Aの14a)が含まれてもよく、これは、例えば、多結晶シリコンインゴットから切り出される。1つ以上のシリコン種結晶は、1つ以上の単結晶シリコン種結晶14bと1つ以上の多結晶シリコン種結晶14aとの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、1つ以上のシリコン種結晶が、バリア層12を完全に覆う。例えば、図1Aに示されるように、単結晶シリコン種結晶14b及び多結晶シリコン種結晶14aを混在させて、バリア層12を完全に覆う。
【0027】
したがって、シリコン種結晶14a、14bと鋳型10との間にバリア層12を配置することで、シリコン種結晶及びシリコン種結晶上に配置されたシリコン原料が、鋳型10の底部に直接触れることを防止できる。製造工程中にバリア層12が溶融することはない。また、バリア層12から結晶シリコンインゴットへ拡散する不純物を、汚染防止のために大幅に減少させる必要がある。そのため、バリア層12での不純物の拡散性(すなわち、拡散係数)は、鋳型10での不純物の拡散性よりも低く設定される。一実施形態では、バリア層12を、1400℃より高い融点を有する材料から製造することができる。バリア層12の材料は、シリコン、高純度グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化物、窒化物、酸化物、他のセラミック材料、又は前記化合物の混合物にすることができる。更に、バリア層12を小片状に形成して、シリコン原料を鋳型10から切り離し、バリア層12と鋳型10の底面との間での接触面積を小さくし、バリア層12から結晶シリコンインゴットへの不純物の拡散を低減することができる。言い換えると、バリア層12から結晶シリコンインゴットへの拡散不純物を大幅に減少させることができる。また、バリア層12を鋳型10の底部に部分的に配置することで、1つ以上のシリコン種結晶14a、14bと鋳型10との間に形成される空間を増やすことができ、バリア層12から結晶シリコンインゴットへ拡散する不純物を更に減少させることができる。例えば、図1Aに示す例示の実施形態では、バリア層12は小片状であり、鋳型10の底部に部分的に配置され、鋳型10の底面を完全に覆うものではない。本実施形態では、バリア層12は、シリコン種結晶14a、14bを支えつつ鋳型10の底面から部分的に離隔し、より詳細には、バリア層12は、バリア層の各小片間に、ある程度の隙間を含む。バリア層12の小片間の隙間には、製造工程で一般的に使用される不活性ガス又は保護ガス(すなわち、窒素)を任意で充填してもよい。
【0028】
別の例示の実施形態では、バリア層12を高純度グラファイトプレート又は炭化ケイ素プレートを用いて、バリア層12から結晶シリコンインゴットへの汚染を防止し、そしてシリコン種結晶へ拡散するバリア層12の不純物を低減させることができる。このように、様々な形態のバリア層12及びシリコン種結晶が、製造工程において適用可能であることが分かる。小片形状から構成されたバリア層12は、実質的には小さな熱伝導面積を有することとなる。一方、プレート形状に構成されたバリア層12は、大きな熱伝導面積を有する。
【0029】
図1Bを参照すると、上記実施形態の方法は、鋳型10内部でのバリア層12上の1つ以上のシリコン種結晶14a、14bの露出部分に、シリコン原料16を配置することを含む。1つ以上のシリコン種結晶14a、14bは、単一の種のタイプでバリア層12の上の位置に配置されてもよい。この位置は、連続して冷却工程が必要とされる位置に対応する。図1Aに示す実施形態では、1つ以上のシリコン種結晶14a、14bがバリア層12を覆っており、シリコン原料16は、これら1つ以上のシリコン種結晶14a、14bの上に配置される。
【0030】
図1Cを参照すると、この方法は更に、バリア層12、1つ以上のシリコン種結晶14a、14b、及びシリコン原料16が配置された鋳型10をヒータ11内に置くことと、鋳型10を加熱してシリコン融液17を得ることとを含む。シリコン原料16が完全に溶融し、且つ1つ以上のシリコン種結晶14a、14bが部分的に溶融する(つまり、シリコン種結晶14a、14bの一部が溶融してリフローする)まで加熱する間、少なくとも1つのシリコン種結晶14a、14bは、過冷却状態に保たれる。
【0031】
図1Dを参照すると、この方法は、更に、方向性凝固法を実施して鋳型を冷却することを含み、それによりシリコン融液17が、鋳型10の底部から開口部へ向かって凝固される。図1Dに示されるように、シリコン融液17と凝固したシリコンインゴット18との間の固液界面14’(固相と液相との間の界面)は、冷却工程の間に鋳型10の開口部の方向に変位する。
【0032】
最終的には、図1Eに示されるように、シリコン融液17は、方向性凝固法を実施することによって完全にシリコンインゴット18へ凝固する。シリコンインゴット18は、シリコン結晶粒の数、シリコン種結晶の配置、及び方向性凝固法の実施に応じて、単結晶型又は多結晶型になり得る。しかし、シリコンインゴット18が多結晶型として形成されるとしても、シリコンインゴット18の一部は、シリコン結晶粒の成長競合に起因して、単結晶型で成長することがある。
【0033】
従来は、シリコンインゴット18が鋳型10から取り出されたとき、シリコンインゴット18の鋳型10との接触領域は、鋳型10で汚染されていて、その後に廃棄物として切り落とされていた。しかし、本実施形態によれば、シリコン種結晶14a、14bと鋳型10の底部との間のバリア層12を除去することで、るつぼによるシリコンインゴット18への汚染を著しく減少させることができる。このようなバリア層12は、バリア層12、及び鋳型10に直接接触していたシリコンインゴット18の最小限の部分を切り落とすだけで除去することができる。
【0034】
シリコン融液17がシリコン種結晶14a、14bの接合部に沿ってバリア層の小片間の隙間へ流れることを防ぐために、例示した実施形態では、1つ以上のバリア層の小片は、シリコン種結晶14a、14bの接合部に対応して置かれる。
【0035】
欠陥密度の低いシリコンインゴット18を製造するために、本実施例では、1つ以上のシリコン種結晶14a、14bは、欠陥密度が低いという特性を有する。低い欠陥密度とは、1×10個/cm未満のエッチピット密度、2cmより大きな平均粒径、10ppma未満の不純物濃度、又はこれらの組み合わせで表すことができる。エッチピット密度は、その表面に腐食性液体を塗布し、生じた孔を測定することによって求めることができ、また不純物は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を用いて測定することができる。
【0036】
図2は、シリコンインゴットに関するグラフであり、製造工程において欠陥密度が低い結晶シリコン種結晶を用いた場合と、用いない場合との欠陥密度(例えば、エッチピット密度)の比較を示す。グラフは、測定されたシリコンインゴットの異なる高さによる欠陥密度(エッチピット密度)を示す。
【0037】
図2から明らかなように、第1の実施形態によって、欠陥密度が低い1つ以上の単結晶シリコン種結晶を用いて形成されたシリコンインゴットは、シリコン種結晶を用いずに形成されたシリコンインゴットよりも欠陥領域が小さい。したがって、前述の実施形態による製造方法は、高い生産性及び高品質のシリコンインゴットをもたらす。
【0038】
図3は、第2の実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造方法を説明するための断面図の一例を示す。
【0039】
図3に示されるように、結晶シリコンインゴットの製造方法は、最初に鋳型20を供給することを含む。鋳型20は、シリコン原料の溶融及び冷却において、方向性凝固法を実施するのに適する。本実施例では、鋳型20は、図1Aと関連して説明された鋳型10と同じである。
【0040】
更に、多層構造体22を供給して、鋳型20に入れる。多層構造体22は、バリア層222とシリコン種結晶層224とを含んでいる。バリア層222は、シリコン種結晶層224と接しており、鋳型20の底部に配置される。コスト効率の良い生産のために、多層構造体22は、前述の実施形態で製造されたシリコンインゴットの底部をリサイクルして再利用することで得られるものであってもよい。例えば、図1A〜図1Eのシリコンインゴット18では、シリコンインゴット18の底部は、本質的にバリア層とシリコン種結晶層とを含む。そのため、先に製造されたシリコンインゴット18の底部を切断するだけで、多層構造体22が得られる。
【0041】
一実施形態において、シリコン種結晶層224は、1つ以上のシリコン種結晶を含む。
【0042】
更に、図3に示されるように、シリコン原料26は、鋳型20の内部に入れられて、シリコン種結晶層224の上に配置される。
【0043】
更に、図3に示されるように、バリア層222、シリコン種結晶層224、及びシリコン原料26が入れられた鋳型20は、シリコン融液を得るために加熱用ヒータ11(図1Cに示したヒータ11と同じ)の内側に置かれる。加熱工程の間、シリコン種結晶層224は、シリコン原料26が完全に溶解し且つ1層以上のシリコン種結晶層224が部分的に溶融する(すなわち、シリコン種結晶層224の一部が溶融してリフローする)まで過冷却状態に保たれる。
【0044】
最終的に、方向性凝固法を用いて鋳型20を冷却することによって、シリコン融液は、完全に凝固してシリコンインゴットを形成する。
【0045】
シリコン種結晶層224の結晶構造及び欠陥密度は、上述のシリコン種結晶14a、14bと同じであり、そしてバリア層222の構造及び材料もまた、上述のバリア層12と同じである。
【0046】
図4は、第3の実施形態に係る結晶シリコンインゴットの製造について説明するための断面図の一例を示す。
【0047】
図4に示されるように、結晶シリコンインゴットの製造方法は、最初に実施形態に従って鋳型30を供給する工程を含む。鋳型30は、シリコン原料の溶融及び冷却において、方向性凝固法を実施するのに適する。
【0048】
更に、図4に示されるように、1つ以上のシリコン種結晶34a、34bを鋳型30に入れる。少なくとも1つのシリコン種結晶34a、34bは、2つ以上のシリコン結晶粒を含む。1つ以上のシリコン種結晶34a、34bは、単結晶シリコンインゴット、テール部原料、再生シリコンウェハ等から切り出された、単結晶シリコン種結晶(例えば、図4の34b)にできる。1つ以上のシリコン種結晶34a、34bは、多結晶シリコン種結晶(例えば、図4の34a)にもできる。更に、シリコン種結晶34a、34bは、多結晶シリコン種結晶34aと単結晶シリコン種結晶34bとが混合されてもよく、鋳型30の底部を完全に覆う。例えば、図4に示されるように、多結晶シリコン種結晶34b及び単結晶シリコン種結晶34bが、鋳型30の底部を完全に覆う。
【0049】
特に、各シリコン種結晶34a、34bは、1つ以上のシリコン粒子を含み、欠陥密度が低いという特性を有する。欠陥密度が低いとは、1×10個/cm未満のエッチピット密度、2cmより大きな平均粒径、10ppma未満の不純物濃度、又はこれらの組み合わせで表すことができる。エッチピット密度は、前述のように腐食性液体を用いて測定することができ、また不純物は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を用いて測定することができる。
【0050】
更に、図4に示されるように、シリコン原料36は、鋳型30の内部に入れられて、1つ以上のシリコン種結晶34a、34bの上に配置される。
【0051】
更に、図4に示されるように、シリコン種結晶34a、34b及びシリコン原料36が鋳型30に入れられると、鋳型30は、シリコン融液を得るために加熱工程用ヒータ11(図1Cに示したヒータ11と同じ)の内側に置かれる。加熱工程の間、シリコン種結晶34a、34bは、シリコン原料36が完全に溶解し、且つ1つ以上のシリコン種結晶34a、34bが部分的に溶融する(すなわち、シリコン種結晶34a、34bの一部が溶融してリフローする)まで過冷却状態に保たれる。
【0052】
最終的に、方向性凝固法で鋳型30を冷却することで、シリコン融液は完全に凝固してシリコンインゴットになる。
【0053】
したがって、例示の実施形態に従った製造方法により、欠陥密度が低く、製造原価が安く、るつぼからの汚染の問題が大幅に軽減された結晶シリコンインゴットが製造される。この方法では、更に、シリコン種結晶及びバリア層を再使用及びリサイクルする。
【0054】
例示の実施形態をいくつかの実施形態及び実施に関連して説明したが、例示の実施形態は、それらに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に含まれる様々な明白な変更及び同等のアレンジを含む。例示の実施形態の特徴は、請求項の特定の組み合わせで表されるが、これらの特徴は、いかなる組み合わせ及び順序でも設定できることが考えられる。
【符号の説明】
【0055】
10 鋳型
11 ヒータ
12 バリア層
14a、14b シリコン種結晶
14’ 固液境界
16 シリコン原料
17 シリコン融液
18 シリコンインゴット
20 鋳型
22 多層構造体
222 バリア層
224 シリコン種結晶層
26 シリコン原料
30 鋳型
34a、34b シリコン種結晶
36 シリコン原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
方向性凝固法を用いてシリコン原料を溶融及び冷却するために形成された鋳型を供給し、
前記鋳型内部にバリア層を配置し、
前記鋳型内部の前記バリア層の上に1つ以上のシリコン種結晶を配置し、
前記シリコン種結晶の上に前記シリコン原料を入れ、
前記シリコン原料が完全に溶融し且つ前記シリコン種結晶が少なくとも部分的に溶融するまで前記鋳型を加熱することによってシリコン融液を得て、
前記鋳型を方向性凝固法で冷却することで前記シリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得ることを含むことを特徴とする結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項2】
前記バリア層が、1400℃より高い融点を有する材料から製造されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン種結晶が、1つ以上の多結晶シリコン種結晶及び1つ以上の単結晶シリコン種結晶からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコン種結晶が、1×10個/cm未満のエッチピット密度、2cmより大きな平均粒径、10ppma未満の不純物濃度、又はこれらの組み合わせを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バリア層での不純物の拡散性が、前記鋳型での不純物の拡散性よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バリア層が、シリコン、高純度グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化物、窒化物、酸化物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
方向性凝固法を用いてシリコン原料を溶融及び冷却するために形成された鋳型を供給し、
前記鋳型内部に多層構造体を配置し、前記多層構造体が、少なくとも1層のシリコン種結晶層と前記鋳型底部に配置されたバリア層とを含み、前記シリコン種結晶層が前記バリア層と接し、
前記鋳型内部の前記シリコン種結晶層の上に前記シリコン原料を入れ、
前記シリコン原料が完全に溶融し且つ前記シリコン種結晶層が少なくとも部分的に溶融するまで前記鋳型を加熱することによってシリコン融液を得て、
前記鋳型を方向性凝固法で冷却することで前記シリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得ること
を含むことを特徴とする結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項8】
前記バリア層が、1400℃より高い融点を有する材料から製造されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコン種結晶層が、少なくとも1つのシリコン結晶粒を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコン種結晶層が、1×10個/cm未満のエッチピット密度、2cmより大きな平均粒径、10ppma未満の不純物濃度、又はこれらの組み合わせを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記バリア層での不純物の拡散性が、前記鋳型での不純物の拡散性よりも低いことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記バリア層が、シリコン、高純度グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化物、窒化物、酸化物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される材料で形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
方向性凝固法を用いてシリコン原料を溶融及び冷却するために形成された鋳型を供給し、
前記鋳型の内部に1つ以上のシリコン種結晶を配置し、前記シリコン種結晶は、それぞれが少なくとも1つのシリコン結晶粒を含むとともに、1×10個/cm未満のエッチピット密度、2cmより大きな平均粒径、10ppma未満の不純物濃度、又はこれらの組み合わせを有し、
前記シリコン種結晶の上に前記シリコン原料を入れ、
前記シリコン原料が完全に溶融し且つ前記シリコン種結晶が少なくとも部分的に溶融するまで前記鋳型を加熱することによってシリコン融液を得て、
前記鋳型を方向性凝固法で冷却することで前記シリコン融液を凝固させてシリコンインゴットを得ることを含むことを特徴とする結晶シリコンインゴットの製造方法。
【請求項14】
前記鋳型の底部と前記シリコン種結晶との間にバリア層を配置することを更に含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バリア層が、1400℃より高い融点を有する材料から製造されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バリア層での不純物の拡散性が、前記鋳型での不純物の拡散性よりも低いことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記バリア層が、シリコン、高純度グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化物、窒化物、酸化物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される材料で形成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記バリア層が小片状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記バリア層の前記小片が、前記シリコン種結晶の接合部に対応して置かれることを特徴とする請求項18に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−1429(P2012−1429A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129950(P2011−129950)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(506080717)シノ−アメリカン シリコン プロダクツ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】