説明

継ぎ手及び弁装置

【課題】流体が一定の方向に流れる場合には、流体の流量が制限されないが、流体が逆方向に流れる場合には、流体の流量が制限される継ぎ手及びこれを備えた弁装置を提供する。
【解決手段】ガスタンク内に高圧の水素ガスを充填する充填路21に供給配管9を連結するための供給側継ぎ手10は、充填路21と供給配管9とを連通する導通路33が形成された継ぎ手本体61を備えた。そして、供給側継ぎ手10は、充填路21から供給配管9へと流体が流れる場合の開口面積が、供給配管9から充填路21へと流体が流れる場合の開口面積よりも小さくなる絞り弁62を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流路を連結する継ぎ手及びこれを備えた弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧のガス(例えば、水素ガス)が貯留されるガスタンクには、ガスタンクの内外を連通するガス流路が形成されたボディと、ガス流路を介したガスの流通を制御する弁機構とを備えた弁装置が設けられている。通常、こうした弁装置のガス流路には、継ぎ手を介して外部機器(例えば、ガスの供給源)に接続される配管が連結されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5に示す例では、ボディ102に、継ぎ手103が取着される取着穴104が形成され、ガスタンク内に高圧のガスを充填するための充填路(ガス流路)101が取着穴104の底面に開口している。また、充填路101には、ガスタンク内に充填されたガスの逆流を防止する逆止弁105が設けられている。
【0004】
継ぎ手103は、略円柱状に形成されており、その一端部が取着穴104に螺着されるとともに、その他端部がガスの供給源に接続される配管106に螺着されるようになっている。そして、継ぎ手103には、軸方向両側に開口する導通路107が形成されており、導通路107を介して充填路101と配管106とが連通されている。
【0005】
また、導通路107における充填路101側の端部には、他の部分よりも開口面積を小さくするオリフィス108が形成されている。そして、オリフィス108によって導通路107内を流れるガスの流量を制限することで、例えばガスタンクが搭載された車両の衝突等により、逆止弁105に異常が発生しても、ガスタンクから大量のガスが放出することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−281510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の構成では、オリフィス108によって導通路107内を流れるガスの流量を制限しているため、ガスタンクにガスを充填する場合にもその流量が制限され、充填時間が長くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、流体が一定の方向に流れる場合には、流体の流量が制限されないが、流体が逆方向に流れる場合には、流体の流量が制限される継ぎ手及びこれを備えた弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、第一流路に連結される第一連結部と、第二流路に連結される第二連結部と、前記第一連結部に連結された前記第一流路および前記第二連結部に連結された前記第二流路を導通する導通路と、前記導通路内に配置され、前記第二流路から前記第一流路へと流体が流れる場合の開口面積が、前記第一流路から前記第二流路へと流体が流れる場合の開口面積よりも小さくなる絞り弁と、を備えることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、第一流路側から第二流路側へ流れる流体は、第二流路側から第一流路側へ流れる流体に比べ、絞り弁の開口面積が大きいため、流量が制限されない。したがって、本発明により、流体が第一流路側から第二流路側へ流れる場合には、流体の流量が制限されないが、流体が第二流路側から第一流路側へ流れる場合には、流体の流量が制限される継ぎ手が提供される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の継ぎ手において、前記絞り弁は、前記第一連結部よりも第二連結部側に配置され、前記第一連結部の機械的強度が、他の部分よりも低くなるように形成されたことを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、第一連結部が他の部分よりも機械的強度が低くなるように形成されているため、継ぎ手に衝撃が加わって万が一破断するような場合であっても、第一連結部を優先的に破断させ、他の部分が破断するのが防止される。また、絞り弁は、第一連結部よりも第二連結部側に配置されているため、継ぎ手が第一連結部で破断した後も、その機能を維持し、第二流路側から第一流路側へ大量の流体が放出されることを抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の継ぎ手と、前記第二流路が形成された弁本体と、を備え、前記第二流路には、前記第二流路から前記第一流路への流体の流れを防止する逆止弁が設けられることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、通常、第二流路から第一流路への流体の流れは、逆止弁により防止される。また、逆止弁に異常が生じても、絞り弁が作用するため、大量の流体が第二流路から第一流路に流れ込むのを抑制することができる。また、第二流路から第一流路に少量の流体が流れ込むことにより、逆止弁の異常を察知することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流体が一定の方向に流れる場合には、流体の流量が制限されないが、流体が逆方向に流れる場合には、流体の流量が制限される継ぎ手及びこれを備えた弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用される弁装置の概略構成図。
【図2】本実施形態のボディと供給側継ぎ手との連結部分を示す拡大断面図。
【図3】本実施形態の供給側継ぎ手を示す拡大断面図。
【図4】(a)ガスタンク内に水素ガスを充填する際の絞り弁を示す模式図、(b)水素ガスが外部に放出される際の絞り弁を示す模式図。
【図5】従来のボディと継ぎ手との連結部分を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を燃料電池車に搭載されたガスタンクに取着される弁装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、弁装置1は、高圧(例えば、70MPa)の水素ガスが貯留されたガスタンク5の取着口6に取り付けられる。弁装置1は、内部にガス流路8が形成されたアルミ合金製のボディ2(弁本体)に、複数の弁機構が配置され、ガス流路8の水素ガスの流れを制御する。ボディ2には、供給側継ぎ手10と送出側継ぎ手12とが取り付けられる。供給側継ぎ手10には、水素ガスの充填口(図示略)と弁装置1のガス流路8とを繋ぐ供給配管9(第一流路)が接続され、送出側継ぎ手12には、燃料ガス等の水素ガスの送出先(図示略)と弁装置1のガス流路8とを繋ぐ送出配管11が接続される。
【0018】
ボディ2は、ガスタンク5の外部に配置される略扁平箱形の本体部3と、本体部3の底面3aに対して略直交する方向(図1における下側)に延設された略円柱状の取着部4とを備える。取着部4は、ガスタンク5の取着口6に取り付けられる部分である。
【0019】
ガス流路8は、供給側継ぎ手10を介して供給配管9とガスタンク5内とを繋ぐ充填路21(第二流路)と、送出側継ぎ手12を介して送出配管11とガスタンク5内とを繋ぐ送出路22とを有する。なお、本実施形態のガス流路8は、取着部4の内部を、取着部4の軸線方向に沿って貫通する接続路25が、充填路21及び送出路22の一部を兼ねるように形成されている。また、充填路21の途中には、ガスタンク5内に充填された水素ガスの逆流を防止する逆止弁23が設けられ、送出路22の途中には、送出配管11への水素ガスの供給を制御する電磁弁24が設けられる。
【0020】
次に、ボディの本体部と供給側継ぎ手との連結部分近傍の構成について説明する。
図1に示すように、本体部3には、底面3aに垂直な側面3bが形成されている。図2に示すように、本体部3の側面3bには、側面3bに対して略直交する方向(図2における左右方向)に延びる円柱状の取着穴31が形成されており、取着穴31の内周面には雌ネジ32が形成されている。
【0021】
供給側継ぎ手10側の充填路21は、取着穴31の軸心に沿って直線状に形成される。充填路21は、供給側継ぎ手10側の端部に形成される最も大径の拡径部57と、拡径部57に隣接して形成される弁収容部41とを有する。弁収容部41は、拡径部57よりは小径であるが、充填路21の他の部分よりも大径に形成され、逆止弁23が収容される弁室として機能する。また、弁収容部41の内周面にはアルマイト処理が施される。
【0022】
逆止弁23は、中央を弁口42が貫通する略円環状の弁座43と、弁収容部41内を弁座43に接離する方向に移動して弁口42を開閉する弁体44と、弁体44を弁座43側に付勢する付勢手段としてのコイルバネ45とを備えている。
【0023】
弁座43は、ポリイミド樹脂により形成され、軸方向の一端に、他の部分よりも大径のフランジ部56が形成される。なお、フランジ部56は、軸方向幅が、充填路21に形成された拡径部57の軸方向幅よりも大きくなるように形成される。
【0024】
弁体44は、ステンレス鋼により形成された略円筒状の部材であり、弁座43側から順に、閉塞部53、小径筒部52、大径筒部51、及び支持部55に区分される。閉塞部53は、弁体44の弁座43側の端部を閉塞し、外周面がテーパ状に形成されている。小径筒部52は、外径が弁収容部41の内径よりも小径に形成され、径方向に形成された複数の横孔54によって内外が連通されている。大径筒部51は、弁収容部41の内周面に案内されて摺動する部分であり、外径が弁収容部41の内径と略等しくなるように形成される。支持部55は、外径が大径筒部51よりも小さくなるように形成される。
【0025】
コイルバネ45は、弁座43側の一端が弁体44の支持部55に装着され、圧縮された状態で、弁体44とともに弁収容部41に収容される。これにより、弁体44は、コイルバネ45によって弁座43側に付勢される。また、コイルバネ45に付勢された弁体44は、閉塞部53に形成されたテーパ状の先端が弁口42内に挿入されて弁座43に着座することにより弁口42を閉塞する。
【0026】
弁座43は、フランジ部56を充填路21の拡径部57に嵌合させた状態で、本体部3と、本体部3に取り付けられた供給側継ぎ手10との間に挟み込まれることで、本体部3に固定される。このとき、本体部3に形成された充填路21と、供給側継ぎ手10に形成された導通路33とは、弁座43の弁口42を介して連通する。また、本体部3と供給側継ぎ手10との間に弁座43を挟み込むにより、本体部3(拡径部57)と弁座43とが密着するとともに、弁座43と供給側継ぎ手10とが密着する。その結果、本体部3と供給側継ぎ手10との間は、弁座43により気密に封止された状態になる。
【0027】
このように構成された逆止弁23は、ガスタンク5に水素ガスを充填しない場合には、弁体44がガスタンク5(充填路21)内の水素ガスの圧力及びコイルバネ45の付勢力により弁座43側に付勢されて弁座43に着座する。これにより、弁座43の弁口42が閉じられ、ガスタンク5から水素ガスが逆流することを防止する。一方、逆止弁23は、ガスタンク5に水素ガスを充填する場合には、供給配管9から供給側継ぎ手10の導通路33を介して供給される水素ガスの圧力によって、弁体44が弁座43から離座することにより弁口42を開く。これにより、供給配管9、導通路33、及び弁口42を通過した水素ガスが、充填路21内に流入し、横孔54から弁体44内を通って、ガスタンク5内に水素ガスが充填される。
【0028】
次に、供給側継ぎ手の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態の供給側継ぎ手10は、継ぎ手本体61に、絞り弁62、フィルタ63、及び支持部材70が取り付けられて構成される。
【0029】
詳述すると、図3に示すように、継ぎ手本体61は、工具等により把持される把持部65と、把持部65から一端側(図2における左側)に延出された略円筒状のボディ側連結部66(第二連結部)と、把持部65から他端側(図2における右側)に延出された略円筒状の配管側連結部67(第一連結部)とを有する。配管側連結部67の外径は、把持部65及びボディ側連結部66の外径よりも小さくなるように形成される。把持部65は、外周面の一部が面取りされ、軸直交断面が略六角形となるように形成される。ボディ側連結部66の外周面には、取着穴31の雌ネジ32に螺合する雄ネジ71が形成され、配管側連結部67の外周面には、供給配管9の内周面に形成された雌ネジ(図示略)が螺合する雄ネジ72が形成される。また、供給側継ぎ手10には、ボディ側連結部66、把持部65、及び配管側連結部67を軸方向に直線状に貫通する貫通孔68が形成される。
【0030】
貫通孔68は、ボディ側連結部66から配管側連結部67に向けて順に、大径部73、テーパ部75、及び小径部74に区分される。大径部73、テーパ部75、及び小径部74は、同軸上に配置される。大径部73は、ボディ側連結部66側の端面66aから把持部65の略中央付近までの範囲に亘って形成される。小径部74は、内径が大径部73よりも小さく、配管側連結部67側の端部67aから把持部65に至るまでの範囲に亘って形成される。テーパ部75は、大径部73と小径部74とをつなぐ部分であり、大径部73から小径部74に向かうにつれて内径が小さくなるように形成される。
【0031】
なお、配管側連結部67の径方向における内周面から外周面までの肉厚は、把持部65及びボディ側連結部66の径方向における内周面から外周面までの肉厚よりも薄くなるように形成されている。そのため、配管側連結部67は、把持部65及びボディ側連結部66よりも機械的強度が低くなるように形成されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、供給側継ぎ手10のボディ側連結部66側の端面66aには、支持部材70が取り付けられている。支持部材70は、略円筒状の部材であり、その軸心を貫通するように軸孔69が形成されている。支持部材70は、供給側継ぎ手10の大径部73の内径と略同径に形成された挿入部79と、挿入部79の軸方向における一端に形成された外向きフランジ状の規制部76と、他方端部に形成された挿入部よりも小径の支持部77とを有する。また、挿入部79の外周面にはOリング78を配置するための溝79aが形成される。
【0033】
図3に示すように、絞り弁62は、絞り弁座81に対して接離可能に設けられる絞り弁体83と、絞り弁体83が収容される弁室を形成する弁室形成部材84と、絞り弁体83を絞り弁座81側に付勢するコイルバネ85(付勢手段)とを備える。なお、本実施形態では、貫通孔68を形成するテーパ部75が絞り弁座81として機能し、小径部74のテーパ部75側の開口が絞り弁座81の絞り弁口82となる。
【0034】
絞り弁体83は、略円柱状の軸部87と、軸部87の端部に一体的に形成された弁部88とを有している。弁部88は、軸部87側の端部が軸部87の外径及び絞り弁口82の内径よりも大きな外径を有しているとともに、軸部87から離れるにつれて先細となるテーパ面88aが形成されている。テーパ面88aは、テーパ部75(絞り弁座81)と略同一の傾斜に形成されている。本実施形態では、テーパ面88aは、微小な凹凸(図示略)を有する粗い面とされており、絞り弁体83が絞り弁座81に着座した状態で、絞り弁口82の開口面積がゼロにならないように形成されている。すなわち、絞り弁体83が絞り弁座81に着座した状態で、絞り弁体83と絞り弁座81との間には微小な隙間(開口)が形成されており、水素ガスの流通が完全には遮断されず、充填路21から供給配管9への微量の水素ガスの流通が可能となっている。
【0035】
弁室形成部材84は、略有底円筒状に形成されており、底面側から小筒部91と、小筒部91よりも大径の大筒部92とに区分される。小筒部91は、コイルバネ85の外径よりも大きな内径を有するとともに、支持部材70の支持部77の外径と略等しい外径を有している。一方、大筒部92は、弁部88の最大の外径よりもやや大きな内径を有するとともに、貫通孔68における大径部73の内径と略等しい外径を有している。また、大筒部92には、内外、及びその軸方向両端を連通する複数のスリット93が形成されている。
【0036】
フィルタ63は、円筒状に形成されており、その内径が支持部材70の支持部77及び弁室形成部材84の小筒部91の外径と略等しく形成されるとともに、その外径が大径部73の内径よりも小さく形成されている。なお、本実施形態のフィルタ63は、金網により構成されている。また、フィルタ63の軸方向両端部と支持部材70及び弁室形成部材84との間には、それぞれガスケット94が圧縮された状態で配置されている。
【0037】
供給側継ぎ手10の組み立てについて説明する。
先ず、絞り弁体83が、継ぎ手本体61の貫通孔68の大径部73側から、弁部88が絞り弁座81に着座するように挿入される。このとき、絞り弁体83の軸部87の外周にはコイルバネ85が配置される。次に、弁室形成部材84が、大筒部92を絞り弁体83側に向けた状態で、貫通孔68の大径部73に挿入される。このとき、コイルバネ85は、ボディ側連結部66側の端部が小筒部91内に収容された状態になる。さらに、ガスケット94及びフィルタ63が、大径部73内に配置される。このとき、フィルタ63の絞り弁62側の端部には、弁室形成部材84の小筒部91が嵌合され、フィルタ63と弁室形成部材84との間にはガスケット94が配置される。次に、ガスケット94及び支持部材70が取り付けられる。支持部材70は、支持部77を絞り弁62側に向けた状態で、挿入部79が貫通孔68の大径部73内に挿入される。このとき、支持部77は、フィルタ63のボディ側連結部66側の端部に嵌合され、フィルタ63と支持部77との間にはガスケット94が配置される。また、支持部材70は、規制部76がボディ側連結部66の端面66aに当接することで、継ぎ手本体61に対する支持部材70の位置決めを行う。支持部材70が継ぎ手本体61に取り付けられると、絞り弁体83は、コイルバネ85により絞り弁座81側に付勢され、ガスケット94,94は、それぞれ圧縮された状態になる。また、継ぎ手本体61の貫通孔68と、支持部材70の軸孔69により供給側継ぎ手10の導通路33が構成される。
【0038】
このように構成された供給側継ぎ手10は、ボディ側連結部66の雄ネジ71を取着穴31の雌ネジ32に螺合させて、ボディ2に取り付けられる。そして、供給側継ぎ手10がボディ2に取り付けられると、導通路33は充填路21と同軸上に配置され、逆止弁23の弁座43がボディ2と供給側継ぎ手10との間に挟み込まれて固定される。
【0039】
このように構成された弁装置1では、供給側継ぎ手10を介して供給配管9から充填路21に水素ガスが供給される。このとき、供給側継ぎ手10では、図4(a)に示すように、絞り弁体83が導通路33内における充填路21側に設けられているため、供給配管9側から充填路21側へ流れる水素ガスの圧力によって絞り弁体83は絞り弁座81から離座し、絞り弁口82の開口面積が大きくなる。これにより、供給配管9側から充填路21側に大量の水素ガスが流通可能となるため、速やかに水素ガスがガスタンク5に充填されるようになる。
【0040】
ここで、車両衝突等により逆止弁23に異常が発生した場合を想定する。このような場合であっても、本実施形態の弁装置1では、充填路21側から供給配管9側へ流れる水素ガスの圧力及びコイルバネ85の付勢力によって絞り弁体83は絞り弁座81に着座する。これにより、充填路21側から供給配管9側へ流れる水素ガスの流量が制限されるため、大量の水素ガスがガスタンク5から放出されることが抑制される。
【0041】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)供給側継ぎ手10は、充填路21から供給配管9へと水素ガスが流れる場合の開口面積が、供給配管9から充填路21へと水素ガスが流れる場合の開口面積よりも小さくなる絞り弁62を備えた。そのため、供給配管9側から充填路21側へ流れる水素ガスは、充填路21側から供給配管9側へ流れる水素ガスに比べ、流量が制限されない。したがって、ガスタンク5から大量の水素ガスが放出されることを抑制するとともに水素ガスの充填時間を短縮することができる。
【0042】
(2)絞り弁62は、導通路33内に設けられる絞り弁座81と、絞り弁座81に対して接離することにより絞り弁口82の開口面積を変更する絞り弁体83とを備えた。そして、絞り弁体83が絞り弁座81に着座した状態で絞り弁口82を介した水素ガスの流通を許容するようにした。これにより、充填路21側から供給配管9側への水素ガスの流通が確認できるため、逆止弁23に異常が発生して充填路21内を水素ガスが逆流する状態であるか否かを作業者が判別できるようになる。
【0043】
(3)供給側継ぎ手10は、継ぎ手本体61の配管側連結部67を、把持部65及びボディ側連結部66よりも機械的強度が低くなるように形成し、絞り弁62を導通路33内における把持部65と対応する部分に配置した。これにより、供給側継ぎ手10は、車両の衝突等により衝撃が加わって万が一破断するような場合であっても、配管側連結部67を優先的に破断させ、把持部65やボディ側連結部66が破断するのを防止する。その結果、把持部65に配置された絞り弁62の機能が維持されるため、より確実に大量の水素ガスが外部に放出されることを抑制することができる。
【0044】
(4)弁装置1は、供給側継ぎ手10と、充填路21が形成されたボディ2と、を備え、充填路21に逆止弁23を設けたため、通常、充填路21から供給配管9側への水素ガスの流れは、逆止弁23により防止される。また、逆止弁23に異常が生じても、絞り弁62が作用するため、大量の水素ガスが充填路21から供給配管9に流れ込むのを抑制することができる。また、充填路21から供給配管9に少量の水素ガスが流れ込むことにより、逆止弁23の異常を察知することができる。
【0045】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、絞り弁体83の弁部88における絞り弁座81との接触面を粗い面とすることで、絞り弁座81に着座した状態で絞り弁口82を介した水素ガスの流通を許容するようにしたが、これに限らず、例えば接触面に弁部88の径方向に延びる溝を形成する等の構成を採用してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、絞り弁62を導通路33における把持部65と対応する部分に配置したが、これに限らず、導通路33におけるボディ側連結部66又は配管側連結部67と対応する部分に配置してもよい。
【0047】
・上記実施形態では、継ぎ手本体61のテーパ部75を絞り弁座81として構成したが、これに限らず、絞り弁座81を継ぎ手本体61とは別部材により構成してもよい。
・上記実施形態では、付勢手段をコイルバネ85としたが、絞り弁体83を絞り弁座81側に付勢できればこのような形態に限られない。例えば、皿バネや弾性体等により、絞り弁体83を付勢してもよい。また、水素ガスの圧力により絞り弁体83を絞り弁座81側に付勢することが可能な場合には、付勢手段を設けなくともよい。
【0048】
・上記実施形態では、水素ガスの供給を制御するための弁装置1に設けられる継ぎ手に本発明を適用したが、これに限らず、水素ガス以外のガスを供給するための弁装置に設けられる継ぎ手に適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…弁装置、2…ボディ、5…ガスタンク、8…ガス流路、9…供給配管、10…供給側継ぎ手、21…充填路、23…逆止弁、33…導通路、61…継ぎ手本体、62…絞り弁、63…フィルタ、65…把持部、66…ボディ側連結部、67…配管側連結部、68…貫通孔、69…軸孔、70…支持部材、73…大径部、74…小径部、75…テーパ部、81…絞り弁座、82…絞り弁口、83…絞り弁体、84…弁室形成部材、85…コイルバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一流路に連結される第一連結部と、
第二流路に連結される第二連結部と、
前記第一連結部に連結された前記第一流路および前記第二連結部に連結された前記第二流路を導通する導通路と、
前記導通路内に配置され、前記第二流路から前記第一流路へと流体が流れる場合の開口面積が、前記第一流路から前記第二流路へと流体が流れる場合の開口面積よりも小さくなる絞り弁と、を備えることを特徴とする継ぎ手。
【請求項2】
請求項1に記載の継ぎ手において、
前記絞り弁は、前記第一連結部よりも第二連結部側に配置され、
前記第一連結部の機械的強度が、他の部分よりも低くなるように形成されたことを特徴とする継ぎ手。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の継ぎ手と、
前記第二流路が形成された弁本体と、を備え、
前記第二流路には、前記第二流路から前記第一流路への流体の流れを防止する逆止弁が設けられることを特徴とする弁装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−29161(P2013−29161A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165804(P2011−165804)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】