説明

絶縁塗料および絶縁電線

【課題】導体との密着性が良く、高温高速焼付けしても外観の良好な、絶縁塗料および絶縁電線を提供する。
【解決手段】ポリアミドイミド樹脂が有機溶剤に溶解された絶縁塗料であって、前記有機溶剤中に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが含有されていることを特徴とする。また、上記絶縁塗料において、前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量を20000以上かつ30000以下とすることができる。有機溶剤中に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが含有されていることで、焼付炉内で溶剤が蒸発する線温と推定される50〜120℃温度領域では、絶縁塗料の溶剤蒸発速度が従来品の絶縁材料より遅く、これによって塗料皮膜の表面硬化が著しく妨げられることにより、発泡およびシワの無い平滑な絶縁皮膜が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁塗料および絶縁電線に関するものである。特に、ポリアミドイミド系絶縁塗料およびその絶縁塗料が導体上に塗布焼付けされて成るポリアミドイミド系絶縁電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁塗料を導体上に塗布焼付した絶縁電線は各種の電気機器に組み込まれたコイルの用途に大量に使用されている。電気絶縁塗料は各種の用途、要求性能によって耐熱温度が105℃〜250℃等の耐熱クラスに分かれており、中でもポリアミドイミド系絶縁塗料は優れた耐熱性、機械的特性、耐冷媒性を有しており、近年耐熱温度が180〜200℃以上の耐熱クラスのモータに広く使用されるようになってきている。また、ポリアミドイミド系絶縁塗料を塗布焼付けした絶縁電線の生産合理化のため絶縁塗料には焼付け工程の生産合理化に対応した高温、高速焼付け性が強く要求されるようになってきている。
【0003】
しかし、従来のポリアミドイミド系絶縁塗料は、耐熱グレードが155〜180℃の耐熱クラスのポリエステル系絶縁塗料およびポリエステルイミド系絶縁塗料に比べ、高温高速焼付け性で劣り、絶縁皮膜の仕上げ外観において発泡やシワなどの異常が出やすいという欠点があった。特に、導体との密着性を改良したポリアミドイミド系絶縁塗料は高温高速焼付けが困難であり、焼付け工程において、シワ不良を防止するために低温低速とし、1回当たりの塗布量を少なくし、塗装回数を増やして絶縁電線を製造するなど、コスト面において不利な条件での製造を余儀なくされている。
【0004】
以上のような問題において、焼付け時の発泡は、ポリアミドイミド樹脂の硬化反応時に発生する炭酸ガスの発生と焼付け時の溶剤蒸発挙動に依存している。また、皮膜のシワは硬化反応の速度に依存している。
【0005】
そこで、特許文献1では、炭酸ガスの発生を少なくして皮膜の泡を防止するために、ポリアミドイミド樹脂に特定のエポキシ樹脂を配合することが記載されている。これによりポリアミドイミド樹脂の末端イソシアネート基とエポキシ環が優先的に反応することで本来のアミドイミド樹脂の硬化反応である末端カルボキシル基と末端イソシアネート基およびアミド基とカルボキシル基の反応が弱められるため、発泡が抑えられる。また、特許文献1の類似提案として、特許文献2には、ポリアミドイミド絶縁塗料中にエポキシ当量400以下のエポキシ樹脂を配合することで高速焼付け時の発泡を抑え電線特性も低下しないことが記載されている。
【0006】
特許文献3では、硬化反応速度の調節により皮膜のシワを防止するために、ポリアミドイミド絶縁塗料中に特定元素の金属塩を配合する提案がなされている。これは有機溶剤としてフェノール系溶媒(代表例クレゾール)を使用しているため、ポリアミドイミド樹脂の末端イソシアネート基による硬化反応が非プロトン系溶剤(代表例N−メチル−2−ピロリドン)使用の場合よりも起こりにくいという欠点を改善するための提案である。この提案によれば、金属塩がフェノール系溶媒で安定化されている末端イソシアネート基を活性化させる触媒の役目を果たし、硬化速度を向上させることにより皮膜のシワ、荒れは無くなる。
【0007】
また、特許文献4には、溶剤蒸発速度を調整することで皮膜の泡を防止するために、絶縁塗料中に特定の高沸点炭化水素を配合することが記載されており、これにより、溶剤蒸発過程で高沸点溶剤が残留することで皮膜表面硬化が抑えられて発泡が減少する。
【0008】
【特許文献1】特開平05-339522号公報
【特許文献2】特開平07-216058号公報
【特許文献3】特開昭55-139451号公報
【特許文献4】特開昭57-096063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1、2に記載されている技術では、焼付け後の絶縁皮膜の耐熱性が従来のポリアミドイミド絶縁塗料より劣り、特に絶縁電線の軟化特性が低下するという問題があった。また、特許文献3の技術では、金属塩の種類によってはポリアミドイミド樹脂と反応し絶縁塗料の粘度が上昇するので焼付け作業性が低下するという問題があり、特許文献4の技術をポリアミドイミド樹脂に適用した場合には、樹脂との相溶性が低いため配合量が制限され、かつ、塗装時の樹脂の流動性が低いため本来の効果である表面硬化防止を発揮できないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、導体との密着性が良く、高温高速焼付けしても外観の良好な、絶縁塗料および絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する有機溶剤にポリアミドイミド樹脂が溶解されたことを特徴とする絶縁塗料を提供する。
【0012】
上記絶縁塗料において、前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量を20000以上かつ30000以下とすることができる。
【0013】
また、前記ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、トリアルキルアミン0.05〜1.0重量部および/またはアルコキシ化メラミン樹脂5〜20重量部を更に含有することができる。
【0014】
更に、前記1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの前記有機溶剤中の含有量を10wt%〜30wt%とすることができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、上述した絶縁塗料が導体上に又は他の絶縁層を介して塗布焼付けされたことを特徴とする絶縁電線を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導体との密着性が良く、高温高速焼付けしても外観の良好な、絶縁塗料および絶縁電線を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の絶縁塗料は、ポリアミドイミド樹脂を有機溶剤に溶解した絶縁塗料であって、前記有機溶剤中に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有することを特徴とする。有機溶剤中に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有することで、発泡およびシワの無い平滑な絶縁皮膜が得られる。
【0018】
図1に、本発明の絶縁塗料と従来品の絶縁塗料に関する熱重量分析結果を示す。縦軸が絶縁塗料の重量減少率であり、横軸が加熱雰囲気の温度である。この結果より、焼付炉内で溶剤が蒸発する線温と推定される50〜120℃温度領域では、本発明の絶縁塗料(▲で示す)の溶剤蒸発速度が従来品の絶縁材料(◆で示す)より遅いことがわかる。このような挙動を示す塗料は皮膜の表面硬化が著しく妨げられ、発泡が抑えられる。つまり、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが高沸点で、かつ、樹脂との相溶性が良好であるために、絶縁塗料の溶剤が揮発する過程で、皮膜中に高沸点の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが残留し、これが皮膜の表面硬化を防止していると考えられる。
【0019】
上述のように、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンは発泡を抑えるのに主要な役割を果たしており、その使用量は特に限定されないが、本発明における絶縁塗料の全溶剤量に対して10質量%〜30質量%の間であることが好ましい。
【0020】
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが10質量%未満では発泡、ツブが発生しやすくなり、30質量%を超えると、絶縁塗料の粘度が上がるため、焼付け時の作業性が低下してエナメル線の品質不良が発生しやすくなる。
【0021】
本発明におけるポリアミドイミド樹脂の製造方法は、特に制限はなく、既に公知の製造方法(特公昭44−19274公報等)により製造することができる。具体的には、芳香族トリカルボン酸無水物と芳香族ジイソシアネートを非プロトン性極性溶剤中で反応させて得られる。芳香族トリカルボン酸無水物の代表例としてはトリメリット酸無水物が挙げられる。
【0022】
また、必要に応じて、この芳香族トリカルボン酸無水物の一部をピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物またはテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族二塩基酸に置き換えてもよい。
【0023】
なお、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの配合時期に制限はなく、ポリアミドイミド絶縁塗料の樹脂合成溶剤として反応開始時に仕込んでもよく、また反応終了時の希釈剤として用いてもよい。
【0024】
芳香族ジイソシアネートとしては4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等を使用することができるがコストと入手の容易さから4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0025】
芳香族トリカルボン酸無水物と芳香族ジイソシアネートの反応においては、芳香族トリカルボン酸無水物1モルに対して芳香族ジイソシアネートを0.9モル〜1.1モルの間に設定することが好ましい。より好ましくは、芳香族ジイソシアネートのモル数を1.0モル〜1.05モルの間に設定すると良い。このように設定することで本発明の高分子量のポリアミドイミド樹脂が得られる。反応は80℃〜150℃の間で非プロトン性極性溶剤の存在下にて遊離してくる炭酸ガスを系外に除去しながら加熱縮合を進める。
【0026】
非プロトン性極性溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が使用できる。
【0027】
また、本発明において用いるポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、20000以上かつ30000以下であることが好ましい。
【0028】
ポリアミドイミド樹脂の分子量の制御は、塗料の粘度が時間の進行とともに上昇するので、粘度および攪拌機のモータトルク値に置き換えて実施する。本発明においては、重量平均分子量が20000から30000の間に入ったところで加熱を止め、希釈溶剤を投入して反応を停止させることで、ポリアミドイミド樹脂の好ましい重量平均分子量とすることができる。なお、反応停止材として樹脂末端のイソシアネート基を保護するアルコール、フェノール、ラクタム等を加えることもできる。
【0029】
ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量を20000より小さくすると、単位重量に対する樹脂末端のイソシアネート基が多くなり、樹脂末端のカルボキシル基との反応により発生する炭酸ガス量が多くなることから、高温高速焼付け時に皮膜に発泡が発生しやすくなってしまう。また、分子量が30000を超えると、単位重量に対する樹脂末端のイソシアネート基が少なくなりすぎ、焼付け時の硬化が十分に進まず、絶縁性等の電線特性が低下しやすくなってしまう。更に、絶縁塗料の粘度が高くなりすぎて焼付け作業性が低下するといった問題が生じる。
【0030】
発泡やシワが発生しない範囲内で絶縁塗料の粘度やコストを下げるために助溶剤として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)や高沸点炭化水素(例えば、丸善石油化学株式会社製ハイゾール1000、ハイゾール1500(商品名))やキシレン等を使用することもできる。特に、DMFは絶縁塗料の粘度を下げることができるので、助溶剤としては汎用的に使用することができる。
【0031】
また、トリアルキルアミンおよび/またはアルコキシ化メラミン樹脂を配合することができる。トリアルキルアミンとしては、好ましくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の低級アルキルのトリアルキルアミンが使用できる。この中でも可とう性および密着性の点でトリメチルアミン、トリエチルアミンがより好ましい。また、アルコキシ化メラミン樹脂としては、例えばブトキシ化メラミン樹脂、メトキシ化メラミン樹脂等の低級アルコキシ基で置換されたメラミン樹脂を用いることができ、樹脂の相溶性の点でメトキシ化メラミン樹脂が好ましい。これらはポリアミドイミド樹脂と銅との密着性を向上させる効果を有する。
【0032】
ここで、トリアルキルアミンはポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、0.05〜1.0重量部であることが好ましい。0.05重量部未満の場合には、密着性が十分得られず、1.0重量部を超えた場合には、塗料としての安定性が低下する。また、アルコキシ化メラミン樹脂はポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。5重量部未満の場合には、密着性が十分得られず、20重量部を超えた場合には、得られる絶縁電線の耐熱性が低下する。
【実施例】
【0033】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
なお、得られた絶縁塗料および絶縁電線について、下記の各種特性評価を行った。
【0035】
[絶縁塗料]
(a)重量平均分子量
島津製作所(株)製CR型高速液体クロマトグラフを用いて、N−メチル−ピロリドンを展開溶媒として測定した分子量分布曲線から標準ポリスチレンを基準として算出した。
(b)塗料粘度
JISC 2351(エナメル線用ワニス)の粘度測定に準じて測定した。なお粘度計の回転コーンはNO3を使用した。
【0036】
[絶縁電線]
(c)外観
JIS C3003(1984年版).4に示す方法にて皮膜の発泡およびシワの有無の観察を行った。その評価判定基準を以下に示す。
○:発泡、シワが全く見られない
△:発泡、シワが部分的に発生する
×:発泡、シワが線に連続して発生する
(d)絶縁破壊電圧
JIS C3003(1984年版).11(2)に準拠して行った。
(e)上昇軟化
JIS C3003(1984年版).12(2)に準拠して行った。
(f)可とう性
線を20%伸長した後、導体径に相当する直径のマンドレルに巻付け、亀裂の有無を観察した。
(g)密着性(捻回剥離回数)
JIS C3003(1999年版)密着性、ねじり法に準拠して行った。なお、線の長さを15cmとした。
(h)作業性
絶縁電線の作製中に塗装ダイスの状態を観察し、塗装しているダイスの総数のうち、ダイスホルダーに設置しているバーに接触しているダイス数を測定した。その評価判定基準を以下に示す。
○:バーに接触しているダイス数の割合が全体の10%未満
△:バーに接触しているダイス数の割合が全体の10%以上60%未満
×:バーに接触しているダイス数の割合が全体の60%以上
【0037】
本発明の実施例として、絶縁塗料および絶縁電線を次のように得た。
【0038】
(実施例1−1)
2リットル容の4つ口フラスコに攪拌機、冷却管、塩化カルシウム管を取り付けた装置を用いる。まず、芳香族トリカルボン酸無水物として無水トリメリット酸192gを、芳香族ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250gを、非プロトン性極性溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)540gを、4つ口フラスコに仕込み、80℃で2時間、昇温して140℃で5時間反応させ、系内の粘度が上昇し、重量平均分子量が21000に到達したところで加熱を止め、内温を80℃になるまで冷却した。
その後、希釈溶剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を231g投入して約1時間攪拌し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0039】
(実施例1−2)
非プロトン性極性溶剤としてNMPを115g、希釈溶剤としてDMIを116g投入した他は実施例1−1と同様に合成し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0040】
(実施例1−3)
実施例1−1の絶縁塗料を使用し、焼付け塗装回数を6回にした他は実施例1と同様にして皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.3倍とした。
【0041】
(実施例1−4)
実施例1−2の絶縁塗料を使用し、焼付け塗装回数を6回にした他は実施例2と同様にして皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.3倍とした。
【0042】
(実施例1−5、1−6)
実施例1−1と同様の手順で合成し、重量平均分子量が25000、29000にそれぞれ到達したところで加熱を止め、内温を80℃になるまで冷却し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0043】
(実施例1−7)
非プロトン性極性溶剤としてNMPを617g、希釈溶剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を154g投入した他は実施例1−1と同様に合成し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0044】
(実施例1−8)
非プロトン性極性溶剤としてNMPを578g、希釈溶剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を193g投入した他は実施例1−1と同様に合成し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0045】
(実施例1−9)
2リットル容の4つ口フラスコに攪拌機、冷却管、塩化カルシウム管を取り付けた装置を用いる。まず、芳香族トリカルボン酸無水物として無水トリメリット酸192gを、芳香族ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250gを、非プロトン性極性溶剤としてNMP40gを4つ口フラスコに仕込み、80℃で2時間、昇温して140℃で5時間反応させ、系内の粘度が上昇し重量平均分子量が15000〜18000の間に到達したところで加熱を止め、内温を80℃になるまで冷却した。
その後、希釈溶剤としてDMIを231g投入して約1時間攪拌し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0046】
(実施例1−10)
実施例1−9のポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して6回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.3倍とした。
【0047】
(実施例1−11)
2リットル容の4つ口フラスコに攪拌機、冷却管、塩化カルシウム管を取り付けた装置を用いる。まず、芳香族トリカルボン酸無水物として無水トリメリット酸192gを、芳香族ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250g、非プロトン性極性溶剤としてNMP540gを仕込み、80℃で2時間、昇温して140℃で5時間反応させ、系内の粘度が上昇し重量平均分子量が30000〜40000の間に到達したところで加熱を止め、内温を80℃になるまで冷却した。希釈溶剤としてDMIを231g投入して約1時間攪拌し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して6回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.3倍とした。
【0048】
(実施例1−12)
2リットル容の4つ口フラスコに攪拌機、冷却管、塩化カルシウム管を取り付けた装置を用いる。まず、芳香族トリカルボン酸無水物として無水トリメリット酸192gを、芳香族ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250gを、非プロトン性極性溶剤としてNMP463g、DMI77gを仕込み、80℃で2時間、昇温して140℃で5時間反応させ、系内の粘度が上昇し重量平均分子量が20000〜30000の間に到達したところで加熱を止め、内温を80℃なるまで冷却した。希釈溶剤としてDMIを231g投入して約1時間攪拌し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0049】
(実施例1−13)
非プロトン性極性溶剤としてNMPを540g、希釈溶剤としてDMIを38.55g、NMPを192.45g投入した他は実施例1−12と同様に合成し、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.7倍とした。
【0050】
(実施例2−1)
実施例1−1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販の株式会社三和ケミカル社製ニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して7重量部添加して、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0051】
(実施例2−2)
アルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10重量部添加した他は実施例2−1と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0052】
(実施例2−3)
アルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して18重量部添加した他は実施例2−1と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0053】
(実施例2−4)
実施例1−1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にポリアミドイミド樹脂100重量部に対してトリアルキルアミンの代表例であるトリメチルアミンを0.08重量部添加して、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0054】
(実施例2−5)
トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンをポリアミドイミド樹脂100重量部に対して0.5重量部添加した他は実施例2−4と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0055】
(実施例2−6)
トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンをポリアミドイミド樹脂100重量部に対して0.9重量部添加した他は実施例2−4と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0056】
(実施例2−7)
実施例1−1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.5重量部添加して、目的とする密着性改良型であるポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0057】
(実施例2−8)
実施例1−1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して18重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.5重量部添加して、目的とする密着性改良型であるポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0058】
(実施例2−9)
実施例1−1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.9重量部添加して、目的とする密着性改良型であるポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0059】
(実施例2−10)
実施例2と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.5重量部添加して、目的とする密着性改良型であるポリアミドイミド絶縁塗料を得た。1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0060】
(実施例2−11)
アルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名) をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して3重量部添加した他は実施例2−1と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0061】
(実施例2−12)
アルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名) をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して25重量部添加した他は実施例2−1と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0062】
(実施例2−13)
トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンをポリアミドイミド樹脂100重量部に対して0.02重量部添加した他は実施例2−4と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0063】
(実施例2−14)
トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンをポリアミドイミド樹脂100重量部に対して1.5重量部添加した他は実施例2−4と同様の合成を行い、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0064】
(実施例2−15)
実施例1−1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して25重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.9重量部添加して、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0065】
(実施例2−16)
実施例1−1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名) をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して7重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.07重量部添加して、目的とするポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0066】
(実施例2−17)
実施例1−9と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名) をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.5重量部添加し、目的とする密着性改良型であるポリアミドイミド絶縁塗料を得た。1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0067】
(実施例2−18)
実施例1−11と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名) をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.5重量部添加し、目的とする密着性改良型であるポリアミドイミド絶縁塗料を得た。1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお焼付け速度は後に示す比較例1の1.5倍とした。
【0068】
また、比較例としての絶縁塗料および絶縁電線を、次のように得た。
【0069】
(比較例1)
反応溶剤としてNMPを540g投入し、所定の分子量に到達するまで重合反応を継続させ、希釈溶剤としてNMPを231g投入した他は実施例1と同様にしてポリアミドイミド絶縁塗料を得た。更に、1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。
【0070】
(比較例2)
比較例1のポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお、焼付け速度は比較例1の1.3倍とした。
【0071】
(比較例3)
比較例1のポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお、焼付け速度は比較例1の1.7倍とした。
【0072】
(比較例4)
比較例1と同様に合成したポリアミドイミド絶縁塗料に、更にアルコキシ化メラミン樹脂として市販のニカラックMX−10(商品名)をポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10重量部、トリアルキルアミンとしてトリメチルアミンを0.5重量部添加して、目的とする密着性改良型であるポリアミドイミド絶縁塗料を得た。1.0mmφの銅線上にこのポリアミドイミド絶縁塗料を炉長8mの縦型焼付機を使用して8回塗装し、片側皮膜厚さ0.030mmのポリアミドイミド絶縁電線を得た。なお、焼付け速度は比較例1の1.5倍とした。
【0073】
以上の実施例および比較例のポリアミドイミド絶縁電線を製造したときの焼付け速度比は比較例1の適正焼付け速度を1.0とした場合の速度比として示したものである。
【0074】
このようにして得られた絶縁塗料および絶縁電線の特性調査を行い、得られた結果を表1〜3に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
表3の比較例1〜4に示すように、絶縁塗料中に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)が含有されていない場合には、全体的に外観が好ましくない。具体的には、比較例1、2のように、線速が遅い場合には、外観は比較的好ましい状態となるが、絶縁破壊電圧の値が低くなり、絶縁性が悪くなっていることが分かる。また、線速を上げた場合には、外観が悪くなってしまうことが分かる。
【0079】
一方、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有している表1の実施例1−1〜1−13、表2の実施例2−1〜2−18では、線速を上げた場合でも、外観は良好であることが分かる。
【0080】
また、実施例1−9、1−10のように、絶縁塗料の重量平均分子量が20000未満の場合には、外観があまり好ましくなく、実施例1−11のように絶縁塗料の重量平均分子量が30000を超えた場合には、作業性がよくないことが分かる。このことから、実施例1−1〜1−8のように重量平均分子量が20000〜30000の間であれば、外観が最も好ましい状態であり、作業性においても好適であると言える。
【0081】
更に、表2では、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの他に、アルコキシ化メラミン樹脂および/またはトリアルキルアミンを含有した場合の評価を行っている。更にアルコキシ化メラミン樹脂および/またはトリアルキルアミンを含有することで、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンのみが添加された表1の場合に比べて、密着性が向上していることが分かる。実施例2−11のように、アルコキシ化メラミン樹脂の含有量がポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、5重量部未満となると、密着性が低くなっていることが分かる。また、20重量部を超えると、上昇軟化温度が低くなっており、塗料としての安定性が低下していることが分かる。
【0082】
また、実施例2−13、2−14のように、トリアルキルアミンの含有量がポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、0.05重量部未満の場合には、アルコキシ化メラミン樹脂の場合と同様に、密着性が低くなり、1.0重量部を超えた場合には、塗料としての安定性が低下し、作業性が低下していることが分かる。アルコキシ化メラミン樹脂及びトリアルキルアミンの両者を含有している場合についても、実施例2−15、2−16のように上述した範囲外となると、少ない場合には密着性が低下し、多い場合には塗料としての安定性が低下していることが分かる。実施例2−1〜2−3のように、ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、5〜20重量部のアルコキシ化メラミン樹脂および/または0.05〜1.0重量部のトリアルキルアミンが含有されている場合には、密着性および塗料としての安定性がよいことが分かる。
【0083】
実施例2−17、2−18のように、アルコキシ化メラミン樹脂および/またはトリアルキルアミンを含有している場合でも、実施例1−9、1−10と同様に、絶縁塗料の重量平均分子量が20000未満の場合には、外観があまり好ましくなく、実施例1−11のように絶縁塗料の重量平均分子量が30000を超えた場合には、作業性がよくないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の絶縁塗料および従来品の絶縁塗料に関する熱重量分析結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドイミド樹脂が有機溶剤に溶解された絶縁塗料であって、
前記有機溶剤中に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが含有されていることを特徴とする絶縁塗料。
【請求項2】
前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が20000以上かつ30000以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁塗料。
【請求項3】
前記ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、
(i)アルコキシ化メラミン樹脂5〜20重量部、
(ii)トリアルキルアミン0.05〜1.0重量部、または、
(iii)トリアルキルアミン0.05〜1.0重量部およびアルコキシ化メラミン樹脂5〜20重量部、
が更に含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁塗料。
【請求項4】
前記1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの前記有機溶剤中の含有量が10質量%〜30質量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の絶縁塗料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の絶縁塗料が導体上に又は他の絶縁層を介して塗布焼付けされた絶縁電線。

【図1】
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【公開番号】特開2010−13546(P2010−13546A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174082(P2008−174082)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】