説明

線維性疾患治療のためのVAP−1阻害剤の使用

本発明はVAP−1阻害剤及び線維性疾患治療薬としてのVAP−1阻害剤の使用に関する。さらに、本発明は体液中の可溶性VAP−1またはSSAO活性の上昇レベルに基づき線維症疾患を診断する方法及びこの診断方法に用いられるキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はVAP−1阻害剤及び抗線維化剤としてのVAP−1阻害剤の使用に関する。さらに、本願は線維症の診断方法及びこの診断方法に用いられるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
線維性疾患は通常、外傷または慢性炎症後の創傷治癒過程での障害の結果起こる。線維性の病変は化学的及び生物的傷害に日常的に曝される臓器(例えば、肝臓、肺、皮膚、腎臓)に特に多い。急性的なものであるか慢性的なものであるかに係らず、疾患は異常な線維芽細胞の活性化及び細胞外マトリックス(ECM)の蓄積といった共通の特徴を共有し、正常な組織が傷ついた組織に取って代わられる場合、臓器機能の喪失につながる。病状は進行性、かつしばしば不可逆的であり、予後不良や低い生存率を伴う。
【0003】
線維性瘢痕の組織は損傷の原因に係らずかなり類似する。線維症の深刻さの診断や検証は予後の見地から極めて重要である。治療の決定プロセスは、線維症の評価、その進行、及び合併症の発症に多くを依拠する。肝線維症において、経皮肝生検は肝疾患の評価やステージ分類の最も信頼のおける規準である。しかしながら、経皮肝生検は、回避不能なリスクや、多くの場合痛みや不快感を引き起こす合併症を伴う侵襲的手段である。この手段による合併症が原因の死亡率は1:1000から1:10,000に及ぶ(Crockett et al., 2006)。
【0004】
血清モノアミンオキシダーゼ活性のレベルは、線維症に関係する肝硬変、慢性肝炎、肝臓がんの患者では上昇し、リウマチ性関節炎や全身性紅斑性狼瘡といった炎症性結合組織疾患の患者では正常であることが分かっている(McEwen and Castell 1967, J Lab Clin Med. 70:36−47; Ito et al. 1971 Digestion. 4:49−58; Ma Lin et al., 1976, Proc Soc Exp Biol Med. 151:40−3)。しかしながら、血清モノアミンオキシダーゼ活性の上昇は単に組織損傷への反応またはマーカーとして考えられ、線維症発症に関与することは知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の治療方法は主に線維症の炎症過程をターゲットとしており、コルチロイドや免疫抑制薬を用いる。しかしながら、残念なことに、このような薬品は臨床効果がほとんど、あるいは全くなく、線維性疾患を治療する新たな薬が明確に必要とされている。
【0006】
本発明のいくつかの目標は、抗線維化剤としてのVAP−1阻害剤と、線維性疾患治療の薬を製造する際のVAP−1阻害剤の使用と、治療が必要なヒト対象にVAP−1阻害剤を有効量投与し、線維性疾患を予防、治療、緩和する方法に関する。
【0007】
本発明の別の目的は、被験者の線維性疾患を診断する方法を提供することである。当該方法は、a)当該対象の体液試料を用意する工程と、b)この試料の可溶性VAP−1(sVAP−1)量またはSSAO活性を分析する工程と、c)このsVAP−1量またはSSAO活性に基づき線維症を診断する工程と、を備える。必要に応じて、sVAP−1量またはSSAO活性を基準体液のsVAP−1量またはSSAO活性と比較してもよい。
【0008】
本発明の別の目的は、前記線維性疾患の診断方法に用いられるキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的の実施形態において、VAP−1阻害剤は、配列番号1から3からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する完全ヒト抗VAP−1抗体及び/または配列番号24から26からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する軽鎖ポリペプチドといったVAP−1抗体からなる。
【0010】
他の実施形態では、前記抗VAP−1抗体は、配列番号4から8の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号9から13の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号14から18の中から選択される第3のCDR配列とを有する重鎖ポリペプチド、及び/または、配列番号27から31の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号32から36の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号37から41の中から選択される第3のCDR配列とを有する軽鎖ポリペプチドを備える。
【0011】
別の実施形態では、前記抗VAP−1抗体は、配列番号19から23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号42から46からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する各軽鎖可変領域とを有する。
【0012】
さらに別の実施形態では、前記抗体は、配列番号47で示される重鎖ポリペプチドと配列番号48で示される軽鎖ペプチドとを有する組み換え完全ヒト組換抗体からなる。
【0013】
上記目的のさらに別の実施形態では、前記VAP−1阻害剤はSSAO阻害剤からなり、SSAO阻害剤としては、ヒドラジン誘導体、プロペニルアミン及びプロパルギルアミン、4−置換−2−ブチニルアミン、ハロアリルアミン、ピロリン誘導体、プロパギルジアミン、アリルアミン、ジアミン、4,5,6,7−テトラヒドロイミダゾ[4,5−c]ピリジン誘導体、チオカルバモイル誘導体、カルボキサミド、スルホンアミド、チアゾール及び/またはグアニジン誘導体、オキシム誘導体、ジヒドラジン、アリールアルキルアミン、オキサゾリジノン、ハロアルキルアミン、ベンホチアミン及びイミダゾピリジン誘導体からなる群から選択される化合物が挙げられる。
【0014】
上記目的の別の実施形態では、前記線維性疾患は肝線維症やその素因をつくる炎症性疾患からなる群から選択され、具体的には、急性または慢性肝炎、胆道疾患及び中毒性肝損傷、肺線維症、腎線維症(糖尿病性腎症によるものも含む)、骨髄線維症、膵臓線維症、強皮症、結合組織病、瘢痕、皮膚線維症、心臓線維症、臓器移植、血管狭窄症、再狭窄、動脈線維症、関節線維症、乳腺線維症、筋肉線維症、後腹膜線維症、甲状腺線維症、リンパ節線維症、膀胱線維症、胸膜線維症及びCOPD、気管壁が筋線維芽細胞やコラーゲンの蓄積により線維化し、同様の全ての線維性組織が罹患する病気が挙げられる。
【0015】
本発明の他の具体的な実施例は従属クレームで示される。
本発明の他の目的、詳細及び効果は以下の図面、詳細な説明及び実施例から明らかになるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下では、本発明は添付の図面を参照して好ましい実施形態によってさらに詳細に記載される。
【図1】VAP−1抗体BTT−1029の投与によりCC1により誘発された肝線維症がほぼ完全に予防されることを示す図である。鉱油(MO、対照群)、CClまたはVAP−1抗体と並行してCClを注入されたWT及びVAP−1ノックアウトマウスから得た肝臓のシリウスレッド染色。Image Jによる限界値分析を用いて線維性瘢痕の定量測定が行われた。3つのセットから得られた平均±SEMが示される。倍率x10
【図2】CCl線維症誘発にも係らず、VAP−1抗体投与肝臓及びVAP−1ノックアウト肝臓で肝炎及び壊死部分が顕著に欠如することを示す。壊死肝細胞(矢じり部分)及び進行中の肝炎(矢印)を強調するx20倍率のヘマトキシリン・エオシン染色が示される。
【図3】VAP−1抗体が線維性組織におけるエラスチン発現及びコラーゲンIVの増加を防ぐことを示す。コラーゲンIV、エラスチン及びラミニン染色の定量測定はImage Jによる限界値分析を用いて行われた。3つのセットから得られた平均±SEMが示される。
【図4】mRNAレベルが肝星細胞及び線維芽細胞に対するVAP−1の規制効果を示すことを明らかにする。エラスチン、aSMA、VAP−1及びTIMP1の量的RT−PCR分析が示される。データは3回測定された3匹のマウスから得た平均の±SEMとして示される。*p<0.05, **<0.01, ***<0.001 (ANOVA)
【図5】CC1により誘発された肝線維症に反応して、血清での可溶性VAP−1及びSSAO活性が増加することを示す。図5Aは、時間分解蛍光DELFIAアッセイで分析された、血清の可溶性VAP−1レベルに対するCC1により誘発された肝線維症の影響を示す。図5Bは、放射化学的アッセイにより、CC1により誘発されたWT肝臓の血清でSSAO活性レベルの上昇が見つかったことを示す。
【図6】CC1によって誘発された糸球体病変がVIP−1ノックアウトマウス及びVIP−1抗体投与C57BL/6マウスで救済されることを示す。糸球体を強調するx40倍率のヘマトキシリン・エオシン染色が示される。
【図7】CC1により誘発された糸球体線維症の結果としてのコラーゲンの蓄積が、VAP−1ノックアウトマウス及びVAP−1抗体投与マウスで大幅に減少することを示す。鉱油(MO、対照群)、CClまたはVAP−1抗体と並行してCClを注入されたWT及びVAP−1ノックアウトマウスから得た腎臓のシリウスレッド染色が示される。Image Jによる限界値分析を用いて線維性瘢痕の定量測定が行われた。3つのセットから得られた平均±SEMが示される。倍率x40
【図8】ビヒクル投与マウスと比べ、タバコ煙に曝されたVAP−1抗体(BTT−1029)投与マウスから得た気管支肺胞洗浄液で細胞総数が減少することを示す。
【図9】ビヒクル投与マウスと比べ、タバコ煙に曝された対照ロフルミラスト投与マウスから得た気管支肺胞洗浄液で細胞総数が減少することを示す。
【図10】NaCl0.9%投与対照群と比べ、デキサメタゾン投与群及びSSAO阻害剤(BTT−2089)投与群の双方で中膜新生が大幅に減少することを示す。
【図11】NaCl0.9%投与対照群と比べ、デキサメタゾン投与群及び双方のSSAO阻害剤(BTT−2089)投与群で内膜新生が大幅に減少することを示す。
【図12】ヘマトキシリン・フロキシン・サフラン(HPS)染色された血管セグメントの例を示す。対照群Aと比べ、SSAO阻害剤投与群C及びDでルーメンの大きさが増加する。A−NaCl0.9%群;B−デキサメタゾン;C−BTT2089 10mg/kg;D−BTT−2089 30mg/kg
【図13】抗VAP−1抗体またはイソタイプ適合対照抗体で染色された、正常な肝臓、NASH硬変肝臓及びALD硬変肝臓の組織を示す。VAP−1染色は正常またはイソタイプ対照に比べてNASH硬変肝臓及びALD硬変肝臓で暗く示され、線維症部分におけるVAP−1の発現の増加を反映する。
【図14】抗VAP−1、抗CD31及び抗コラーゲンIV抗体で染色された正常な肝臓及びNASH硬変肝臓の組織を示す。VAP−1染色は矢印で示され、主にNASH硬変肝臓に現れて線維症部分におけるVAP−1の発現の増加を反映する。
【図15】抗VAP−1、抗CD90及び抗CD3抗体で染色されたNASH硬変肝臓の組織を示す。VAP−1染色は矢印で示され、NASH硬変肝臓に現れて線維症部分におけるVAP−1の発現の増加を反映する。
【図16】抗VAP−1及び抗平滑筋アクチン抗体で染色された肝星細胞及び抗VAP−1、抗CD−90及び抗コラーゲンIV抗体で染色された肝筋線維芽細胞を示す。VAP−1染色は矢印で示され、肝星細胞及び肝筋線維芽細胞に現れる。
【図17】sVAP−1レベル及びそれに対応する組織学的な線維症ステージの散布図である。直線は中央値を示す。
【図18】重篤な肝線維症(F2−4)(図18A)、進行性の肝線維症(F3−4)(図18B)及び硬変(F4)(図18C)を予測する単独のバイオマーカーとして用いられるVAP−1の受信者動作特性(ROC)曲線を示す。
【図19】重篤な線維症(F2−4)(図19A)、進行性の線維症(F3−4)(図19B)及び硬変(F4)(図19C)を予測する線維化スコアの受信者動作特性(ROC)曲線を示す。線維化スコアはsVAP−1レベル、糖尿病の状態及びAST/ALT比率から求められる(0.837+sVAP−1(ng/ml)x0.001+Diabetes(yes=1 no=0)x0.591+logAST/ALTx0.8)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)としても知られ、かつヒト遺伝子AOC3によって定義される血管接着タンパク質−1(VAP−1)が、線維性組織の形成において直接的な役割を果たすという驚くべき発見に基づく。これまで、VAP−1が、組織への白血球の移動を媒介することによって多くの炎症性疾患に関与することは示されてきたが、線維症の発症自体に直接的に関与することは示されていなかった。
【0018】
「線維症」という用語は臓器または組織における過度に連結した組織の形成または存在を意味する。線維症は組織の損傷ないし炎症といった刺激に対する修復または補充反応として生じることもある。
【0019】
本発明の基礎となる目的の一つは、線維性損傷に対し臓器を保護する際のVAP−1阻害剤の役割を検証することであった。例えば、マウスにおいて四塩化炭素により引き起こされた慢性線維性肝損傷、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のタバコ煙により誘発されたマウスモデル、及び、血管リモデリングや血管狭窄症や新生内膜肥厚(線維症)のマウスモデルにおいて、素晴らしい結果が得られている。従って、VAP−1阻害剤は実際に抗線維化剤として見なされうる。
【0020】
ある様態では、したがって、本発明の実施形態は、VAP−1阻害剤の有効量を治療が必要なヒト患者に投与することによって体内(人体内)の線維症を減少あるいは治療する方法を提供する。「治療」または「治療する」という用語は、例えば、肝線維症等の線維症やその素因をつくる炎症性疾患といった病気の予防、改善、防止または治癒のために対象に対してVAP−1阻害剤を投与することを意図し、このような病気としては、急性または慢性肝炎、胆道疾患及び中毒性肝障害、肺線維症、腎線維症(糖尿病性腎症によるものも含む)、骨髄線維症、膵臓線維症、強皮症、結合組織病、瘢痕、皮膚線維症、心臓線維症、臓器移植、血管狭窄症、再狭窄、動脈線維症、関節線維症、乳腺線維症、筋肉線維症、後腹膜線維症、甲状腺線維症、リンパ節線維症、膀胱線維症、胸膜線維症及びCOPD、気管壁が筋線維芽細胞やコラーゲンの蓄積により線維化し、同様の全ての線維性組織が罹患する病気が挙げられる。
【0021】
VAP−1阻害剤の「有効量」とは、線維症の悪影響が少なくとも改善される量を意味する。VAP−1阻害剤の投与量と投与レジュメは、線維性疾患治療に関する臨床分野の当業者によって容易に決定されうる。好ましくは、モノクローナル抗VAP−1抗体であるVAP−1阻害剤は、0.01mg/kgから20mg/kg、より好ましくは0.1mg/kgから15mg/kg、最も好ましくは1.0mg/kgから10mg/kgの量で、1週間に1回から3ヶ月に1回の間の間隔で経脈管内に投与される。あるいは、VAP−1阻害剤は、0.1mg/kgから20mg/kg、より好ましくは0.2mg/kgから10mg/kg、最も好ましくは0.5mg/kgから5mg/kgの量で、1週間に1回から3ヶ月に1回の間の間隔で皮下に投与される。
【0022】
SSAOの阻害剤を構成する本願の化合物は、約0.1μg/kgから約300mg/kg、好ましくは1.0μg/kgから10mg/kgの用量域内の有効量で投与されても良い。
【0023】
本願の化合物は1日1回またはkg体重あたりで投与されてもよく、また、1日当たりの総投薬量は1日2、3または4回に分けて投与されてもよい。
【0024】
前記様態は別の方法で示されてもよい。すなわち、本発明の実施形態は、肝線維症やその素因をつくる炎症性疾患といった線維症を予防、治療及び/または緩和する抗線維化剤としてのVAP−1阻害剤を提供し、このような病気としては、急性または慢性肝炎、胆道疾患及び中毒性肝障害、肺線維症、腎線維症(糖尿病性腎症によるものも含む)、骨髄線維症、膵臓線維症、強皮症、結合組織病、瘢痕、皮膚線維症、心臓線維症、臓器移植、血管狭窄症、再狭窄、動脈線維症、関節線維症、乳腺線維症、筋肉線維症、後腹膜線維症、甲状腺線維症、リンパ節線維症、膀胱線維症、胸膜線維症及びCOPD、気管壁が筋線維芽細胞やコラーゲンの蓄積により線維化し、同様の全ての線維性組織が罹患する病気が挙げられる。したがって、VAP−1阻害剤は前記線維性疾患の薬の製造に用いられてもよい。
【0025】
「VAP−1阻害剤」という用語は、VAP−1の機能またはそのSSAO活性をブロックする能力を有する化合物を意味する。VAP−1阻害剤は、遮断抗体及びSSAO阻害剤といった2つの主なカテゴリーに分けられてもよい。
【0026】
本明細書において用いられる「抗VAP−1抗体(Ab)」または「モノクローナル抗VAP−1抗体(MAb)」といった用語は、特にVAP−1プロテインに結合可能な無傷抗体及びFab及びF(ab’)2フラグメントといった抗体フラグメントを含む。
【0027】
本発明の様態に用いられる適当な抗VAP−1抗体は先行技術において利用可能であり、さらに、抗体は当業者に公知の方法で製造されてもよい。例えば、米国特許第5,580,780号に記載のモノクローナル抗体(mAb)1B2は、ヒトVAP−1を認識し、凍結切片アッセイにおいて扁桃HEVに対するリンパ球結合を阻害することができる。MAb 1B2はマウスIgM抗体であり、ヒトVAP−1に対して特異的である。国際公開第03/093319号に記載のキメラ抗VAP−1モノクローナル抗体BTT−1002は、対応のマウス抗体と比べ免疫原性を低下させている。しかしながら、キメラ抗体であることから、ヒト治療への適用性は、その免疫原性及びそれに起因する抗体の生成のため低下する。
【0028】
本明細書に援用される国際公開第2008/129124号は、免疫原性及びサイトカイン放出が減少した完全ヒト抗VAP−1抗体を開示する。好ましい完全ヒトモノクローナル抗VAP−1抗体としては、配列番号1から3からなる群から選択される1から3つのCDRコンセンサス配列を有する重鎖ポリペチド、及び/または、配列番号24から26からなる群から選択される1から3つのCDRコンセンサス配列を有する軽鎖ポリペプチドを備えるものが挙げられる。
【0029】
他の好ましい抗VAP−1抗体としては、配列番号4から8の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号9から13の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号14から18の中から選択される第3のCDR配列とを備える重鎖ポリペプチド、及び/または、配列番号27から31の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号32から36の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号37から41の中から選択される第3のCDR配列とを備える軽鎖ポリペプチドを有するものが挙げられる。
【0030】
本発明の別の実施形態では、完全ヒト抗VAP−1抗体は8C10として示され、配列番号19に示される重鎖可変領域及び配列番号42に示される軽鎖可変領域を有する。本発明のさらに別の実施形態では、抗VAP−1抗体は8A4として示され、配列番号20に示される重鎖可変領域及び配列番号43に示される軽鎖可変領域を有する。本発明のさらに別の実施形態では、抗VAP−1抗体は3F10として示され、配列番号21に示される重鎖可変領域及び配列番号44に示される軽鎖可変領域を有する。本発明のさらに別の実施形態では、抗VAP−1抗体は5F12として示され、配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号45に示される軽鎖可変領域を有する。本発明のさらに別の実施形態では、抗VAP−1抗体は4B3として示され、配列番号23に示される重鎖可変領域及び配列番号46に示される軽鎖可変領域を有する。これらの抗体はまた、配列番号47に示される重鎖ポリペプチド及び配列番号48に示される軽鎖ポリペプチドを有する組換体r8C10(BTT−1023)といった組換体抗体として構成されてもよい。
【0031】
本実施形態で用いられる適当なSSAO阻害剤としては、これらに限られないが、アリルヒドラジンといったヒドラジン誘導体が挙げられ、特に、フェニルアリルヒドラジン及びヒドロキシルアミン(すなわちアミノキシ)誘導体が挙げられる。フェニルアリルヒドラジンのより具体的な例としては、これらに限られないが、2−(フェニル−アリル)−ヒドラジン、N−[2−(4’−フルオロフェニル)−アリル]−ヒドラジン及び(E)−1−フルオロ−2−フェニル−3−ヒドラジンプロペンが挙げられ、一方、ヒドロキシルアミン誘導体のより具体的な例としては、これらに限られないが、2−アミノオキシル−1−フェニル−エタノール及び2−アミノオキシル−1−(3’,4’−ジメトキシ−フェニル)−エタノールが挙げられる。このようなSSAO阻害剤は国際公開第2006/094201号及び国際公開第2005/014530号に記載され、本明細書に援用される。他の適当なヒドラジン誘導体としては、これらに限られないが国際公開第2009/145360号(本明細書に援用)に記載の2−(4−{2−[5−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ピリジン−2−イル]エチル}フェニル)アセトヒドラジドといったアセトヒドラジドや、これらに限られないが国際公開第02/02090号(本明細書に援用)に記載の(1R,2S)−2−(1−メチルヒドラジノ)−1−フェニル−1−プロパノール、(1R,2S)−2−(1−メチルヒドラジノ)−1,2−ジフェニルエタノール、1−(1’−メチルヒドラジノ)−3−(m−メトキシフェノキシ)−2−プロパノール及び(1S,2R)−2−(1−メチルヒドラジノ)−1,2−ジフェニルエタノール(BTT−2079)といったヒドラジンアルコールや、これらに限られないが国際公開第03/006003号や国際公開第2005/080319号(本明細書に援用)に記載の(1S,2S)−2−(1−メチルヒドラジノ)−1−インダノールといったヒドラジンインダンが挙げられる。
【0032】
本実施形態で用いられる適当なSSAO阻害剤のさらなる例としては、これらに限られないが、プロペニル−及びプロパギルアミン、4−置換−2−ブチニルアミン、ハロアリルアミン(特に2−及び3−ハロアリルアミン)、ピロリン誘導体、プロパギルジアミン、アリルアミン及びジアミンが挙げられる。前述のSSAO阻害剤のより具体的な例としては、これらに限られないが、5−フェノキシペンタ−2,3−ジエニルアミン、4−(4−メトキシフェニル)ブト−3−イニルアミン、4−フェニルブト−3−イニルアミン、2−フェニル−3−フルオロアリルアミン、S−(E)−4−(4−アミノ−2−フルオロブト−2−エニルオキシ)−N−(1−フェニルエチル)ベンズアミド、(E)−3−フルオロ−4−(4−(メチルスルホニル)フェノキシ)ブト−2−エン−1−アミン、(E)−3−フルオロ−4−(2−メチルベンゾ[d]チアゾール−5−イルオキシ)ブト−2−エン−1−アミン、(E)−4−(4−アミノ−2−フルオロブト−2−エニルオキシ)−N−(1−フェニルエチル)ベンゼンスルホンアミド及び(E)−2−(4−フルオロフェネチル)−3−フルオロアリルアミン(BTT−2089、モフェギリン)が挙げられる。このような化合物は、国際公開第2007/005737号、国際公開第2005/082343号、国際公開第2009/066152号、国際公開第2009/055002号及びPalfreyman et al., Neural Transm. (1994), 41, 407−414)(全て本明細書に援用)に記載される。
【0033】
本実施形態で用いられる適当なSSAO阻害剤のさらに別の例としては、これらに限られないが、4,5,6,7−テトラヒドロイミダゾ[4,5−c]ピリジン誘導体(本明細書に援用される国際公開第02/38153号に記載)や、国際公開第2006/013209号及び米国特許出願公開第2007/066646号(本明細書に援用)に記載されるN−ヒドロキシ−2−(2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)アセトアミド)アセトアミド及び5−アミノ−2−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシベンジル)ベンズアミドといったカルボキサミド及びN2−{[4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル]スルホニル}−N1−ヒドロキシセリンアミドといったスルホンアミドが挙げられる。
【0034】
さらに、チアゾール及び/またはグアニジン誘導体、特に2アシルアミノトリアゾール誘導体、が本発明の各実施形態での使用に適している。このようなSSAO阻害剤のより具体的な例としては、これらに限られないが、N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−5−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、N−{4−[2−(4−{[2−アミノ−1H−イミダゾール−4−イル)メチル]フェニル}エチル)チアゾール−2−イル]−アセトアミド、2−(4−{2−[2−(アセチルアミノ)−1,3−チアゾール−4−イル]エチル}フェニル)−N−[アミノ(イミノ)メチル]アセトアミドが挙げられる。このような化合物は、国際公開第2004/087138号、国際公開第2004/067521号、国際公開第2006/028269号、国際公開第2006/011631号及び国際公開第2005/089755号(全て本明細書に援用)に記載される。
【0035】
また、各種オキシム誘導体もSSAO阻害剤を構成することから、本発明の各種実施形態に用いられてもよい。このようなオキシム誘導体としては、これらに限られないが、本明細書に援用される国際公開第2010/029379号に記載の5−ブロモ−1,3−ベンゾジオキソール−4−カルバルデヒドオキシム、6−エトキシ−1,3−ジメチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルバルデヒドオキシム、1,3−ジメチル−6−(メチルチオ)−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラ−ヒドロピリミジン−5−カルバルデヒドオキシムが挙げられる。
【0036】
また、国際公開第2010/015870号、国際公開第2005/072738号、Lyles G. A., Int. J. Biochem. Cell Biol. Vol. 28 pp259−276 (1996)及びMcDonald et al., Annual reports in Med. Chem. Vol. 42 pp. 229−243 (2007)(全て本明細書に援用)に記載のジヒドラジン、アリールアルキルアミン、オキサゾリジノン、ハロアルキルアミン及びベンホチアミン(ビタミンB1)も本発明の各実施形態においてSSAO阻害剤として用いられてもよい。
【0037】
さらに本発明の様態及び実施形態での使用に適当なSSAO阻害剤としては、本明細書に援用される国際公開第2010/064020号に記載のイミダゾピリジン誘導体が挙げられる。
【0038】
さらに、本発明の実施形態で用いられる適当なSSAO阻害剤としては、VAP−1のSSAO活性を抑制またはブロックする能力を有する、立体異性体、立体異性体の混合物、EまたはZ構造、E及びZ構造の混合物、プロドラッグ、代謝産物、結晶性形状、非結晶性形状、水和物、溶媒和物またはその塩が挙げられる。
【0039】
他の適当なSSAO阻害剤は、先行技術において公知のSSAOアッセイによってスクリーニングや認識されてもよい。このようなアッセイは、モノアミンオキシダーゼ及びその関連酵素に関して記載されるように(Holt, A., et al., Anal. Biochem. 244:384−392 (1997))、結合比色法(coupled colorimetric method)の利用が不可欠なVAP−1 SSAO活性アッセイを含んでもよい。内皮細胞のSSAO活性もまた、アンプレックスレッド試薬(10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン)及びH用の高感度で安定したプローブ(Zhou M, Panchuk−Voloshina N. Anal Biochem. 253(2):169−74 (1997))を用いて個別に測定可能である。さらに、アミンオキシダーゼ活性は、[7−14C]−ベンジルアミン塩酸塩を基質として用いて放射化学的に測定可能である(Jaakkola et al., Am J Pathol:155(6):1953−65 (1999))。VAP−1 SSAO酵素源としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような細胞株に発現する組換ヒトVAP−1 SSAOが利用可能である(Smith, D.J., et al., J. Exp. Med. 188:17−27 (1998))。他の適当なSSAO VAP−1酵素源としては、霊長類やげっ歯類といった異なる種の血清や組織試料が挙げられる。
【0040】
本発明に基づいて使用される場合、VAP−1阻害剤は薬学的に利用可能なキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物や活性成分(VAP−1阻害剤)として提供されてもよい。この組成物は、患者のSSAO活性を中和(完全ないし部分的に)するのに十分な量のVAP−1阻害剤、または、このような中和が必要な患者が有する、VAP−1の生物学的配位子に結合可能な生得のVAP−1を含む。
【0041】
VAP−1阻害剤の投与量と投与レジュメは、線維性疾患治療の臨床分野の当業者によって容易に決定されうる。一般的には、VAP−1阻害剤による治療の投与量は条件次第で変わるものと思われる。条件としては、処置される患者の年齢、性別及び全体的な健康状態、現行の処置の種類(もしあれば)、処置の頻度と所望の効果の性質、組織損傷の程度、症状の持続期間、及び各医師によって調整されうる他の変数等が挙げられる。所望の投与量は、所望の結果を得るために1回以上の適用で投与可能である。本実施形態の薬学的組成物は単位投薬形態で提供されてもよい。
【0042】
この薬学的組成物は、投薬の際任意の適当な薬理学的キャリアで投与されてもよい。組成物は、ヒトまたは動物患者の線維性疾患に対し予防的、緩和的、阻止的、または治癒的効果がある任意の形態で投与することができる。
【0043】
非経口及び局所的投与のための薬学的組成物は、滅菌水溶液または非水性溶媒、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、及び注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、水−アルコール溶液(生理食塩水を含む)、ならびに緩衝化された医療用非経口ビヒクル(塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース溶液、デキストロースと塩化ナトリウムの溶液、ラクトース含有リンガー溶液を含む)、または固定油が挙げられる。静脈内投与用のビヒクルとしては、流体、栄養補液、リンガーデキストロース等をベースとするもののような電解質補液などが挙げられる。本実施形態の水性組成物には、ナトリウム及びカリウムのリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩のような適当な緩衝化剤、または標的化されるpH範囲に応じたグリシン緩衝液が含まれてもよい。塩化ナトリウムの張性調整剤としての使用もまた有用である。組成物には、安定化剤または保存剤のような他の賦形剤が含まれ得る。有用な安定化賦形剤としては、界面活性剤(ポリソルベート20及びポリソルベート80、ポロキサマー407)、ポリマー(ポリエチレングリコール、ポビドン)、炭水化物(スクロース、マンニトール、グルコース、ラクトース)、アルコール(ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール)、適当なタンパク質(アルブミン)、適当なアミノ酸(グリシン、グルタミン酸)、脂肪酸(エタノールアミン)、抗酸化物質(アスコルビン酸、システインなど)、キレート剤(EDTA塩、ヒスチジン、アスパラギン酸)、または金属イオン(Ca、Ni、Mg、Mn)が挙げられる。中でも有用な保存剤は、ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩化ベンズアルコニウム、及び場合によってはパラベンである。
【0044】
薬学的組成物は、濃縮状または粉末状で提供され、必要に応じて水で戻してもよい。そのような場合には、上記注射/注入用賦形剤用の溶液のための粉末の処方物が使用され得る。凍結乾燥の場合には、ポリマー(ポビドン、ポリエチレングリコール、デキストラン)、糖(スクロース、グルコース、ラクトース)、アミノ酸(グリシン、アルギニン、グルタミン酸)、及びアルブミンを含む特定の抗凍結剤が好ましい。再構成用の溶液がパッケージングに加えられる場合には、これは、例えば、注射用の純水、または塩化ナトリウム溶液、またはデキストロースもしくはグルコース溶液から構成され得る。
【0045】
治療に用いられる抗VAP−1抗体は、化学的にあるいは遺伝子操作によって所望の作用部位に抗体の標準を合わせることが可能な他の薬剤と結合してもよい。あるいは、他の化合物が化学的にあるいは遺伝子操作によって抗体と結合し、抗体に対してさらなる特性、特にVAP−1結合によって媒介される有害な作用の緩和を促進する抗体の能力を高める特性を付与してもよい。
【0046】
抗VAP−1抗体は化学的にあるいは遺伝子操作によって標識化され、検出可能な抗体を提供してもよい。このような標識化された抗体は、ヒトの線維症部位の画像化、特に線維症部位の体内免疫シンチグラフィーイメージングに有用なツールとなろう。画像化のためには、抗体断片を使用するのが抗線維症治療に対する完全な抗体を用いるアプローチよりも好ましく、完全ヒト抗体に由来する断片は、それらのキメラまたはマウス等価物よりもさらに安全と思われる。
【0047】
本発明の様態のいくつかは線維性疾患の診断に関する。本発明に関連して、体液(血清や血漿等)中の可溶性VAP−1(sVAP−1)の上昇したレベルとその結果上昇したSSAO活性が、線維症の度合いと相関関係を持つことが分かった。したがって、本発明の実施形態は、肝線維症やその素因をつくる炎症性疾患といった線維性疾患を診断する方法及び手段を提供する。このような疾患としては、急性または慢性肝炎、胆道疾患及び中毒性肝障害、肺線維症、腎線維症(糖尿病性腎症によるものも含む)、骨髄線維症、膵臓線維症、強皮症、結合組織病、瘢痕、皮膚線維症、心臓線維症、臓器移植、血管狭窄症、再狭窄、動脈線維症、関節線維症、乳腺線維症、筋肉線維症、後腹膜線維症、甲状腺線維症、リンパ節線維症、膀胱線維症、胸膜線維症及びCOPD、気管壁が筋線維芽細胞やコラーゲンの蓄積により線維化し、同様の全ての線維性組織が罹患する病気が挙げられる。
【0048】
実施形態において、体液中の上昇したsVAP−1レベル及び/またはSSAO活性に基づく線維性疾患の診断は、線維症疾患用の予測バイオマーカーの既存パネル(existing panels)の分析と組み合わされてもよい。これにより、既存のバイオマーカーの診断能力が改善される。言い換えれば、sVAP−1レベル/SSAO活性は単独で用いられてもよく、あるいは、線維症の存在を予測する新しい非侵襲的な試験として他の臨床的、生化学的マーカーと組み合わされて用いられてもよい。
【0049】
血清等の体液試料中のsVAP−1のレベルは以下の方法で決定されてもよい。可溶性VAP−1の定量化が可能な時間解析免疫蛍光アッセイ(TR−IFMA)(DELFIA)は、ビオチン結合マウス抗ヒトVAP−1抗体TK8−14(Biotie Therapies社)をストレプトアビジンが塗布されたマイクロタイタープレート上の捕捉物質として利用する。結合した可溶性VAP−1の検出は、ユーロピウム結合マウス抗ヒト抗体TK8−18(Biotie Therapies社)をトレーサとして用いて行われる。標識は時間分解蛍光を615nmで測定し(Victorマルチラベルカウンター)検出する。蛍光カウント数は試料中に存在する可溶性VAP−1の量と直接的に相関する。その後、試料のデータを対照の標準曲線と比較して分析する。
【0050】
本発明の実施形態では、線維症は、こういった診断が必要である、及び/または、線維症を患っている疑いがある対象から得た体液中のSSAO活性に基づき診断される。このような目的に適当な方法がLi et al. in J. Chromatogr. B, 810 (2004) 277−282に開示されている。SSAO活性を測定する他の手段及び方法は当該分野において公知である。
【0051】
なお、本発明の様態はさらに線維症診断に用いられるキットを提供する。実施形態において、当該キットは、ある特定の抗VAP−1抗体(例えば、前述の抗VAP−1抗体のうちの一つ)といった、sVAP−1量を評価するための一つ以上の試薬を備える。他の実施形態では、当該キットは血清または血漿といった体液中のSSAO活性を評価するための一つ以上の試薬を備える。例えば、当該キットは、適当なSSAO酵素活性アッセイバッファーと共にVAP−1 SSAOに適当な基質(ベンジルアミン、メチルアミン、アミノケトン、他の脂肪族または芳香族モノアミン等)を備え、かつ、SSAO活性を検出する試薬一式及び方法を備えてもよい。SSAO活性は、モノアミン基質上のSSAO活性の活動による過酸化水素の発生を測定する結合アッセイを用いて検出されてもよく、あるいは、ベンジルアミンなどの14C標識アミン基質を用いて水溶性アミンの有機溶剤可溶性アルデヒドへの転化をモニタリングすることにより直接測定されてもよい。
【0052】
技術進歩に伴い本発明の概念を様々な方法で実行できることは当業者に明らかであろう。本発明とその実施形態は下記の実施例には限定されず、特許請求の範囲内で変更可能である。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
〔肝線維症のマウスモデルにおけるVAP−1阻害剤の効果〕
この検証の目的は、VAP−1阻害剤のマウスの線維性肝損傷に対する効果を評価することだった。
【0054】
ホームオフィス規則(Home Office regulations)に従い、マウスは全てバーミンガム大学のバイオメディカルサービス部(Biomedical services unit)において従来の条件下で維持・収容された。4匹のマウスがケージ毎に収容され、実験前の一週間その収容状態に順化した。8から10週齢の雌C57BL/6及びVAP−1−/−マウス(VAP−1欠損のAOC3遺伝子ノックアウトマウス)が検証に利用された。C57BL/6マウスはバーミンガム大学バイオメディカルサービス部のストック群(stock colony)から入手し、一方、VAP−1−/−(AOC3遺伝子ノックアウト)マウスは契約ブリーダーであるデンマークのタコニック社から入手した。
【0055】
四塩化炭素(CCl;アルデリッチケミカル(Aldrich Chemical))を鉱油に溶かして1ml/kgの投与量で8週間隔週毎に腹膣内投与して慢性的な肝線維症のマウスモデルを確立した一方、対照群は鉱油のみを与えられた。マウス抗マウスVAP−1抗体BTT−1029を投与されたマウスは、CCl投与前及び投与中の2週間、週に一回点滴注射を受けた。動物らはCClの最終的な投与の96時間後に処分された。イソフルラン麻酔中に心穿刺によって血液試料が引き出され、その後マウスは頸椎脱臼によって処分された。肝臓は解剖され、異なる処置用に4つに切り分けられた。
【0056】
統計ANOVAがSPSS for Windowsバージョン11.0を用いて行われた。フィッシャーの最小有意差ポストホックテストがその後に続く一元位置分散分析(one−way ANOVA)を用いて2つ以上の可変群に基づき試料の有意性を分析した。
【0057】
肝臓標本は4%のパラホルムアルデヒド中に固定されて、パラフィンに埋め込まれ、4μm切片に切り分けられた。組織病理学的分析用の切片は、標準的な手順に従ってシリウスレッドまたはH&E染色された。免疫蛍光染色の際、固定されたマウス肝臓は30%のスクロースによって凍結防止され、急速に凍結され、低温保持装置内で7μmに切断された。切片は0.1%のトリトンX−100を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBST)で軽く10分間洗浄され、0.1%のPBST中で10%のヤギ血清により室温で1時間培養された。
【0058】
エラスチン、コラーゲンIV及び血清−PBSTで希釈されたラミニン(アブカム社)を一次抗体により培養した後、スライドがPBST中で3回洗浄され、室温で1時間二次抗体によって培養された。
【0059】
予想通り、CClはC57BL/6マウスで深刻な線維性損傷を引き起こした。8週までに、野生型マウスでは肝細胞の壊死及び進行中の肝炎があるシリウスレッド線維の肝臓含有量が8倍増加した。興味深いことに、VAP−1欠損マウス及びBTT−1029が投与された野生型マウスの両方で線維症損傷が大幅に減少した。これらのマウスはほんの少量のシリウスレッド線維を示し、肝組織像は、壊死部分が完全になく深刻ではない肝炎があるに過ぎず、ほぼ正常に見えた(図1及び2)。さらに、成熟マクロファージの数は大幅に少なくなっており、このことは野生型に比べ深刻な損傷がかなり少なくなったことを再度示した(データ示されず)。
【0060】
肝臓における肝星細胞活性化に関する遺伝子のmRNAレベルはqRT−PCRによって評価された。この目的を達成するために、キアゲンRNAイージーミニキット(#74104)を用いて全RNAがマウスの肝臓から抽出された。RNAは、ランダムプライマー(プロメガ社)及びインビトロジェン社のスパースクリプトIIIを用いてcDNAテンプレートに逆転写された。qRT−PCRのパラメータは以下の通りだった。変性 95°C 10分間、増幅 95°C 10秒間、55°C 30秒間、72°C 1秒間、55サイクル定量的リアルタイムPCRは参照遺伝子GAPDH及びロシュ社のプローブを用いてロシュ社ライトサイクラー480システムで測定された。発現レベルは「E方法」(ロシュ社)を用いて定量化された。
【0061】
データは肝星細胞(HSC)の制御による肝線維症の進行におけるVAP−1の役割を示す。活性化HSCは線維症の肝臓でECM成分(エラスチンを含む)を合成する主要源とされている。CClが投与された野生型の肝臓は、HSCsを発現するαSMAの蓄積及びエラスチンの堆積を意味する、αSMA及びmRNAレベルの甚大な増加を示した(図4)。BTT−1029が投与された野生型のVAP−1−/−肝臓では野生型肝臓に比べαSMA及びエラスチン双方のmRNAレベルが大幅に低かった。エラスチン及びコラーゲンIVの違いも共焦点顕微鏡法によって確認されたが、ラミニンレベルは変化しないままだった(図3)。
【0062】
結論として、BTT−1029による治療は、肝星細胞の活性化を低下させることにより生成(established)した肝線維症のほぼ完全な保護を可能にし、線維性病変における線維芽細胞の発達を制限する。同様の効果がVAP−1−/−マウスでも実証され、CClによって引き起こされる損傷に対し完全に近い保護を示した。これらの結果は、VAP−1が肝星細胞に対する制御効果を通じて肝線維症の進行における主要な役割を果たすものであることを示す。VAP−1 SSAOは銅アミンオキシダーゼであり、エラスチンやコラーゲンといったECMプロテインの架橋に関与する別の銅アミンオキシダーゼであるリシルオキシダーゼと類似している。VAP−1のSSAO活性もECMプロテインの架橋形成に直接的に影響する可能性がある。
【0063】
さらに、血清や肝組織試料のSSAO活性は、[7−14C]−ベンジルアミン塩酸塩(spec. act. 57mCi/mmol)を基質として用い放射科学的に分析された(図5)。血清(40mg/mlプロテイン)または組織標本(2mg/mlプロテイン)は、5μMのクロルジリン及びパルギリン、及び不特定のバインドチューブ(binding tube)で1mMのセミカルバジドとも37°Cで30分間プレインキュベートされた。[7−14C]−ベンジルアミンを基質として含む0.2mMナトリウム−リン酸塩緩衝液(pH7.4)の最終量200μl中でアッセイを37°Cで1時間実施した。触媒酵素活性反応アッセイを停止し、以前にJaakkola et al., 1999(American Journal of Pathology, 155, 6)に記載された通りに処理した。プロテイン濃度はBradford et al.(Bradford, M. M., 1976, Anal. Biochem. 72, 248)に従ってウシ血清アルブミンを用いてアッセイされた。
【0064】
この結果によれば、BTT−1029による治療は、CClによって引き起こされる肝線維症を予防することに加え、当該肝臓試料のSSAO活性を著しく低下させることが分かった。
【0065】
[実施例2]
〔腎傷害のマウスモデルにおけるVAP−1阻害剤の腎保護効果〕
四塩化炭素に多く曝されると肝臓と腎臓の両方が損傷する。したがって、腎障害に対するVAP−1の効果を見るために、実施例1に記載されたCClが投与された動物の腎臓が採取・分析された。
【0066】
腎臓は4%のパラホルムアルデヒド中に固定されて、パラフィンに埋め込まれ、4μm切片に切り分けられた。組織病理学的分析はシリウスレッド及びH&E染色切片上で行われた。染色は標準的な手順で行われた。シリウスレッド線維の量はソフトウェアImage Jを用いた限界値分析によって定量化された。
【0067】
統計ANOVAがSPSS for Windowsバージョン11.0を用いて行われた。チューキーHSDの最小有意差ポストホックテストがその後に続く一元配置分散分析(one−way ANOVA)を用いて2つ以上の可変群に基づき試料の有意性を分析した。
【0068】
CClを投与されたマウスは部分的及び全体的な変化と共に巣状糸球体変化を見せた。H&E染色はさまざまな病変(例えば、メサンギウム細胞過形成、先端領域の癒着や硬化)を示した。しかしながら、糸球体係蹄が全体的に崩壊し糸球体の断片のみが残る状態が主に見られた(データ示されず)。興味深いことに、VAP−1ノックアウトマウス及びBTT−1029投与マウスは糸球体病変から完全に保護された(図6)。
【0069】
線維症の兆候としての糸球体周辺のコラーゲンの蓄積はシリウスレッド染色でアッセイされた。C57BL/6マウスにCClを投与すると糸球体係蹄周辺のコラーゲンの蓄積がほぼ2倍になった。興味深いことに、VAP−1が欠損またはVAP−1阻害剤を投与されたマウスは、対照と同様、コラーゲンの堆積の大幅な減少を示した(図7)。この結果によれば、CClによって引き起こされた腎障害におけるVAP−1の保護的な役割は明らかである。
【0070】
[実施例3]
〔COPDのマウスモデルにおけるVAP−1阻害剤の効果〕
タバコ煙によるCOPDのマウスモデルがCOPD治療におけるVAP−1阻害剤の効果を評価するために用いられた。
【0071】
C57BL/6Jマウスは11日間連続して日に一度タバコ煙(TS)に曝され、最後のTS曝露の後、24時間肺炎症になった。11日後、反応はマクロファージ、上皮細胞、好酸球、好中球及びリンパ球の大幅な増加から構成された。
【0072】
マウスは無作為に検証群(数=10)に分けられ、1、3、6及び9日目にTS曝露後4時間でビヒクル(5ml/kg PBS pH7.4+0.1%ポリソルベート80)またはマウスモノクローナル抗VAP−1抗体(ビヒクル中3mg/kgまたは9mg/kgのBTT−1029)を静脈注射により投与された。別の群(数=10)はビヒクルを静脈注射され、同等の時間空気に曝された。さらに2つのマウス群(数=10)は、TS曝露前1時間に11日間連続で1日1回、別のビヒクル(0.5%カルボキシメチルセルロース、滅菌水中のナトリウム塩(CMC))または対照化合物(0.5%CMC中の5mg/kgロフルミラスト)を経口で投与した。最後の群(数=10)は経口ビヒクル(0.5% CMC)を投与され、同等の時間空気に曝された。
【0073】
結果は全て各動物毎にデータ点として示され、各群毎に平均値が計算された。正常性テストが陽性だった場合、投与グループ間の有意性をテストするために、データはまず一元分散分析検定(ANOVA)にかけられ、その後多重比較のためにボンフェローニ補正された。0.05以下の「p」値は統計的に有意と見なされた。
【0074】
また、データは全て当分散性に関するバートレット検定にかけられた。大部分の検証に関し、分散は一般に等しかったが、この検証において起こったように、時々いくつかの投与群は陽性を示すことがある。したがって、ノンパラメトリック解析も用いられた。データが正常に分布する場合、パラメトリック解析(ANOVA)が引用された。
【0075】
阻害率は以下の式を用いたセルデータについて、Excel表内で自動的に計算された。
【0076】
【数1】

【0077】
BTT−1029は、検証日−1、3、6及び9日目のTS曝露後4時間に9及び3mg/kgで静脈注射された場合、BAL中のTS誘発性細胞の増加を大幅に低下させた(それぞれ38%及び33%の阻害、共にp<0.001)(図8)。これは、マクロファージ(阻害率29%及び22%、それぞれp<0.01及びp<0.05)、好中球(阻害率66%及び59%、共にp<0.001)、リンパ球(阻害率69%及び54%、共にp<0.001)、及び好酸球(阻害率93%及び65%、それぞれp<0.001及びp<0.01)が著しく減少したことによるものであった。
【0078】
参照化合物ロフルミラストもまた、TS曝露前1時間に経口で1日1回投与される場合、細胞の総数を大幅に削減した(41%、p<0.001)(図9)。これは好中球(63%、p<0.001)、好酸球細胞(51%、p<0.01)及びリンパ球(65%、p<0.001)が著しく減少したことによるものであった。この検証において、ロフルミラストはBAL中に発見されたマクロファージ及び好酸球の数を大幅には削減しなかった。
【0079】
[実施例4]
〔血管壁の新生内膜及び内側線維症に対するVAP−1阻害剤の効果〕
新生内膜及び内側肥厚はアテローム性動脈硬化症の進行における初期かつ重要な病気であり、最狭窄の重要な因子である。肥厚は血管壁の新生内膜及び中膜における線維性の変化を伴う。本検証では、安価なウェスタン飼料を与えられたApoE3ライデンマウスの大腿動脈におけるカフ誘発性新生内膜肥厚(カフ誘発性狭窄)に対する小分子SSAO阻害剤(モフェジリン、BTT−2089)の全身投与(連日腹腔内注射による)の効果を評価することにより、線維性疾患における阻害SSAOの役割を評価した。
【0080】
方法:40匹の雄のApoE3*ライデンマウス(12週齢)に外科的カフ設置前に3週間軽く高コレステロール血症食餌を与えた。処置は、1)ビヒクル、2)飲料水に溶解されたデキサメタゾン(9mg/l)、3)BTT−2089 (10 mg/kg)、4)BTT−2089(30 mg/kg)を連日腹腔内注射するものであり、これらは全て手術1日前から始まり、実験期間中継続した。0日目に手術が実施され、非収縮カフ(長さ2から3mm)がマウスの大腿動脈に巻かれた。組織形態計測分析のために2週間後に各群10匹のマウスを処分し、促進された動脈硬化病変及び新生内膜形成の阻害性を定量化した。NaCl0.9%投与対照群に比べ、デキサメタゾン投与陽性対照群及びBTT−2089投与群の両方において、中膜及び新生内膜形成の大幅な減少が確認された(図10及び11)。このことは、対照群に比べてSSAO阻害剤投与群のHPS染色血管セグメントの例において内腔の大きさが増大したことに表された(図12)。
【0081】
同じモデルでの第2の検証はBTT−2089とは異なる化学的分類の別のSSAO阻害剤で行われた。このヒドラジン系阻害剤(BTT−2079)は連日腹腔内注射により10mg/kgのレベルで投与され、BTT−2089(30mg/kg)と比べられた。デキサメタゾン対照群を省略したことを除き、他のあらゆる点において検証は同様に行われた。モフェジリン(BTT−2089)を30mg/kg有するSSAOによる阻害(腹腔内、連日)は、有益な効果をもたらし、SSAO阻害後、新生内膜形成及び管腔狭窄率が大幅に減少した。SSAO阻害剤BTT−2079(10mg/kg、腹腔内、連日)が投与された群においても新生内膜形成が大幅に減少する結果となった。どの群の間においても、血管壁、中膜及び管腔部分における大幅な変化は見られなかった。BTT−2079(10mg/kg)及びBTT−2089(30mg/kg)の内膜中膜率は対照群に比べ大幅に低下したが、管腔狭窄率は対照群に比べてBTT−2089(30mg/kg)群においてのみ大幅に低下した。血管完全性は影響を受けなかった。
【0082】
これらの検証によれば、対照投与群と比べApoE3ライダンマウスカフモデルではSSAO阻害剤の全身投与により新生内膜肥厚(新生内膜線維症)が減少することが示される。
【0083】
[実施例5]
〔肺線維症のマウスモデルにおけるVAP−1阻害剤の効果〕
ブレオマイシン誘発性肺線維症は、肺線維症を検証するための確立した再現可能なマウスモデルである。
【0084】
8週齢の雄のC57BL/6Jマウスにアルゼット・オスミウムミニポンプでブレオマイシン(100mg/kg)を7日間全身投与し、肺障害を引き起こした。非肺毒性がポンプ注入後7から21日間確認された。病理組織学的に評価したところ、21日目までに12から15%の線維症が肺に存在した。その後、呼吸数の増加や体重の劇的な減少によって確認されるであろう臨床的肺障害が起こり、結果、42日以内に死に至った(その前に処分されない場合)。
【0085】
マウスは無作為に各検証群に分けられ、VAP−1阻害剤あるいは参照化合物といったビヒクルを0日目から28日目まで1日3回点滴注射により投与された。各群のマウスの半数は21日目に処分され、残りの半数は28日目に処分された。
【0086】
解剖において、肺は固定され(10%中性緩衝ホルマリン)、線維症病変の判断のために組織病理学的に処理された。組織切片をH&E及びマッソン・トリクロームで染色し、線維症を確認した。各マウス毎にコンピュータ支援画像解析で肺全体に対する線維症の肺部分の割合が定量化された。
【0087】
適当なポストホックテストがその後に続く一元配置分散分析(one−way ANOVA)を用いて2つ以上の可変群に基づき試料の有意性を分析した。
【0088】
対照との比較における統計学的に有意なスコアの低下により明示されるように、肺線維症を軽減することができる。
【0089】
[実施例6]
〔糖尿病性腎疾患のマウスモデルにおけるVAP−1阻害剤の腎保護効果〕
糖尿病は進行性の腎線維症を伴う糖尿病性腎症(DN)を引き起こすことがあり、結果、機能する腎体積が減少する。腎線維症に対する抗VAP−1抗体及びSSAO阻害剤の効果を評価するに際し、十分に確立した糖尿病性腎疾患のDb/db糖尿病マウスモデルが採用された。
【0090】
これらの実験の詳細は全て(飼育場所、実験法、及び動物の処分)、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(ナショナルアカデミープレス、ワシントン、1996)に全般的に基づき行われた。
【0091】
被験物質であるSSAO阻害剤BTT−2079は、糖尿病性腎症のマウスモデルで見込まれる腎保護効果に関して評価された。糖尿病が十分に確立したとき、15週齢のdb/dbマウス(BKS Cg−Lepr db/Lepr db)に42日間連続して1日1回被験物質及びビヒクルを腹膜内投与(IP)した。Db/mマウスは痩せ型の正常対照を成す。db/dbマウスは、db/mマウスと比較すると、腎機能の低下を意味する血漿クレアチンの上昇に加え、高血糖や脂質異常症(LDL、総コレステロール及びトリグリセリド)を示した。糖尿病マウスは、肥満、多尿症、タンパク尿及び尿細管ナトリウムイオン再吸収の低下を示す尿中ナトリウムイオン排泄率の上昇を伴った。内因性クレアチニン・クリアランス(CCr)(糸球体濾過率の推定値)は、db/mマウスに対し糖尿病マウスにおいて低下する傾向にあった。
【0092】
雄のdb/db非インスリン依存性糖尿病マウスは以下で概説されるように各投与グループに割り当てられた。
【0093】
【表1】

【0094】
生存段階終了時に組織の採集及び保存を含む剖検を実施した。32匹の動物全ての右腎が10%中性緩衝ホルマリンに固定された。長手部分を切り取ってパラフィンブロックに処理し、3ミクロンに切断した後過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色して光学顕微鏡検査で評価した。下記プロトコルで概説される半定量スコアリングスキームに基づき、腎臓あたり50個の糸球体においてメサンギウム基質の拡大がスコアリングされた。
【0095】
以下の分類に基づき、各腎臓の50個の糸球体においてメサンギウム基質の拡大がスコアリングされた。
【0096】
ミニマル :グレード1、基質に占められる糸球体体積が0から25%
マイルド :グレード2、基質に占められる糸球体体積が25から50%
モデラート:グレード3、基質に占められる糸球体体積が50から75%
シビア :グレード4、基質に占められる糸球体体積が75から100%
【0097】
各グループの全動物に関するメサンギウム基質スコアを合計してそのグループの動物の総数で割ることにより、各グループ毎の平均メサンギウム基質拡大スコアを導き出した。グループ平均メサンギウム基質拡大スコアが以下の表に示される。
【0098】
【表2】

【0099】
正常な動物において糸球体メサンギウム基質はほとんど見ることはできなかったが、メサンギウム基質の拡大は糖尿病のようなさまざまな疾患状態に特有のものである。メサンギウム基質は基底膜や関連するポリアニオン系プロテオグリカンや他の分子を含み、これらは過ヨウ素酸シッフ(PAS)法により赤から紫に染色される。したがって、糸球体のPAS陽性物質の量は存在するメサンギウム基質の量の尺度となる。
【0100】
各動物から得た50個の糸球体は200倍で評価され、前述のスコア分類を用いて拡大したメサンギウム基質がスコアリングされた。動物毎に評価された糸球体毎のスコアを合計してグループ平均メサンギウム基質拡大スコアを計算した。その後、当該グループの全動物に関するメサンギウム基質拡大スコアを合計してグループ毎の動物総数で割り、グループ平均メサンギウム基質拡大スコアを求めた。これらのデータによれば、db/db非インスリン依存性糖尿病マウス(グループ2)において、グループ平均メサンギウム基質拡大スコアと比べると、BTT−2079(5及び15mg/kg)の投与によってメサンギウム基質拡大スコアは投与量に基づき低下した。
【0101】
腎線維症に対する抗VAP−1抗体及びSSAO阻害剤の効果を評価するために、他の十分に確立した糖尿病性腎疾患のマウスモデルとして1)ストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスモデル及び2)片側尿管閉塞・腎線維症モデルが採用された。
【0102】
1)ストレプトゾトシン誘発性糖尿病マウスモデル6から7週齢の雄のマウス(体重20から25g)をトレプトゾトシン(STZ)注射前の6時間絶食させる。糖尿病を誘発するために、新たに混合されたSTZ(クエン酸ナトリウム緩衝剤中7mg/ml)を飢餓状態にしておいたマウスに55mg/kgの量で腹腔内注射する。糖尿病の誘発を完了するために、各マウスは5日間連続でSTZ注射を1回受けるようにこの手順は繰り返される。最後のSTZ注射から1週間後に、非空腹時血糖が280mg/dL未満のマウスは、通常糖尿病を十分に進行させ重篤な腎障害を引き起こさないことから、実験から排除される。
【0103】
全マウスはビヒクルまたは被験物質を3週連続1日おきに適当量腹腔内投与される。全動物は通常の研究用のエサ及び水を自由裁量で与えられる。
【0104】
血清化学レベルが酵素法(ムタローゼ−GOD)により血液試料から決定される。腎障害は、尿中アルブミン排泄率及びクレアチニン・クリアランスの測定により生化学的に評価され、さらには、マッソントリクローム及び過ヨウ素酸シッフ染色により組織学的に評価される。
【0105】
2)片側尿管閉塞-腎線維症モデル全マウスは術前5日間及び術後7日間ビヒクルまたは被験物質を腹腔内投与される。阻害剤及びビヒクルがSSAOの阻害に適当な量で1日おきに注射される。全動物は通常の研究用のエサ及び水を自由裁量で与えられる。
【0106】
6から7週齢の雄のマウス(体重20から25g)にイソフルラン(2−クロロ−2−(ジフルオロメトキシ)−1, 1,1−トリフルオロ−エタン)吸入で麻酔をかけ、術前に0.05から0.1mg/kgのブプレノルフィンを皮下注射する。マウスは片側尿管閉塞(UUO)の処置を受けるかあるいは擬似手術を受ける。UUO処置されたマウスでは、逆行性尿路感染を予防するために左尿管を4から0の絹縫合糸で2箇所結紮し、結紮箇所間で切断する。マウスは術後7日目に処分される。
【0107】
腎障害は、尿中アルブミン排泄率及びクレアチニン・クリアランスの測定により生化学的に評価され、さらには、マッソントリクローム及び過ヨウ素酸シッフ染色により組織学的に評価される。
【0108】
投与群とビヒクル群との有意な差異を確認するために、一元位置分散分析(one−way ANOVA)及びダネット検定が全検証で用いられる。差異は*P<0.05で有意と見なされる。
【0109】
対照との比較における統計学的に有意なスコアの低下により明示されるように、腎線維症を軽減することができる。
【0110】
[実施例7]
〔糖尿病性腎症に対する抗線維症治療〕
糖尿病性腎症は最終ステージの腎疾患及び線維症(特に間質性線維症)に共通の原因であり、糖尿病の腎臓の主要な病理学的特徴である。臨床的検証により、VAP−1阻害剤が糖尿病の患者の腎症を低減し腎機能をもたせることが可能か否か判断可能である。
【0111】
糸球体濾過率(GFR)が20から75ml/min/1.73m2であり、タンパク尿が300mg/日より多く、血圧が140/90以下であって、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARA)を常用する、1型または2型糖尿病の成人患者が検証に参加した。患者はVAP−1阻害剤を有効レベルで投与されるか、あるいは、適切な投与計画(1日1回またはそれ以下の頻度)でプラセボを1年間投与された。患者は無作為にプラセボまたはVAP−1阻害剤グループに分けられた。検証中、患者は、空腹時血糖及び尿糖値、血圧、臨床化学等のパラメータについて定期的にモニタリングされた。追加的な血液試料を取り出し、糖尿病の際上昇したり、疾患の進行に関連すると思われる血清VAP−1 SSAOレベルを測定してもよい。さらに、血清試料中のメチルアミンレベルを評価してもよい。メチルアミンの上昇はVAP−1 SSAO活性阻害のバイオマーカーである。糖尿病の状態をモニタリングするために、自宅で定期的に血圧及び血糖をチェックし、その値を記録することが患者に求められた。適当量のインスリン投与により、このように患者の糖尿病の良好な管理を維持することができた。
【0112】
糖尿病性腎症に対するケア(ACE阻害剤及び/またはARAでの治療、血圧の目標値が130/80未満の降圧療法、及びHbA1Cの目標値が適当に定められた厳しい血糖コントロール等)に関する現行基準に基づき患者は維持された。
【0113】
腎機能はGFRによって評価され、基線から検証期間の終わりまでの腎機能の変化を検証の主要評価項目としてもよい。第2の主要評価項目としては、検証期間を通しての尿中アルブミン排泄の変化率が挙げられる。
【0114】
[実施例8]
〔線維性疾患の診断マーカーとしてのVAP−1〕
本実施例では、免疫組織化学試験により、線維化中隔(fibrotic septa)がかなり高いレベルの肝硬変において肝VAP−1発現が増加することが分かった(図13から15)。多色共焦点顕微鏡検査により肝星細胞及び筋線維芽細胞におけるVAP−1発現が明らかにされた(図16)。培養されたヒト肝星細胞(HSCs)を用いて、体内HSCsによるsVAP−1の発現及び分泌が確認された。これらの結果は線維成長におけるVAP−1の潜在的な役割を示唆した。
【0115】
血清sVAP−1レベルは、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の患者138人の矛盾なく定められたコホート(well−defined cohort)に対応しかつ等級付られた肝組織像(クライナー分類法(Kleiner classification))を用いて測定された。sVAP−1レベルは肝組織像(脂肪症、炎症、線維症)、代謝パラメータ及び肝損傷に関して評価された(表3)。
【0116】
【表3】

【0117】
BMI=肥満度指数、HOMA−IR=インスリン抵抗性の恒常性モデル評価、AST=アスパラギン酸トランスアミナーゼ、ALT=アラニントランスアミナーゼ、ALP=アルカリホスファターゼ、GGT=ガンマグルタミルトランスフェラーゼ、CRP=C反応性タンパク
【0118】
sVAP−1レベルは健常人(300−500ng/ml)と比べNAFLDコホート(平均+/−SD;945.9+/−457.6ng/ml)において大幅に上昇した。最高値は重篤な肝線維症(ステージF2から4)の患者に見られ、sVAP−1レベルと線維症ステージ間には明確な線形傾向があった(図17)。
【0119】
単変量相関解析(univariate correlation analysis)により、sVAP−1レベルと組織学的な線維症ステージとの間に有意的な相関関係が確認された(r=0.43、p=0.0000003)(表4)。また、変数減少を伴う多重ロジスティック回帰において線維症ステージはsVAP−1レベルに影響する最も重要な独立因子だった(表5)。
【0120】
【表4】

【0121】
r値はピアソン順位相関(Pearson rank correlation)を示す。
【0122】
【表5】

【0123】
重篤な肝線維症(ステージF2−4)に関連する因子の単変量及び多変量解析は共に、sVAP−1レベルが肝損傷の標準的なバイオマーカー(例えば、肝酵素やAST/ALT率)より有意であることを示唆した(図6及び7)。
【0124】
【表6】

【0125】
【表7】

【0126】
コホートにおいて、sVAP−1レベルが重篤な肝線維症(ステージF2−4)の存在を予測する単独のバイオメーターとして用いられた場合、1000ng/ml以上のレベルが陽性の予測値88.9%を示した。重篤な線維症(F2−4)、進行性の線維症(F3−4)及び肝硬変(F4)を予測する受信者動作特性曲線下面積(AUROC)は、それぞれ0.71(95% CI 0.62−0.80), 0.68 (95% CI 0.58−0.78) and 0.75 (95% CI 0.58−0.92)だった(図18)。
【0127】
さらに、結果は、他の臨床的かつ生化学的なパラメータと組み合わせることによって、肝線維症を予測するsVAP−1の感度及び特異性プロフィールを改善できる可能性を示唆した。多変量解析(sVAP−1、糖尿病の状態及びAST/ALT率)による肝線維症に独立に関連する因子の線維症スコア(回帰方程式から算出)では、重篤な線維症(F2−4)、進行性の線維症(F3−4)及び肝硬変(F4)を予測するAUROCが0.79(95% CI 0.71−0.87)、0.80(95% CI 0.71−0.88)及び0.89(95% CI 0.74−1.02)であった(図19)。
【0128】
VAP−1タンパク質はSSAO(セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ)と呼ばれるモノアミンオキシダーゼ酵素活性を有する。SSAO酵素活性はVAP−1タンパク質において不可欠な部分であることから、体液中のsVAP−1レベルも体(血清又は血漿などの)液中のSSAO活性量を測定により決定することができる。SSAOはベンジルアミンやメチルアミンといたSSAO基質に作用するヒト血清及び血漿における主要なモノアミンオキシダーゼ活性である。したがって、SSAO活性は肝線維症に対する同等のマーカーとして用いられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗線維化剤としてのVAP−1阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載のVAP−1阻害剤であって、
モノクローナル抗VAP−1抗体と、SSAO阻害剤と、からなる群から選ばれる
ことを特徴とするVAP−1阻害剤。
【請求項3】
請求項2に記載のVAP−1阻害剤において、
前記抗体は、配列番号1から3からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する完全ヒト抗VAP−1抗体及び/または配列番号24から26からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する軽鎖ポリペプチドである
ことを特徴とするVAP−1阻害剤。
【請求項4】
請求項2に記載のVAP−1阻害剤において、
前記抗体は、配列番号4から8の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号9から13の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号14から18の中から選択される第3のCDR配列とを有する重鎖ポリペプチド、及び/または、配列番号27から31の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号32から36の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号37から41の中から選択される第3のCDR配列とを有する軽鎖ポリペプチドを備える
ことを特徴とするVAP−1阻害剤。
【請求項5】
請求項4に記載のVAP−1阻害剤において、
前記抗体は、配列番号19から23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号42から46からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する各軽鎖可変領域とを有する
ことを特徴とするVAP−1阻害剤。
【請求項6】
請求項2に記載のVAP−1阻害剤において、
前記抗体は、配列番号47で示される重鎖ポリペプチドと配列番号48で示される軽鎖ペプチドとを有する完全ヒト組み換え抗体である
ことを特徴とするVAP−1阻害剤。
【請求項7】
請求項2に記載のVAP−1阻害剤において、
前記SSAO阻害剤は、ヒドラジン誘導体、プロペニルアミン及びプロパルギルアミン、4−置換−2−ブチニルアミン、ハロアリルアミン、ピロリン誘導体、プロパギルジアミン、アリルアミン、ジアミン、4,5,6,7−テトラヒドロイミダゾ[4,5−c]ピリジン誘導体、チオカルバモイル誘導体、カルボキサミド、スルホンアミド、チアゾール及び/またはグアニジン誘導体、オキシム誘導体、ジヒドラジン、アリールアルキルアミン、オキサゾリジノン、ハロアルキルアミン、ベンホチアミン及びイミダゾピリジン誘導体からなる群から選択される
ことを特徴とするVAP−1阻害剤。
【請求項8】
線維性疾患を治療する薬を製造するためのVAP−1阻害剤の使用。
【請求項9】
請求項8に記載の使用であって、
前記VAP−1阻害剤は、抗VAP−1抗体と、SSAO阻害剤とからなる群から選ばれる
ことを特徴とする使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用において、
前記抗体は、配列番号1から3からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する完全ヒト抗VAP−1抗体及び/または配列番号24から26からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する軽鎖ポリペプチドである
ことを特徴とする使用。
【請求項11】
請求項9に記載の使用において、
前記抗体は、配列番号4から8の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号9から13の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号14から18の中から選択される第3のCDR配列とを有する重鎖ポリペプチド、及び/または、配列番号27から31の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号32から36の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号37から41の中から選択される第3のCDR配列とを有する軽鎖ポリペプチドを備える
ことを特徴とする使用。
【請求項12】
請求項9に記載の使用において、
前記抗体は、配列番号19から23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号42から46からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する各軽鎖可変領域とを有する
ことを特徴とする使用。
【請求項13】
請求項9に記載の使用において、
前記抗体は、配列番号47で示される重鎖ポリペプチドと配列番号48で示される軽鎖ペプチドとを有する完全ヒト組み換え抗体である
ことを特徴とする使用。
【請求項14】
請求項9に記載の使用において、
前記SSAO阻害剤は、ヒドラジン誘導体、プロペニルアミン及びプロパルギルアミン、4−置換−2−ブチニルアミン、ハロアリルアミン、ピロリン誘導体、プロパギルジアミン、アリルアミン、ジアミン、4,5,6,7−テトラヒドロイミダゾ[4,5−c]ピリジン誘導体、チオカルバモイル誘導体、カルボキサミド、スルホンアミド、チアゾール及び/またはグアニジン誘導体、オキシム誘導体、ジヒドラジン、アリールアルキルアミン、オキサゾリジノン、ハロアルキルアミン、ベンホチアミン及びイミダゾピリジン誘導体からなる群から選択される
ことを特徴とする使用。
【請求項15】
請求項9に記載の使用において、
前記線維性疾患は、肝線維症やその素因をつくる炎症性疾患からなる群をなす、急性または慢性肝炎、胆道疾患及び中毒性肝損傷、肺線維症、糖尿病性腎症に起因するものを含む腎線維症、骨髄線維症、膵臓線維症、強皮症、結合組織病、瘢痕、皮膚線維症、心臓線維症、臓器移植、血管狭窄症、再狭窄、動脈線維症、関節線維症、乳腺線維症、筋肉線維症、後腹膜線維症、甲状腺線維症、リンパ節線維症、膀胱線維症、胸膜線維症及びCOPD、気管壁が筋線維芽細胞やコラーゲンの蓄積により線維化し、同様の全ての線維性組織が罹患する病気から選択される
ことを特徴とする使用。
【請求項16】
線維性疾患を予防、治療又は緩和を必要とする被験者の線維性疾患を予防、治療又は緩和する方法であって、
前記患者に対して有効量のVAP−1阻害剤を投与する工程を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記VAP−1阻害剤は、抗VAP−1抗体と、SSAO阻害剤とからなる群から選ばれる
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記抗体は、配列番号1から3からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する完全ヒト抗VAP−1抗体及び/または配列番号24から26からなる群から選択される1から3のCDRコンセンサス配列を有する軽鎖ポリペプチドである
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、
前記抗体は、配列番号4から8の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号9から13の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号14から18の中から選択される第3のCDR配列とを有する重鎖ポリペプチド、及び/または、配列番号27から31の中から選択される第1のCDR配列と、配列番号32から36の中から選択される第2のCDR配列と、配列番号37から41の中から選択される第3のCDR配列とを有する軽鎖ポリペプチドを備える
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、
前記抗体は、配列番号19から23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号42から46からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する各軽鎖可変領域とを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法において、
前記抗体は、配列番号47で示される重鎖ポリペプチドと配列番号48で示される軽鎖ペプチドとを有する完全ヒト組み換え抗体である
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法において、
前記SSAO阻害剤は、ヒドラジン誘導体、プロペニルアミン及びプロパルギルアミン、4−置換−2−ブチニルアミン、ハロアリルアミン、ピロリン誘導体、プロパギルジアミン、アリルアミン、ジアミン、4,5,6,7−テトラヒドロイミダゾ[4,5−c]ピリジン誘導体、チオカルバモイル誘導体、カルボキサミド、スルホンアミド、チアゾール及び/またはグアニジン誘導体、オキシム誘導体、ジヒドラジン、アリールアルキルアミン、オキサゾリジノン、ハロアルキルアミン、ベンホチアミン及びイミダゾピリジン誘導体からなる群から選択される
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法において、
前記線維性疾患は、肝線維症やその素因をつくる炎症性疾患からなる群をなす、急性または慢性肝炎、胆道疾患及び中毒性肝損傷、肺線維症、糖尿病性腎症に起因するものを含む腎線維症、骨髄線維症、膵臓線維症、強皮症、結合組織病、瘢痕、皮膚線維症、心臓線維症、臓器移植、血管狭窄症、再狭窄、動脈線維症、関節線維症、乳腺線維症、筋肉線維症、後腹膜線維症、甲状腺線維症、リンパ節線維症、膀胱線維症、胸膜線維症及びCOPD、気管壁が筋線維芽細胞やコラーゲンの蓄積により線維化し、同様の全ての線維性組織が罹患する病気から選択される
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
被験者の線維性疾患を診断する方法であって、
a)前記被験者からの体液の試料を提供し、
b)前記試料中の可溶性VAP−1(sVAP−1)の量又はSSAO活性を測定し、
c)sVAP−1の量又はSSAO活性に基づき線維症を診断する
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
sVAP−1の量またはSSAO活性が、基準体液のsVAP−1量またはSSAO活性と比較される
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法において、
sVAP−1の量が、VAP−1特異抗体を用いて決定される
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法において、
前記体液が血清又は血漿である
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法において、
前記線維性疾患は、肝線維症やその素因をつくる炎症性疾患からなる群をなす、急性または慢性肝炎、胆道疾患及び中毒性肝損傷、肺線維症、糖尿病性腎症に起因するものを含む腎線維症、骨髄線維症、膵臓線維症、強皮症、結合組織病、瘢痕、皮膚線維症、心臓線維症、臓器移植、血管狭窄症、再狭窄、動脈線維症、関節線維症、乳腺線維症、筋肉線維症、後腹膜線維症、甲状腺線維症、リンパ節線維症、膀胱線維症、胸膜線維症及びCOPD、気管壁が筋線維芽細胞やコラーゲンの蓄積により線維化し、同様の全ての線維性組織が罹患する病気から選択される
ことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法において、
前記診断工程が線維症の程度を判断する工程を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法に用いられるキットであって、
体液中のsVAP−1の量又はSSAO活性を評価するための一つ以上の試薬を含む
ことを特徴とするキット。
【請求項31】
sVAP−1の量を評価するための請求項30に記載のキットにおいて、
抗VAP−1抗体を含む
ことを特徴とするキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−503915(P2013−503915A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528399(P2012−528399)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050689
【国際公開番号】WO2011/029996
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(500021583)バイオティ セラピーズ コーポレイション (7)
【出願人】(305031567)ザ ユニバーシティ オブ バーミンガム (12)
【Fターム(参考)】