説明

給湯機用水熱交換器

【課題】熱交換媒体と水との間の熱交換性能を高めて、水の均一加熱効果を向上すると共に、青水の発生やマウンドレス型孔食の発生を効果的に抑制することが出来る給湯機用水熱交換器提供すること。
【解決手段】高温の熱交換媒体が流通せしめられる第一の内管4を、その外周面の一部において、水が流通せしめられる、内面に錫めっきが施されている銅若しくは銅合金にて形成れた第二の内管6の外周面の一部に対して当接せしめて、熱的接触させると共に、外管8の内周面と、第一の内管4の外周面のうちの第二の内管6の外周面と接触していない部分とを当接せしめて、熱的接触させ、更に、第二の内管6の外周面のうちの第一の内管4の外周面と接触していない部分を、外管8の内周面のうち第一の内管4の外周面と接触していない部分に対して当接せしめて、熱的接触させることによって、給湯機用水熱交換器2を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯機用水熱交換器に係り、特に、炭酸ガスを主成分とする冷媒等の高温の熱交換媒体と水との間の熱交換を行なうための給湯機用水熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高温の熱交換媒体(冷媒)と水との間の熱交換を行なう給湯機用の水熱交換器として、かかる熱交換媒体を流通させる流路(以下、冷媒流路と略称する)と、熱交換されるべき水を流通させる流路(以下、水流路と略称する)とを、二つの伝熱管を組み合わせて構成し、それら冷媒と水との間で熱交換を行うようにした熱交換器が、各種用いられて来ている。また、そのような水熱交換器において用いられる熱交換媒体(冷媒)としては、従来のフロン系冷媒に代えて、オゾン層の保護や地球環境の温暖化防止等の観点から、温暖化係数の低い自然冷媒が注目されて来ており、近年においては、この自然冷媒を利用した水熱交換器の開発が、行われている。そして、そのような自然冷媒の中でも、炭酸ガスを用いた場合には、高温高圧のガス条件が得られるところから、特に注目を受けているのである。
【0003】
ところで、そのような炭酸ガスを主成分とする冷媒と水との間で熱交換を行う方式の給湯機用水熱交換器としては、従来より、以下に例示するように、内部に冷媒を流通させる伝熱管と、内部に水を流通させる伝熱管とを組み合わせて、一つの熱交換器を構成したものが、各種提案されている。
【0004】
例えば、特開2006−170571号公報(特許文献1)においては、スパイラル状に撚られ又は捻られた二本の内管内に、それぞれ冷媒を流通せしめる一方、それら二本の内管を収容した外管の管内には、水が流通せしめられるようにした構造の二重多管式熱交換器が、明らかにされている。そして、そこでは、高温側である冷媒流路管(内管)が低温側となる水流路管(外管)の中に完全に封じ込められた形態とされているところから、冷媒の熱が外気へと放出されてしまうことが、低く抑えられるという利点を有しているのであるが、水側への伝熱面積を増加させることが難しいという欠点を内在している。このため、特許文献1では、冷媒流路管をスパイラル状に捻ることにより流路長を長くして、水側への伝熱面積を増加させているのであるが、それでも、伝熱面積の増加の効果は充分ではなく、熱交換器の小型化が難しくなるものであった。
【0005】
また、この特許文献1に提案の二重多管式熱交換器にあっては、冷媒流路管の損傷等により、冷媒が、その外側を流通する水中へ漏洩する危険性があり、特に、給湯機用水熱交換器に適用する場合において、飲料用にも使用される水の中へ冷媒が混入することを避ける必要があるところから、特許文献1においては、その図3に示されるような漏洩検知管が、冷媒流路管(内管)として採用されているのであるが、そのために、構造が複雑となると共に、コストアップの要因ともなっているのである。
【0006】
一方、特開2002−228370号公報(特許文献2)や特開2006−90697号公報(特許文献3)においては、水流路管の外側に冷媒流路管を配置してなる構造の、冷媒流路管巻き付けタイプの熱交換器が明らかにされているが、その中で、特許文献2に提案されている構造のものにあっては、水流路管と冷媒流路管との接触面積が充分ではないために、冷媒から水への伝熱性能が低く、充分な熱交換性能を発揮することが困難であるという問題を内在している。このため、そのような形態の熱交換器の伝熱性能を向上させるべく、特許文献3においては、水流路管の外周に、複数条の山谷底部を連続して螺旋状に設け、その山谷底部に沿って、冷媒流路管を巻き付けるようにしているのであるが、これとても、接触面積の増加は充分ではなく、加えて、冷媒からの熱が外気に放出される欠点もあり、熱交換性能面において良好な熱交換器であるとは言い難いものであった。
【0007】
さらに、特開2003−14383号公報(特許文献4)は、水流路管に冷媒流路管を押し込むように配置してなる構造の熱交換器を開示しており、そこでは、水流路管の外面を窪ませ、その窪みに冷媒流路管を嵌め込んでなる構成とされているところから、上記特許文献2の如きタイプに比べて、冷媒流路管と水流路管の接触面積が増大され、伝熱性能の向上が図られ得ることとなったのであるが、それでも、充分であるとは言い難いものであった。なお、特許文献4の図5に示されている形態は、冷媒流路管が上下に二本配置されるものであるが、接触面積を増大させるには、そのような冷媒流路管の本数を、3本、4本、或いはそれ以上と増やすことも考えられるものの、その場合において、冷媒流路管から冷媒の熱が外気に放出される欠点は逃れられず、熱交換性能面において、良好な熱交換性能を有しているとは言うことが出来ない。
【0008】
ここで、図6には、かかる特許文献4に開示のタイプにおいて構成された熱交換器30の断面図が示されており、そこでは、3本の冷媒流路管32が、それぞれ、水流路管34の外面に設けられた三つの窪み36内に密着配置されてなる構造において、構成されている。また、そのような熱交換器30における1本の冷媒流路管32からの熱の流れが、図7に示されている。そこにおいて、冷媒流路管32内を流れる冷媒からの熱は、冷媒流路管32と水流路管34との接触部38を介して、その内側の領域40を流れる水を加熱し、その熱が、更に他の領域42,44を流れる水にも伝達されることとなる一方、冷媒からの熱は、外気46へも放散されることとなるのである。そして、このような熱伝達において、接触部38に近い領域40の水の温度は高くなる一方、接触部38の両側に位置して、水流路管34の内周面に近い領域42の水は、外気46の影響を受けて、充分に加熱され得ず、低い温度の水となるのであり、このために、水流路(34)内での水温度の差が大きく、均熱状態とはなり難いのである。
【0009】
また、水道水等の水に含まれるカルシウム等の成分は、高温(およそ85℃以上)に加熱された領域において析出し易く、このために、上記した内側領域40においては、そのような成分の析出によるスケール形成が惹起され易い問題を内在している。そして、熱交換器30を長期間に亘って使用することにより、その形成されたスケールが、流路壁に付着し、そしてその付着量(厚さ)が経時的に増大することによって、流路断面積を減少させ、最終的には流路を閉塞させてしまうという問題を内在しているのであり、更にこのような問題は、特許文献4のタイプに限られることなく、特許文献2、3のようなタイプにおいても起こり得る問題となっているのである。
【0010】
ところで、これらの給湯機用水熱交換器においては、その水流路管を構成する材質として、熱交換率が高い、加工性の良好な銅や銅合金が用いられることが多い。そして、そのような水流路管、即ち水が流通する部分を、銅若しくは銅合金にて構成した場合にあっては、水のpHが酸性側やアルカリ性側に変化すると、その管材質である銅若しくは銅合金が、2価の銅イオンとして水に溶け出し易くなる。また、その溶け出した銅イオンが、石鹸や炭酸ガス等と反応して、青水が発生してしまうといった問題も惹起され易くなるのである。
【0011】
加えて、それら管内を流通する水中には、種々の成分が含有されており、そのような含有成分によって惹起される問題、例えば遊離炭酸の多い地下水を使用した場合には、I’型孔食の発生が懸念され、また、前述の如く管材質から溶出した2価の銅イオンにより、水中の溶解性SiO2 が析出して、スケールを形成し、マウンドレス型孔食が生じる危険性もあるものであった。また、それらの孔食は、伝熱管に孔を開けるだけでなく、表面の腐食生成物で荒れた部分に、水垢等のスケールが付き易くなり、熱交換性能を悪くするという問題も内在している。
【0012】
このため、上述の如きスケールの形成を効果的に抑制するには、水流路(34)内での均熱を図ることが重要であるところから、熱交換されるべき水が出来るだけ均一に加熱され得るようにすることによって、熱交換性能やコスト面での有利さを充分に発揮すると共に、スケール形成を効果的に抑制し、青水発生やマウンドレス型孔食の発生をも効果的に抑制することが出来る機能を兼ね備えるようにした給湯機用水熱交換器の実現が、望まれているのである。
【0013】
【特許文献1】特開2006−170571号公報
【特許文献2】特開2002−228370号公報
【特許文献3】特開2006−90697号公報
【特許文献4】特開2003−14383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、高温の熱交換媒体から熱交換されるべき水への熱交換性能を高めて、かかる熱交換されるべき水の均一加熱効果を向上せしめると共に、青水の発生やマウンドレス型孔食の発生を効果的に抑制することが出来る給湯機用水熱交換器を、比較的単純で且つコンパクトな構造において、製造コストも安価に、実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、管内に高温の熱交換媒体が流通せしめられる第一の内管と、該高温の熱交換媒体との間で熱交換されるべき水が管内に流通せしめられる第二の内管と、それら第一及び第二の内管を管内に収容、保持する外管とから構成される給湯機用水熱交換器にして、該第一の内管が、その外周面の一部において、前記第二の内管の外周面の一部に対して当接せしめられて熱的接触させられていると共に、更に、該第二の内管の外周面と接触していない部分において、前記外管の内周面に当接せしめられて熱的接触させられている一方、該第二の内管が、銅若しくは銅合金にて形成されて、その内面に錫めっきが施されていると共に、その外周面のうち前記第一の内管の外周面と接触していない部分において、前記外管の内周面の前記第一の内管の外周面と接触していない部分に対して当接せしめられて、熱的接触させられていることを特徴とする給湯機用水熱交換器を、その要旨とするものである。
【0016】
なお、このような本発明に従う給湯機用水熱交換器の望ましい態様の一つによれば、前記第二の内管の外周面に、管軸方向に延びる溝部が、凹陥して形成され、該溝部内に前記第一の内管が密接、収容されている一方、それら第一及び第二の内管に密接するように、前記外管が外嵌めされている構成が、有利に採用されることとなる。
【0017】
また、本発明の望ましい態様の他の一つによれば、前記第一の内管と前記第二の内管との当接、前記第一の内管と前記外管との当接、及び前記第二の内管と前記外管との当接が、それぞれ機械的な圧着によって実現されて、熱的接触が形成されている。
【0018】
さらに、本発明に従う給湯機用水熱交換器にあっては、望ましくは、前記高温の熱交換媒体が、炭酸ガスを主体とする冷媒とされて構成されることとなる。
【0019】
更にまた、本発明に従う給湯機用水熱交換器の別の望ましい態様の一つによれば、前記第二の内管の外周面に形成される溝部の入口角部が湾曲部とされると共に、該湾曲部の内面が、管軸方向に対して垂直な断面において、1.0mm以上の曲率半径を有する湾曲面として構成されることとなる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明に従う給湯機用水熱交換器にあっては、第一の内管と第二の内管の熱的接触部位を介して、第一の内管内を流通する高温の熱交換媒体からの熱が、第二の内管内を流通する水に伝達されることとなると共に、第一の内管が、外管に対して熱的に接触せしめられていることにより、高温の熱交換媒体からの熱が、外管へも伝熱、拡散し、かかる熱が外気へと放出されてしまうことが、効果的に抑制され得るようになっているのである。加えて、外管と第二の内管との熱的接触部位を介しての伝熱作用も、有効に発揮され得ることとなることによって、かかる第二の内管内を流通する水に、1本の第一の内管から、その周りに位置する第二の内管の複数部位において、伝熱されることとなり、そして、これによって、第二の内管内における水の、より一層有効な均熱化が図られ得ることとなったのである。
【0021】
また、このように、第二の内管内を流れる水の均熱化の向上によって、かかる水の局所加熱領域の形成が効果的に抑制されることとなるのであり、これによって、水中に含まれるカルシウム等の成分の析出が有利に抑制され、その結果、スケールの形成が、効果的に抑制され得るのである。
【0022】
さらに、本発明によれば、水流路である第二の内管が、銅又は銅合金からなる材質にて構成されていると共に、その内面に錫めっきが施されているところから、管材質である銅又は銅合金が2価の銅イオンとして水中に溶け出してしまうことが効果的に抑制され得るのであって、その結果、熱交換器の使用時における青水の発生の抑制と、熱交換器の有効な耐食性とが、有利に実現されることとなる。
【0023】
加えて、本発明に従う給湯機用水熱交換器にあっては、第一の内管と第二の内管とそれらを収容する外管とが、相互に接触せる形態において組み付けられていることによって、目的とする熱交換器が形成されており、そこでは、高温の熱交換媒体が流通せしめられる第一の内管が、外管内に完全に封じ込まれた形態となるところから、第一の内管に損傷等が発生した場合においても、熱交換媒体は、外管と第一及び第二の内管との間の間隙に漏洩することとなるために、その間隙部が漏洩検知管の機能を果たすこととなり、従来の如き特別な構造の漏洩検知管を用いる必要がないために、比較的単純な構造において、しかも、コンパクトな構造において、給湯機用水熱交換器を構成することが出来、それ故製造コストも安価と為し得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0025】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う給湯機用の水熱交換器の一実施形態が示されている。そこにおいて、図1は、かかる水熱交換器の長手方向(管軸方向)における内管及び外管の配設形態を示す一端側断面斜視説明図であり、また図2は、図1に示される水熱交換器の横断面である、管軸に垂直な方向の断面を拡大して示す説明図である。そして、それらの図から明らかなように、水熱交換器2は、管内に高温の熱交換媒体が流通せしめられる、細径の第一の内管4の3本と、かかる高温の熱交換媒体との間で熱交換されるべき水が管内に流通せしめられる、太径の第二の内管6と、それら第一及び二の内管4,6を管内に収容、保持する、太径の外管8とが、相互に密接されて、構成されている。
【0026】
より具体的には、第一の内管4は、一般に、外径:3〜7mm、肉厚:0.4〜1.2mm程度の細径の、断面が円形の管体にて構成され、ここでは、その3本が、周方向に約120°の位相差をもって配置せしめられている。また、第二の内管6は、銅若しくは銅合金にて形成され、その内面に錫めっきが施された、外管8の内面に接する程度の大きさの太径の管体にて構成されていると共に、その外周面には、前記第一の内管4を収容し得る深さを有する半円形乃至は円弧状断面の凹溝10が、管軸に平行な方向に延びるように設けられており、更にその凹溝10は、周方向に約120°の位相差をもって3条配設されている。そして、この第二の内管6の3条の凹溝10内に、その円弧状の内面に密接するようにして、第一の内管4が、それぞれ収容、保持せしめられてなる構造とされているのである。
【0027】
また、外管8は、一般に、外径:12.7〜25.4mm、肉厚:0.4〜0.8mm程度の太径の、断面が円形の管体にて構成されている。そして、この外管8に内接するように、第一及び第二の内管4,6が収容されているのである。即ち、第二の内管6とその凹溝10内に収容位置せしめた第一の内管4とが、第二の内管6の最大径に位置する外周面部分において、外管8の内周面に接触せしめられるようになっている。従って、そこでは、第一の内管4が、その外周面の一部において、第二の内管6の外周面の一部に対して当接せしめられて、熱的接触させられていると共に、更に、第二の内管6の外周面と接触していない部分において、外管8の内周面に当接せしめられて、熱的に接触せしめられている一方、第二の内管6が、その外周面のうち、第一の内管4の外周面と接触していない部分において、外管8の内周面の第一の内管4の外周面と接触していない部分に対して当接せしめられて、熱的に接触させられてなる構造となっている。
【0028】
従って、このような構造の水熱交換器2にあっては、その熱の流れが、図3に示されている如く、第一の内管4内を流れる高温の熱交換媒体からの熱は、第一の内管4と第二の内管6(具体的には、凹溝10の内面)との接触部12を介して、その内側の領域14を流れる水を加熱し、更にその熱が、他の領域16,18を流れる水に伝達されるようになると同時に、高温の熱交換媒体からの熱は、第一の内管4と外管8との接触部20を介して、外管8に伝熱され、更に外管8を拡散する熱が、外管8と第二の内管6との接触部22を介して、凹溝10の周方向両側に位置する領域16を流れる水に伝達されるようになるのである。その結果、第二の内管6の凹溝10の周方向両側に位置する領域16を流れる水の温度が、効果的に高められ得ることとなり、以て、第二の内管6内を流通する水の温度の均一性が、効果的に向上せしめられ得ることとなるのである。
【0029】
そして、このように、第二の内管6内を流通せしめられる水の温度の均一性が向上せしめられて、そのような流体の局所加熱領域の形成が抑制されることによって、第二の内管6内を流れる水の加熱温度が効果的に高められ得、以て、そのような水を加熱するための第一の内管4内を流れる熱交換媒体の温度を低下せしめ得るところから、領域14における水温の局所的な上昇を有利に回避し得て、かかる流体中のカルシウム等の成分析出が効果的に抑制され得ることとなるのであり、その結果、スケールの形成が有利に抑制され得ることにより、水熱交換器2を長期間に亘って使用しても、そのようなスケールの流路壁に対する付着により、流路断面積が減少したり、甚だしい場合にあっては、流路を閉塞させるという問題の発生も、何等顧慮する必要もなくなったのである。
【0030】
しかも、かかる水熱交換器2にあっては、第二の内管6の凹溝10の開口部位に、第一の内管4と第二の内管6と外管8とによって囲まれた空間26が管軸方向に形成されることとなるところから、高温の熱交換媒体が流通せしめられる第一の内管4に損傷等が発生した場合において、高温の熱交換媒体は、そのような空間26内に漏洩し、管軸方向に導かれることとなるのであり、このため、そのような空間26内における熱交換媒体の存在の有無を検知することによって、漏洩検知管としての機能も発揮させることが出来るところから、従来の如き複雑な構造の漏洩検知管を用いる必要が全くなく、そのために、比較的単純な構造において、且つコンパクトな構造として、給湯機用水熱交換器を構成することが出来るのであり、以て、製造コストも安価なものと為し得るのである。
【0031】
なお、かかる水熱交換器2において、第一の内管4や外管8としては、従来から熱交換器に用いられている各種金属材質の管体が利用され得るものであるが、特に、外管8を熱伝導率の高い銅又は銅合金からなる材質にて形成することにより、更に、水熱交換器2の熱交換性能を向上させることが出来る特徴があり、また第一の内管4も、外管8と同様に、銅又は銅合金からなる材質にて形成することが望ましく、そうすることによって、熱交換性能の更なる向上が期待され得ることに加えて、水熱交換器2をスクラップ処理する場合においても、その取扱いが容易となる利点がある。
【0032】
また、このような構造の水熱交換器2を製作する場合において、第一の内管4と第二の内管6との接触部12や第一の内管4と外管8との接触部20、更には、第二の内管6と外管8との接触部22は、何れも、ロウ付け等によって接合されていても差し支えないが、本発明では、それら3本の管体を、合わせ抽伸加工等によって、相互に機械的に圧着せしめる手法が、好適に採用されるのである。因みに、ロウ付けによる場合にあっては、ロウ付け不良による接触面積の不足を招き易く、また性能のバラツキを生じ易く、更にロウ付け不良等による歩留り低下等の問題も懸念されるのであるが、第一の内管4を第二の内管6の凹溝10内に組み付けた状態において、外管8内に収容して、抽伸加工する、合わせ抽伸加工等によって、それら3本の管体(4,6,8)を相互に機械的圧着させる場合には、そのような問題はなく、比較的簡単な加工操作にて、目的とする水熱交換器2を有利に製作することが可能となる。
【0033】
なお、図1や図2に示される水熱交換器2の、水流路である第二の内管6の内面に錫めっきを施す方法としては、従来より知られている、置換めっき法若しくは化学めっき方による錫めっき銅管及びその製造方法が適宜に採用され、例えば、特開平4−45282号公報において明らかにされている、給水・給湯器用の銅管の端部開口部から管内部にめっき液を流通させて、銅管内面に所定厚さのSn(錫)めっき皮膜を形成する、給水・給湯器用内面Snめっき銅管の製造方を用いることが出来る。このような、置換めっき法若しくは化学めっき法によって銅管の内面に錫めっき処理を施す方法によれば、簡単に、且つ安価に、銅管内面に錫めっき皮膜を形成させることが可能となるのである。
【0034】
ところで、給湯機用水熱交換器(2)を構成する際においては、一般に、冷媒流路管(4)と水流路管(6)とを組み付けて、それらを一体化した後、曲げ加工を行なって、最終的な熱交換器形状に仕上げられることとなる。そして、そのような給湯機用水熱交換器(2)において、水流路管(6)の内面に錫めっき処理を施す場合には、例えば、前もって管内面に錫めっき処理が施された伝熱管を水流路管として用いて、それと冷媒流路管とを組み付け、曲げ加工を行なう方法を採用すると、特に、曲げ加工時に錫めっきの表面に小さな亀裂が生じたり、曲げ加工に使用する芯金によって、錫めっき皮膜が損傷する恐れを内在している。また、そのような錫めっき皮膜の微小亀裂部や欠損部においては、耐食性が低下する恐れがある。
【0035】
このため、冷媒流路管と水流路管とを組み付けて、一体化したものに、曲げ加工等を行なって、最終的な熱交換器形状に加工した後に、水流路管内へ錫めっき液を流通させることによって、水流路管内面に錫めっき皮膜の形成を行なう、置換めっき法或いは化学めっき法が、水流路管内へ健全な錫めっき皮膜を被覆するための方法として有利に採用され、そして、そのような手法を採用することによって、水流路管内面の錫めっき皮膜が損傷してしまう恐れを、効果的に解消することが可能となるのである。
【0036】
しかしながら、このように伝熱管を最終的な熱交換器形状に加工した後に、水流路管内へ錫めっき液を流通させて、置換めっき法或いは化学めっき法によって、水流路管の内面に対して錫めっき皮膜の形成処理を行なう場合にあっては、錫めっき液を流通させる水流路管の形状がどのような形状であっても、その流路全面に、健全な錫めっき皮膜が形成されるというものではなく、その流路形状に一定の条件が必要となる。
【0037】
そこで、本発明に従う構成とされた水熱交換器2にあっては、望ましくは、その内部を熱交換されるべき水が流通する第二の内管6の、外周面に形成される凹溝10の入口角部24を湾曲した形状とすると共に、その内面が、管軸方向に対して垂直な断面において、1.0mm以上の曲率半径(R)を有する湾曲面を与えるように構成することが、有利に採用されることとなる。このような形状とすることによって、置換めっき法或いは化学めっき法により錫めっき皮膜の形成処理を行なう場合にも、水流路である第二の内管6の内面の全面に亘って、健全な錫めっき皮膜を形成することが可能となるのである。即ち、かかる曲率半径(R)が1.0mm未満となる場合、錫めっき液が、このような入口角部24に充分に流れ込まない恐れがあり、健全な錫めっき皮膜にて被覆することが困難となる恐れを生じるのである。
【0038】
なお、本発明に従う給湯機用水熱交換器は、例示の実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものでは決してなく、本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【0039】
例えば、第一の内管4は、図1に示される如く、管軸に平行な方向に配置せしめられる他、図4に示される如く、管軸方向においてらせん状に、適数本の第一の内管4を配置せしめるようにすることも可能であり、その場合において、そのようならせん状配置となるように、第二の内管6の外周面に設けられる凹溝10も、管軸方向にらせん状に形成せしめられることとなる。
【0040】
また、第一の内管4の配設本数にあっても、目的に応じて、適宜の本数が選定され、例えば、4本の第一の内管4を配設する場合にあっては、図5に示される如く、周方向に約90°の位相差をもって配設してなる構造が、有利に採用されることとなる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の代表的な実施例の一つを示し、本発明の特徴を更に明確にすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
【0042】
先ず、図1〜図3に示される構造の、本発明に従う水熱交換器(2)を得るべく、外管(8)として、外径:17.2mm、内径:15.8mm、肉厚:0.7mmの、断面が単純な円形の太径の平滑管を準備した。また、第一の内管(4)としては、外径:5.0mm、内径:4mm、肉厚:0.5mmの、断面が単純な円形の細径の平滑管の3本を準備した。更に、第二の内管(6)としては、外径:約22.2mm、肉厚:0.7mmの、断面が単純な円形の太径の平滑管を準備した。なお、それら三種の平滑管の材質は、何れも、りん脱酸銅(JIS−H−330−C1220)とした。
【0043】
そして、目的とする水熱交換器(2)を得るべく、第二の内管(6)を与える太径の平滑管に対して、予め最終形状に近い形に異形加工を施し、その形成された円弧状の凹溝(10)内に、第一の内管(4)を与える細径の平滑管を挿入して組み付け、更にその組付け管を、外管(8)を与える太径の平滑管内に挿入した後、常法に従って、抽伸縮径加工を施すことにより、目的とする水熱交換器(2)を製作した。
【0044】
また、比較のために、外管(8)の存在しない、図6〜図7に示される如き形態の水熱交換器(30)を、上記した第一及び第二の内管(4,6)を与える二種類の平滑管を用いて、作製した。
【0045】
かくして得られた二種の水熱交換器(2,30)を用いて、その第二の内管(6,34)内を流通する水の均熱性を評価した。なお、流量等の条件は、以下の通りとした。
熱交換されるべき流体:水
流量 :1L/min、2L/min、
出口温度:65℃
熱交換媒体(冷媒) :炭酸ガス冷媒
流量 :管1本当り2L/min、総流量:6L/min
入口温度:80℃
入口圧力:10MPa
【0046】
そして、それら二つの水熱交換器(2,30)の均熱性を評価するために、熱交換器の水出口(冷媒入口)付近の流路内面に、熱電対を貼り付けて、表面温度を測定した。その結果、本発明に従う水熱交換器(2)においては、加熱された水の最大温度差が1℃以内となり、効果的に均熱化し得ることが確認された。これに対して、外管(8)の設けられていない、従来の水熱交換器(30)にあっては、最大温度差が2℃となり、その均熱化が充分でないことが、明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に従う給湯機用水熱交換器の一例を示す一端側断面斜視説明図である。
【図2】図1に示される給湯機用水熱交換器の横断面を拡大して示す説明図である。
【図3】熱の流れを示す図2の一部拡大部分図である。
【図4】本発明に従う給湯機用水熱交換器の他の一例を示す図1に対応する説明図である。
【図5】本発明に従う給湯機用水熱交換器の更に他の例を示す図2に対応する横断面拡大説明図である。
【図6】従来の熱交換器の一例を示す横断面説明図である。
【図7】図6に示される熱交換器の熱の流れを示す部分拡大説明図である。
【符号の説明】
【0048】
2 水熱交換器
4 第一の内管
6 第二の内管
8 外管
10 凹溝
12,20,22 接触部
14,16,18 領域
24 入口角部
26 空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に高温の熱交換媒体が流通せしめられる第一の内管と、該高温の熱交換媒体との間で熱交換されるべき水が管内に流通せしめられる第二の内管と、それら第一及び第二の内管を管内に収容、保持する外管とから構成される給湯機用水熱交換器にして、
該第一の内管が、その外周面の一部において、前記第二の内管の外周面の一部に対して当接せしめられて熱的接触させられていると共に、更に、該第二の内管の外周面と接触していない部分において、前記外管の内周面に当接せしめられて熱的接触させられている一方、該第二の内管が、銅若しくは銅合金にて形成されて、その内面に錫めっきが施されていると共に、その外周面のうち前記第一の内管の外周面と接触していない部分において、前記外管の内周面の前記第一の内管の外周面と接触していない部分に対して当接せしめられて、熱的接触させられていることを特徴とする給湯機用水熱交換器。
【請求項2】
前記第二の内管の外周面に、管軸方向に延びる溝部が、凹陥して形成されて、該溝部内に前記第一の内管が密接、収容されている一方、それら第一及び第二の内管に密接するように、前記外管が外嵌めされていることを特徴とする請求項1に記載の給湯機用水熱交換器。
【請求項3】
前記第一の内管と前記第二の内管との当接、前記第一の内管と前記外管との当接、及び前記第二の内管と前記外管との当接が、それぞれ、機械的な圧着によって実現されて、熱的接触が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給湯機用水熱交換器。
【請求項4】
前記高温の熱交換媒体が、炭酸ガスを主体とする冷媒であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の給湯機用水熱交換器。
【請求項5】
前記第二の内管の外周面に形成される溝部の入口角部が湾曲部とされていると共に、該湾曲部の内面が、管軸方向に対して垂直な断面において、1.0mm以上の曲率半径を有する湾曲面とされていることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか一つに記載の給湯機用水熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−180452(P2009−180452A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20703(P2008−20703)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】