締結部材及び締結方法
【課題】ナットやボルトの締結部材を用いた締め付け部分に、大きな衝撃や振動が繰り返し作用したような場合でも、金属疲労による破損が防止でき、また、弛みにくく極めて安定した締付固定が可能であり、さらに、構成が簡易であって使用及び製造が容易な締結部材を提供する。
【解決手段】この締結部材1は、ボルト10とナット20とを備えて被締結体30、31を締結する締結部材であって、前記ボルト10は、少なくとも一端側に、端部に向かって拡径するテーパ部12が該ボルト10と一体もしくは別体に設けられ、、前記ナット20は、前記テーパ部12に摺動可能に圧接係止される。
【解決手段】この締結部材1は、ボルト10とナット20とを備えて被締結体30、31を締結する締結部材であって、前記ボルト10は、少なくとも一端側に、端部に向かって拡径するテーパ部12が該ボルト10と一体もしくは別体に設けられ、、前記ナット20は、前記テーパ部12に摺動可能に圧接係止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結部材及び当該締結部材を用いた締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品、部材の締付固定に使用する締結部材として、ねじ作用により被締結体を締結するナット及びボルトは種々の分野に広く使用されてきた。これらのナット及びボルトは部品、部材を締め付けて固定するためのものであるが、これらの締結部分に振動や衝撃が繰り返して作用するとナットやボルトが弛むという問題があり、ナットやボルトの弛み止めを目的として平板ワッシャやスプリングワッシャを使用することが従来から行われてきた。また、他にはこれらの締結部材のねじ山に接着剤等を施した部品も使われている。
【0003】
ナットやボルトの弛み止めを目的として座金付ナット(特許文献1、特許文献2参照)や、ナットの内周面を部分的にテーパ面に形成したもの(特許文献3参照)、あるいは、座金をナットに一体に取り付けた構成のもの(特許文献4参照)等が提案されている。また、ダブルナット方式によって締付固定する方法、例えば2つのナットをテーパ面によって嵌合させ、一方のテーパ面を軸芯に対して偏芯させ楔作用により強固に締め付ける構成としたもの(特許文献5参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−122120号公報
【特許文献2】特開平9−72325号公報
【特許文献3】特開平3−26817号公報
【特許文献4】特開9−53628号公報
【特許文献5】特開平9−42259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の座金付のナットやダブルナットでは一定の弛み止め作用を有するのであるが、ナットあるいはボルトの締め付け部分に繰り返して大きな振動や衝撃が作用するような場合には、締め付け部分が弛みやすいという課題があった。また、弛み止めさせるためナット等に加工を施す場合に、加工が複雑になるという課題もあった。また、過度に締め付けたり、増し締めを繰り返したりすることでボルトに金属疲労が蓄積し、破損してしまう事象が多くあった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ナットやボルトの締結部材を用いた締め付け部分に、大きな衝撃や振動が繰り返し作用したような場合でも、金属疲労による破損が防止でき、また、弛みにくく極めて安定した締付固定が可能であり、さらに、構成が簡易であって使用及び製造が容易な締結部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
この締結部材は、ボルトとナットとを備えて被締結体を締結する締結部材であって、前記ボルトは、少なくとも一端側に、端部に向かって拡径するテーパ部が該ボルトと一体もしくは別体に設けられ、前記ナットは、前記テーパ部に摺動可能に圧接係止されることを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強固な締め付けを必要とせずに部材を確実に締結し、弛み、脱落、疲労破壊の防止作用を備えた締結部材として好適に使用することができる。また、本発明に係る締結部材は極めて簡易な構造として提供されるため、使い勝手が良く製造が容易である等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図2】図1の締結部材のボルトの例を示す概略図である。
【図3】図1の締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図4】図1の締結部材のナットの変形例を示す概略図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図6】本発明の第三の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図7】本発明の第四の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図8】本発明の第五の実施形態に係る締結部材のボルトの例を示す概略図である。
【図9】本発明の第五の実施形態に係る締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図10】本発明の第六の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図11】図10の締結部材のテーパ部材の例を示す概略図である。
【図12】図10の締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図13】本発明の第七の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図14】図13の締結部材のテーパ部材の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を用いて詳細に説明する。
本発明の第一の実施形態に係る締結部材1の例を説明する概略図を図1に示す。同図1は、締結部材1を用いて被締結体30と被締結体31とを締結した状態を示す断面図である。ここで、締結部材1はボルト10とナット20とを備えて構成される。さらに、本実施形態に係るボルト10の概略図を図2(a)(正面図(上半断面図))、図2(b)(側面図)に示す。なお、ボルト10は断面形状が円形であって、ネジ山は設けられていない。また、本実施形態に係るナット20の概略図を図3(a)(正面断面図)、図3(b)(側面図)に示す。なお、ナット20においても、ネジ山は設けられていない。ボルト10及びナット20は、金属材料もしくは樹脂材料を用いて形成される。
【0012】
本実施形態における締結部材1は、ボルト10の両端側に、抜け止め機構2、3が設けられる。ボルト10の一端側(図1中の右端側)に設けられる抜け止め機構2は、ボルト10に設けられたナット装着部11と、当該ナット装着部11に係止されるナット20とを備えて構成される。さらに、ナット装着部11は、端部10aに向かって(すなわち図1中の端部10bから端部10aに向かう方向)、ボルト10の軸線方向と直交する断面の断面積が徐々に拡大するテーパ部12を有する。ナット20は、後述の圧接力発生手段を備えてテーパ部12に摺動可能に圧接係止される。
ここで、ナット20は、当接する被結合体(ここでは被結合体31)の貫通穴31aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きい外形寸法(ここでは外径)となる形状に形成されている。これによって、同図1に示すように、被締結体31の抜け止め作用を奏することができる。
また、以上のことから、ボルト10の長さは、全ての被締結体が所定の締結状態となった際に、ナット装着部11が被締結体(ここでは右端の被締結体31)の端部31bよりも外方(図1中において端面31bよりも右方)に配置されるように設定する必要がある。
なお、ナット20とテーパ部12とが面接触をするように公差等を考慮した上で各部材の寸法・位置を設定することが好適である。
【0013】
一方、ボルト10の他端側(図1中の左端側)に設けられる抜け止め機構3は、ボルト10のボルトヘッド部13である。本実施形態のボルトヘッド部13は、略円板状であって、被締結体30の貫通穴30aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きい外形寸法(ここでは外径)を有する。これによれば、ボルトヘッド部13が被締結体30の抜け止め作用を奏する。なお、ボルトヘッド部13は、略円板状に限定されるものではなく、四角形状、六角形状等様々な形状を採用し得る。
【0014】
このように、被締結体30に設けられる貫通穴30a及び被締結体31に設けられる貫通穴31aにボルト10を挿通し、抜け止め機構2(ここではナット装着部11及び該ナット装着部11に係止されるナット20)及び、抜け止め機構3(ここではボルトヘッド部13)によって、複数の被締結体30及び31(被締結体は2つに限定されるものではない)を両側から挟みこんで締結する作用が生じる。
したがって、本実施形態においては、ボルト10が挿通可能なように、ナット装着部11の最大外形寸法(ここではテーパ部12の最大外径)は、貫通穴30a及び31aの内形寸法(ここでは内径)よりも、小さく形成される。
【0015】
また、本実施形態においては、図1に示すように、テーパ部12は、当該テーパ部12側の被締結体(ここでは被締結体31)の端面31bよりも内方(図1中において端面31bよりも左方)にテーパ形状の始端が位置し、当該被締結体(ここでは被締結体31)の端面31bよりも外方(図1中において端面31bよりも右方)にテーパ形状の終端が位置する形状に形成されている。
これによれば、ボルト10において軸線方向に伸びる変形が発生した場合、あるいは、被締結体30、31において軸線方向に縮む変形が発生した場合にも、テーパ部12とナット20との構成による作用効果(詳細は後述)を維持することが可能となる。
【0016】
次に、本実施形態に係るナット20は、図1に示すように、ナット装着部11のテーパ部12に圧接係止される。このとき、ナット20の内面20dとテーパ部12とは相互に摺動可能に当接(圧接)している。なお、本実施形態に係るナット20においては、は、テーパ部12との当接箇所(ここでは、内面20d)が、テーパ部12のテーパ形状と同じ傾斜角度のテーパ形状に形成されている(図1、図3(a)、図3(b)参照)。なお、内面20dは、テーパ形状である場合に限定されず、例えば、図3(a)の断面図で視た場合に曲線状、軸線に平行な直線状等となるような面形状を採用することも考えられる。
【0017】
本実施形態に係るナット20の特徴的な構成として、金属材料もしくは樹脂材料からなる2以上の部材(ここでは部材20a及び部材20bの2つ)で形成されると共に、テーパ部12に摺動可能に圧接係止させる圧接力発生手段を備えている。本実施形態では、圧接力発生手段として付勢部材22を備えており、一例として、付勢部材22は、ねじりコイルバネを用いて構成される。
また、部材20aと部材20bとは、ピン23によって相互に回動自在に固定されて、それぞれが図3(b)中の矢印方向に回動自在に構成される。その際に、付勢部材22によって、部材20aと部材20bとは、中央に形成される略円形空間部20cが小さくなる方向(すなわち内径が縮径される方向)に付勢される。この付勢力によって、ナット20が、クリップのようにテーパ部12を挟み込む(軸線方向に直交する方向に挟み込む)作用、すなわち、テーパ部12に圧接係止される作用が生じる。
【0018】
なお、変形例として、図4(a)(正面断面図)、図4(b)(側面図)に示すように、部材20aと部材20bとを複数の付勢部材22(ここでは2つの引っ張りコイルバネ22a、22b)によって接続する構成等も考えられる。
【0019】
上記のように、本実施形態における締結部材1によれば、圧接力発生手段による圧接力、すなわち付勢部材22による付勢力によって、ナット20が、クリップのようにテーパ部12を挟み込む作用、すなわち、テーパ部12に圧接係止される作用が生じる。この圧接力すなわち付勢力は、ナット20の略円形空間部20cを縮径させる作用を生じさせるために、ナット20の内面20dがテーパ部12のテーパ面上を、大径部から小径部に向かう方向(図1中の右側から左側に向かう方向)に摺動させる作用を生じる。すなわち、ナット20がテーパ部12に圧接しながら、テーパ部12の大径部から小径部に向かう方向(図1中の右側から左側に向かう方向)に移動する作用を生じる。これによって、ナット20は、被締結体31を被締結体30に向かって(図1中の右側から左側に向かう方向に)押動するため、前述の抜け止め機構3(ボルトヘッド13)とで挟み込みが行われて、被締結体30と被締結体31とが締結される。
【0020】
一方、ナット20をテーパ部12に常に圧接させている圧接力すなわち付勢力によって、ナット20の略円形空間部20cを拡径させる作用は抑制されるため、ナット20の内面20dがテーパ部12のテーパ面上を、小径部から大径部に向かう方向(図1中の左側から右側に向かう方向)に摺動させる作用は抑制される。すなわち、ナット20がテーパ部12の小径部から大径部に向かう方向(図1中の左側から右側に向かう方向)に移動する作用は抑制されるため、被締結体30と被締結体31との締結における緩み止め効果が奏される。
【0021】
また、前述の通り、従来の締結部材の場合には、ナットあるいはボルトの締め付け部分に衝撃や振動が繰り返し作用するような場合には、締め付け部分が弛みやすいという課題があり、さらに締め付けが強固になれば、衝撃や振動に起因する金属疲労・破壊の課題が生じていた。
しかし、本実施形態における締結部材1によれば、通常の使用環境下で想定される衝撃・振動が加われば加わるほどに、ナット20の内面20dがテーパ部12のテーパ面上を大径部から小径部に向かう方向に摺動する作用が促進される。これは、テーパ形状を有するテーパ部12に対してナット20を常に圧接させている構成によって得られる作用効果である。この作用効果は経験的にも明らかであるが、現象として、衝撃力・振動力が、ナット20の内面20dとテーパ部12のテーパ面との接触状態を、静止摩擦係数に支配される静止状態から、動摩擦係数に支配される摺動状態への移行の要因となり、ナット20の圧接力におけるテーパ面方向の分力によって、テーパ面上を摺動する作用が生じるものと考えられる。このような作用の結果、ナット20がテーパ部12の大径部から小径部に向かう方向に移動する作用が促進されるため、ボルト10の軸線方向に生じる締結力(抜け止め機構2及び3によって、被締結体30と被締結体31とを挟みこむ力)を増加させることができ、被締結体30と被締結体31との締結をより一層安定した状態(確実に締結されて緩みが無い状態)にすることが可能となる。
このように、従来の悪影響要素であった衝撃・振動という外力によって、締結を安定化させる作用が得られることは、本発明における締結部材に特有で顕著な効果であると言える。
なお、摺動時の摩擦係数を低減するために、ナット20の内面20dとテーパ部12のテーパ面との間の当接箇所に潤滑油を施してもよい。
【0022】
続いて、本実施形態における締結部材1を用いて締結を行う締結方法について、図1を用いて説明する。
手順としては、先ず、被締結体30と被締結体31とを所定の締結位置に配置して、貫通穴30aと貫通穴31aとを一致させる。次に、貫通穴30aと貫通穴31aにボルト10を端部13aから挿通する。
【0023】
次に、ナット装着部11のテーパ部12にナット20を圧接係止させて、抜け止め機構2を所定の組み立て状態(図1参照)とする。
なお、この状態であっても、抜け止め機構2及び3によって、被締結体30と被締結体31との脱落が防止できるので、この工程をもって締結方法を終了させることも考えられる。
【0024】
次の工程として、ボルトヘッド部13を軽くハンマーのような道具で叩く等によって、ボルト10に衝撃を与える。これによって、前述の通り、ナット20がテーパ部12の大径部から小径部に向かう方向に移動する作用が促進されるため、ボルト10の軸線方向に生じる締結力(抜け止め機構2及び3によって、被締結体30と被締結体31とを挟みこむ力)を増加させることができ、被締結体30と被締結体31との締結をより一層安定した状態(確実に締結されて緩みが無い状態)にすることが可能となる。
なお、その他の方法として、振動発生手段(不図示)をボルトヘッド部13に連結もしくは当接させて、ボルト10に振動を与えてもよい。また、ボルト10に代えて(もしくは共に)ナット20に衝撃もしくは振動を与える方法も考えられる。
あるいは、ボルト10もしくはナット20への衝撃もしくは振動を、人為的に印加する方法に代えて、使用時に外部環境から受ける外力をそのまま利用する方法も考えられる。
【0025】
続いて、本発明の第二の実施形態に係る締結部材1について説明する(図5参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ナット20の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0026】
本実施形態に係るナット20は、図5(a)(正面断面図)、図5(b)(側面図)に示すように、金属材料もしくは樹脂材料を使用してC字状もしくはコ字状の一体形状の部材として形成される。また、使用材料の弾性変形領域内でテーパ12部に圧接係止可能なように、テーパ部12との当接箇所の内形寸法(ここでは略円形空間部20cの内径)が、該テーパ部における当接箇所の外形寸法(ここではテーパ部12の使用想定領域における最小外径)よりも小さく形成されていることを特徴とする。
すなわち、本実施形態に係るナット20において、テーパ部12に摺動可能に圧接係止させる圧接力発生手段は、テーパ部12への嵌合時に弾性変形領域内において変形(拡径)したナット20自身が元の形状に戻ろうとする復元力である。
なお、前述の第一の実施形態と同様に、ナット20の内面20dをテーパ形状としている。
【0027】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、本実施形態に係るナット20は、構造が簡易であるため、使用及び製造が容易であり、製造コストを低下させることが可能となる。
【0028】
続いて、本発明の第三の実施形態に係る締結部材1について説明する(図6参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0029】
本実施形態に係るボルト10は、図6の概略図に示すように、当該ボルト10の他端側(図1中の左端側)に設けられる抜け止め機構3として、Oリング14を備える構成である。本実施形態においては、ボルト10の周方向溝15にOリング14を装着した状態で、Oリング14の外形寸法(ここでは外径)が、被締結体30の貫通穴30aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きい構成とする。これによって、同図6に示すように、被締結体30の抜け止め作用を奏することができる。一例としてOリング14はゴム材料を用いて構成される。
なお、変形例としてOリング14に代えて、金属材料もしくは樹脂材料からなるCリング(不図示)を備える構成としてもよい。
【0030】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、本実施形態に係るボルト10は、前述の第一の実施形態と相違して、ボルトヘッド部を有しないため、端部10b側から貫通穴30a、31aに挿通することが可能となる。したがって、同図6に示すように、ナット装着部11の最大外形寸法(ここではテーパ部12の最大外径)を、貫通穴30a及び31aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きく形成することが可能となるため、テーパ角度の設計自由度の向上、あるいはナット装着部11の強度向上等の効果が得られる。
【0031】
続いて、本発明の第四の実施形態に係る締結部材1について説明する(図7参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10及びナット20の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0032】
本実施形態に係るボルト10は、図7の概略図に示すように、前述の第一の実施形態と比較して、テーパ部12のテーパ角度が大きい形状を有する。また、当該テーパ形状の始端が、当該テーパ部12側の被締結体(ここでは被締結体31)の端面31bよりも外方(図1中において端面31bよりも右方)に位置する形状を有する。
【0033】
また、本実施形態に係るナット20は、前述の第一の実施形態もしくは第二の実施形態と基本的な構成は同じとすることができる。ただし、相違点として、上記ボルト10に対して内面20dではなく、端面20eを当接(圧接)させて係止される構造を有する。したがって、本実施形態においては、端面20eの形状が、テーパ部12のテーパ形状と同じ傾斜角度のテーパ形状に形成されている。また、ナット20の内面20dとボルト10の外周面との間に隙間が形成される構造となる。
【0034】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、テーパ部12のテーパ角度(傾斜角度)及び対応するナット20のテーパ角度(傾斜角度)を大きくすることができるため、より大きな衝撃に対しても、ナット20の拡径を防止でき、強力な緩み止め効果を発揮することが可能となる。
【0035】
続いて、本発明の第五の実施形態に係る締結部材1について説明する(図8、図9参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10及びナット20の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0036】
本実施形態に係るボルト10は、図8の概略図に示すように、断面形状が矩形の形状を有する。ここで、図8(a)は正面図(上半断面図)、図8(b)は側面図、図8(c)は図8(a)におけるD−D線断面図である。なお、本実施形態に係るボルト10を使用する前提として、被締結体30、31における貫通穴30a、31aを、ボルト10が挿通可能な矩形状とする必要があることは言うまでもない。
【0037】
また、本実施形態に係るナット20は、図9(a)(正面断面図)、図9(b)(側面図)に示すように、前述の図4に示す実施形態と基本的な構成は同じとすることができる。ただし、相違点として、上記ボルト10に対して当接する内面20dが直線状に形成される構造となる。
【0038】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、ボルト10の断面形状が矩形状であるため、ボルト10に対して被締結体30、31が回動しない効果が得られる。したがって、締結部材1を用いた締結箇所を1箇所のみ設けるような締結構造の場合に、被締結体30と被締結体31とが相互に回動しない効果を得ることが可能である。
【0039】
続いて、本発明の第六の実施形態に係る締結部材1について説明する(図10参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、ボルト10のナット装着部11として、ボルト10の一端側(図10中の右端側)の端部に向かって断面積が徐々に拡大するテーパ部12が当該ボルト10と別体に設けられている例である。すなわち、テーパ部12は、ボルト10に固定されるテーパ部材16に形成されている。
なお、本実施形態に関しても、基本となる技術的思想は他の実施形態と共通であるため、構成上の相違点を中心に説明する。
【0040】
本実施形態に係るボルト10は、図10の概略図に示すように、ボルトヘッド部13と反対の一端側(図10中の右端側)が、ネジ山の無い円柱状に形成されている。当該一端側にテーパ部材16(図11参照)が嵌合されて固定される。
【0041】
ここで、テーパ部材16は、図11(a)(正面断面図)、図11(b)(側面図)に示すように、小径部16aおよび大径部16bの二つの内径を有する円筒状であって、小径部16a側(図11(a)中の左側)の端面にテーパ部12が形成されている。
【0042】
テーパ部材16をボルト10に固定する方法について図10を用いて説明する。先ず、ボルト10を被締結体(ここでは被締結体30、31)に挿通する。次いで、ボルト10の一端側(図10中の右端側)にテーパ部材16をテーパ部12側から嵌め込む。次いで、テーパ部材16を所定の固定位置よりも、ボルト10の他端側(図10中の左端側)に退避させた状態で、ボルト10に形成されたリング溝10cに固定用部材(ここでは、Cリング17)を嵌合させる。次いで、テーパ部材16を所定の固定位置、すなわち、テーパ部材16の大径部16bにCリング17が嵌合される位置まで移動させることによって、テーパ部材16のボルト10への固定が完了する。なお、この状態で、ナット20をテーパ部12に圧接係止する。このとき、ナット20とテーパ部材16とのなじみ等の経時変化を想定して、テーパ部材16の固定位置を寸法により算定される位置よりもボルト10の他端側(図10中の左端側)に微小量(公差として設定)移動させた位置としておくことで、ナット20とテーパ部材16(テーパ部12)との面接触を確保することができる。
【0043】
これによって、テーパ部材16がボルト10の一端側(図10中の右端側)の方向へ移動することが規制される。なお、テーパ部材16がボルト10の他端側(図10中の左端側)へ移動することに対しては、ナット20がテーパ部12に圧接係止されることで規制される。
【0044】
本実施形態では、前述の第四の実施形態と同様に、テーパ部12のテーパ角度が大きい形状を有するため、同実施形態と同様の効果が得られる。
これに加えて、第四の実施形態と比較して、テーパ部12がボルト10とは別体のテーパ部材16に形成されていることによって、テーパ部12とナット20との接触領域を広く設けることができるため、確実な圧接係止を行うことが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係るナット20の例を図12(図12(a)は正面断面図、図12(b)は側面図)に示す。このナット20は、基本的な構成は、前述の第四の実施形態と同様であるが、付勢部材の形状において相違点を有する。具体的には、本実施形態の付勢部材24は、ナット20の外周面に沿うリング状に形成され、ナット20に設けられた嵌合溝20fに嵌合されて固定される構成となっている。図中の符号20gは、ナット20をナット装着部11(テーパ部12)に嵌合させる際に用いる拡径用工具(不図示)を差し込むための孔である。すなわち、ナット20はピン25を回動の軸として、内径が拡径・縮径する。
なお、本実施形態に係るナット20は、上記の構成に限定されるものではなく、前述の第四の実施形態に係るナット20等を用いてもよい。
【0046】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、テーパ部12のテーパ角度(傾斜角度)及び対応するナット20のテーパ角度(傾斜角度)を大きくすることができ、且つ、テーパ部12とナット20との接触領域を広く設けることができるため、より大きな衝撃に対しても、ナット20の拡径を防止でき、且つ、ナット20の脱落が防止でき、強力な緩み止め効果を発揮することが可能となる。
【0047】
続いて、本発明の第七の実施形態に係る締結部材1について説明する(図13参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第六の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10及びテーパ部材16の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態に係るテーパ部材16は、図14(a)(正面断面図)、図14(b)(側面図)に示すように、前述の第六の実施形態と基本的な構成は同じとすることができる。ただし、相違点として、ボルト10に固定するための構造が異なる。具体的には、内径がボルト10の外径とほぼ同径の円筒状である、さらに、テーパ部12が形成されている端面と逆側の端面に、複数個のカシメ用舌片部16c、16c、・・・が設けられている。
【0049】
一方、本実施形態に係るボルト10は、図13の概略図に示すように、テーパ部材16のカシメ用舌片部16c、16c、・・・が、カシメ加工によって嵌め込まれる切欠溝10dが設けられている。なお、図13に示すように、切欠溝10dを複数個設けておくことによって、テーパ部材16の取り付け位置の調整が可能となる。
【0050】
ここで、テーパ部材16をボルト10に固定する方法について図13を用いて説明する。先ず、ボルト10を被締結体(ここでは被締結体30、31)に挿通する。次いで、ボルト10の一端側(図13中の右端側)にテーパ部材16をテーパ部12側から嵌め込む。次いで、テーパ部材16を所定の固定位置に合わせて、カシメ用舌片部16c、16c、・・・を切欠溝10d内に向けてカシメ加工を行うことによって、テーパ部材16のボルト10への固定が完了する。なお、この状態で、ナット20をテーパ部12に圧接係止する。このとき、ナット20とテーパ部材16とのなじみ等の経時変化を想定して、テーパ部材16の固定位置を寸法により算定される位置よりもボルト10の他端側(図13中の左端側)に微小量(公差として設定)移動させた位置としておくことで、ナット20とテーパ部材16(テーパ部12)との面接触を確保することができる。
【0051】
これによって、テーパ部材16がボルト10の一端側(図13中の右端側)の方向へ移動することが規制される。なお、テーパ部材16がボルト10の他端側(図13中の左端側)へ移動することに対しては、ナット20がテーパ部12に圧接係止されることで規制される。
【0052】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第六の実施形態の場合と同様である。これに加えて、固定用部材(例えば、Cリング17)を別途設ける必要がないため、部品点数が減ることによるコストダウン効果が得られる。
【0053】
以上、説明した通り、従来のボルト及びナット(例えば、ネジ山を有する六角ボルト及び六角ナット)や、二次加工を施してある弛み止めナット等の締結部材の場合には、衝撃や振動を受ける環境下で使用するに際して、緩みを防止するために強大な軸力を出さなければならず、その結果ネジ山・座面部分等に金属のなじみやへたり・陥没等が生じ、弛みが発生し得る課題があった。
しかし、本発明に係る締結部材によれば、従来のような強大な軸力を発生させることなく被締結体を締結して緩み防止を図ることが可能となるため、金属どうしの磨耗等を防ぐと共に、ボルトの金属疲労・破損等の防止に顕著な効果が奏される。
【0054】
また、衝撃や振動を受ける環境下で本発明に係る締結部材を使用すれば、環境要因として発生する衝撃や振動を受けることによって、被締結体の締結がより一層確実化されていくという顕著な効果が奏される。
【0055】
また、一旦、被締結体が確実に締結された状態となれば、ナットの緩み(緩む方向への摺動)が抑制されて、緩み止め効果が保持できる。
【0056】
また、本発明に係る締結部材は極めて簡易な構造とすることができるため、使い勝手が良く製造が容易である等の著効を奏する。
【0057】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 締結部材
2、3 抜け止め機構
10 ボルト
11 ナット装着部
12 テーパ部
13 ボルトヘッド部
14 Oリング
16 テーパ部材
17 Cリング
20 ナット
22、24 付勢部材
30、31 被締結体
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結部材及び当該締結部材を用いた締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品、部材の締付固定に使用する締結部材として、ねじ作用により被締結体を締結するナット及びボルトは種々の分野に広く使用されてきた。これらのナット及びボルトは部品、部材を締め付けて固定するためのものであるが、これらの締結部分に振動や衝撃が繰り返して作用するとナットやボルトが弛むという問題があり、ナットやボルトの弛み止めを目的として平板ワッシャやスプリングワッシャを使用することが従来から行われてきた。また、他にはこれらの締結部材のねじ山に接着剤等を施した部品も使われている。
【0003】
ナットやボルトの弛み止めを目的として座金付ナット(特許文献1、特許文献2参照)や、ナットの内周面を部分的にテーパ面に形成したもの(特許文献3参照)、あるいは、座金をナットに一体に取り付けた構成のもの(特許文献4参照)等が提案されている。また、ダブルナット方式によって締付固定する方法、例えば2つのナットをテーパ面によって嵌合させ、一方のテーパ面を軸芯に対して偏芯させ楔作用により強固に締め付ける構成としたもの(特許文献5参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−122120号公報
【特許文献2】特開平9−72325号公報
【特許文献3】特開平3−26817号公報
【特許文献4】特開9−53628号公報
【特許文献5】特開平9−42259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の座金付のナットやダブルナットでは一定の弛み止め作用を有するのであるが、ナットあるいはボルトの締め付け部分に繰り返して大きな振動や衝撃が作用するような場合には、締め付け部分が弛みやすいという課題があった。また、弛み止めさせるためナット等に加工を施す場合に、加工が複雑になるという課題もあった。また、過度に締め付けたり、増し締めを繰り返したりすることでボルトに金属疲労が蓄積し、破損してしまう事象が多くあった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ナットやボルトの締結部材を用いた締め付け部分に、大きな衝撃や振動が繰り返し作用したような場合でも、金属疲労による破損が防止でき、また、弛みにくく極めて安定した締付固定が可能であり、さらに、構成が簡易であって使用及び製造が容易な締結部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
この締結部材は、ボルトとナットとを備えて被締結体を締結する締結部材であって、前記ボルトは、少なくとも一端側に、端部に向かって拡径するテーパ部が該ボルトと一体もしくは別体に設けられ、前記ナットは、前記テーパ部に摺動可能に圧接係止されることを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強固な締め付けを必要とせずに部材を確実に締結し、弛み、脱落、疲労破壊の防止作用を備えた締結部材として好適に使用することができる。また、本発明に係る締結部材は極めて簡易な構造として提供されるため、使い勝手が良く製造が容易である等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図2】図1の締結部材のボルトの例を示す概略図である。
【図3】図1の締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図4】図1の締結部材のナットの変形例を示す概略図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図6】本発明の第三の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図7】本発明の第四の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図8】本発明の第五の実施形態に係る締結部材のボルトの例を示す概略図である。
【図9】本発明の第五の実施形態に係る締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図10】本発明の第六の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図11】図10の締結部材のテーパ部材の例を示す概略図である。
【図12】図10の締結部材のナットの例を示す概略図である。
【図13】本発明の第七の実施形態に係る締結部材の例を示す概略図である。
【図14】図13の締結部材のテーパ部材の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を用いて詳細に説明する。
本発明の第一の実施形態に係る締結部材1の例を説明する概略図を図1に示す。同図1は、締結部材1を用いて被締結体30と被締結体31とを締結した状態を示す断面図である。ここで、締結部材1はボルト10とナット20とを備えて構成される。さらに、本実施形態に係るボルト10の概略図を図2(a)(正面図(上半断面図))、図2(b)(側面図)に示す。なお、ボルト10は断面形状が円形であって、ネジ山は設けられていない。また、本実施形態に係るナット20の概略図を図3(a)(正面断面図)、図3(b)(側面図)に示す。なお、ナット20においても、ネジ山は設けられていない。ボルト10及びナット20は、金属材料もしくは樹脂材料を用いて形成される。
【0012】
本実施形態における締結部材1は、ボルト10の両端側に、抜け止め機構2、3が設けられる。ボルト10の一端側(図1中の右端側)に設けられる抜け止め機構2は、ボルト10に設けられたナット装着部11と、当該ナット装着部11に係止されるナット20とを備えて構成される。さらに、ナット装着部11は、端部10aに向かって(すなわち図1中の端部10bから端部10aに向かう方向)、ボルト10の軸線方向と直交する断面の断面積が徐々に拡大するテーパ部12を有する。ナット20は、後述の圧接力発生手段を備えてテーパ部12に摺動可能に圧接係止される。
ここで、ナット20は、当接する被結合体(ここでは被結合体31)の貫通穴31aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きい外形寸法(ここでは外径)となる形状に形成されている。これによって、同図1に示すように、被締結体31の抜け止め作用を奏することができる。
また、以上のことから、ボルト10の長さは、全ての被締結体が所定の締結状態となった際に、ナット装着部11が被締結体(ここでは右端の被締結体31)の端部31bよりも外方(図1中において端面31bよりも右方)に配置されるように設定する必要がある。
なお、ナット20とテーパ部12とが面接触をするように公差等を考慮した上で各部材の寸法・位置を設定することが好適である。
【0013】
一方、ボルト10の他端側(図1中の左端側)に設けられる抜け止め機構3は、ボルト10のボルトヘッド部13である。本実施形態のボルトヘッド部13は、略円板状であって、被締結体30の貫通穴30aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きい外形寸法(ここでは外径)を有する。これによれば、ボルトヘッド部13が被締結体30の抜け止め作用を奏する。なお、ボルトヘッド部13は、略円板状に限定されるものではなく、四角形状、六角形状等様々な形状を採用し得る。
【0014】
このように、被締結体30に設けられる貫通穴30a及び被締結体31に設けられる貫通穴31aにボルト10を挿通し、抜け止め機構2(ここではナット装着部11及び該ナット装着部11に係止されるナット20)及び、抜け止め機構3(ここではボルトヘッド部13)によって、複数の被締結体30及び31(被締結体は2つに限定されるものではない)を両側から挟みこんで締結する作用が生じる。
したがって、本実施形態においては、ボルト10が挿通可能なように、ナット装着部11の最大外形寸法(ここではテーパ部12の最大外径)は、貫通穴30a及び31aの内形寸法(ここでは内径)よりも、小さく形成される。
【0015】
また、本実施形態においては、図1に示すように、テーパ部12は、当該テーパ部12側の被締結体(ここでは被締結体31)の端面31bよりも内方(図1中において端面31bよりも左方)にテーパ形状の始端が位置し、当該被締結体(ここでは被締結体31)の端面31bよりも外方(図1中において端面31bよりも右方)にテーパ形状の終端が位置する形状に形成されている。
これによれば、ボルト10において軸線方向に伸びる変形が発生した場合、あるいは、被締結体30、31において軸線方向に縮む変形が発生した場合にも、テーパ部12とナット20との構成による作用効果(詳細は後述)を維持することが可能となる。
【0016】
次に、本実施形態に係るナット20は、図1に示すように、ナット装着部11のテーパ部12に圧接係止される。このとき、ナット20の内面20dとテーパ部12とは相互に摺動可能に当接(圧接)している。なお、本実施形態に係るナット20においては、は、テーパ部12との当接箇所(ここでは、内面20d)が、テーパ部12のテーパ形状と同じ傾斜角度のテーパ形状に形成されている(図1、図3(a)、図3(b)参照)。なお、内面20dは、テーパ形状である場合に限定されず、例えば、図3(a)の断面図で視た場合に曲線状、軸線に平行な直線状等となるような面形状を採用することも考えられる。
【0017】
本実施形態に係るナット20の特徴的な構成として、金属材料もしくは樹脂材料からなる2以上の部材(ここでは部材20a及び部材20bの2つ)で形成されると共に、テーパ部12に摺動可能に圧接係止させる圧接力発生手段を備えている。本実施形態では、圧接力発生手段として付勢部材22を備えており、一例として、付勢部材22は、ねじりコイルバネを用いて構成される。
また、部材20aと部材20bとは、ピン23によって相互に回動自在に固定されて、それぞれが図3(b)中の矢印方向に回動自在に構成される。その際に、付勢部材22によって、部材20aと部材20bとは、中央に形成される略円形空間部20cが小さくなる方向(すなわち内径が縮径される方向)に付勢される。この付勢力によって、ナット20が、クリップのようにテーパ部12を挟み込む(軸線方向に直交する方向に挟み込む)作用、すなわち、テーパ部12に圧接係止される作用が生じる。
【0018】
なお、変形例として、図4(a)(正面断面図)、図4(b)(側面図)に示すように、部材20aと部材20bとを複数の付勢部材22(ここでは2つの引っ張りコイルバネ22a、22b)によって接続する構成等も考えられる。
【0019】
上記のように、本実施形態における締結部材1によれば、圧接力発生手段による圧接力、すなわち付勢部材22による付勢力によって、ナット20が、クリップのようにテーパ部12を挟み込む作用、すなわち、テーパ部12に圧接係止される作用が生じる。この圧接力すなわち付勢力は、ナット20の略円形空間部20cを縮径させる作用を生じさせるために、ナット20の内面20dがテーパ部12のテーパ面上を、大径部から小径部に向かう方向(図1中の右側から左側に向かう方向)に摺動させる作用を生じる。すなわち、ナット20がテーパ部12に圧接しながら、テーパ部12の大径部から小径部に向かう方向(図1中の右側から左側に向かう方向)に移動する作用を生じる。これによって、ナット20は、被締結体31を被締結体30に向かって(図1中の右側から左側に向かう方向に)押動するため、前述の抜け止め機構3(ボルトヘッド13)とで挟み込みが行われて、被締結体30と被締結体31とが締結される。
【0020】
一方、ナット20をテーパ部12に常に圧接させている圧接力すなわち付勢力によって、ナット20の略円形空間部20cを拡径させる作用は抑制されるため、ナット20の内面20dがテーパ部12のテーパ面上を、小径部から大径部に向かう方向(図1中の左側から右側に向かう方向)に摺動させる作用は抑制される。すなわち、ナット20がテーパ部12の小径部から大径部に向かう方向(図1中の左側から右側に向かう方向)に移動する作用は抑制されるため、被締結体30と被締結体31との締結における緩み止め効果が奏される。
【0021】
また、前述の通り、従来の締結部材の場合には、ナットあるいはボルトの締め付け部分に衝撃や振動が繰り返し作用するような場合には、締め付け部分が弛みやすいという課題があり、さらに締め付けが強固になれば、衝撃や振動に起因する金属疲労・破壊の課題が生じていた。
しかし、本実施形態における締結部材1によれば、通常の使用環境下で想定される衝撃・振動が加われば加わるほどに、ナット20の内面20dがテーパ部12のテーパ面上を大径部から小径部に向かう方向に摺動する作用が促進される。これは、テーパ形状を有するテーパ部12に対してナット20を常に圧接させている構成によって得られる作用効果である。この作用効果は経験的にも明らかであるが、現象として、衝撃力・振動力が、ナット20の内面20dとテーパ部12のテーパ面との接触状態を、静止摩擦係数に支配される静止状態から、動摩擦係数に支配される摺動状態への移行の要因となり、ナット20の圧接力におけるテーパ面方向の分力によって、テーパ面上を摺動する作用が生じるものと考えられる。このような作用の結果、ナット20がテーパ部12の大径部から小径部に向かう方向に移動する作用が促進されるため、ボルト10の軸線方向に生じる締結力(抜け止め機構2及び3によって、被締結体30と被締結体31とを挟みこむ力)を増加させることができ、被締結体30と被締結体31との締結をより一層安定した状態(確実に締結されて緩みが無い状態)にすることが可能となる。
このように、従来の悪影響要素であった衝撃・振動という外力によって、締結を安定化させる作用が得られることは、本発明における締結部材に特有で顕著な効果であると言える。
なお、摺動時の摩擦係数を低減するために、ナット20の内面20dとテーパ部12のテーパ面との間の当接箇所に潤滑油を施してもよい。
【0022】
続いて、本実施形態における締結部材1を用いて締結を行う締結方法について、図1を用いて説明する。
手順としては、先ず、被締結体30と被締結体31とを所定の締結位置に配置して、貫通穴30aと貫通穴31aとを一致させる。次に、貫通穴30aと貫通穴31aにボルト10を端部13aから挿通する。
【0023】
次に、ナット装着部11のテーパ部12にナット20を圧接係止させて、抜け止め機構2を所定の組み立て状態(図1参照)とする。
なお、この状態であっても、抜け止め機構2及び3によって、被締結体30と被締結体31との脱落が防止できるので、この工程をもって締結方法を終了させることも考えられる。
【0024】
次の工程として、ボルトヘッド部13を軽くハンマーのような道具で叩く等によって、ボルト10に衝撃を与える。これによって、前述の通り、ナット20がテーパ部12の大径部から小径部に向かう方向に移動する作用が促進されるため、ボルト10の軸線方向に生じる締結力(抜け止め機構2及び3によって、被締結体30と被締結体31とを挟みこむ力)を増加させることができ、被締結体30と被締結体31との締結をより一層安定した状態(確実に締結されて緩みが無い状態)にすることが可能となる。
なお、その他の方法として、振動発生手段(不図示)をボルトヘッド部13に連結もしくは当接させて、ボルト10に振動を与えてもよい。また、ボルト10に代えて(もしくは共に)ナット20に衝撃もしくは振動を与える方法も考えられる。
あるいは、ボルト10もしくはナット20への衝撃もしくは振動を、人為的に印加する方法に代えて、使用時に外部環境から受ける外力をそのまま利用する方法も考えられる。
【0025】
続いて、本発明の第二の実施形態に係る締結部材1について説明する(図5参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ナット20の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0026】
本実施形態に係るナット20は、図5(a)(正面断面図)、図5(b)(側面図)に示すように、金属材料もしくは樹脂材料を使用してC字状もしくはコ字状の一体形状の部材として形成される。また、使用材料の弾性変形領域内でテーパ12部に圧接係止可能なように、テーパ部12との当接箇所の内形寸法(ここでは略円形空間部20cの内径)が、該テーパ部における当接箇所の外形寸法(ここではテーパ部12の使用想定領域における最小外径)よりも小さく形成されていることを特徴とする。
すなわち、本実施形態に係るナット20において、テーパ部12に摺動可能に圧接係止させる圧接力発生手段は、テーパ部12への嵌合時に弾性変形領域内において変形(拡径)したナット20自身が元の形状に戻ろうとする復元力である。
なお、前述の第一の実施形態と同様に、ナット20の内面20dをテーパ形状としている。
【0027】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、本実施形態に係るナット20は、構造が簡易であるため、使用及び製造が容易であり、製造コストを低下させることが可能となる。
【0028】
続いて、本発明の第三の実施形態に係る締結部材1について説明する(図6参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0029】
本実施形態に係るボルト10は、図6の概略図に示すように、当該ボルト10の他端側(図1中の左端側)に設けられる抜け止め機構3として、Oリング14を備える構成である。本実施形態においては、ボルト10の周方向溝15にOリング14を装着した状態で、Oリング14の外形寸法(ここでは外径)が、被締結体30の貫通穴30aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きい構成とする。これによって、同図6に示すように、被締結体30の抜け止め作用を奏することができる。一例としてOリング14はゴム材料を用いて構成される。
なお、変形例としてOリング14に代えて、金属材料もしくは樹脂材料からなるCリング(不図示)を備える構成としてもよい。
【0030】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、本実施形態に係るボルト10は、前述の第一の実施形態と相違して、ボルトヘッド部を有しないため、端部10b側から貫通穴30a、31aに挿通することが可能となる。したがって、同図6に示すように、ナット装着部11の最大外形寸法(ここではテーパ部12の最大外径)を、貫通穴30a及び31aの内形寸法(ここでは内径)よりも大きく形成することが可能となるため、テーパ角度の設計自由度の向上、あるいはナット装着部11の強度向上等の効果が得られる。
【0031】
続いて、本発明の第四の実施形態に係る締結部材1について説明する(図7参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10及びナット20の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0032】
本実施形態に係るボルト10は、図7の概略図に示すように、前述の第一の実施形態と比較して、テーパ部12のテーパ角度が大きい形状を有する。また、当該テーパ形状の始端が、当該テーパ部12側の被締結体(ここでは被締結体31)の端面31bよりも外方(図1中において端面31bよりも右方)に位置する形状を有する。
【0033】
また、本実施形態に係るナット20は、前述の第一の実施形態もしくは第二の実施形態と基本的な構成は同じとすることができる。ただし、相違点として、上記ボルト10に対して内面20dではなく、端面20eを当接(圧接)させて係止される構造を有する。したがって、本実施形態においては、端面20eの形状が、テーパ部12のテーパ形状と同じ傾斜角度のテーパ形状に形成されている。また、ナット20の内面20dとボルト10の外周面との間に隙間が形成される構造となる。
【0034】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、テーパ部12のテーパ角度(傾斜角度)及び対応するナット20のテーパ角度(傾斜角度)を大きくすることができるため、より大きな衝撃に対しても、ナット20の拡径を防止でき、強力な緩み止め効果を発揮することが可能となる。
【0035】
続いて、本発明の第五の実施形態に係る締結部材1について説明する(図8、図9参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10及びナット20の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0036】
本実施形態に係るボルト10は、図8の概略図に示すように、断面形状が矩形の形状を有する。ここで、図8(a)は正面図(上半断面図)、図8(b)は側面図、図8(c)は図8(a)におけるD−D線断面図である。なお、本実施形態に係るボルト10を使用する前提として、被締結体30、31における貫通穴30a、31aを、ボルト10が挿通可能な矩形状とする必要があることは言うまでもない。
【0037】
また、本実施形態に係るナット20は、図9(a)(正面断面図)、図9(b)(側面図)に示すように、前述の図4に示す実施形態と基本的な構成は同じとすることができる。ただし、相違点として、上記ボルト10に対して当接する内面20dが直線状に形成される構造となる。
【0038】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、ボルト10の断面形状が矩形状であるため、ボルト10に対して被締結体30、31が回動しない効果が得られる。したがって、締結部材1を用いた締結箇所を1箇所のみ設けるような締結構造の場合に、被締結体30と被締結体31とが相互に回動しない効果を得ることが可能である。
【0039】
続いて、本発明の第六の実施形態に係る締結部材1について説明する(図10参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、ボルト10のナット装着部11として、ボルト10の一端側(図10中の右端側)の端部に向かって断面積が徐々に拡大するテーパ部12が当該ボルト10と別体に設けられている例である。すなわち、テーパ部12は、ボルト10に固定されるテーパ部材16に形成されている。
なお、本実施形態に関しても、基本となる技術的思想は他の実施形態と共通であるため、構成上の相違点を中心に説明する。
【0040】
本実施形態に係るボルト10は、図10の概略図に示すように、ボルトヘッド部13と反対の一端側(図10中の右端側)が、ネジ山の無い円柱状に形成されている。当該一端側にテーパ部材16(図11参照)が嵌合されて固定される。
【0041】
ここで、テーパ部材16は、図11(a)(正面断面図)、図11(b)(側面図)に示すように、小径部16aおよび大径部16bの二つの内径を有する円筒状であって、小径部16a側(図11(a)中の左側)の端面にテーパ部12が形成されている。
【0042】
テーパ部材16をボルト10に固定する方法について図10を用いて説明する。先ず、ボルト10を被締結体(ここでは被締結体30、31)に挿通する。次いで、ボルト10の一端側(図10中の右端側)にテーパ部材16をテーパ部12側から嵌め込む。次いで、テーパ部材16を所定の固定位置よりも、ボルト10の他端側(図10中の左端側)に退避させた状態で、ボルト10に形成されたリング溝10cに固定用部材(ここでは、Cリング17)を嵌合させる。次いで、テーパ部材16を所定の固定位置、すなわち、テーパ部材16の大径部16bにCリング17が嵌合される位置まで移動させることによって、テーパ部材16のボルト10への固定が完了する。なお、この状態で、ナット20をテーパ部12に圧接係止する。このとき、ナット20とテーパ部材16とのなじみ等の経時変化を想定して、テーパ部材16の固定位置を寸法により算定される位置よりもボルト10の他端側(図10中の左端側)に微小量(公差として設定)移動させた位置としておくことで、ナット20とテーパ部材16(テーパ部12)との面接触を確保することができる。
【0043】
これによって、テーパ部材16がボルト10の一端側(図10中の右端側)の方向へ移動することが規制される。なお、テーパ部材16がボルト10の他端側(図10中の左端側)へ移動することに対しては、ナット20がテーパ部12に圧接係止されることで規制される。
【0044】
本実施形態では、前述の第四の実施形態と同様に、テーパ部12のテーパ角度が大きい形状を有するため、同実施形態と同様の効果が得られる。
これに加えて、第四の実施形態と比較して、テーパ部12がボルト10とは別体のテーパ部材16に形成されていることによって、テーパ部12とナット20との接触領域を広く設けることができるため、確実な圧接係止を行うことが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係るナット20の例を図12(図12(a)は正面断面図、図12(b)は側面図)に示す。このナット20は、基本的な構成は、前述の第四の実施形態と同様であるが、付勢部材の形状において相違点を有する。具体的には、本実施形態の付勢部材24は、ナット20の外周面に沿うリング状に形成され、ナット20に設けられた嵌合溝20fに嵌合されて固定される構成となっている。図中の符号20gは、ナット20をナット装着部11(テーパ部12)に嵌合させる際に用いる拡径用工具(不図示)を差し込むための孔である。すなわち、ナット20はピン25を回動の軸として、内径が拡径・縮径する。
なお、本実施形態に係るナット20は、上記の構成に限定されるものではなく、前述の第四の実施形態に係るナット20等を用いてもよい。
【0046】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第一の実施形態の場合と同様である。また、特に、テーパ部12のテーパ角度(傾斜角度)及び対応するナット20のテーパ角度(傾斜角度)を大きくすることができ、且つ、テーパ部12とナット20との接触領域を広く設けることができるため、より大きな衝撃に対しても、ナット20の拡径を防止でき、且つ、ナット20の脱落が防止でき、強力な緩み止め効果を発揮することが可能となる。
【0047】
続いて、本発明の第七の実施形態に係る締結部材1について説明する(図13参照)。
本実施形態に係る締結部材1は、前述の第六の実施形態と基本的な構成は同じであって、ボルト10及びテーパ部材16の構造において相違するため、当該相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態に係るテーパ部材16は、図14(a)(正面断面図)、図14(b)(側面図)に示すように、前述の第六の実施形態と基本的な構成は同じとすることができる。ただし、相違点として、ボルト10に固定するための構造が異なる。具体的には、内径がボルト10の外径とほぼ同径の円筒状である、さらに、テーパ部12が形成されている端面と逆側の端面に、複数個のカシメ用舌片部16c、16c、・・・が設けられている。
【0049】
一方、本実施形態に係るボルト10は、図13の概略図に示すように、テーパ部材16のカシメ用舌片部16c、16c、・・・が、カシメ加工によって嵌め込まれる切欠溝10dが設けられている。なお、図13に示すように、切欠溝10dを複数個設けておくことによって、テーパ部材16の取り付け位置の調整が可能となる。
【0050】
ここで、テーパ部材16をボルト10に固定する方法について図13を用いて説明する。先ず、ボルト10を被締結体(ここでは被締結体30、31)に挿通する。次いで、ボルト10の一端側(図13中の右端側)にテーパ部材16をテーパ部12側から嵌め込む。次いで、テーパ部材16を所定の固定位置に合わせて、カシメ用舌片部16c、16c、・・・を切欠溝10d内に向けてカシメ加工を行うことによって、テーパ部材16のボルト10への固定が完了する。なお、この状態で、ナット20をテーパ部12に圧接係止する。このとき、ナット20とテーパ部材16とのなじみ等の経時変化を想定して、テーパ部材16の固定位置を寸法により算定される位置よりもボルト10の他端側(図13中の左端側)に微小量(公差として設定)移動させた位置としておくことで、ナット20とテーパ部材16(テーパ部12)との面接触を確保することができる。
【0051】
これによって、テーパ部材16がボルト10の一端側(図13中の右端側)の方向へ移動することが規制される。なお、テーパ部材16がボルト10の他端側(図13中の左端側)へ移動することに対しては、ナット20がテーパ部12に圧接係止されることで規制される。
【0052】
本実施形態に係る締結部材1の効果は、基本的に、前述の第六の実施形態の場合と同様である。これに加えて、固定用部材(例えば、Cリング17)を別途設ける必要がないため、部品点数が減ることによるコストダウン効果が得られる。
【0053】
以上、説明した通り、従来のボルト及びナット(例えば、ネジ山を有する六角ボルト及び六角ナット)や、二次加工を施してある弛み止めナット等の締結部材の場合には、衝撃や振動を受ける環境下で使用するに際して、緩みを防止するために強大な軸力を出さなければならず、その結果ネジ山・座面部分等に金属のなじみやへたり・陥没等が生じ、弛みが発生し得る課題があった。
しかし、本発明に係る締結部材によれば、従来のような強大な軸力を発生させることなく被締結体を締結して緩み防止を図ることが可能となるため、金属どうしの磨耗等を防ぐと共に、ボルトの金属疲労・破損等の防止に顕著な効果が奏される。
【0054】
また、衝撃や振動を受ける環境下で本発明に係る締結部材を使用すれば、環境要因として発生する衝撃や振動を受けることによって、被締結体の締結がより一層確実化されていくという顕著な効果が奏される。
【0055】
また、一旦、被締結体が確実に締結された状態となれば、ナットの緩み(緩む方向への摺動)が抑制されて、緩み止め効果が保持できる。
【0056】
また、本発明に係る締結部材は極めて簡易な構造とすることができるため、使い勝手が良く製造が容易である等の著効を奏する。
【0057】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 締結部材
2、3 抜け止め機構
10 ボルト
11 ナット装着部
12 テーパ部
13 ボルトヘッド部
14 Oリング
16 テーパ部材
17 Cリング
20 ナット
22、24 付勢部材
30、31 被締結体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトとナットとを備えて被締結体を締結する締結部材であって、
前記ボルトは、少なくとも一端側に、端部に向かって拡径するテーパ部が該ボルトと一体もしくは別体に設けられ、
前記ナットは、前記テーパ部に摺動可能に圧接係止されること
を特徴とする締結部材。
【請求項2】
ボルトの両端側に抜け止め機構を備えて、複数の被締結体に設けられる貫通穴に該ボルトを挿通し、該抜け止め機構により該複数の被締結体を両側から挟みこんで締結する締結部材であって、
少なくとも一端側の抜け止め機構は、前記ボルトに設けられたナット装着部と、該ナット装着部に係止されるナットとを備え、
前記ナット装着部として、前記一端側の端部に向かって断面積が徐々に拡大するテーパ部が前記ボルトと一体もしくは別体に設けられ、
前記ナットは、前記テーパ部に摺動可能に圧接係止させるための圧接力発生手段を有し、当接する前記被結合体の貫通穴の内形寸法よりも大きい外形寸法となる形状に形成されていること
を特徴とする締結部材。
【請求項3】
前記ナットは、金属材料もしくは樹脂材料からなる2以上の部材で形成されると共に、前記圧接力発生手段としての付勢部材を備えること
を特徴とする請求項2記載の締結部材。
【請求項4】
前記ナットは、金属材料もしくは樹脂材料を使用して形成されるC字状もしくはコ字状部材であって、使用材料の弾性変形領域内で前記テーパ部に圧接係止可能なように、前記テーパ部との当接箇所の内形寸法が、該テーパ部における当接箇所の外形寸法よりも小さく形成されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の締結部材。
【請求項5】
前記ナットは、前記テーパ部との当接箇所が、該テーパ部のテーパ形状と同じ傾斜角度のテーパ形状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の締結部材。
【請求項6】
前記テーパ部は、該テーパ部側の前記被締結体の端面よりも内方にテーパ形状の始端が位置し、該端面よりも外方にテーパ形状の終端が位置する形状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の締結部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の締結部材を用いて複数の被締結体を締結する締結方法であって、
前記ナットを、前記テーパ部に圧接係止させた後、
前記ボルトもしくは前記ナットに衝撃もしくは振動を印加することによって、前記ナットを前記テーパ部の大径側から小径側に摺動させて、前記複数の被締結体を締結する前記ボルトの軸線方向に生じる締結力を増加させること
を特徴とする締結方法。
【請求項1】
ボルトとナットとを備えて被締結体を締結する締結部材であって、
前記ボルトは、少なくとも一端側に、端部に向かって拡径するテーパ部が該ボルトと一体もしくは別体に設けられ、
前記ナットは、前記テーパ部に摺動可能に圧接係止されること
を特徴とする締結部材。
【請求項2】
ボルトの両端側に抜け止め機構を備えて、複数の被締結体に設けられる貫通穴に該ボルトを挿通し、該抜け止め機構により該複数の被締結体を両側から挟みこんで締結する締結部材であって、
少なくとも一端側の抜け止め機構は、前記ボルトに設けられたナット装着部と、該ナット装着部に係止されるナットとを備え、
前記ナット装着部として、前記一端側の端部に向かって断面積が徐々に拡大するテーパ部が前記ボルトと一体もしくは別体に設けられ、
前記ナットは、前記テーパ部に摺動可能に圧接係止させるための圧接力発生手段を有し、当接する前記被結合体の貫通穴の内形寸法よりも大きい外形寸法となる形状に形成されていること
を特徴とする締結部材。
【請求項3】
前記ナットは、金属材料もしくは樹脂材料からなる2以上の部材で形成されると共に、前記圧接力発生手段としての付勢部材を備えること
を特徴とする請求項2記載の締結部材。
【請求項4】
前記ナットは、金属材料もしくは樹脂材料を使用して形成されるC字状もしくはコ字状部材であって、使用材料の弾性変形領域内で前記テーパ部に圧接係止可能なように、前記テーパ部との当接箇所の内形寸法が、該テーパ部における当接箇所の外形寸法よりも小さく形成されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の締結部材。
【請求項5】
前記ナットは、前記テーパ部との当接箇所が、該テーパ部のテーパ形状と同じ傾斜角度のテーパ形状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の締結部材。
【請求項6】
前記テーパ部は、該テーパ部側の前記被締結体の端面よりも内方にテーパ形状の始端が位置し、該端面よりも外方にテーパ形状の終端が位置する形状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の締結部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の締結部材を用いて複数の被締結体を締結する締結方法であって、
前記ナットを、前記テーパ部に圧接係止させた後、
前記ボルトもしくは前記ナットに衝撃もしくは振動を印加することによって、前記ナットを前記テーパ部の大径側から小径側に摺動させて、前記複数の被締結体を締結する前記ボルトの軸線方向に生じる締結力を増加させること
を特徴とする締結方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−179682(P2011−179682A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226402(P2010−226402)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(592119579)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(592119579)
【Fターム(参考)】
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