説明

線形蒸発源及びそれを用いた蒸着装置

【課題】複数の隔壁を用いて、るつぼの内部空間を分離する線形蒸発源において、るつぼの分離された空間に残存する蒸発物質量の偏差を最小化し、成膜の不均一が防止できる線形蒸発源及びそれを用いた蒸着装置を提供する。
【解決手段】一側が開口され、蒸発物質を保存するるつぼ320と、るつぼの内部空間を分割し、下部に1つまたは複数の貫通ホール325bが形成される複数の隔壁325と、るつぼの開口側に位置し、複数のノズル335を含むノズル部と、るつぼを加熱するための加熱手段340と、るつぼ、ノズル部、及び加熱手段を収納するためのハウジング310とを含む線形蒸発源300。また、工程チャンバ200と、該工程チャンバの一側に位置する線形蒸発源300と、線形蒸発源に対向するように位置する基板ホルダ500とを含む蒸着装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形蒸発源及びそれを用いた蒸着装置に関し、複数の隔壁を用いて、るつぼの内部空間を分離する線形蒸発源において、上記るつぼの分離された空間に残存する蒸発物質量の偏差を最小化し、成膜不均一を防止することができる線形蒸発源及びそれを用いた蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板表示装置(Flat Panel Display device)は、軽量及び薄型などの特性により陰極線管表示装置(Cathode-ray Tube Display device)に代替される表示装置として用いられ、その代表的な例が、液晶表示装置(Liquid Crystal Display device; LCD)と有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting diode Display device; OLED)である。この中、有機電界発光表示装置は、液晶表示装置に比べて輝度特性及び視野角特性が優れており、バックライトを必要としないため超薄型に実現されるという長所を有する。
【0003】
このような有機電界発光表示装置は、有機薄膜に陰極(Cathode)から注入される電子と陽極(Anode)から注入される正孔とが再結合して励起子を形成し、この励起子のエネルギーにより特定波長の光が発生する現象を利用した表示装置である。
【0004】
上記有機電界発光表示装置は、ガラス、ステンレススチールまたは合成樹脂で形成された基板上に、陰極、陽極及び有機薄膜などを選択的に形成させるために、フォトリソグラフィ方法または蒸着物質を蒸発または昇華させて真空蒸着した後に、選択的にエッチングするか、又は所定パターンに形成された複数のスリット(slit)を含むマスク組立体を用いて上記蒸着物質を選択的に蒸着する蒸着法を使用する。
【0005】
ここで、上記フォトリソグラフィ方法は、一部領域にフォトレジスタを塗布した後、湿式エッチングまたは乾式エッチングする方法であって、上記フォトレジスタを剥離する過程やエッチング工程において水分が流入されることができるため、上記有機薄膜のように水分によって劣化される物質は上記蒸着法を主に用いる。
【0006】
上記蒸着法による蒸着装置は、通常一側が開口され、有機物質のような蒸発物質を保存するためのるつぼ(crucible)、上記るつぼを加熱するための加熱手段、上記るつぼの開口側に位置するノズル部、及び上記るつぼ、上記加熱手段及び上記ノズル部を収納するためのハウジングを含む蒸発源を備えており、上記蒸着装置は蒸着工程の効率性を高めるために、上記蒸発源として上記るつぼが所定の長さを有する線形蒸発源が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような線形蒸発源を含む蒸着装置は、複数の隔壁を用いて上記線形蒸発源のるつぼ内部に蒸発物質が一方に偏って保存されることを防止しているが、上記複数の隔壁によって分離された各空間と加熱手段との間の距離差によって上記各空間に伝達される熱量が異なって上記各空間の蒸発量が所定偏差を有し、上記各空間の蒸発量の偏差は上記各空間に残存する物質の偏差として現れるため、上記各空間に残存する蒸発物質に伝達される熱量の偏差を増加させ、基板に成膜される膜の不均一を深化させるという問題点があった。
【0008】
また、上記各空間に残存する蒸発物質の偏差が大きく、上記るつぼの各位置別の温度偏差が大きくなるにつれて、上記加熱手段により膨脹や収縮を繰り返するつぼの変形が発生するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するためのものであって、複数の隔壁によりるつぼの内部空間を分離させる線形蒸発源において、分離された各空間に残存する蒸発物質量の偏差を最小化することで、成膜の不均一を防止することができる線形蒸発源及びそれを用いた蒸着装置を提供することに目的がある。
【0010】
本発明の上記目的は、一側が開口され、蒸発物質を保存するるつぼと、上記るつぼの内部空間を分割し、下部に1つまたは複数の貫通ホールが形成される複数の隔壁と、上記るつぼの開口側に位置し、複数のノズルを含むノズル部と、上記るつぼを加熱するための加熱手段と、上記るつぼ、ノズル部及び加熱手段を収納するためのハウジングとを含む線形蒸発源によって達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、工程チャンバと、上記工程チャンバの一側に位置する線形蒸発源と、上記線形蒸発源に対向するように位置する基板ホルダとを含み、上記線形蒸発源は一側が開口されるるつぼ、上記るつぼの内部空間を分割して下部に1つまたは複数の貫通ホールが形成される複数の隔壁、上記るつぼの開口側に位置して複数のノズルを含むノズル部、上記るつぼを加熱するための加熱手段、及び上記るつぼ、ノズル部及び加熱手段を収納するためのハウジングを含む蒸着装置によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、線形蒸発源及びそれを用いた蒸着装置は、複数の隔壁によりるつぼの内部空間を分離させる線形蒸発源において、上記複数の隔壁下部に1つまたは複数の貫通ホールが位置するようにし、加熱手段によって液化された蒸発物質が上記1つまたは複数の貫通ホールを介して流れるようにすることで、上記るつぼの各空間に残存する蒸発物質量の偏差を最小化し、成膜の不均一を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る蒸着装置を示す概略図である。
【図2A】本発明の実施形態に係る蒸着装置の線形蒸発源を示す斜視図である。
【図2B】本発明の実施形態に係る蒸着装置の線形蒸発源を示す断面図である。
【図3A】本発明の実施形態に係る蒸着装置の隔壁を示す概略図である。
【図3B】本発明の実施形態に係る蒸着装置の隔壁を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるわけではなく、他の形態で具体化することができる。したがって、ここに以下に開示される実施形態は発明の開示を完全なものとすると共に、当業者に本発明の思想を十分に伝えるために提供されるものである。なお、説明の都合上、図面において、層及び領域の厚みは誇張されており、図示する形態が実際とは異なる場合がある。明細書の全体において同一の参照番号は、同一の構成要素を示す。
【0015】
図1は,本発明の実施形態に係る蒸着装置を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る蒸着装置100は、工程チャンバ200、上記工程チャンバ200の一側に位置する線形蒸発源300及び上記線形蒸発源300に対向するように位置する基板ホルダ500を含む。
【0017】
上記工程チャンバ200は、蒸着工程を行うための空間を提供するためのものであって、基板Sの搬出入のための搬出入口(図示せず)及び上記工程チャンバ200内部の圧力を制御し、上記基板S上に蒸着されない蒸発物質を排気させるために真空ポンプ(図示せず)に接続される排気端(図示せず)をさらに含むことができる。ここで、上記工程チャンバ200は、上記蒸発物質が上記基板S上に所定パターンに蒸着されるように、上記線形蒸発源300と基板ホルダ500との間に位置し、複数のスリット(slit)を含むマスク組立体Mをさらに含むことができる。
【0018】
上記基板ホルダ500は、上記工程チャンバ200内側に搬入される基板Sを載置するためのものであって、蒸着工程間に上記基板Sを固定するための別途の固定部材(図示せず)をさらに含むことができる。
【0019】
ここで、本発明の実施形態に係る蒸着装置100は、上記線形蒸発源300が上記工程チャンバ200の下部に位置し、上記基板ホルダ500が上記工程チャンバ200の上部に位置するようにし、上記基板ホルダ500により上記基板Sが地面に水平するように固定されたものとして示しているが、上記線形蒸発源300は上記工程チャンバ200の一側面に位置し、上記基板ホルダ500は上記工程チャンバ200の他側面に位置するようにし、上記基板ホルダ500に固定された上記基板Sが地面から70〜110゜の角度を有するようにすることで、重力による基板の垂れを防止することができる。
【0020】
線形蒸発源300は、蒸発物質を保存し、上記蒸発物質を加熱して上記基板S上に噴射することで、上記基板S上に上記蒸発物質を成膜するためのものであって、一方向に所定長さを有する。ここで、上記工程チャンバ200は、上記線形蒸発源300を該線形蒸発源300の長手方向に垂直する方向に移動させて、上記基板Sの全面上に蒸発物質を容易に噴射できるようにする移送部400をさらに含むことができ、上記移送部400はボールスクリュー(ball screw)410、上記ボールスクリュー410を回転させるモータ430及び上記線形蒸発源300の移動方向を制御するためのガイド420を含む。
【0021】
図2Aは本発明の実施形態に係る蒸着装置100の線形蒸発源300を示す斜視図であり、図2Bは本発明の実施形態に係る蒸着装置100の線形蒸発源300を示す断面図である。
【0022】
図2A及び図2Bに示すように、上記線形蒸発源300は、上部が開口され、蒸発物質を保存するためのるつぼ320、上記るつぼ300の開口された上部に位置して複数のノズル335を含むノズル部330、上記るつぼ320の側面に位置して上記るつぼ320に保存された蒸発物質を加熱するための加熱手段340、及び上記るつぼ320、ノズル部330及び加熱手段340を収納するためのハウジング310を含む。
【0023】
ここで、本発明の実施形態に係る蒸着装置100は、上記線形蒸発源300が上記工程チャンバ200の下部に位置することで、上記るつぼ320の上部が開口されたものとして説明しているが、上記るつぼ320の開口位置は上記線形蒸発源300の位置によって側面または下面とすることができる。
【0024】
上記加熱手段340は、上記るつぼ320に保存された蒸発物質を加熱して蒸発させるためのものであって、上記るつぼ320の開口側に対向する面に位置することができるが、上記加熱手段340が上記るつぼ320の開口側に対向する面に位置した場合、上記加熱手段340により加熱された蒸発物質が蒸発するのに多少時間が必要とされるため、上記るつぼ320の開口側に近く位置する蒸発物質に最も多い熱が伝達されて蒸発が容易に行われるように、上記るつぼ320の開口された側の側面であることが好ましい。すなわち、図2A及び図2Bに示すように、上記るつぼ320の上側が開口された場合、上記るつぼ320の両側面に位置することが好ましく、上記るつぼ320の側面を囲むように位置することが最も好ましい。
【0025】
上記るつぼ320は、蒸発物質が一方向に偏って保存されないように、内部空間を分離するための複数の隔壁325を含み、上記複数の隔壁325は下部に1つまたは複数の貫通ホール325bが形成されて、上記加熱手段340により液化された蒸発物質が上記複数の隔壁325によって分離された上記るつぼ320の内部空間を自由に流れるようにすることで、上記各空間に残存する蒸発物質の偏差を最小化する。
【0026】
ここで、上記複数の隔壁325は、上部に段差部325aが形成されて、上記加熱手段340により蒸発された蒸発物質が移動するようにすることで、蒸発された蒸発物質の圧力差によって上記ノズル部330の各ノズル335を介して蒸発した蒸発物質が均一に噴射されるようにすることができる。
【0027】
図3A及び図3Bは、本発明の実施形態に係る蒸着装置の隔壁を示す概略図であり、上記複数の隔壁325下部に形成される上記貫通ホール325bは図3Aに示すように、所定面積を有するホールの形状を有し、図3Bに示すように、上記蒸発物質の蒸発方向に延在したスリット状を有するようにし、上記複数の隔壁325により分離された各空間から蒸発される蒸発物質が自由に移動できるようにすることで、上記複数の隔壁325により分離された各空間に残存する蒸発物質量の偏差をさらに最小化させることができる。
【0028】
結果的に、本発明の実施形態に係る蒸着装置100は、線形蒸発源300のるつぼ320の内部空間を分離するための複数の隔壁325の下部に、1つまたは複数の貫通ホール325bを形成して、加熱手段340により上記るつぼ320に保存された蒸発物質が液化とされた場合、上記貫通ホール325bを介して上記液化の蒸発物質が上記るつぼ320の内部空間を自由に流れるようにすることで、上記複数の隔壁325により分離された上記るつぼ320の各空間に残存する蒸発物質量の偏差を最小化することができる。
【符号の説明】
【0029】
100 蒸着装置
200 工程チャンバ
300 線形蒸発源
320 るつぼ
325 隔壁
325b 貫通ホール
330 ノズル部
340 加熱手段
400 移送部
500 基板ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側が開口され、蒸発物質を保存するるつぼと、
前記るつぼの内部空間を分割し、下部に1つまたは複数の貫通ホールが形成される複数の隔壁と、
前記るつぼの開口された側に位置し、複数のノズルを含むノズル部と、
前記るつぼを加熱するための加熱手段と、
前記るつぼ、前記ノズル部及び前記加熱手段を収納するためのハウジングと、
を含むことを特徴とする線形蒸発源。
【請求項2】
前記複数の隔壁は、前記るつぼと一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の線形蒸発源。
【請求項3】
前記貫通ホールは、前記蒸発物質の蒸発方向に延在すると共にスリット状を有することを特徴とする請求項1に記載の線形蒸発源。
【請求項4】
前記複数の隔壁は、上部に段差部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の線形蒸発源。
【請求項5】
前記るつぼの上側が開口される場合は、前記加熱手段が前記るつぼの側面に位置することを特徴とする請求項1に記載の線形蒸発源。
【請求項6】
前記るつぼの内部空間に保存される蒸発物質は、有機物であることを特徴とする請求項1に記載の線形蒸発源。
【請求項7】
工程チャンバと、
前記工程チャンバの一側に位置する線形蒸発源と、
前記線形蒸発源に対向するように位置する基板ホルダと、を含み、
前記線形蒸発源は、一側が開口されるるつぼ、前記るつぼの内部空間を分割して下部に1つまたは複数の貫通ホールが形成される複数の隔壁、前記るつぼの開口された側に位置して複数のノズルを含むノズル部、前記るつぼを加熱するための加熱手段、及び前記るつぼ、前記ノズル部及び前記加熱手段を収納するためのハウジングを含むことを特徴とする蒸着装置。
【請求項8】
前記線形蒸発源の隔壁は、前記るつぼと一体化されていることを特徴とする請求項7に記載の蒸着装置。
【請求項9】
前記貫通ホールは、前記蒸発物質の蒸発方向に延在すると共にスリット状を有することを特徴とする請求項7に記載の蒸着装置。
【請求項10】
前記複数の隔壁は、上部に段差部が形成されることを特徴とする請求項7に記載の蒸着装置。
【請求項11】
前記線形蒸発源が前記工程チャンバの下部に位置する場合、前記線形蒸発源のるつぼは上側が開口され、前記加熱手段は前記るつぼの側面に位置することを特徴とする請求項7に記載の蒸着装置。
【請求項12】
前記るつぼの内部空間に保存される前記蒸発物質は、有機物であることを特徴とする請求項7に記載の蒸着装置。
【請求項13】
前記線形蒸発源を前記るつぼの開口された方向に垂直した方向に移動させるための移送部をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の蒸着装置。
【請求項14】
前記線形蒸発源と前記基板ホルダとの間に位置するマスクパターンをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の蒸着装置。
【請求項15】
前記基板ホルダに載置される基板を固定するための固定部材をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の装着装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−127217(P2011−127217A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180880(P2010−180880)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】