説明

絶縁膜の形成方法およびこれを用いた半導体装置

【課題】半導体装置の製造工程において、フッ素、HFまたは低分子のフルオロカーボン類の脱離が少なく、上に積層する膜との密着性が優れた絶縁膜の形成方法、およびその形成方法を用いて形成された半導体装置を提供する。
【解決手段】基板上にフルオロカーボン膜を形成する工程、および、その表面と、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素および亜酸化窒素などの酸化性ガスを含む処理ガス、とを接触させる工程を有する絶縁膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜の形成方法およびこれを用いた半導体装置に関し、さらに詳しくは、半導体装置の製造工程において、上に積層する膜との密着性が優れた絶縁膜の形成方法、および該形成方法を用いて形成された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の半導体装置の製造工程においては、半導体装置の高集積化、多層化および微細化のために、従来のSiO膜(比誘電率4.1)よりも比誘電率が小さく、絶縁性能の良い層間絶縁膜を基板上に形成する技術が要求されている。例えば、特許文献1では、不飽和フッ素化炭素化合物であるオクタフルオロシクロペンテンからなるガスを用い、プラズマCVDにより、基板上に比誘電率2.2のフルオロカーボン膜を層間絶縁膜として形成している。
【0003】
また、特許文献2では、高い成膜レートでα−CF膜(フルオロカーボン膜)を形成する方法として、分子内に少なくとも一つの三重結合と、該三重結合に隣接した少なくとも一つの一重結合により結合されたCF基とを含む化合物をフッ化炭化水素として含む処理ガスを用いる方法を開示している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載のフルオロカーボン膜は、半導体装置の製造工程において、フッ素やHFが脱離したり、高温(例えば、400℃)に加熱されることで、低分子のフルオロカーボン類が脱離したりする。この脱離成分により、該フルオロカーボン膜上に例えば絶縁膜層などの膜を積層した場合に、この2層間の密着性が著しく低下するという問題が発生していた。
【0005】
【特許文献1】WO99/28963号公報
【特許文献2】特開2006−15992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑み、半導体装置の製造工程におけるフッ素、HFまたは低分子のフルオロカーボン類の脱離が少ない絶縁膜の形成方法、およびこれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意検討した結果、基板上にフルオロカーボン膜を形成した後、その表面と酸化性ガスを含む処理ガスとを接触させることにより、フッ素、HFまたは低分子のフルオロカーボン類の脱離が少ない絶縁膜の形成することが可能であることを見出し、これらの知見に基づき本発明を完成するに到った。
【0008】
かくして本発明の第一によれば、基板上にフルオロカーボン膜を形成する工程1と、前記フルオロカーボン膜の表面と酸化性ガスを含む処理ガスとを接触させる工程2とを有する絶縁膜の形成方法が提供される。
【0009】
前記酸化性ガスは、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素および亜酸化窒素からなる群より選ばれた少なくとも一種のガスであることが好ましい。
前記酸化性ガスは、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素および亜酸化窒素からなる群より選ばれた少なくとも一種のガスのプラズマであることが好ましい。
前記処理ガスは、さらに、He、Ne、ArおよびXeからなる群より選ばれた少なくとも一種の希ガスを含むことが好ましい。
【0010】
本発明の第二によれば、本発明の絶縁膜の形成方法により形成された絶縁膜を有する半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば半導体装置の製造工程におけるフッ素、HFまたは低分子のフルオロカーボン類の脱離が少ない絶縁膜の形成方法が提供される。本発明で提供される絶縁膜の形成方法はICやLSI等の半導体装置の製造に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の絶縁膜の形成方法は
基板上にフルオロカーボン膜を形成する工程1と、
前記フルオロカーボン膜の表面と酸化性ガスを含む処理ガスとを接触させる工程2とを有する。
【0013】
(工程1)
本発明において、工程1は基板上にフルオロカーボン膜を形成する工程である。
本発明に用いる基板は、半導体デバイス、ディスプレイデバイス、メディカルデバイスおよびオプティカルデバイスなどのデバイスの製造に用いる基板である。基板はシリコンウエハでも良いし、それに絶縁層、半導体層または導体層が1層または複数層、積層されたものでも良い。
【0014】
フルオロカーボン膜を形成する方法としては、通常、化学気相成長法(以下、「CVD」という。)が用いられる。具体的には、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン、オクタフルオロシクロペンテン、ヘキサフルオロ−2−ブチン及びオクタフルオロ−2−ペンチンなどの不飽和フッ素化炭素化合物を原料ガスとして用い、プラズマ放電により不飽和フッ素化炭素化合物を活性化させて、イオン、ラジカルなどの活性種を発生させ、CVD装置(チャンバー)内に設置した基板上にフルオロカーボン膜を形成させる方法が挙げられる。
【0015】
フルオロカーボン膜が形成される機構は必ずしも明確ではないが、電離解離条件下において、重合、開環反応等さまざまな反応が複雑に関与しているものと考えられる。
なお、原料ガスとしては、生成する膜の絶縁性能の観点から、オクタフルオロシクロペンテン及びオクタフルオロ−2−ペンチンが好ましく、オクタフルオロ−2−ペンチンが特に好ましい。また、原料ガス中の水分含有量は、生成する膜の絶縁性能の観点から、90体積ppm以下が好ましく、50体積ppm以下がより好ましく、20体積ppm以下がさらに好ましく、10体積ppm以下が特に好ましい。
【0016】
プラズマ発生条件は、例えば平行平板型CVD装置を用いた場合、上部電極(シャワーヘッド)に印加する高周波電力10W〜10kW、基板温度0〜500℃、反応室圧力0.1mTorr〜98Torr(0.01Pa〜13kPa)の条件が採用される。プラズマCVDに用いる装置としては、平行平板型CVD装置が一般的であるが、マイクロ波CVD装置、ECRプラズマ−CVD装置、誘導結合プラズマ(ICP)CVD装置、および高密度プラズマCVD(ヘリコン波式、高周波誘導式)を用いることもできる。
【0017】
(工程2)
本発明において、工程2はフルオロカーボン膜の表面と酸化性ガスを含む処理ガスとを接触させる工程である。工程2は工程1に引き続き、同じ装置(チャンバー)内で行っても良いし、別の装置(チャンバー)を用いてフルオロカーボン膜上に別の膜を成膜する場合などは、その装置(チャンバー)内で行っても良い。ただし、後者の場合、工程2を行う前にフルオロカーボン膜の表面を不活性ガス以外のもの(例えば、大気)に接触させてはならない。本発明において、不活性ガスとは活性を持たない、すなわち他の物質と反応しにくいガスをいい、例えば、希ガス(He、Ne、ArおよびXe等の第18族元素)および窒素が挙げられる。
【0018】
工程2に用いる処理ガスは、酸化性ガスを含むものである。処理ガスは、さらに酸化性ガスと不活性ガスを含むものが好ましい。不活性ガスは、He、Ne、ArおよびXeが好ましい。処理ガス中の酸化性ガスおよび不活性ガス以外のものの含有率は、体積基準で100ppm未満であり、10ppm未満が好ましく、1ppm未満がさらに好ましい。
【0019】
工程2に用いる酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素および亜酸化窒素、またはこれらのガスのプラズマが好ましい。酸素および一酸化炭素がさらに好ましい。酸化性ガスは単独でも2種以上混合して用いても良い。
【0020】
フルオロカーボン膜の表面と酸化性ガスを含む処理ガスとを接触させる時間(工程2に要する時間)は、用いる酸化性ガスの種類や温度・処理圧力により異なる。酸化性ガスとして酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素または亜酸化窒素を用いる場合は、1〜120分が好ましく、5〜60分がさらに好ましい。酸化性ガスとしてプラズマ化されたものを用いる場合は、0.1〜30秒が好ましく、1〜10秒がさらに好ましい。
【0021】
工程2を実施する圧力(処理圧力)は、用いる酸化性ガスの種類などにより異なる。酸化性ガスとしてプラズマを用いる場合はプラズマが発生する圧力でよい。酸化性ガスとして酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素または亜酸化窒素を用いる場合は、格別制限されない。工程2に続けて真空プロセスでフルオロカーボン膜上に別の膜を成膜する場合は、生産効率の観点から、真空度を落としすぎない範囲で行うことが好ましい。また、工程2の後で常圧にする場合は、ベント工程内で行っても良い。通常、処理圧力は、チャンバーの排気条件と処理ガスの流量で制御される。
工程2を実施する温度(温度)は、格別制限されず、工程1や工程2の次の工程によって適宜選択される。
【0022】
(半導体装置)
本発明の半導体装置は、本発明の絶縁膜の形成方法により形成された絶縁膜を有することを特徴とする。
本発明の半導体装置は密着性に優れた絶縁膜を有するため、信頼性が高い。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例における%およびppmは、特に断りがない限り体積基準である。
【0024】
(評価方法)
<脱ガス量>
絶縁膜の脱ガス量は、次の方法で測定する。絶縁膜を昇温脱離ガス測定装置により50℃から450℃まで5℃/分で昇温し、脱離してくるガスを昇温脱離分析装置(電子科学社製 WA1000s)で測定する。得られた値を絶縁膜の単位面積当たりの量に換算して脱ガス量とする。
【0025】
(実施例)
以下の方法により、比誘電率2.2のフルオロカーボン膜Aを形成する。比誘電率は、水銀プローブ法(Four Dimensions社製、CVmap92)により測定される値である。
シリコンウエハを基板とし、プラズマCVD装置を用い、ヘキサフルオロ−2−ペンチン(日本ゼオン株式会社製、純度99.9%以上、水分10ppm以下)を原料ガスとして、次の条件によりプラズマCVDを行い、基板上に0.2μmの厚さで成膜されたフルオロカーボン膜Aを得る。
・ヘキサフルオロ−2−ペンチンの流量:40sccm
・アルゴンの流量:400sccm
・圧力:250mTorr(33Pa)
・RF出力(周波数13.56MHz):1500W
・基板温度350℃
【0026】
得られるフルオロカーボン膜Aに、該プラズマCVD装置中で以下の条件で、酸化性ガスを含む処理ガスとを接触させ、評価用絶縁膜を得る。
・処理ガス流量:40sccm
・圧力:500mTorr(67Pa)
・基板温度:25℃
・処理時間:5秒(酸化性ガスがプラズマである場合)、30分(酸化性ガスがプラズマでない場合)
【0027】
(比較例)
比較例として、酸化性ガスを含む処理ガスを用いず、不活性ガスのみを接触させた外は実施例と同様にして評価用絶縁膜を得る。
【0028】
実施例で得られる酸化性ガスを含有する処理ガスと接触させた絶縁膜は、比較例のものと比較して脱ガス量の少ない結果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にフルオロカーボン膜を形成する工程1と、
前記フルオロカーボン膜の表面と酸化性ガスを含む処理ガスとを接触させる工程2とを有することを特徴とする絶縁膜の形成方法。
【請求項2】
前記酸化性ガスが、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素および亜酸化窒素からなる群より選ばれた少なくとも一種のガスであることを特徴とする請求項1記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項3】
前記酸化性ガスが、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素および亜酸化窒素からなる群より選ばれた少なくとも一種のガスのプラズマであることを特徴とする請求項1記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項4】
前記処理ガスが、さらに、He、Ne、ArおよびXeからなる群より選ばれた少なくとも一種の希ガスを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の絶縁膜の形成方法により形成された絶縁膜を有することを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2008−227306(P2008−227306A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65758(P2007−65758)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】