説明

結晶形態

【課題】cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)−シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの新規な結晶形態、ならびにこのような結晶形態の製造方法、それを含有する医薬組成物及びその使用方法の提供。
【解決手段】既知の結晶形態以外の4種の新規結晶形態であり、銅K−アルファ1X線(波長1.54056オングストローム)を用いて得られる粉末X線回折パターンの主要ピークによって各々定義される。各結晶形態は、(i)所望の酸又は塩基と反応させることによる:(ii)好適な前駆体から酸又は塩基に不安定な保護基を除去するか、好適な環状前駆体を酸又は塩基を用いて開環させる:(iii)この化合物の結晶形態の塩を適切な酸又は塩基を反応させて別の塩に変更させることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の新規な結晶形態、このような結晶形態の製造方法、該結晶形態を含む組成物並びに該結晶形態の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド(syn−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドとしても知られている)は、式(I):
【化1】

で示される構造を有し、そしてその製造は、WO 05/009994として公開された国際特許出願番号PCT/IB04/002367に開示されている。
【0003】
WO 05/009994に記載されているように、cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドは、PDE4阻害剤であり、そして種々の炎症性のアレルギー性及び呼吸器系疾患及び症状の治療に用いることができる。従って、それは、PDE4阻害剤が適応される全ての疾患、例えば成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、気腫、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎、鼻炎、炎症性腸疾患(IBD)、例えばクローン病、回腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎及び潰瘍性大腸炎など(これらに限定されるものではない)の治療に用いることができる。
【0004】
WO 05/009994の実施例63は、cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの製造を記載している。WO 05/009994の実施例63の内容を、実施例の部に記載する。この製造は該化合物の固体形態(以下、「形態A」と言う)を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬剤化合物の商業化に先立って、該化合物の一様かつ高純度グレードを確実に与えるその大量製造方法を開発する必要がある。さらに、該方法は、患者への便利な投与のために好適に製剤化することができ、且つその製剤中で長期間にわたり化学的及び物理的に安定である該化合物の形態を産出する必要がある。
【0006】
薬剤化合物の結晶形態は幾つかの局面で利点を有する。例えば、該化合物は結晶化及び再結晶化により容易に精製することができる。結晶化は、他の公知の精製方法、例えばクロマトグラフィーよりも、精製を大規模に行うのに一層安価かつ便利な方法である。さらに、結晶形態は、製剤化の前又はその間、並びにそれに続く貯蔵の間の両方で、他のどの形態(非晶質形態)よりも通常安定である。最後に、吸入により送出するために薬剤を製剤化する場合、結晶形態を粉砕又は微粉砕して呼吸用サイズ(直径5ミクロン未満の粒子と一般的に考えられる)にすることは、非晶質形態よりも一般的に容易である。従って、薬剤化合物が確認されたとき、その結晶形態をさらに確認するための多大な必要性がある。
【0007】
結晶形態を製造するための一般的に応用できる方法はない。実際に、与えられた化合物が如何なる結晶形態で存在するのかを最初から知ることは不可能である。化合物を結晶化できることが判明した場合でも、該結晶形態を単離できる方法を確認するまでには広範囲の実験が通常必要である。幾つかの独立した可変条件(例えば、溶剤濃度、溶剤組成、温度、冷却速度)の的確な組み合わせは、成功する保証もなく試行錯誤して実験的に確認する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
さて、cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの幾つかの結晶形態が存在し、そして以下の実施例の部で概説する方法を用いて製造できることを見出した。
【0009】
従って、本発明は、形態A以外のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの結晶形態を提供する。
【0010】
もう一つの態様によれば、本発明は、cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの無水、一水和及び溶媒和物結晶形態を提供する。
【0011】
もう一つの態様によれば、本発明は、以下の実施例の部でさらに特性決定したcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの形態B、C、D及びFを提供する。
【0012】
本発明の最後の態様によれば、以下の実施例の部でさらに特性決定した結晶形態Cが好ましい。
【0013】
本発明に係るcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの結晶形態(以下、「本発明の化合物」と言う)の製薬上許容される塩は、その酸付加塩及び塩基塩を包含する。
【0014】
好適な酸付加塩は、無毒性塩を生成する酸から形成される。その例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシレート、重炭酸塩/炭酸塩、重流酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシレート、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシレート、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩及びキシノフォエート塩を包含する。
【0015】
好適な塩基塩は、無毒性塩を生成する塩基から形成される。その例は、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩及び亜鉛塩を包含する。
【0016】
酸及び塩基のヘミ塩、例えばヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩を形成することもできる。
【0017】
好適な塩の概説については、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use by Stahl and Wermuth (Wiley-CHV, 2002) を参照されたい。
【0018】
本発明の化合物の製薬上許容される塩は、三つの方法の一つ又はそれ以上によって製造することができる:
(i) 本発明の化合物の結晶形態を所望の酸又は塩基と反応させることによる;
(ii) 本発明の化合物の結晶形態の好適な前駆体から酸又は塩基に不安定な保護基を除去するか、又は好適な環状前駆体、例えばラクトン又はラクタムを、所望の酸又は塩基を用いて開環させることによる;又は
(iii) 本発明の化合物の結晶形態の一つの塩を、適切な酸もしくは塩基と反応させるか又は好適なイオン交換カラムにより、別の塩に変換することによる。
【0019】
これら三つの方法は典型的には全て溶液中で行われる。生成した塩は沈殿することがあり、そして濾過により集めることができるか、又は溶剤の蒸発により回収することができる。生成した塩のイオン化度は、完全なイオン化から殆どイオン化されずまで変化することがある。
【0020】
本発明の化合物及びその塩は、単独で、又は1種もしくはそれ以上の他の本発明の化合物と組み合わせて、又は1種もしくはそれ以上の他の薬剤と組み合わせて(又はそれらの任意の組み合わせとして)投与することができる。一般的に、それらは、1種又はそれ以上の製薬上許容される賦形剤と一緒にした製剤として投与されるだろう。「賦形剤」と言う用語は、本明細書において、本発明の化合物以外の任意の成分を記述するために用いられる。賦形剤の選択は、大部分は、特定の投与方式、溶解性及び安定性に対する賦形剤の効果、並びに投与形態の性質のような要素に依存するだろう。
【0021】
本発明の化合物のデリバリーに適する医薬組成物及びそれらの製造方法は、当業者には容易に明らかであろう。このような組成物及びそれらの製造方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)に見出すことができる。
【0022】
本発明の化合物及びその塩は、経口投与することができる。経口投与は、結果として化合物が胃腸管に入る嚥下、及び/又は化合物が口から直接血流に入る口腔、舌側若しくは舌下投与を伴うものであってよい。
【0023】
経口投与に適する製剤は、固体、半固体及び液体系、例えば錠剤;多粒子若しくはナノ粒子、液体又は粉末を含有する軟質又は硬質カプセル;トローチ(液体が充填されたものを包含する);咀嚼用剤;ゲル;速分散性投与形態;フィルム;膣坐剤;スプレー;及び口腔/粘膜接着性パッチを包含する。
【0024】
液体製剤は、懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシルを包含する。このような製剤は、軟質又は硬質カプセル(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースでできている)の充填物として用いることができ、そして担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は好適な油、及び1種又はそれ以上の乳化剤及び/又は懸濁剤を含む。液体製剤は、固体を、例えば小袋から再構築することにより製造することもできる。
【0025】
本発明の化合物及びその塩は、速溶性、速崩壊性投与形態、例えばExpert Opinion in Therapeutic Patents, 11 (6), 981-986, by Liang and Chen (2001)に記載されたものに用いることもできる。
【0026】
錠剤投与形態については、投与形態に応じて、薬剤は投与形態の1重量%〜80重量%、より典型的には投与形態の5重量%〜60重量%を占めることができる。薬剤に加えて、錠剤は一般的に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例は、澱粉グリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉、前ゼラチン化澱粉及びアルギン酸ナトリウムを包含する。一般的に、崩壊剤は、投与形態の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を占めるだろう。
【0027】
結合剤は、錠剤製剤に凝集特性を与えるために用いられる。好適な結合剤は、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然及び合成ゴム、ポリビニルピロリドン、前ゼラチン化澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する。錠剤は、希釈剤、例えば乳糖(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、微結晶性セルロース、澱粉及び二塩基性リン酸カルシウム二水和物を含有することもできる。
【0028】
錠剤は、場合により界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80、並びに滑沢剤、例えば二酸化ケイ素及びタルクを含むこともできる。存在する場合には、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%を占めることができ、そして滑沢剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%を占めることができる。
【0029】
錠剤はまた、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物を一般的に含有する。潤滑剤は、一般的に錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%を占める。
【0030】
他の可能な成分は、抗酸化剤、着色剤、矯味矯臭剤、保存剤及び味マスキング剤を包含する。
【0031】
典型的な錠剤は、約80%までの薬剤、約10重量%〜約90重量%の結合剤、約0重量%〜約85重量%の希釈剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤、及び約0.25重量%〜約10重量%の潤滑剤を含有する。
【0032】
錠剤用ブレンドを直接又はローラーにより圧縮して錠剤を形成することができる。別法として、錠剤用ブレンド又はブレンドの一部を湿式、乾式若しくは溶融造粒するか、溶融凝結させるか又は押出した後に、製錠することができる。最終製剤は、1個又はそれ以上の層を含むことができ、そして被覆されていても被覆されていなくてもよく;さらにカプセル封入されていてもよい。
【0033】
錠剤の製剤は、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets. Vol. 1 by H. Lieberman and L. Lachmen (Marcel Dekker, New York, 1980)で論じられている。
【0034】
ヒト又は獣医学的使用のための消費可能な経口フィルムは、典型的には、急速に溶解又は粘膜接着できる柔軟な水溶性又は水膨潤性の薄いフィルムの投与形態にあり、そして式Iの化合物、フィルム形成性ポリマー、結合剤、溶剤、保湿剤、可塑剤、安定剤又は乳化剤、粘度改変剤及び溶剤を典型的に含む。製剤の幾つかの成分は、二つ以上の機能を果たすことができる。
【0035】
本発明の化合物及びその塩は、水溶性又は不溶性であることがある。水溶性化合物は、典型的には溶質の1重量%〜80重量%、より典型的には20重量%〜50重量%を占める。溶解性の低い化合物は、組成物のより大きな割合、典型的には溶質の88重量%までを占めることができる。あるいは、本発明の化合物及びその塩は、多粒子ビーズの形態にあってもよい。
【0036】
フィルム形成性ポリマーは、天然多糖、タンパク質、又は合成親水コロイドから選択することができ、そして典型的には0.01重量%〜99重量%の範囲、より典型的には30重量%〜80重量%の範囲で存在する。
【0037】
他の可能な成分は、抗酸化剤、着色剤、矯味矯臭剤及び香味向上剤、保存剤、唾液分泌刺激剤、清涼剤、共溶剤(油を包含する)、皮膚軟化剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤及び味マスキング剤を包含する。
【0038】
本発明に係るフィルムは、剥離可能な基材支持材又は紙上に塗布した薄い水性フィルムを蒸発乾燥することにより典型的に製造される。これは、乾燥炉若しくはトンネル中で、典型的には結合したコーター乾燥機中で、又は凍結乾燥若しくは真空化により行うことができる。
【0039】
経口投与のための固体製剤は、即時及び/又は改変放出するように製剤化することができる。改変放出製剤は、遅延、持続、間歇、制御、標的及び計画放出を包含する。
【0040】
本発明の目的に適する改変放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。他の好適な放出技術、例えば高エネルギー分散液並びに浸透性及び被覆粒子の詳細は、Pharmaceutical Technology On-line, 25(2), 1-14, by Verma et al (2001)に記載されている。制御放出を得るためのチューインガムの使用は、WO 00/35298に記載されている。
【0041】
本発明の化合物は、血流中、筋肉中又は内部器官中に直接投与することもできる。非経口投与に適する手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内及び皮下を包含する。非経口投与に適する装置は、針(極微針を包含する)注射器、針なし注射器及び注入技術を包含する。
【0042】
非経口製剤は、典型的には、賦形剤、例えば塩、炭水化物及び緩衝剤(好ましくはpH3〜9にするもの)を含有してもよい水溶液であるが、幾つかの用途には、それらは滅菌非水性溶液として、又は好適なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水と一緒に用いられる乾燥形態として、より好適に製剤化することができる。
【0043】
滅菌条件下での、例えば凍結乾燥による非経口製剤の製造は、当業者に周知の標準的製薬技術を用いて容易に行うことができる。
【0044】
非経口溶液の製造に用いられる本発明の化合物及びその塩の溶解性は、適切な製剤技術、例えば溶解性向上剤の混和の使用により増大することができる。
【0045】
非経口投与のための製剤は、即時及び/又は改変放出するように製剤化することができる。改変放出製剤は、遅延、持続、間歇、制御、標的及び計画放出を包含する。従って、本発明の化合物は、懸濁液として、又は活性化合物の改変放出を与えるインプラントデポー剤として投与するための固体、半固体若しくはチキソトロピー液体として製剤化することができる。このような製剤の例は、薬剤被覆ステント及び半固体、並びに薬剤被覆ポリ(dl−ラクチック−コグリコール)酸(PGLA)微粒子を含む懸濁液を包含する。
【0046】
本発明の化合物は、皮膚又は粘膜に局所的、皮膚(皮内)又は経皮的に投与することもできる。この目的のための典型的な製剤は、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚用パッチ、ウエハー、インプラント、スポンジ、繊維、絆創膏及びマイクロエマルジョンを包含する。リポソームを用いることもできる。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを包含する。浸透向上剤を混和することができる − 例えば、J Pharm Sci, 88 (10), 955-958, by Finnin and Morgan (October 1999)を参照されたい。
【0047】
局所投与の他の手段は、電気穿孔、イオン導入、音声導入、音波導入及び極微針によるか又は針を用いない(例えばPowderjectTM、BiojectTMなどによる)注射を包含する。
【0048】
局所投与のための製剤は、即時及び/又は改変放出するように製剤化することができる。改変放出製剤は、遅延、持続、間歇、制御、標的及び計画放出を包含する。
【0049】
本発明の化合物及びその塩は、鼻内に又は吸入により、典型的には乾燥粉末吸入器から乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、例えば乳糖との乾燥ブレンドで、又は混合成分粒子として、例えばホスファチジルコリンのようなリン脂質と混合して)、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは電気流体力学を用いて微細ミストを生成するアトマイザー)又はネプライザーからのエアゾールスプレーとして、好適な噴射剤、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを用いるか用いないで、又は点鼻剤として投与することもできる。鼻内使用のために、粉末は、生体接着剤、例えばキトサン又はシクロデキストリンを含むことができる。
【0050】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー又はネプライザーは、例えば、エタノール、水性エタノール、又は活性物質の分散、可溶化若しくは延長放出に適する代替物質、溶剤としての噴射剤、及び場合により界面活性剤、例えば三オレイン酸ソルビタン、オレイン酸又はオリゴ乳酸を含む本発明の化合物の溶液又は懸濁液を含有する。
【0051】
乾燥粉末又は懸濁液製剤に使用する前に、薬剤生成物は、吸入による送出に適するサイズ(典型的には5ミクロン未満)まで微粉化される。これは、任意の適切な粉砕方法、例えばスパイラルジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子を形成する超臨流体処理、高圧均質化、又は噴霧乾燥により行うことができる。
【0052】
吸入器又は吹送器に使用するためのカプセル(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースでできている)、ブリスター及びカートリッジは、本発明の化合物の粉末ミックス、好適な粉末基剤、例えば乳糖又は澱粉、及び性能改変剤、例えばl−ロイ
シン、マンニトール又はステアリン酸マグネシウムを含有するように製剤化することができる。乳糖は無水又は一水和物の形態、好ましくは後者であってよい。他の好適な賦形剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、蔗糖及びトレハロースを包含する。
【0053】
電気流体力学を用いて微細ミストを生成するアトマイザーに使用するのに適する溶液製剤は、1回の作動当たり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有してよく、そして作動量は1μl〜100μlで変化してよい。典型的な製剤は、式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール及び塩化ナトリウムを含むことができる。プロピレングリコールの代わりに使用できる代替溶剤は、グリセロール及びポリエチレングリコールを包含する。
【0054】
好適な香味料、例えばメントール及びレボメントール、又は甘味料、例えばサッカリン若しくはサッカリンナトリウムを、吸入/吹送投与を意図する本発明の製剤に添加することができる。
【0055】
吸入/吹送投与のための製剤は、即時放出及び/又は例えばPGLAを用いて改変放出するように製剤化することができる。改変放出製剤は、遅延、持続、間歇、制御、標的及び計画放出を包含する。
【0056】
乾燥粉末吸入器及びエアゾールの場合、用量単位は計測量を送出するバルブにより定まる。本発明に係る単位は、典型的には1μg〜4000μgの式Iの化合物を含有する計測した用量又は「一吹き(パフ)」を投与するように調節される。全体的な1日量は、典型的には1μg〜20mgであり、これは単回投与量で、又はより一般的には1日を通して分割投与量として投与することができる。
【0057】
本発明の化合物及びその塩は、直腸内又は膣内に、例えば、坐剤、ペッサリー又は浣腸剤の形態で投与することができる。カカオ脂は伝統的な坐剤基剤であるが、必要に応じて種々の代替物を用いることができる。
【0058】
直腸内/膣内投与のための製剤は、即時及び/又は改変放出するように製剤化することができる。改変放出製剤は、遅延、持続、間歇、制御、標的及び計画放出を包含する。
【0059】
本発明の化合物及びその塩は、眼又は耳に直接に、典型的には、等張性のpH調節した滅菌生理食塩水中の微粉砕懸濁液又は溶液の滴剤の形態で投与することもできる。眼及び耳への投与に適する他の製剤は、軟膏、ゲル、生物分解性(例えば吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生物分解性(例えばシリコーン)インプラント、ウエハー、レンズ、及び粒状又は小胞系、例えばニオソーム又はリポソームを包含する。ポリマー、例えば架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース若しくはメチルセルロース、又はヘテロ多糖ポリマー、例えばゲランゴムを、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウムと一緒に混和することができる。このような製剤は、イオン導入により送出することもできる。
【0060】
眼/耳への投与のための製剤は、即時及び/又は改変放出するように製剤化することができる。改変放出製剤は、遅延、持続、間歇、制御、標的及び計画放出を包含する。
【0061】
本発明の化合物又はその塩は、上記の投与方式の何れかに使用するために、それらの溶解性、溶解速度、味マスキング、生物分解性及び/又は安定性を向上するために、可溶性巨大分子成分、例えばシクロデキストリン及びその好適な誘導体又はポリエチレングリコール含有ポリマーと組み合わせることができる。
【0062】
例えば、薬剤−シクロデキストリン複合体は、大部分の投与形態及び投与経路に一般的に有用であることが認められる。包接及び非包接複合体の両者を用いることができる。薬剤との複合体に導く代替物として、シクロデキストリンを補助添加物として、すなわち担体、希釈剤又は可溶化剤として用いることができる。これらの目的に最も普通に用いられるものは、アルファ−、ベータ−及びガンマシクロデキストリンであり、それらの例は、国際特許出願番号WO 91/11172、WO 94/02518及びWO 98/55148に見出すことができる。
【0063】
活性化合物の組み合わせの投与が、例えば特定の疾患又は症状を治療する目的で望ましいことがある限り、2種又はそれ以上の医薬組成物(それらの少なくとも一つは本発明に係る化合物を含有する)を、該組成物の併用投与に適するキットの形態で組み合わせうることは、本発明の範囲内にある。
【0064】
従って、本発明のキットは、2種又はそれ以上の別個の医薬組成物(それらの少なくとも一つは本発明に係る式Iの化合物を含有する)、及び該組成物を別個に保持する手段、例えば容器、分割ビン又は分割フォイルパケットを含む。このようなキットの例は、錠剤、カプセルなどの包装に用いられる普通のブリスター包装である。
【0065】
本発明のキットは、異なる投与形態、例えば経口及び非経口形態を投与するために、別個の組成物を異なる投与間隔で投与するために、又は別個の組成物を互いに力価測定するために特に適している。コンプライアンスを補助するために、キットは投与に関する指示を典型的に含み、そしていわゆる記憶補助を備えることができる。
【0066】
ヒト患者に投与するために、本発明の化合物の全1日量は、当然のことながら投与方式に応じて、典型的には0.001mg/kg〜100mg/kgの範囲にある。全1日量は、単回又は分割投与量で投与することができ、そして医師の判断により、本明細書に記載した典型的な範囲外であってもよい。
【0067】
これらの投与量は、約60kg〜70kgの体重を有する平均的なヒト被験者に基づく。医師は、体重がこの範囲外の被験者、例えば幼児及び高齢者のための投与量を容易に決定できるだろう。
【0068】
誤解を避けるために、本明細書における「治療」への言及は、治癒的、緩和的及び予防的治療への言及を包含する。
【0069】
本発明により提供されるcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの結晶形態及びその塩は、場合により他の薬理学的活性化合物と組み合わせて製剤化することができる。閉塞性気道及び他の炎症性疾患の治療に使用するために好ましい組み合わせは、下記のものとの組み合わせを包含する:
(a) 5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤又は5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)拮抗剤、
(b) ロイコトリエン拮抗剤(LTRA)、これらはLTB4、LTC4、LTD4及びLTE4の拮抗剤を包含する、
(c) ヒスタミン受容体拮抗剤、これらはH1、H3及びH4拮抗剤を包含する、
(d) 充血除去使用のためのα1−及びα2−アドレナリン受容体作動性血管収縮性交感神経様作用剤、
(e) ムスカリンM3受容体拮抗剤又は抗コリン剤、
(f) β2−アドレナリン受容体作動剤、
(g) PDE阻害剤、例えばPDE3及びPDE5阻害剤、
(h) テオフィリン、
(i) クロモグリク酸ナトリウム、
(j) 非選択的及び選択的の両方のCOX阻害剤、例えばCOX−1又はCOX−2阻害剤(NSAID)、
(k) 経口及び吸入用グルココルチコステロイド、例えばDAGR(コルチコイド受容体の解離作動剤)、
(l) 内因性炎症性要素に対して活性な単クローン性抗体、
(m) 抗腫瘍壊死因子(抗TNF−α)剤、
(n) 接着分子阻害剤、これらはVLA−4拮抗剤を包含する、
(o) キニン−B1−及びB2−受容体拮抗剤、
(p) 免疫抑制剤、
(q) マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、例えばMMP12又はMMP13阻害剤、
(r) タキキニンNK1、NK2及びNK3受容体拮抗剤、
(s) エラスターゼ阻害剤、
(t) アデノシンA2a受容体作動剤、
(u) ウロキナーゼの阻害剤、
(v) ドーパミン受容体に作用する化合物、例えばD2作動剤、
(w) NFκβ経路のモジュレーター、例えばIKK阻害剤、
(x) サイトカイン信号経路のモジュレーター、例えばp38 MAPキナーゼ、sykキナーゼ又はJAKキナーゼ阻害剤、
(y) 粘液溶解剤又は鎮咳剤として分類できる物質、並びに
(z) 抗生物質、
(aa) HDAC阻害剤、及び
(bb) PI3キナーゼ阻害剤。
【0070】
本明細書における「治療」への全ての言及は、治癒的、緩和的及び予防的治療への言及を包含する。従って、本発明のもう一つの態様は、PDE4アイソザイムが関連する疾患、障害及び症状の治療における、本発明の化合物及びその塩の使用に関する。より具体的には、本発明はまた、下記の群から選択される疾患、障害及び症状の治療における、本発明の化合物及びその塩の使用に関する:
・ あらゆる型、病因又は病理発生の喘息、特にアトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE−媒介喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理学的障害に起因する内因性喘息、環境因子に起因する外因性喘息、原因が未知又は不顕性の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支炎喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、アレルゲン誘発性喘息、冷気誘発性喘息、職業喘息、細菌、真菌、原虫又はウイルス感染に起因する喘息、非アレルギー性喘息、初期喘息及び喘鳴乳児喘息からなる群から選択される一員である喘息、
・ 慢性又は急性気管支収縮、慢性気管支炎、末梢気道閉塞、及び気腫、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の閉塞性又は炎症性気道疾患、特に慢性好酸球肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎を含むCOPD、肺気腫又はそれに関連する呼吸困難、不可逆的進行性気道閉塞を特徴とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)及び他の薬剤治療の結果として生じる気道過敏症の悪化からなる群から選択される一員である閉塞性又は炎症性気道疾患、
【0071】
・ あらゆる型、病因又は病理発生の塵肺症、特にアルミニウム肺症又はボーキサイト労働者の疾患、炭粉沈着症又は炭坑労働者の喘息、アスベスト又は蒸気管工事人の喘息、石肺症又はフリント病、ダチョウの羽毛からの塵埃の吸入に起因するダチョウ塵肺症、鉄粒子の吸入に起因する鉄沈着症、珪肺症又は研磨労働者の疾患、綿肺症又は綿塵埃喘息及びタルク塵肺症からなる群から選択される一員である塵肺症、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の気管支炎、特に急性気管支炎、急性喉頭気管気管支炎、アラキン酸気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、乾性気管支炎、感染性喘息性気管支炎、増殖性気管支炎、ブドウ球菌性又は連鎖球菌性気管支炎及び小胞性気管支炎からなる群から選択される一員である気管支炎、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の気管支拡張症、特に円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、毛管状気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、乾性気管支拡張症及び濾胞状気管支拡張症からなる群から選択される一員である気管支拡張症、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の季節性アレルギー性鼻炎又は通年性アレルギー性鼻炎若しくは副鼻腔炎、特に化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、及び篩骨、前頭骨、上顎骨若しくは蝶形骨副鼻腔炎からなる群から選択される一員である副鼻腔炎、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の関節リウマチ、特に急性関節炎、急性通風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎及び脊椎関節炎からなる群から選択される一員である関節リウマチ、
【0072】
・ 通風、並びに炎症に関連する発熱及び疼痛、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の好酸球関連障害、特に好酸球増多症、肺浸性潤好酸球増多症、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増多症、気管支肺炎性アスペルギルス症、アスペルギルス腫、好酸球を含有する肉芽腫、アレルギー性肉芽腫性血管炎又はチャーグ−ストラウス症候群、結節性多発性動脈炎(PAN)及び全身性壊死性血管炎からなる群から選択される一員である好酸球関連障害、
・ アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、又はアレルギー性若しくはアトピー性湿疹、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の蕁麻疹、特に免疫媒介蕁麻疹、補体媒介蕁麻疹、蕁麻疹発生物質誘発蕁麻疹、物理的因子誘発蕁麻疹、ストレス誘発蕁麻疹、特発性蕁麻疹、急性蕁麻疹、慢性蕁麻疹、血管浮腫、コリン作動性蕁麻疹、常染色体優勢型又は獲得型の寒冷蕁麻疹、接触性蕁麻疹、巨大蕁麻疹及び丘疹状蕁麻疹からなる群から選択される一員である蕁麻疹、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の結膜炎、特に照射性結膜炎、急性カタル性結膜炎、急性流行性結膜炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、慢性カタル性結膜炎、化膿性結膜炎及び春季結膜炎からなる群から選択される一員である結膜炎、
・ あらゆる型、病因又は病理発生のブドウ膜炎、特にブドウ膜の全体又は一部の炎症、前ブドウ膜炎、虹彩炎、毛様体炎、虹彩毛様体炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後ブドウ膜炎、脈絡膜炎;及び脈絡網膜炎からなる群から選択される一員であるブドウ膜炎、
【0073】
・ 乾癬、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の多発性硬化症、特に原発性進行性多発性硬化症及び再発寛解型多発性硬化症からなる群から選択される一員である多発性硬化症、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の自己免疫性/炎症性疾患、特に自己免疫性血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球貧血、特発性血小板減少性紫斑症、全身性紅斑性狼瘡、多発性軟骨炎、強皮症、ウェグナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーブンス−ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、内分泌性眼病、グレーブス病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病又はI型糖尿病、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、びまん性間質性肺線維症又は間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、ネフローゼ症候群があるか又はない糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、特発性ネフローゼ症候群、微小変化型腎症、炎症性/過剰増殖性皮膚疾患、良性家族性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、落葉状天疱瘡、及び尋常性天疱瘡からなる群から選択される一員である自己免疫性/炎症性疾患、
【0074】
・ 臓器移植後の同種異系移植片拒絶反応の予防、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の炎症性腸疾患(IBD)、特にコラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎、潰瘍性大腸炎及びクローン病(CD)からなる群から選択される一員である炎症性腸疾患、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の敗血性ショック、特に腎不全、急性腎不全、悪液質、マラリア悪液質、下垂体性悪液質、尿毒性悪液質、心臓悪液質、副腎悪液質又はアジソン病、癌性悪液質、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の結果としての悪液質からなる群から選択される一員である敗血性ショック、
・ 肝障害、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の肺高血圧、これらは原発性肺高血圧/本態性高血圧、鬱血性心不全に続発する肺高血圧、慢性閉塞性肺疾患に続発する肺高血圧、肺静脈高血圧、肺動脈高血圧及び低酸素誘発肺高血圧を包含する、
・ 骨損失疾患、原発性骨粗鬆症及び続発性骨粗鬆症、
・ あらゆる型、病因又は病理発生の中枢神経系障害、特にうつ病、アルツハイマー病症、パーキンソン病、学習及び記憶障害、遅発性ジスキネジー、薬物依存症、動脈硬化性認知症、並びにハンチントン舞踏病、ウィルソン病、振戦麻痺及び視床萎縮を伴う認知症からなる群から選択される一員である中枢神経系障害、
【0075】
・ 感染、特にウイルス感染、このようなウイルスはその宿主におけるTNF−αの産生を増加させるか、又はこのようなウイルスはその宿主におけるTNF−αの上方調節に感受性であるためにその複製又は他の生体活性が有害に影響され、これらはHIV−1、HIV−2及びHIV−3、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザ、アデノウイルス、並びに帯状ヘルペス及び単純ヘルペスを包含するヘルペスからなる群から選択される一員であるウイルスを包含する、
・ イースト菌及び真菌感染、該イースト菌及び真菌はその宿主におけるTNF−αによる上方調節に感受性であるか又はTNF−αの産生を誘発し、例えば真菌性髄膜炎、特に、全身性イースト菌及び真菌感染を治療するための他の選択薬剤と一緒に投与する場合、該薬剤は、ポリミキシン、例えばポリマイシンB、イミダゾール、例えばクロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール及びケトコナゾール、トリアゾール、例えばフルコナゾール及びイトラナゾール、並びにアンフォテリシン、例えばアンフォテリシンB及びリポソームアンフォテリシンBを包含するが、これらに限定されるものではない、
・ 虚血−再環流障害、虚血性心疾患、自己免疫性糖尿病、レチナール性自己免疫、慢性リンパ性白血病、HIV感染、紅斑性狼瘡、腎臓及び尿路疾患、泌尿生殖器及び胃腸傷害及び前立腺疾患、
・ ヒト又は動物の身体における瘢痕形成、例えば急性創傷の治癒の際の瘢痕形成の減少、並びに
・ 乾癬、他の皮膚科学的及び美容的使用、これらは消炎、皮膚軟化、皮膚弾力及び水分増加活性を包含する。
【0076】
一つの態様によれば、本発明は特に、呼吸器疾患、例えば成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、気腫、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎及び鼻炎の治療に関する。
【0077】
別の態様によれば、本発明は特に、胃腸(GI)障害、特に炎症性腸疾患(IBD)、例えばクローン病、回腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎及び潰瘍性大腸炎の治療に関する。
【0078】
もう一つの態様によれば、本発明はまた、PDE4阻害活性を有する薬剤を製造するための本発明に係る化合物の使用に関する。特に、本発明は、炎症性、呼吸器系、アレルギー性及び瘢痕形成性の疾患、障害及び症状を治療するため、より的確には、上記に列記した疾患、障害及び症状を治療するための薬剤の製造のための本発明に係る化合物の使用に関する。
【0079】
結果として、本発明は、ヒトを包含する哺乳類をPDE4阻害剤で治療する特に興味深い方法を提供し、この方法は該哺乳類を本発明に係る化合物及びその塩の有効量で治療することを包含する。より的確には、本発明は、炎症性、呼吸器系、アレルギー性及び瘢痕形成性の疾患、障害及び症状を治療する、ヒトを包含する哺乳類を治療する特に興味深い方法を提供し、この方法は該哺乳類を本発明に係る化合物の有効量で治療することを包含する。
【0080】
本発明のさらなる態様は、請求項に記載されている。
【実施例】
【0081】
下記の実施例により、本発明を説明する。
プロトコール
以下の全ての実施例のために、下記の実験条件を用いた:
【0082】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定は、穴及び蓋を有するアルミニウムパン中でPerkin Elmer Diamond DSCを用いて行った。約3mgのサンプルを、サンプルに応じて10℃〜250℃又は10℃〜300℃又は20℃〜300℃の範囲にわたり毎分20℃で、窒素ガスパージしながら加熱した。
【0083】
粉末X線回折(PXRD)
PXRDパターンは、自動サンプル装填装置、シータ−シータゴニオメーター、自動ビーム広がりスリット、二次単色計及びシンチレーション計数管を装着したBruker-AXS Ltd. D4 X線回折計を用いて得た。分析のためのサンプルは、シリコンウエハー標本取り付け具に切り込んだ直径12mm、深さ0.25mmのキャビティに粉末を詰めることにより作製した。標本は、40kV/40mAで操作されるX線管により銅K−アルファ1X線(波長=1.5406オングストローム)で照射しながら回転させた。分析は、ステップ角0.02 o当たり5秒間の計数に設定した連続方式で運転するゴニオメーターにより、2o〜55 oの2シータ範囲にわたって行った。
【0084】
形態Cについて得られたピークを、単結晶構造から計算したパターンからのピークに対して整列させた。形態Fについては、得られたピークをシリコン参照標準に対して整列させた。形態Cについては、2シータ角、距離d及び相対強度を、単結晶構造からAccelrys Materials StudioTMの“Reflex Powder Diffraction”モジュール[version 2.2]を用いて計算した。該当するシミュレーションパラメーターは、何れの場合にも下記のとおりであった:
波長=1.540562Å(Cu Kα)
偏光因子=0.5
擬フォークトプロフィール(U=0.01、V=−0.001、W=0.002)
【0085】
当業者により理解されるように、以下に挙げる表中の種々のピークの相対強度は、多数の要因、例えばX線ビーム中での結晶の配向効果又は分析される材料の純度又はサンプルの結晶化度などにより変動することがある。ピークの位置は、サンプルの高さの変動により移動することもあるが、実質的に、所定の表中で定義したとおりのままであろう。
【0086】
熟練した結晶学者は、異なる波長を用いた測定値がブラッグの式−nλ=2d sinθに従って異なる移動をもたらすことも理解するだろう。
【0087】
代替波長の使用により生じたこのような他のPXRDパターンは、本発明の結晶性物質のPXRDパターンの代替表現であると考えられ、そしてそれ自体として本発明の範囲内にある。
【0088】
実施例の部
実施例1:形態C(結晶性一水和物形態)の製造
酢酸イソプロピル2.45kg(8.5ml/g)を反応容器に装入した。次いで攪拌しながら次のものを加えた:4−メチルサリチル酸(113g、0.743M)、製造例18のアミン(製造例18のアミンの獲得については以下参照、290g、0.746M)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(90.3g、0.599M)及びトリエチルアミン(151g、1.492M)。反応物を2時間還流加熱し、次いで40℃に冷却し、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(WSCDI)(177g、0.923M)を加えた。添加した時点で
、反応物を再び還流加熱し、24時間反応させておいた。24時間後の高速液体クロマトグラフィーによる工程内チェックは、反応の完了を検出し、5%の4−メチルサリチル酸が残留した。反応物を25℃に冷却し、水2.26L(7.8ml/g)を加えた。次いで生成物は反応物から沈殿した。この混合物を室温で18時間攪拌したままにし、次いで0℃に冷却し、1時間粒状化させた。固体を濾過して回収し、酢酸イソプロピル0.23L(0.8ml/g)、次いで水1.13L(4ml/g)で洗浄した。湿ったケーキを55℃で18時間真空オーブン中で乾燥した。次いで、粗製cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド229gを得た(回収率:82.14%)。
1HNMR(CDCl3,400MHz)δ:1.60-2.10(m,10H),2.30-2.50(m,5H),2.70-2.94(m,4H),4.06-4.34(m,2H),5.46(m,1H),6.28(m,1H),6.68(1H,d),6.80(s,1H),7.32(d,1H),8.00-8.18(m,2H),8.28(m,1H),12.20(brs,1H)
【0089】
上記の方法により製造した結晶形態は、下記の特性を有する:
PXRD
形態CのPXRDパターンを図1に示す。主な特性ピークは、17.7、18.3、20.5、21.7及び24.3度(2シータ±0.1度2シータ)にあり、さらに表1に示す。
計算PXRDパターンを図2に示す。形態Cの計算パターンからの主な特性ピークを表2に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
DSC
形態Cのサンプル3.050gのDSC分析を上記のように行った。形態CのDSCサーモグラムを図3に示す。形態Cは110℃±5℃に吸熱ピークを示す。これは形態Cの脱水のためである。
【0093】
実施例2:形態B(第二の結晶性無水物形態)の製造
次の試薬を反応容器に装入した:N−メチルピロリジン(40ml、10ml/g)、4−メチルサリチル酸(1.30g、0.009M)、製造例18のアミン(4.0g、0.010M)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(1.4g、0.010M)及びヒューニッヒ塩基(5.3g、0.041M)。反応混合物を40℃に2時間加温した。次いで1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル
カルボジイミド塩酸塩(WSCDI)(2.0g、0.010M)を加え、反応混合物を40℃で1時間及び25℃で2日間攪拌した。N−メチルピロリジンを真空除去し、生成した残留物に酢酸エチル(200ml、50ml/g)を加えた。この酢酸エチル溶液を2N塩酸(200ml、50ml/g)で洗浄した。生成した有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空蒸発させて乾固した。生成した生成物をメタノールと共に磨砕して白色固体を得た。この固体を酢酸イソプロピル(105ml、26.25ml/g)及びエタノール(7ml、1.75mg/g)に加温しながら溶解した。生成した溶液を0℃に冷却し、種結晶を加えた。生成物が沈殿し、これを濾過して乾燥した。次いで生成した固体をエタノールから2回再結晶した。次いで、この方法からcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド0.574gを得た(回収率:11.48%)。
【0094】
上記の方法から製造した結晶形態(いわゆる形態B)は、下記の特性を有する:
DSC
形態B3.187gのサンプルを上記のようにDSCにより分析した。形態BのDSCサーモグラムを図4に示す。形態Bは184℃±2℃に鋭い吸熱ピークを示し、198℃±6℃の吸熱ピークは小さい。184℃±2℃のピークは形態Bの溶融のためである一方で、198℃±6℃のピークは形態Aの溶融のためである。
【0095】
PXRD
形態BのPXRDパターンを図5に示す。主な特性ピークは、10.0、14.9、15.1、19.5及び25.4度(2シータ±0.1度2シータ)にあり、さらに下記表3に示す。
【表3】

【0096】
実施例3:形態D(第三の無水物結晶形態)の製造
実施例1により得られた形態C1.0g(0.002M)を反応フラスコに装入した。MeCN 20ml/gを加え、この混合物を還流加熱した(82℃)。還流で溶液が生成した。この溶液を放置して室温に冷却すると、再び固体が沈殿した。反応スラリーを氷浴中で0〜5℃に1時間冷却し、次いで濾過し、MeCN 2ml/gで洗浄した。次いで、cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド0.62gを純度99.5%で得た(回収率:62%)。
1HNMR(CDCl3,400MHz)δ:1.60-2.10(m,10H),2.30-2.50(m,5H),2.70-2.94(m,4H),4.06-4.34(m,2H),5.46(m,1H),6.28(m,1H),6.68(1H,d),6.80(s,1H),7.32(d,1H),8.00-8.18(m,2H),8.28(m,1H),12.20(brs,1H)
【0097】
上記の方法から製造した結晶形態(いわゆる形態D)は、下記の特性を有する:
DSC
形態D3.147gのサンプルを上記のようにDSCにより分析した。形態DのDSCサーモグラムを図6に示す。形態Dは159℃±2℃に鋭い吸熱ピーク、次いで175℃±2℃に発熱再結晶事象及び199℃±6℃に第二の吸熱ピークを示す。159℃±2℃のピークは形態Dの溶融のためである一方で、199℃±6℃のピークは形態Aの溶融のためである。
【0098】
PXRD
形態DのPXRDパターンを図7に示す。主な特性ピークは、19.4、19.6、20.4、23.3及び25.1度(2シータ±0.1度2シータ)にあり、さらに下記表4に示す。
【表4】

【0099】
実施例4:形態F(溶媒和物結晶形態)の製造
実施例1により得られた形態C1.5gのジメチルホルムアミド(DMF)1.5ml中の懸濁液を徐々に60℃に加温した。全ての物質が完全に溶解するまで、DMFをさらに徐々に加えた(約3.4ml〜4mlを必要とした)。この透明溶液を60℃で30分間攪拌し、次いで10℃/分の速度で20℃に徐々に冷却した。攪拌をこの温度でさらに16時間続けた。生成した濃厚な懸濁液を遠心分離した(3500rpmで15分間)。上澄み液をデカントし、固体を重量損失が無視しうるほどになるまで室温で減圧乾燥した。
【0100】
上記の方法から製造した溶媒和物結晶形態(いわゆる形態F)は、下記の特性を有する:
DSC
形態F3.024gのサンプルを上記のようにDSCにより分析した。形態FのDSCサーモグラムを図8に示す。形態Fは99℃±5℃に鋭い吸熱ピーク、次いで193℃±6℃に第二の吸熱ピークを示す。99℃±5℃のピークはジメチルホルムアミド(DMF)の脱溶媒和のためである一方で、193℃±6℃のピークは形態Aの溶融のためである。
【0101】
PXRD
形態FのPXRDパターンを図9に示す。主な特性ピークは、18.0、18.4、20.5、22.5及び23.9度(2シータ±0.1度2シータ)にあり、さらに下記表5に示す。
【表5】

【0102】
製造例の部
WO 05/009994によるcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドの製造(実施例63−形態A)
N−メチルモルホリン(11.16ml、101.7mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(7.49g、55.5mmol)及び1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(10.63g、55.5mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(180ml)中の、製造例18からのアミン(18g、46.2mmol)の懸濁液に少量ずつ加えた。N,N−ジメチルホルムアミド(40ml)中の4−メチルサリチル酸(8.43g、55.5mmol)の溶液を90分間かけて滴下し、滴下が終了した時点で、反応物を室温で72時間攪拌した。この混合物を減圧濃縮し、残留物をテトラヒドロフラン及び1N水酸化ナトリウム溶液の混合物中に懸濁させ、この混合物を室温で1時間攪拌した。テトラヒドロフランを真空除去し、残留水溶液を水(750ml)で希釈し、ジクロロメタン(合計2L)で抽出した。一緒にした有機溶液を2N塩酸(150ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧蒸発させた。残留物をメタノール(250ml)中に懸濁させ、この懸濁液を室温で18時間攪拌した。生成した固体を濾別し、メタノールで洗浄し、真空乾燥して、表題の化合物を得た、20.1g。
1HNMR(CDCl3,400MHz)δ:1.71(m,2H),1.81(m,2H),1.88-2.06(m,6H),2.33(s,3H),2.40(m,2H),2.77(m,2H),2.84(m,2H),4.15(m,1H),4.26(m,1H),5.47(m,1H),6.28(m,1H),6.67(m,1H),6.80(s,1H),7.31(d,1H),8.07(d,1H),8.10(d,1H),8.29(dd,1H),12.30(brs,1H)
【0103】
上記のパラグラフに記載した方法(WO 05/009994の実施例63)を用いて製造したsyn−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチル−ベンゾイルアミノ)−シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミドのサンプルを、上記のプロトコール従ってPXRD及びDSCにより試験したところ、これは上記の固体形態(形態B、C、D及びF)とは異なる結晶性無水物形態(いわゆる「形態A」)であることが判明した。
【0104】
すなわち、形態Aは、銅K−アルファ1X線(波長=1.54056オングストローム)を用いて得られた粉末X線回折パターンが、13.4、18.1、19.7、20.5及び22.6度(2θ±0.1度
2θ)に主要ピークを示すこと、そしてDSCを用いた熱分析中に生じる195℃±6℃の吸熱ピークを特徴とする。
【0105】
製造例2:trans−N−tert−ブチル(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−カルバメート
trans−4−アミノヘキサノール(100g、0.87mol)を攪拌しながらアセトニトリル(1L)に加え、次いでジ−tert−ブチルジカーボネート(208g、0.96mol)を少量ずつ1時間かけて加えた。反応物を室温で18時間攪拌し、生成した沈殿を濾別し、酢酸エチル:ヘキサン(1:3、250ml)、次いでヘキサン(250ml)で洗浄し、乾燥して、表題の化合物を白色固体として得た、166.9g。
【0106】
製造例3:trans−メタンスルホン酸4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−シクロヘキシルエステル
ジクロロメタン(400ml)中の塩化メシル(122.4g、1.07mol)の溶液を、ジクロロメタン(1L)中の、製造例2からのアルコール(200g、0.93mol)及びトリエチルアミン(112.8g、1.115mol)の氷冷溶液に45分間かけて滴下した。反応物を15分間攪拌し、次いで1時間かけて室温に温まらせた。この混合物を水(3×1.5L)で洗浄し、次いでシリカ(100ml、Merck 60H)と共に攪拌した。この混合物を濾過し、濾液を約1/4量まで減圧濃縮した。ヘキサン(500ml)を加え、この混合物を0℃に冷却し、生成した固体を濾別し、乾燥し、酢酸エチルから再結晶して、表題の化合物を得た、221.1g。
【0107】
製造例4:syn−(4−アジド−シクロヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
ナトリウムアジド(25.5g、0.39mol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(500ml)中の、製造例3からのメシレート(100g、0.34mol)の溶液に加え、反応物を徐々に80℃に加温し、この温度でさらに24時間攪拌した。冷却した反応物に氷/水(1L)を徐々に加え、生成した沈殿を濾別し、水洗して乾燥した。この固体を酢酸エチル(200ml)に溶解し、この溶液を水洗し、乾燥し(MgSO4)、減圧蒸発させた。残留した固体をヘキサンから再結晶して、表題の化合物を白色固体として得た、50.8g。
【0108】
製造例5:syn−tert−ブチル4−アミノシクロヘキシルカルバメート
炭素上の5%パラジウム(5g)をトルエン(10ml)と混合し、メタノール(400ml)中の、製造例4からのアジド(170g、0.71mol)に加えた。この混合物を室温で18時間水素化し(80気圧)、次いで濾過した。溶剤を真空蒸発させ、残留物を酢酸エチル(50ml)、次いでヘキサン(200ml)と共に磨砕した。得られた固体を濾過により単離し、酢酸エチル(600ml)に溶解し、Celite(登録商標)に通して濾過した。濾液を真空濃縮してスラッシュを与え、これをヘキサン(300ml)で希釈した。得られた固体を濾過により単離し、酢酸エチル:ヘキサン(20:80)で洗浄した。母液を一緒にし、真空蒸発させ、残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより、溶離剤として酢酸エチル、次いでメタノールを用いて精製した。得られた物質を酢酸エチル及びヘキサンから結晶化させ、最初の収穫と併せて、表題の化合物を白色固体として得た(76g)。
【0109】
製造例10:syn−{4−[(2−クロロ−ピリジン−3−カルボニル)−アミノ]−シクロヘキシル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
塩化オキサリル(8ml、90mmol)を、ジクロロメタン(200ml)中の2−クロロニコチン酸(10g、57mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(5滴)の氷冷懸濁液に10分間かけ
て加えた。次いでこの懸濁液を室温で3時間攪拌し、減圧濃縮した。残留物をジクロロメタンと共沸させて、中間体酸クロリドを白色固体として得た。これをジクロロメタン(200ml)に溶解し、この溶液を水浴中で冷却し、次いでN−ジイソプロピルエチルアミン(20ml、115mmol)及び製造例5からのアミン(13.4g、62mmol)を加えた。反応混合物を18時間攪拌し、ジクロロメタン(100ml)で希釈し、順に10%クエン酸溶液、飽和重炭酸ナトリウム溶液(×2)、水、次いでブラインで洗浄した。有機溶液を乾燥し(MgSO4)、減圧蒸発させて、表題の化合物を収率97%で得た。
【0110】
製造例14:syn−(4−{[2−(テトラヒドロチオピラン−4−イルオキシ)−ピリジン−3−カルボニル]−アミノ}−シクロヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
アセトニトリル(5ml)中の、製造例10からのクロリド(1g、2.57mmol)、テトラヒドロチオピラン−4−オール(WO 94/14793, pg 77)(500mg、4.23mmol)及び炭酸セシウム(1.4g、4.23mmol)の混合物を20時間還流攪拌した。この冷却した溶液を水(75ml)及び酢酸エチル(75ml)の間に分配し、層を分離した。有機相を水、1N HCl、飽和重炭酸ナトリウム溶液及びブラインで洗浄し、次いで乾燥し(MgSO4)、減圧蒸発させた。生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル:ペンタンの溶離勾配(5:95〜70:30)を用いて精製して、表題の化合物を収率84%で得た。
【0111】
製造例18:syn−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−(テトラヒドロチオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド塩酸塩
ジオキサン(50ml)中の4N塩酸を、ジクロロメタン(10ml)中の、製造例14からの保護アミン(4.1g、9.0mmol)の溶液に加え、反応物を室温で3時間攪拌した。この混合物を減圧蒸発させ、残留物を及びエーテル中に懸濁させ、この懸濁液を音波処理した。この混合物を濾過し、固体を50℃で真空乾燥して、表題の化合物を収率96%で得た。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】形態CのPXRDパターンを示す。
【図2】形態Cの計算PXRDパターンを示す。
【図3】形態CのDSCサーモグラムを示す。
【図4】形態BのDSCサーモグラムを示す。
【図5】形態BのPXRDパターンを示す。
【図6】形態DのDSCサーモグラムを示す。
【図7】形態DのPXRDパターンを示す。
【図8】形態FのDSCサーモグラムを示す。
【図9】形態FのPXRDパターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅K−アルファ1X線(波長=1.54056オングストローム)を用いて得られた粉末X線回折パターンが、13.4、18.1、19.7、20.5及び22.6度2θ±0.1度2θに主要ピークを示すことを特徴とする形態A以外の、cis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態。
【請求項2】
無水物であることを特徴とする、請求項1に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態。
【請求項3】
形態B及び形態Dから選択される、請求項2に記載の無水物結晶形態。
【請求項4】
銅K−アルファ1X線(波長=1.54056オングストローム)を用いて得られた粉末X線回折パターンが、10.0、14.9、15.1、19.5及び25.4度(2θ±0.1度2θ)に主要ピークを示すことを特徴とする、請求項3に記載の無水物結晶形態B。
【請求項5】
銅K−アルファ1X線(波長=1.54056オングストローム)を用いて得られた粉末X線回折パターンが、19.4、19.6、20.4、23.3及び25.1度(2θ±0.1度2θ)に主要ピークを示すことを特徴とする、請求項3に記載の無水物結晶形態D。
【請求項6】
一水和物である、請求項1に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態。
【請求項7】
形態Cである、請求項6に記載の一水和物結晶形態。
【請求項8】
銅K−アルファ1X線(波長=1.54056オングストローム)を用いて得られた粉末X線回折パターンが、17.7、18.3、20.5、21.7及び24.3度(2θ±0.1度2θ)に主要ピークを示すことを特徴とする、請求項7に記載の一水和物結晶形態C。
【請求項9】
溶媒和物である、請求項1に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態。
【請求項10】
形態Fである、請求項9に記載の溶媒和物結晶形態。
【請求項11】
銅K−アルファ1X線(波長=1.54056オングストローム)を用いて得られた粉末X線回折パターンが、18.0、18.4、20.5、22.5及び23.9度(2θ±0.1度2θ)に主要ピークを示すことを特徴とする、請求項10に記載の溶媒和物結晶形態F。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態を、製薬上許容される賦形剤、希釈剤又は担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1〜11の何れか1項に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態。
【請求項14】
PDE4阻害活性を有する医薬を製造するための、請求項1〜11の何れか1項に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態の使用。
【請求項15】
炎症性又は呼吸器系疾患の治療用の医薬を製造するための、請求項1〜11の何れか1項に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態の使用。
【請求項16】
疾患が、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、気腫、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎、鼻炎、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病)、回腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
ヒトを包含する哺乳類を、請求項1〜11の何れか1項に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態の有効量で治療することを含む、PDE4阻害剤による上記哺乳類の治療方法。
【請求項18】
ヒトを包含する哺乳類を、請求項1〜11の何れか1項に記載のcis−5−フルオロ−N−[4−(2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアミド)シクロヘキシル]−2−(テトラヒドロ−チオピラン−4−イルオキシ)−ニコチン酸アミド及びその塩の結晶形態の有効量で治療することを含む、炎症性又は呼吸器系疾患の治療方法。
【請求項19】
疾患が、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、気腫、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎、鼻炎、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病)、回腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−199700(P2006−199700A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11909(P2006−11909)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】