説明

緑化用縁石ブロック

【課題】 特段の水分補給系を形成させることなく縁石ブロックの内部に十分な量で貯水することができ、コケ植生用マットに対して効果的かつ十分に給水することができる緑化用縁石ブロックの提供。
【解決手段】 縁石ブロック1の内部に貯水タンク2が埋設され、縁石ブロックの上面にコケ植生用マット9を敷設させるための敷設用凹部10が形成され、敷設用凹部の底面に貯水タンクの内部に連通するように貫通口11が形成され、貯水タンクの平面面積が貫通口の開口面積よりも大きく形成されている。縁石ブロックの内部に貯水タンクを嵌め込むための埋設空間15が形成され、この埋設空間には貯水タンクを嵌め込むための底面開口部16が縁石ブロックの底面に形成され、貯水タンクは底面開口部から埋設空間内に嵌め込まれる状態で縁石ブロックの内部に埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コケを植生させたコケ植生用マットによって上面を緑化させるようにしたコンクリート製の緑化用縁石ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
都市圏におけるヒートアイランド現象の対策として、従来、コンクリート製の縁石ブロックの上面をコケ等によって緑化するようにした技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この縁石ブロックは、上面に蘚苔類や草木類を植生する植生用の凹部を形成し、この凹部の底面には土壌中に埋設された保水性良好の材料から成る第1の保水体に連通する透水パイプを設けると共にこの凹部を形成する壁面に保水性良好の材料から成る第2の保水体を配設した構造になっていた。
【0004】
このように、従来の縁石ブロックは、緑化植物に対する水分補給手段として、縁石ブロックの下方の地中に設けた保水体から透水パイプを利用して水分を吸水させるようになっている。
【0005】
このため、縁石ブロックに形成した凹部の底面から透水パイプを下方に延長させて取り付け、この透水パイプを土壌中に埋設させた保水体に連通させるといった水分補給系を形成する必要があるなど、その構造が複雑になるし、施工に多大の手間がかかるという問題があった。
【0006】
なお、本出願人において、本願に先行してコケ緑化用コンクリート体及びコンクリート体のコケ緑化構造を既に提案している(先行技術1:特願2006−314696、先行技術2:特願2006−226605)。
【0007】
先行技術1は、縁石ブロックの上面にコケ植生用マットを敷設させるための敷設用凹部を形成させ、この敷設用凹部の底面に貯水凹部を形成させ、コケ植生用マットを敷設用凹部に敷設した状態で貯水凹部をコケ植生用マットによって覆うように形成させたものである。
【0008】
このように、コケ植生用マットの下に貯水凹部が形成されているため、この貯水凹部に溜まった水(雨水等)の蒸発によって、コケの生育に適したジメジメした湿気の多い環境下にコケ植生用マットを敷設することができる。
特に、縁石ブロックに形成した貯水凹部からの蒸発水分をコケ植生用マットが直接に吸水する構造であるため、特段の水分補給系を形成する必要がなく、構造が簡単になるし、施工が容易になるという効果が得られるものである。
【0009】
又、先行技術2は、敷設用凹部の底面に形成した貯水凹部からコケ植生用マットに至るように延長して吸水体を設け、この吸水体の毛細管現象によって貯水凹部内に溜まった水をコケ植生用マットに吸い上げるように形成させたものである。
【0010】
このように、吸水体を設けることにより、貯水凹部に溜まった水の蒸発と、吸水体の毛細管現象による吸水によってコケ植生用マットに水分を十分に行き亘らせることができるものである。
【0011】
しかしながら、前記した先行技術は、そのいずれについても敷設用凹部の底面に形成した貯水凹部を貯水手段としている。
この貯水凹部は開口面積のまま底面まで至るストレート穴に形成されており、このようなストレート穴による貯水凹部では貯水量が少なく、特に、夏季等の気温が高い時期では水分が不足がちになり、湿気の多い環境を作るには貯水量の面で十分とは言えず、この点で改良の余地を残していた。
【特許文献1】特開2002−212911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特段の水分補給系を形成させることなく縁石ブロックの内部に十分な量で貯水することができ、コケ植生用マットに対して効果的かつ十分に給水することができる緑化用縁石ブロックを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の緑化用縁石ブロック(請求項1)は、
縁石ブロック(1)の内部に貯水タンク(2)が埋設され、
縁石ブロック(1)の上面にコケ植生用マット(9)を敷設させるための敷設用凹部(10)が形成され、
前記敷設用凹部(10)の底面に前記貯水タンク(2)の内部に連通するように貫通口(11)が形成され、
前記貯水タンク(2)の平面面積が前記貫通口(11)の開口面積よりも大きく形成されている構成とした。
【0014】
又、本発明の緑化用縁石ブロック(請求項2)は、
請求項1記載の緑化用縁石ブロックにおいて、敷設用凹部(10)から縁石ブロック(1)の外部に貫通する排水孔(19)が形成されている構成とした。
【0015】
又、本発明の緑化用縁石ブロック(請求項3)は、
請求項1又は2記載のコケ緑化用縁石ブロックにおいて、前記貯水タンク(2)の内部から貫通口(11)を通して敷設用凹部(10)に至るように延長して吸水体(4)が設けられ、この吸水体(4)は毛細管現象によって貯水タンク(2)内の水を敷設用凹部(10)に敷設したコケ植生用マット(9)に吸い上げるように形成されている構成とした。
【0016】
又、本発明の緑化用縁石ブロック(請求項4)は、
請求項1又は2又は3記載の緑化用縁石ブロックにおいて、縁石ブロック(1)の内部に貯水タンク(2)を嵌め込むための埋設空間(15)が形成され、この埋設空間(15)には貯水タンク(2)を嵌め込むための底面開口部(16)が縁石ブロック(1)の底面に形成され、前記貯水タンク(2)は前記底面開口部(16)から埋設空間(15)内に嵌め込まれる状態で縁石ブロック(1)の内部に埋設されている構成とした。
【0017】
本発明でいうコケとは、スナゴケ、ハイゴケ、スギゴケ、その他のコケ類を含む。
【0018】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施例に記載した具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の緑化用縁石ブロック(請求項1)は、縁石ブロックの上面に敷設用凹部を形成しているので、この敷設用凹部にコケ植生用マットを収まりよく敷設することができる。
そして、縁石ブロックの内部に貯水タンクが埋設され、この貯水タンクに溜まった水(雨水等)が敷設用凹部の底面に形成した貫通口を通して蒸発するため、コケの生育に適したジメジメした湿気の多い環境下にコケ植生用マットを敷設することができる。
又、貯水タンクから貫通口を通して蒸発した水分をコケ植生用マットが直接に吸水する構造であるため、特段の水分補給系を形成する必要がなく、構造が簡単になるし、施工が容易になるという効果が得られる。
【0020】
特に、本発明の緑化用縁石ブロック(請求項1)は、貯水タンクの平面面積が貫通口の開口面積よりも大きく形成されている点に特徴がある。
前記した先行技術は、その貯水手段となる貯水凹部が開口面積のまま底面まで至るストレート穴に形成されているが、本発明では、貯水タンクの平面面積が貫通口の開口面積よりも大きく形成されている。
これにより、結果として貯水タンクは、貫通口よりも平面面積が大きい大サイズのタンクに形成される。
即ち、貯水タンクを大サイズに形成できるため、湿気の多い環境を作るに十分な貯水量を縁石ブロックの内部に確保することができ、夏季等の気温が高い時期でも水分が不足するのを防止し、コケ植生用マットに対して効果的かつ十分に給水することができる。
【0021】
又、敷設用凹部から縁石ブロックの外部に貫通する排水孔を形成すると(請求項2)、貫通口から溢れて敷設用凹部に溜まった余分な水を排水することができ、コケが水に浸りコケが腐るといった育成不良が生じるのを防止できる。
【0022】
貯水タンクの内部から貫通口を通して敷設用凹部に至るように延長して吸水体を設けると(請求項3)、吸水体の毛細管現象によって貯水タンク内の水を敷設用凹部に敷設したコケ植生用マットに吸い上げることができ、貫通口からの水の蒸発と、吸水体の毛細管現象による吸水によってコケ植生用マットに水分を十分に行き亘らせることができる。
【0023】
又、貯水タンクを縁石ブロックの内部に埋設させるに際し、縁石ブロックの内部に形成した埋設空間に開口部から嵌め込むようにすれば(請求項4)、縁石ブロックの内部に貯水タンクを容易に埋設させることができる。
即ち、縁石ブロックに予め埋設空間を形成しておき、縁石ブロックの底面に形成した開口部から後付けで貯水タンクを嵌め込むようにしたものである。
【0024】
縁石ブロックを成形型枠で成形するに際し、貯水タンクを型枠の中に内蔵させた状態でコンクリートを打設させれば、貯水タンクを埋め殺し状態に埋設することができる。
この方法だと、打設する際に貯水タンクの四方周辺には締め固めの振動圧力がかかるため、貯水タンクを強固にしなければならない。この結果、貯水タンクの壁厚を厚く形成させる必要が生じ、貯水タンクの製作コストが高くなってしまう。
これに対し、貯水タンクを後付けによって埋設空間に嵌め込むようにすれば、埋め殺しの場合と異なり、貯水タンクの壁厚を厚く形成させる必要がなく、それだけ貯水タンクの壁厚を薄く形成できるため、貯水タンクの製作コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の緑化用縁石ブロックの実施例を示す切欠斜視図、図2はその長手方向断面図、図3は長手方向と直交方向の断面図である。
【0026】
この緑化用縁石ブロックは、車道と歩道との境界に敷設される歩車道境界ブロックであり、工場で製造されたコンクリート2次製品である。
【0027】
縁石ブロック1には、その上面にコケ植生用マット9を嵌め込むための敷設用凹部10が形成され、かつ内部に貯水タンク2が埋設されている。
【0028】
そして、前記敷設用凹部10の底面に前記貯水タンク2の内部に連通するように貫通口11が形成されている。
この場合、実施例では中央部に1個(複数個でもよい)の貫通口11が形成され、コケ植生用マット9を敷設用凹部10内に嵌め込んだ状態でコケ植生用マット9によって貫通口11が覆われるように形成されている。
尚、複数個の貫通口11を形成する場合、通常は貫通穴11を縁石ブロック1の長手方向に一定の間隔で配列させるが、例えば、長手方向と直交する方向に2個づつ配設させると同時に長手方向に3列に配列して合計6個の貫通口11を形成することもできる。
又、前記貫通口11の形状は円形でも角形でもよく、配設数や配設間隔等については必要に応じて適宜に決定できる。
【0029】
前記貯水タンク2は、上面が開放し、縁石ブロック1の長手方向に長い角形タンクにプラスチックにより形成されている。
そして、前記貯水タンク2の平面面積が前記貫通口11の開口面積よりも大きく形成されている。
【0030】
実施例では、図2に示すように、縁石ブロック1の長さL1を60cmとし、縁石ブロック1の長手方向端面1aと貯水タンク2の長手方向端面2aとの距離L2を5〜8cmとしている。
このように貯水タンク2の長手方向端面2aを縁石ブロック1の長手方向端面1aの近傍に位置させることにより貯水タンク2を大サイズに形成させることができる。
【0031】
即ち、貯水タンク2は、その平面面積が前記貫通口11の開口面積よりも大きい大型タンクに形成されるため、湿気の多い環境を作るに十分な貯水量を縁石ブロック1の内部に確保することができる。
特に、貯水タンク2の長手方向端面2aを縁石ブロック1の長手方向端面1aの近傍に位置させているため、貯水タンク2を大型タンクに形成させることができる。
【0032】
なお、貯水タンク2内には雨水が貯水されるが、天候等の条件によっては、貯水タンク2内に人工的に給水して貯水させるようにしてもよい。
又、貯水タンク2の内部に保水材(例えば、(商標):パミス:大江化学社製商品)を充填させることができる。このように保水材を充填させることで貯水タンク2内の水の蒸発を遅らせてコケ植生用マット9への給水を徐々に行なわせることができる。
【0033】
前記貯水タンク2は、縁石ブロック1の内部に形成された埋設空間15内に嵌め込まれる状態で縁石ブロック1の内部に埋設されている。
即ち、縁石ブロック1の内部に埋設空間15が形成され、この埋設空間15には縁石ブロック1の底面に開口して開口部16が形成され、前記貯水タンク2は前記開口部16から埋設空間15内に嵌め込まれる状態で縁石ブロック1の内部に埋設されている。
この実施例では、貯水タンク2を埋設空間15内に嵌め込んだ状態で、埋設空間15の底面開口部16にプレキャストによるコンクリート板17を嵌め込み、その周囲にモルタルを充填させたり、接着剤により接着させたりして埋設空間15の底面開口部16を塞ぐように形成している。
なお、貯水タンク2上端縁と埋設空間15の上面との間に間隔Tが生じ、この間隔T内にまで水が貯水したとしても構わない。
【0034】
貯水タンク2の縁石ブロック1への埋設方法の概略を図4により説明する。
図示省略した成形型枠を用いて縁石ブロック1の底面に開口させるように、内部に埋設空間15を形成させた縁石ブロック1を製造させる(図4−イ)。
この際、敷設用凹部10及び貫通口11も同時に成形させる。
【0035】
次に、上面を開放した貯水タンク2を前記縁石ブロック1の埋設空間15内に嵌め込む(図4−ロ)。
そして最後に、埋設空間15の底面開口部16にプレキャストによるコンクリート板17(コンクリート板に限らず、プラスチック板等を用いることができる)を嵌め込んで埋設空間15の底面開口部16を塞ぐもので(図4−ハ)、これにより縁石ブロック1の内部に貯水タンク2を埋設させることができる。
【0036】
なお、実施例では、埋設空間15の底面開口部16をコンクリート板17やプラスチック板等で閉塞させるようにしているが、この閉塞作業を省略させることも可能である。
これにより閉塞作業の省略によって製造工程が簡単になるし、コンクリート板17が不要になるし、縁石ブロック1の重量を軽減できる。
この場合、貯水タンク2の底面が破損するのを防止するため、貯水タンク2の底壁を厚く形成させるたり、貯水タンク2の底壁外面に補強板を予め取り付けておいたりするなどの破損防止手段を構じておくのが望ましい。
【0037】
このようにした貯水タンク2の埋設構造では、貯水タンク2を埋め殺しの場合と異なり、締め固め圧力に抗する強度を持たせるために貯水タンク2の壁厚を厚く形成させる必要がなく、それだけ貯水タンク2の壁厚を薄く形成できる。
【0038】
又、貫通口11は、敷設用凹部10に溜まった水を貯水タンクに落とすこと、貫通口11からの水分の蒸発口とさせること、後述する吸水体4の挿入口としての役割を持っている。その大きさは、円形の場合で直径10cm以内、方形の場合で10mm×10mm以内が適当である。
この貫通口11が大きいと、敷設用凹部10に敷設したコケ植生用マット9の上に足の踵が載った場合等に落込むことがあり、このような事故が生じてはならない。
【0039】
埋設空間15は縁石ブロック1が自動車のタイヤの襲撃に耐え得ることができる範囲で大きく形成させれば貯水量を増大させ、コケの育成にも、打ち水効果にも効果が得られる。
従って、埋設空間15は縁石ブロックが自動車等から受ける衝撃に耐え得るだけの大きさで形成するの好ましい。
通常は、埋設空間15を形成することによって生じる縁石ブロック1の前面壁1b及び背面壁1cmの厚みを3cm以上に形成するの好ましい。なお、両端壁L2の厚みは、前記したように5〜8cmが適当である。
なお、縁石ブロック1を鉄筋や衝撃補強部材で補強させることができるのは当然であるし、鉄筋や衝撃補強部材による補強を必ずしも行なわなくてもよい。
【0040】
又、貯水タンク2の内部から貫通口11を通して敷設用凹部10に至るように延長して吸水体4が設けられ、この吸水体4は毛細管現象によって貯水タンク2内の水を敷設用凹部10に敷設したコケ植生用マット9に吸い上げるように形成されている。
【0041】
実施例では、敷設用凹部10の底面に貫通口11に接続して溝18が形成され、この溝18に収まるように吸水体4が延長している。
この溝18は、敷設用凹部10の底面に1条あるいは複数条で形成してもよいし、直線でもよいし、蛇行状に形成させることができる。
このように、敷設用凹部10の底面に溝18を形成させると、吸水体4を敷設用凹部1の底面に収まりの良い状態で延長させることができる。
【0042】
前記吸水体4としては、不織布やフリースを細幅に切断した紐状体、繊維や布や細紐を紐状に編成あるいは織成した紐状体、このほか帯状体等、吸水性に優れ、柔軟に屈曲できるものを使用するのが好ましい。なお、紐状体の断面形状は丸形でも平形でもよい。
なお、この吸水体は、必ずしも設ける必要はなく、貫通口からの蒸発水分だけでもコケの生育に適したジメジメした湿気の多い環境を得ることができる。
【0043】
前記コケ植生用マット9は前記敷設用凹部10に嵌め込まれる状態に敷設されるもので、このように敷設用凹部10が形成されていると、ここに水が溜まってコケが水に浸り、コケが腐るという育成不良が生じるため、敷設用凹部10に溜まった余分な水を排水する必要がある。
そこで、敷設用凹部10から縁石ブロック1の外部に貫通する排水孔19を形成し、ここから敷設用凹部10に溜まった余分な水を排水するようにしている。
【0044】
前記コケ植生用マット9としては、例えば、厚み内に空隙が形成された立体編物をコケ植生部材とし、この立体編物の底面に保水性シート部材(例えば、不織布マット)や保水性パネル部材(コンクリートパネル)が取り付けられたものを用いることができる。又、全体として保水性もさることながら、水分や湿気を放出・透湿する機能も要する。
【0045】
保水性シート部材は、水分を吸水して保水できるシートであって、不織布、織布、編布、植物繊維シート等を単独或いは組み合わせて用いることができる。
このほか、保水性シート部材には、保水材としての綿、パルプかす、ガラスウール、ロックウール、ロックファイバー、その他の植物繊維、布(織布、不織布繊維)、合成繊維綿、繊維ボード、繊維球状体等を単独、或いは積層したり組み合わせたりしてシート状やマット状に形成したものを含むものとする。
また、保水性シート部材の保水とは、材料自体が水を吸水して保水する場合と、材料自体に吸水性がなくても材料同士の隙間に水を吸水して保水する場合を含む。
なお、このような保水性シート部材をそのままコケ植生用マットとして用いることも可能である。
【0046】
又、保水性パネル部材は、水分を吸水して保水できるパネル(板状体)であって、モルタルパネルや発泡セメントパネル等のセメント系パネル、透水性合成樹脂パネル、透水性合成樹脂と骨材を混ぜ合わせて形成したパネル、セメント系ポーラスパネル、樹脂系ポーラスパネル等を用いることができる。
尚、前記モルタルパネルは保水作用を有するもので、このモルタルパネルについてもコケ植生用マットの構成部材である保水性パネル部材に含めるものとする。この場合、モルタルパネルは保水性を保ちながら、水分や湿気を放出・透湿する機能も要する。
また、保水性パネル部材の保水とは、材料自体が水を吸水して保水する場合と、材料自体に吸水性がなくても材料同士の隙間に水を吸水して保水する場合を含む。
【0047】
又、コケ植生部材としての立体編物には、多数の網目開口部を形成するように樹脂繊維を用いて編成した表裏二枚の網状編成部と、この表裏二枚の網状編成部を厚み方向に連結させる連結繊維列を備え、前記連結繊維列により囲まれた空隙が表裏の網目開口部間に開口して形成されたハニカム状立体編物(商品名:キュービックアイ、ユニチカ(株)製)を用いることができる。
【0048】
又、前記立体編物の空隙に保水材を設けることができる。
保水材としては、綿、パルプかす、その他の植物繊維、熱可塑性樹脂製糸条(例えば、モスネット協会製作、商標:モスフラット)、布(織布、不織布繊維)、ロックウール、ロックフャイバー、ガラスウール、保水性骨材、合成繊維綿、繊維球状体等が用いられ、これらを単独、あるいは組み合わせて使用できる。
この場合、コケが定着し易いように、綿や不織布等の繊維材で保水性骨材を包んで用いるようにすることができる。
なお、保水性骨材としては、パミス、珪藻土、再生ガラス等の多孔性骨材を、粒状のまま、あるいはセメントや接着剤で固めて使用することができる。
【0049】
また、前記保水材は、立体編物を保水性シート部材又は保水性パネル部材に取り付ける前に空隙に詰め込んでもよいし、取り付けた後に空隙に詰め込んでもよい。
【0050】
この実施例のコケ植生用マット9は、ハニカム状立体編物90をコケ植生部材とし、不織布マットにより形成させた浅底トレイ91を保水性シート部材とし、この浅底トレイ91の中にハニカム状立体編物90を収容させ、かつ前記ハニカム状立体編物90の空隙に保水材としての綿(図示省略)を詰め込んだものを用いている。
そして、コケ植生用マット9の上面に露出するように、緑化植物としてのコケが前記保水材としての綿の上に植え付けられている。
又、実施例では、敷設用凹部10の長さを3分割した長さで形成された3個のコケ植生用マット9,9,9(複数分割した長さで形成された複数個のコケ植生用マットでもよい)を長手方向に列設させた状態で敷設用凹部10に敷設しているが、敷設用凹部10の長さで形成した1個のコケ植生用マット9を敷設用凹部10に敷設してもよい。
なお、前記浅底トレイ9は、不織布マットで形成させる以外に、モルタルで形成させたり、モルタルを含浸させたモルタル含浸不織布マットにより形成させたり、或いは底壁をモルタル板で形成させて周囲の立壁を不織布マットによって形成させるなど、不織布マット、モルタル、モルタル含浸不織布マット、その他の保水性マットや保水性プレートを単独あるいは組み合わせて形成することができる。
【0051】
次に、図5及び図6は本発明の緑化用縁石ブロックの他例を示す断面図である。
図5の緑化用縁石ブロックは、長尺の縁石ブロック1の内部に2個の貯水タンクを埋設させた例で、実施例では、縁石ブロック1の長さL1を200cmとし、貯水タンク2,2間の間隔L3を5〜8cmとし、縁石ブロック1の端面と貯水タンク2の端面との距離L2を5〜8cmとしている。
又、この実施例では、貯水タンク2の底面20が縁石ブロック1の底面2bと同一面になるように形成されたもので、これにより、貯水タンク2の貯水量を増大させることができるし、底面開口部16を塞ぐ工程が省略され、コンクリート板17が不要になる。
この場合、貯水タンク2の底面が破損するのを防止するための破損防止手段を構じておくのが望ましい。
又、貯水タンク2上端縁が埋設空間15の上面まで延長した長さの貯水タンク2を用いている。
【0052】
図6の緑化用縁石ブロックは、貯水タンク2を埋め殺し状態で縁石ブロック1の内部に埋設させたもので、縁石ブロック1を成形型枠で成形するに際に同時に貯水タンク2を成形型枠に組み付け、この状態でコンクリートを打設させることにより製造する。
又、この実施例は毛細管現象によって貯水タンク2内の水を吸い上げるための吸水体を省略する場合の例であり、この場合には、水分の蒸発量を増加させるために貫通口11の数量を多く(例えば、縁石ブロック1の長さL1を60cmとした場合で6〜10個)形成させている。
又、この図6の実施例では、貯水タンク2の上面は上板21によって閉鎖され、この上板に前記貫通口11に符合する連通穴22を形成させている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の緑化用縁石ブロックの実施例を示す切欠斜視図である。本発明のコケ緑化構造の実施例を示す分解斜視図である。
【図2】その長手方向断面図である。
【図3】長手方向と直交方向の断面図である。
【図4】貯水タンクの縁石ブロックへの埋設方法の概略を示す工程説明図。
【図5】本発明の緑化用縁石ブロックの他例を示す断面図である。
【図6】本発明の緑化用縁石ブロックの他例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 縁石ブロック
1a 長手方向端面
1b 底面
10 敷設用凹部
11 貫通口
15 埋設空間
16 底面開口部
17 コンクリート板
18 溝
19 排水孔
2 貯水タンク
2a 長手方向端面
21 連通穴
4 吸水体
9 コケ植生用マット
90 ハニカム状立体編物
91 浅底トレイ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁石ブロック(1)の内部に貯水タンク(2)が埋設され、
縁石ブロック(1)の上面にコケ植生用マット(9)を敷設させるための敷設用凹部(10)が形成され、
前記敷設用凹部(10)の底面に前記貯水タンク(2)の内部に連通するように貫通口(11)が形成され、
前記貯水タンク(2)の平面面積が前記貫通口(11)の開口面積よりも大きく形成されていることを特徴とする緑化用縁石ブロック。
【請求項2】
請求項1記載の緑化用縁石ブロックにおいて、敷設用凹部(10)から縁石ブロック(1)の外部に貫通する排水孔(19)が形成されている緑化用縁石ブロック。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコケ緑化用縁石ブロックにおいて、前記貯水タンク(2)の内部から貫通口(11)を通して敷設用凹部(10)に至るように延長して吸水体(4)が設けられ、この吸水体(4)は毛細管現象によって貯水タンク(2)内の水を敷設用凹部(10)に敷設したコケ植生用マット(9)に吸い上げるように形成されている緑化用縁石ブロック。
【請求項4】
請求項1又は2又は3記載の緑化用縁石ブロックにおいて、縁石ブロック(1)の内部に貯水タンク(2)を嵌め込むための埋設空間(15)が形成され、この埋設空間(15)には貯水タンク(2)を嵌め込むための底面開口部(16)が縁石ブロック(1)の底面に形成され、前記貯水タンク(2)は前記底面開口部(16)から埋設空間(15)内に嵌め込まれる状態で縁石ブロック(1)の内部に埋設されている緑化用縁石ブロック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−280811(P2008−280811A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127982(P2007−127982)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(391032864)
【Fターム(参考)】