説明

緊張材の張設方法

【課題】複数の鋼より線を束ねた緊張材の端部付近をそれぞれ構造体に設けられた貫通孔に挿通し、緊張力を導入して定着する緊張材の張設方法において、緊張材を構造体に設けられた貫通孔にねじれが生じるのを抑制して挿通するとともに、鋼より線に1本ずつ緊張力を導入してもすべての鋼より線に所定の緊張力を導入できるものとする。
【解決手段】鋼より線21と同程度の径で貫通孔よりやや長く切断された線材41を、緊張材20の鋼より線21の数と同数束ねてダミー緊張材とし、該ダミー緊張材40を構造体の貫通孔31に挿通する。そして、ダミー緊張材を構成する一の線材41−1の一方の端部を緊張材を構成する一の鋼より線21−1と接続し、他方の端部を牽引して線材に代えて鋼より線を貫通孔内に引き込む。これを緊張材のすべての鋼より線について順次に繰り返して、鋼より線を貫通孔に挿通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物にプレストレスを導入するため、もしくは構造物を支持するために用いられる緊張材の張設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物にプレストレスを導入するための緊張材は、コンクリート部材内に埋め込まれたシース内に挿通するものの他、両端部を構造物に設けた貫通孔に挿通して定着するが、両端部間ではコンクリート部材外に張架されるものがある。コンクリート部材外に張架される緊張材は、例えば断面が箱型となった橋桁の内側に配置され、両端部は横桁や緊張材の定着用に設けられた定着ブロックに定着される。つまり、横桁又は定着ブロックに貫通孔を設けておき、この貫通孔に緊張材を挿通して該横桁又は定着ブロックに反力が作用するように定着される。
一方、斜張橋に用いられる斜吊材も、両端部が主塔と橋桁とに設けられた貫通孔にそれぞれ挿通されて定着される。
【0003】
このような緊張材としては、複数本の鋼より線を束ねたものが多く用いられている。この緊張材を所定の位置に張架するときには、あらかじめ複数本の鋼より線を束ねておき、一方の先端にグリップを取り付けてワイヤと接続する。ワイヤはウインチ等によって牽引し、鋼より線の束を一括して構造体に設けられた貫通孔に挿通する。貫通孔に挿通された複数の鋼より線は、マルチストランドジャッキに係止し、複数の鋼より線に一括して緊張力を導入する。そして、緊張力が導入された状態でくさび等を用いて構造体に定着している。
【0004】
しかし、斜張橋等では橋桁の高さが小さくなることから、緊張力の導入時に寸法の大きいマルチストランドジャッキを使用できない場合が生じる。つまり、橋桁内の空間が狭く、緊張材の定着部にジャッキを装着できないことがある。このようなときには、非特許文献1に記載されているように緊張材を構成する複数の鋼より線を小さなシングルストランド用のジャッキを用いて1本ずつ順次に緊張する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】飯束義夫、安藤博文、宇津木一弘、若林良幸、「PC逆ランガーアーチ橋 池田湖橋(仮称)の施工」、プレストレストコンクリート技術協会第8回シンポジウム論文集、1998年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように複数の鋼より線を束ねた緊張材に緊張力を導入するとき、鋼より線の1本ずつに順次緊張力を導入すると次のような問題点が生じる。
複数の鋼より線を束ねた緊張材を一括して貫通孔に挿通すると、貫通孔内で複数の鋼より線が互いにねじれたり、絡まったりすることがある。特に横桁等の構造体内で貫通孔が曲線状に設けられて偏向している場合にねじれ等が生じ易くなる。そして、複数の鋼より線が互いにねじれた状態で1本ずつ順次に緊張力を導入すると、先に緊張力を導入した鋼より線が未緊張の鋼より線を押さえつけ、後から緊張する鋼より線に所定の緊張力を導入することができない場合が生じる。
【0007】
一方、複数の緊張材を一括して貫通孔に挿通するのではなく、鋼より線を1本ずつ貫通孔に挿通することも考えられるが、このように挿通しようとすると、後から挿通しようとする鋼より線の挿通が困難になることがある。特に貫通孔の一部の区間が曲線状に設けられている場合は挿通が困難となりやすい。これは、挿通が完了した鋼より線は貫通孔内で動きにくく、貫通孔内でスペースの調整が生じにくくなって最後の1本又は2本の鋼より線を挿通することが難しくなるものと考えられる。
また、1本ずつ挿通させると、先に挿通されている鋼より線間に後から挿通する鋼より線が潜り込み、結果的に鋼より線が互いにねじれてしまうという事態が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の鋼より線を束ねた緊張材を定着部の構造体に設けられた貫通孔に円滑に挿通することができるとともに、1本ずつ順次に緊張力を導入しても、すべての鋼より線に所定の緊張力を容易に導入することができる緊張材の張架方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 複数の鋼より線を束ねた緊張材の端部付近をそれぞれ構造体に設けられた貫通孔に挿通し、該緊張材に緊張力を導入した状態で両端部を前記構造体に反力を作用させて定着する緊張材の張設方法であって、 前記緊張材の少なくとも一方の端部付近を前記貫通孔に挿通する工程は、 前記鋼より線と同程度の径で前記貫通孔より両端部を把持できる長さ分だけ長く切断された線材を、前記緊張材の鋼より線の数と同数束ねてダミー緊張材とし、該ダミー緊張材を前記構造体の貫通孔に挿通し、 該ダミー緊張材を構成する一の線材の一方の端部を前記緊張材を構成する一の鋼より線と接続し、 前記鋼より線と接続された前記線材の他方の端部を把持して前記貫通孔より引き抜き、該線材に代えて前記鋼より線を貫通孔内に引き込み、 前記線材を鋼より線と接続する工程及び該線材を引き抜いて鋼より線を貫通孔内に引き込む工程を、前記緊張材の他の鋼より線について順次に行うものである緊張材の張設方法を提供する。
【0010】
この方法では、ダミー緊張材が貫通孔よりやや長い程度に切断されているので、これらを束ね、一括して貫通孔に挿通しても、ダミー緊張材の後方部は拘束されることが少なく、線材にねじれが生じることは少ない。そして、ダミー緊張材を構成する線材に鋼より線を接続して線材を牽引すると、線材と同程度の径の鋼より線は円滑に貫通孔内に引き入れられ、周囲に線材又は鋼より線があっても容易に線材が鋼より線に置き換えられる。そして、順次にダミー緊張材を構成する線材を鋼より線に置き換えると複数の鋼より線はねじりが少ない状態で貫通孔に挿通されたものとなり、1本ずつ緊張力を導入しても円滑にすべての鋼より線に所定の緊張力を導入することができる。
【0011】
なお、線材は鋼より線と径が同程度のものを用いることができるものであり、同径又は鋼より線よりやや径が大きいものが望ましいが、多少は鋼より線より径が小さいものも用いることができる。線材の径が鋼より線の径より小さく、その差が大きいときには、線材を鋼より線に接続してこの鋼より線を貫通孔内に引き入れるときに抵抗が大きくなる。したがって、鋼より線より径が小さい線材を用いるときには、線材の径は接続した鋼より線を貫通孔内に引き入れることができる程度とする。また、線材の径が鋼より線の径より大きいときには、すべての線材を貫通孔内に挿通して1本ずつ引き出すことができる程度とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の緊張材の張設方法において、 前記ダミー緊張材の全ての線材を前記貫通孔から引き抜き、前記緊張材を構成する鋼より線の全てを貫通孔に挿通してから1本ずつ順次に緊張力を導入し、前記構造体に順次に定着するものとする。
【0013】
この方法では、すべての緊張材に緊張力が導入されていない状態で、ダミー緊張材の線材を鋼より線に置き換えることができる。これにより、鋼より線を貫通孔に挿通する作業を効率よく行うことが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の緊張材の張設方法において、 前記ダミー緊張材の1本の線材を前記貫通孔から引き抜いて前記緊張材を構成する鋼より線の1本を貫通孔に挿通した後、該鋼より線に緊張力を導入して定着し、その後全ての鋼より線について、鋼より線を貫通孔に引き込み、緊張力の導入及び定着を行う工程を順次に繰り返し行うものとする。
【0015】
この方法では、鋼より線に緊張力を導入するときに、貫通孔内にある線材は短く切断されているので貫通孔内で位置が拘束されることが少なく、周辺にある鋼より線の緊張力導入にともなって位置が調整される。これにより、線材を鋼より線に容易に置き換えることができるとともに、貫通孔内に引き込まれた鋼より線に所定の緊張力を確実に導入することが可能となる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の緊張材の張設方法において、 前記鋼より線として、中心に配置される芯線とその周囲に撚り合わされる外周線とを有するものを用い、 前記線材と前記鋼より線とを接続する工程は、前記鋼より線の端部で前記外周線を切断し、露出した芯線を前記線材と接合される接続具に接合するものとし、 前記接続具は、外径が前記線材の外径より小さくなっているものを用いるものとする。
【0017】
この方法では芯線を用いて鋼より線を接続具に容易かつ強固に接続することができる。そして、接続具の外径が線材の外径より小さくなっているので、線材を牽引して接続された鋼より線を貫通孔内に引き込むときに、接続具が障害となることが少なくなる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の緊張材の張設方法では、緊張材を構造体に設けられた貫通孔にねじれが生じるのを抑制して挿通することができるとともに、鋼より線に1本ずつ緊張力を導入してもすべての鋼より線に所定の緊張力を容易に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態である緊張材の張設方法が適用された斜張橋の概略側面図及びこの斜張橋の橋桁の横断面図である。
【図2】図1に示す橋桁にプレストレスを導入する緊張材の定着部を示す縦断面図である。
【図3】図1に示す橋桁に用いられる緊張材の定着構造を示す縦断面図である。
【図4】図1に示す橋桁に緊張材を張設するときに用いられるダミー緊張材の概略側面図である。
【図5】図4に示すダミー緊張材を横桁に設けられた貫通孔に挿通する状態を示す概略断面図である。
【図6】ダミー緊張材の貫通孔への挿通が終了した状態を示す概略断面図である。
【図7】ダミー緊張材の1本のダミー鋼より線に緊張材を構成する鋼より線の1本を接続した状態を示す概略断面図である。
【図8】ダミー鋼より線と鋼より線との接続部分を示す拡大側面図である。
【図9】鋼より線の断面図である。
【図10】ダミー鋼より線を牽引して鋼より線を貫通孔内に引き込む状態を示す概略断面図である。
【図11】1本目の鋼より線の貫通孔内への挿通が完了した状態を示す概略断面図である。
【図12】2本目以下の鋼より線を貫通孔内に引き込む状態を示す概略断面図である。
【図13】ダミー鋼より線に代えて緊張材を構成する鋼より線を貫通孔に挿通する工程を完了した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1に示す斜張橋は、第1の橋台1と第2の橋台2との間に架け渡されるものであり、第1の橋台1と第2の橋台2との間に第1の橋脚3及び第2の橋脚4が設けられて橋桁8を支持するものである。そして、第1の橋脚3と第2の橋脚4との上部からは橋桁8の上方に主塔5,6が立ち上げられ、この主塔5,6から斜め下方に張架された斜吊材7によって橋桁8を吊り支持するものとなっている。
【0021】
橋桁8は、コンクリートで形成されたものであり、図1(b)に示すように上床版11と、下床版12と、これらを上下に接合する4つのウェブ13とで構成されて断面が箱状となっており、ウェブ13はそれぞれ傾斜するように設けられている。橋桁8の断面が箱状となった内側の空間内には、橋桁8の軸線方向にプレストレスを導入するための緊張材20が張設されている。この緊張材20は、図2に示すように第1の橋脚3上及び第2の橋脚4上で橋桁8に設けられた横桁9,10に貫通孔31を設けて挿通され、緊張力の反力をこの横桁9,10に作用させて定着されている。
貫通孔31は横桁9,10のコンクリート内に管状となったシースを埋め込むことによって形成されたものであり、横桁内で曲線部を有し、緊張材20を緊張端側で曲げ下げるようになっている。
【0022】
緊張材20は、鋼より線を束ねたものであり、本実施の形態では7本の鋼線を撚り合わせて外径が15.7mmとなった鋼より線を19本束ねたものを用いている。この緊張材20の定着具は、図3に示すように貫通孔の開口端部に埋め込まれた拡径管32と、鋼より線21が係止される支圧板33と、鋼より線21を上記支圧板33に係止するくさび34とを備えている。
拡径管32は、横桁9に埋め込まれた上記シース35と接続され、外周面には張り出し部32a,32bを備えて、緊張材20の反力を横桁9のコンクリートに分散させて伝達できるようになっている。
上記支圧板33は拡径管32の端面に当接され、各鋼より線21から伝達される反力を拡径管32に伝達するものである。この支圧板33には、鋼より線21の本数と同数の孔が設けられ、この孔は拡径管32との当接面から鋼より線21の先端側に向けて内径が拡大するものとなっている。そして、この孔に挿通された鋼より線21と孔の内周面との間にくさび34が装着され、このくさび34によって鋼より線21が支圧板33に係止される。
【0023】
次に、鋼より線21を横桁に設けられた貫通孔31に挿通する工程について説明する。
まず、図4に示すようにダミー緊張材40を準備する。ダミー緊張材は、緊張材として用いる鋼より線と同程度の径の線材を束ねたものである。線材は、緊張材を構成する鋼より線の数と同数を、貫通孔31内に挿通したときの配置に合わせて束ねる。上記ダミー緊張材40の線材は、緊張材20として用いる鋼より線21と同じ鋼より線又は緊張材20として用いる鋼より線21よりやや径が大きい鋼より線を用いるのが望ましい。このほか、柔軟に曲げることができる線材であって、鋼より線を貫通孔に引き込むのに十分な強度を持ち、周面の摩擦抵抗が少ないものあれば使用することができ、例えば合成樹脂製の線材等を用いることもできる。本実施の形態では、同径の鋼より線を用いている。
【0024】
上記ダミー緊張材40の線材として用いるダミー鋼より線41は、貫通孔31の長さより約2m長く切断されたものであり、貫通孔に挿通したときに両側へそれぞれ1m程度が突出して鋼より線21との接続及び牽引のために把持することができるものとしている。これらのダミー鋼より線41を束ねるには、粘着テープ等を用いることができ、両端部及び必要に応じて中間部でダミー鋼より線の位置を保持するための形状保持用治具51を用いるのが望ましい。
【0025】
上記のように束ねられたダミー鋼より線41は、図5に示すように先端部にケーブルグリップ52を取り付け、ロープ53と接続する。このロープ53は人力又はウインチ等の牽引機を用いて牽引し、ダミー緊張材40を貫通孔31内に引き入れる。
上記ケーブルグリップ52はダミー鋼より線41を強固に把持するともに、先端側は紡錘形となっており、円滑に貫通孔内を移動できるものとなっている。
【0026】
ダミー鋼より線41が貫通孔31内に引き入れられると、ケーブルグリップ52を取り外し、図6に示すように緊張側の端部でダミー鋼より線41を支圧板33に設けられた孔に挿通して支圧板33を所定の定着位置に配置する。そして、図7に示すように1本のダミー鋼より線41の緊張端とは反対側の端部に接続具54を用いて緊張材を構成する鋼より線の1本21−1を接続する。
【0027】
接続具54は、図8に示すように両端が丸く曲面状となったほぼ円筒部材であり、外径がダミー鋼より線41の外径よりやや小さくなっている。この接続具54には、軸線方向に貫通する中心孔54aが設けられており、この中心孔に側面から連通する複数のネジ孔54bが形成されている。上記中心孔54aの内径は、7本よりの鋼より線21及びダミー鋼より線41の芯線21a,41aを挿入することができるものとなっている。つまり、7本より鋼より線は、図9(a)に示すように1本の芯線21aの周りに6本の同径の外周線21bが撚り合わされたものであり、6本の外周線21bの先端部を切断すると芯線21aが露出し、この芯線21aを上記接続具54の中心孔54aに挿入することができる。また、ダミー鋼より線の芯線41aも同様に接続具54の反対側から中心孔54aに挿入することができる。そして、接続具54の側面からネジ孔54bにボルトをねじ込み、先端を中心孔内に挿入された芯線21a,41aに押し付ける。これにより、接続具54は鋼より線21及びダミー鋼より線41と強固に接合され、鋼より線21とダミー鋼より線41とが接続される。
なお、鋼より線は、図9(b)に示すように、1本の芯線61aの周囲に外径の異なる複数の第1の外周線61b及びその外側に第2の外周線61cを撚り合わせて19本よりとしたものを用いることもできる。このような場合にも、1本の芯線61aのみを残して第1の外周線61b及び第2の外周線61cを切断するか、第2の外周線61cのみを切断して接続具を接合することもできる。
【0028】
1本のダミー鋼より線41−1と緊張材を構成する鋼より線の1本21−1とが接続されると、図10に示すようにダミー鋼より線41−1を緊張端側から牽引し、鋼より線21−1を貫通孔31内に引き入れる。これにより、図11に示すようにダミー鋼より線41−1を本設用の鋼より線21−1に置き換える。このとき、接続具54は外径がダミー鋼より線41の外径より小さくなっているので接続具54が鋼より線21を貫通孔31に引き入れるときの抵抗となることは少ない。
【0029】
1本の鋼より線21−1が挿通されると、図12に示すように2本目のダミー鋼より線41−2と2本面の鋼より線21−2とを接続し、1本目と同様にダミー鋼より線41−2を牽引して緊張材を構成する鋼より線21−2を貫通孔31内に引き入れる。そして、同様にして順次すべてのダミー鋼より線41を本設の鋼より線21に置き換える。
【0030】
図13に示すようにすべての鋼より線21が貫通孔31内に挿通されると、あらかじめ定められた順序で鋼より線21にシングルストランド用の小型のジャッキを装着し、それぞれの鋼より線21に順次緊張力を導入して定着する。これにより鋼より線21を束ねた緊張材20は所定の緊張力が導入された状態で2つの横桁9,10間に張架される。
【0031】
なお、上記実施の形態では鋼より線21のそれぞれに緊張力を導入する時期を、すべての鋼より線21を貫通孔31内に挿通した後としているが、1本の鋼より線をダミー鋼より線に置き代えて挿通した後に緊張力を導入し、鋼より線の挿通及び緊張力の導入を順次に繰り返すようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、緊張材20は箱型断面となった橋桁8の内部空間に張架されるものであったが、本発明の緊張材の張設方法は、緊張材が配置される位置にかかわらず適用することができる。また、橋桁8を主塔5,6から吊り支持する斜吊材7を橋桁8又は主塔5,6に形成された貫通孔内に挿通して張設するときにも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:第1の橋台、 2:第2の橋台、 3:第1の橋脚、 4:第2の橋脚、 5:第1の主塔、 6:第2の主塔、 7:斜吊材、 8:橋桁、 9,10:横桁、
11:上床版、 12:下床版、 13:ウェブ、
20:緊張材、 21:鋼より線、 21a:芯線、 21b:外周線、
31:貫通孔、 32:拡径管、 33:支圧板、 34:くさび、 35:シース、
40:ダミー緊張材、 41:ダミー鋼より線、
51:形状保持用治具、 52:ケーブルグリップ、 53:ロープ、 54:接続具、 54a:中心孔、 54b:ネジ孔、
61:鋼より線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼より線を束ねた緊張材の端部付近をそれぞれ構造体に設けられた貫通孔に挿通し、該緊張材に緊張力を導入した状態で両端部を前記構造体に反力を作用させて定着する緊張材の張設方法であって、
前記緊張材の少なくとも一方の端部付近を前記貫通孔に挿通する工程は、
前記鋼より線と同程度の径で前記貫通孔より両端部を把持できる長さ分だけ長く切断された線材を、前記緊張材の鋼より線の数と同数束ねてダミー緊張材とし、該ダミー緊張材を前記構造体の貫通孔に挿通し、
該ダミー緊張材を構成する一の線材の一方の端部を前記緊張材を構成する一の鋼より線と接続し、
前記鋼より線と接続された前記線材の他方の端部を把持して前記貫通孔より引き抜き、該線材に代えて前記鋼より線を貫通孔内に引き込み、
前記線材を鋼より線と接続する工程及び該線材を引き抜いて鋼より線を貫通孔内に引き込む工程を、前記緊張材の他の鋼より線について順次に行うものであることを特徴とする緊張材の張設方法。
【請求項2】
前記ダミー緊張材の全ての線材を前記貫通孔から引き抜き、前記緊張材を構成する鋼より線の全てを貫通孔に挿通してから1本ずつ順次に緊張力を導入し、前記構造体に順次に定着することを特徴とする請求項1に記載の緊張材の張設方法。
【請求項3】
前記ダミー緊張材の1本の線材を前記貫通孔から引き抜いて前記緊張材を構成する鋼より線の1本を貫通孔に挿通した後、該鋼より線に緊張力を導入して定着し、その後全ての鋼より線について、鋼より線を貫通孔に引き込み、緊張力の導入及び定着を行う工程を順次に繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の緊張材の張設方法。
【請求項4】
前記鋼より線として、中心に配置される芯線とその周囲に撚り合わされる外周線とを有するものを用い、
前記線材と前記鋼より線とを接続する工程は、前記鋼より線の端部で前記外周線を切断し、露出した芯線を前記線材と接合される接続具に接合するものとし、
前記接続具は、外径が前記線材の外径より小さくなっているものを用いることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の緊張材の張設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−261150(P2010−261150A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110338(P2009−110338)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】