説明

結晶成長方法、および結晶成長装置

【課題】高品質で、クラックのない大きな単結晶を成長させることができ、且つ単結晶の生産性の良い結晶成長方法、およびそれに用いる結晶成長装置を提供する。
【解決手段】本発明の結晶成長方法は、反応容器内で原料液と原料ガスとを加熱して反応させることによって、前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る結晶成長方法であって、前記単結晶と前記原料液とを分離した後に、冷却を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長方法、およびそれに用いる結晶成長装置に関し、より詳しくは、高品質で、クラックのない大きな単結晶を成長させることができ、且つ単結晶の生産性の良い結晶成長方法、およびそれに用いる結晶成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、窒化ガリウム(GaN)等のIII族元素窒化物化合物半導体(以下、「III族元素窒化物」と適宜記載する)は、青色や紫外光を発光する半導体素子の材料として注目されている。例えば、青色レーザダイオード(LD)は、高密度光ディスクやディスプレイ等に応用され、また、青色発光ダイオード(LED)は、ディスプレイや照明等に応用される。また、紫外線LDは、バイオテクノロジー等への応用が期待され、紫外線LEDは、蛍光灯の紫外線源として期待されている。
【0003】
LDやLED用のIII族元素窒化物(例えばGaN)を有する基板は、例えば、気相エピタキシャル成長法によって形成されている。この方法では、基板としてサファイア基板を用い、この基板の上にIII族元素窒化物の単結晶をヘテロエピタキシャル成長させる。この方法で得られる単結晶の転位密度は、通常、約108cm−2〜109cm−2である。このため、気相エピタキシャル成長法では、転位密度の減少が重要な課題となっている。
【0004】
この課題を解決するために、例えば、ELOG(Epitaxial lateral over growth)法やファセット成長法が開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。これらの方法によれば、転位密度を105cm−2〜107cm−2程度まで下げることができるが、作製工程が複雑であるという別の問題がある。
【0005】
一方、気相エピタキシャル成長法ではなく、液相で結晶成長を行う方法も検討されている。しかしながらGaNやAlN等のIII族元素窒化物の単結晶の融点における窒素の平衡蒸気圧は1万気圧以上であるため、従来、GaNを液相で成長させるためには1200℃(1473K)で8000気圧(8000×1.01325×105Pa)の条件が必要とされてきた。これに対し、近年、Na等のアルカリ金属をフラックスとして用いることで、750℃(1023K)、50気圧(50×1.01325×105Pa)という比較的低温低圧でGaNを合成できることが明らかにされた(特許文献3参照)。
【0006】
また、サファイア基板上に有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によってGaN結晶層を成膜した種結晶を用いて、この種結晶上に液相成長(LPE:Liquid Phase Epitaxy)法によって単結晶を成長させる方法も報告されている(例えば、特許文献4、非特許文献1参照)。
【0007】
図3に示すように、そのような従来の液相成長法に用いられる結晶成長装置101では、例えば、原料ガス(例えば窒素ガス)を供給するための原料ガス供給装置121、成長雰囲気の圧力を調整するための圧力調整器122、耐熱耐圧容器(例えばSUS製容器)103、および加熱装置(例えば電気炉)104が備えられている。耐熱耐圧容器103の内部には、反応容器(例えばアルミナ製坩堝)105がセットされている。また、原料ガス供給装置121から耐熱耐圧容器103へ原料ガスを供給する接続パイプ123が設けられている。
【0008】
加熱装置104内の温度は、600℃(873K)〜1100℃(1373K)に制御することができる。耐熱耐圧容器103内の圧力は、圧力調整器122によって100気圧(100×1.01325×105Pa)以下の範囲で制御することができる。
【0009】
この装置を用いたIII族元素窒化物の結晶成長方法について説明する。フラックス(融剤)であるアルカリ金属(例えばNa)とIII族元素を含む原料(例えばGa)とを、所定の量だけ秤量し、種結晶107と共に反応容器105内に配置する。前記反応容器105を耐熱耐圧容器103内に配置し、前記耐熱耐圧容器103を加熱装置104内に配置する。前記耐熱耐圧容器103と原料ガス供給装置121とを接続パイプ123で接続する。
【0010】
耐熱耐圧容器103の温度および圧力をそれぞれ加熱装置104および圧力調節器122を用いて調節する。そして、一定時間、加熱および加圧することにより、アルカリ金属およびIII族元素原料が融解し原料液108が生じる。この原料液108中のIII族元素原料と原料ガスとが反応してIII族元素窒化物が生じる。そして、このIII族元素窒化物が種結晶107に付着し単結晶が成長する。
【0011】
結晶成長の終了後に、成長温度から温度を下げて、室温まで冷却した後、原料ガスの供給を止め、大気開放し、耐熱耐圧容器103から反応容器105を取り出す。その後、反応容器105内の原料液を除去し、単結晶を取り出す。このようにして、III族元素窒化物の単結晶が得られる。
【特許文献1】特開平11−145516号公報(1999年5月28日公開)
【特許文献2】特開2001−102307号公報(2001年4月13日公開)
【特許文献3】米国特許5868837号(1999年2月9日特許)
【特許文献4】WO2004/013385号公報(2004年2月12日公開)
【非特許文献1】Fumio Kawamura, Tomoya Iwahashi, Kunimichi Omae, Masanori Morishita, Masashi Yoshimura,Yusuke Mori and Takatomo Sasaki, 「Growth of a Large GaN Single Crystal Using the Liquid Phase Epitaxy (LPE) Technique」, Jpn. J. Appl. Phys., Vol 42, (2003) pp4−6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記結晶成長方法では、得られた単結晶と原料液108とが、冷却中に反応容器105内部で一緒に固化していた。このため、得られた単結晶および基板にクラックが生じてしまい、高品質で大きな単結晶を得ることが困難であった。
【0013】
また、冷却後の後処理には、この反応容器105内で固化した原料液108を除去する作業が必要になる。この作業により、単結晶を取り出すまでの処理時間が長くかかっていた。さらに、冷却中には、前記原料液から微結晶層が単結晶上に生成するため、この微結晶層を研磨等で除去する必要があった。即ち、従来の液相成長法を用いた結晶成長方法では、単結晶の生産性が非常に悪かった。
【0014】
そこで、本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高品質で、クラックのない大きな単結晶を成長させることができ、且つ単結晶の生産性の良い結晶成長方法、およびそれに用いる結晶成長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発明者は、Naフラックスを用いた液相成長後に単結晶および基板にクラックが生じる原因を解明するため研究を重ねた。その過程で、サファイア基板上にIII族元素窒化物結晶を成膜した種結晶を用いて結晶成長させる場合、サファイア基板とIII族元素窒化物結晶の熱膨張係数が大きく異なるために、成長温度から室温への冷却時において内部応力が発生することが分かった。しかしながら、サファイア基板およびIII族元素窒化物結晶それぞれの物性値を用いて冷却時の内部応力を計算したところ、前記熱膨張係数差による内部応力だけでは単結晶およびサファイア基板は割れないという結果が得られた。
【0016】
この結果をうけ、さらに研究を重ねたところ、結晶成長過程の成長温度において原料液を形成していたNa、Ga、およびNa−Ga合金が、単結晶が所望の大きさに成長した後の冷却時に反応容器内で単結晶を覆いながら固化することによって、単結晶に外部から応力を与えることを見出した。そして、このことが単結晶およびサファイア基板にクラックを生じさせる原因の1つであると分かった。このことから、単結晶が所望の大きさに成長した後、原料液を反応容器外へ排出した後に冷却することによって、冷却時に単結晶周辺で固化する原料液の量を大幅に減少させて、単結晶およびサファイア基板にクラックが生じないようにすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
従って、本発明の結晶成長方法は、前記課題を解決するために、反応容器内で原料液と原料ガスとを加熱して反応させることによって、前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る結晶成長方法であって、前記単結晶と前記原料液とを分離した後に、単結晶の冷却を開始することを特徴としている。
【0018】
前記の構成によれば、原料液と単結晶とを分離した後に冷却を開始しているので、冷却中に単結晶周辺で固化する原料液量を大幅に減少させることができる。
【0019】
そのため、単結晶に外部から加えられる応力を低減できるので、単結晶および基板にクラックが生じることを防ぐことができる。従って、前記結晶成長方法によって、高品質で大きな単結晶を得ることができる。
【0020】
また、冷却中には、前記原料液から微結晶が生成することがあるが、原料液と単結晶とを分離しているので、冷却中に、前記単結晶表面に付着する微結晶量を低減できる。このため前記結晶成長方法によって得られる単結晶は均一な形状になるので、より高品質の単結晶を提供することができる。
【0021】
さらに、原料液と単結晶とを分離してから冷却するため、冷却後の後処理は、単結晶表面に付着した原料液のみを除去するだけで良い。このため、従来の結晶成長方法と比較して、単結晶を得るまでに要する処理時間を大幅に短縮できる。従って、前記結晶成長方法を用いることにより、単結晶の生産性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の結晶成長方法は、前記原料液を前記反応容器外へ排出することにより、前記単結晶と前記原料液とを分離することが好ましい。これによれば、反応容器内に単結晶と原料液とを分離するための特別の装置を設ける必要が無いので、単純な構成の反応容器を用いることができる。それ故、簡便に結晶成長方法を実施することができる。
【0023】
また、本発明の結晶成長方法は、前記反応容器の一部を開口することにより前記原料液を前記反応容器外へ排出することが好ましい。これによれば、原料液を反応容器外へ簡単に排出することができる。
【0024】
また、本発明の結晶成長方法は、前記反応容器の一部に開口部を設けると共に、単結晶の成長温度よりも高い融点を有する閉塞材料で当該開口部を塞ぎ、前記反応容器の温度を前記閉塞材料の融点以上に上昇させることにより、前記閉塞材料を融解させて反応容器の一部を開口することが好ましい。
【0025】
これによれば、反応容器の温度を前記閉塞材料の融点以上に上昇させることによって、前記閉塞材料が融解するので、大掛かりな装置を用いずに、反応容器の一部に開口部を形成することができる。そして、この開口部から、前記原料液を前記反応容器外へ排出することができる。
【0026】
また、本発明の結晶成長方法は、前記原料ガスで加圧して反応させることが好ましい。これによれば、加圧することにより、原料液と原料ガスとの反応が促進されるため、単結晶を効率よく得ることができる。
【0027】
また、本発明の結晶成長方法は、種結晶を存在させた状態で原料液と原料ガスとを反応させることが好ましい。これによれば、前記原料液と前記原料ガスとを反応させて、前記種結晶上に結晶成長層を成長させることができるため、単結晶をより効率よく得ることができる。
【0028】
また、本発明の結晶成長方法は、前記原料ガスが窒素を含有し、前記原料液がIII族元素を含むことが好ましい。これによれば、前記窒素とIII族元素とを反応させて、III族元素窒化物の単結晶を製造することができる。
【0029】
また、本発明の結晶成長方法は、前記原料液が、アルカリ金属を含有するフラックスを含むことが好ましい。これによれば、前記原料液に含まれるアルカリ金属によって、成長温度および成長雰囲気の圧力を低減することができる。そのため、より簡便に単結晶を得ることができる。
【0030】
また、本発明の結晶成長装置は、原料液と原料ガスとを反応させて前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る反応容器、前記反応容器を加熱する加熱手段、および前記原料液と前記単結晶とを分離する分離手段を備えることを特徴としている。
【0031】
これによれば、分離手段によって前記原料液と前記単結晶とを分離することで、冷却中に単結晶周辺で固化する原料液量を大幅に減少することができる。そのため、単結晶に外部から加えられる応力を低減できるので、単結晶にクラックが生じることを防ぐことができる。従って、前記結晶成長装置を用いることにより高品質で大きな単結晶を得ることができる。
【0032】
また、冷却中には、前記原料液から微結晶が生成することがあるが、前記原料液と前記単結晶とを分離してから冷却するため、前記単結晶表面に付着する微結晶量を低減できる。このため前記結晶成長装置を用いて得られる単結晶は均一な形状になるので、より高品質の単結晶を提供することができる。
【0033】
さらに、前記原料液と前記単結晶とを分離してから冷却するため、冷却後の後処理は、単結晶表面に付着した原料液のみを除去するだけで良い。このため、従来の結晶成長装置を用いた場合と比較して、単結晶を得るまでに要する処理時間を大幅に短縮できる。従って、単結晶の生産性を向上させることができる。
【0034】
また、本発明の結晶成長装置は、前記分離手段が、前記原料液を前記反応容器外へ排出するようになっていることが好ましい。これによれば、反応容器内に単結晶と原料液とを分離するための特別の装置を設ける必要が無いので、単純な構成の反応容器を用いることができる。それ故、低コストで結晶成長装置を作成することができる。
【0035】
また、本発明の結晶成長装置は、前記反応容器の一部に開口部が設けられており、前記分離手段は単結晶の成長温度よりも高い融点を有する閉塞材料であって、当該開口部を塞ぐように設けられていることが好ましい。
【0036】
前記の構成によれば、加熱手段を用いて反応容器を成長温度に加熱しても前記閉塞材料を融解することなく、単結晶を成長させることができる。また、結晶成長後に、前記加熱手段を用いて反応容器内部の温度が前記閉塞材料の融点以上になるように加熱することにより、前記閉塞材料を融解させることができる。これにより、大掛かりな装置を用いずに、反応容器に開口部を形成することができる。そして、原料液を前記開口部より排出することができる。
【0037】
また、本発明の結晶成長装置は、前記反応容器の下方に、原料液を回収するための回収容器が配置されていることが好ましい。このことによって、前記開口部から排出された原料液の回収が容易になるので、(1)単結晶を得るための処理時間を短縮することができ、単結晶の生産性を向上することや、(2)結晶成長装置の操作の安全性を向上することができる。
【0038】
また、本発明の結晶成長装置は、前記反応容器内を加圧する加圧手段を備えていることが好ましい。これによれば、反応容器内を加圧することができるので、原料液と原料ガスとの反応を促進することができる。それ故、前記結晶成長装置を用いて単結晶を効率よく得ることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の結晶成長方法は、以上のように、反応容器内で原料液と原料ガスとを加熱して反応させることによって、前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る結晶成長方法であって、前記単結晶と前記原料液とを分離した後に、単結晶の冷却を開始する方法である。
【0040】
また、本発明の結晶成長装置は、以上のように、原料液と原料ガスとを反応させて前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る反応容器、前記反応容器を加熱する加熱手段、および前記原料液と前記単結晶とを分離する分離手段を備える装置である。
【0041】
それ故、単結晶にクラックが生じることを防ぐことができる、および単結晶を得るまでに要する処理時間を大幅に短縮できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態について図1に基づいて説明すると以下の通りである。図1は本発明の結晶成長装置を示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態の結晶成長装置1は、原料液8と原料ガスとを反応させて前記原料液8と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る反応容器5、前記反応容器5を加熱する加熱手段4、前記反応容器5内に原料ガスを供給する供給手段20、および反応容器5を設置する耐熱耐圧容器3、原料液8を回収する回収容器10を備えている。
【0043】
前記反応容器5は、その一部が開口した状態で耐熱耐圧容器3の内部に設置されている。前記反応容器5内部には原料液8が配置され、供給手段20によって原料ガスが供給される。原料液8と原料ガスとが反応することによって、前記原料液8と前記原料ガスとの化合物の単結晶が得られる。前記反応容器5としては、例えば、アルミナ製坩堝が挙げられるが、これに限定されない。
【0044】
ここで、前記反応容器5の一部に開口部が設けられ、さらに単結晶の成長温度よりも融点の高い閉塞材料(分離手段)9がこの開口部を塞ぐように設けられている。これにより、加熱手段4を用いて反応容器5の温度を前記閉塞材料9の融点以上の温度に加熱すると、前記閉塞材料9は融解するので反応容器5に開口部が形成される。この開口部より、前記原料液8を排出することができる。
【0045】
反応容器5に設けられる開口部の位置としては、特に限定されないが、反応容器5の底面であることが好ましい。これによれば、前記原料液8が底面の開口部から重力によって自然に流れ出すので、大掛かりな装置を用いずに、前記原料液8を前記反応容器5外へ排出することができる。
【0046】
前記閉塞材料9としては、特に限定されず、成長させる単結晶の成長温度より融点が高い材料を適宜用いることができる。例えば、III族元素窒化物の単結晶を成長させる場合、前記閉塞材料9としては、ゲルマニウム(融点937℃)、銀(融点961℃)、銅(融点1085℃)等の材料が使用できるが、これらに限定されない。これらの材料は、それぞれ単独で使用されても良いし、2つ以上を併用して使用されても良い。
【0047】
前記回収容器10は、前記反応容器5の下方に設置されている。このことによって、前記開口部から排出された原料液8の回収が容易になるので、(1)単結晶を得るための処理時間を短縮することができ、単結晶の生産性を向上することや、(2)結晶成長装置の操作の安全性を向上することができる。前記回収容器10の大きさや形状については問わないが、前記原料液8全てを入れることのできる大きさであることは言うまでもない。
【0048】
前記反応容器5および回収容器10は、前記耐熱耐圧容器3内部に設置されている。前記耐熱耐圧容器3には密閉蓋6が設けられている。この密閉蓋6を開くことにより、反応容器5および回収容器10を容易に耐熱耐圧容器3の内部に配置することができる。また前記密閉蓋6を閉じることにより耐熱耐圧容器3を密閉することができる。前記耐熱耐圧容器3としては、例えば、SUS製容器が挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
前記耐熱耐圧容器3の外側には、前記加熱手段4が設けられている。これにより、耐熱耐圧容器3を加熱することにより、反応容器5を加熱することができる。前記加熱手段4としては、特に限定されず、例えば、電気炉等の従来公知の加熱手段が挙げられる。
【0050】
なお、加熱手段4は、耐熱耐圧容器3の外側に設置されていなくても良い。例えば、加熱手段4が、耐熱耐圧容器3と反応容器5との間に設置されていても良いし、耐熱耐圧容器3および/または反応容器5に一体化されていても良い。
【0051】
前記加熱手段4によって、反応容器5内を成長温度以上に上げて、任意の時間保持することが可能となっている。このように、反応容器5内部の温度を、加熱手段4を用いて成長温度にすることにより、原料液8と原料ガスとの反応が促進されるため、単結晶を効率よく得ることができる。
【0052】
前記供給手段20は、原料ガスを耐熱耐圧容器3内部に供給するための原料ガス供給装置21、成長雰囲気の圧力を調整するための圧力調整器(加圧手段)22、および接続パイプ23を備えている。前記接続パイプ23は、加熱手段4を貫通して耐熱耐圧容器3内部に至るように設けられている。即ち、原料ガス供給装置21から耐熱耐圧容器3へ原料ガスを供給する前記接続パイプ23が設けられている。ここで、反応容器5は、その一部が開口しているので、耐熱耐圧容器3内に供給された原料ガスは前記反応容器5内にも供給される。
【0053】
また、前記耐熱耐圧容器3を密閉することにより、内部の原料ガスの圧力を、圧力調整器22によって調整することができる。なお、この圧力調整器22は、特に限定されず、例えば、圧力センサーおよび圧力調整弁等を備えた構成が挙げられる。このように、供給手段20を用いることにより、前記耐熱耐圧容器3内部が原料ガスの雰囲気下(加圧雰囲気)にすることができる。なお、上述したように耐熱耐圧容器3内に供給された原料ガスは前記反応容器5内にも供給されるので、耐熱耐圧容器3内の原料ガスの圧力と反応容器5内部の原料ガスの圧力とが等しくなっている。従って、圧力調整器22によって、反応容器5内部の圧力を成長雰囲気の圧力に以上に上げること、成長雰囲気の圧力よりも低くすること、および、それらの圧力に任意の時間保持することが可能となっている。
【0054】
このように、反応容器5内部の圧力を、圧力調整器22を用いて成長雰囲気の圧力にすることにより、原料液8と原料ガスとの反応が促進されるため、単結晶を効率よく得ることができる。
【0055】
前記結晶成長装置1は、例えば以下の方法で製造することができるが、これに限定されない。まず、反応容器の一部に開口部を設けて、当該開口部を閉塞材料9で塞ぐことによって前記反応容器5を作製する。そのような反応容器5の作製方法は問わないが、例えば、従来公知の孔あけ機等を用いて前記反応容器に開口部を設け、ペースト状の前記閉塞材料を前記開口部に挿入した状態で焼結する方法が挙げられる。
【0056】
次に耐熱耐圧容器3の内部に回収容器10を配置して、その回収容器10の上方に前記反応容器5を配置する。配置の方法としては特に限定されないが、耐熱耐圧容器3、反応容器5、および回収容器10を安定に配置するために、ネジ等の従来公知の固定手段を用いた方法を適用することが好ましい。
【0057】
その後、従来公知の方法を用いて耐熱耐圧容器3の外側に加熱手段4を配置する。その後、接続パイプ23の一方を、加熱手段4を貫通させて耐熱耐圧容器3内部に至るように接続し、前記接続パイプ23のもう一方を原料ガス供給装置21と接続する。このようにして、結晶成長装置1を製造することができる。
【0058】
<結晶成長方法>
次に前記結晶成長装置1を用いた結晶成長方法について説明する。まず、反応容器5内部に、所定の量だけ秤量した金属を入れる。このとき、基板および/または種結晶7を加えることがより好ましい。これにより、基板および/または種結晶7上に前記原料液8と前記原料ガスとの化合物の単結晶を成長させることができるので、単結晶を効率よく成長させられるという効果を奏する。
【0059】
反応容器5に入れる金属、基板、および種結晶7の量は特に限定されないが、原料液8となった時に反応容器5から溢れないような量であることが好ましい。そして、耐熱耐圧容器3の密閉蓋6を開けて、反応容器5を、耐熱耐圧容器3の内部に設置する。
【0060】
その後、耐熱耐圧容器3の密閉蓋6を閉じて、耐熱耐圧容器3を密閉し、耐熱耐圧容器3の内部を外部雰囲気と遮断する。そして、加熱手段4を用いて、反応容器5の温度が金属の融点以上になるように加熱する。これにより、前記金属が融解し原料液8が得られる。また、供給手段20から原料ガスを耐熱耐圧容器3内に供給する。即ち、原料ガス供給装置21から接続パイプ23を介して、原料ガスを耐熱耐圧容器3内部へ供給する。これにより前記原料液8と原料ガスとが反応し、前記原料液8と前記原料ガスとの化合物の単結晶が成長する。
【0061】
前記金属としては、特に限定されず、例えば、III族元素が挙げられる。前記III族元素としては、特に限定されず、例えば、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられる。それらIII族元素の中でも、半導体素子の材料として好適に用いることができるという理由で、ガリウムが好ましい。
【0062】
前記原料ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素を含有しているガス等が挙げられる。そのような窒素を含有しているガスとしては、例えば、窒素(N)ガス、アンモニア(NH)ガス等が挙げられ、これらのガスは単独でまたは混合して用いられることができる。
【0063】
前記基板としては、特に限定されないが、例えば、サファイア基板等を用いることができる。
【0064】
前記種結晶7とは、単結晶を成長させるための「種」として用いられる単結晶の薄膜のことである。種結晶7としては、特に限定されず、成長させる単結晶と同じ組成の結晶を適宜用いることができる。例えば、GaNの単結晶を成長させる場合には、種結晶7としてGaNの単結晶薄膜を用いることができる。
【0065】
前記種結晶7は基板上に形成されていても良い。そのような構成の基板は、例えば、GaN薄膜が形成されているサファイア基板が挙げられるが、これに限定されない。また、GaN薄膜はMOCVD法によってサファイア基板の表面に形成することができるが、これに限定されない。
【0066】
なお、本発明の結晶成長方法では、反応容器5内部にフラックスを更に加えることがより好ましい。反応容器5の内部にフラックスが加えられれば、加熱手段4を用いて、反応容器5の温度が金属およびフラックスの融点以上になるように加熱することで、金属およびフラックスが融解した原料液8が得られる。このフラックスは、単結晶の成長温度および成長雰囲気の圧力を低減するという効果を奏する。そのため、より簡便に単結晶を得ることができる。
【0067】
また、前記フラックスとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、特に限定されないが、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられる。また、前記アルカリ土類金属としては、特に限定されないが、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)等が挙げられる。これらアルカリ金属及びアルカリ土類金属は単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0068】
例えば、前記金属としてIII族元素、前記フラックスとしてアルカリ金属、前記原料ガスとして窒素を含有するガスを用いることにより、III族元素窒化物の単結晶を成長させることができる。
【0069】
以下では、図2を用いて結晶成長に関する温度の調節について説明する。図2に示すように、結晶成長を効率よく行うために、加熱手段4を用いて反応容器5内の温度を成長温度まで昇温する。このとき、前記閉塞材料9の融点は、前記成長温度よりも高いので、前記閉塞材料9は融解しない。成長温度で一定時間保持することにより、原料液8と原料ガスとが反応して前記原料液8と前記原料ガスとの化合物の単結晶を成長させることができる。なお、前記成長温度は、特に限定されず、成長する単結晶の種類に応じて、最適なものを適宜選択すれば良い。
【0070】
また、圧力調整器22を用いて、反応容器5内部を成長雰囲気の圧力にする。この成長雰囲気の圧力で一定時間保持することにより、原料液8と原料ガスとが反応して前記原料液8と前記原料ガスとの化合物の単結晶をより効率よく成長させることができる。前記成長雰囲気の圧力は、特に限定されず、成長する単結晶の種類に応じて、最適な圧力を適宜選択すれば良い。
【0071】
その後、即ち、単結晶が所望の大きさに成長した後に、前記単結晶と前記原料液8とを分離する。本実施の形態では、前記反応容器5の一部を開口することによって、反応容器に開口部を形成し、原料液8をこの開口部より排出する。具体的には、図2に示すように、加熱手段4を用いて反応容器5内部の温度を前記閉塞材料9の融点以上に一時的に上昇させる。これにより、前記閉塞材料9は融解するので、反応容器5に開口部が形成される。そのため、前記開口部から前記原料液8が反応容器5の外へ排出される。回収容器10が反応容器5の下側に設置されている場合には、原料液8は回収容器10に排出される。
【0072】
例えば、前記閉塞材料9として、ゲルマニウムを用いている場合は反応容器5の温度が937℃以上、銀を用いている場合は961℃以上、銅を用いている場合は1085℃以上になるように加熱すれば良い。
【0073】
なお、前記「閉塞材料9の融点以上に一時的に上昇させる」とは、(i)図2に示すように、反応容器5内部の温度を閉塞材料9の融点以上に連続的に一定時間上昇させて、反応容器5に開口部が形成された後に、反応容器5内部の温度を前記閉塞材料9の融点よりも低くすることや、(ii)反応容器5内部の温度を閉塞材料9の融点以上のある温度で一定時間保持して、反応容器5に開口部が形成された後に、反応容器5内部の温度を前記閉塞材料9の融点よりも低くすることを意味する。
【0074】
なお、本実施の形態では、前記反応容器の一部を開口する方法としては、反応容器5に設けられた閉塞材料9を融解する方法を用いたが、これに限定されない。その他の実施の形態として、例えば、単結晶が所望の大きさに成長した後に、(a)開口部が一部に設けられた反応容器の当該開口部を塞いでいる蓋を開く方法、または(b)反応容器の一部に孔をあける方法等が挙げられる。
【0075】
即ち、前記(a)では、分離手段として、反応容器の一部に設けられた開口部を開閉可能な蓋が当該反応容器に設けられている。結晶成長中は、前記蓋を閉じておき、単結晶が所望の大きさに成長した後に、前記蓋を開くことにより、反応容器の一部を開口することができる。
【0076】
また、前記(b)では、分離手段として、ドリル等の従来公知の孔あけ手段が耐熱耐圧容器3と反応容器との間に設けられている。単結晶が所望の大きさに成長した後に、前記孔あけ手段を用いて反応容器の一部に孔をあけることにより、反応容器の一部を開口することができる。
【0077】
しかしながら、前記反応容器5に設けられた閉塞材料9を融解する方法では、加熱手段4を用いて温度を上昇させることで開口部を形成することができるので、前記(a)の蓋や前記(b)の孔あけ手段の大掛かりな装置を用いずに、前記原料液を前記反応容器外へ排出することができる。
【0078】
次に、前記原料液8と単結晶とを分離した後に、単結晶の温度が室温になるまで冷却を行う。単結晶周辺で固化する原料液8量が大幅に減少しているので、冷却中に単結晶に外部から加えられる応力を低減できる。それ故、単結晶および基板にクラックが生じることを防ぐことができる。冷却の方法としては、特に限定されず、例えば、結晶成長装置を室温で放置する方法、クーラー等の従来公知の冷却手段を用いる方法等を適用できる。
【0079】
本明細書において「原料液8と単結晶とを分離する」とは、単結晶と原料液8とを別々にすることであるが、完全に別々にする必要は無く単結晶に原料液8が付着していても良い。
【0080】
単結晶を冷却した後に、耐熱耐圧容器3の密閉蓋6を開いて、反応容器5から単結晶を取り出す。このとき、反応容器5内部には原料液8の固化した塊がほとんどないので、反応容器5から容易に単結晶を取り出すことができる。その後、前記単結晶の表面に付着した原料液8を取り除く。原料液8を除去する方法としては特に限定されず、例えば、水、エタノール、塩酸等の溶液に浸漬して、表面に付着した原料液を洗浄する方法が挙げられる。このように、冷却後に単結晶を取り出す際に行う後処理は、単結晶表面に付着した原料液8のみを除去するだけで良い。このため、従来の結晶成長方法と比較して、単結晶を得るまでに要する処理時間を大幅に短縮できる。従って単結晶の生産性を向上させることができる。
【0081】
以上のように、前記で説明した結晶成長方法では、反応容器内で原料液と原料ガスとを加熱して反応させることによって、前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る結晶成長方法であって、前記単結晶と前記原料液とを分離した後に、冷却を開始する方法である。これによれば、単結晶周辺から原料液量を大幅に減少した後に冷却しているので、単結晶の周囲で固化する原料液量を大幅に減少させることができる。それ故、単結晶に外部から加えられる応力を低減できる。また、冷却中には、前記原料液から微結晶が生成することがあるが、前記単結晶と前記原料液とを分離してから冷却するため、前記単結晶表面に付着する微結晶量を低減できる。
【0082】
なお、本実施の形態では、前記単結晶と前記原料液とを分離する方法として、前記原料液8を前記反応容器5外へ排出する方法について説明したが、これに限るものではない。例えば、(c)単結晶の位置が原料液8の液面よりも高くなるように単結晶を引き上げること、または(d)反応容器5内に設けられた別の空間に原料液8を移動させること等の方法によって、前記単結晶と前記原料液8とを分離することができる。
【0083】
即ち、前記(c)では、反応容器5内部に単結晶を引き上げるための引き上げ手段が設けられている。前記引き上げ手段としては、例えばワイヤーとそのワイヤーの一方に連結した台等が挙げられるがこれに限定されない。前記ワイヤーのもう一方は反応容器5の上部で反応容器5とワイヤーを巻き取ることのできる巻き取り手段と連結している。これによれば、前記台上で単結晶を成長させた後に、ワイヤーを巻き取ることにより、台を引き上げることができる。これにより、台上の単結晶の位置を原料液8の液面よりも高くすることができる。
【0084】
前記(d)では、反応容器5内部の少なくとも一部が分割手段によって上下に2つ以上の部屋に区切られている。前記分割手段としては特に限定されないが、例えば、開閉式の壁等が挙げられる。
【0085】
分割手段として、開閉式の壁を用いた場合には、上側の部屋で、且つ分割手段以外の場所で単結晶の成長を行う。このとき前記壁は閉じている。単結晶が所望の大きさに成長した後に、前記壁を開くことにより、原料液8を下側の壁に排出することができるので、単結晶と原料液8とを分離することができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、単結晶が所望の大きさに成長した後に、前記原料液8を前記反応容器5外へ排出する方法として、反応容器5の一部を開口する方法について説明したが、これに限るものではない。例えば、(e)単結晶が所望の大きさに成長した後に原料液8を吸引する方法により原料液8を反応容器5外へ排出することもできる。
【0087】
即ち、前記(e)では、反応容器5に吸引手段が設けられている。前記吸引手段としては特に限定されないが、例えば、原料液8を吸引するための配管および当該配管に連結されたポンプ等が上げられる。さらに前記ポンプには吸引された原料液8を回収するための容器が備えられている。これによれば、単結晶が所望の大きさに成長した後に、前記ポンプを作動することにより、前記吸引管から原料液8を吸引し前記容器に回収されるので、本実施形態と略同様の効果が得られる。なお、吸引管を反応容器5の底面に設け、底面から吸引することにより、原料液8を効率よく吸引することができる。
【0088】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0089】
本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は、GaN単結晶についての結晶成長の例であるが、他のIII族元素窒化物単結晶も同様にして結晶成長させることができる。
【0090】
〔実施例1〕
図1に示す装置を用いて、GaN単結晶を結晶成長させた。まず反応容器であるアルミナ製坩堝の底面に開口部を設け、その開口部を銀ペーストでふさいだ後、焼結した。これによって、底面の一部を銀で構成したアルミナ製坩堝を作製した。さらに坩堝の下方にアルミナ製の回収容器を取り付けた。次にサファイア基板の表面にMOCVD法でGaN薄膜(膜厚10μm)を形成した種結晶と、原料となる金属Ga(1.0g)と、フラックスとなるNa(1.5g)とを上述のアルミナ製坩堝に入れた。
【0091】
そして、当該アルミナ製坩堝と回収容器とをSUS製耐熱耐圧容器に配置した後、電気炉にセットした。また、窒素ボンベと前記SUS製耐熱耐圧容器とをSUS製パイプで接続した。
【0092】
電気炉を加熱してSUS製耐熱耐圧容器内の温度を850℃(1123K)に調節した。また、圧力調節器を用いてSUS製耐熱耐圧容器内の窒素雰囲気圧力を40気圧(40×1.01325×105Pa)に調節した。そして、前記温度で72時間保持してGaN単結晶を成長させた。
【0093】
72時間後(成長終了後に)、SUS製耐熱耐圧容器内の窒素圧力を40気圧に維持した状態で、SUS製耐熱耐圧容器内の温度を1000℃に昇温した。これにより銀が融解するので、アルミナ製坩堝に開口部が生じる。この開口部から原料液を回収容器へ排出した。
【0094】
その後、SUS製耐熱耐圧容器内の温度を室温まで冷却し、大気開放した後に、アルミナ製坩堝から単結晶を取り出した。取り出した後、単結晶表面に付着したNaをエタノールおよび水にそれぞれ30分間浸漬させて除去した。さらに単結晶表面に付着した未反応のGa金属およびGa−Na合金を12N塩酸に20分間浸漬させて除去した。
【0095】
これによって、サファイア基板上に厚さ約400μm成長したGaN単結晶を得た。この単結晶およびサファイア基板にはクラックは生じておらず、良好な状態で取り出すことができた。
【0096】
また、単結晶を坩堝から取り出す際の処理としては、単結晶表面に付着した原料液のみをエタノール、水、塩酸で除去するだけでよく、処理時間を後述の比較例に比べ1/10に短縮することができた。
【0097】
〔比較例1〕
図3に示す装置を用いて、GaN単結晶を結晶成長させた。なお、本比較例に用いた装置の部材および試薬は、前記実施例1と同じものを用いた。ただし、アルミナ製坩堝としては、開口部の設けられていないものを用いた。
【0098】
サファイア基板の表面にMOCVD法でGaN薄膜(膜厚10μm)を形成した種結晶と、原料となる金属Ga(1.0g)と、フラックスとなるNa(1.5g)とをアルミナ製坩堝に入れた。そして、当該アルミナ製坩堝をSUS製耐熱耐圧容器に配置した後、電気炉にセットした。また、窒素ボンベとSUS製耐熱耐圧容器とをSUS製パイプで接続した。
【0099】
電気炉を加熱してSUS製耐熱耐圧容器内の温度を850℃(1123K)に調節した。また、圧力調節器を用いてSUS製耐熱耐圧容器内の窒素雰囲気圧力を40気圧(40×1.01325×105Pa)に調節した。そして、前記温度で72時間保持してGaN単結晶を成長させた。
【0100】
72時間後(成長終了後に)、SUS製耐熱耐圧容器内の温度が室温になるまで放置し、大気開放してから、アルミナ製坩堝から単結晶を取り出した。取り出す際に、単結晶はアルミナ製坩堝内で固化した原料液に覆われていたため、まず原料液を除去した。即ち、単結晶を、まずエタノール中に2時間浸漬させた後、上記エタノールを水に2時間かけて徐々に置換した。そして完全に水へ置換した後に、単結晶を4時間浸漬させてNaを除去した。
【0101】
次に未反応のGa金属をGa融点以上の50℃で1時間加熱することにより、Ga金属の大部分を単結晶上から除去した後、融解で除去しきれなかったGaおよびGa−Na合金を濃塩酸に3時間浸漬させて除去した。このように単結晶が所望の大きさに成長した後にから単結晶を取り出すまでの処理時間は12時間におよんだ。
【0102】
このようにして、サファイア基板上に厚さ約400μm成長したGaN単結晶が得られた。しかしながら、単結晶およびサファイア基板に多数のクラックが生じており、単結晶の一部はサファイア基板ごと割れた状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上のように、本発明の結晶成長方法および結晶成長装置を用いて結晶成長させた結晶(例えば、GaN単結晶)は高品質でかつ大きい単結晶である。そのため、前記結晶の実用価値は極めて高く、例えば、半導体素子の材料として好適に用いることができる。
【0104】
故に、本発明を半導体製造産業等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の結晶成長装置の実施の一形態を示す断面図である。
【図2】本発明の結晶成長方法における反応容器内部の温度と時間とを示すグラフである。
【図3】従来の結晶成長装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 結晶成長装置
3 耐熱耐圧容器
4 加熱装置(加熱手段)
5 反応容器
6 密閉蓋
7 種結晶
8 原料液
9 閉塞材料
10 回収容器
20 供給手段
21 原料ガス供給装置
22 圧力調整器(加圧手段)
23 接続パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内で原料液と原料ガスとを加熱して反応させることによって、前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る結晶成長方法であって、前記単結晶と前記原料液とを分離した後に、単結晶の冷却を開始することを特徴とする結晶成長方法。
【請求項2】
前記原料液を前記反応容器外へ排出することにより、前記単結晶と前記原料液とを分離することを特徴とする請求項1に記載の結晶成長方法。
【請求項3】
前記反応容器の一部を開口することにより前記原料液を前記反応容器外へ排出することを特徴とする請求項2に記載の結晶成長方法。
【請求項4】
前記反応容器の一部に開口部を設けると共に、単結晶の成長温度よりも高い融点を有する閉塞材料で当該開口部を塞ぎ、前記反応容器の温度を前記閉塞材料の融点以上に上昇させることにより、前記閉塞材料を融解させて反応容器の一部を開口することを特徴とする請求項3に記載の結晶成長方法。
【請求項5】
前記原料ガスで加圧して反応させることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の結晶成長方法。
【請求項6】
種結晶を存在させた状態で原料液と原料ガスとを反応させることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の結晶成長方法。
【請求項7】
前記原料ガスが窒素を含有し、前記原料液がIII族元素を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の結晶成長方法。
【請求項8】
前記原料液が、アルカリ金属を含有するフラックスを含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の結晶成長方法。
【請求項9】
原料液と原料ガスとを反応させて前記原料液と前記原料ガスとの化合物の単結晶を得る反応容器、前記反応容器を加熱する加熱手段、および前記原料液と前記単結晶とを分離する分離手段を備えることを特徴とする結晶成長装置。
【請求項10】
前記分離手段は、前記原料液を前記反応容器外へ排出するようになっていることを特徴とする請求項9に記載の結晶成長装置。
【請求項11】
前記反応容器の一部に開口部が設けられており、前記分離手段は単結晶の成長温度よりも高い融点を有する閉塞材料であって、当該開口部を塞ぐように設けられていることを特徴とする請求項10に記載の結晶成長装置。
【請求項12】
前記反応容器の下方に、原料液を回収するための回収容器が配置されていることを特徴とする請求項9〜11の何れかに1項に記載の結晶成長装置。
【請求項13】
前記反応容器内を加圧する加圧手段を備えていることを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載の結晶成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−7207(P2009−7207A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171274(P2007−171274)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】