締結用ボルトの防錆方法及び装置
【課題】 底鋼板のボルト孔に仮固定するボルトが発錆しないようにする。
【解決手段】 軸心方向の一端部を底鋼板1のボルト孔3よりも細径とし、軸心方向他端部がボルト孔3よりも太径となるテーパ部16の軸心方向他端側に、円筒状のキャップ取付部17を設けてボルト仮固定ナット14を形成する。底鋼板1のボルト孔3に下方より挿通させたボルト5に、上方からボルト仮固定用ナット14を締め込んで、テーパ部16をボルト孔3とボルト5との隙間にねじ込むことで、ボルト孔3へのボルト5を仮固定し、ボルト仮固定ナット14とボルト孔3内周面との間を密閉させる。ボルト5のねじ部5aを被覆する防錆キャップ15の開口部15bを、ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17に被せて、両者間を密閉させる。底鋼板1の下面にボルト頭部5bを含めて塗装して、底鋼板1の下面とボルト頭部5bとの間を密閉させる。
【解決手段】 軸心方向の一端部を底鋼板1のボルト孔3よりも細径とし、軸心方向他端部がボルト孔3よりも太径となるテーパ部16の軸心方向他端側に、円筒状のキャップ取付部17を設けてボルト仮固定ナット14を形成する。底鋼板1のボルト孔3に下方より挿通させたボルト5に、上方からボルト仮固定用ナット14を締め込んで、テーパ部16をボルト孔3とボルト5との隙間にねじ込むことで、ボルト孔3へのボルト5を仮固定し、ボルト仮固定ナット14とボルト孔3内周面との間を密閉させる。ボルト5のねじ部5aを被覆する防錆キャップ15の開口部15bを、ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17に被せて、両者間を密閉させる。底鋼板1の下面にボルト頭部5bを含めて塗装して、底鋼板1の下面とボルト頭部5bとの間を密閉させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板同士の重ね合せ部を締結するために一方の鋼板のボルト孔に予め仮固定したボルトの発錆を未然に防止するために用いる締結用ボルトの防錆方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、橋梁を構成するための床版としては、床版のコンクリート層の下面を形成する型枠をパネル状の底鋼板として、該底鋼板の内側にコンクリートを直接打設することで、上記底鋼板とコンクリート層とを一体に結合させるようにした形式の合成床版が用いられるようになってきている。
【0003】
この種の合成床版を架設するには、先ず、主桁上に底鋼板を径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板同士の連結作業が必要となる。
【0004】
上記隣接する底鋼板同士を連結する場合、通常は、図13に示す如く、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に添接板2を重ねて配置した状態にて、上記各底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部に穿設してあるボルト孔3,4に対し、底鋼板1の下面側からボルト(高力ボルト)5を挿通させる。その後、上記添接板2の上側に突出する上記ボルト5の先端部に、ワッシャ7を嵌めてから、ナット6を螺着させて締め込むことで、鋼板同士の重ね合わせ部としての上記各底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合し、これにより、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士を、上記添接板2を介して連結させるようにしてある。
【0005】
上記のようにしてボルト5を用いて底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を接合する際には、底鋼板1の下面側から上記ボルト孔3,4に挿通させたボルト5が脱落(落下)しないように保持した状態で、添接板2の上側からナット6を螺着させて締め込む必要が生じていた。
【0006】
そこで、上記合成床版の底鋼板1の架設現場における底鋼板の下面側からの作業を解消できるようにするための手法として、上記底鋼板1のボルト孔3に下方より挿通させたボルト5を、上記ボルト孔3の部分に脱落しないように保持させることが考えられてきている。
【0007】
図14(イ)(ロ)(ハ)は上記底鋼板1のボルト孔3にボルト5を脱落しないよう保持させるための手段の一例として、従来提案されている引っ掛けリング8を用いた手法を示すものである。
【0008】
上記引っ掛けリング8は、底鋼板1に穿設してあるボルト孔3よりもやや大きい外径寸法を有し、且つ軸心方向の長さ寸法(高さ寸法)を、上記添接板2の板厚よりも小さい寸法としたリング形状の部材の内周面に、上記ボルト5のねじ部(軸部5a)に螺着させるための雌ねじ部(図示せず)を設けた構成としてある。これにより、図14(イ)に示す如く、隣接する底鋼板1の突合せ端部に設けてあるボルト孔3に、ボルト5を下方からそれぞれ挿通させた後、該各ボルト5のねじ部5aに、上記引っ掛けリング8を上方からねじ結合により嵌めて、該引っ掛けリング8を上記各底鋼板1のボルト孔3の周りに当てることで、予め、上記各底鋼板1のボルト孔3に、ボルト5を、落下を防止した状態で保持させることができるようにしてある。
【0009】
したがって、その後は、図14(ロ)に示すように、上記各底鋼板1の突合せ端部の上側に、上記引っ掛けリング8が通過できる大きさのボルト孔4を穿設してなる添接板2を、該ボルト孔4に上記各底鋼板1のボルト孔3に保持させてあるボルト5を挿通させるようにして上方から載置した後、図14(ハ)に示すように、上記ボルト5に、ワッシャ7を介してナット6を上方から嵌めて添接板2の上側から締め込むことで、各底鋼板1に対する添接板2の接合作業、すなわち、該添接板2を介した上記底鋼板1同士の連結作業を、底鋼板1の上側からの作業のみで実施できるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0010】
ところで、上記のようにして底鋼板1のボルト孔3に仮固定を行ったボルト5は、該仮固定作業の後、底鋼板1を施工現場へ搬入する工程と、底鋼板1を主桁上に径間方向に並べて配設する工程と、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に、添接板2を載置する工程と、更には、該添接板2のボルト孔4の位置を利用して、上記ボルト孔3にボルト5が仮固定してある各底鋼板1の位置を修正する工程とを経て、上記ボルト5に底鋼板1と添接板2を接合するためのナット6を本締めするまでの間、屋外に暴露される。
【0011】
そのため、上記底鋼板1のボルト孔3へのボルト5の仮固定作業から、現地本締め作業までに期間が空くと、上記ボルト5のねじ部に錆が発生する虞があり、上記ボルト5のねじ部5aに錆が発生すると、トルク係数が乱れ、本締め後の軸力が安定しなくなるという問題が懸念される。
【0012】
そこで、従来は、通常、上記底鋼板1に仮固定するボルト5として、プライマーによって予め防錆処理されているボルト5を用いることで、底鋼板1のボルト孔3への仮固定作業から、現地本締め作業までの間に該ボルト5のねじ部5aにおける錆の発生を抑えるようにしていた。
【0013】
なお、図15に示す如く、2枚の板9,10の接合に用いられている締結後のボルト11のねじ部11aとナット12の防食(防錆)を行うための手段の1つとして、ボルト11のねじ部11aの先端と側面を覆うねじ被覆部13aと、ナット12を覆う頭部被覆部13bと、ナット12のつば12aを覆うつば被覆部13cと、板9に沿って広がる板被覆部13dからなる防食キャップ13を、亜鉛粉末入りPVCにより製作して、該防食キャップ13を、上記ボルト11のねじ部11aとナット12を被覆するように装着させる手法が従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0014】
【特許文献1】特開2004−176909号公報
【特許文献2】特許平9−250531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、引用文献1に示された底鋼板1のボルト孔3に仮固定するボルト5として、予め防錆処理されたボルト5を用いる場合は、橋梁の合成床版の架設に用いられるボルト5の数が膨大であることに起因して、一般のボルト(高力ボルト)を用いる場合に比してコストが大幅に嵩むという問題がある。
【0016】
又、底鋼板1のボルト孔3に仮固定されたボルト5のねじ部5aの防錆を図るための対策として、該ボルト5に、特許文献2に記載された如き防食キャップ13を被せることが考えられるが、該防食キャップ13は、防食対象となるボルトのねじ部と外気との接触を遮断できるようにはなっていない。
【0017】
すなわち、図15に示した防食キャップ13は、板被覆部13dと板9との間を密閉できるようにはなっておらず、又、ねじ被覆部13aによってボルト11のねじ部11aの先端と側面を覆うように装着した状態であっても、ねじの溝に沿って螺旋状の空間部が存在している。更に、ボルト11のねじ部11aにおけるナット12が螺着されている部分についても、ボルト11のねじ部11aの雄ねじと、ナット12の雌ねじとの間に狭い空間部が螺旋方向に連なるように残存していて密封することができるようにはなっていない。そのため、上記ボルト11とナット12の螺着部分の螺旋状の空間や、ボルト11のねじ部11aの溝に沿って延びるらせん状の空間部に、空気や水が浸入することを防止できず、よって、ねじ部11aにおける錆の発生を確実に防止することは難しいというのが実状である。
【0018】
そこで、本発明は、2枚の鋼板同士の重ね合わせ部を接合するために上記2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に挿通して仮固定した状態でボルトを外気との接触を遮断できるようにして、該ボルトのねじ部の防錆を行うことができるようにする締結用ボルトの防錆方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側より挿通させたボルトを、ボルト仮固定ナットを介して仮固定すると共に、該ボルト仮固定ナットの外周面で上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部を密閉させて該ボルト孔内への止水を行うようにし、次いで、長手方向一端部を閉塞した筒状として上記ボルトのねじ部の先端と側面を被覆する防錆キャップの長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するようにし、更に、上記ボルトの頭部と上記一方の鋼板の一側面との間を塗装により密閉する締結用ボルトの防錆方法とする。
【0020】
又、上記構成において、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させたボルトに、外径を一端側よりも他端側が大きくなるようにテーパ形状としたボルト仮固定ナットを螺着させて、該ボルト仮固定ナットの軸心方向一端部側を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とする。
【0021】
同様に、上記構成において、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とする。
【0022】
同様に、上記構成において、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に、該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、該ボルト仮固定ナットの上記係止用突出部を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とする。
【0023】
又、請求項5に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させるボルトのねじ部に螺合させた状態で、上記一方の鋼板のボルト孔における他側面側端部に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナットと、長手方向一端部が閉塞した筒状として長手方向一端側の胴体部を上記ボルトのねじ部の先端と側面の周りに被覆するようにしてあり且つ長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するための防錆キャップとを有してなり、更に、上記ボルトの頭部と一方の鋼板の一側面側との間を塗装により密閉できるようにしてなる構成を有する締結用ボルトの防錆装置とする。
【0024】
上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備えてなる構成とする。
【0025】
同様に、上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を設けるようにした構成とする。
【0026】
更に、上記各構成において、テーパ部における外径が一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面部を設けるようにした構成とする。
【0027】
又、上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒部の軸心方向の一方の端部側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を有してなる構成として、ボルトのねじ部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に密着して固定できるようにした構成とする。
【0028】
更に、上記構成においてボルト仮固定ナットの円筒部の外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした構成とする。
【0029】
又、上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径として軸心方向の一端部の外周面を防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部としてなる円筒部材を有し、且つ上記円筒部材の軸心方向中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備えてなる構成とする。
【0030】
更に、上記構成において、ボルト仮固定ナットにおける係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした構成とする。
【0031】
上述の各構成において、ボルト仮固定ナットにおけるキャップ取付部を円筒状とし、且つ防錆キャップの開口部の内径を、上記キャップ取付部の外径よりもやや小さくなるようにした構成とする。
【0032】
更に、上記構成において、ボルト仮固定ナットの円筒状としてあるキャップ取付部の軸心方向中間部に、溝を設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側より挿通させたボルトを、ボルト仮固定ナットを介して仮固定すると共に、該ボルト仮固定ナットの外周面で上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部を密閉させて該ボルト孔内への止水を行うようにし、次いで、長手方向一端部を閉塞した筒状として上記ボルトのねじ部の先端と側面を被覆する防錆キャップの長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するようにし、更に、上記ボルトの頭部と上記一方の鋼板の一側面との間を塗装により密閉する締結用ボルトの防錆方法としてあるので、上記2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、ボルトをボルト仮固定ナットを介して仮固定した後、該ボルトの頭部を含む上記一方の鋼板の一側面部への塗装と、ボルトのねじ部に先端と側面を被覆するよう装着する上記防錆キャップの開口部の上記ボルト仮固定ナットへの取り付けにより、該ボルトのねじ部を外気より遮断して速やかに防錆を図ることができる。更に、この防錆の効果を、上記ボルトに対するナットの本締めを行うために該ボルトのねじ部から上記防錆キャップを撤去する時点まで持続させることができる。
(2)2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させたボルトに、外径を一端側よりも他端側が大きくなるようにテーパ形状としたボルト仮固定ナットを螺着させて、該ボルト仮固定ナットの軸心方向一端部側を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とすることにより、上記ボルト仮固定ナットに対する締付け軸力により上記一方の鋼板のボルト孔に、ボルトを回転を防止した状態で仮固定することができる。
(3)2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにするか、又は、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に、該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、該ボルト仮固定ナットの上記係止用突出部を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とすることにより、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業を、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定するための作業現場とは異なる場所で実施できる。よって、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業の作業効率を高いものとすることができる。又、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。これにより、手間及び人手の削減化を図る効果が期待できる。
(4)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させるボルトのねじ部に螺合させた状態で、上記一方の鋼板のボルト孔における他側面側端部に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナットと、長手方向一端部が閉塞した筒状として長手方向一端側の胴体部を上記ボルトのねじ部の先端と側面の周りに被覆するようにしてあり且つ長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するための防錆キャップとを有してなり、更に、上記ボルトの頭部と一方の鋼板の一側面側との間を塗装により密閉できるようにしてなる構成とすることにより、上記(1)の締結用ボルトの防錆方法を実施するための装置構成を実現できる。
(5)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を備えてなる構成とすることにより、上記(2)の方法を実施するための締結用ボルトの防錆装置を容易に実現できる。
(6)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を設けるようにした構成とすることにより、上記キャップ取付部を利用して、ボルト仮固定ナットへの防錆キャップの取り付けを容易に実施できる。
(7)テーパ部における外径が一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面部を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔の上端部内周面に対するにボルト仮固定ナットの密着性を高めることができて、上記一方の鋼板のボルト孔の上端部内周面とボルト仮固定ナットの間の密閉性をより高めることができる。又、ボルト仮固定ナットに対する締付け軸力によって仮固定するボルトの回転防止作用をより強化することが可能となる。更に、上記一方の鋼板のボルト孔に対するボルト仮固定ナットの縦方向位置が定まるようになることから、該ボルト仮固定ナットに対するボルトの締め込み量を一定にすることができる。
(8)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒部の軸心方向の一方の端部側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を有してなる構成として、ボルトのねじ部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に密着して固定できるようにした構成とすることにより、上記(3)に示した効果を得るためのボルト仮固定ナットを容易に実現できる。
(9)ボルト仮固定ナットの円筒部の外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に一側面側よりボルトのねじ部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込む際は、ボルト仮固定ナットの外周面にて隣接する溝同士の間に形成される鍔状の突部を、上記一方の鋼板の一側面側にめくれるように弾性変形させることができ、その後、上記ボルト仮固定ナットに対して上記ボルトの締め込みを行うときには上記ボルト仮固定ナットの外周面の各鍔状の突部に対して、上記ボルト孔への押し込み時にめくれた方向に沿って圧縮力を作用させることができるため、該ボルト仮固定ナットを上記ボルト孔の内側により確実に固定することができる。
(10)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径として軸心方向の一端部の外周面を防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部としてなる円筒部材を有し、且つ上記円筒部材の軸心方向中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備えてなる構成とすることにより、上記(3)に示した効果を得るためのボルト仮固定ナットを容易に実現できる。
(11)ボルト仮固定ナットにおける係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に、一側面側よりボルトのねじ部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込んで、該ボルト仮固定ナットを上記係止用突出部が他側面側に出るように配置した状態にて、ボルト仮固定ナットの自由な回転を防止できる。よって、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを、上記一方の鋼板のいずれか一方の側面側から実施できることから、一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。
(12)ボルト仮固定ナットにおけるキャップ取付部を円筒状とし、且つ防錆キャップの開口部の内径を、上記キャップ取付部の外径よりもやや小さくなるようにした構成とすることにより、上記防錆キャップの開口部を、上記ボルト仮固定ナットのキャップ取付部に被せるように取り付けることで、上記防錆キャップの開口部の内周面と、ボルト仮固定ナットのキャップ取付部の外周面とを密着させて、両者間の密閉性を容易に得ることができる。
(13)ボルト仮固定ナットの円筒状としてあるキャップ取付部の軸心方向中間部に、溝を設けるようにした構成とすることにより、上記ボルト仮固定ナットのキャップ取付部の外周面と、防錆キャップの開口部の内周面との間の密閉性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0035】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)は本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置の実施の一形態として、2枚の重ね合わせ鋼板として、図13に示したと同様の合成床版の底鋼板1と添接板2とのボルト5による接合部に適用する場合を示すもので、以下のようにしてある。
【0036】
すなわち、本発明の締結用ボルトの防錆装置は、図1(ロ)に示す如く、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板としての底鋼板1ボルト孔3に下面側から挿通させるボルト5のねじ部5aに螺合させた状態で、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナット14と、長手方向一端部が閉塞した筒状としてなり、且つ長手方向一端側の胴体部15aを上記ボルト5のねじ部5aの先端と側面の周りに被覆するように配置した状態で、長手方向他端部の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14における上記底鋼板1のボルト孔3より上方へ突出する上端部の外周に被せて密閉できるようにした防錆キャップ15とからなる構成とし、更に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面に密着させたボルト仮固定ナット14に対する締付け軸力によって上記底鋼板1のボルト孔3に回転が防止された状態で仮固定される上記ボルト5の頭部5b含む底鋼板1の下面の所要領域に塗装を施すことで、上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間を密閉することができるようにしてある。
【0037】
詳述すると、上記ボルト仮固定ナット14は、外径寸法が底鋼板1に設けてあるボルト孔3よりも細径となる軸心方向の一端部から上記底鋼板1のボルト孔3よりも所要寸法太径となる軸心方向の他端部へ向けて外周面が徐々に拡径するテーパ部16を備えると共に、該テーパ部16の軸心方向他端側に、軸心方向に所要寸法延びる円筒状のキャップ取付部17の軸心方向一端部を一体に取り付けた構成としてある。
【0038】
上記ボルト仮固定ナット14の内周面には、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。なお、上記ボルト5として、頭部5b近傍の首下部にねじが刻設されていない領域又は不完全ねじ部が存在しているボルト5を用いる場合は、上記ボルト仮固定ナット14の内周面における軸心方向一端部側に、ねじ山のない領域を設けるようにしてもよい(図では内周面における軸心方向一端部側に、ねじ山のない領域を設けてなる形式のボルト仮固定ナット14が示してある)。
【0039】
更に、上記ボルト仮固定ナット14の軸心方向寸法は、少なくとも、内周面の雌ねじ部18の軸心方向に、後述するように上記ボルト5の仮固定を行うための十分な締付け軸力を確保するために必要とされる数のねじ山を配列できるように設定してある。又、後述するように、上記テーパ部16が底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に食い込まされた状態のボルト仮固定ナット14に対して底鋼板1の下面側からボルト5の締付けを行った状態のときに、上記ボルト仮固定ナット14の軸心方向他端部となる上記キャップ取付部17の軸心方向他端部が底鋼板1の上面より突出する寸法が、上記添接板2の板厚以下の寸法となるように設定してあるものとする。なお、図1(ハ)に示すように、後述する上記底鋼板1と添接板2の接合の際に上記ボルト5に嵌めるワッシャ7として、ボルト仮固定ナット14の他端部の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合は、上記ボルト5の締付けを行った状態で上記ボルト仮固定ナット14の軸心方向他端部が底鋼板1の上面より突出する寸法が、上記添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
【0040】
上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17は、その外径寸法が、上記テーパ部16における太径側となる軸心方向他端部の外径よりも所要寸法小さくなるようにしてある。これにより、該キャップ取付部17の外周に被せて取り付けるための防錆キャップ15の開口部15bの外径寸法を小さくすることが可能になる。よって、底鋼板1の上側に載置して接合する添接板2のボルト孔4の内径と、上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の太径側となる軸心方向他端部の外径との寸法差が小さい場合であっても、底鋼板1のボルト孔3に仮固定したボルト5を、防錆キャップ15をしたままの状態で、上記添接板2のボルト孔4に挿通させる場合に有利な構成とすることができる。
【0041】
又、図2(イ)に二点鎖線で示す如く、上記ボルト仮固定ナット14は、テーパ部16における太径側となる軸心方向他端部寄りの外周面に、軸心方向に沿う面取り部19を、周方向等間隔に6面設けてなる構成として、該各面取り部19に、ボックスレンチ等の図示しない締付け工具を掛けることで、該締付け工具を用いてボルト仮固定ナット14のボルト5へのねじ込み作業を行うことができるようにしてもよい。
【0042】
更に又、上記ボルト仮固定ナット14は、所要の弾性変形を許容できるように、たとえば、合成樹脂製、あるいは、黄銅、銅、アルミニウム等、上記底鋼板1及びボルト5に比して柔らかい金属製としてある。これにより、上記ボルト仮固定ナット14を、後述するようにボルト5に対する締付け軸力によって上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間にねじ込むことで、該ボルト仮固定ナット14を、上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に、上記テーパ部16の軸心方向一端部より、該テーパ部16の外径が上記底鋼板1のボルト孔3と等しくなる位置よりも太径側である軸心方向他端側へ所要寸法寄った部分まで楔状に食い込ませることができるようにしてある。したがって、上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16における底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に食い込まされた部分に生じる径方向の圧縮弾性変形の復元力により、該テーパ部16の外周面を、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部付近の内周面に周方向の全長亘り強く密着させることで、ボルト仮固定ナット14と、底鋼板1のボルト孔3の内周面との間を密閉できるようにしてある。なお、上記ボルト仮固定ナット14の材質を合成樹脂とする場合は、該ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の外周面と、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部付近の内周面との間に、金属同士の接触面にて傷等に起因して微小な隙間が形成される虞をより確実に防止できる効果が期待される。
【0043】
上記防錆キャップ15は、可撓性を有する樹脂製として、長手方向他端部の開口部15bの内径寸法が、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外径寸法よりもやや小さくなるようにしてある。これにより、上記防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周に被せるようにして取り付けることで、該防錆キャップ15の開口部15bの内周面と、ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周面とを密着させて、該防錆キャップ15とボルト仮固定ナット14との間を密閉できるようにしてある。
【0044】
更に、上記防錆キャップ15の胴体部15aは、上記ボルト5のねじ部5aの外径よりもやや小さい内径に設定してある。これにより、該防錆キャップ15の胴体部15aを、ボルト5のねじ部5aに先端側から被せると、該胴体部15aの内周面を、長手方向の長い範囲に亘って上記ボルト5のねじ部5aの外周に密着させることができて、この軸心方向の長い範囲に亘ってボルト5のねじ部5aの外周に密着する胴体部15aにより、上記防錆キャップ15をボルト5に装着した状態で保持するための強い保持力を発揮させることができるようにしてある。したがって、底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14を介して仮固定したボルト5に上記防錆キャップ15を装着した状態にて、上記底鋼板1の搬送時や架設時等に人や物がぶつかる等して防錆キャップ15に対して多少の外力が作用しても、該防錆キャップ15が対応するボルト5より外れて脱落する虞を未然に防止できるようにしてある。
【0045】
更に又、上記防錆キャップ15の長さ寸法は、底鋼板1のボルト孔3にボルト仮固定ナット14を介して仮固定したボルト5のねじ部5aの先端側より該防錆キャップ15の胴体部15aを被せると共に、開口部15bを上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17に被せて取り付けた状態にて、該防錆キャップ15の一端部と、上記ボルト5のねじ部5aの先端との間に指で容易につまめる程度の余裕、たとえば、数センチメートル程度の余裕が形成されるように設定してある。これにより、上記ボルト5に装着した状態の防錆キャップ15の一端部を指でつまんで容易に撤去することができるようになるため、防錆キャップ15の撤去作業の作業性を高めることができる。
【0046】
以上の構成としてある締結用ボルトの防錆装置を使用して、図13に示したと同様に2枚の重ね合わせ鋼板としての合成床版の底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5を、上記底鋼板1のボルト孔3に仮止めした状態で防錆する場合は、先ず、工場等にて、図1(イ)に示す如く、上記底鋼板1のボルト孔3に、下方よりボルト(高力ボルト)5、たとえば、トルシア型のボルト5を挿通させて配置した後、該ボルト5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット14を、テーパ部16が設けてある軸心方向の一端部側より嵌めて雌ねじ部18を螺着させる。その後、上記ボルト仮固定ナット14を、上記ボルト5に対して締め込むことにより、ボルト固定用ナット14の上記ボルト5に対する締付け軸力を利用して、該ボルト仮固定ナット14のテーパ部16を、細径側となる一端部より、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部とボルト5との隙間にねじ込んで楔状に食い込ませるようにする。この際、上記ボルト仮固定ナット14が上記底鋼板1のボルト孔3の上端部とボルト5との隙間にある程度食い込んで回転させ難くなる場合は、その後、上記トルシア型のボルト5の先端チップを、汎用のボックスレンチ等を使用して、該ボルト5の締め込み方向へ回転させて、該ボルト5を、上記ボルト仮固定ナット14に対して締め付けるようにしてもよい。なお、上記ボルト5が通常の六角ボルト(高力ボルト)である場合には、上記底鋼板1の下側からボルト5の頭部5bを締め込み方向へ回転させるようにすればよい。
【0047】
これにより、上記ボルト仮固定ナット14より上記ボルト5に強い締付け軸力を作用させることができることから、該ボルト仮固定ナット14とボルト5との間には、大きな摩擦力が発生するようになる。又、上記ボルト仮固定ナット14は、上記ボルト5に作用させる強い締付け軸力により、テーパ部16における本来上記底鋼板1のボルト孔3と同径となる位置よりも太径となる部分まで、上記ボルト孔3とボルト5との隙間に強制的に楔状に食い込まされることで、該底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間において圧縮弾性変形され、その復元力により、該ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の外周面が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部の内周面に、周方向の全周に亘り強く密着するため、該ボルト仮固定ナット14と上記底鋼板1のボルト孔3との間にも大きな摩擦力が生じる。よって、上記ボルト5は、上記底鋼板1のボルト孔3に、該ボルト孔3とボルト仮固定ナット14の間の大きな摩擦力、及び、該ボルト仮固定ナット14とボルト5の間の大きな摩擦力によって回転が防止された状態で仮固定される。
【0048】
更に、この際、上記したようにボルト仮固定ナット14のテーパ部16の外周面が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部の内周面に、周方向の全周に亘り強く密着することに伴い、該ボルト仮固定ナット14と、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面との間(図中のA個所)が密閉される。
【0049】
上記のようにして底鋼板1のボルト孔3に、ボルト5を回転を防止した状態で仮固定した後は、図1(ロ)に示す如く、上記ボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14を介してボルト5を仮固定してなる底鋼板1の下面側における上記ボルト5の頭部5bを含む所要領域、たとえば底鋼板1の下面の全面に、先行塗装となる塗装を施すようにする。20は塗膜である。これにより、上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図中のB個所)が密閉される。
【0050】
又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14を介して仮固定したボルト5のねじ部5aに、先端側より上記防錆キャップ15の胴体部15aを被せると共に、該防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17に被せて取り付ける。これにより、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット14との間(図中のC個所)が密閉される。
【0051】
以上により、上記図中のA,B,Cの3個所が密閉されることで、上記ボルト5のねじ部5aは外気との接触が遮断されるため、該ボルト5のねじ部5aの防錆が図られるようになる。
【0052】
その後、上記のようにして防錆が図られたボルト5がボルト孔3に取り付けてある底鋼板1は、施工現場へ搬入して、該底鋼板1を主桁上に径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に、図1(ハ)に示す如く(図1(ハ)では片方の底鋼板1のみを示してある)、該各底鋼板1のボルト孔3と対応する位置に上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の太径側端部となる軸心方向他端部の外径よりも所要寸法大きなボルト孔4を穿設してなる添接板2を上方から載置して、該添接板2のボルト孔4に、上記底鋼板1のボルト孔3に仮固定してあるボルト5を、それぞれ挿通させるようにする。この際、上記添接板2のボルト孔4の位置を利用して、上記ボルト孔3にボルト5が仮固定してある各底鋼板1の位置を修正するようにしてもよい。
【0053】
しかる後、上記添接板2の上方へ突出する上記各ボルト5のねじ部5aに装着されている防錆キャップ15の一端部をつまんで上方へ引き抜くことで、該防錆キャップ15の撤去を行った後、該各ボルト5のねじ部5aにワッシャ7を介してナット6を嵌めて、該ナット6をボルト5に対して締め込むことで、上記底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合する。これにより、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士が、上記添接板2を介して連結されるようになる。
【0054】
このように、本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置によれば、工場等にて、合成床版の底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5を、上記底鋼板1のボルト孔3にボルト仮固定ナット14を介して仮固定した後、該ボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面への塗装と、ボルト5のねじ部5aに装着する上記防錆キャップ15の開口部15bの上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17への取り付けにより、該ボルト5のねじ部5aを外気より遮断して速やかに防錆を図ることができる。更に、この防錆の効果を、施工現場へ搬入した上記底鋼板1の上側に上記添接板2を載置した後、上記ボルト5に対するナット6の本締めを行うために該ボルト5のねじ部5aから上記防錆キャップ15を撤去する時点まで持続させることができる。
【0055】
上記においては、防錆キャップ15の開口部15bの内径寸法を、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外径寸法よりもやや小さくなるようにして、上記防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周に被せるように取り付けることで、該防錆キャップ15の開口部15bの内周面と、ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周面とを密着させる構成としたが、図3(イ)に示す如く、上記防錆キャップ15の開口部15bの内径を、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外径とをほぼ同径に設定してなる構成として、上記ボルト仮固定ナット14におけるキャップ取付部17とテーパ部16との間に形成されている段差部に予め配したOリングの如きシール材21に、該ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周に被せる防錆キャップ15の開口部15bの先端部を密着させることで、上記防錆キャップ15の開口部15bとボルト仮固定ナット14との間を密閉するようにしてもよい。
【0056】
更に、上記においては、ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の軸心方向他端側に円筒状のキャップ取付部17を設けて、防錆キャップ15の開口部15bを該キャップ取付部17に被せて取り付ける構成としたが、図3(ロ)に示す如く、ボルト仮固定ナット14を、上記円筒状のキャップ取付部17を省略したテーパ部16のみからなり、且つ太径側となる軸心方向他端部寄りの外周面を、図2(イ)に二点鎖線で示した如き面取り部19を具備せずに円形としてなる構成のボルト仮固定ナット14として、底鋼板1のボルト孔3へのボルト5の仮固定時に該ボルト孔3より上方へ突出する上記テーパ部16の太径側となる軸心方向他端部の外周部自体を、キャップ取付部として機能させて、該テーパ部16の軸心方向他端部の外周に、その外径寸法よりもやや小さい内径寸法となるよう設定した防錆キャップ15の開口部15bを、直接嵌めて取り付けるようにしてもよい。この場合にも、上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16と防錆キャップ15の開口部15bとの間を密閉することができる。
【0057】
次に、図4(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態として、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したボルト仮固定ナットの変形例を示すもので、図2(イ)(ロ)に示したボルト仮固定ナット14と同様の構成において、テーパ部16の外周面を、底鋼板1のボルト孔3よりも細径となる軸心方向一端部から上記ボルト孔3よりも太径となる軸心方向他端部まで徐々に拡径する連続したテーパ形状とする構成に代えて、該テーパ形状と同様のテーパ形状の外周面における外径が上記底鋼板1のボルト孔3の径よりもやや太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度がより大きくなるように変化させた係止用テーパ面22を設けてボルト仮固定ナット14aを構成したものである。
【0058】
更に、キャップ取付部17の軸心方向中間部に、所要深さの溝23を周方向の全長に亘り設けた構成としてある。これにより、内径寸法を上記ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17の外径寸法よりもやや小さくなるように設定してある防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17の外周に被せるときに、該防錆キャップ15の開口部15bの内周面と、ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17の外周面との間に、上記キャップ取付部17の溝23に対応する位置に形成される密着性の低い部分を挟んで軸心方向の2個所に密着性の高い部分を形成させるようにすることで、該防錆キャップ15の開口部15bとボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17との密閉性をより高めることができるようにしてある。
【0059】
その他の構成は図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0060】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット14aを用いて、図1(イ)に示したと同様の手順によって、底鋼板1のボルト孔3に下方よりボルト5を挿通させた後、該ボルト5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット14aを、テーパ部16の細径側より嵌めて雌ねじ部18を螺着させて締め込むようにすると、上記ボルト固定用ナット14aの上記ボルト5に対する締付け軸力を利用して、該ボルト仮固定ナット14aのテーパ部16が、上記実施の形態におけるボルト仮固定ナット14のテーパ部16と同様に、細径側となる軸心方向の一端部より上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間にねじ込まれるようになる。
【0061】
この際、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット14aには、外周面における外径が上記底鋼板1のボルト孔3の径よりもやや太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面22が設けてあるため、該係止用テーパ面22が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部に達すると、該ボルト孔3とボルト5との隙間に食い込む力が大きくなる。このため、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面に対するボルト仮固定ナット14aの密着性が高まるため、底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット14aの間(図4(ロ)におけるA個所)の密閉性がより高められる。又、ボルト仮固定ナット14aに対する締付け軸力によって仮固定するボルト5の回転防止作用をより強化することが可能となる。
【0062】
更に、上記底鋼板1のボルト孔3に対するボルト仮固定ナット14aの縦方向位置が定まるようになることから、該ボルト仮固定ナット14aに対するボルト5の締め込み量を一定にすることができるようになる。更には、上記底鋼板1のボルト孔3が設計寸法より多少大きくなっている場合であっても、上記ボルト仮固定ナット14aの係止用テーパ面22の部分を、上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に楔状に食い込ませることができるため、該ボルト仮固定ナット14aに対する締付け軸力によってボルト5を回転を防止した状態で確実に固定することができるようになる。
【0063】
上記のようにして底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット14aを介してボルト5の仮固定を行うことに伴い、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット14aの間(図4(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図4(ロ)におけるB個所)を密閉する。又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14aを介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに対し先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット14aとの間(図4(ロ)におけるC個所)を密閉する。
【0064】
このように本実施の形態によっても、図4(ロ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することで、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
次いで図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの別の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0066】
すなわち、本実施の形態のボルト仮固定ナット24は、図5に示す如く、底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5を仮固定すべき対象である底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法大きい外径寸法を有する円筒部25の軸心方向一端側に、上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも細い径で軸心方向に所要寸法延びる円筒状のキャップ取付部26を一体に設けた形状として、内周面に上記ボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。具体的には、上記ボルト仮固定ナット24は、その外径を、上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも、たとえば、0.5mm程度大きい寸法に設定してある。上記底鋼板1のボルト孔3の内径が25mmである場合は、ボルト仮固定ナット の外径を25.5mm程度に設定するようにしてある。
【0067】
又、上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の外周面には、軸心方向所要間隔位置に、リング状の溝27を、該溝27の内側での直径が上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さくなるような深さ寸法で複数設けて、隣接する溝27同士の間に鍔状の突部28が形成してある。
【0068】
なお、上記ボルト仮固定ナット24の雌ねじ部18は、上記ボルト5の頭部5b近傍の首下部にねじが刻設されていない領域が存在していたり、又は、首下部に不完全なねじ山が存在している場合であっても、該ボルト5のねじ部5aに螺着させるボルト仮固定ナット24を、ボルト頭部5b寄りの軸心方向一端部が、ボルト5の頭部5bより所要寸法の隙間を隔てた位置、たとえば、2〜3mm程度離れた位置までねじ込めるように設けてあるものとする。
【0069】
上記ボルト仮固定ナット24の軸心方向寸法は、少なくとも、内周面の雌ねじ部18の軸心方向に、後述するように上記ボルト5の仮固定を行うための十分な締付け軸力を確保するために必要とされる数のねじ山を配列できるように設定してある。又、該ボルト仮固定ナット24を上記したようにボルト5のねじ部5aに頭部5bより所定寸法離れた位置までねじ込んだ状態で、該ボルト仮固定ナット24における円筒部25の反ボルト頭部5b側の軸心方向他端部が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部に配置されるようにしてあると共に、上記キャップ取付部26の軸心方向他端部のボルト頭部5bからの距離が、上記底鋼板1の板厚と添接板2の板厚の和以下の寸法となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際に上記ボルト5に嵌めるワッシャ7として、ボルト仮固定ナット24の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、ボルト仮固定ナット24を上記したようにボルト5のねじ部5aに頭部5bより所定寸法離れた位置までねじ込んだ状態で、上記キャップ取付部26の軸心方向他端部の上記ボルト頭部5bからの距離が、上記底鋼板1の板厚と添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように、ボルト仮固定ナット24の軸心方向寸法を設定すればよい。
【0070】
更に又、上記ボルト仮固定用ナット24の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2の実施の形態におけるボルト仮固定ナット14と同様の材質として、所要の弾性変形を許容できるようにしてある。これにより、上記ボルト仮固定ナット24を、上記したようにボルト5のねじ部5aにおける所定位置に螺着させた状態にて、上記底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト5と一緒にボルト仮固定ナット24を強制的に押し込むことができるようにしてあると共に、上記ボルト仮固定ナット24における円筒部25が底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に強制的に押し込まれることによって生じる径方向の圧縮弾性変形の復元力によって、該円筒部25の外周面を、上記底鋼板1のボルト孔3の内周面に密着させて、該ボルト孔3の内側に、上記ボルト仮固定ナット24を固定できるようにしてある。
【0071】
上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の軸心方向他端部と、上記キャップ取付部26との間の段差部分は、角部を面取りしてテーパ形状としてある。これにより、上記したようにボルト5のねじ部5aに取り付けた状態のボルト仮固定ナット24の円筒部25を、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込むときの作業性を高めることができるようにしてある。
【0072】
その他、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)において、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0073】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット24を用いる場合は、先ず、工場等にて、図6(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト(高力ボルト)5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット24を螺着させて、該ボルト仮固定ナット24におけるボルト頭部5b寄りの軸心方向一端部と、ボルト頭部5bとの距離が2〜3mm程度となる位置までねじ込むようにする。
【0074】
次に、図6(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット24と一緒に、ボルト頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで強制的に押し込む。これにより、底鋼板1のボルト孔3の内周面とボルト5のねじ部5aとの間で径方向に圧縮弾性変形される上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の復元力により、該円筒部25の外周面が、上記底鋼板1のボルト孔3の内周面に密着させられて、該ボルト孔3の内側に上記ボルト仮固定ナット24が固定される。よって、この底鋼板1のボルト孔3に固定されたボルト仮固定ナット24と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。
【0075】
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させて、該ボルト5を、上記底鋼板1のボルト孔3の内側に固定されている上記ボルト仮固定ナット24に対して締め付ける。
【0076】
上記ボルト仮固定ナット24を螺着したボルト5の底鋼板1のボルト孔3への押し込み作業と、その後のボルト締め付け作業の際における上記ボルト仮固定ナット24の挙動について詳述すると、先ず、ボルト仮固定ナット24がボルト5に螺着された状態で底鋼板1のボルト孔3に押し込まれるときには、図7(イ)に示す如く、内周面の雌ねじ部18が、該雌ねじ部18に螺合しているボルト5のねじ部5aによって上方へ押される一方、ボルト仮固定ナット24の円筒部25の外周面と底鋼板1のボルト孔3の内周面との間に摩擦が作用するため、上記円筒部25の外周面に設けてある各鍔状の突部28が、外周部が下方へめくれる(傾く)ように変形させられる。その後、上記ボルト仮固定ナット24に対して上記ボルト5の締め込みを行うと、図7(ロ)に示す如く、頭部5bが底鋼板1の下面に当接することで上方への変位が阻止されるボルト5のねじ部5aによって、上記ボルト仮固定ナット24の内周面の雌ねじ部18に対して下方への力が作用するため、上記ボルト仮固定ナット24の外周面の各鍔状の突部28に対しては、上記ボルト孔3への押し込み時にめくれた方向(傾いた方向)に沿って圧縮力が作用するようになる。このため、該ボルト仮固定ナット24の円筒部25の各鍔状の突部28の外周面の上記ボルト孔3の内周面に対する密着性が増して、該ボルト孔3の内側に、上記ボルト仮固定ナット24がより確実に固定されるようになる。よって、このボルト仮固定ナット24に対して締め込むことにより生じる強い締付け軸力により、上記ボルト5は、上記底鋼板1のボルト孔3に、回転が防止された状態で仮固定されるようになる。
【0077】
又、上記ボルト仮固定ナット24における円筒部25の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の上端部を含む内周面に密着することから、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット24の間(図6(ロ)におけるA個所)が密閉される。更に、上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の外周面には、軸心方向所要間隔位置に複数のリング状の溝27が設けてあることから、上記円筒部25の外周面と、底鋼板1のボルト孔3の内周面との間には、該ボルト孔3の上端部側から下方へ向けてラビリンスシール状の構造が形成される。したがって、このラビリンスシール状の構造によっても、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット24との間の密閉の確実性が増すようにしてある。
【0078】
なお、一般に、雄ねじと雌ねじを螺合させる場合、ねじ山とねじ溝の間には多少の遊びが設けてある。したがって、後の工程で図1(ハ)と同様に、上記底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を接合するためにボルト5に対してナット6を本締めする際に該ボルト5のねじ部5aが多少伸びても、図7(ハ)に示すように、ボルト5のねじ部5aのねじ山が、底鋼板1のボルト孔3の内側に固定されているボルト仮固定ナット24の雌ねじ部18のねじ溝の遊びの内側で変位するので、上記ボルト5の伸びを何ら拘束しない。よって、上記ボルト5とナット6による底鋼板1と添接板2の接合は、所定の締付け軸力により確実に行なわれるようにしてある。
【0079】
上記図6(ロ)で示したように底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット24を介してボルト5の仮固定を行うと共に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット24の間(図6(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図6(ハ)に示す如く、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図6(ハ)におけるB個所)を密閉する。又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット24を介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット24のキャップ取付部26に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット24との間(図6(ハ)におけるC個所)を密閉すればよい。
【0080】
このように本実施の形態のボルト仮固定ナット24によっても、図6(ハ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することができて、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。更に、ボルト5に対するボルト仮固定ナット24のねじ込み作業は、底鋼板1に対するボルト5の仮固定作業を行う現場とは異なる場所で実施できるため、このボルト5に対するボルト仮固定ナット24のねじ込み作業の作業効率を高いものとすることができる。
【0081】
又、上記ボルト仮固定ナット24をねじ込んだボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に、ボルト仮固定ナット24と一緒に押し込むことで、該ボルト5を上記ボルト仮固定ナット24を介して底鋼板1のボルト孔3に落下しないよう保持させることができる。更に、上記底鋼板1のボルト孔3に固定されたボルト仮固定ナット24に対する上記ボルト5の締め込みは、ボルト5の締め込み方向へ回転させるのみでよく、ボルト仮固定ナット24の保持を必要としない。よって、底鋼板1の上下両側での同時作業が不要になり、手間及び人手の削減化を図ることが可能となる。
【0082】
次に、図8は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示すもので、図5に示したボルト仮固定ナット24と同様の構成において、円筒部25の外周面の溝27を省略して、外周面を軸心方向にフラットな円筒面としてなるボルト仮固定ナット24aとしたものである。
【0083】
なお、上記構成としてある本実施の形態のボルト仮固定ナット24aでは、ボルト5のねじ部5aにねじ込んで取り付けた状態で、該ボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3へ強制的に押し込む際に、図7(イ)(ロ)(ハ)に示したボルト仮固定ナット24における鍔状の突部28のように撓んで変形可能な部分がない。よって、本実施の形態のボルト仮固定ナット24aは、外径の寸法を、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも大きい寸法となる範囲で、図5に示したボルト仮固定ナット24の外径寸法よりもやや小さく設定するか、あるいは、該ボルト仮固定用ナット24aの材質を、図5に示したボルト仮固定ナット24に比して弾性変形の許容量がやや大きな材質とするようにすればよい。
【0084】
その他の構成は図5に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0085】
以上の構成としてある本実施の形態のボルト仮固定ナット24aによっても、図6(イ)(ロ)(ハ)に示したと同様の手順により、底鋼板1のボルト孔3に押し込まれて固定されたボルト仮固定ナット24aを介した底鋼板1のボルト孔3へのボルト5の仮固定、及び、円筒部25の外周面を底鋼板1のボルト孔3の上端部を含む内周面に密着させることによる、該ボルト仮固定ナット24aと底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面との間の密閉を行うことができる。
【0086】
よって、本実施の形態によっても、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。又、ボルト仮固定ナット24aをシンプルな構成にできるため、該ボルト仮固定ナット24aの製造コストの低減化を図る効果が期待できる。
【0087】
次いで、図9及び図10(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0088】
すなわち、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット29は、図9に示す如く、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さい外径寸法を有する円筒部材30の内周面に、ボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。
【0089】
上記円筒部材30の外周面における軸心方向の中間部には、ボルト5のねじ部5aへのねじ込み時に該ねじ部5aの先端寄りとなる軸心方向の一方からボルト頭部5b寄りとなる軸心方向の他方へ向けて徐々に拡径して、軸心方向他端部における外径が上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法太径となるテーパ状の係止用突出部31を設ける。
【0090】
更に、該係止用突出部31の軸心方向他端側には、上記底鋼板1のボルト孔3の内径と同径か、又は、わずかに大きな外径寸法を有する円筒部32を、上記円筒部材30の軸心方向他端部側へ所要寸法延びるように取り付け、上記係止用突出部31の軸心方向他端部と、上記円筒部32との間に、わずかにテーパした段差部33を設ける。上記テーパ状の係止用突出部31の軸心方向他端寄り部分、及び、上記円筒部32の内周面と上記円筒部材30の外周面との間には、径方向に所要幅の空間部32aを設けて、上記係止用突出部31の軸心方向他端寄り部分と上記円筒部32の軸心側への弾性変形を許容できるようにしてある。
【0091】
更に又、上記円筒部材30における上記係止用突出部31よりも軸心方向一端側の部分は、キャップ取付部34として機能させるようにしてある。
【0092】
上記ボルト仮固定ナット29の軸心方向寸法は、後述するように、上記係止用突出部31によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止される該ボルト仮固定ナット29に対して底鋼板1の下面側からボルト5の締付けを行った状態のときに、上記円筒部材30の軸心方向一端部の底鋼板1上面からの突出量が、添接板2の板厚の寸法以下となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際にボルト5に嵌めるワッシャ7として、上記ボルト仮固定ナット29の円筒部材30の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、上記ボルト5の締付けを行った状態での円筒部材30の軸心方向一端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
【0093】
上記ボルト仮固定用ナット29の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図2(イ)(ロ)の実施の形態におけるボルト仮固定ナット14と同様の材質とするようにしてある。
【0094】
その他、図9及び図10(イ)(ロ)(ハ)において、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0095】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット29を用いる場合は、先ず、工場等にて、図10(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト(高力ボルト)5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット29を螺着させて、ボルト頭部5bから底鋼板1の板厚寸法分離れた位置に、上記円筒部32が配されるようになるまでねじ込むようにする。
【0096】
次に、図10(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット29と一緒に、ボルト5の頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで押し込む。これにより、上記ボルト仮固定ナット29は、上記円筒部20が底鋼板1のボルト孔3の上端部の内側に配される位置まで押し込まれ、この際、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込まれることによって一旦軸心側へ弾性変形させられた上記テーパ状の係止用突出部31が、上記底鋼板1のボルト孔3を通過した時点で、該底鋼板1の上方にて径方向外向きに開くように形状が復元されるようになる。よって、この係止用突出部31と、底鋼板1のボルト孔3の内側に配されている円筒部32との間に設けてある段差部33が、該底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されるようになることから、該ボルト仮固定ナット29と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。又、この際、上記ボルト仮固定ナット29の円筒部32の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の内周面に接することで、該ボルト仮固定ナット29の自由な回転も制限される。
【0097】
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させると、上記自由な回転が制限され且つ係止用突出部31の軸心方向他端側に設けてある段差部33によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されている上記ボルト仮固定ナット29に対してボルト5の締付けが行われる。これにより、該ボルト5は、上記ボルト仮固定ナット29に対して生じる強い締付け軸力により、上記底鋼板1のボルト孔3に、回転が防止された状態で仮固定される。又、この際、わずかにテーパ形状としてある上記段差部33が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部に多少食い込んで密着することによって、該ボルト孔3の上端部内周面と、上記ボルト仮固定ナット29との間(図10(ロ)におけるA個所)が密閉される。
【0098】
上記図10(ロ)で示したように底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット29を介してボルト5の仮固定を行うと共に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット29の間(図10(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図10(ハ)に示す如く、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図10(ハ)におけるB個所)を密閉する。又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット29を介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット29のキャップ取付部34に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット29との間(図10(ハ)におけるC個所)を密閉すればよい。
【0099】
このように本実施の形態のボルト仮固定ナット29によっても、図10(ハ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することができて、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
図11及び図12(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0101】
すなわち、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット35は、図11に示す如く、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さい外径寸法を有して、外周面をキャップ取付部37とする円筒部材36の内周面に、ボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。
【0102】
上記円筒部材36の軸心方向の一端側には、軸心方向の中間部にて径方向外向きに屈曲する断面形状山型のリング形状を有し且つ頂部の外径寸法が底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法大きくなるようにしてある係止用突出部38を一体に取り付ける。
【0103】
更に、上記係止用突出部38の軸心方向一端側に、上記底鋼板1のボルト孔3の内径と同径か、又は、わずかに大きな外径寸法で軸心方向に所要寸法延びる円筒部39を一体に取り付けてなる構成としてある。
【0104】
上記ボルト仮固定ナット35の軸心方向寸法は、後述するように、上記係止用突出部38によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止される該ボルト仮固定ナット35に対して底鋼板1の下面側からボルト5の締付けを行った状態のときに、上記円筒部材36の軸心方向他端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚の寸法以下となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際にボルト5に嵌めるワッシャ7として、上記ボルト仮固定ナット35の円筒部材36の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、上記ボルト5の締付けを行った状態での円筒部材36の軸心方向他端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
【0105】
上記ボルト仮固定用ナット35の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図2(イ)(ロ)の実施の形態におけるボルト仮固定ナット14と同様の材質とするようにしてある。
【0106】
その他、図11及び図12(イ)(ロ)(ハ)において、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0107】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット35を用いる場合は、先ず、工場等にて、図12(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット35を軸心方向の一端側から螺着させて、ボルト頭部5bから底鋼板1の板厚寸法分離れた位置に上記円筒部39が配されるようになるまでねじ込むようにする。
【0108】
次に、図12(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット35と一緒に、ボルト5の頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで押し込む。これにより、上記ボルト仮固定ナット35は、上記円筒部39が底鋼板1のボルト孔3の上端部の内側に配される位置まで押し込まれる。この際、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込まれることによって、上記断面形状山型としてある係止用突出部38が一旦軸心側へ押しつぶされるように弾性変形させられた後、上記底鋼板1のボルト孔3を通過した時点で、上記弾性変形していた係止用突出部38の形状が、該底鋼板1の上方にて径方向外向きに突出するように復元されるようになる。よって、この係止用突出部38が、底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されるようになることから、該ボルト仮固定ナット35と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。又、この際、上記ボルト仮固定ナット35の円筒部39の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の内周面に接するため、該ボルト仮固定ナット35の自由な回転も制限される。
【0109】
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させると、上記自由な回転が制限され且つ係止用突出部38によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されている上記ボルト仮固定ナット35に対してボルト5の締付けが行われて、上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に上記係止用突出部38が多少食い込まされることで固定される上記ボルト仮固定ナット35に対して生じる強い締付け軸力により、底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト5が回転が防止された状態で仮固定される。又、この際、上記係止用突出部38が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部とボルト5との隙間に食い込むことで該ボルト孔3の上端部内周面に密着するため、該ボルト孔3 の上端部内周面と、上記ボルト仮固定ナット35との間(図12(ロ)におけるA個所)が密閉される。
【0110】
上記図12(ロ)で示したように底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット35を介してボルト5の仮固定を行うと共に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット35の間(図12(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図12(ハ)に示す如く、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図12(ハ)におけるB個所)を密閉する。
【0111】
又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット35を介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット35のキャップ取付部37に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット35との間(図12(ハ)におけるC個所)を密閉すればよい。
【0112】
このように本実施の形態のボルト仮固定ナット35によっても、図12(ハ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することができて、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、ボルト仮固定ナット14,14a,24,24a,29,35におけるキャップ取付部17,26,34,37の径方向寸法や軸心方向寸法は、底鋼板1のボルト孔3の寸法、添接板2の板厚やボルト孔4の寸法、ボルト11のサイズ、防錆キャップ15の開口部15bの内径寸法等に応じて適宜変更してもよい。
【0114】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態、図4(イ)(ロ)の実施の形態では、ボルト仮固定ナット14,14aのキャップ取付部17の外径を、テーパ部16の太径側となる軸心方向他端部の外径と同じ寸法としてもよい。又、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態、図8の実施の形態では、ボルト仮固定ナット24,24aのキャップ取付部26の外径を、円筒部25の外径と同じ寸法としてもよい。この場合には、添接板2のボルト孔4が、上記各ボルト仮固定ナットボルト仮固定ナット14,14aのキャップ取付部17や、ボルト仮固定ナット24,24aのキャップ取付部26の外径よりも大きな内径を有するように設定しておけば、底鋼板1上に添接板2を載置してから防錆キャップ15の撤去を行うことができるようになる。なお、必要に応じて、底鋼板1上に添接板2を載置する前に防錆キャップ15の撤去を行うことは何ら制限されるものではない。
【0115】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態、図3(イ)(ロ)の各実施の形態におけるボルト仮固定ナット14のテーパ部の16軸心方向に対する傾斜角度、及び、図4(イ)(ロ)の実施の形態におけるテーパ部16と係止用テーパ面22の軸心方向に対する傾斜角度は、接合対象となる底鋼板1と添接板2の板厚や、ボルト5を予め取り付けるようにする一方の鋼板に設けるボルト孔3とボルト5との隙間の大きさに応じて適宜変更してもよい。
【0116】
図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態、及び、図8の実施の形態におけるボルト仮固定ナット24の外径寸法は、ボルト5にねじ込んだ状態で該ボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3に押し込むことで、該ボルト孔3の内側に固定できるようにしてあれば、その材質や、ボルト5を仮固定する対象となる底鋼板1のボルト孔3の径寸法等に応じて、底鋼板1のボルト孔3より径を大きく設定する割合を0.5mmから増減させてもよい。
【0117】
又、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態、及び、図8の実施の形態におけるボルト仮固定ナット24の外周面に設ける溝27や、隣接する溝27同士の間に形成させる鍔状の突部28の幅寸法、軸心方向の配列間隔、配列数、深さ寸法等は、該ボルト仮固定ナット24のサイズ等に応じて適宜変更してもよい。
【0118】
図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態のボルト仮固定ナット24のキャップ取付部17、図8の実施の形態のボルト仮固定ナット24aのキャップ取付部17、図9及び図10(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態のボルト仮固定ナット29のキャップ取付部34、及び、図11及び図12(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態のボルト仮固定ナット35のキャップ取付部37における軸心方向の中間部に、図4(イ)(ロ)に示したボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17に設けた溝23と同様の溝を設けるようにしてもよい。
【0119】
本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置は、2枚の鋼板をボルト5を用いて接合する際、一方の鋼板に設けたボルト孔に予めボルト5を脱落しないよう取り付けておくことが望まれる個所であれば、上記底鋼板1と添接板2以外のいかなる鋼板同士の接合個所にも適用してよい。
【0120】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ロ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態を、(ハ)は底鋼板に添接板を接合した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図2】図1のボルト仮固定ナットを拡大して示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は一部切断側面図である。
【図3】(イ)(ロ)はいずれも図1におけるボルト仮固定ナットの変形例を示すものである。
【図4】本発明の実施の他の形態として、ボルト仮固定ナットの別の例を示すもので、(イ)は一部切断側面図、(ロ)は(イ)のボルト仮固定ナットを用いてボルトのねじ部の防錆を行った状態を示す一部切断概略側面図である。
【図5】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図6】図5のボルト仮固定ナットを用いて行う防錆方法の手順を示すもので、(イ)はボルトにボルト仮固定ナットをねじ込んだ状態を、(ロ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ハ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図7】図6の防錆方法の実施時のボルト仮固定ナットの部分を拡大して示すもので、(イ)は、ボルトにねじ込んだボルト仮固定ナットをボルトと一緒に底鋼板のボルト孔に押し込んだ状態を、(ロ)はボルトをボルト仮固定ナットに対して締め込んだ状態を、(ハ)はボルトに添接板を固定するナットを締め込むことにより該ボルトに伸びが生じた状態をそれぞれ示す切断側面図である。
【図8】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図9】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図10】図9のボルト仮固定ナットを用いて行う防錆方法の手順を示すもので、(イ)はボルトにボルト仮固定ナットをねじ込んだ状態を、(ロ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ハ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図11】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図12】図11のボルト仮固定ナットを用いて行う防錆方法の手順を示すもので、(イ)はボルトにボルト仮固定ナットをねじ込んだ状態を、(ロ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ハ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図13】隣接する合成床版の底鋼板の突合せ端部同士の添接板を介した一般的な連結構造を示す切断側面図である。
【図14】底鋼板のボルト孔にボルトを脱落しないよう保持させるために従来提案されている手法の一例の概要を示すもので、(イ)は底鋼板のボルト孔にボルトを保持させた状態を、(ロ)は隣接する底鋼板の上側に添接板を載置する状態を、(ハ)は隣接する底鋼板を添接板を介して連結した状態をそれぞれ示す切断側面図である。
【図15】2枚の板の接合に用いられている締結後のボルトのねじ部とナットの防食を行うための手段の1つとして従来提案されている防食キャップを示す概要図である。
【符号の説明】
【0122】
1 底鋼板(一方の鋼板)
2 添接板(他方の鋼板)
3 ボルト孔
4 ボルト孔
5 ボルト
5a ねじ部
5b 頭部
6 ナット
14,14a ボルト仮固定ナット
15 防錆キャップ
15b 開口部
16 テーパ部
17 キャップ取付部
18 雌ねじ部
22 係止用テーパ面部
23 溝
24,24a ボルト仮固定ナット
25 円筒部
26 キャップ取付部
27 溝
29 ボルト仮固定ナット
30 円筒部材
31 係止用突出部
32 円筒部
34 キャップ取付部
35 ボルト仮固定ナット
36 円筒部材
37 キャップ取付部
38 係止用突出部
39 円筒部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板同士の重ね合せ部を締結するために一方の鋼板のボルト孔に予め仮固定したボルトの発錆を未然に防止するために用いる締結用ボルトの防錆方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、橋梁を構成するための床版としては、床版のコンクリート層の下面を形成する型枠をパネル状の底鋼板として、該底鋼板の内側にコンクリートを直接打設することで、上記底鋼板とコンクリート層とを一体に結合させるようにした形式の合成床版が用いられるようになってきている。
【0003】
この種の合成床版を架設するには、先ず、主桁上に底鋼板を径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板同士の連結作業が必要となる。
【0004】
上記隣接する底鋼板同士を連結する場合、通常は、図13に示す如く、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に添接板2を重ねて配置した状態にて、上記各底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部に穿設してあるボルト孔3,4に対し、底鋼板1の下面側からボルト(高力ボルト)5を挿通させる。その後、上記添接板2の上側に突出する上記ボルト5の先端部に、ワッシャ7を嵌めてから、ナット6を螺着させて締め込むことで、鋼板同士の重ね合わせ部としての上記各底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合し、これにより、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士を、上記添接板2を介して連結させるようにしてある。
【0005】
上記のようにしてボルト5を用いて底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を接合する際には、底鋼板1の下面側から上記ボルト孔3,4に挿通させたボルト5が脱落(落下)しないように保持した状態で、添接板2の上側からナット6を螺着させて締め込む必要が生じていた。
【0006】
そこで、上記合成床版の底鋼板1の架設現場における底鋼板の下面側からの作業を解消できるようにするための手法として、上記底鋼板1のボルト孔3に下方より挿通させたボルト5を、上記ボルト孔3の部分に脱落しないように保持させることが考えられてきている。
【0007】
図14(イ)(ロ)(ハ)は上記底鋼板1のボルト孔3にボルト5を脱落しないよう保持させるための手段の一例として、従来提案されている引っ掛けリング8を用いた手法を示すものである。
【0008】
上記引っ掛けリング8は、底鋼板1に穿設してあるボルト孔3よりもやや大きい外径寸法を有し、且つ軸心方向の長さ寸法(高さ寸法)を、上記添接板2の板厚よりも小さい寸法としたリング形状の部材の内周面に、上記ボルト5のねじ部(軸部5a)に螺着させるための雌ねじ部(図示せず)を設けた構成としてある。これにより、図14(イ)に示す如く、隣接する底鋼板1の突合せ端部に設けてあるボルト孔3に、ボルト5を下方からそれぞれ挿通させた後、該各ボルト5のねじ部5aに、上記引っ掛けリング8を上方からねじ結合により嵌めて、該引っ掛けリング8を上記各底鋼板1のボルト孔3の周りに当てることで、予め、上記各底鋼板1のボルト孔3に、ボルト5を、落下を防止した状態で保持させることができるようにしてある。
【0009】
したがって、その後は、図14(ロ)に示すように、上記各底鋼板1の突合せ端部の上側に、上記引っ掛けリング8が通過できる大きさのボルト孔4を穿設してなる添接板2を、該ボルト孔4に上記各底鋼板1のボルト孔3に保持させてあるボルト5を挿通させるようにして上方から載置した後、図14(ハ)に示すように、上記ボルト5に、ワッシャ7を介してナット6を上方から嵌めて添接板2の上側から締め込むことで、各底鋼板1に対する添接板2の接合作業、すなわち、該添接板2を介した上記底鋼板1同士の連結作業を、底鋼板1の上側からの作業のみで実施できるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0010】
ところで、上記のようにして底鋼板1のボルト孔3に仮固定を行ったボルト5は、該仮固定作業の後、底鋼板1を施工現場へ搬入する工程と、底鋼板1を主桁上に径間方向に並べて配設する工程と、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に、添接板2を載置する工程と、更には、該添接板2のボルト孔4の位置を利用して、上記ボルト孔3にボルト5が仮固定してある各底鋼板1の位置を修正する工程とを経て、上記ボルト5に底鋼板1と添接板2を接合するためのナット6を本締めするまでの間、屋外に暴露される。
【0011】
そのため、上記底鋼板1のボルト孔3へのボルト5の仮固定作業から、現地本締め作業までに期間が空くと、上記ボルト5のねじ部に錆が発生する虞があり、上記ボルト5のねじ部5aに錆が発生すると、トルク係数が乱れ、本締め後の軸力が安定しなくなるという問題が懸念される。
【0012】
そこで、従来は、通常、上記底鋼板1に仮固定するボルト5として、プライマーによって予め防錆処理されているボルト5を用いることで、底鋼板1のボルト孔3への仮固定作業から、現地本締め作業までの間に該ボルト5のねじ部5aにおける錆の発生を抑えるようにしていた。
【0013】
なお、図15に示す如く、2枚の板9,10の接合に用いられている締結後のボルト11のねじ部11aとナット12の防食(防錆)を行うための手段の1つとして、ボルト11のねじ部11aの先端と側面を覆うねじ被覆部13aと、ナット12を覆う頭部被覆部13bと、ナット12のつば12aを覆うつば被覆部13cと、板9に沿って広がる板被覆部13dからなる防食キャップ13を、亜鉛粉末入りPVCにより製作して、該防食キャップ13を、上記ボルト11のねじ部11aとナット12を被覆するように装着させる手法が従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0014】
【特許文献1】特開2004−176909号公報
【特許文献2】特許平9−250531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、引用文献1に示された底鋼板1のボルト孔3に仮固定するボルト5として、予め防錆処理されたボルト5を用いる場合は、橋梁の合成床版の架設に用いられるボルト5の数が膨大であることに起因して、一般のボルト(高力ボルト)を用いる場合に比してコストが大幅に嵩むという問題がある。
【0016】
又、底鋼板1のボルト孔3に仮固定されたボルト5のねじ部5aの防錆を図るための対策として、該ボルト5に、特許文献2に記載された如き防食キャップ13を被せることが考えられるが、該防食キャップ13は、防食対象となるボルトのねじ部と外気との接触を遮断できるようにはなっていない。
【0017】
すなわち、図15に示した防食キャップ13は、板被覆部13dと板9との間を密閉できるようにはなっておらず、又、ねじ被覆部13aによってボルト11のねじ部11aの先端と側面を覆うように装着した状態であっても、ねじの溝に沿って螺旋状の空間部が存在している。更に、ボルト11のねじ部11aにおけるナット12が螺着されている部分についても、ボルト11のねじ部11aの雄ねじと、ナット12の雌ねじとの間に狭い空間部が螺旋方向に連なるように残存していて密封することができるようにはなっていない。そのため、上記ボルト11とナット12の螺着部分の螺旋状の空間や、ボルト11のねじ部11aの溝に沿って延びるらせん状の空間部に、空気や水が浸入することを防止できず、よって、ねじ部11aにおける錆の発生を確実に防止することは難しいというのが実状である。
【0018】
そこで、本発明は、2枚の鋼板同士の重ね合わせ部を接合するために上記2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に挿通して仮固定した状態でボルトを外気との接触を遮断できるようにして、該ボルトのねじ部の防錆を行うことができるようにする締結用ボルトの防錆方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側より挿通させたボルトを、ボルト仮固定ナットを介して仮固定すると共に、該ボルト仮固定ナットの外周面で上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部を密閉させて該ボルト孔内への止水を行うようにし、次いで、長手方向一端部を閉塞した筒状として上記ボルトのねじ部の先端と側面を被覆する防錆キャップの長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するようにし、更に、上記ボルトの頭部と上記一方の鋼板の一側面との間を塗装により密閉する締結用ボルトの防錆方法とする。
【0020】
又、上記構成において、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させたボルトに、外径を一端側よりも他端側が大きくなるようにテーパ形状としたボルト仮固定ナットを螺着させて、該ボルト仮固定ナットの軸心方向一端部側を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とする。
【0021】
同様に、上記構成において、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とする。
【0022】
同様に、上記構成において、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に、該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、該ボルト仮固定ナットの上記係止用突出部を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とする。
【0023】
又、請求項5に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させるボルトのねじ部に螺合させた状態で、上記一方の鋼板のボルト孔における他側面側端部に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナットと、長手方向一端部が閉塞した筒状として長手方向一端側の胴体部を上記ボルトのねじ部の先端と側面の周りに被覆するようにしてあり且つ長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するための防錆キャップとを有してなり、更に、上記ボルトの頭部と一方の鋼板の一側面側との間を塗装により密閉できるようにしてなる構成を有する締結用ボルトの防錆装置とする。
【0024】
上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備えてなる構成とする。
【0025】
同様に、上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を設けるようにした構成とする。
【0026】
更に、上記各構成において、テーパ部における外径が一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面部を設けるようにした構成とする。
【0027】
又、上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒部の軸心方向の一方の端部側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を有してなる構成として、ボルトのねじ部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に密着して固定できるようにした構成とする。
【0028】
更に、上記構成においてボルト仮固定ナットの円筒部の外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした構成とする。
【0029】
又、上記構成におけるボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径として軸心方向の一端部の外周面を防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部としてなる円筒部材を有し、且つ上記円筒部材の軸心方向中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備えてなる構成とする。
【0030】
更に、上記構成において、ボルト仮固定ナットにおける係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした構成とする。
【0031】
上述の各構成において、ボルト仮固定ナットにおけるキャップ取付部を円筒状とし、且つ防錆キャップの開口部の内径を、上記キャップ取付部の外径よりもやや小さくなるようにした構成とする。
【0032】
更に、上記構成において、ボルト仮固定ナットの円筒状としてあるキャップ取付部の軸心方向中間部に、溝を設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側より挿通させたボルトを、ボルト仮固定ナットを介して仮固定すると共に、該ボルト仮固定ナットの外周面で上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部を密閉させて該ボルト孔内への止水を行うようにし、次いで、長手方向一端部を閉塞した筒状として上記ボルトのねじ部の先端と側面を被覆する防錆キャップの長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するようにし、更に、上記ボルトの頭部と上記一方の鋼板の一側面との間を塗装により密閉する締結用ボルトの防錆方法としてあるので、上記2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、ボルトをボルト仮固定ナットを介して仮固定した後、該ボルトの頭部を含む上記一方の鋼板の一側面部への塗装と、ボルトのねじ部に先端と側面を被覆するよう装着する上記防錆キャップの開口部の上記ボルト仮固定ナットへの取り付けにより、該ボルトのねじ部を外気より遮断して速やかに防錆を図ることができる。更に、この防錆の効果を、上記ボルトに対するナットの本締めを行うために該ボルトのねじ部から上記防錆キャップを撤去する時点まで持続させることができる。
(2)2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させたボルトに、外径を一端側よりも他端側が大きくなるようにテーパ形状としたボルト仮固定ナットを螺着させて、該ボルト仮固定ナットの軸心方向一端部側を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とすることにより、上記ボルト仮固定ナットに対する締付け軸力により上記一方の鋼板のボルト孔に、ボルトを回転を防止した状態で仮固定することができる。
(3)2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにするか、又は、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に、該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、該ボルト仮固定ナットの上記係止用突出部を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする方法とすることにより、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業を、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定するための作業現場とは異なる場所で実施できる。よって、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業の作業効率を高いものとすることができる。又、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。これにより、手間及び人手の削減化を図る効果が期待できる。
(4)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させるボルトのねじ部に螺合させた状態で、上記一方の鋼板のボルト孔における他側面側端部に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナットと、長手方向一端部が閉塞した筒状として長手方向一端側の胴体部を上記ボルトのねじ部の先端と側面の周りに被覆するようにしてあり且つ長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するための防錆キャップとを有してなり、更に、上記ボルトの頭部と一方の鋼板の一側面側との間を塗装により密閉できるようにしてなる構成とすることにより、上記(1)の締結用ボルトの防錆方法を実施するための装置構成を実現できる。
(5)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を備えてなる構成とすることにより、上記(2)の方法を実施するための締結用ボルトの防錆装置を容易に実現できる。
(6)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を設けるようにした構成とすることにより、上記キャップ取付部を利用して、ボルト仮固定ナットへの防錆キャップの取り付けを容易に実施できる。
(7)テーパ部における外径が一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面部を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔の上端部内周面に対するにボルト仮固定ナットの密着性を高めることができて、上記一方の鋼板のボルト孔の上端部内周面とボルト仮固定ナットの間の密閉性をより高めることができる。又、ボルト仮固定ナットに対する締付け軸力によって仮固定するボルトの回転防止作用をより強化することが可能となる。更に、上記一方の鋼板のボルト孔に対するボルト仮固定ナットの縦方向位置が定まるようになることから、該ボルト仮固定ナットに対するボルトの締め込み量を一定にすることができる。
(8)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒部の軸心方向の一方の端部側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を有してなる構成として、ボルトのねじ部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に密着して固定できるようにした構成とすることにより、上記(3)に示した効果を得るためのボルト仮固定ナットを容易に実現できる。
(9)ボルト仮固定ナットの円筒部の外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に一側面側よりボルトのねじ部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込む際は、ボルト仮固定ナットの外周面にて隣接する溝同士の間に形成される鍔状の突部を、上記一方の鋼板の一側面側にめくれるように弾性変形させることができ、その後、上記ボルト仮固定ナットに対して上記ボルトの締め込みを行うときには上記ボルト仮固定ナットの外周面の各鍔状の突部に対して、上記ボルト孔への押し込み時にめくれた方向に沿って圧縮力を作用させることができるため、該ボルト仮固定ナットを上記ボルト孔の内側により確実に固定することができる。
(10)ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径として軸心方向の一端部の外周面を防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部としてなる円筒部材を有し、且つ上記円筒部材の軸心方向中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備えてなる構成とすることにより、上記(3)に示した効果を得るためのボルト仮固定ナットを容易に実現できる。
(11)ボルト仮固定ナットにおける係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に、一側面側よりボルトのねじ部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込んで、該ボルト仮固定ナットを上記係止用突出部が他側面側に出るように配置した状態にて、ボルト仮固定ナットの自由な回転を防止できる。よって、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを、上記一方の鋼板のいずれか一方の側面側から実施できることから、一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。
(12)ボルト仮固定ナットにおけるキャップ取付部を円筒状とし、且つ防錆キャップの開口部の内径を、上記キャップ取付部の外径よりもやや小さくなるようにした構成とすることにより、上記防錆キャップの開口部を、上記ボルト仮固定ナットのキャップ取付部に被せるように取り付けることで、上記防錆キャップの開口部の内周面と、ボルト仮固定ナットのキャップ取付部の外周面とを密着させて、両者間の密閉性を容易に得ることができる。
(13)ボルト仮固定ナットの円筒状としてあるキャップ取付部の軸心方向中間部に、溝を設けるようにした構成とすることにより、上記ボルト仮固定ナットのキャップ取付部の外周面と、防錆キャップの開口部の内周面との間の密閉性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0035】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)は本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置の実施の一形態として、2枚の重ね合わせ鋼板として、図13に示したと同様の合成床版の底鋼板1と添接板2とのボルト5による接合部に適用する場合を示すもので、以下のようにしてある。
【0036】
すなわち、本発明の締結用ボルトの防錆装置は、図1(ロ)に示す如く、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板としての底鋼板1ボルト孔3に下面側から挿通させるボルト5のねじ部5aに螺合させた状態で、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナット14と、長手方向一端部が閉塞した筒状としてなり、且つ長手方向一端側の胴体部15aを上記ボルト5のねじ部5aの先端と側面の周りに被覆するように配置した状態で、長手方向他端部の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14における上記底鋼板1のボルト孔3より上方へ突出する上端部の外周に被せて密閉できるようにした防錆キャップ15とからなる構成とし、更に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面に密着させたボルト仮固定ナット14に対する締付け軸力によって上記底鋼板1のボルト孔3に回転が防止された状態で仮固定される上記ボルト5の頭部5b含む底鋼板1の下面の所要領域に塗装を施すことで、上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間を密閉することができるようにしてある。
【0037】
詳述すると、上記ボルト仮固定ナット14は、外径寸法が底鋼板1に設けてあるボルト孔3よりも細径となる軸心方向の一端部から上記底鋼板1のボルト孔3よりも所要寸法太径となる軸心方向の他端部へ向けて外周面が徐々に拡径するテーパ部16を備えると共に、該テーパ部16の軸心方向他端側に、軸心方向に所要寸法延びる円筒状のキャップ取付部17の軸心方向一端部を一体に取り付けた構成としてある。
【0038】
上記ボルト仮固定ナット14の内周面には、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。なお、上記ボルト5として、頭部5b近傍の首下部にねじが刻設されていない領域又は不完全ねじ部が存在しているボルト5を用いる場合は、上記ボルト仮固定ナット14の内周面における軸心方向一端部側に、ねじ山のない領域を設けるようにしてもよい(図では内周面における軸心方向一端部側に、ねじ山のない領域を設けてなる形式のボルト仮固定ナット14が示してある)。
【0039】
更に、上記ボルト仮固定ナット14の軸心方向寸法は、少なくとも、内周面の雌ねじ部18の軸心方向に、後述するように上記ボルト5の仮固定を行うための十分な締付け軸力を確保するために必要とされる数のねじ山を配列できるように設定してある。又、後述するように、上記テーパ部16が底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に食い込まされた状態のボルト仮固定ナット14に対して底鋼板1の下面側からボルト5の締付けを行った状態のときに、上記ボルト仮固定ナット14の軸心方向他端部となる上記キャップ取付部17の軸心方向他端部が底鋼板1の上面より突出する寸法が、上記添接板2の板厚以下の寸法となるように設定してあるものとする。なお、図1(ハ)に示すように、後述する上記底鋼板1と添接板2の接合の際に上記ボルト5に嵌めるワッシャ7として、ボルト仮固定ナット14の他端部の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合は、上記ボルト5の締付けを行った状態で上記ボルト仮固定ナット14の軸心方向他端部が底鋼板1の上面より突出する寸法が、上記添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
【0040】
上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17は、その外径寸法が、上記テーパ部16における太径側となる軸心方向他端部の外径よりも所要寸法小さくなるようにしてある。これにより、該キャップ取付部17の外周に被せて取り付けるための防錆キャップ15の開口部15bの外径寸法を小さくすることが可能になる。よって、底鋼板1の上側に載置して接合する添接板2のボルト孔4の内径と、上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の太径側となる軸心方向他端部の外径との寸法差が小さい場合であっても、底鋼板1のボルト孔3に仮固定したボルト5を、防錆キャップ15をしたままの状態で、上記添接板2のボルト孔4に挿通させる場合に有利な構成とすることができる。
【0041】
又、図2(イ)に二点鎖線で示す如く、上記ボルト仮固定ナット14は、テーパ部16における太径側となる軸心方向他端部寄りの外周面に、軸心方向に沿う面取り部19を、周方向等間隔に6面設けてなる構成として、該各面取り部19に、ボックスレンチ等の図示しない締付け工具を掛けることで、該締付け工具を用いてボルト仮固定ナット14のボルト5へのねじ込み作業を行うことができるようにしてもよい。
【0042】
更に又、上記ボルト仮固定ナット14は、所要の弾性変形を許容できるように、たとえば、合成樹脂製、あるいは、黄銅、銅、アルミニウム等、上記底鋼板1及びボルト5に比して柔らかい金属製としてある。これにより、上記ボルト仮固定ナット14を、後述するようにボルト5に対する締付け軸力によって上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間にねじ込むことで、該ボルト仮固定ナット14を、上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に、上記テーパ部16の軸心方向一端部より、該テーパ部16の外径が上記底鋼板1のボルト孔3と等しくなる位置よりも太径側である軸心方向他端側へ所要寸法寄った部分まで楔状に食い込ませることができるようにしてある。したがって、上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16における底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に食い込まされた部分に生じる径方向の圧縮弾性変形の復元力により、該テーパ部16の外周面を、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部付近の内周面に周方向の全長亘り強く密着させることで、ボルト仮固定ナット14と、底鋼板1のボルト孔3の内周面との間を密閉できるようにしてある。なお、上記ボルト仮固定ナット14の材質を合成樹脂とする場合は、該ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の外周面と、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部付近の内周面との間に、金属同士の接触面にて傷等に起因して微小な隙間が形成される虞をより確実に防止できる効果が期待される。
【0043】
上記防錆キャップ15は、可撓性を有する樹脂製として、長手方向他端部の開口部15bの内径寸法が、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外径寸法よりもやや小さくなるようにしてある。これにより、上記防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周に被せるようにして取り付けることで、該防錆キャップ15の開口部15bの内周面と、ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周面とを密着させて、該防錆キャップ15とボルト仮固定ナット14との間を密閉できるようにしてある。
【0044】
更に、上記防錆キャップ15の胴体部15aは、上記ボルト5のねじ部5aの外径よりもやや小さい内径に設定してある。これにより、該防錆キャップ15の胴体部15aを、ボルト5のねじ部5aに先端側から被せると、該胴体部15aの内周面を、長手方向の長い範囲に亘って上記ボルト5のねじ部5aの外周に密着させることができて、この軸心方向の長い範囲に亘ってボルト5のねじ部5aの外周に密着する胴体部15aにより、上記防錆キャップ15をボルト5に装着した状態で保持するための強い保持力を発揮させることができるようにしてある。したがって、底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14を介して仮固定したボルト5に上記防錆キャップ15を装着した状態にて、上記底鋼板1の搬送時や架設時等に人や物がぶつかる等して防錆キャップ15に対して多少の外力が作用しても、該防錆キャップ15が対応するボルト5より外れて脱落する虞を未然に防止できるようにしてある。
【0045】
更に又、上記防錆キャップ15の長さ寸法は、底鋼板1のボルト孔3にボルト仮固定ナット14を介して仮固定したボルト5のねじ部5aの先端側より該防錆キャップ15の胴体部15aを被せると共に、開口部15bを上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17に被せて取り付けた状態にて、該防錆キャップ15の一端部と、上記ボルト5のねじ部5aの先端との間に指で容易につまめる程度の余裕、たとえば、数センチメートル程度の余裕が形成されるように設定してある。これにより、上記ボルト5に装着した状態の防錆キャップ15の一端部を指でつまんで容易に撤去することができるようになるため、防錆キャップ15の撤去作業の作業性を高めることができる。
【0046】
以上の構成としてある締結用ボルトの防錆装置を使用して、図13に示したと同様に2枚の重ね合わせ鋼板としての合成床版の底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5を、上記底鋼板1のボルト孔3に仮止めした状態で防錆する場合は、先ず、工場等にて、図1(イ)に示す如く、上記底鋼板1のボルト孔3に、下方よりボルト(高力ボルト)5、たとえば、トルシア型のボルト5を挿通させて配置した後、該ボルト5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット14を、テーパ部16が設けてある軸心方向の一端部側より嵌めて雌ねじ部18を螺着させる。その後、上記ボルト仮固定ナット14を、上記ボルト5に対して締め込むことにより、ボルト固定用ナット14の上記ボルト5に対する締付け軸力を利用して、該ボルト仮固定ナット14のテーパ部16を、細径側となる一端部より、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部とボルト5との隙間にねじ込んで楔状に食い込ませるようにする。この際、上記ボルト仮固定ナット14が上記底鋼板1のボルト孔3の上端部とボルト5との隙間にある程度食い込んで回転させ難くなる場合は、その後、上記トルシア型のボルト5の先端チップを、汎用のボックスレンチ等を使用して、該ボルト5の締め込み方向へ回転させて、該ボルト5を、上記ボルト仮固定ナット14に対して締め付けるようにしてもよい。なお、上記ボルト5が通常の六角ボルト(高力ボルト)である場合には、上記底鋼板1の下側からボルト5の頭部5bを締め込み方向へ回転させるようにすればよい。
【0047】
これにより、上記ボルト仮固定ナット14より上記ボルト5に強い締付け軸力を作用させることができることから、該ボルト仮固定ナット14とボルト5との間には、大きな摩擦力が発生するようになる。又、上記ボルト仮固定ナット14は、上記ボルト5に作用させる強い締付け軸力により、テーパ部16における本来上記底鋼板1のボルト孔3と同径となる位置よりも太径となる部分まで、上記ボルト孔3とボルト5との隙間に強制的に楔状に食い込まされることで、該底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間において圧縮弾性変形され、その復元力により、該ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の外周面が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部の内周面に、周方向の全周に亘り強く密着するため、該ボルト仮固定ナット14と上記底鋼板1のボルト孔3との間にも大きな摩擦力が生じる。よって、上記ボルト5は、上記底鋼板1のボルト孔3に、該ボルト孔3とボルト仮固定ナット14の間の大きな摩擦力、及び、該ボルト仮固定ナット14とボルト5の間の大きな摩擦力によって回転が防止された状態で仮固定される。
【0048】
更に、この際、上記したようにボルト仮固定ナット14のテーパ部16の外周面が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部の内周面に、周方向の全周に亘り強く密着することに伴い、該ボルト仮固定ナット14と、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面との間(図中のA個所)が密閉される。
【0049】
上記のようにして底鋼板1のボルト孔3に、ボルト5を回転を防止した状態で仮固定した後は、図1(ロ)に示す如く、上記ボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14を介してボルト5を仮固定してなる底鋼板1の下面側における上記ボルト5の頭部5bを含む所要領域、たとえば底鋼板1の下面の全面に、先行塗装となる塗装を施すようにする。20は塗膜である。これにより、上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図中のB個所)が密閉される。
【0050】
又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14を介して仮固定したボルト5のねじ部5aに、先端側より上記防錆キャップ15の胴体部15aを被せると共に、該防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17に被せて取り付ける。これにより、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット14との間(図中のC個所)が密閉される。
【0051】
以上により、上記図中のA,B,Cの3個所が密閉されることで、上記ボルト5のねじ部5aは外気との接触が遮断されるため、該ボルト5のねじ部5aの防錆が図られるようになる。
【0052】
その後、上記のようにして防錆が図られたボルト5がボルト孔3に取り付けてある底鋼板1は、施工現場へ搬入して、該底鋼板1を主桁上に径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に、図1(ハ)に示す如く(図1(ハ)では片方の底鋼板1のみを示してある)、該各底鋼板1のボルト孔3と対応する位置に上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の太径側端部となる軸心方向他端部の外径よりも所要寸法大きなボルト孔4を穿設してなる添接板2を上方から載置して、該添接板2のボルト孔4に、上記底鋼板1のボルト孔3に仮固定してあるボルト5を、それぞれ挿通させるようにする。この際、上記添接板2のボルト孔4の位置を利用して、上記ボルト孔3にボルト5が仮固定してある各底鋼板1の位置を修正するようにしてもよい。
【0053】
しかる後、上記添接板2の上方へ突出する上記各ボルト5のねじ部5aに装着されている防錆キャップ15の一端部をつまんで上方へ引き抜くことで、該防錆キャップ15の撤去を行った後、該各ボルト5のねじ部5aにワッシャ7を介してナット6を嵌めて、該ナット6をボルト5に対して締め込むことで、上記底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合する。これにより、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士が、上記添接板2を介して連結されるようになる。
【0054】
このように、本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置によれば、工場等にて、合成床版の底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5を、上記底鋼板1のボルト孔3にボルト仮固定ナット14を介して仮固定した後、該ボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面への塗装と、ボルト5のねじ部5aに装着する上記防錆キャップ15の開口部15bの上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17への取り付けにより、該ボルト5のねじ部5aを外気より遮断して速やかに防錆を図ることができる。更に、この防錆の効果を、施工現場へ搬入した上記底鋼板1の上側に上記添接板2を載置した後、上記ボルト5に対するナット6の本締めを行うために該ボルト5のねじ部5aから上記防錆キャップ15を撤去する時点まで持続させることができる。
【0055】
上記においては、防錆キャップ15の開口部15bの内径寸法を、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外径寸法よりもやや小さくなるようにして、上記防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周に被せるように取り付けることで、該防錆キャップ15の開口部15bの内周面と、ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周面とを密着させる構成としたが、図3(イ)に示す如く、上記防錆キャップ15の開口部15bの内径を、上記ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外径とをほぼ同径に設定してなる構成として、上記ボルト仮固定ナット14におけるキャップ取付部17とテーパ部16との間に形成されている段差部に予め配したOリングの如きシール材21に、該ボルト仮固定ナット14のキャップ取付部17の外周に被せる防錆キャップ15の開口部15bの先端部を密着させることで、上記防錆キャップ15の開口部15bとボルト仮固定ナット14との間を密閉するようにしてもよい。
【0056】
更に、上記においては、ボルト仮固定ナット14のテーパ部16の軸心方向他端側に円筒状のキャップ取付部17を設けて、防錆キャップ15の開口部15bを該キャップ取付部17に被せて取り付ける構成としたが、図3(ロ)に示す如く、ボルト仮固定ナット14を、上記円筒状のキャップ取付部17を省略したテーパ部16のみからなり、且つ太径側となる軸心方向他端部寄りの外周面を、図2(イ)に二点鎖線で示した如き面取り部19を具備せずに円形としてなる構成のボルト仮固定ナット14として、底鋼板1のボルト孔3へのボルト5の仮固定時に該ボルト孔3より上方へ突出する上記テーパ部16の太径側となる軸心方向他端部の外周部自体を、キャップ取付部として機能させて、該テーパ部16の軸心方向他端部の外周に、その外径寸法よりもやや小さい内径寸法となるよう設定した防錆キャップ15の開口部15bを、直接嵌めて取り付けるようにしてもよい。この場合にも、上記ボルト仮固定ナット14のテーパ部16と防錆キャップ15の開口部15bとの間を密閉することができる。
【0057】
次に、図4(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態として、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したボルト仮固定ナットの変形例を示すもので、図2(イ)(ロ)に示したボルト仮固定ナット14と同様の構成において、テーパ部16の外周面を、底鋼板1のボルト孔3よりも細径となる軸心方向一端部から上記ボルト孔3よりも太径となる軸心方向他端部まで徐々に拡径する連続したテーパ形状とする構成に代えて、該テーパ形状と同様のテーパ形状の外周面における外径が上記底鋼板1のボルト孔3の径よりもやや太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度がより大きくなるように変化させた係止用テーパ面22を設けてボルト仮固定ナット14aを構成したものである。
【0058】
更に、キャップ取付部17の軸心方向中間部に、所要深さの溝23を周方向の全長に亘り設けた構成としてある。これにより、内径寸法を上記ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17の外径寸法よりもやや小さくなるように設定してある防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17の外周に被せるときに、該防錆キャップ15の開口部15bの内周面と、ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17の外周面との間に、上記キャップ取付部17の溝23に対応する位置に形成される密着性の低い部分を挟んで軸心方向の2個所に密着性の高い部分を形成させるようにすることで、該防錆キャップ15の開口部15bとボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17との密閉性をより高めることができるようにしてある。
【0059】
その他の構成は図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0060】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット14aを用いて、図1(イ)に示したと同様の手順によって、底鋼板1のボルト孔3に下方よりボルト5を挿通させた後、該ボルト5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット14aを、テーパ部16の細径側より嵌めて雌ねじ部18を螺着させて締め込むようにすると、上記ボルト固定用ナット14aの上記ボルト5に対する締付け軸力を利用して、該ボルト仮固定ナット14aのテーパ部16が、上記実施の形態におけるボルト仮固定ナット14のテーパ部16と同様に、細径側となる軸心方向の一端部より上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間にねじ込まれるようになる。
【0061】
この際、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット14aには、外周面における外径が上記底鋼板1のボルト孔3の径よりもやや太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面22が設けてあるため、該係止用テーパ面22が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部に達すると、該ボルト孔3とボルト5との隙間に食い込む力が大きくなる。このため、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面に対するボルト仮固定ナット14aの密着性が高まるため、底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット14aの間(図4(ロ)におけるA個所)の密閉性がより高められる。又、ボルト仮固定ナット14aに対する締付け軸力によって仮固定するボルト5の回転防止作用をより強化することが可能となる。
【0062】
更に、上記底鋼板1のボルト孔3に対するボルト仮固定ナット14aの縦方向位置が定まるようになることから、該ボルト仮固定ナット14aに対するボルト5の締め込み量を一定にすることができるようになる。更には、上記底鋼板1のボルト孔3が設計寸法より多少大きくなっている場合であっても、上記ボルト仮固定ナット14aの係止用テーパ面22の部分を、上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に楔状に食い込ませることができるため、該ボルト仮固定ナット14aに対する締付け軸力によってボルト5を回転を防止した状態で確実に固定することができるようになる。
【0063】
上記のようにして底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット14aを介してボルト5の仮固定を行うことに伴い、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット14aの間(図4(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図4(ロ)におけるB個所)を密閉する。又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット14aを介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに対し先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット14aとの間(図4(ロ)におけるC個所)を密閉する。
【0064】
このように本実施の形態によっても、図4(ロ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することで、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
次いで図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの別の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0066】
すなわち、本実施の形態のボルト仮固定ナット24は、図5に示す如く、底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5を仮固定すべき対象である底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法大きい外径寸法を有する円筒部25の軸心方向一端側に、上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも細い径で軸心方向に所要寸法延びる円筒状のキャップ取付部26を一体に設けた形状として、内周面に上記ボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。具体的には、上記ボルト仮固定ナット24は、その外径を、上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも、たとえば、0.5mm程度大きい寸法に設定してある。上記底鋼板1のボルト孔3の内径が25mmである場合は、ボルト仮固定ナット の外径を25.5mm程度に設定するようにしてある。
【0067】
又、上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の外周面には、軸心方向所要間隔位置に、リング状の溝27を、該溝27の内側での直径が上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さくなるような深さ寸法で複数設けて、隣接する溝27同士の間に鍔状の突部28が形成してある。
【0068】
なお、上記ボルト仮固定ナット24の雌ねじ部18は、上記ボルト5の頭部5b近傍の首下部にねじが刻設されていない領域が存在していたり、又は、首下部に不完全なねじ山が存在している場合であっても、該ボルト5のねじ部5aに螺着させるボルト仮固定ナット24を、ボルト頭部5b寄りの軸心方向一端部が、ボルト5の頭部5bより所要寸法の隙間を隔てた位置、たとえば、2〜3mm程度離れた位置までねじ込めるように設けてあるものとする。
【0069】
上記ボルト仮固定ナット24の軸心方向寸法は、少なくとも、内周面の雌ねじ部18の軸心方向に、後述するように上記ボルト5の仮固定を行うための十分な締付け軸力を確保するために必要とされる数のねじ山を配列できるように設定してある。又、該ボルト仮固定ナット24を上記したようにボルト5のねじ部5aに頭部5bより所定寸法離れた位置までねじ込んだ状態で、該ボルト仮固定ナット24における円筒部25の反ボルト頭部5b側の軸心方向他端部が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部に配置されるようにしてあると共に、上記キャップ取付部26の軸心方向他端部のボルト頭部5bからの距離が、上記底鋼板1の板厚と添接板2の板厚の和以下の寸法となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際に上記ボルト5に嵌めるワッシャ7として、ボルト仮固定ナット24の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、ボルト仮固定ナット24を上記したようにボルト5のねじ部5aに頭部5bより所定寸法離れた位置までねじ込んだ状態で、上記キャップ取付部26の軸心方向他端部の上記ボルト頭部5bからの距離が、上記底鋼板1の板厚と添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように、ボルト仮固定ナット24の軸心方向寸法を設定すればよい。
【0070】
更に又、上記ボルト仮固定用ナット24の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2の実施の形態におけるボルト仮固定ナット14と同様の材質として、所要の弾性変形を許容できるようにしてある。これにより、上記ボルト仮固定ナット24を、上記したようにボルト5のねじ部5aにおける所定位置に螺着させた状態にて、上記底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト5と一緒にボルト仮固定ナット24を強制的に押し込むことができるようにしてあると共に、上記ボルト仮固定ナット24における円筒部25が底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に強制的に押し込まれることによって生じる径方向の圧縮弾性変形の復元力によって、該円筒部25の外周面を、上記底鋼板1のボルト孔3の内周面に密着させて、該ボルト孔3の内側に、上記ボルト仮固定ナット24を固定できるようにしてある。
【0071】
上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の軸心方向他端部と、上記キャップ取付部26との間の段差部分は、角部を面取りしてテーパ形状としてある。これにより、上記したようにボルト5のねじ部5aに取り付けた状態のボルト仮固定ナット24の円筒部25を、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込むときの作業性を高めることができるようにしてある。
【0072】
その他、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)において、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0073】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット24を用いる場合は、先ず、工場等にて、図6(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト(高力ボルト)5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット24を螺着させて、該ボルト仮固定ナット24におけるボルト頭部5b寄りの軸心方向一端部と、ボルト頭部5bとの距離が2〜3mm程度となる位置までねじ込むようにする。
【0074】
次に、図6(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット24と一緒に、ボルト頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで強制的に押し込む。これにより、底鋼板1のボルト孔3の内周面とボルト5のねじ部5aとの間で径方向に圧縮弾性変形される上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の復元力により、該円筒部25の外周面が、上記底鋼板1のボルト孔3の内周面に密着させられて、該ボルト孔3の内側に上記ボルト仮固定ナット24が固定される。よって、この底鋼板1のボルト孔3に固定されたボルト仮固定ナット24と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。
【0075】
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させて、該ボルト5を、上記底鋼板1のボルト孔3の内側に固定されている上記ボルト仮固定ナット24に対して締め付ける。
【0076】
上記ボルト仮固定ナット24を螺着したボルト5の底鋼板1のボルト孔3への押し込み作業と、その後のボルト締め付け作業の際における上記ボルト仮固定ナット24の挙動について詳述すると、先ず、ボルト仮固定ナット24がボルト5に螺着された状態で底鋼板1のボルト孔3に押し込まれるときには、図7(イ)に示す如く、内周面の雌ねじ部18が、該雌ねじ部18に螺合しているボルト5のねじ部5aによって上方へ押される一方、ボルト仮固定ナット24の円筒部25の外周面と底鋼板1のボルト孔3の内周面との間に摩擦が作用するため、上記円筒部25の外周面に設けてある各鍔状の突部28が、外周部が下方へめくれる(傾く)ように変形させられる。その後、上記ボルト仮固定ナット24に対して上記ボルト5の締め込みを行うと、図7(ロ)に示す如く、頭部5bが底鋼板1の下面に当接することで上方への変位が阻止されるボルト5のねじ部5aによって、上記ボルト仮固定ナット24の内周面の雌ねじ部18に対して下方への力が作用するため、上記ボルト仮固定ナット24の外周面の各鍔状の突部28に対しては、上記ボルト孔3への押し込み時にめくれた方向(傾いた方向)に沿って圧縮力が作用するようになる。このため、該ボルト仮固定ナット24の円筒部25の各鍔状の突部28の外周面の上記ボルト孔3の内周面に対する密着性が増して、該ボルト孔3の内側に、上記ボルト仮固定ナット24がより確実に固定されるようになる。よって、このボルト仮固定ナット24に対して締め込むことにより生じる強い締付け軸力により、上記ボルト5は、上記底鋼板1のボルト孔3に、回転が防止された状態で仮固定されるようになる。
【0077】
又、上記ボルト仮固定ナット24における円筒部25の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の上端部を含む内周面に密着することから、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット24の間(図6(ロ)におけるA個所)が密閉される。更に、上記ボルト仮固定ナット24の円筒部25の外周面には、軸心方向所要間隔位置に複数のリング状の溝27が設けてあることから、上記円筒部25の外周面と、底鋼板1のボルト孔3の内周面との間には、該ボルト孔3の上端部側から下方へ向けてラビリンスシール状の構造が形成される。したがって、このラビリンスシール状の構造によっても、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット24との間の密閉の確実性が増すようにしてある。
【0078】
なお、一般に、雄ねじと雌ねじを螺合させる場合、ねじ山とねじ溝の間には多少の遊びが設けてある。したがって、後の工程で図1(ハ)と同様に、上記底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を接合するためにボルト5に対してナット6を本締めする際に該ボルト5のねじ部5aが多少伸びても、図7(ハ)に示すように、ボルト5のねじ部5aのねじ山が、底鋼板1のボルト孔3の内側に固定されているボルト仮固定ナット24の雌ねじ部18のねじ溝の遊びの内側で変位するので、上記ボルト5の伸びを何ら拘束しない。よって、上記ボルト5とナット6による底鋼板1と添接板2の接合は、所定の締付け軸力により確実に行なわれるようにしてある。
【0079】
上記図6(ロ)で示したように底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット24を介してボルト5の仮固定を行うと共に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット24の間(図6(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図6(ハ)に示す如く、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図6(ハ)におけるB個所)を密閉する。又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット24を介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット24のキャップ取付部26に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット24との間(図6(ハ)におけるC個所)を密閉すればよい。
【0080】
このように本実施の形態のボルト仮固定ナット24によっても、図6(ハ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することができて、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。更に、ボルト5に対するボルト仮固定ナット24のねじ込み作業は、底鋼板1に対するボルト5の仮固定作業を行う現場とは異なる場所で実施できるため、このボルト5に対するボルト仮固定ナット24のねじ込み作業の作業効率を高いものとすることができる。
【0081】
又、上記ボルト仮固定ナット24をねじ込んだボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に、ボルト仮固定ナット24と一緒に押し込むことで、該ボルト5を上記ボルト仮固定ナット24を介して底鋼板1のボルト孔3に落下しないよう保持させることができる。更に、上記底鋼板1のボルト孔3に固定されたボルト仮固定ナット24に対する上記ボルト5の締め込みは、ボルト5の締め込み方向へ回転させるのみでよく、ボルト仮固定ナット24の保持を必要としない。よって、底鋼板1の上下両側での同時作業が不要になり、手間及び人手の削減化を図ることが可能となる。
【0082】
次に、図8は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示すもので、図5に示したボルト仮固定ナット24と同様の構成において、円筒部25の外周面の溝27を省略して、外周面を軸心方向にフラットな円筒面としてなるボルト仮固定ナット24aとしたものである。
【0083】
なお、上記構成としてある本実施の形態のボルト仮固定ナット24aでは、ボルト5のねじ部5aにねじ込んで取り付けた状態で、該ボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3へ強制的に押し込む際に、図7(イ)(ロ)(ハ)に示したボルト仮固定ナット24における鍔状の突部28のように撓んで変形可能な部分がない。よって、本実施の形態のボルト仮固定ナット24aは、外径の寸法を、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも大きい寸法となる範囲で、図5に示したボルト仮固定ナット24の外径寸法よりもやや小さく設定するか、あるいは、該ボルト仮固定用ナット24aの材質を、図5に示したボルト仮固定ナット24に比して弾性変形の許容量がやや大きな材質とするようにすればよい。
【0084】
その他の構成は図5に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0085】
以上の構成としてある本実施の形態のボルト仮固定ナット24aによっても、図6(イ)(ロ)(ハ)に示したと同様の手順により、底鋼板1のボルト孔3に押し込まれて固定されたボルト仮固定ナット24aを介した底鋼板1のボルト孔3へのボルト5の仮固定、及び、円筒部25の外周面を底鋼板1のボルト孔3の上端部を含む内周面に密着させることによる、該ボルト仮固定ナット24aと底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面との間の密閉を行うことができる。
【0086】
よって、本実施の形態によっても、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。又、ボルト仮固定ナット24aをシンプルな構成にできるため、該ボルト仮固定ナット24aの製造コストの低減化を図る効果が期待できる。
【0087】
次いで、図9及び図10(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0088】
すなわち、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット29は、図9に示す如く、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さい外径寸法を有する円筒部材30の内周面に、ボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。
【0089】
上記円筒部材30の外周面における軸心方向の中間部には、ボルト5のねじ部5aへのねじ込み時に該ねじ部5aの先端寄りとなる軸心方向の一方からボルト頭部5b寄りとなる軸心方向の他方へ向けて徐々に拡径して、軸心方向他端部における外径が上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法太径となるテーパ状の係止用突出部31を設ける。
【0090】
更に、該係止用突出部31の軸心方向他端側には、上記底鋼板1のボルト孔3の内径と同径か、又は、わずかに大きな外径寸法を有する円筒部32を、上記円筒部材30の軸心方向他端部側へ所要寸法延びるように取り付け、上記係止用突出部31の軸心方向他端部と、上記円筒部32との間に、わずかにテーパした段差部33を設ける。上記テーパ状の係止用突出部31の軸心方向他端寄り部分、及び、上記円筒部32の内周面と上記円筒部材30の外周面との間には、径方向に所要幅の空間部32aを設けて、上記係止用突出部31の軸心方向他端寄り部分と上記円筒部32の軸心側への弾性変形を許容できるようにしてある。
【0091】
更に又、上記円筒部材30における上記係止用突出部31よりも軸心方向一端側の部分は、キャップ取付部34として機能させるようにしてある。
【0092】
上記ボルト仮固定ナット29の軸心方向寸法は、後述するように、上記係止用突出部31によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止される該ボルト仮固定ナット29に対して底鋼板1の下面側からボルト5の締付けを行った状態のときに、上記円筒部材30の軸心方向一端部の底鋼板1上面からの突出量が、添接板2の板厚の寸法以下となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際にボルト5に嵌めるワッシャ7として、上記ボルト仮固定ナット29の円筒部材30の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、上記ボルト5の締付けを行った状態での円筒部材30の軸心方向一端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
【0093】
上記ボルト仮固定用ナット29の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図2(イ)(ロ)の実施の形態におけるボルト仮固定ナット14と同様の材質とするようにしてある。
【0094】
その他、図9及び図10(イ)(ロ)(ハ)において、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0095】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット29を用いる場合は、先ず、工場等にて、図10(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト(高力ボルト)5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット29を螺着させて、ボルト頭部5bから底鋼板1の板厚寸法分離れた位置に、上記円筒部32が配されるようになるまでねじ込むようにする。
【0096】
次に、図10(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット29と一緒に、ボルト5の頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで押し込む。これにより、上記ボルト仮固定ナット29は、上記円筒部20が底鋼板1のボルト孔3の上端部の内側に配される位置まで押し込まれ、この際、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込まれることによって一旦軸心側へ弾性変形させられた上記テーパ状の係止用突出部31が、上記底鋼板1のボルト孔3を通過した時点で、該底鋼板1の上方にて径方向外向きに開くように形状が復元されるようになる。よって、この係止用突出部31と、底鋼板1のボルト孔3の内側に配されている円筒部32との間に設けてある段差部33が、該底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されるようになることから、該ボルト仮固定ナット29と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。又、この際、上記ボルト仮固定ナット29の円筒部32の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の内周面に接することで、該ボルト仮固定ナット29の自由な回転も制限される。
【0097】
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させると、上記自由な回転が制限され且つ係止用突出部31の軸心方向他端側に設けてある段差部33によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されている上記ボルト仮固定ナット29に対してボルト5の締付けが行われる。これにより、該ボルト5は、上記ボルト仮固定ナット29に対して生じる強い締付け軸力により、上記底鋼板1のボルト孔3に、回転が防止された状態で仮固定される。又、この際、わずかにテーパ形状としてある上記段差部33が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部に多少食い込んで密着することによって、該ボルト孔3の上端部内周面と、上記ボルト仮固定ナット29との間(図10(ロ)におけるA個所)が密閉される。
【0098】
上記図10(ロ)で示したように底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット29を介してボルト5の仮固定を行うと共に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット29の間(図10(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図10(ハ)に示す如く、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図10(ハ)におけるB個所)を密閉する。又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット29を介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット29のキャップ取付部34に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット29との間(図10(ハ)におけるC個所)を密閉すればよい。
【0099】
このように本実施の形態のボルト仮固定ナット29によっても、図10(ハ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することができて、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
図11及び図12(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0101】
すなわち、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット35は、図11に示す如く、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さい外径寸法を有して、外周面をキャップ取付部37とする円筒部材36の内周面に、ボルト5のねじ部5aに螺着させるための雌ねじ部18が設けてある。
【0102】
上記円筒部材36の軸心方向の一端側には、軸心方向の中間部にて径方向外向きに屈曲する断面形状山型のリング形状を有し且つ頂部の外径寸法が底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法大きくなるようにしてある係止用突出部38を一体に取り付ける。
【0103】
更に、上記係止用突出部38の軸心方向一端側に、上記底鋼板1のボルト孔3の内径と同径か、又は、わずかに大きな外径寸法で軸心方向に所要寸法延びる円筒部39を一体に取り付けてなる構成としてある。
【0104】
上記ボルト仮固定ナット35の軸心方向寸法は、後述するように、上記係止用突出部38によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止される該ボルト仮固定ナット35に対して底鋼板1の下面側からボルト5の締付けを行った状態のときに、上記円筒部材36の軸心方向他端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚の寸法以下となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際にボルト5に嵌めるワッシャ7として、上記ボルト仮固定ナット35の円筒部材36の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、上記ボルト5の締付けを行った状態での円筒部材36の軸心方向他端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
【0105】
上記ボルト仮固定用ナット35の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図2(イ)(ロ)の実施の形態におけるボルト仮固定ナット14と同様の材質とするようにしてある。
【0106】
その他、図11及び図12(イ)(ロ)(ハ)において、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0107】
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット35を用いる場合は、先ず、工場等にて、図12(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5のねじ部5aに、上記ボルト仮固定ナット35を軸心方向の一端側から螺着させて、ボルト頭部5bから底鋼板1の板厚寸法分離れた位置に上記円筒部39が配されるようになるまでねじ込むようにする。
【0108】
次に、図12(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット35と一緒に、ボルト5の頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで押し込む。これにより、上記ボルト仮固定ナット35は、上記円筒部39が底鋼板1のボルト孔3の上端部の内側に配される位置まで押し込まれる。この際、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込まれることによって、上記断面形状山型としてある係止用突出部38が一旦軸心側へ押しつぶされるように弾性変形させられた後、上記底鋼板1のボルト孔3を通過した時点で、上記弾性変形していた係止用突出部38の形状が、該底鋼板1の上方にて径方向外向きに突出するように復元されるようになる。よって、この係止用突出部38が、底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されるようになることから、該ボルト仮固定ナット35と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。又、この際、上記ボルト仮固定ナット35の円筒部39の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の内周面に接するため、該ボルト仮固定ナット35の自由な回転も制限される。
【0109】
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させると、上記自由な回転が制限され且つ係止用突出部38によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されている上記ボルト仮固定ナット35に対してボルト5の締付けが行われて、上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に上記係止用突出部38が多少食い込まされることで固定される上記ボルト仮固定ナット35に対して生じる強い締付け軸力により、底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト5が回転が防止された状態で仮固定される。又、この際、上記係止用突出部38が、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部とボルト5との隙間に食い込むことで該ボルト孔3の上端部内周面に密着するため、該ボルト孔3 の上端部内周面と、上記ボルト仮固定ナット35との間(図12(ロ)におけるA個所)が密閉される。
【0110】
上記図12(ロ)で示したように底鋼板1のボルト孔3へボルト仮固定ナット35を介してボルト5の仮固定を行うと共に、上記底鋼板1のボルト孔3の上端部内周面とボルト仮固定ナット35の間(図12(ロ)におけるA個所)を密閉した後は、図12(ハ)に示す如く、図1(ロ)に示したと同様に、上記ボルト孔3に仮固定してなるボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、塗装を施すことで塗膜20により上記ボルト5の頭部5bと、底鋼板1の下面との間(図12(ハ)におけるB個所)を密閉する。
【0111】
又、上記底鋼板1のボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット35を介して仮固定してあるボルト5のねじ部5aに先端側より被せた防錆キャップ15の開口部15bを、上記ボルト仮固定ナット35のキャップ取付部37に被せて取り付けて、上記防錆キャップ15の開口部15bと、ボルト仮固定ナット35との間(図12(ハ)におけるC個所)を密閉すればよい。
【0112】
このように本実施の形態のボルト仮固定ナット35によっても、図12(ハ)におけるA,B,Cの3個所を密閉することができて、ボルト5のねじ部5aを外気から遮断して防錆を図ることができる。よって、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、ボルト仮固定ナット14,14a,24,24a,29,35におけるキャップ取付部17,26,34,37の径方向寸法や軸心方向寸法は、底鋼板1のボルト孔3の寸法、添接板2の板厚やボルト孔4の寸法、ボルト11のサイズ、防錆キャップ15の開口部15bの内径寸法等に応じて適宜変更してもよい。
【0114】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態、図4(イ)(ロ)の実施の形態では、ボルト仮固定ナット14,14aのキャップ取付部17の外径を、テーパ部16の太径側となる軸心方向他端部の外径と同じ寸法としてもよい。又、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態、図8の実施の形態では、ボルト仮固定ナット24,24aのキャップ取付部26の外径を、円筒部25の外径と同じ寸法としてもよい。この場合には、添接板2のボルト孔4が、上記各ボルト仮固定ナットボルト仮固定ナット14,14aのキャップ取付部17や、ボルト仮固定ナット24,24aのキャップ取付部26の外径よりも大きな内径を有するように設定しておけば、底鋼板1上に添接板2を載置してから防錆キャップ15の撤去を行うことができるようになる。なお、必要に応じて、底鋼板1上に添接板2を載置する前に防錆キャップ15の撤去を行うことは何ら制限されるものではない。
【0115】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態、図3(イ)(ロ)の各実施の形態におけるボルト仮固定ナット14のテーパ部の16軸心方向に対する傾斜角度、及び、図4(イ)(ロ)の実施の形態におけるテーパ部16と係止用テーパ面22の軸心方向に対する傾斜角度は、接合対象となる底鋼板1と添接板2の板厚や、ボルト5を予め取り付けるようにする一方の鋼板に設けるボルト孔3とボルト5との隙間の大きさに応じて適宜変更してもよい。
【0116】
図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態、及び、図8の実施の形態におけるボルト仮固定ナット24の外径寸法は、ボルト5にねじ込んだ状態で該ボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3に押し込むことで、該ボルト孔3の内側に固定できるようにしてあれば、その材質や、ボルト5を仮固定する対象となる底鋼板1のボルト孔3の径寸法等に応じて、底鋼板1のボルト孔3より径を大きく設定する割合を0.5mmから増減させてもよい。
【0117】
又、図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態、及び、図8の実施の形態におけるボルト仮固定ナット24の外周面に設ける溝27や、隣接する溝27同士の間に形成させる鍔状の突部28の幅寸法、軸心方向の配列間隔、配列数、深さ寸法等は、該ボルト仮固定ナット24のサイズ等に応じて適宜変更してもよい。
【0118】
図5乃至図7(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態のボルト仮固定ナット24のキャップ取付部17、図8の実施の形態のボルト仮固定ナット24aのキャップ取付部17、図9及び図10(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態のボルト仮固定ナット29のキャップ取付部34、及び、図11及び図12(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態のボルト仮固定ナット35のキャップ取付部37における軸心方向の中間部に、図4(イ)(ロ)に示したボルト仮固定ナット14aのキャップ取付部17に設けた溝23と同様の溝を設けるようにしてもよい。
【0119】
本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置は、2枚の鋼板をボルト5を用いて接合する際、一方の鋼板に設けたボルト孔に予めボルト5を脱落しないよう取り付けておくことが望まれる個所であれば、上記底鋼板1と添接板2以外のいかなる鋼板同士の接合個所にも適用してよい。
【0120】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の締結用ボルトの防錆方法及び装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ロ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態を、(ハ)は底鋼板に添接板を接合した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図2】図1のボルト仮固定ナットを拡大して示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は一部切断側面図である。
【図3】(イ)(ロ)はいずれも図1におけるボルト仮固定ナットの変形例を示すものである。
【図4】本発明の実施の他の形態として、ボルト仮固定ナットの別の例を示すもので、(イ)は一部切断側面図、(ロ)は(イ)のボルト仮固定ナットを用いてボルトのねじ部の防錆を行った状態を示す一部切断概略側面図である。
【図5】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図6】図5のボルト仮固定ナットを用いて行う防錆方法の手順を示すもので、(イ)はボルトにボルト仮固定ナットをねじ込んだ状態を、(ロ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ハ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図7】図6の防錆方法の実施時のボルト仮固定ナットの部分を拡大して示すもので、(イ)は、ボルトにねじ込んだボルト仮固定ナットをボルトと一緒に底鋼板のボルト孔に押し込んだ状態を、(ロ)はボルトをボルト仮固定ナットに対して締め込んだ状態を、(ハ)はボルトに添接板を固定するナットを締め込むことにより該ボルトに伸びが生じた状態をそれぞれ示す切断側面図である。
【図8】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図9】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図10】図9のボルト仮固定ナットを用いて行う防錆方法の手順を示すもので、(イ)はボルトにボルト仮固定ナットをねじ込んだ状態を、(ロ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ハ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図11】本発明の実施の更に他の形態として、ボルト仮固定ナットの更に別の例を示す一部切断概略側面図である。
【図12】図11のボルト仮固定ナットを用いて行う防錆方法の手順を示すもので、(イ)はボルトにボルト仮固定ナットをねじ込んだ状態を、(ロ)は底鋼板のボルト孔にボルト仮固定ナットを介してボルトを仮固定した状態を、(ハ)はボルト頭部を含む底鋼板の下面側に塗装を施すと共に、ボルトに防錆キャップを装着した状態をそれぞれ示す一部切断概略側面図である。
【図13】隣接する合成床版の底鋼板の突合せ端部同士の添接板を介した一般的な連結構造を示す切断側面図である。
【図14】底鋼板のボルト孔にボルトを脱落しないよう保持させるために従来提案されている手法の一例の概要を示すもので、(イ)は底鋼板のボルト孔にボルトを保持させた状態を、(ロ)は隣接する底鋼板の上側に添接板を載置する状態を、(ハ)は隣接する底鋼板を添接板を介して連結した状態をそれぞれ示す切断側面図である。
【図15】2枚の板の接合に用いられている締結後のボルトのねじ部とナットの防食を行うための手段の1つとして従来提案されている防食キャップを示す概要図である。
【符号の説明】
【0122】
1 底鋼板(一方の鋼板)
2 添接板(他方の鋼板)
3 ボルト孔
4 ボルト孔
5 ボルト
5a ねじ部
5b 頭部
6 ナット
14,14a ボルト仮固定ナット
15 防錆キャップ
15b 開口部
16 テーパ部
17 キャップ取付部
18 雌ねじ部
22 係止用テーパ面部
23 溝
24,24a ボルト仮固定ナット
25 円筒部
26 キャップ取付部
27 溝
29 ボルト仮固定ナット
30 円筒部材
31 係止用突出部
32 円筒部
34 キャップ取付部
35 ボルト仮固定ナット
36 円筒部材
37 キャップ取付部
38 係止用突出部
39 円筒部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側より挿通させたボルトを、ボルト仮固定ナットを介して仮固定すると共に、該ボルト仮固定ナットの外周面で上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部を密閉させて該ボルト孔内への止水を行うようにし、次いで、長手方向一端部を閉塞した筒状として上記ボルトのねじ部の先端と側面を被覆する防錆キャップの長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するようにし、更に、上記ボルトの頭部と上記一方の鋼板の一側面との間を塗装により密閉する締結用ボルトの防錆方法。
【請求項2】
2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させたボルトに、外径を一端側よりも他端側が大きくなるようにテーパ形状としたボルト仮固定ナットを螺着させて、該ボルト仮固定ナットの軸心方向一端部側を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする請求項1記載の締結用ボルトの防錆方法。
【請求項3】
2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする請求項1記載の締結用ボルトの防錆方法。
【請求項4】
2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に、該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、該ボルト仮固定ナットの上記係止用突出部を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする請求項1記載の締結用ボルトの防錆方法。
【請求項5】
ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させるボルトのねじ部に螺合させた状態で、上記一方の鋼板のボルト孔における他側面側端部に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナットと、長手方向一端部が閉塞した筒状として長手方向一端側の胴体部を上記ボルトのねじ部の先端と側面の周りに被覆するようにしてあり且つ長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するための防錆キャップとを有してなり、更に、上記ボルトの頭部と一方の鋼板の一側面側との間を塗装により密閉できるようにしてなる構成を有することを特徴とする締結用ボルトの防錆装置。
【請求項6】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備えてなる構成とした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項7】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を設けるようにした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項8】
テーパ部における外径が一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面部を設けるようにした請求項6又は7記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項9】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒部の軸心方向の一方の端部側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を有してなる構成として、ボルトのねじ部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に密着して固定できるようにした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項10】
ボルト仮固定ナットの円筒部の外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした請求項9記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項11】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径として軸心方向の一端部の外周面を防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部としてなる円筒部材を有し、且つ上記円筒部材の軸心方向中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備えてなる構成とした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項12】
ボルト仮固定ナットにおける係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした請求項11記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項13】
ボルト仮固定ナットにおけるキャップ取付部を円筒状とし、且つ防錆キャップの開口部の内径を、上記キャップ取付部の外径よりもやや小さくなるようにした請求項5、6、7、8、9、10、11又は12記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項14】
ボルト仮固定ナットの円筒状としてあるキャップ取付部の軸心方向中間部に、溝を設けるようにした請求項13記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項1】
ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側より挿通させたボルトを、ボルト仮固定ナットを介して仮固定すると共に、該ボルト仮固定ナットの外周面で上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部を密閉させて該ボルト孔内への止水を行うようにし、次いで、長手方向一端部を閉塞した筒状として上記ボルトのねじ部の先端と側面を被覆する防錆キャップの長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するようにし、更に、上記ボルトの頭部と上記一方の鋼板の一側面との間を塗装により密閉する締結用ボルトの防錆方法。
【請求項2】
2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させたボルトに、外径を一端側よりも他端側が大きくなるようにテーパ形状としたボルト仮固定ナットを螺着させて、該ボルト仮固定ナットの軸心方向一端部側を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする請求項1記載の締結用ボルトの防錆方法。
【請求項3】
2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする請求項1記載の締結用ボルトの防錆方法。
【請求項4】
2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着してなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側より上記ボルト仮固定ナットと一緒に、該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、該ボルト仮固定ナットの上記係止用突出部を、上記一方の鋼板のボルト孔とボルトとの隙間に押し込んで、該ボルトを仮固定させると共に、上記一方の鋼板のボルト孔の内周面における他側面側端部と、上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉させるようにする請求項1記載の締結用ボルトの防錆方法。
【請求項5】
ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に一側面側から挿通させるボルトのねじ部に螺合させた状態で、上記一方の鋼板のボルト孔における他側面側端部に密着できるようにしてあるボルト仮固定ナットと、長手方向一端部が閉塞した筒状として長手方向一端側の胴体部を上記ボルトのねじ部の先端と側面の周りに被覆するようにしてあり且つ長手方向他端側の開口部を、上記ボルト仮固定ナットに接触させて上記防錆キャップの開口部と上記ボルト仮固定ナットとの間を密閉するための防錆キャップとを有してなり、更に、上記ボルトの頭部と一方の鋼板の一側面側との間を塗装により密閉できるようにしてなる構成を有することを特徴とする締結用ボルトの防錆装置。
【請求項6】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備えてなる構成とした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項7】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径となる軸心方向一端側から、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大となる軸心方向他端側へ外径が徐々に大きくなるテーパ部を備え、該テーパ部の軸心方向他端側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を設けるようにした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項8】
テーパ部における外径が一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法太径となる部分の軸心方向他端側に、軸心方向に対する傾斜角度が大となる係止用テーパ面部を設けるようにした請求項6又は7記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項9】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒部の軸心方向の一方の端部側に、防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部を有してなる構成として、ボルトのねじ部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に密着して固定できるようにした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項10】
ボルト仮固定ナットの円筒部の外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした請求項9記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項11】
ボルト仮固定ナットを、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔よりも小径として軸心方向の一端部の外周面を防錆キャップを取り付けるためのキャップ取付部としてなる円筒部材を有し、且つ上記円筒部材の軸心方向中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備えてなる構成とした請求項5記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項12】
ボルト仮固定ナットにおける係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした請求項11記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項13】
ボルト仮固定ナットにおけるキャップ取付部を円筒状とし、且つ防錆キャップの開口部の内径を、上記キャップ取付部の外径よりもやや小さくなるようにした請求項5、6、7、8、9、10、11又は12記載の締結用ボルトの防錆装置。
【請求項14】
ボルト仮固定ナットの円筒状としてあるキャップ取付部の軸心方向中間部に、溝を設けるようにした請求項13記載の締結用ボルトの防錆装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−127724(P2009−127724A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302596(P2007−302596)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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