説明

給水弁装置

【課題】直列に接続された上流側の第1電磁弁12と下流側の第2電磁弁13とを備える給水弁装置であって、第1電磁弁をパイロット式電磁弁で構成し、第2電磁弁を直動式電磁弁で構成するものにおいては、給水中に停電を生ずると、第2電磁弁の閉弁に遅れて第2電磁弁が閉弁して、両電磁弁間の連通路の水圧が高いままになる。そして、第2電磁弁のソレノイドを小型化した場合、停電回復後も水圧の影響で第2電磁弁が開弁せず、給水が中断されたままになるため、これを防止する。
【解決手段】第2電磁弁13と並列に直動式の小型電磁弁から成る第3電磁弁14を設ける。そして、給水中に第2電磁弁13が閉弁したとき、第1電磁弁12のソレノイド127への通電を一旦停止して、第2電磁弁13と第3電磁弁14のソレノイド134,144に通電した状態で第1電磁弁12のソレノイド127への通電を再開する復帰制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄機といった水を使用する機器の給水路に設けられる給水弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機は、洗浄槽に給水路を介して水を供給するように構成されており、この給水路に電磁弁から成る給水弁を介設している。ここで、給水弁が故障や異物の噛み込み等で止水不良を生ずると、洗浄槽への給水が継続して、洗浄槽から水が溢れ出る漏水事故を生ずることがある。
【0003】
そのため、従来、給水路に設けられる給水弁装置として、直列に接続された上流側の第1電磁弁と下流側の第2電磁弁とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、第1と第2の両電磁弁の一方の電磁弁の止水不良を生じても他方の電磁弁により給水を停止でき、漏水事故が発生する可能性を可及的に低減できる。
【0004】
ここで、両電磁弁が同時に止水不良を生じないようにするには、第1電磁弁と第2電磁弁とを互いに異なる型式のものにすること、例えば、第1と第2の両電磁弁の一方を常閉型のパイロット式電磁弁で構成し、他方の電磁弁を常閉型の直動式電磁弁で構成することが望まれる。
【0005】
パイロット式電磁弁は、弁座に開設した主弁孔を開閉するダイヤフラムから成る主弁と、主弁の背面側に画成され、弁座の周囲に形成した流入室にオリフィス孔を介して連通する背圧室と、背圧室と主弁孔とを連通するパイロット弁孔を開閉するパイロット弁と、パイロット弁を開閉駆動するソレノイドとを備える電磁弁である。常閉型のパイロット式電磁弁では、ソレノイドへの通電を停止すると、パイロット弁が閉弁して、流入室からオリフィス孔を介して背圧室に流入する水が背圧室に封じ込められ、主弁の背面に作用する背圧室の水圧による押圧力が主弁の前面に作用する流入室の水圧による押圧力を上回って主弁が閉弁される。ソレノイドに通電してパイロット弁を開弁させると、背圧室内の水がパイロット弁孔を介して流出し、主弁の背面に作用する押圧力が主弁の前面に作用する押圧力を下回って主弁が開弁され、流入室から主弁孔に水が流れる。
【0006】
パイロット式電磁弁は、小型のパイロット弁の開弁で主弁を開弁させて大流量の水を流すことができる。そして、パイロット式電磁弁を常閉型とした場合、ソレノイドを小型化して消費電力を少なくできる利点がある。反面、給水圧が低い場合には、パイロット弁を閉弁させても、主弁の閉じ側への押圧力が不足して、異物の噛み込みによる止水不良を生じやすくなる。また、オリフィス孔が目詰まりしやすく、この目詰まりにより背圧室に水が流入しにくくなって、止水不良を生ずることもある。
【0007】
また、直動式電磁弁は、弁孔を開閉する弁体と、弁体を開閉駆動するソレノイドとを備える電磁弁であり、給水圧が低い場合でも止水不良を生じない。然し、所要の流量の水を流すには弁孔の孔径を大きくする必要があって、弁体も大径になるため、弁体に作用する給水圧による閉じ側への押圧力が大きくなり、給水圧が高い場合に開弁不良を生じやすくなる。直動式電磁弁を常閉型とした場合、開弁不良を防止するには、ソレノイドを大型化する必要があり、消費電力が増大する。
【0008】
ここで、上流側の第1電磁弁を常閉型のパイロット式電磁弁、下流側の第2電磁弁を常閉型の直動式電磁弁で構成すると共に、第2電磁弁を給水圧を受けない状態で開弁できるように、給水開始時に第1と第2の両電磁弁のソレノイドに第2電磁弁、第1電磁弁の順で時間差を存して通電することが考えられる。然し、両電磁弁が閉弁されている給水停止中に、給水路の上流端を接続する家屋の水道配管でウォータハンマーが発生すると、第1電磁弁たるパイロット式電磁弁の主弁がウォータハンマーによる水圧変化で一時的に開弁して、第1電磁弁と第2電磁弁との間の連通路に水が流入し、連通路の水圧が上昇する。そのため、第2電磁弁のソレノイドが小型であると、連通路の水圧の影響で第2電磁弁の開弁不良を生ずる可能性がある。従って、第2電磁弁のソレノイドを小型化して消費電力の低減を図ることはできない。
【0009】
そこで、本願出願人は、先に特願2006−176431で、常閉型のパイロット式電磁弁から成る上流側の第1電磁弁と常閉型の直動式電磁弁から成る下流側の第2電磁弁とを備えると共に、第2電磁弁に並列に、第2電磁弁の弁孔より小径の弁孔を開閉する弁体と、弁体を開閉駆動するソレノイドとを備える常閉型の直動式電磁弁で構成される第3電磁弁を設けた給水弁装置を提案している。
【0010】
この先願の給水弁装置によれば、給水開始時に、第1電磁弁のソレノイドへの通電に先行して第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドに通電することにより第2電磁弁を確実に開弁させることができる。即ち、給水停止中に第1と第2の両電磁弁間の連通路の水圧が上昇しても、第1電磁弁の開弁前に第3電磁弁をそのソレノイドへの通電で開弁させれば、連通路が第3電磁弁を介して圧抜きされ、第2電磁弁は水圧を受けずに開弁されることになる。従って、直動式電磁弁から成る第2電磁弁のソレノイドを小型化して、消費電力を大幅に低減できる。
【0011】
尚、第3電磁弁は水圧を受けた状態で開弁されることになる。ここで、給水時の流量は第2電磁弁の弁孔を大きくすることで確保できるため、第2電磁弁に並列の第3電磁弁の弁孔は圧抜き可能な範囲で可及的に小さく形成でき、第3電磁弁の弁体も小径になる。従って、第3電磁弁のソレノイドが小型であっても、第3電磁弁の開弁不良は生じない。その結果、第3電磁弁の付加による消費電力の増加量は僅かになり、第2電磁弁のソレノイドの小型化による消費電力の大幅な低減で、トータルの消費電力も低減される。
【0012】
然し、先願の給水弁装置においては、落雷等に起因する瞬間的な停電を生じた場合、以下の不具合を生ずることが判明した。停電で第1乃至第3の各電磁弁のソレノイドへの通電が停止されと、これら各電磁弁が閉弁する。ここで、第2電磁弁はソレノイドへの通電停止で直ちに閉弁する。一方、パイロット式電磁弁から成る第1電磁弁では、ソレノイドへの通電停止でパイロット弁が直ちに閉弁するものの、主弁はパイロット弁の閉弁に遅れて閉弁する。そのため、第1と第2の両電磁弁間の連通路の水圧が上昇した状態で主弁が閉弁されることになる。その結果、停電から回復しても、第2電磁弁は水圧の影響で閉弁されたままになる。尚、停電回復時に、第3電磁弁が開弁しても、第1と第2の両電磁弁間の連通路の水圧が十分低下する前に第1電磁弁が開弁し、第3電磁弁の小さな弁孔での絞り作用により第1と第2の両電磁弁間の連通路の水圧は第2電磁弁が開弁可能な水圧までは低下しない。結局、停電を生じた場合、停電回復後も機器への給水が中断されたままになる。そして、瞬間的な停電を生じてもユーザは気付かないため、これにより給水が中断されたままになると、ユーザに不信感を与えることになる。
【特許文献1】特開2000−139808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上の点に鑑み、停電を生じたときに停電回復後も給水が中断されたままになることを防止できるように上記先願のものを改良した給水弁装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水を使用する機器の給水路に設けられる給水弁装置であって、直列に接続された上流側の第1電磁弁と下流側の第2電磁弁と第2電磁弁に並列の第3電磁弁とを備え、第1電磁弁は、弁座に開設した主弁孔を開閉するダイヤフラムから成る主弁と、主弁の背面側に画成され、弁座の周囲に形成した流入室にオリフィス孔を介して連通する背圧室と、背圧室と主弁孔とを連通するパイロット弁孔を開閉するパイロット弁と、パイロット弁を開閉駆動するソレノイドとを備える常閉型のパイロット式電磁弁で構成され、第2電磁弁は、第1電磁弁の下流側に位置する弁孔を開閉する弁体と、弁体を開閉駆動するソレノイドとを備える常閉型の直動式電磁弁で構成され、第3電磁弁は、第2電磁弁の弁孔より小径の弁孔を開閉する弁体と、弁体を開閉駆動するソレノイドとを備える常閉型の直動式電磁弁で構成されるものにおいて、上記課題を解決するために、給水中の第2電磁弁の閉弁の有無を判別する判別手段を備え、第1乃至第3電磁弁を開閉制御する制御手段は、判別手段で第2電磁弁の閉弁有りと判別されたときに、第1電磁弁のソレノイドへの通電を一旦停止して、第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドに通した状態で第1電磁弁のソレノイドへの通電を再開する復帰制御を実行するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、給水中に停電で第2電磁弁が閉弁すると、判別手段がこれを判別する。そして、停電から回復して第1電磁弁が開弁しても、復帰制御による第1電磁弁のソレノイドへの通電停止で第1電磁弁が閉弁される。そのため、第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドへの通電で先ず第3電磁弁が開弁されて、第1と第2の両電磁弁間の連通路の水圧が第3電磁弁を介して圧抜きされ、第2電磁弁は水圧を受けずに開弁されることになる。そして、その後の第1電磁弁のソレノイドへの通電による第1電磁弁の開弁で機器への給水が再開される。かくして、停電を生じたときに停電回復後も給水が中断されたままになることを防止できる。
【0016】
尚、停電から回復したときに第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドに通電されるようになっている場合には、復帰制御により第1電磁弁のソレノイドへの通電を一定時間停止するだけで、第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドに通電した状態で第1電磁弁のソレノイドへの通電が再開されることになる。そのため、第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドへの通電制御は不要であるが、復帰制御により第1電磁弁のソレノイドへの通電を停止する際に第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドへの通電を一旦停止し、その後で第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドへの通電を再開するようにすることも可能である。
【0017】
ところで、水を使用する機器には、一般的に、機器への給水量を検出する水量検出手段が設けられている。ここで、給水中に第2電磁弁が一旦閉弁すると、復帰制御を行わない限り、第2電磁弁は開弁不能になって、機器への給水が中断されたままになる。従って、給水中の第2電磁弁の閉弁の有無を機器への給水量に基づいて間接的に判別できる。そのため、判別手段は、給水開始から所定時間内に水量検出手段の検出給水量が所定水量に達しないときに第2電磁弁の閉弁有りと判別するように構成して良い。
【0018】
また、給水中の第2電磁弁の閉弁の有無を給水路に水が流れているか否かで判別することもできる。従って、給水路の水流を検出する水流検出手段を設ける場合、判別手段は給水中に水流検出手段で水流が検出されなくなったときに第2電磁弁の閉弁有りと判別するように構成して良い。
【0019】
また、第2電磁弁は停電で閉弁する。従って、停電を検出する停電検出手段を設ける場合、判別手段は給水中に停電検出手段で停電が検出されたときに第2電磁弁の閉弁有りと判別するように構成して良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態の給水弁装置を具備する食器洗浄機を示している。この食器洗浄機は、外装ケース1と、外装ケース1内の洗浄槽2とを備えており、この洗浄槽2内に給水路3を介して水が供給される。洗浄槽2には、食器類Wを載置する食器カゴ2aと、食器カゴ2aに向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズル4と、ヒータ5とが設けられており、また、洗浄槽2の下側には、洗浄槽2の底部に残菜フィルタ6を介して接続される洗浄・排水ポンプ7が設けられている。そして、洗浄・排水ポンプ7を正転させることにより洗浄水を洗浄ノズル4を介して洗浄槽2内に循環させ、洗浄・排水ポンプ7を逆転させることにより洗浄槽2内の洗浄水を排水路8を介して排水するようにしている。排水路8には、逆流防止のための逆U字状の立上り部8aと、エア抜き部8bと、排水トラップ部8cと、逆止弁8dとが設けられている。また、外装ケース1内には、洗浄槽2内に乾燥用の空気を送風する乾燥ファン9が設けられている。
【0021】
食器洗浄機の運転スイッチをオンすると、先ず、洗浄槽2に所定量の水が給水され、この水に図外の洗剤供給手段から洗剤が混入されて洗浄水が生成される。そして、給水停止後、ヒータ5に通電すると共に洗浄・排水ポンプ7を正転させて、洗浄水を加熱しつつ洗浄ノズル4から噴射させ、所定時間の洗浄運転を行う。洗浄運転完了後は、洗浄・排水ポンプ7を逆転させて洗浄槽2内の洗浄水を排水し、次に、洗浄槽2に所定量の水を給水した後、洗浄・排水ポンプ7を正転させて洗浄ノズル4から水を噴射させ、所定時間のすすぎ運転を行う。すすぎ運転完了後は、洗浄・排水ポンプ7を逆転させて洗浄槽2内の水を排水し、次に、ヒータ5に通電すると共に乾燥ファン9を駆動させて、所定時間の乾燥運転を行う。
【0022】
ここで、給水路3には、洗浄運転前及びすすぎ運転前の洗浄槽2への給水を制御する給水弁装置10が設けられている。以下、図2を参照して、給水弁装置10について詳述する。尚、図2の上下は鉛直方向の上下に一致している。
【0023】
給水弁装置10は、給水路3の上流側部分3aに連なる流入口111と、給水路3の下流側部分3bに連なる流出口112とを有するバルブハウジング11を備えている。そして、バルブハウジング11に、上流側たる流入口111側の第1電磁弁12と下流側たる流出口112側の第2電磁弁13とが配置され、第1と第2の両電磁弁12,13がバルブハウジング11内の連通路113を介して直列に接続されている。尚、流入口111と流出口112は何れも下向きに開口している。
【0024】
第1電磁弁12は、バルブハウジング11に一体成形した弁座121と、弁座121に開設した、連通路113に連なる主弁孔122aを開閉するダイヤフラムから成る主弁122と、弁座121の周囲に主弁122に対向するように形成した、流入口111に連なる流入室123と、ダイヤフラムの押えを兼ねるカバー124によって主弁122の背面側に画成され、流入室123にオリフィス孔123aを介して連通する背圧室125と、背圧室125と主弁孔122aとを連通するパイロット弁孔126aを開閉するパイロット弁126と、パイロット弁126を開閉駆動するソレノイド127とから成る常閉型のパイロット式電磁弁で構成されている。ソレノイド127は、電磁コイル127aと、電磁コイル127aに内挿されるカバー124に一体の筒状ガイド127bに収納した可動鉄心127cと、可動鉄心127cを軸方向先方に付勢するばね127dとを備えており、可動鉄心127cの先端にパイロット弁126を取付けている。そして、常時はパイロット弁126がパイロット弁孔126aを閉塞する閉弁位置にばね127dにより付勢保持され、電磁コイル127aに通電したとき、可動鉄心127cが軸方向尾方に磁気吸引され、パイロット弁126がパイロット弁孔126aを開放する開弁位置に変位するようにしている。
【0025】
パイロット弁126を閉弁させると、流入室123からオリフィス孔123aを介して背圧室125に流入する水が背圧室125に封じ込められ、主弁122の背面に作用する背圧室125の水圧による押圧力が主弁122の前面に作用する流入室123の水圧による押圧力を上回り、主弁122が閉弁される。また、パイロット弁126を開弁させると、背圧室125内の水がパイロット弁孔126aを介して主弁孔122aに流出して背圧室125の水圧が低下し、主弁122の背面に作用する押圧力が主弁122の前面に作用する押圧力を下回って主弁122が開弁され、流入室123から主弁孔122aを介して連通路113に水が流れる。
【0026】
尚、本実施形態では、オリフィス孔123aとパイロット弁孔126aとを主弁122に形成しているが、バルブハウジング11にオリフィス孔123aとパイロット弁孔126aとを形成することも可能である。
【0027】
第2電磁弁13は、連通路113の下流端部の底面に形成した弁座131と、弁座131に開設した、流出口112に連なる弁孔132を開閉する弁体133と、弁体133を開閉駆動するソレノイド134とを備える常閉型の直動式電磁弁で構成されている。ソレノイド134は、電磁コイル134aと、電磁コイル134aに内挿されるバルブハウジング11に一体の筒状ガイド134bに収納した可動鉄心134cと、可動鉄心134cを軸方向先方(下方)に付勢するばね134dとを備えており、可動鉄心134cの先端(下端)に弁体133を取り付けている。そして、常時は弁体133が弁孔132を閉塞する閉弁位置にばね134dにより付勢保持され、電磁コイル134aに通電したとき、可動鉄心134cが軸方向尾方(上方)に磁気吸引され、弁体133が弁孔132を開放する開弁位置に変位して、連通路113から弁孔132を介して流出口112に水が流れる。
【0028】
また、バルブハウジング11には、第2電磁弁13に並列の第3電磁弁14が配置されている。即ち、バルブハウジング11に、連通路113と流出口112とを結ぶ第2電磁弁13に並列のバイパス路114を形成し、このバイパス路114に第3電磁弁14を介設している。第3電磁弁14は、バイパス路114に設けられた弁座141と、弁座141に開設した弁孔142を開閉する弁体143と、弁体143を開閉駆動するソレノイド144とを備える常閉型の直動式電磁弁で構成されている。ソレノイド144は、電磁コイル144aと、電磁コイル144aに内挿される筒状ガイド144bに収納した可動鉄心144cと、可動鉄心144cを軸方向先方に付勢するばね144dとを備えており、可動鉄心144cの先端に弁体143を取り付けている。そして、常時は弁体143が弁孔142を閉塞する閉弁位置にばね144dにより付勢保持され、電磁コイル144aに通電したとき、可動鉄心144cが軸方向尾方に磁気吸引され、弁体143が弁孔142を開放する開弁位置に変位して、連通路113からバイパス路114を介して流出口112に水が流れる。
【0029】
尚、第3電磁弁14の弁孔142は、第2電磁弁13の弁孔132より小径であり、且つ、第2電磁弁13の弁孔132より鉛直方向下方に設けられている。
【0030】
第1乃至第3電磁弁12,13,14は、食器洗浄機に設けられた制御手段たるコントローラ15により開閉制御される。コントローラ15には水量検出手段たる水位スイッチ16からの信号が入力される。水位スイッチ16は、図1に示す如く、洗浄槽2の底部に連通する連通槽16aに設けたフロートスイッチで構成されている。食器洗浄機への給水量が所定水量に達して、洗浄槽2内の水位が所定の規定水位に上昇したとき、水位スイッチ16がオンする。
【0031】
コントローラ15による制御の詳細は、図3に示す通りであり、先ず、S1のステップで給水開始指令が出されたか否かを判別する。そして、給水開始指令が出されたときに、S2のステップでコントローラ15に内蔵するタイマの計時動作を開始すると共に、S3のステップで給水開始制御を実行する。
【0032】
給水開始制御の詳細は図4に示す通りであり、先ず、S31のステップで第3電磁弁14のソレノイド144(電磁コイル144a)に通電して第3電磁弁14を開弁させる。次に、S32のステップで第3電磁弁14のソレノイド144への通電開始から所定の待ち時間(例えば、0.5秒)が経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S33のステップで第2電磁弁13のソレノイド134(電磁コイル134a)に通電して第2電磁弁13を開弁させる。次に、S34のステップで第2電磁弁13のソレノイド134への通電開始から所定の待ち時間(例えば、0.5秒)が経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S35のステップで第1電磁弁12のソレノイド127(電磁コイル127a)に通電して第1電磁弁12を開弁させる。次に、S36のステップで第1電磁弁12のソレノイド127への通電開始から所定の待ち時間(例えば、0.5秒)が経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S37のステップで第3電磁弁14のソレノイド144への通電を停止して第3電磁弁14を閉弁させる。
【0033】
以上の給水開始制御を実行すると、流入口111から流出口112に第1電磁弁12の主弁孔122aと連通路113と第2電磁弁13の弁孔132とを介して水が流れ、洗浄槽2への給水が開始される。
【0034】
ところで、第2電磁弁13の弁孔132は所要の流量で給水できるように大きく形成する必要があり、弁体133及び可動鉄心134cも大径になる。そして、可動鉄心134cの軸方向尾端面には筒状ガイド134b内を介して連通路113の水圧が作用する。そのため、連通路113の水圧が高い状態で第2電磁弁13を開弁させるには、ソレノイド134の励磁力をかなり大きくすることが必要になり、ソレノイド134が大型化して消費電力が増大する。
【0035】
ここで、第1電磁弁12が閉弁している状態で第2電磁弁13を開弁させれば、連通路113の水圧が低い状態で第2電磁弁13を開弁できると思われるが、実際には、給水停止中に家屋の水道配管で発生するウォータハンマーによる第1電磁弁12の流入室123の水圧変化で第1電磁弁12の主弁122が一時的に開弁して、連通路113の水圧が高くなってしまうことがある。そのため、このままでは、第2電磁弁13のソレノイド134の励磁力をかなり大きくしないと、第2電磁弁13の開弁不良を生ずる。
【0036】
これに対し、上記給水開始制御では、第1電磁弁12に先行して第3電磁弁14を開弁させるため、連通路113が第3電磁弁14を介して圧抜きされ、その後の第2電磁弁13のソレノイド134への通電により第2電磁弁13は水圧を受けずに開弁される。従って、第2電磁弁13のソレノイド134の励磁力が小さくても、第2電磁弁13の開弁不良は生じない。その結果、第2電磁弁13のソレノイド134を小型化して消費電力を大幅に低減できる。
【0037】
尚、本実施形態の給水開始制御では、第3電磁弁14のソレノイド144への通電開始後に第2電磁弁13のソレノイド134への通電を開始しているが、第3電磁弁14のソレノイド144への通電開始と同時に第2電磁弁13のソレノイド134への通電を開始しても良い。この場合、第3電磁弁14を介しての圧抜きで連通路113の水圧が低下した時点において第2電磁弁13が開弁する。
【0038】
ここで、第3電磁弁14は連通路113の水圧を受けた状態で開弁されるが、第3電磁弁14の弁孔142は圧抜き可能な範囲で可及的に小さくでき、そのため、弁体143及び可動鉄心144cも小径になり、ソレノイド144の励磁力が小さくても第3電磁弁14の開弁不良は生じない。従って、第3電磁弁14の付加による消費電力の増加は僅かになり、第2電磁弁13の消費電力の大幅な低減により、給水開始時の第1乃至第3電磁弁12,13,14のトータルの消費電力を低減できる。また、第1電磁弁12の開弁後に第3電磁弁14を閉弁させるため、給水中は第3電磁弁14のソレノイド144に通電せずに済み、第1乃至第3電磁弁12,13,14のトータルの消費電力が一層低減される。尚、第3電磁弁14は第1電磁弁12の開弁と同時に閉弁させても良い。
【0039】
給水開始制御の完了後は、図3に示す如く、S4のステップで水位スイッチ16がオンしたか否かを判別する。そして、水位スイッチ16がオンしたときに、S5のステップで給水停止制御を実行する。
【0040】
給水停止制御の詳細は図5に示す通りであり、先ず、S51のステップで第1電磁弁12のソレノイド127への通電を停止して第1電磁弁12を閉弁させる。次に、S52のステップで第1電磁弁12のソレノイド127への通電停止から所定の待ち時間(例えば、1秒)が経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S53のステップで第3電磁弁14のソレノイド144に通電して第3電磁弁14を開弁させる。次に、S54のステップで第3電磁弁14のソレノイド144への通電開始から所定の待ち時間(例えば、1秒)が経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S55のステップで第2電磁弁13のソレノイド134への通電を停止して第2電磁弁13を閉弁させる。次に、S56のステップで第2電磁弁13のソレノイド134への通電停止から所定の待ち時間時間(例えば、0.5秒)経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S57のステップで第3電磁弁14のソレノイド144への通電を停止して第3電磁弁14を閉弁させる。
【0041】
ここで、第1電磁弁12のソレノイド127への通電を停止すると、パイロット弁126が閉弁し、背圧室125の水圧が上昇して、主弁122の背面と前面とに作用する押圧力の差で主弁122が閉弁するが、給水圧が低いと、主弁122の背面と前面とに作用する押圧力の差が小さくなり、異物の噛み込み等により止水不良を生ずることがある。また、オリフィス孔123aの目詰まりで背圧室125の水圧上昇が妨げられて、止水不良を生ずることもある。然し、本実施形態では、第1電磁弁12での止水不良を生じても、第2電磁弁13の閉弁により給水を停止でき、洗浄槽2から水が溢れ出るといった漏水事故の発生を可及的に防止できる。
【0042】
また、第1電磁弁12の閉弁後に、第2電磁弁13を閉弁させると共に第3電磁弁14を一定期間開弁させているため、連通路113内の水を排水できる。従って、連通路113に残留する水の凍結でバルブハウジング11の破損を生ずることを防止できる。
【0043】
ところで、給水中に停電を生ずると、第1電磁弁12と第2電磁弁13とがそのソレノイド127,134への通電停止で閉弁する。この場合、第1電磁弁12の主弁122はパイロット弁126の閉弁後、背圧室125の水圧上昇を待って閉弁する。そのため、第2電磁弁13の閉弁後に第1電磁弁12の主弁122が閉弁されることになり、連通路113の水圧が高い状態に保持される。その結果、停電の回復で第2電磁弁13のソレノイド134に通電されても、第2電磁弁13は水圧の影響で閉弁されたままになる。従って、停電を生じた場合、停電回復後も食器洗浄機への給水が中断されたままになる。そして、落雷等に起因する瞬間的な停電を生じた場合、ユーザはこの停電には気付かないため、これにより給水が中断されたままになると、ユーザに不信感を与えることになる。
【0044】
そこで、本実施形態では、図3に示す如く、S4のステップで水位スイッチ16がオフと判別されたとき、S6のステップでタイマの計時時間TMが異常判別のために設定した所定時間YTM(例えば、15分)に達したか否かを判別している。そして、TM<YTMであればS4のステップに戻るが、TM≧YTMになったとき、即ち、水位スイッチ16がオフのまま所定時間YTMが経過したときは、給水中に第2電磁弁13が閉弁したと判断し、S7のステップに進む。S7のステップではTM≧YTMになったのが1回目であるか否かを判別し、1回目であればS8のステップでタイマをリセットして計時動作を開始すると共に、S9のステップで復帰制御を実行して、S4のステップに戻る。
【0045】
復帰制御の詳細は図6に示す通りであり、先ず、S91のステップで第1電磁弁12のソレノイド127への通電を停止して第1電磁弁12を閉弁させると共に、S92のステップで第3電磁弁14のソレノイド144に通電して第3電磁弁14を開弁させる。尚、第2電磁弁13のソレノイドは停電回復時から通電状態に維持されている。次に、S93のステップで第3電磁弁14のソレノイド144への通電開始から所定の待ち時間(例えば、0.5秒)経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S94のステップで第1電磁弁12のソレノイド127への通電を再開して第1電磁弁12を開弁させる。次に、S95のステップで第1電磁弁12のソレノイド127への通電開始から所定の待ち時間(例えば、0.5秒)経過したか否かを判別し、待ち時間が経過したときに、S96のステップで第3電磁弁14のソレノイド144への通電を停止して第3電磁弁14を閉弁させる。
【0046】
この復帰制御によれば、第1電磁弁12の閉弁後の第3電磁弁14の開弁で連通路113の水圧が低下して、第2電磁弁13が開弁される。そして、第2電磁弁13の開弁後に第1電磁弁12が開弁されることになり、食器洗浄機への給水が再開される。かくして、停電を生じた場合に、停電回復後も食器洗浄機への給水が中断されたままになることを防止できる。
【0047】
上記の如く給水が再開されると、今度は所定時間YTM以内に水位スイッチ16がオンし、S5のステップでの給水停止制御が行われる。但し、ソレノイドの断線等の異常で給水が再開されない場合は、再び水位スイッチ16がオフのまま所定時間YTMが経過する。この場合には、S6のステップからS7のステップを経てS10のステップに進み、第1電磁弁12と第2電磁弁13のソレノイド127,134への通電を停止すると共に異常の発生を報知する異常停止処理が行われる。
【0048】
尚、上記実施形態では、給水中、第3電磁弁14のソレノイド144への通電を停止しているため、復帰制御に、第1電磁弁12のソレノイド127への通電停止後に第3電磁弁14のソレノイド144に通電するS92のステップを設けているが、第3電磁弁14のソレノイド144に給水中も通電する場合には、S92のステップは不要である。
【0049】
また、復帰制御において、先ず、上記給水停止制御を行ってから上記給水開始制御を行うようにしても良い。この場合、給水停止制御で第1電磁弁12のソレノイド127への通電が停止され、給水開始制御で第2電磁弁13と第3電磁弁14のソレノイド134,144への通電後に第1電磁弁12のソレノイド127への通電が再開されることになる。
【0050】
また、上記実施形態では、給水中の第2電磁弁13の閉弁の有無を判別する判別手段としてS6のステップを設け、給水開始から所定時間YTM内に水位スイッチ16がオンしなかったときに第2電磁弁13の閉弁有りと判別して、復帰制御を行うようにしている。これによれば、給水中の第2電磁弁13の閉弁で給水不能になった場合だけでなく、給水圧の低下で所定時間YTM内に水位スイッチ16がオンしなかったときにも、再度給水を行うことができる。
【0051】
ところで、給水中に第2電磁弁13が閉弁すると、給水路3に水が流れなくなる。そこで、給水路3の水流を検出する水流検出手段、例えば、図1に仮想線で示す如く給水路3に水が流れているときにオンする水流スイッチ17を設け、コントローラ15により図7に示す制御を行うようにしても良い。この制御では、先ず、S1のステップで給水開始指令が出されたか否かを判別する。そして、給水開始指令が出されたときに、S2のステップで上記実施形態と同様の給水開始制御を実行する。
【0052】
次に、S3のステップで水流スイッチ17がオンしているか否かを判別し、オンしているときは、S4のステップで水位スイッチ16がオンしたか否かを判別する。そして、水位スイッチ16がオンしたときは、S5のステップで上記実施形態と同様の給水停止制御を実行する。
【0053】
水流スイッチ17がオフになったときは、第2電磁弁13が閉弁したと判断し、S3のステップからS6のステップに進んで、上記実施形態と同様の復帰制御を実行する。これにより、給水中に第2電磁弁13が閉弁しても、復帰制御で第2電磁弁13を開弁させて給水を再開できる。
【0054】
また、給水中に第2電磁弁13が閉弁するのは停電時である。そこで、停電を検出する停電検出手段を設け、図7のS3のステップにおいて、停電検出手段により停電が検出されたか否かを判別するようにしても良い。この場合、S3のステップで停電検出手段により停電が検出されたと判別されたとき、S6のステップで復帰制御を実行する。
【0055】
また、第2電磁弁13の閉弁を直接検出するリッミットスイッチ等の検出手段を設け、給水中に第2電磁弁13の閉弁が検出されたときに復帰制御を実行することも可能である。
【0056】
以上、食器洗浄機の給水路に設ける給水弁装置10に本発明を適用した実施形態について説明したが、食器洗浄機に限らず水を使用する機器の給水路に設ける給水弁装置として本発明は広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態の給水弁装置を具備する食器洗浄機の構造を示す説明図。
【図2】実施形態の給水弁装置の断面図。
【図3】実施形態の給水弁装置の制御内容を示すフロー図。
【図4】図3のS3のステップで実行する給水開始制御の詳細を示すフロー図。
【図5】図3のS5のステップで実行する給水停止制御の詳細を示すフロー図。
【図6】図3のS9のステップで実行する復帰制御の詳細を示すフロー図。
【図7】実施形態の給水弁装置の制御内容の他の例を示すフロー図。
【符号の説明】
【0058】
3…給水路、10…給水弁装置、12…第1電磁弁、121…弁座、122…主弁、122a…主弁孔、123…流入室、123a…オリフィス孔、125…背圧室、126…パイロット弁、126a…パイロット弁孔、127…ソレノイド、13…第2電磁弁、132…弁孔、133…弁体、134…ソレノイド、14…第3電磁弁、142…弁孔、143…弁体、144…ソレノイド、15…コントローラ(制御手段)、16…水位スイッチ(水量検出手段)、17…水流スイッチ(水流検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を使用する機器の給水路に設けられる給水弁装置であって、
直列に接続された上流側の第1電磁弁と下流側の第2電磁弁と第2電磁弁に並列の第3電磁弁とを備え、
第1電磁弁は、弁座に開設した主弁孔を開閉するダイヤフラムから成る主弁と、主弁の背面側に画成され、弁座の周囲に形成した流入室にオリフィス孔を介して連通する背圧室と、背圧室と主弁孔とを連通するパイロット弁孔を開閉するパイロット弁と、パイロット弁を開閉駆動するソレノイドとを備える常閉型のパイロット式電磁弁で構成され、
第2電磁弁は、第1電磁弁の下流側に位置する弁孔を開閉する弁体と、弁体を開閉駆動するソレノイドとを備える常閉型の直動式電磁弁で構成され、
第3電磁弁は、第2電磁弁の弁孔より小径の弁孔を開閉する弁体と、弁体を開閉駆動するソレノイドとを備える常閉型の直動式電磁弁で構成されるものにおいて、
給水中の第2電磁弁の閉弁の有無を判別する判別手段を備え、
第1乃至第3電磁弁を開閉制御する制御手段は、判別手段で第2電磁弁の閉弁有りと判別されたときに、第1電磁弁のソレノイドへの通電を一旦停止して、第2電磁弁と第3電磁弁のソレノイドに通電した状態で第1電磁弁のソレノイドへの通電を再開する復帰制御を実行するように構成されていることを特徴とする給水弁装置。
【請求項2】
前記機器への給水量を検出する水量検出手段を備え、前記判別手段は、給水開始から所定時間内に水量検出手段の検出給水量が所定水量に達しないときに前記第2電磁弁の閉弁有りと判別するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の給水弁装置。
【請求項3】
前記給水路の水流を検出する水流検出手段を備え、前記判別手段は給水中に水流検出手段で水流が検出されなくなったときに前記第2電磁弁の閉弁有りと判別するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の給水弁装置。
【請求項4】
停電を検出する停電検出手段を備え、前記判別手段は給水中に停電検出手段で停電が検出されたときに前記第2電磁弁の閉弁有りと判別するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の給水弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−144873(P2008−144873A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333267(P2006−333267)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】