説明

絶縁基板およびその製造方法

【課題】絶縁性および放熱性のいずれにも優れる発光素子を提供することができる絶縁基板およびその製造方法ならびにそれを用いた発光素子の提供。
【解決手段】金属基板33と、前記金属基板の表面に設けられる絶縁層32とを有する絶縁基板であって、前記金属基板が、バルブ金属基板であり、前記絶縁層が、バルブ金属の陽極酸化皮膜であり、前記陽極酸化皮膜の空隙率が、30%以下である絶縁基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に用いられる絶縁基板に関するものであり、詳しくは発光ダイオード(以下、「LED」という。)に用いられる絶縁基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、LEDは、蛍光灯と比較して、電力使用量が1/100、寿命が40倍(40000時間)と言われている。このような省電力かつ長寿命という特徴が、環境重視の流れの中でLEDが採用される重要な要素となっている。
特に白色LEDは、演色性に優れ、蛍光灯に比べて電源回路が簡便であるというメリットもあることから、照明用光源としての期待が高まっている。
近年、照明用光源として要求される発光効率の高い白色LED(30〜150lm/W)も続々と登場し、実用時における光の利用効率の点では、蛍光灯(20〜110lm/W)を逆転している。
これにより、蛍光灯にかわり白色LEDの実用化の流れが一気に高まり、液晶表示装置のバックライトや照明用光源として白色LEDが採用されるケースも増えつつある。
【0003】
ところで、高輝度化を達成するためにLEDチップに電流を大量に流すと、発熱量が増大して波長変換用蛍光体担持樹脂材料の経時劣化を促進し、その結果、長寿命という特徴が犠牲になるという問題点が指摘されている。
実際、従来のLEDにおいては、長時間駆動させたり、発光輝度を高めるために高電流駆動させたりすると、LEDチップが著しく発熱して高温状態となり、熱劣化するという問題が生じている。
【0004】
このような問題を解消するため、アルミニウム基板の表面を陽極酸化皮膜で被覆した絶縁基板が提案されており(例えば、特許文献1〜7を参照)、陽極酸化皮膜が絶縁性を有するとともに、アルミニウム基板が高い熱伝導性を有するため、良好な放熱性が得られることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−250315号公報
【特許文献2】実開昭55−154564号公報
【特許文献3】特開平6−45515号公報
【特許文献4】特開平7−14938号公報
【特許文献5】特表平11−504387号公報
【特許文献6】特開2006−344978号公報
【特許文献7】特開2009−164583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1〜7に記載の絶縁基板について検討を行った結果、更なる絶縁性(耐電圧)の向上の観点から陽極酸化皮膜の膜厚を厚くすると、放熱性が低下してしまうことが明らかとなり、優れた絶縁性および放熱性を両立することが困難であることが分かった。
【0007】
そこで、本発明は、絶縁性および放熱性のいずれにも優れる発光素子を提供することができる絶縁基板およびその製造方法ならびにそれを用いた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、陽極酸化皮膜の空隙率を所定の値以下とした絶縁層を有する絶縁基板を用いることにより、優れた絶縁性と放熱性を両立できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(14)を提供する。
【0009】
(1)金属基板と、上記金属基板の表面に設けられる絶縁層とを有する絶縁基板であって、
上記金属基板が、バルブ金属基板であり、
上記絶縁層が、バルブ金属の陽極酸化皮膜であり、
上記陽極酸化皮膜の空隙率が、30%以下である絶縁基板。
【0010】
(2)上記陽極酸化皮膜の表面が、平均ピッチが0.5μm以下で、かつ、平均直径が1μm以上の凹凸を有する上記(1)に記載の絶縁基板。
【0011】
(3)上記陽極酸化皮膜が、マイクロポアを有し、
上記マイクロポアの内部の少なくとも一部が、上記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質によって封孔されている上記(1)または(2)に記載の絶縁基板。
【0012】
(4)上記陽極酸化皮膜が、マイクロポアを有し、
上記マイクロポアが、その内部の少なくとも一部が上記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質によって封孔されているマイクロポアと、その内部が上記異なる物質により封孔されていないマイクロポアとで構成されている上記(1)〜(3)のいずれかに記載の絶縁基板。
【0013】
(5)上記異なる物質が、絶縁性である上記(3)または(4)に記載の絶縁基板。
【0014】
(6)上記バルブ金属が、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマスおよびアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種の金属である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の絶縁基板。
【0015】
(7)上記バルブ金属が、アルミニウムである上記(6)に記載の絶縁基板。
【0016】
(8)上記絶縁基板が、LED発光素子の発光観測面側に設けられる基板である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の絶縁基板。
【0017】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の絶縁基板を製造する絶縁基板の製造方法であって、
バルブ金属基板の表面に陽極酸化処理を施して、バルブ金属の陽極酸化皮膜をバルブ金属基板上に形成させる陽極酸化処理工程と、
上記陽極酸化処理工程の後に、封孔処理を施して、上記陽極酸化皮膜の空隙率を30%以下とする封孔処理工程とを有する絶縁基板の製造方法。
【0018】
(10)上記陽極酸化処理により、マイクロポアを有する上記陽極酸化皮膜が形成され、
上記封孔処理により、上記マイクロポアの内部の少なくとも一部が上記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質により封孔される、上記(9)に記載の絶縁基板の製造方法。
【0019】
(11)上記バルブ金属基板の厚さ方向にスルーホールを貫通形成するスルーホール形成工程を有する、上記(9)または(10)に記載の絶縁基板の製造方法。
【0020】
(12)上記スルーホール形成工程の後に、上記バルブ金属基板を所望の形状で個片化可能にする個片化工程を有する上記(11)に記載の絶縁基板の製造方法。
【0021】
(13)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の絶縁基板と、上記絶縁基板の上記絶縁層側の上部に設けられる金属配線層とを有する配線基板。
【0022】
(14)上記(13)に記載の配線基板と、上記配線基板の上記金属配線層側の上部に設けられる青色LED発光素子と、上記青色LED発光素子の少なくとも上部に設けられる蛍光発光体とを具備する白色系LED発光素子。
【発明の効果】
【0023】
以下に説明するように、本発明によれば、絶縁性および放熱性のいずれにも優れる発光素子を提供することができる絶縁基板およびその製造方法ならびにそれを用いた発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、マイクロポアにおける異なる物質の封孔態様を示す模式的な断面図である。
【図2】図2は、本発明の絶縁基板の作製における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【図3】図3は、本発明の白色系LED発光素子の一構成例を示した模式的な断面図である。
【図4】図4は、本発明の白色系LED発光素子の他の構成例を示した模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明の白色系LED発光素子の他の構成例を示した模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[絶縁基板]
以下に、本発明の絶縁基板について詳細に説明する。
本発明の絶縁基板は、金属基板と、上記金属基板の表面に設けられる絶縁層とを有する絶縁基板であって、上記金属基板がバルブ金属基板であり、上記絶縁層がバルブ金属の陽極酸化皮膜であり、上記陽極酸化皮膜の空隙率が30%以下である絶縁基板である。
次に、本発明の絶縁基板を構成する金属基板(バルブ金属基板)および絶縁層(バルブ金属の陽極酸化皮膜)について説明する。
【0026】
〔金属基板〕
本発明の絶縁基板に用いられる金属基板は、バルブ金属からなる基板である。
ここで、バルブ金属とは、陽極酸化により金属表面がその金属の酸化物の皮膜で覆われる特性を有し、更にその酸化皮膜が、電流を一方方向にのみ流して逆方向には非常に流しにくい特性を有する金属のことであり、その具体例としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。
これらのうち、発光素子における光源の透過性が良好となり、加工性および強度にも優れる理由から、アルミニウム基板であるのが好ましい。
【0027】
<アルミニウム基板>
本発明の絶縁基板に好適に用いられるアルミニウム基板は、公知のアルミニウム基板を用いることができ、純アルミニウム基板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等を用いることもできる。
ここで、上記合金板に含まれてもよい異元素としては、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等が挙げられ、合金中の異元素の含有量は、10質量%以下であるのが好ましい。
【0028】
このように本発明の絶縁基板に好適に用いられるアルミニウム基板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム基板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
【0029】
JIS1050材に関しては、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号、特開昭62−140894号、特公平1−35910号および特公昭55−28874号の各公報に記載されている。
【0030】
JIS1070材に関しては、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
【0031】
Al−Mg系合金に関しては、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号、特公平6−37116号、特開平2−215599号および特開昭61−201747号の各公報に記載されている。
【0032】
Al−Mn系合金に関しては、特開昭60−230951号、特開平1−306288号、特開平2−293189号、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号および特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等に記載されている。
【0033】
Al−Mn−Mg系合金に関しては、特開昭62−86143号、特開平3−222796号、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号および特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等に記載されている。
【0034】
Al−Zr系合金に関しては、特公昭63−15978号、特開昭61−51395号、特開昭63−143234号および特開昭63−143235号の各公報等に記載されている。
【0035】
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
【0036】
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。
まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
【0037】
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
【0038】
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固定鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
【0039】
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム基板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
【0040】
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム基板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム基板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム基板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム基板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
【0041】
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
【0042】
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
【0043】
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
【0044】
アルミニウム基板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム基板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム基板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
【0045】
アルミニウム基板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム基板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
【0046】
アルミニウム基板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
【0047】
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム基板をその最終圧延工程等において、積層圧延、転写等により凹凸を形成させて用いることもできる。
【0048】
本発明の絶縁基板に好適に用いられるアルミニウム基板は、アルミニウムウェブであってもよく、枚葉状シートであってもよい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
【0049】
本発明の絶縁基板に好適に用いられるアルミニウム基板の厚みは、0.1〜2.0mm程度であり、0.15〜1.5mmであるのが好ましく、0.2〜1.0mmであるのがより好ましい。この厚さは、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
【0050】
〔絶縁層〕
本発明の絶縁基板に用いられる絶縁層は、上記金属基板(バルブ金属基板)の表面に設けられる層であって、上述したバルブ金属の陽極酸化皮膜である。
上記絶縁層は、上記バルブ金属基板とは別のバルブ金属基材の陽極酸化皮膜であってもよいが、絶縁層の形成欠陥を防ぐ観点から、上記バルブ金属基板の一部(表面)に後述する陽極酸化処理を施すことによってバルブ金属基板上に形成される陽極酸化皮膜であるのが好ましい。
【0051】
本発明においては、上記陽極酸化皮膜の空隙率が30%以下であり、15%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。
ここで、陽極酸化皮膜の空隙率とは、下記式により算出される値をいう。なお、下記式中、バルブ金属酸化物の密度(g/cm3)は、化学便覧等に記載された密度をいい、例えば、酸化アルミニウムであれば3.98であり、酸化チタンであれば4.23である。
空隙率(%)=〔1−(酸化皮膜密度/バルブ金属酸化物の密度)〕×100
(式中、酸化皮膜密度(g/cm3)は、「単位面積あたりの酸化皮膜質量/酸化皮膜膜厚」を表す。)
【0052】
このような空隙率を有する陽極酸化皮膜を絶縁層に用いることにより、絶縁性および放熱性がいずれも優れる発光素子を提供することができる。
これは、陽極酸化皮膜の組成や膜厚に影響を与えずに、陽極酸化皮膜の空隙に存在する空気量が減ることになる結果、陽極酸化皮膜の優れた絶縁性を保持しつつ熱伝導率も高くすることができたためと考えられる。
【0053】
また、本発明においては、絶縁性をより良好とする観点から、図1に示すように、上記陽極酸化皮膜1が有するマイクロポア2の内部の少なくとも一部が、上記陽極酸化皮膜1を構成する物質とは異なる物質3によって封孔されているのが好ましく(図1(A)参照)、更に後述する金属配線層との密着性も良好にする観点から、上記陽極酸化皮膜1が有するマイクロポアが、その内部の少なくとも一部が上記陽極酸化皮膜1を構成する物質とは異なる物質3によって封孔されているマイクロポア2aとともに、その内部が上記異なる物質により封孔されていないマイクロポア2bとで構成されているのがより好ましい(図1(B)参照)。
ここで、上記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質は、絶縁性であるのが好ましく、その具体例としては、上記陽極酸化皮膜がアルミニウムの陽極酸化皮膜(酸化アルミニウム)である場合、具体的には、例えば、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、および、これらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、酸化アルミニウムと屈折率が近く、発光素子における光源の透過性が良好となる理由ならびに酸化アルミニウムとの吸着性および絶縁性に優れる理由から、水酸化アルミニウムおよびその水和物であるのが好ましい。
【0054】
更に、本発明においては、発光素子の用途に応じて、上記絶縁層を上記金属基板の両面に設けていてもよく、上記金属基板の端面に設けていてもよい。
【0055】
このような本発明の絶縁基板を構成する金属基板および絶縁層の表面は、特に白色LED用の絶縁基板として使用する場合において、光の拡散反射成分を高める観点から、所定の表面形状を設けることができる。
表面形状としては、平均波長0.01〜100μmの凹凸を有する形状が好ましく、また、異なる波長の凹凸が重畳された形状であってもよい。
このような表面形状を有すると、光拡散効果が向上し、発光吸収効果および干渉効果(反射としてのロスとなりうる効果)を抑えることができると推定される。
このような表面形状を設ける処理は、例えば、特開2007−245116号公報の段落[0049]〜[0076]に記載されているような、機械的/電気的/化学的な各種処理条件で施すのが好ましい。
【0056】
特に、本発明の絶縁基板を構成する絶縁層(陽極酸化皮膜)の表面は、LED実装を考慮して設けられる後述する金属配線層との密着性が良好となり、非配線部分の反射特性の劣化を抑制できる理由から、平均ピッチが0.5μm以下で、かつ、平均直径が1μm以上の凹凸を有しているのが好ましい。
本発明においては、上記凹凸は、上記陽極酸化皮膜が有するマイクロポアの内部の一部(例えば、8〜9割程度)に上記異なる物質を封孔することによっても形成することができる。
【0057】
[絶縁基板の製造方法]
以下に、本発明の絶縁基板の製造方法について詳細に説明する。
本発明の絶縁基板の製造方法は、上述した本発明の絶縁基板を製造する方法であって、
バルブ金属基板の表面に陽極酸化処理を施して、バルブ金属の陽極酸化皮膜をバルブ金属基板上に形成させる陽極酸化処理工程と、
上記陽極酸化処理工程の後に、封孔処理を施して、上記陽極酸化皮膜の空隙率を30%以下とする封孔処理工程とを有する絶縁基板の製造方法である。
次に、陽極酸化処理工程および封孔処理工程について説明する。
【0058】
〔陽極酸化処理工程〕
陽極酸化処理工程は、上記金属基板の表面に陽極酸化処理を施すことにより、金属基板表面に多孔質または非孔質部分を有する絶縁層を形成する処理工程である。
【0059】
酸化処理工程における陽極酸化処理は、平版印刷版用支持体の製造等で行われている従来の方法で陽極酸化処理を施すことができる。
具体的には、陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、ホウ酸等や、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属/アルカリ土類金属の水酸化物等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム基板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0060】
また、陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜600V、電解時間15秒〜20時間であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
【0061】
更に、第1陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
【0062】
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/Lであるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/Lであるのが好ましく、2〜10g/Lであるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
【0063】
陽極酸化処理工程においては、硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム基板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム基板に直流を印加する場合、電流密度は1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
【0064】
また、陽極酸化処理工程における陽極酸化処理を連続的に施す場合には、アルミニウム基板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/dm2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム基板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
【0065】
陽極酸化皮膜が多孔質である場合、マイクロポアの平均ポア径が5〜1000nm程度であり、平均ポア密度が1×106〜1×1010/mm2程度である。また、このマイクロポアの陽極酸化皮膜における割合と近似する陽極酸化皮膜の空隙率は、後述する封孔処理が容易となる観点から、1〜90%であることが好ましく、5〜80%がより好ましく、10〜70%が特に好ましい。なお、空隙率の算出方法は、上述した通りである。
【0066】
陽極酸化皮膜の厚さは1〜200μmであるのが好ましい。1μm未満であると絶縁性に乏しく耐電圧が低下し、一方、200μmを超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利になる。陽極酸化皮膜の厚さは、2〜100μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのが更に好ましい。
【0067】
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。中でも、図2に示す装置が好適に用いられる。図2は、アルミニウム基板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム基板416は、図2中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム基板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム基板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム基板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム基板416は後工程に搬送される。上記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム基板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、上記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0068】
図2の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム基板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム基板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム基板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁432にアルミニウム基板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
【0069】
また、陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、ある1つの処理条件で単独処理されてもよいが、陽極酸化皮膜の、場所による形状、あるいは深さ方向における形状、等のように形状を制御したい場合には、2つ以上の条件の異なる陽極酸化処理を順次組み合わせて処理してもよい。
【0070】
また、後述する封孔処理工程における封孔のバラツキを抑制する観点から、例えば、特許第3,714,507号、特開2002−285382号公報、特開2006−124827号公報、特開2007−231339号公報、特開2007−231405公報、特開2007−231340号公報、特開2007−238988号公報等に記載されている方法により、ハニカム状に配列したマイクロポアを形成する陽極酸化処理が好ましい。
これらの処理は、各特許および公報の処理条件にて記載されている処理が好ましい。
【0071】
〔封孔処理工程〕
封孔処理工程は、上記陽極酸化処理工程の後に、封孔処理を施して、上記陽極酸化皮膜の空隙率を30%以下とし、本発明の絶縁基板を得る工程である。
【0072】
封孔処理工程における封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
【0073】
本発明においては、上記陽極酸化皮膜がマイクロポアを有している場合、上記陽極酸化皮膜の空隙率をより小さくし、放熱性をより良好とする観点から、陽極酸化皮膜の表面だけではなく、沸騰水処理、熱水処理、ケイ酸ソーダ処理等の処理液をマイクロポアの内部まで浸透させるのが好ましい。
【0074】
また、本発明においては、上記陽極酸化皮膜がマイクロポアを有している場合、絶縁性をより良好にする観点から、上述したように、上記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質によって封孔されているのが好ましい。
このような異なる物質を封孔させる封孔処理としては、例えば、上述した沸騰水処理、熱水処理、ケイ酸ソーダ処理等の処理液をマイクロポアの内部まで浸透させることにより、マイクロポアの内壁を構成する物質(例えば、酸化アルミニウム等)を変質(例えば、水酸化アルミニウム等に変質)させる方法であってもよいが、特開平6−35174号公報の段落[0016]〜[0035]に記載されているようなゾルゲル法による封孔処理等も好適に挙げられる。
ここで、ゾルゲル法とは、一般に金属アルコキシドからなるゾルを加水分解・重縮合反応により流動性を失ったゲルとし、このゲルを加熱して酸化物を形成する方法である。
上記金属アルコキシドは、特に限定されないが、マイクロポアの内部への封孔が容易である観点から、Al(O−R)n、Ba(O−R)n、B(O−R)n、Bi(O−R)n、Ca(O−R)n、Fe(O−R)n、Ga(O−R)n、Ge(O−R)n、Hf(O−R)n、In(O−R)n、K(O−R)n、La(O−R)n、Li(O−R)n、Mg(O−R)n、Mo(O−R)n、Na(O−R)n、Nb(O−R)n、Pb(O−R)n、Po(O−R)n、Po(O−R)n、P(O−R)n、Sb(O−R)n、Si(O−R)n、Sn(O−R)n、Sr(O−R)n、Ta(O−R)n、Ti(O−R)n、V(O−R)n、W(O−R)n、Y(O−R)n、Zn(O−R)n、Zr(O−R)n等が好適に例示される。なお、上記例示中、Rは、置換基を有してもよい、直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基または水素原子を表し、nは任意の自然数を示す。
これらのうち、上記絶縁層がアルミニウムの陽極酸化皮膜である場合、酸化アルミニウムとの反応性に優れ、ゾルゲル形成性に優れた、酸化チタン、酸化珪素系の金属アルコキシドが好ましい。
また、ゾルゲルをマイクロポアの内部に形成する方法は特に限定されないが、マイクロポアの内部への封孔が容易である観点から、ゾル液を塗布して加熱する方法が好ましい。
また、ゾル液の濃度は、0.1〜90質量%が好ましく、1〜80質量%がより好ましく、5〜70質量%が特に好ましい。
また、空隙率を低下させるために、繰り返し重ねて処理してもよい。
【0075】
一方、このような異なる物質を封孔させる他の封孔処理として、上記陽極酸化皮膜が有するマイクロポアに入る大きさの絶縁性粒子をマイクロポア内部に充填させてもよい。
このような絶縁性粒子としては、分散性およびサイズの観点からコロイダルシリカが好ましい。
コロイダルシリカは、ゾル−ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。ゾル−ゲル法で調製する場合には、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci., 26, 62−69 (1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6, 792−801 (1990)、色材協会誌,61 [9] 488−493 (1988) などを参照できる。
また、コロイダルシリカは、二酸化ケイ素を基本単位とするシリカの水または水溶性溶媒の分散体であり、その粒子径は1〜400nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、5〜50nmであることが特に好ましい。粒子径が1nmより小さい場合は、塗液の貯蔵安定性が悪く、400nmより大きい場合は、マイクロ孔への充填性が悪くなる。
上記範囲の粒子径のコロイダルシリカは、水性分散液の状態で、酸性、塩基性のいずれであっても用いることができ、混合する水性分散体の安定領域に応じて、適宜選択することができる。
水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業社製のスノーテックス(登録商標。以下同様。)−O、スノーテックス−OL、旭電化工業社製のアデライト(登録商標。以下同様。)AT−20Q、クラリアントジャパン社製クレボゾール(登録商標。以下同様。)20H12、クレボゾール30CAL25等の市販品を使用することができる。
【0076】
塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンの添加で安定化したシリカがあり、例えば、日産化学工業社製のスノーテックス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−C、スノーテックス−C30、スノーテックス−CM40、スノーテックス−N、スノーテックス−N30、スノーテックス−K、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−L;旭電化工業社製のアデライトAT−20、アデライトAT−30、アデライトAT−20N、アデライトAT−30N、アデライトAT−20A、アデライトAT−30A、アデライトAT−40、アデライトAT−50;クラリアントジャパン社製のクレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50;デュポン社製のルドックス(登録商標。以下同様。)HS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、ルドックスSM−30;等の市販品を使用することができる。
【0077】
また、水溶性溶剤を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業社製のMA−ST−M(粒子径:20〜25nm、メタノール分散タイプ)、IPA−ST(粒子径:10〜15nm、イソプロピルアルコール分散タイプ)、EG−ST(粒子径:10〜15nm、エチレングリコール分散タイプ)、EG−ST−ZL(粒子径:70〜100nm、エチレングリコール分散タイプ)、NPC−ST(粒子径:10〜15nm、エチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)等の市販品を使用することができる。
また、これらコロイダルシリカは、一種または二種類以上組み合わせてもよく、少量成分として、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどを含んでいてもよい。
また、コロイダルシリカは、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウムなど)を含んでいてもよい。
【0078】
本発明においては、上記封孔処理において、上記マイクロポアの内部に上記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質を封孔した場合、空隙率が30%を超えない限度において、上記陽極酸化皮膜の表層(表面)付近に存在する上記異なる物質を除去するのが好ましい。
表層付近に存在する上記異なる物質を除去することにより、上記陽極酸化皮膜の表面に、平均ピッチが0.5μm以下で、かつ、平均直径が1μm以上の凹凸を形成することが容易となり、これにより後述する金属配線層との密着性が良好になる。
また、表層付近に存在する上記異なる物質を除去する方法は特に限定されないが、例えば、後述する実施例に示す酵素プラズマ処理、水酸化ナトリウム水溶液による浸漬処理等の他、機械的研磨処理や化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理等により表層部分のみを除去する方法が好適に挙げられる。
【0079】
〔スルーホール形成工程/個片化工程〕
本発明の絶縁基板の製造方法においては、スルーホール形成工程を備えていてもよい。スルーホール形成工程は、上記金属基板の厚さ方向に上記スルーホールを貫通形成する工程である。
また、本発明の絶縁基板の製造方法においては、個片化工程を備えていてもよい。個片化工程は、上記スルーホール形成工程を備える場合には上記スルーホール形成工程の後に、上記金属基板を所望の形状(例えば、最終製品に必要な加工シロを加えたもの等)で個片化可能にする工程であり、ルーティング加工ともいう。
これらの工程は、上述した陽極酸化処理工程の前に行っても後に行ってもよい。陽極酸化処理工程の前に行うと、陽極酸化処理により形成される絶縁層への亀裂を防ぎ、これらの工程により生じる基板端面部への絶縁性を保持することができる。陽極酸化処理工程の後に行うと、陽極酸化処理の効率を上げられ、また最終製品のサイズに精度よく加工することができる。
【0080】
スルーホール形成工程により形成されるスルーホールの形状は、配線が必要な複数の層間の長さを有し、必要な配線をその中に入れて確保できる大きさ(径)であれば特に限定されないが、最終的なチップの大きさや、より確実な配線の形成を考えると、円形であることが好ましく、具体的には、0.01〜2mmφが好ましく、0.05〜1mmφがより好ましく、0.1〜0.8mmφが特に好ましい。
【0081】
また、個片化工程において個片化するサイズは、最終的なチップの大きさや形状を考慮する必要があるが、方形型のチップを想定した場合、チップのコンパクト性および加工適性の観点から、1辺が0.1〜50mmが好ましく、0.2〜40mmがより好ましく、0.4〜30mmが特に好ましい。特に、メインパッケージ用の反射基板を想定する場合には、現在の形状規格例である、3.2mm×2.8mm、1.6mm×0.8mm等の大きさにルーティングすることが好ましい。
また、個片化した後のチップ部には、上述した陽極酸化処理工程を個片化工程の後に行う場合は、陽極酸化処理により絶縁層を設けるために、チップ部への電気導通性を施す形状に加工しておくことが好ましい。好適な方法としては、導通部を設けた状態でルーティング加工する方法、導通ワイヤ等によりチップ部を接続しておく方法等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
本発明においては、スルーホール形成工程および個片化工程を施す好適な方法としては、ドリル加工、金型によるプレス加工、ダイサーによるダイシング加工、レーザー加工、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
〔保護処理〕
更に、本発明の絶縁基板の製造方法においては、上述したスルーホール形成工程や個片化工程、後述するLEDへの電気信号伝送のための金属配線層形成加工やLED実装部への金属層形成加工等で使用する各種溶剤に対応させるべく、保護処理を施すことができる。
保護処理としては、具体的には、例えば、特開2008−93652号公報、特開2009−68076号公報等に記載のように、陽極酸化皮膜表面の親/疎水性(親/疎油性)の性質を適宜変えることができるほか、酸/アルカリ等に耐性を付与する方法も、適宜用いることができる。
【0084】
〔その他の処理〕
更に、本発明の絶縁基板の製造方法においては、必要に応じて絶縁基板の表面に種々の処理を施すことができる。
例えば、反射基板の白色性を高めるために、酸化チタン等の白色性絶縁性材料からなる無機絶縁層、白色レジスト等の有機絶縁層を設けてもよい。
また、上記白色以外にも、例えば電着処理により、酸化アルミニウムよりなる絶縁層に所望の色を着色することができる。具体的には、「陽極酸化」金属表面技術協会編.金属表面技術講座B(1969 PP.195〜207)、「新アルマイト理論」カロス出版(1997 PP.95〜96)等に記載されているような有色染色性のイオン種、具体的には、Coイオン、Feイオン、Auイオン、Pbイオン、Agイオン、Seイオン、Snイオン、Niイオン、Cuイオン、Biイオン、Moイオン、Sbイオン、Cdイオン、Asイオン等を電解液に混入して、電解処理することにより、着色を施すことができる。
【0085】
[配線基板]
以下に、本発明の配線基板について詳細に説明する。
本発明の配線基板は、上述した本発明の絶縁基板と、上記絶縁基板の上記絶縁層側の上部に設けられる配線層とを有する配線基板である。
【0086】
上記金属配線層の材料は、電気を通す素材であれば特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち、電気抵抗が低い理由からCuを用いるのが好ましい。なお、Cuによる配線層の表層には、ワイヤボンディングの容易性を高める観点から、Au層やNi/Au層を設けていてもよい。
【0087】
また、上記金属配線層の厚さは、導通信頼性およびパッケージのコンパクト性の観点から、0.5〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、5〜250μmが特に好ましい。
【0088】
上記金属配線層の形成方法としては、電解めっき処理、無電解めっき処理、置換めっき処理などの種々めっき処理の他、スパッタリング処理、蒸着処理、金属箔の真空貼付処理、接着層を設けての接着処理等が挙げられる。
これらのうち、耐熱性が高い観点から、金属のみの層形成であることが好ましく、厚膜/均一形成化および高密着性の観点から、めっき処理による層形成が特に好ましい。
【0089】
上記めっき処理は、非導電性物質(絶縁基板)に対するめっき処理になるため、シード層と呼ばれる還元金属層を設けた後、その金属層を利用して厚い金属層を形成する手法を用いるのが好ましい。
また、上記シード層の形成には、無電解めっきが用いるのが好ましく、めっき液としては、主成分(例えば、金属塩、還元剤等)と補助成分(例えば、pH調整剤、緩衝剤、錯化剤、促進剤、安定剤、改良剤等)から構成される溶液を用いるのが好ましい。なお、めっき液としては、SE−650・666・680、SEK−670・797、SFK−63(いずれも日本カニゼン社製)、メルプレートNI−4128、エンプレートNI−433、エンプレートNI−411(いずれもメルテックス社製)等の市販品を適宜用いることができる。
また、上記金属配線層の材料として銅を用いた場合、硫酸、硫酸銅、塩酸、ポリエチレングリコールおよび界面活性剤を主成分とし、その他各種添加剤を加えた種々の電解液を用いることができる。
【0090】
このようにして形成される金属配線層は、LED実装の設計に応じ、公知の方法でパターン形成される。また、実際にLEDが実装される箇所には、再度金属層(半田も含む)を設け、熱圧着や、フリップチップ、ワイヤボンディング等で、接続しやすい用に適宜加工することができる。
好適な金属層としては、半田、または、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属素材が好ましく、加熱によるLEDの実装の観点では、半田、または、Niを介してのAu、Agを設ける方法が接続信頼性の観点から好ましい。
【0091】
具体的には、パターンが形成された銅(Cu)配線上に、ニッケル(Ni)を介して金(Au)を形成する方法としては、Niストライクめっきを施し、その後にAuめっきを施す方法が挙げられる。
ここで、Niストライクめっきは、Cu配線層の表面酸化層の除去とAu層密着性確保を目的に施される。
また、Niストライクめっきには、一般的なNi/塩酸混合液を用いてもよく、NIPS−100(日立化成工業製)等の市販品を用いてもよい。
一方、Auめっきは、Niストライクめっきを施した後に、ワイアボンディングや半田の濡れ性を向上させる目的で施される。
また、Auめっきは無電解めっきで生成させるのが好ましく、HGS−5400(日立化成工業社製)、ミクロファブAuシリーズ、ガルバノマイスターGBシリーズ、プレシャスハブIGシリーズ(いずれも田中貴金属社製)等の市販の処理液を用いることができる。
【0092】
[白色系LED発光素子]
以下に、本発明の白色系LED発光素子について詳細に説明する。
本発明の白色系LED発光素子は、上述した本発明の配線基板と、上記配線基板の上記金属配線層側の上部に設けられる青色LED発光素子と、上記青色LED発光素子の少なくとも上部に設けられる蛍光発光体とを具備する白色系LED発光素子である。
なお、上述した本発明の配線基板は、使用される発光素子の形状やLEDの種類等に限定はなく、種々の用途に用いることができる。
次に、本発明の白色系LED発光素子の構成を図面を用いて説明する。
【0093】
図3は、本発明の白色系LED発光素子の好適な実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
ここで、図3に示す白色系LED発光素子100は、青色LED110がYAG系の蛍光粒子150を混入した透明樹脂160でモールドされており、YAG系の蛍光粒子150によって励起された光と青色LED110の残光とにより、白色系光が発光されるものであり、青色LED110が、外部接続用の電極を兼ねた金属配線層120,130を有する本発明の配線基板140にフェースダウンボンディングされている。
【0094】
また、図4は、本発明の白色系LED発光素子の好適な実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
ここで、図4に示す白色系LED発光素子100は、蛍光体混色型の白色系LED発光素子として構成されており、絶縁層32と金属基板33と金属配線層34とを有する本発明の配線基板と、配線基板の金属配線層34側の上部に設けられる青色LED発光素子22と、青色LED発光素子22の少なくとも上部に設けられる蛍光発光体26とを具備するものである。
また、図4に示すように、本発明の白色系LED発光素子は、青色LED発光素子22が樹脂24で封止されているのが好ましい。
また、本発明においては、蛍光発光体26として、特願2009−134007号明細書および特願2009−139261号明細書に記載した蛍光発光ユニットを用いることができる。
【0095】
また、図5は、本発明の白色系LED発光素子の他の構成例を示した模式的な断面図である。
ここで、図5に示す白色系LED発光素子100は、図3に示す白色系LED発光素子と同様、青色LED37がYAG系の蛍光粒子150を混入した透明樹脂160でモールドされており、青色LED37が、外部接続用の電極を兼ねた金属配線層120,130を有する本発明の配線基板にフェースダウンボンディングされている。
また、図5に示すように、本発明の配線基板にはスルーホール35が設けられ、青色LED37の下部に位置する金属基板33は、他の基板部分より厚みがある形状に成型されヒートシンク39としてもよい。
なお、図5には明示されていないが、絶縁層32部分におけるスルーホール35の内部は、陽極酸化処理されて絶縁層であるのが好ましい。
【0096】
ここで、図3および図5に示す青色LEDは、基板上にGaAlN、ZnS、ZnSe、SiC、GaP、GaAlAs、AlN、InN、AlInGaP、InGaN、GaN、AlInGaN等の半導体を発光層として形成させたものが用いられる。
半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構造のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を紫外光から赤外光まで種々選択することができる。
【0097】
また、図3および図5に示す透明樹脂の材質は熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂のうち、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種により形成することが好ましく、特にエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂が好ましい。
また、透明樹脂は、青色LEDを保護するため硬質のものが好ましい。
また、透明樹脂は、耐熱性、耐候性、耐光性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
また、透明樹脂は、所定の機能を持たせるため、フィラー、拡散剤、顔料、蛍光物質、反射性物質、紫外線吸収剤、酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種を混合することもできる。
【0098】
更に、図3および図5に示す蛍光粒子は、青色LEDからの光を吸収し異なる波長の光に波長変換するものであればよい。
蛍光粒子としては、具体的には、例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、サイアロン系蛍光体、βサイアロン系蛍光体;Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類硫化物蛍光体、アルカリ土類チオガレート蛍光体、アルカリ土類窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体;Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体;Eu等のランタノイド系元素で主に付活される有機錯体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
一方、本発明の配線基板は、紫外〜青色LEDとそれを吸収し可視光領域で蛍光を発する蛍光発光体とを用いた蛍光体混色型白色系LED発光素子の配線基板として用いることもできる。
これらの蛍光発光体が青色LEDからの青色光を吸収して蛍光(黄色系蛍光)を生じ、この蛍光と青色LEDの残光とにより、発光素子から白色系光が発光される。
上述した方式は、青色LED光源チップと黄色蛍光体1種とを組み合わせたいわゆる「擬似白色発光型」であるが、このほかにも、例えば紫外〜近紫外LED光源チップと赤色/緑色/青色蛍光体等を数種組み合わせた「紫外〜近紫外光源型」、及び、赤色/緑色/青色3光源で白色発光させる「RGB光源型」、等の公知の発光方法を用いる発光ユニットの発光素子の基板に本発明の配線基板を用いることができる。
【0100】
本発明の配線基板にLED素子を実装する方法は加熱による実装を伴うが、半田リフローを含めての熱圧着、およびフリップチップによる実装方法では、均一かつ確実な実装を施す観点から、最高到達温度は220〜350℃が好ましく、240〜320℃がより好ましく、260〜300℃が特に好ましい。
これらの最高到達温度を維持する時間としては、同観点から2秒〜10分が好ましく、5秒〜5分がより好ましく、10秒〜3分が特に好ましい。
また、金属基板と陽極酸化皮膜との熱膨張率差に起因して陽極酸化皮膜内に発生するクラックを抑制する観点から、上記最高到達温度に到達する前に、所望の一定温度で5秒〜10分、より好ましくは10秒〜5分、特に好ましくは20秒〜3分の熱処理を施す方法をとることもできる。所望の一定温度としては、80〜200℃であることが好ましく、100〜180℃がより好ましく、120〜160℃が特に好ましい。
【0101】
また、ワイヤボンディングでの実装時の温度としては、確実な実装を施す観点から、80〜300℃が好ましく、90〜250℃がより好ましく、100〜200℃が特に好ましい。加熱時間としては、2秒〜10分が好ましく、5秒〜5分がより好ましく、10秒〜3分が特に好ましい。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1〜8)
<アルミニウム基板の作製>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。
次いで、表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。
更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム基板を得た。
このアルミニウム基板を幅1030mmにした後、以下に示す陽極酸化処理および封孔処理に供した。
【0103】
<陽極酸化処理>
上記で作製したアルミニウム基板に対して、図2に示す構造の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解液の条件、電圧、形成後の陽極酸化皮膜の厚さを下記第1表に示す。なお、陽極酸化皮膜の厚さに関しては、断面方向からSEMによる1000〜5000倍での倍率での観察から求めた。
【0104】
<封孔処理>
上記で得られた陽極酸化皮膜からなる絶縁層に、後述する封孔処理(1)〜(6)のいずかを施し、絶縁基板を作製した。なお、各実施例で施す封孔処理の種類は、下記第1表に示す通りである。
【0105】
封孔処理(1):
陽極酸化皮膜からなる絶縁層を有するアルミニウム基板を、80℃の純水に1分間浸漬した後、浸漬させた状態で110℃の雰囲気下で10分間加熱した。
【0106】
封孔処理(2):
陽極酸化皮膜からなる絶縁層を有するアルミニウム基板を、60℃の純水に1分間浸漬した後、浸漬させた状態で130℃の雰囲気下で25分間加熱した。
【0107】
封孔処理(3):
陽極酸化皮膜からなる絶縁層を有するアルミニウム基板を、80℃の塩化リチウム5%水溶液に1分間浸漬した後、浸漬させた状態で110℃の雰囲気下で10分間加熱した。
【0108】
封孔処理(4):
陽極酸化皮膜からなる絶縁層を有するアルミニウム基板を、100℃/500kPaの水蒸気に1分間さらす処理を施した。
【0109】
封孔処理(5):
陽極酸化皮膜からなる絶縁層を有するアルミニウム基板を、25℃の処理液A(下記参照)に15分間浸漬し、その後500℃の雰囲気下で1分間加熱処理を施した。
(処理液A)
・チタンテトライソプロポキシド 50.00g
・濃硝酸 0.05g
・純水 21.60g
・メタノール 10.80g
【0110】
封孔処理(6):
陽極酸化皮膜からなる絶縁層を有するアルミニウム基板を、25℃の処理液B(下記参照)に1時間浸漬処理を施した。
(処理液B)
・20nm径コロイダルシリカ (日産化学工業(株)製MA−ST−M)0.01g
・エタノール 100.00g
【0111】
封孔処理(7):
陽極酸化皮膜からなる絶縁層を有するアルミニウム基板を、25℃の処理液B([0103]参照)に3時間浸漬処理を施した。
【0112】
(比較例1〜3)
封孔処理を施さなかった以外は実施例1、3および6と同様の方法により、それぞれ比較例1、2および3の絶縁基板を作製した。
【0113】
<空隙率>
作製した各絶縁基板について、陽極酸化皮膜の空隙率を下記式から算出した。結果を下記第1表に示す。
空隙率(%)=〔1−(酸化皮膜密度/3.98)〕×100
(式中、酸化皮膜密度(g/cm3)は、「単位面積あたりの酸化皮膜質量/酸化皮膜膜厚」を表し、3.98は酸化アルミニウムの密度(g/cm3)を表す。)
【0114】
<熱伝導率>
作製した各絶縁基板について、アルバック理工社製TC−9000/レーザーフラッシュ型熱拡散率測定装置を用い、t1/2法に従い熱拡散率を計算し、熱伝導率を下記式から算出した。結果を第1表に示す。
熱伝導率λ=α×Cp×ρ
(式中、αは熱拡散率、Cpは比熱、ρは密度、をそれぞれ表す。)
【0115】
<絶縁破壊電圧>
得られた絶縁基板について、JISC2110規格の方法に従い、絶縁破壊電圧を計測した。結果を第1表に示す。
【0116】
<全反射率の測定>
得られた絶縁基板について、エックスライト社製SP64を用いて400〜700nmの全反射率を計測した。計測は、10nm毎に測定し、その平均値を算出した。結果を第1表に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
第1表に示す結果から、まず、比較例1と比較例2とを対比すると、絶縁性(耐電圧)向上の観点から陽極酸化皮膜を厚くすると、放熱性(熱伝導率)が低くなることが分かった。
これに対し、封孔処理を施して、陽極酸化皮膜の空隙率が30%以下とした絶縁基板(実施例1〜8)は、陽極酸化皮膜の厚くしても放熱性の低減を抑制することができ、絶縁性および放熱性のいずれにも優れることが分かった。
特に、陽極酸化皮膜の形成条件および膜厚が同じ値となる実施例1と比較例1とを対比すると、封孔処理を施して陽極酸化皮膜の空隙率を30%以下とすることにより、耐電圧と平均反射率を維持したまま、熱伝導率を向上できることが分かった。実施例3と比較例2との対比および実施例6と比較例3との対比からも同様のことが分かる。
【0119】
(実施例9)
実施例3で作製した絶縁基板(空隙率:5%)に対し、圧力を管理しながら酸素プラズマ処理を更に施し、実施例9の絶縁基板を作製した。
酸素プラズマ処理は、ヤマト科学社製のプラズマリアクターPR300を用い、80mL/分の酸素を流し、−0.1MPaになるように圧力を調整しながら、100Wの条件で4分間施した。
酸素プラズマ処理により、封孔処理によりマイクロポアの内部に封孔された水酸化アルミニウムの水酸基とイオン化した酸素とが反応して水として脱離され、表面層に存在していた水酸化アルミニウムは、酸化アルミニウムに変質し、体積収縮により除去された。
酸素プラズマ処理を施した後、絶縁基板表面をSEMで観察したところ、表面から2μm程度までの変質が観察され、次いで、AFMで5μm四方をタッピングモードで測定した結果、平均深さ1.8μmの凹部が平均ピッチ110nmの周期で存在していることが分かった。なお、実施例3で作製した絶縁基板表面をAFMで測定したところ、深さが0.3μmを超える凹部は観察されず、明確なピッチも検出できなかった。
また、上述した方法により酸素プラズマ処理後の陽極酸化皮膜の空隙率を算出したところ、空隙率は9%であった。
【0120】
(実施例10)
実施例3で作製した絶縁基板(空隙率:5%)に対し、更に1%NaOH溶液(液温:10℃)を用いてアルカリ処理を1分間施し、実施例10の絶縁基板を作製した。
アルカリ処理の後、10分間の水洗処理を施して乾燥させた後、絶縁基板表面をSEMで観察したところ、表面から約10μm程度までの変質が観察され、次いで、AFMで5μm四方をタッピングモードで測定した結果、平均深さ2μmの凹部が平均ピッチ100nmの周期で存在していることが分かった。
また、上述した方法によりアルカリ処理後の陽極酸化皮膜の空隙率を算出したところ、空隙率は12%であった。
【0121】
作製した実施例1〜10および比較例1〜3の絶縁基板に対して、以下に示す方法により実装に供する金属配線層を形成させた配線基板を作製した。
(1)Niシード層の形成
まず、1000mLビーカーに硫酸ニッケル六水和物25gと純水500mLとを入れ、硫酸ニッケル六水和物を溶解させた後、次亜リン酸ナトリウム20g、酢酸ナトリウム10gおよびクエン酸ナトリウム10gを入れて撹拌した。
次いで、純水を加えて全量を1000mLとした後、硫酸でpHを5に調整し、撹拌しながら、浴温を83℃に保持した。
本溶液中に各絶縁基板を1分間浸漬させることで、Niシード層を形成した。
(2)Cuめっき層の形成
硫酸、硫酸銅、塩酸、ポリエチレングリコールおよびラウリル硫酸ナトリウムを調製した電解液中に、Niシード層を形成した上記基板を浸漬し、定電圧下で電解し、厚さ20μmのCuめっき層を形成した。
(3)金属配線の形成
Cuめっき層を形成した上記基板をレジスト液(DSR330P、タムラ化研社製)に25℃で浸漬時間5分の条件で浸漬させた後、乾燥温度80℃、乾燥時間10分にて乾燥させた。
次いで、FL−3S(ウシオライティング社製)を用いて、配線パターンを形成したマスクを用いて露光を行い、現像液1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30℃下で90秒間現像処理を施し、不要なレジスト層を除去した。
次いで、上記方法でパターンが形成された基板を過酸化水素溶液に浸漬し、エッチング処理を施すことで非配線部のCu層およびNiシード層を剥離した。
次いで、残りのレジスト層を除去し、Cu配線が形成された配線基板を作製した。
(4)Auめっき層の形成
Cu配線が形成された配線基板に対して、ワイアボンディング適性を付与するためにNiストライクめっきを行い、更にNiストライクめっき層の上層にAuめっき層を設けた。
Niストライクめっきは、Ni/塩酸混合液を用いて5分間処理した。
その後、プレシャスハブACG2000(田中貴金属社製)の基本液と還元液とを10:0.4の割合で調製した液中に、50℃の条件で10分間浸漬し、Auめっき層を形成した。
【0122】
封孔処理を施さなかった比較例1〜3で作製した絶縁基板を用いた場合は、上記(3)および(4)に示す工程において、非配線部のCu層のエッチング処理の際に、下地のNiシード層を剥離することができず、非配線部の反射率が低下し、かつ、Auめっき層の形成時に全面にAuがめっきされてしまう問題が起こった。
一方、実施例1〜8で作製した絶縁基板を用いた場合、上記のような問題は発生しなかったが、形成したCu配線の細線部分との密着性がやや劣る結果が得られた。
また、実施例9および10で作製した絶縁基板を用いた場合、上記のような問題は発生せず、かつ、形成したCu配線の細線部分との密着性にも優れることが分かった。これは、実施例9および10で作製した絶縁基板の表面が有する凹凸形状により、Cu配線とのアンカー効果が生じているためと考えられる。
【0123】
(実施例11)
まず、比較例2で作製した絶縁基板(未封孔、空隙率:36%)に対して、撥水性材料(パーフルオロヘキシルエチルメトキシシラン[CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33](Gelest社製))を精製せずにそのままインクジェット装置(DMT−2831、Dimatix社製)を用いて配線状に突出、付着させた後に乾燥させた。
その後、上述した封孔処理(1)と同様の封孔処理を施した。なお、上述した方法により陽極酸化皮膜の空隙率を算出したところ、空隙率は18%であった。
次いで、アルカリによる溶解処理(1%NaOH溶液、液温度:30℃、処理時間:20秒間)を施し、ほぼ単層のフッ素(フルオロアルキルシラン)皮膜を除去した。
この状態でNiを蒸着し、全面にNiシード層を形成した。
引き続き、上記(2)〜(4)に示す工程と同様の方法で、Cu配線基板を作製した。
ここで、上記(3)に示す工程において、非配線部の封孔処理されていた部分はNiシード層の溶解が容易となり、かつ、上記(4)に示す工程で施されるNiストライクめっきおよびAuめっきにおいても非配線部への金属の析出は観察されなかった。
【符号の説明】
【0124】
1 陽極酸化皮膜
2、2a、2b マイクロポア
3 異なる物質
22 青色LED
24 樹脂
26 蛍光発光ユニット
32 絶縁層
33 金属基板
34 金属配線層
35 スルーホール
37 青色LED
39 ヒートシンク
100 発光素子
110 青色LED
120,130 金属配線層(電極)
140 配線基板
150 蛍光粒子
160 透明樹脂
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム基板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、前記金属基板の表面に設けられる絶縁層とを有する絶縁基板であって、
前記金属基板が、バルブ金属基板であり、
前記絶縁層が、バルブ金属の陽極酸化皮膜であり、
前記陽極酸化皮膜の空隙率が、30%以下である絶縁基板。
【請求項2】
前記陽極酸化皮膜の表面が、平均ピッチが0.5μm以下で、かつ、平均直径が1μm以上の凹凸を有する請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項3】
前記陽極酸化皮膜が、マイクロポアを有し、
前記マイクロポアの内部の少なくとも一部が、前記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質によって封孔されている請求項1または2に記載の絶縁基板。
【請求項4】
前記陽極酸化皮膜が、マイクロポアを有し、
前記マイクロポアが、その内部の少なくとも一部が前記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質によって封孔されているマイクロポアと、その内部が前記異なる物質により封孔されていないマイクロポアとで構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁基板。
【請求項5】
前記異なる物質が、絶縁性である請求項3または4に記載の絶縁基板。
【請求項6】
前記バルブ金属が、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマスおよびアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種の金属である請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁基板。
【請求項7】
前記バルブ金属が、アルミニウムである請求項6に記載の絶縁基板。
【請求項8】
前記絶縁基板が、LED発光素子の発光観測面側に設けられる基板である請求項1〜7のいずれかに記載の絶縁基板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の絶縁基板を製造する絶縁基板の製造方法であって、
バルブ金属基板の表面に陽極酸化処理を施して、バルブ金属の陽極酸化皮膜をバルブ金属基板上に形成させる陽極酸化処理工程と、
前記陽極酸化処理工程の後に、封孔処理を施して、前記陽極酸化皮膜の空隙率を30%以下とする封孔処理工程とを有する絶縁基板の製造方法。
【請求項10】
前記陽極酸化処理により、マイクロポアを有する前記陽極酸化皮膜が形成され、
前記封孔処理により、前記マイクロポアの内部の少なくとも一部が前記陽極酸化皮膜を構成する物質とは異なる物質により封孔される、請求項9に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項11】
前記バルブ金属基板の厚さ方向にスルーホールを貫通形成するスルーホール形成工程を有する、請求項9または10に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項12】
前記スルーホール形成工程の後に、前記バルブ金属基板を所望の形状で個片化可能にする個片化工程を有する請求項11に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の絶縁基板と、前記絶縁基板の前記絶縁層側の上部に設けられる金属配線層とを有する配線基板。
【請求項14】
請求項13に記載の配線基板と、前記配線基板の前記金属配線層側の上部に設けられる青色LED発光素子と、前記青色LED発光素子の少なくとも上部に設けられる蛍光発光体とを具備する白色系LED発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−199233(P2011−199233A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97856(P2010−97856)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】