説明

給紙装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】シート状記録媒体Pの積載残量を簡易な構造によって正確に検知することを可能とする。
【解決手段】媒体積載板(中板)122上のシート状記録媒体Pに接触することにより給紙動作時におけるシート状記録媒体Pの積層高さの変動に従って上下動する媒体接触部材127の高さ位置を、上位置と下位置との二位置に区別して接触位置検知手段127b,201aにより検知し、その接触位置検知手段127b,201aから出力される検知信号を用いて媒体積載板122上のシート状記録媒体Pの積載残量を媒体積載残量演算手段により算出する構成を採用したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体積載板上に載置されたシート状記録媒体の積載残量を検知するように構成された給紙装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ(例えばレーザプリンタ、LEDプリンタ等)、及びファクシミリ、並びにそれらの複合機(マルチファンクションプリンタ等)のような各種画像形成装置においては、給紙カセット等を有する給紙装置から送り出されたカット紙などの記録媒体に対して、例えば電子写真方式を利用した画像形成プロセスによりトナー像を転写させて定着を行うようにしている。
【0003】
このとき、上述した給紙装置の給紙カセットは、例えば図13に示されているような構造になされている。すなわち、箱状の給紙ハウジングをなすように形成されたカセットトレイ1の内部には、平板状部材からなる媒体積載板(中板)2が配置されており、その媒体積載板2の上面側には、カット紙などからなる適宜のシート状記録媒体Pが積層状をなすように載置される。上記媒体積載板2は、後方側部分(図示左方側部分)に配置された回動軸2aを中心として前端側部分(図示右端部分)が上下方向に往復揺動されるように上記カセットトレイ1に回動自在に取り付けられているとともに、その媒体積載板2の前端部分(図示右端部分)の直下に、例えば圧縮コイルバネからなる積載板付勢バネ3が圧接配置されている。そして、その積載板付勢バネ3の上方側への弾性付勢力によって、上記媒体積載板2上に積層状に載置されたシート状記録媒体Pの前端側部分が、カセットトレイ1の前端部分(図示右端部分)に取り付けられた分離爪4に対して下方側から押し付けられた状態に維持されるようになっている。
【0004】
一方、上述した媒体積載板(中板)2の前端部分(図示右端部分)の上方位置には、当該媒体積載板2上に積層状に載置されたシート状記録媒体Pを給紙させるための半月状の給紙ローラ5が配置されている。この半月状の給紙ローラ5は、横断面略円弧をなす外周面を有しており、紙幅方向に延在する駆動軸5aにより間欠的に回転駆動されながら、前記媒体積載板2上のシート状記録媒体Pの積層最上面に当接されることによって、当該シート状記録媒体Pの給紙動作が上記分離爪4の捌き作用によって一枚ずつ分離されながら行われるようになっている。
【0005】
このようなシート状記録媒体Pの給紙動作が行われるにあたっては、上述したように半月状の給紙ローラ5がシート状記録媒体Pに当接された際に媒体積載板(中板)2がシート状記録媒体Pとともに下方に一旦押し下げられて下降状態となる。また、給紙動作後に半月状の給紙ローラ5がシート状記録媒体Pから離反された際に、媒体積載板2がシート状記録媒体Pとともに再度押し上げられるようになっている。
【0006】
さらに、上述した媒体積載板(中板)2の回動軸2aには、用紙残量検知手段を構成するエンコーダ(図示省略)が接続されている。その用紙残量検知手段としてのエンコーダからは、上記媒体積載板2の回動角度に関する検知信号が出力され、その検知信号に基づいて上記媒体積載板2の上昇量を把握することにより、当該媒体積載板2上に積載されているシート状記録媒体Pの積載残量を検知することが従来から行われている。
【0007】
しかしながら、このような従来におけるシート状記録媒体の積載残量検知機構では、エンコーダによる監視動作を常時行わねばならないため、それ専用の電気回路やメモリ等を必要とする。そのため、積載残量検知機構の部品点数が増大して構成が複雑化する傾向にあり、その結果として装置全体が高価なものにならざるを得なくなっている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−226143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであって、シート状記録媒体の積載残量を簡易な構造によって正確に検知することができるようにした給紙装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明においては、横断面略円弧状の外周面を有する給紙ローラと、積層状に載置されたシート状記録媒体の積層最上面を前記給紙ローラの外周面方向に押し付けるにように上方付勢された媒体積載板とを備え、前記媒体積載板上のシート状記録媒体の積層最上面に前記給紙ローラの外周面が回転駆動されながら当接されることにより前記媒体積載板が前記シート状記録媒体とともに押し下げられて下降するようにして給紙動作が行われ、給紙動作後には前記シート状記録媒体が前記媒体積載板とともに再度押し上げられて上昇するように構成された給紙装置において、前記媒体積載板上に載置されたシート状記録媒体の積層最上面に接触するように配置され、前記給紙動作中における前記シート状記録媒体の積層高さの変動に従って上下動するように配置された媒体接触部材と、その媒体接触部材が上下動する際における当該媒体接触部材の位置を上位置と下位置との二位置に区別して検知するように配置された接触位置検知手段と、その接触位置検知手段から出力される前記媒体接触部材の検知信号を用いて、前記媒体積載板上における前記シート状記録媒体の積載残量を算出する機能を有する媒体残量演算手段とを備えている。
【0011】
このような構成を有する給紙装置によれば、上下動する簡易な構成の接触位置検知手段が上位置と下位置との二位置に区別して接触位置検知手段により検知されることによって、媒体積載板上に配置されたシート状記録媒体の積載残量が容易かつ良好に検知されるようになっている。
【0012】
このとき、本発明にかかる媒体積載残量演算手段は、前記接触位置検知手段から出力される検知信号の出力時間又は出力回数を計測する構成とすることが可能であり、そのような構成によって媒体積載板上におけるシート状記録媒体の積載残量が確実に検知されることとなる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように本発明にかかる給紙装置及びそれを備えた画像形成装置は、媒体積載板上のシート状記録媒体に接触することにより給紙動作時におけるシート状記録媒体の積層高さの変動に従って上下動する媒体接触部材の高さ位置を、上位置と下位置との二位置に区別して接触位置検知手段により検知し、その接触位置検知手段から出力される検知信号を用いて媒体積載板上のシート状記録媒体の積載残量を媒体積載残量演算手段により算出する構成を採用したことにより、媒体積載板上に配置されたシート状記録媒体の積載残量を容易かつ良好に検知するように構成したものであるから、シート状記録媒体の積載残量を簡易な構造によって正確に検知することができ、給紙装置及び画像形成装置の低廉化を図りつつ装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、給紙装置及びそれを備えた画像形成装置としてのプリンタに対して本発明を適用した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
まず、図1に示されているように、装置本体11の最下部には、カット紙などのシート状記録媒体を収容して当該シート状記録媒体の給紙動作を行う給紙装置を構成しているユニバーサルカセット装置12及び手差し給紙装置13が配置されているとともに、それらの給紙装置12,13の上方側には、当該給紙装置12,13から給紙されるシート状記録媒体上に画像を転写して形成する画像形成部14が配置されている。さらにその画像形成部14の上方位置には、当該画像形成部14によりシート状記録媒体上に形成されたトナー像の定着を行わせる定着部15が配置されているとともに、その定着部15の上方位置に、該定着部15でトナー像を定着されたシート状記録媒体の排出部16が配置されている。
【0016】
このような画像形成に関与する各部12〜16は、図示を省略した動作制御部からの指令に従って概略次のような画像形成プロセスを実行する。すなわち、まず上述した画像形成部14を構成している感光ドラム14aの表面感光層が、帯電ローラ14bによって一様に帯電されると、外部コンピュータなどを通して入力された画像情報に基づいて変調されたレーザ光がレーザ光学ユニット14cから射出されて上記感光ドラム14a上に照射され、上記感光ドラム14aの表面感光層に画像情報に応じた静電潜像が形成される。次いで、現像装置14dに設けられた現像スリーブによって、上記感光ドラム14aの表面感光層が帯電されている極性と同極性のトナーが感光ドラム14a側に供給され、上述したようにレーザー光が照射された部分が現像(反転現像)されることによって可視像としてのトナー像が形成される。その可視像としてのトナー像は、感光ドラム14aと転写ローラ14eとの対向部位に形成された転写位置に送り込まれ、それにタイミングを合わせて上述した給紙装置としてのユニバーサルカセット装置12及び手差し給紙装置13のいずれかからシート状記録媒体が供給され、当該シート状記録媒体上にトナー像が転写される。そのトナー像を転写されたシート状記録媒体は上述した定着部15に送られて定着が行われる。
【0017】
上記定着部15は、ヒータを内蔵した定着フィルムユニット15aと、その定着フィルムユニット15aに圧接された加圧ローラ15bとを備えており、それらの定着フィルムユニット15aと加圧ローラ15bとが圧接された定着ニップ部内に、トナー像を転写されたシート状記録媒体が送り込まれてトナー像に対する加熱・加圧処理によって定着が行われる。トナー像を定着されたシート状記録媒体は、上述した排出部16の搬送路に沿って斜め上方に案内されていき、その出口部分に配置された排紙ローラ16aと排紙コロ16bとの挟持搬送力により、装置本体11の最上位置に配置された排紙トレイ16cに向かって定着後のシート状記録媒体が排出されて積層状に積載されるようになっている。
【0018】
一方、上述した転写終了後における感光ドラム14aの外周表面には、残留トナーなどの残留物が付着されるが、それらの残留物は、画像形成部14を構成しているクリーニング部14fで除去され、その後に、再び帯電工程へ進んで同様な画像形成工程が繰り返される。以上の工程が、シート状記録媒体Pに対する画像形成工程の概略である。
【0019】
ここで、上述した給紙装置としてのユニバーサルカセット装置12は、箱状の給紙ハウジングを構成するカセットトレイ121を有しており、そのカセットトレイ121の内部に、媒体積載板(中板)122が配置されている。この媒体積載板122は、例えば図2に示されているように、当該媒体積載板122の上面部分に、カット紙などの適宜のシート状記録媒体Pが積層状に載置される構成になされている。その媒体積載板122上に積層状に載置されたシート状記録媒体Pの後端部分(図示右端部分)は、上記媒体積載板122の同じく後端縁部分に移動可能に立設された後端規制板123に当接されて保持されるようになっている。
【0020】
また、上記媒体積載板(中板)122の後方側部分(図示右方側部分)には、図示を省略した回動支持板が立設されており、その回動支持板に設けられた回動軸を中心として上記媒体積載板122の全体が回動可能に支持されており、それによって上記媒体積載板122の前端側部分(図示左端部分)が上下方向に往復揺動可能となるように構成されている。さらに、その媒体積載板122における前端側部分(図示左端部分)の直下には、圧縮コイルバネ等からなる給紙用付勢バネ124が圧接するように配置されており、その給紙用付勢バネ124の弾性反発力によって上記媒体積載板122における前端側部分(図示左端部分)が押し上げられるように上方付勢される構成になされている。
【0021】
さらに、上述したカセットトレイ121の前端側(図示右端側)上縁部分には、紙幅方向(図1の紙面垂直方向)の両側部分に分離爪125がそれぞれ配置されている。これらの各分離爪125には、上述した媒体積載板(中板)122上に載置されたシート状記録媒体P(図4参照)の積層最上面における前端縁部分が下方側から当接される配置関係になされている。
【0022】
一方、その分離爪125の上方位置には、前記媒体積載板122上に積層状に載置されたシート状記録媒体Pの給紙動作を行わせるための給紙ローラ126が配置されている。この給紙ローラ126は、横断面略半月形状を有する円筒形状の一部からなる回転体により構成されており、紙幅方向(図1の紙面垂直方向)に延在する駆動軸126aの軸方向途中位置に固定されている。そして、その駆動軸126aを介して上記給紙ローラ126が回転駆動され、例えば図2に示されているように当該給紙ローラ126が下方側に張り出したときに、その給紙ローラ126における横断面略円弧状の外周面が、前記媒体積載板122上に積層状に載置されたシート状記録媒体Pの積層最上面に当接される。それによって、上記シート状記録媒体Pが前方側(図示左方側)に向かって移動するように付勢されると同時に、上述した分離爪125の捌き作用が付与されることによってシート状記録媒体Pが一枚ずつ分離されながら給紙動作が行われる。
【0023】
このようにシート状記録媒体Pの給紙動作時には、上記給紙ローラ126における横断面略円弧状の外周面が、媒体積載板(中板)122上に載置されたシート状記録媒体Pの積層最上面に対して間欠的に当接されることとなる。そして、そのように給紙ローラ126の外周面がシート状記録媒体Pに当接された際には、当該給紙ローラ126の外周面が下方側に張り出すことから、媒体積載板122がシート状記録媒体Pとともに押し下げられて下降され、そのような媒体積載板122の下降状態で最上位置のシート状記録媒体Pの給紙動作が行われる。また、その給紙動作後には、上記給紙ローラ126の外周面は上方側に抜けることから、媒体積載板122は、上記給紙用付勢バネ124の上方付勢力によってシート状記録媒体Pとともに再度押し上げられて上昇される。
【0024】
一方、図3にも示されているように、上記給紙ローラ126の後方側(図示右方側)近傍には、上述した媒体積載板122に対して上方側から対面するようにして、細長棒状部材からなる媒体接触部材としての検知フラグ127が配置されている。この検知フラグ127の上端部分は、前記装置本体11に対して上下動可能に取り付けられたフラグ支持板127aの一端面(図示左端面)に固着されており、そのフラグ支持板127aから略鉛直下方に向かって垂下するように配置されている。
【0025】
上述した検知フラグ127は、前記フラグ支持板127aを含む自重により下降方向に付勢される構成になされており、当該検知フラグ127の下端部は、上述した媒体積載板(中板)122上におけるシート状記録媒体Pの積層最上面に自重で接触される配置関係になされている。従って、上述した給紙動作時に媒体積載板122がシート状記録媒体Pの積層高さの変動とともに上下動すると、そのシート状記録媒体Pの積層高さの変動に伴って上記検知フラグ127及びフラグ支持板127aも同様に上下動される構成になされている。
【0026】
このとき、上述した媒体積載板(中板)122には、前記検知フラグ127に対応する位置に逃げ穴122aが貫通形成されており、例えば図3に示されているように媒体積載板122上にシート状記録媒体Pが存在していない場合には、上述した検知フラグ127の下端部分が、媒体積載板122の逃げ穴122a内を通過して下方に向かって貫通した状態になされるように構成されている。
【0027】
また、このような媒体接触部材としての検知フラグ127が取り付けられたフラグ支持板127aには、接触位置検知手段としてのフォトインタラプタ201が付設されている。この接触位置検知手段としてのフォトインタラプタ201は、上述したようにシート状記録媒体の積層高さの変動に従って検知フラグ127とともにフラグ支持板127aが上下動する際に、当該フラグ支持板127aの後端部分(図示右端部分)を近接して通過させる配置関係になされており、そのフラグ支持板127aの通過部位に検知光出力部201aが設けられている。そして、その検知光出力部201aから出力される遮断又は非遮断の検知信号に基づいて、上記媒体接触部材としての検知フラグ127の高さ位置が上位置又は下位置の二位置として検出されるようになっている。
【0028】
すなわち、上述した検知フラグ127とともに上下動するフラグ支持板127aが、例えば図4に示されているように上方に押し上げられることにより前記フォトインタラプタ(接触位置検知手段)201の検知光出力部201aを覆うように近接配置された場合には、上記フォトインタラプタ201からの出力は停止されて「Lo検知信号」が検出されることとなる。一方、上記検知フラグ127とともに上下動するフラグ支持板127aが、例えば図3に示されているような下方位置に下降することによって上記フォトインタラプタ201の検知光出力部201aから外れた場合には、上記フォトインタラプタ201から「Hi検知信号」が出力される構成になされている。
【0029】
このように、接触位置検知手段として設けられたフォトインタラプタ201から出力される検知信号は、上述した媒体接触部材としての検知フラグ127の高さ位置を、上位置と下位置との二位置に区別して検知したものとなっている。そして、そのフォトインタラプタ201から出力される上下二位置に関する検知信号「Lo検知信号」又は「Hi検知信号」は、図示を省略した媒体残量演算手段に印加される。
【0030】
媒体残量演算手段は、図示を省略した装置本体11に設けられた制御部(図示省略)に例えばプログラムとして格納されたものであって、上述した検知フラグ127に関する高さ位置に関する検知信号「Lo検知信号」又は「Hi検知信号」を用いて、前記媒体接触部材としての検知フラグ127の高さ位置が基準位置より高いか低いかの上下二位置を区別するように判別するとともに、その判別結果に基づいて、上述した媒体積載板(中板)122上におけるシート状記録媒体Pの積載残量を算出する機能を有している。
【0031】
この媒体残量演算手段におけるシート状記録媒体Pの積載残量の算出機能は、前記給紙動作時における媒体積載板(中板)122の下降量の変化を利用したものである。すなわち、まず上記媒体積載板122は、例えば図2に示されているように当該媒体積載板122上にシート状記録媒体Pが満載された最大積載状態となったときに最も下降して水平状態に近くなる。これに対して、例えば図4に示されているように上記媒体積載板122上のシート状記録媒体Pが1枚のみの最小積載状態となったときに最も上昇して大きく傾斜した状態となる。つまり、この媒体積載板122の傾斜角度は、当該媒体積載板122上のシート状記録媒体Pの積載残量に伴って増減することとなる。
【0032】
従って、その媒体積載板(中板)122上に載置されたシート状記録媒体Pが給紙ローラ126の外周面に接触される角度も、当該媒体積載板122上におけるシート状記録媒体Pの積載残量に伴って増減する。すなわち、シート状記録媒体Pの積載残量が多いことによって媒体積載板(中板)122が下降状態になっているときには、例えば図2に示されているように給紙ローラ126の外周面に対するシート状記録媒体Pの積層最上面のなす角度は小さくなる。これに対して、シート状記録媒体Pの積載残量が減少することによって媒体積載板122が上昇状態になったときには、例えば図4に示されているように給紙ローラ126の外周面に対するシート状記録媒体Pの積層最上面のなす角度は大きくなる。
【0033】
一方、給紙動作中にあるシート状記録媒体Pが上述した給紙ローラ126の外周面に接触することによって、媒体積載板(中板)122がシート状記録媒体Pとともに下降される量は、給紙ローラ126の外周面に対してシート状記録媒体Pの積層最上面が接触する角度に対応して変化する。より具体的には、例えば図2に示されているように給紙ローラ126の外周面に対するシート状記録媒体Pのなす角度が小さい場合には、媒体積載板122がシート状記録媒体Pとともに下降される量は大きくなる。これに対して、例えば図4に示されているように給紙ローラ126の外周面に対するシート状記録媒体Pのなす角度が大きい場合には、媒体積載板122がシート状記録媒体Pとともに下降される量は小さくなる。
【0034】
すなわち、媒体積載板(中板)122上におけるシート状記録媒体Pの積載残量が多い場合、つまり媒体積載板122が比較的下降した状態になっている場合には、当該媒体積載板122が水平に近い状態であることから、給紙ローラ126の回転駆動によって媒体積載板122の押し下げられる量が大きくなる(例えば10mm)。これに対して、シート状記録媒体Pの積載残量が少ない場合、つまり媒体積載板(中板)122が比較的上昇した状態にある場合には、当該媒体積載板122が傾斜状態になることから、給紙ローラ126の回転駆動によって媒体積載板122の押し下げられる量が小さくなる(例えば4mm)。
【0035】
上述した媒体残量演算手段における積載残量算出機能は、このような給紙動作時における媒体積載板(中板)122の押し下げ下降量が、シート状記録媒体Pの積載残量の大小に略反比例して変化することを利用したものである。この点を具体的に説明すると、まず図2に示されているように媒体積載板(中板)122上におけるシート状記録媒体Pの積載残量が最大で満載状態にある場合には、給紙ローラ126の回転駆動によって媒体積載板122が押し下げられる下降量は最も大きくなることから、給紙動作中における検知フラグ(媒体接触部材)127の下降量も最も大きくなる(例えば10mm)。
【0036】
その結果、前述した接触位置検知手段としてのフォトインタラプタ201から出力される検知信号は、例えば図5のように、適宜のタイミング(a)で給紙開始信号Sが発せられた後に、上述した検知フラグ127の上下二位置のうちの下位置を表す「Hi検知信号」の発生時間Tが最長に拡大された状態となる。
【0037】
これに対して、図4に示されているように媒体積載板(中板)122上におけるシート状記録媒体Pの積載残量が1枚の最小積載状態になっている場合には、給紙ローラ126の回転駆動によって媒体積載板(中板)122が押し下げられる下降量が最も小さくなることから、給紙動作中における検知フラグ(媒体接触部材)127の下降量も最小となる(例えば4mm)。その結果、前記フォトインタラプタ201から出力される検知信号は、例えば図6に示されているようになり、適宜のタイミング(a)で給紙開始信号Sが発せられた後も、上述した検知フラグ127の上下二位置のうちの上位置を表す「Lo検知信号」に維持されて、下位置を表す「Hi検知信号」が出力されることはない。
【0038】
また、媒体積載板(中板)122上におけるシート状記録媒体Pの積載残量が、図2の最大状態と図4の最小状態との中間にある「中間積載状態」となっている場合には、給紙ローラ126の回転駆動によって媒体積載板(中板)122が押し下げられる下降量も中間値となり、給紙動作中における検知フラグ(媒体接触部材)127の下降量も中間値となる(例えば250枚の積載残量においては6mm)。その結果、例えば図7に示されているように、適宜のタイミング(a)で給紙開始信号Sが発せられた後に、上述した検知フラグ127の上下二位置のうちの下位置を表す「Hi検知信号」の発生時間T’(検知信号B)が、上述した最長の発生時間T(検知信号A)よりもやや縮小された状態となる。
【0039】
なお、図8及び図9に示されているように、各積層状態において給紙ローラ126が上方の位置にある場合には、媒体積載板(中板)122が押し上げられた上昇位置に維持される。そのため、検知フラグ(媒体接触部材)127も上昇して上位置に保持されることとなり、前記フォトインタラプタ201からは、図10に示されているように停止されて「Lo検知信号」が出力される。
【0040】
以上のことから本実施形態における媒体残量演算手段は、接触位置検知手段としてのフォトインタラプタ201から出力される「Hi検知信号」の出力時間を計測するように構成されており、その媒体残量演算手段において計測された「Hi検知信号」の出力時間に基づいて、前記媒体積載板(中板)122上に載置されたシート状記録媒体Pの積載残量を演算する機能を有している。
【0041】
例えば、図3に示されているように媒体積載板(中板)122上にシート状記録媒体Pが無積載状態となっている場合には、上述した検知フラグ(媒体接触部材)127は、給紙動作の有無にかかわらず常時最下降状態に維持されるため、上述したフォトインタラプタ(接触位置検知手段)201からは、例えば図11に示されているように常時「Hi検知信号」が出力されることとなる。そして、このような「Hi検知信号」が維持される場合には「紙無し」が判別される。
【0042】
これに対して、図2に示されているように、媒体積載板(中板)122上にシート状記録媒体Pが満載状態になっている場合には、上述したように給紙動作時における媒体積載板122の下降量が最大になることから、前述した検知フラグ(媒体接触部材)127の下降量も最大となる(例えは10mm)。その結果、例えば図5に示されているように、給紙動作の開始指令信号Sを受けた後にフォトインタラプタ(接触位置検知手段)201から出力される「Hi検知信号」が最大の発生時間Tとなる。そして、この給紙動作の開始指令信号Sの発生後に得られた「Hi検知信号」が最大の発生時間Tとなっている場合には「最大積載状態(紙満載状態)」が判別される。
【0043】
一方、上述したような紙満載状態からの紙使用が進んで、例えば図4に示されているように、媒体積載板(中板)122上にシート状記録媒体Pが1枚しかない残っていない最小の積層状態になった場合には、上述したように給紙動作時における媒体積載板122の下降量が最小となり、検知フラグ(媒体接触部材)127の下降量も最小となる(例えは4mm)。そのため、例えば図6に示されているように、給紙動作の開始指令信号Sを受けた後であっても、前述したフォトインタラプタ(接触位置検知手段)201からの出力は常時「Lo検知信号」に維持される。そして、このような「Lo検知信号」が維持される場合には「最小積載状態(紙不足状態)」が判別される。
【0044】
また、例えば図7に示されているように、フォトインタラプタ(接触位置検知手段)201から出力される「Hi検知信号」の出力発生時間Tが、上述した「最大積載状態(紙満載状態)」の場合に出力される最大の出力発生時間Tよりも小さい場合には、「中間積載状態」と判別されることとなる。
【0045】
一方、上述したような媒体残量演算手段により算出された媒体積載板(中板)122上のシート状記録媒体Pの積載残量は、前記装置本体11の例えば操作部に配置された適宜の表示手段において表示されるように構成されている。
【0046】
このような構成を有する本実施形態にかかる給紙装置によれば、自重で上下動する簡易な構成の検知フラグ(媒体接触部材)127が上位置と下位置との二位置に区別してフォトインタラプタ(接触位置検知手段)201により検知されることによって、媒体積載板(中板)122上に積載されたシート状記録媒体Pの積載残量が容易かつ良好に検知されるようになっている。
【0047】
このとき、特に本実施形態においては、媒体残量演算手段において、前記フォトインタラプタ(接触位置検知手段)201から出力される検知信号の出力時間Tを計測する構成を採用していることから、媒体積載板上におけるシート状記録媒体の積載残量が確実に検知されるようになっている。
【0048】
一方、図12に示されている実施形態では、媒体残量演算手段において、前記フォトインタラプタ(接触位置検知手段)201から出力される「Hi検知信号」の出力回数を計測する構成が採用されている。より具体的には、給紙ローラ126の回転駆動を開始させる給紙開始信号Sが適宜のタイミング(a)で発せられてから一定時間を経過した後のタイミング(d)において、5msec間隔で85msecまでサンプリングが実行されている。そして、そのサンプリング期間内において上記フォトインタラプタ201から出力される検知信号が「Hi検知信号」であった場合にはカウントアップを行うようにしている。
【0049】
例えば、媒体積載板(中板)122上のシート状記録媒体Pが数十枚の積載状態であった場合に得られた検知信号Aに対しては、2〜15までの14回のカウントが行われ、媒体積載板122上におけるシート状記録媒体Pが「中間積載状態」となっている場合に得られた検知信号Bに対しては、2〜8までの7回のカウントが行われる。そして、このようなカウンタ値の相違から媒体積載板(中板)122上におけるシート状記録媒体Pの積載残量が検知されるようになっている。このような実施形態においても、上述した実施形態と同様な作用・効果が得られる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでもない。
【0051】
例えば、上述した各実施形態は、プリンタの給紙装置に対して本発明を適用したものであるが、複写機等の他の給紙装置及びそれを備えた画像形成装置に対しても本発明は同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上述べたように本発明にかかる給紙装置及びそれを備えた画像形成装置は、プリンタや複写機などの多種多様な給紙装置及びそれを備えた画像形成装置に対して広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を適用する画像形成装置の一例としてのプリンタの全体構造を表した縦断面説明図である。
【図2】図1に示されたプリンタに用いられている本発明にかかる給紙装置においてシート状記録媒体を満載状態とした場合における給紙動作を拡大して表した部分縦断面説明図である。
【図3】図1に示されたプリンタに用いられている本発明にかかる給紙装置においてシート状記録媒体を無積載状態とした場合における給紙動作を拡大して表した部分縦断面説明図である。
【図4】図1に示されたプリンタに用いられている本発明にかかる給紙装置においてシート状記録媒体の最小積載状態とした場合における給紙動作を拡大して表した部分縦断面説明図である。
【図5】図2に表されたシート状記録媒体の満載状態に対応する検知信号の一例を表した線図である。
【図6】図4に表されたシート状記録媒体の最小積載状態に対応する検知信号の一例を表した線図である。
【図7】図2及び図4に表された各シート状記録媒体の積載状態の中間積載状態に対応する検知信号の一例を表した線図である。
【図8】シート状記録媒体の満載状態における給紙動作直後の状態を拡大して表した部分縦断面説明図である。
【図9】シート状記録媒体の最小積載状態における給紙動作直後の状態を拡大して表した部分縦断面説明図である。
【図10】シート状記録媒体に対する給紙動作直後の状態に対応する検知信号の一例を表した線図である。
【図11】シート状記録媒体を無積載状態に対応する検知信号の一例を表した線図である。
【図12】本発明の他の実施形態における検知信号に対する他の計測例を表した線図である。
【図13】一般の給紙装置の構造を表した側面説明図である。
【符号の説明】
【0054】
11 装置本体
12 ユニバーサルカセット装置
13 手差し給紙装置
14 画像形成部
14a 感光ドラム
14b 帯電ローラ
14c レーザ光学ユニット
14d 現像装置
14e 転写ローラ
14f クリーニング部
15 定着部
15a 定着フィルムユニット
15b 加圧ローラ
16 排出部
16a 排紙ローラ
16b 排紙コロ
16c 排紙トレイ
P シート状記録媒体
121 カセットトレイ
122 媒体積載板(中板)
122a 逃げ穴
123 後端規制板
124 給紙用付勢バネ
125 分離爪
126 給紙ローラ
126a 駆動軸
127 検知フラグ(媒体接触部材)
127a フラグ支持板
201 フォトインタラプタ(接触位置検知手段)
201a 検知光出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面略円弧状の外周面を有する給紙ローラと、積層状に載置されたシート状記録媒体の積層最上面を前記給紙ローラの外周面方向に押し付けるにように上方付勢された媒体積載板と、を備え、
前記媒体積載板上のシート状記録媒体の積層最上面に前記給紙ローラの外周面が回転駆動されながら当接されることにより、前記媒体積載板が前記シート状記録媒体とともに押し下げられて下降するようにして給紙動作が行われ、給紙動作後には前記シート状記録媒体が前記媒体積載板とともに再度押し上げられて上昇するように構成された給紙装置において、
前記媒体積載板上に載置されたシート状記録媒体の積層最上面に接触するように配置され、前記給紙動作中における前記シート状記録媒体の積層高さの変動に従って上下動するように配置された媒体接触部材と、
その媒体接触部材が上下動する際における当該媒体接触部材の位置を上位置と下位置との二位置に区別して検知するように配置された接触位置検知手段と、
その接触位置検知手段から出力される前記媒体接触部材の検知信号を用いて、前記媒体積載板上における前記シート状記録媒体の積載残量を算出する機能を有する媒体残量演算手段と、
を備えたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記媒体残量演算手段は、前記接触位置検知手段から出力される検知信号の出力時間を計測する機能を備えていることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記媒体残量演算手段は、前記接触位置検知手段から出力される検知信号の出力回数を計測する機能を備えていることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載された給紙装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記媒体残量演算手段により算出された前記積載板上のシート状記録媒体の積載残量の表示手段が設けられていることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−273701(P2008−273701A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119962(P2007−119962)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】