説明

絶縁チューブユニット成形用の型および絶縁チューブユニット

【課題】油圧による型締め部が不要であり、装置の小型化が図れる絶縁チューブユニット成形用の成形型および絶縁チューブユニットを提供する。
【解決手段】電力ケーブルの接続部を絶縁処理するための絶縁チューブユニット10を成形するキャビティを有する絶縁チューブユニット成形用の成形型40は、3つ以上のブロック41〜44から構成されており、3つ以上のブロック41〜44は、絶縁チューブユニット10の径方向C1、C2に径方向に沿った分割面で分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁チューブユニット成形用の型および絶縁チューブユニットに関し、特に成形装置の小型化が図れる絶縁チューブユニット成形用の型および絶縁チューブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
2本の高圧電力ケーブルを接続した箇所の絶縁処理に、常温収縮型絶縁チューブユニットの採用が広まっている。常温収縮型絶縁チューブユニットの製品形状は円筒状であり、液状シリコーンゴム(LSR)等のゴムにより成形されている。この常温収縮型絶縁チューブユニットでケーブル接続部を絶縁処理する場合は、中心孔に拡径部材を挿入し拡径した状態で、ケーブル接続部に配置する。その後に拡径部材を取り除くと、チューブユニットは縮径してケーブル接続部に装着される。
【0003】
液状シリコーンゴムの成形方法は、一般的に液状樹脂射出成形法(LIM)が適用される。この成形法には、材料供給装置、射出ユニット、金型、型締機構を組み合わせた成形装置が用いられている。
【0004】
図7は、常温収縮型絶縁チューブユニットを成形する装置の要部の概略構成を示しており、チューブユニットの中心軸を含む面で分割された上金型201と下金型202が、油圧ピストン206と上型締め部203と下型締め部204とで構成された型締機構で型締めされるようになっている。上金型201と下金型202内には、射出ユニット205から液状シリコーンゴムが射出されるようになっている。
前記のような上金型と下金型からなる金型は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−268770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す従来の成形装置や特許文献1に記載された成形金型では、成形品の投影面積が大きいため、相当の型締め力(例えば、数百〜千数百トン)Eで上金型201と下金型202を型締めしなければ、射出ユニットから樹脂を注入したとき、金型が開いてしまう。このため大型の型締機構が必要になる。また、金型もこの型締め力に耐えられる強度にしなければならず、上金型201と下金型202の質量は1トン前後となり、ハンドリングが容易ではない。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、型締力を低減でき、装置の小型化が図れる絶縁チューブユニット成形用の型および絶縁チューブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解消するために、第1の発明の絶縁チューブユニット成形用の型は、電力ケーブルの接続部を絶縁処理するための絶縁チューブユニットを成形するキャビティを有する絶縁チューブユニット成形用の型であって、前記絶縁チューブユニットの径方向に沿った分割面で分割されている3つのブロックからなることを特徴とする。
上記構成により、従来のように中心軸を含む面で上下に分割された金型に比べて、投影面積が小さくできる。これにより、型締め力を下げることができ、大型の型締が不要となり、装置の小型化が図れる。
【0008】
第2の発明の絶縁チューブユニット成形用の型は、前記ブロックのキャビティ側の面が、前記径方向に直交する前記金型部分の開き方向に対して、傾斜する面になっていることを特徴とする。この構成によれば、成形後にブロックのキャビティから絶縁チューブユニットを取り出す時の抵抗を軽減できるので、絶縁チューブユニットを簡単にキャビティから抜くことができ、作業性が向上する。
【0009】
第3の発明の絶縁チューブユニット成形用の型は、前記3つ以上のブロックは、ボルトとナットにより互いに締めて組み立てられることを特徴とする。この構成によれば、3つ以上の金型部分はボルトナットにより互いに締めて組み立てれば良いので、絶縁チューブユニット成形作業が容易になる。
本発明の絶縁チューブユニットは、前記第1〜3の絶縁チューブユニット成形用の型により成形されたことを特徴とする。この絶縁チューブユニットは、成形が容易である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の小型化が図れる絶縁チューブユニット成形用の型および絶縁チューブユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の絶縁チューブユニット成型用の型により製造された絶縁チューブユニットの好ましい実施の形態であり、電力ケーブルの直線接続部を絶縁処理した状態を示している軸方向の断面図である。
【図2】絶縁チューブユニット成形用の型(以下、成形型という)を示す軸方向CLに沿った断面図である
【図3】図2の成形型のキャビティ内に液状シリコーンゴムを射出して絶縁チューブユニットが成形された状態を示す断面図である。
【図4】図2の成形型の第3ブロックの側面側をF方向から見た側面図である。
【図5】隣接する第1ブロックと第3ブロックが、例えばボルトとナットにより互いに締結されている状態を示す図である。
【図6】本発明の絶縁チューブユニット成形用の型の別の実施形態を示す断面図である。
【図7】従来の成形装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の絶縁チューブユニット成型用の型により製造された絶縁チューブユニットの好ましい実施の形態であり、電力ケーブルの直線接続部を絶縁処理した状態を示している軸方向の断面図である。
【0013】
図1に示す絶縁チューブユニット10の製品形状は円筒状であり複数のゴム層の積層構造体であり、液状シリコーンゴムにより成形されている。図1に示す絶縁チューブユニット10は常温収縮タイプのもので、第1電力ケーブル1と第2電力ケーブル2の直線接続部を絶縁している。
【0014】
第1電力ケーブル1は、絶縁シース5と、絶縁体層6と、外部半導電層7や、その他に外部半導電層7を覆う布テープ層や金属遮蔽層を有している。同様して、第2電力ケーブル2は、絶縁シース15と、絶縁体層16と、外部半導電層17や、その他に外部半導電層17を覆う布テープ層や金属遮蔽層を有している。
【0015】
図1に示すように、第1ケーブル導体3と第2ケーブル導体4は、導電性を有する接続管18により電気的に機械的に接続されている。第1ケーブル導体3と第2ケーブル導体4と接続管18の外周囲は、半導電性テープ19により覆われている。
【0016】
第1電力ケーブル1と第2電力ケーブル2との接続部の周囲は、絶縁チューブユニット10により覆われている。絶縁チューブユニット10は筒状であり、補強絶縁層20と、内部半導電層30と、第1ストレスコーン8と第2ストレスコーン9を有している。図示していないが、絶縁チューブユニット10の外周面にはさらに外部半導電層が設けられている。
なお、本発明において「絶縁チューブユニット」という用語は、外部半導電層を設けないもの、外部半導電層を設けていないもののいずれにも使用している。
内部半導電層30と、第1ストレスコーン8と第2ストレスコーン9は、軸方向CLに沿って同軸状に配置されている。第1ストレスコーン8と第2ストレスコーン9は、例えばカーボンが混入された半導電性の液状シリコーンゴムを用いて成形された部材で、略ラッパ状である。
【0017】
図1に示す補強絶縁層20は、弾性材である例えば電気絶縁性の液状シリコーンゴムにより作られている常温で収縮可能な円筒状の部材である。補強絶縁層20の内周部には、内部半導電層30が配置されている。内部半導電層30は例えばカーボンが混入された半導電性の液状シリコーンゴムを用いて筒状に成形された部材である。内部半導電層30は、第1ケーブル導体3と第2ケーブル導体4と接続管18および絶縁体層6,16の一部を覆っている。内部半導電層30は、一端側の太径部分31と他端側の太径部分32と、太径部分31と太径部分32の間に形成された細径部分33を有している。
内部半導電層30の中空部分30Hは、軸方向CLに沿って形成されている。この中空部分30Hは、絶縁チューブユニット10を使用に供したとき、第1ケーブル導体部3と第2ケーブル導体部4と接続管18と半導電性テープ19が収まる貫通孔である。
【0018】
次に、図1に示す絶縁チューブユニット10を成形するための絶縁チューブユニット成形用の成形型について説明する。
図2は、絶縁チューブユニット成形用の成形型(以下、成形型という)40を示す軸方向CLに沿った断面図である。図3は、図2の成形型40のキャビティ内に補強絶縁層20を形成する液状シリコーンゴムの原料を射出して絶縁チューブユニットが成形された状態を示す断面図である。
【0019】
図2に示す成形型40は、軸方向CLに対して直交する径方向Tに沿う分割面C1、C2、C3を有しており、4つのブロックに分割できるようになっている。これら絶縁チューブユニット10の径方向Tに形成されている分割面C1、C2、C3により、成形型40は、第1ブロック41と、第2ブロック42と、第3ブロック43と、第4ブロック44に分割されている。
【0020】
第1ブロック41と第2ブロック42は、成形型40の中央の分割面C3を中心として略左右対称形状に形成されている。また、第3ブロック43と第4ブロック44は、中央の分割面C3を中心として略左右対称形状に形成されている。第1ブロック41と第2ブロック42内には、円錐状のキャビティ51,52がそれぞれ形成されており、外形が方形で中心に貫通する孔の開いた形状になっている。第3ブロック43と第4ブロック44内には、ほぼ円柱状のキャビティ53,54が形成されており、外形が方形で中心に貫通する孔の開いた形状になっている。これらのキャビティ51,52,53,54は、液状シリコーンゴムを射出して、図1に示す絶縁チューブユニット10の補強絶縁層20を成形する連続した空間である。
【0021】
キャビティ51の最大内径D1はキャビティ53の最小内径D2と同じである。キャビティ52の最大内径D1はキャビティ54の最小内径D2と同じである。キャビティ53の最大内径D3はキャビティ54の最大内径D4と同じである。
キャビティ53の最大内径D3(D4)は、最小内径D2より大きいので、キャビティ53にはX1方向に向けて傾斜角度θだけ開くように傾斜した傾斜面(キャビティ面)53Dが形成されており、キャビティ54にはX1方向とは逆のX2方向に向けて傾斜角度θだけ開くように傾斜した傾斜面(キャビティ面)54Dが形成されている。X1方向とX2方向は、分割面C1、C2、C3(絶縁チューブユニット10の径方向T)に対して直交する方向、すなわち型締め方向である。
【0022】
この傾斜角度θは、好ましくは1.5度〜1.6度である。この傾斜角度θが1.5度よりも小さいと、絶縁チューブユニット10の補強絶縁層20を取り出すときには取り出し抵抗を軽減できないので好ましくなく、傾斜角度θが1.6度よりも大きいと、絶縁チューブユニット10の補強絶縁層20の外周形状に、大きなテーパ部分が形成されてしまうので好ましくない。
【0023】
このようにキャビティ53,54が互いに逆になるように傾斜して形成されているのは、第3ブロック43のキャビティ53と第4ブロック4のキャビティ54から成形後に絶縁チューブユニット10の補強絶縁層20を引く抜き易くするためである。すなわち、硬化のための加熱によりシリコーンゴムが熱膨張しているために、円筒断面を有する第3ブロック43のキャビティ53と第4ブロック4のキャビティ54から製品である補強絶縁層20の成形品を取り出すときには大きな抵抗となるので、この取り出し抵抗を軽減して作業を容易にするために、キャビティ53,54が互いに逆になるように傾斜して形成されている。
【0024】
第1ブロック41のキャビティ51は、図1と図3に示す補強絶縁層20のテーパ部20Pを形成し、第2ブロック42のキャビティ52は、図1と図3に示す補強絶縁層20のテーパ部20Rを形成する。第3ブロック43のキャビティ53は、図1と図3に示す補強絶縁層20の円柱部20Sを形成し、第4ブロック44のキャビティ54は、図1と図3に示す補強絶縁層20の円柱部20Tを形成することができる。第1ブロック41は、中心軸CLに沿って貫通穴41Hを有しており、第2ブロック42は、中心軸CLに沿って貫通穴42Hを有している。これらの貫通穴41H、42Hには、第1電力ケーブル1と第2電力ケーブル2がそれぞれ挿入されるようになっている。
【0025】
図4は、一例として図2の第3金型部分43の側面側をF方向から見た側面図である。
図2と図4に例示するように、第3金型部分43はほぼ直方体形状部材であり、図4に示すように第1側面部43A,43B,43C,43Dを有する。第1ブロック41と第2ブロック42と第4ブロック44も、第3ブロック43と同様に、ほぼ直方体形状部材である。第1ブロック41と第2ブロック42と第4ブロック44と第3ブロック43の四隅部分には、それぞれ位置合わせ用の穴60が形成されている。
【0026】
図4と図2に示すように、第3ブロック43には、液状シリコーンゴムの注入口61と、フィルムゲート62が形成されている。このフィルムゲート62は注入口61に対してランナー63を介して接続されている。液状シリコーンゴムの注入口61とフィルムゲート62とランナー63は、第1ブロック41と第3ブロック43の接合部分に形成されている。フィルムゲート62は第1ブロック41のキャビティ51と第3ブロック43のキャビティ53の全周囲にわたって形成されている円周フィルムゲートである。
【0027】
一方、図2に示すように、液状シリコーンゴムのオーバフロー口71とフィルムゲート72とランナー(図示せず)が、第2ブロック42と第4ブロック44の接合部分に形成されている。フィルムゲート72は第2ブロック42のキャビティ52と第4ブロック44のキャビティ54の全周囲にわたって形成されている円周フィルムゲートである。
【0028】
図3に示すように、成形される補強絶縁層20には、分割面C1、C2、C3に対応する位置に、パーティングライン(金型部分の合わせ目の痕跡)が形成される。このパーティングラインは、補強絶縁層20の外周面において全周にわたって線状に形成されるだけの場合もあるが、バリ状に形成される場合もある。
成形型40は、第1ブロック41と第2ブロック42と第3ブロック43と第4ブロック44により4分割にできるように構成されているので、電気絶縁部品である補強絶縁層20では、パーティングラインは、電気ストレスの比較的低位となる補強絶縁層20の中央部の外周部と、両端の第1ストレスコーン8と第2ストレスコーン9のそれぞれの外周部に配置することができる。
【0029】
次に、絶縁チューブユニット成形用の型40により、絶縁チューブユニット10を成形する方法について説明する。
上述した第1ブロック41と第2ブロック42と第3ブロック43と第4ブロック44を組み合わせて成形型40を組み立てる。この成形型40の中心の孔(キャビティ51,52,53,54)には、内部半導電層30と第1ストレスコーン8と第2ストレスコーン9とを取り付けた芯金200の組み立てユニットが配置されている。
成形型40は、図2に示すように、簡単な構造の型締め装置100の固定板101と押圧板102との間に挟むことで、型締め力Pで型締めする。
【0030】
次に、図2に示す第3ブロック43の液状シリコーンゴムの注入口61には、液状シリコーンゴムをランナー63とフィルムゲート62を介して注入すると、図3に示すように、液状シリコーンゴムGが成形型40のキャビティ内に充填される。
【0031】
これにより、図3に示すように内部半導電層30と、第1ストレスコーン8と第2ストレスコーン9を覆う補強絶縁層20を成形できる。液状シリコーンゴムの注入口61を、材料注入時に最下部となる角度に選定すれば、注入時のエアの巻き込みを最小限にすることができる。液状シリコーンゴムを注入口61に注入する場合に、キャビティ51〜54内の空気は、吐出口71から外部に排出できるので、補強絶縁層20の外周部分にボイドが生じるのを防止できる。また、吐出口71は、材料注入時に最頂部とすることで、混入したエアを積極的に除去することができる。
【0032】
以上のようにして補強絶縁層20が成形された後に、図3に示す型締め装置100の固定板101と押圧板102による型締めを解除する。そして、第1ブロック41と第2ブロック42と第3ブロック43と第4ブロック44を分割面C1、C2、C3に沿って中心軸CL方向に分解する。これにより、絶縁チューブユニット10(補強絶縁層20の成形品)を取り出す。
【0033】
この取り出しの際には、図3に示すように、キャビティ53,54が互いに逆になるように傾斜して形成されているので、第3ブロック43のキャビティ53と第4ブロック4のキャビティ54から成形後に絶縁チューブユニット10(補強絶縁層20の成形品)を容易に引く抜くことができる。すなわち、硬化のための加熱によりシリコーンゴムが熱膨張しているためにキャビティの内面に密着している絶縁チューブユニット10の補強絶縁層20を容易にはがすことができ、この取り出し抵抗を軽減して作業を容易にすることができる。
【0034】
このように、補強絶縁層20が成形されるが、補強絶縁層20の外周面には、分割面C1、C2、C3に沿ってパーティングラインが全周囲に沿って転写されるが、これらのパーティングラインは研磨して除去できる。
そして、工場で拡径されて、中心孔に拡径部材を挿入した状態で、施工現場に運び込む。
【0035】
成形型40は、図2に示すように、型締め装置100の固定板101と押圧板102により挟むことで、型締め力Pで型締めする。この際の型締め力Pは、従来に比べて小さく設定することができる。
硬化のための加熱により液状シリコーンゴムが熱膨張する。このため、図8に示す従来例では、成型時に上金型201と下金型202が上下の分割方向にそれぞれ開いてしまうことから、上型締め部203と下型締め部204を、油圧ピストン206を用いて上金型201と下金型202を強い力で型締めする必要がある。
【0036】
これに対して、本発明の実施形態の成形型40では、中心軸CL方向左右方向に分割する構造を採用しているので、シリコーンゴムが熱膨張することで左右方向に分割する方向に掛る力を小さくできることから、型締め力Pは従来の型締め力に比べて小さくできる。
【0037】
次に、図5を参照して、前記実施形態の成形型の変形例を説明する。
この成形型では、図5に示すように、前記実施形態の隣接する第1ブロック41と第3ブロック43の外周に鍔を設けておき、ここを例えばボルト75とナット76により互いに締結する。同様にして、第3ブロック43と第4ブロック44と、第4ブロック44と第2ブロック42とも、ボルト75とナット76により互いに締結する。
このようにボルトで型締めできるのは、ブロック41、42、43、44を径方向に沿う分割面C1、C2、C3で分割したからある。すなわち、ブロック41、42、43、44を閉じる方向(型締め方向)への補強絶縁層20の投影面積が、従来の中心線CLに対して上下に開く金型の場合の補強絶縁層の投影面積に比べて小さいので、型締め力が小さくて済むからである。
このように、4つのブロック41、42、43、44を、互いにボルトとナットにより着脱可能に締結すれば、油圧による型締めが必要ではないので、成形装置を簡略化できるうえ、成形型を多数使用して生産性向上を図ることができる。
【0038】
次に、図6を参照して、本発明の成形型の別の実施形態を説明する。
図6は、本発明の成形型の別の実施形態を示す断面図である。
図2と図3に示す上述した本発明の実施形態では、成形型40が、4つのブロックで構成されている。
これに対して、図6に示す絶縁チューブユニット成形用の成形型80は、3つのブロック、すなわち第1ブロック81と第2ブロック82と第3ブロック83を組み合わせることで構成されている。
【0039】
成形型80は、例えばアルミニウム等の金属により作られている。成形型80は、軸方向CLに対して直交する径方向Tに沿う分割面C4、C5を有しており、3つのブロックに分割できるようになっている。
【0040】
第1ブロック81と第2ブロック82は、略左右対称形状に形成されている。第1ブロック分81と第2ブロック82内には、円錐状のキャビティ91,92がそれぞれ形成されている。第3ブロック83内には、ほぼ円柱状のキャビティ83が形成されている。これらのキャビティ91,92,93は、液状シリコーンゴムを射出して、図1に示す絶縁チューブユニット10Aの補強絶縁層20Aを成形する空間である。
【0041】
キャビティ91の最大内径D1はキャビティ93の最小内径D2と同じである。キャビティ92の最大内径D5はキャビティ93の最大内径D6と同じである。従って、キャビティ93には、X1方向に向けて傾斜角度θだけ開くように傾斜面93Dが形成されている。
【0042】
この傾斜角度θは、好ましくは1.5度〜1.6度である。この傾斜角度θが1.5度よりも小さいと、絶縁チューブユニット10Aの補強絶縁層20Aを取り出すときには取り出し抵抗を軽減できないので好ましくなく、傾斜角度θが1.6度よりも大きいと、絶縁チューブユニット10Aの補強絶縁層20Aの外周形状に、大きなテーパが形成されてしまうので好ましくない。
このようにキャビティ53が傾斜して形成されているのは、第3ブロック83のキャビティ93から成形後に絶縁チューブユニット10Aの補強絶縁層20Aを引く抜き易くするためである。
【0043】
第1ブロック81のキャビティ91は、図6に示す補強絶縁層20Aのテーパ部20Pを形成し、第2ブロック82のキャビティ92は、図1と図3に示す補強絶縁層20Aのテーパ部20Rを形成する。第3ブロック83のキャビティ93は、補強絶縁層20Aの円柱部20Sを形成することができる。第1ブロック81は、中心軸CLに沿って貫通穴41Hを有しており、第2金型部分82は、中心軸CLに沿って貫通穴42Hを有している。
第1ブロック81と第2ブロック82と第3ブロック83は、ほぼ直方体形状部材である。各金型部分の四隅部分には、それぞれ位置合わせ用の穴が形成されている。
【0044】
図6に示すように、第3ブロック83には、液状シリコーンゴムの注入口61と、フィルムゲート62が形成されている。このフィルムゲート62は注入口61に対してランナー(図示せず)を介して接続されている。液状シリコーンゴムの注入口61とフィルムゲート62とランナーは、第1金型部分81と第3金型部分83の接合部分に形成されている。
【0045】
一方、液状シリコーンゴムのオーバフロー口71とフィルムゲート72とランナー(図示せず)は、第2ブロック82と第3ブロック83の接合部分に形成されている。
【0046】
図3に示すように、成形される補強絶縁層20Aには、分割面C5、C6に対応する位置に、パーティングラインが形成される。このパーティングラインは、補強絶縁層20Aの外周面において全周にわたって線状に形成されるだけの場合もあるが、バリ状に形成される場合もある。
成形型80のパーティングラインは、電気ストレスの比較的低位となる補強絶縁層20Aの中央部の外周部と、両端の第1ストレスコーン8と第2ストレスコーン9のそれぞれの外周部に配置することができる。
隣接するブロックを型締めする手段として図5に示した構造を採用しても良い。
【0047】
各ブロックの合わせ部は、パーティングラインと呼ばれる接続箇所であるが、接続箇所に対応する絶縁チューブユニットの位置には、バリと呼ばれる製品上不要箇所が生じるので、成形後は研磨処理等の仕上げ処理が必要である。これらのパーティングラインは、成形時の材料の出入口を伴っているために、残留応力が生じやすい、フローマークと呼ばれる材料の流れが見えやすい等の製品機能、製品外観の品質問題が生じる場合がある。
【0048】
そこで、このような問題に対しては、本発明の成形型では、3つ以上のブロックが絶縁チューブユニットの径方向に沿って分割されているので、製品におけるパーティングラインの設定には自由度があり、製品機能、製品外観に配慮した金型設計が可能となる。材料の注入口や吐出口は、パーティングラインのどの位置に設けても良く、注入口は材料注入時に最下部となる角度に選定ができ、注入時のエアの巻き込みを最小限にすることができる。同様に、吐出口は、材料注入時に最頂部とすることで、混入したエアを積極的に除去することができる。材料の注入口や吐出口の形状については、丸断面や角断面のゲートでも、フィルム状ゲートであっても採用できる。
【0049】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、成形型を構成する金型部分の数は、絶縁チューブユニットの長さや直径等に応じて選択でき、金型部分の数は、5つ以上であっても良い。
また、前記実施形態では外部半導電層が設けていない絶縁チューブユニットおよび成形型を例示して説明したが、絶縁チューブユニットは外部半導電層が設けられたものであっても良い。例えば、補強絶縁層の外周面に外部半導電層をシリコーンゴムで円筒状に成形した絶縁チューブユニットであってもよい。このような外部半導電層を成形した絶縁チューブユニットを製造する場合は、次のようにする。すなわち、まず、図3に示したように補強絶縁層を成形する。ついで、これを一回り大きなキャビティを有する成形型にセットする。次に、成形型と補強絶縁層20との間の空間に、カーボンブラックが配合されたシリコーン樹脂を注入して外部半導電層を成形する。
本発明の成形型、成形方法は、絶縁チューブユニット以外の製品、特に液状樹脂射出成型法で成形される製品で、縦断面の面積が横断の面積に比較して小さいような製品に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 絶縁チューブユニット
20 補強絶縁層
30 内部半導電層
40 絶縁チューブユニット成形用の型
41 第1ブロック
42 第2ブロック
43 第3ブロック
44 第4ブロック
51〜54 キャビティ
C1〜C3 分割面(絶縁チューブユニット10の径方向)
CL 中心軸
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの接続部を絶縁処理するための絶縁チューブユニットを成形するキャビティを有する絶縁チューブユニット成形用の型であって、前記絶縁チューブユニットの径方向に沿った分割面で分割されている3つのブロックからなることを特徴とする絶縁チューブユニット成形用の型。
【請求項2】
前記ブロックのキャビティ側の面が、前記径方向に直交する前記金型部分の開き方向に対して、傾斜する面になっていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁チューブユニット成形用の型。
【請求項3】
前記3つ以上のブロックは、ボルトとナットにより互いに締めて組み立てられることを特徴とする請求項1に記載の絶縁チューブユニット成形用の型。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の前記絶縁チューブユニット成形用の型により成形されたことを特徴とする絶縁チューブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−20263(P2011−20263A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164330(P2009−164330)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】