説明

統合チューナ

【課題】内部マイコンを介して複数の周波数の受信制御を行う統合チューナにおいて、外部振動子が正常に動作しなくなったとしても、受信を継続することができる統合チューナを提供する。
【解決手段】統合チューナ14は、受信IC41の受信機能を設定するTPMSマイコン42を備える。TPMSマイコン42は、外部から制御信号が入力すると、外部に設けられた外部振動子43の発振信号を基に、シリアル制御にて受信IC41の受信機能を切り換える。統合チューナ14は、TPMSマイコン42の内部に設けられた内部振動子48と、外部振動子43の動作を判定する動作判定部44と、外部振動子43が動作しなくなった場合に、外部振動子43から内部振動子48に切り換えて受信IC41を動作させる振動子切換部45と、受信IC41で内部振動子48に基づく受信機能の設定が完了すると、TPMSマイコン42の動作を停止する動作停止部47とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の通信に用いられる統合チューナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される装置として、電子キーシステムやタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が知られている。なお、電子キーシステムは、車両のユーザが携帯する電子キーと車両との無線通信によってドアロックの施解錠やエンジンの始動等を行うシステムである。一方、タイヤ空気圧監視システムは、走行時に車両のタイヤバルブからタイヤの空気圧や温度を無線通信によって取得して、運転者にタイヤの異常を報知するシステムである。
【0003】
電子キーシステムには、車両から送信されたリクエストを電子キーが受信すると、これに応答する形で電子キーがIDコードを車両に自動返信して、ID照合を実行させる。電子キーシステムは、車室外でID照合が成立するとドアロックの施解錠が許可され、車室内でID照合が成立するとエンジンの始動が許可される。
【0004】
また、タイヤ空気圧監視システムは、タイヤバルブが発信した空気圧と温度とを含む無線信号を受信可能な受信機と、受信した信号から空気圧と温度とを表示するとともに、異常時には警告するタイヤ空気圧監視制御装置とが車両に設けられる。
【0005】
近年、電子キーシステムの電子キーからの無線信号とタイヤ空気圧監視システムのタイヤバルブからの無線信号との両方を受信可能な受信機(統合チューナ)が考案されている(例えば、特許文献1,2参照)。統合チューナは、タイヤ空気圧監視システム用の周波数と電子キーシステム用の周波数とを受信するため、受信回路において受信機能(受信周波数等)の切り換えが必要となる。よって、統合チューナにマイクロコンピュータ(TPMSマイコン)を設け、このTPMSマイコンの制御によって受信回路の受信機能を切り換える構造が検討されている。つまり、TPMSマイコン経由で受信回路を制御する構造が考案されている。
【0006】
ところで、統合チューナは電子キーシステムの1受信機として動作するため、TPMSマイコンの制御は統合チューナの外部に設けられるECU(例えば、電子キーシステムの制御を行うスマートECU)によって行われることになる。また、近年、TPMSマイコンは、シリアル制御によって受信回路の動作状態を制御する傾向にもある。これは、TPMSマイコンには動作クロック(基準周波数)を設定する振動子が仮に1つであっても、シリアル制御とすれば、受信回路の多チャンネル化が可能となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−66964号公報
【特許文献2】特開2009−97272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、TPMSマイコンの振動子としては、水晶振動子等の精度の高い振動子(以下、外部振動子)を使用することが考案されている。しかし、水晶振動子は、精度の高い発振ができる反面、外部からの衝撃等に対して耐性が低かった。このため、仮に外部振動子が故障してしまうと、TPMSマイコン(内部マイコン)は受信回路の機能設定が実行できなくなってしまうので、統合チューナにおいて電波を受信することができなくなるおそれがあった。
【0009】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部マイコンを介して複数の周波数の受信制御を行う統合チューナにおいて、外部振動子が正常に動作しなくなったとしても、受信を継続することができる統合チューナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、複数の周波数の電波を選択的に受信可能な受信手段と、当該受信手段の受信機能を設定する内部制御手段とを備え、当該内部制御手段は自身の外部から、前記受信手段の機能設定のための制御信号が入力すると、自身の外部に設けられた外部振動子の発振信号を基に、シリアル制御にて前記受信手段の受信機能を切り換える統合チューナであって、前記内部制御手段の内部に設けられた内部振動子と、前記外部振動子の動作を判定する動作判定手段と、前記外部振動子が動作しなくなったと前記動作判定手段が判定した場合に、前記内部制御手段の動作クロックを前記外部振動子から前記内部振動子に切り換えて、前記受信手段を前記内部振動子のクロックにて動作させる切換手段と、前記受信手段で前記内部振動子に基づく受信機能の設定が完了すると、前記内部制御手段の動作を停止する動作停止手段と、を備えたことをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、動作しなくなった外部振動子に代わって内部振動子によって内部制御手段が動作するので、外部振動子が正常に動作しなくなったとしても、受信を継続することが可能となる。また、内部振動子を利用する状態となった内部制御手段は、常時起動することなく、受信設定動作のときのみ起動させることで、内部振動子に代わったことで振動子の精度が外部振動子よりも低い場合に、受信性能の劣化を抑制することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の統合チューナにおいて、前記内部制御手段が前記切換手段による振動子の切り換え後の停止状態にある際、外部からの制御信号が切り換わったことを検出すると、前記内部制御手段を再起動させ、前記制御信号に基づく受信機能に前記受信手段を設定するとともに、該設定後、前記内部制御手段を再び停止状態に戻す再設定手段を備えたことをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、外部からの制御信号が切り換わったことを検出すると内部制御手段が起動し、振動子の切り換え後に自身の動作を停止する。このため、外部振動子が動作しなくなったとしても、内部振動子のクロックによって内部制御手段が動作し、不必要に内部振動子による動作を継続することを抑制することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の統合チューナにおいて、電子キーシステムの電子キーから送信される無線信号と、タイヤ空気圧監視システムのタイヤバルブとから送信される無線信号とを受信し、前記内部制御手段が前記タイヤ空気圧監視システムの制御を行い、自身の外部に設けられた外部制御手段が前記内部制御手段を介して前記電子キーシステムの受信制御を行うことをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、統合チューナは、電子キーシステムとタイヤ空気圧監視システムとに掛かる無線信号を受信可能で、外部振動子が動作しなくなったとしても、外部制御手段によって受信制御が行われる電子キーシステムは通常通り受信動作を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内部マイコンを介して複数の周波数の受信制御を行う統合チューナにおいて、外部振動子が正常に動作しなくなったとしても、受信を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子キーシステム及びタイヤ空気圧監視システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】外部振動子の状態に応じた統合チューナのTPMSマイコンの動作を示すフローチャート。
【図3】TPMSマイコン又は外部振動子が動作しなくなった際の統合チューナの動作状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を車両の統合チューナに具体化した一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示されるように、車両1には、ユーザが携帯する電子キー2との無線通信によってドアロックの施解錠やエンジンの始動等を行う電子キーシステム3が設けられている。また、車両1には、タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)4が設けられている。そして、本実施例においては、電子キーシステム3の電子キー2とタイヤ空気圧監視システム4のタイヤバルブ5とから送信される無線信号を受信する受信機が統合されている。すなわち、車両1には、電子キー2とタイヤバルブ5とから送信される無線信号を受信する統合チューナ14が設けられている。
【0019】
車両1には、電子キーシステム3の制御を行う照合ECU(Electronic Control Unit)11と、車両1の電源系を管理するメインボディECU31とが設けられている。照合ECU11には、ドアに埋設されてLF(Low Frequency)帯の電波を車室外に発信可能な車室外LF発信機12と、車室内の床等に埋設されてLF帯の電波を車室内に発信可能な車室内LF発信機13とが接続されている。また、照合ECU11には、車体等に埋設されてUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な統合チューナ14が接続されている。照合ECU11には、例えばドアロック施解錠等を管理するメインボディECU31と、エンジンECU32とが車内LAN(Local Area Network)30を介して接続されている。なお、照合ECU11は、電子キー2との間で相互無線通信を行い、自身のメモリ11aに登録されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行う。
【0020】
一方、電子キーシステム3に用いる電子キー2には、コントロールユニットとして通信制御部21が設けられている。通信制御部21は、固有のキーコードとしてIDコードが記憶されたメモリ21aを備えている。通信制御部21には、外部で発信されたLF帯の電波を受信可能なLF受信部22と、通信制御部21の指令に従いUHF帯の電波を発信可能なUHF発信部23とが接続されている。
【0021】
ユーザが車室外に位置するときには、照合ECU11は、車室外LF発信機12から車室外にリクエスト信号Srqを間欠的に発信させ、スマート通信の成立を試みる。電子キー2は、リクエスト信号SrqをLF受信部22で受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードを含ませたIDコード信号SidをUHF発信部23から返信する。照合ECU11は、IDコード信号Sidを統合チューナ14で受信すると、IDコード信号SidのIDコードと自身のメモリ11aに登録されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行う。照合ECU11は、この車室外におけるID照合(車室内照合)が成立することを確認すると、電子キー2が車室外に位置するとして、車室外照合が成立したとして処理する。よって、メインボディECU31にドアロックの解錠動作を実行させる。つまり、電子キー2を所持して車両1に近づいてアンロックセンサ16に触れるだけで、ドアロックが解錠される。
【0022】
ユーザが降車したときには、照合ECU11は、ロックセンサ15が操作されたことをトリガとしてスマート通信の成立を試みる。照合ECU11は、車室外照合が成立すると、メインボディECU31にドアロックの施錠動作を実行させる。つまり、電子キー2を所持して降車してロックセンサ15に触れるだけで、ドアロックが施錠される。このとき、照合ECU11は、ロックセンサ15が触れたことを検出すると、まず車室外照合を実行し、電子キー2が車室外に存在するか否かを確認する。照合ECU11は、車室外照合が成立することを確認すると、電子キー2の車室内置き忘れを確認するために車室内におけるID照合(車室内照合)を実行する。照合ECU11は、車室内照合が成立しないことを確認すると、電子キー2が車室内に置き忘れられていないとして、メインボディECU31にドアロック施錠を実行させる。
【0023】
車両1には、照合ECU11の車室内照合が成立したことに基づいてエンジンの点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU32が設けられている。エンジンECU32は、車内LAN30を通じて照合ECU11等の各種ECUに接続されている。車両1の運転席には、車両1の電源状態(電源ポジション)を切り換える際に操作されるエンジンスイッチ33が設けられている。エンジンスイッチ33は、照合ECU11に接続されている。
【0024】
照合ECU11は、エンジンスイッチ33が押されると、車室内LF発信機13からリクエスト信号Srqを発信させて、車室内照合を実行する。照合ECU11は、車室内照合が成立することを確認すると、電子キー2が車室内に位置するとして、車室内照合が成立したとして処理する。
【0025】
照合ECU11は、車室内照合が成立することを確認すると、メインボディECU31にエンジンスイッチ33の操作を許可する。メインボディECU31は、電子キー2が車室内に存在する場合に、エンジンスイッチ33が押し操作される度に電源状態をACCオン→IGオン→電源オフの順に繰り返し遷移させる。また、照合ECU11は、電子キー2が車室内に存在する場合に、エンジン停止時にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ33が操作されると、エンジンECU32にエンジンを始動させる。
【0026】
また、車両1の各タイヤには、タイヤ空気圧等の状態を検出可能なタイヤバルブ5が設けられている。タイヤバルブ5には、圧力センサ、温度センサ、加速度センサ、UHF送信機、これら部品を制御するコントローラ等が搭載されている。タイヤバルブ5は、内部に搭載された加速度センサが加速度を検出した際に、検出信号StpをUHF帯の電波によって各バルブ順に発信する。検出信号Stpには、タイヤの空気圧、温度、及びタイヤバルブ5の固有ID(バルブID)等が含まれている。また、加速度センサは、タイヤ径方向の加速度を検出することにより、タイヤの回転有無を検出する。
【0027】
車両1の運転席には、タイヤの空気圧等を運転者に表示する表示装置35が設置されている。表示装置35は、タイヤバルブ5から送信された検出信号Stpを統合チューナ14で受信すると、統合チューナ14からメインボディECU31を介して各タイヤの空気圧や温度を表示する。
【0028】
車両1には、電子キーシステム3とタイヤ空気圧監視システム4とに用いる統合チューナ14が設けられている。本例の統合チューナ14は、電子キー2からの電波と、タイヤバルブ5からの電波という、周波数が異なる複数の電波を1つのチューナで受信する。
【0029】
統合チューナ14には、受信制御を行うとともに、タイヤ空気圧監視システム4の制御を行うTPMSマイコン42が設けられている。TPMSマイコン42は、照合ECU11からの制御信号(制御指令)に従って電子キーシステム3の受信制御を行う。このとき、TPMSマイコン42は、統合チューナ14の受信機能を電子キーシステム3の機能とタイヤ空気圧監視システム4の機能とを切り換える。すなわち、TPMSマイコン42が統合チューナ14の内部に設けられる内部制御手段として機能し、照合ECU11が統合チューナ14の外部に設けられる外部制御手段として機能する。なお、受信機能は、受信周波数、復調方式、信号フレーム、ビットレート等を言う。
【0030】
また、統合チューナ14には、周波数設定に合わせてアンテナを切り換えるアンテナ切換回路40と、受信周波数等の受信設定を行い、受信した信号を増幅や復調等する受信IC41とが設けられている。アンテナ切換回路40は、例えばスイッチ等が使用され、TPMSマイコン42からの切換指令によって使用アンテナを切り換える。TPMSマイコン42は、照合ECU11から入力した制御信号を基に、シリアル制御によって受信IC41の受信機能を設定する。つまり、受信IC41は、TPMSマイコン42からシリアル通信にて入力した指令によって、受信周波数や復調方式等を設定する。また、受信IC41は、統合チューナ14のアンテナで受信した無線信号から取得した受信データをTPMSマイコン42と照合ECU11とに出力する。なお、受信IC41及びアンテナ切換回路40が受信手段として機能する。
【0031】
TPMSマイコン42は、内部に設けられる内部振動子48ではなく、TPMSマイコン42の外部に設けられる外部振動子43から得られる基準周波数を利用して動作する。内部振動子48には例えばセラミック振動子が用いられ、外部振動子43には例えば水晶振動子が用いられる。内部振動子48に用いられるセラミック振動子等は一般的に精度が低いので、水晶振動子等からなる外部振動子43が別途設けられる。しかしながら、水晶振動子等の外部振動子43は、外部からの衝撃によって動作しなくなるおそれがある。
【0032】
そこで、本実施例の統合チューナ14では、外部振動子43が動作しなくなった際には、外部振動子43に代わって内部振動子48を用いる。すなわち、TPMSマイコン42には、外部振動子43の動作状態を判定する動作判定部44と、振動子を切り換える振動子切換部45とが設けられている。動作判定部44は、外部振動子43が正常に動作しているか否かを例えば外部振動子43から入力されるパルス信号の入力の有無によって判定する。振動子切換部45は、外部振動子43が動作していないと動作判定部44が判定した際に、基準周波数を得る振動子を外部振動子43から内部振動子48に切り換えて、内部振動子48の動作クロックでTPMSマイコン42を動作させることにより、受信IC41の受信機能を、制御信号に応じた機能に設定させる。すなわち、TPMSマイコン42は、精度の良い外部振動子43が動作しなくなると、内部振動子48を利用して動作して受信制御のみを行う。このようにすることで、統合チューナ14は、電子キーシステム3に関わる照合ECU11からの受信制御を継続して行うことが可能である。なお、動作判定部44が動作判定手段として機能する。また、振動子切換部45が切換手段として機能する。
【0033】
また、TPMSマイコン42には、TPMSマイコン42による受信IC41の受信機能の設定動作が完了すると、TPMSマイコン42の動作を停止する動作停止部47が設けられている。動作停止部47は、TPMSマイコン42が起動状態にあるとき、受信IC41から受信機能設定の完了通知を入力すると、起動中にあるTPMSマイコン42の動作を停止、つまりTPMSマイコン42を停止モードにする。なお、動作停止部47が動作停止手段及び再設定手段として機能する。
【0034】
TPMSマイコン42には、停止モード中に制御信号の変化があったか否かを監視する信号監視部46が設けられている。信号監視部46は、制御信号の切り換わりを検出すると、TPMSマイコン42を再起動させ、受信IC41の受信機能を、現在入力した制御信号に基づく機能に設定する。そして、受信機能の再設定後、TPMSマイコン42は再度、停止モードに戻る。
【0035】
次に、本例の統合チューナの動作を図2に従って説明する。
まず、統合チューナ14のTPMSマイコン42は、外部振動子43の基準周波数を利用して動作している。また、照合ECU11は、車両1が停車又は走行中のとき、空気圧監視要求として第1制御信号を統合チューナ14に出力し、車両1が駐車中のとき、キー照合実行要求として第2制御信号を統合チューナ14に出力する。なお、停車とは車速が「0」であるものの車両1の電源はオンしている状態をいい、駐車とは車速が「0」でかつ車両1の電源がオフしている状態をいう。
【0036】
ちなみに、車両1が停車又は駐車中のとき、統合チューナ14は常時起動して、タイヤバルブ5からの電波を探査する。これは、一定時間内に4本のタイヤ全てから検出信号Stpを受信するためである。また、車両1が駐車中のとき、統合チューナ14は間欠起動して、IDコード信号Sidを探査する。これは、キー照合はユーザが車両1に乗車するのは1日のうちで一時だけであるので、電波探査は間欠駆動で済み、結果、車両1の電源を省電力化できるためである。
【0037】
図2に示されるように、TPMSマイコン42は、照合ECU11から制御信号(第1制御信号、第2制御信号)が入力すると、動作判定部44を起動させる。TPMSマイコン42は、起動すると、外部振動子43が動作していないか否かを判定する(ステップS1)。すなわち、動作判定部44は、外部振動子43が正常に動作しているか否かを外部振動子43から入力されるパルス信号の入力の有無によって判定する。動作判定部44は、外部振動子43からパルス信号の入力が通常通りある場合には、外部振動子43が動作していると判定する(ステップS1:NO)。TPMSマイコン42は、外部振動子43が動作していると判定すると、基準周波数を得る振動子を外部振動子43に切り換える(ステップS7)。なお、振動子切換部45は、外部振動子43を元々利用していた場合は、現状を維持する。そして、TPMSマイコン42は、外部振動子43の基準周波数を利用して動作して、アンテナ切換回路40に対してアンテナの切り換えを行い、受信IC41に対して受信周波数等の受信設定を行う(ステップS8)。
【0038】
このとき、使用振動子が外部振動子43であれば、TPMSマイコン42は、外部振動子43の動作クロックにより動いて、受信IC41の受信機能を設定する。統合チューナ14は、受信設定が行われると、その設定に応じて受信される無線信号を受信して復調し、受信データをTPMSマイコン42と照合ECU11とに出力する。TPMSマイコン42と照合ECU11とは、自身が受信制御を行った場合にのみ受信データを取得して受信データに基づいて処理を行う。
【0039】
一方、動作判定部44は、外部振動子43からパルス信号の入力がない場合には、外部振動子43が動作していないと判定する(ステップS1:YES)。TPMSマイコン42は、外部振動子43が動作していないと判定すると、基準周波数を得る振動子を外部振動子43から内部振動子48に切り換える(ステップS2)。なお、振動子切換部45は、内部振動子48を元々利用していた場合は、現状を維持する。そして、TPMSマイコン42は、内部振動子48の基準周波数を利用して動作して、アンテナ切換回路40に対してアンテナの切り換えを行い、受信IC41に対して受信周波数等の受信設定を行う(ステップS3)。
【0040】
このとき、使用振動子が内部振動子48であれば、TPMSマイコン42は、内部振動子48のクロックにより動作して、受信IC41の受信機能を設定する。統合チューナ14は、受信設定が行われると、その設定に応じて受信される無線信号を受信して復調し、受信データをTPMSマイコン42と照合ECU11とに出力する。TPMSマイコン42と照合ECU11とは、自身が受信制御を行った場合にのみ受信データを取得して受信データに基づいて処理を行う。
【0041】
TPMSマイコン42は、受信設定が終わると、動作を停止する(ステップS4)。すなわち、動作停止部47は、受信設定が終了すると、TPMSマイコン42の動作を停止する。このため、内部振動子48が統合チューナ14の受信状態に影響を及ぼすことがなくなる。
【0042】
TPMSマイコン42は、制御信号の変化があったか否かを判定する(ステップS5)。すなわち、信号監視部46は、例えば制御信号が第2制御信号から第21御信号に変わるなどして制御信号の変化を確認すると、停止モード中のTPMSマイコン42を再起動させる(ステップS6)。このとき、統合チューナ14は、それまで電子キーシステム3の受信機として動作していたが、この時点で、タイヤ空気圧監視システム4の受信機に切り換わる。そして、ステップS1に移行する。
【0043】
TPMSマイコン42は、内部振動子48のクロックにより動作して、受信IC41の受信機能をタイヤ空気圧監視システム4に準じた機能に設定する(ステップS3)。そして、TPMSマイコン42は、受信IC41の機能設定後、停止モードに再度戻る。統合チューナ14は、統合チューナ14をタイヤ空気圧監視システム4用の受信機と認識する照合ECU11に対し、TPMSマイコン42が停止モードにあることにより、故障を通知する。
【0044】
さて、本例の統合チューナ14は、電子キーシステム3とタイヤ空気圧監視システム4との車両側の受信機を統合した。統合チューナ14の受信制御を行うTPMSマイコン42に基準周波数を提供する外部振動子43が動作しなくなった際には、内部振動子48に切り換えることで受信制御を継続して行うことができる。また、内部振動子48を利用して受信設定が終わると、TPMSマイコン42の動作を停止することで、統合チューナ14全体の動作に精度の低い内部振動子48が与える影響を極力抑制することができる。
【0045】
図3に示されるように、統合チューナ14は、例えばTPMSマイコン42自体が動作しなくなった際には、内部振動子48の使用の有無に関わらず、電子キーシステム3の機能とタイヤ空気圧監視システム4の機能とどちらも受信制御を行うことができない。しかしながら、TPMSマイコン42が動作しなくなることは稀である。
【0046】
一方で、水晶振動子等が用いられる外部振動子43は、外部からの衝撃によって動作しなくなるおそれがある。統合チューナ14は、例えば外部振動子43が動作しなくなった際には、従来のように内部振動子48を使用しなければ、電子キーシステム3の機能とタイヤ空気圧監視システム4の機能とのどちらも受信制御を行うことができない。しかしながら、統合チューナ14は、外部振動子43に代えて内部振動子48を利用すると、照合ECU11からの受信制御指令を受けてTPMSマイコン42が受信設定を行うことで電子キーシステム3の機能の受信制御を行うことができる。
【0047】
また、統合チューナ14は、外部振動子43に代えて内部振動子48を利用すると、TPMSマイコン42が完全ではないが動作することができるので、タイヤ空気圧監視システム4の機能をある程度動作させることができる。よって、タイヤ空気圧監視システム4のどこかが故障していることを、例えば照合ECU11や他のECUに通知することもできる。
【0048】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)動作しなくなった外部振動子43に代わって内部振動子48によってTPMSマイコン42が動作するので、外部振動子43が正常に動作しなくなったとしても、受信を継続することができる。また、内部振動子48を利用する状態となったTPMSマイコン42は、常時起動することなく、受信IC41の受信設定動作のときのみ起動させることで、内部振動子48に代わったことで振動子の精度が外部振動子43よりも低い場合に、受信性能の劣化を抑制することができる。
【0049】
(2)照合ECU11からの制御指令によってTPMSマイコン42が起動し、振動子の切り換え後に動作を停止する。このため、外部振動子43が動作しなくなったとしても、内部振動子48のクロックによってTPMSマイコン42が動作し、不必要に内部振動子48による動作を継続することを抑制することができる。
【0050】
(3)統合チューナ14は、電子キーシステム3とタイヤ空気圧監視システム4とに掛かる無線信号を受信でき、外部振動子43が動作しなくなったとしても、照合ECU11によって受信制御が行われる電子キーシステム3は通常通り受信動作を行うことができる。
【0051】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、外部振動子43に水晶振動子を設けるとともに、内部振動子48にセラミック振動子を設けたが、外部振動子43に対して内部振動子48の精度が低い場合には、本発明は特に有効である。
【0052】
・上記実施形態では、外部振動子43に対して内部振動子48の精度が低い構成に限らず、内部振動子48を備えながら外部振動子43を利用するような構成であれば本発明を適用可能である。
【0053】
・上記実施形態において、タイヤバルブ5は、起動信号を受信すると、応答して検出信号Stpを発信するようにしてもよい。
・上記実施形態において、電子キーシステム3で使用する無線信号の周波数は、必ずしもLFやUHFに限定されず、これら以外の周波数が使用可能である。また、車両1から電子キー2に無線信号を発信するときの周波数と、電子キー2から車両1に無線信号を返信するときの周波数とは、必ずしも異なるものに限定されず、これらを同じ周波数としてもよい。
【0054】
・上記実施形態において、電子キーシステム3を相互無線通信によってID照合を行い車載装置の動作を行うスマートシステムに限らず、電子キー2から単方向の無線通信によってID照合を行い車載装置の動作を行うリモートキーレスシステムを採用してもよい。
【0055】
・上記実施形態において、電子キーシステム3とタイヤ空気圧監視システム4との受信を行う統合チューナ14に具体化した。しかしながら、複数のシステムに関わる無線信号を受信するとともに、そのうちの1つのシステムの制御装置が統合チューナ14内に設けられ、他のシステムの制御装置は統合チューナ14の外部に設けられるものであれば、本発明を採用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…車両、2…電子キー、3…電子キーシステム、4…タイヤ空気圧監視システム、5…タイヤバルブ、21…通信制御部、22…LF受信部、23…UHF発信部、11…外部制御手段としての照合ECU、12…車室外LF発信機、13…車室内LF発信機、14…統合チューナ、15…ロックセンサ、16…アンロックセンサ、30…車内LAN、31…メインボディECU、32…エンジンECU、34…ドアロック装置、35…表示装置、40…受信手段としてのアンテナ切換回路、41…受信手段としての受信IC、42…内部制御手段としてのTPMSマイコン、43…外部振動子、44…動作判定手段としての動作判定部、45…切換手段としての振動子切換部、46…信号監視部、47…動作停止手段及び再設定手段としての動作停止部、48…内部振動子、Sid…IDコード信号、Srq…リクエスト信号、Stp…検出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数の電波を選択的に受信可能な受信手段と、当該受信手段の受信機能を設定する内部制御手段とを備え、当該内部制御手段は自身の外部から、前記受信手段の機能設定のための制御信号が入力すると、自身の外部に設けられた外部振動子の発振信号を基に、シリアル制御にて前記受信手段の受信機能を切り換える統合チューナであって、
前記内部制御手段の内部に設けられた内部振動子と、
前記外部振動子の動作を判定する動作判定手段と、
前記外部振動子が動作しなくなったと前記動作判定手段が判定した場合に、前記内部制御手段の動作クロックを前記外部振動子から前記内部振動子に切り換えて、前記受信手段を前記内部振動子のクロックにて動作させる切換手段と、
前記受信手段で前記内部振動子に基づく受信機能の設定が完了すると、前記内部制御手段の動作を停止する動作停止手段と、を備えた
ことを特徴とする統合チューナ。
【請求項2】
請求項1に記載の統合チューナにおいて、
前記内部制御手段が前記切換手段による振動子の切り換え後の停止状態にある際、外部からの制御信号が切り換わったことを検出すると、前記内部制御手段を再起動させ、前記制御信号に基づく受信機能に前記受信手段を設定するとともに、該設定後、前記内部制御手段を再び停止状態に戻す再設定手段を備えた
ことを特徴とする統合チューナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の統合チューナにおいて、
電子キーシステムの電子キーから送信される無線信号と、タイヤ空気圧監視システムのタイヤバルブとから送信される無線信号とを受信し、
前記内部制御手段が前記タイヤ空気圧監視システムの制御を行い、自身の外部に設けられた外部制御手段が前記内部制御手段を介して前記電子キーシステムの受信制御を行う
ことを特徴とする統合チューナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219511(P2012−219511A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86476(P2011−86476)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】