説明

縦型インダクタ

【課題】Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現するインダクタ素子を提供する。
【解決手段】Si基板201上に形成した能動素子と、膜厚が10um以上の絶縁膜203を介し、前記絶縁膜203上方に複数層の配線(204,206,208)を利用して、10GHz以上の周波数で誘電正接が0.02以下であり、前記絶縁膜203よりも透磁率が高い絶縁膜(205,207)を挟むようにして縦型インダクタを形成する構成とする。この構成によれば、低損失でかつ、低面積・高インダクタンスなインダクタを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスに形成される縦型インダクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化合物半導体とヘテロ構造トランジスタの両者の発達はマイクロ波およびミリメートル波長回路との改良された周波数性能を助長する。例えば、優れた高周波数性能は選択されたパンドギャップの半導体によりヘテロ構造のバイポーラトランジスタ(以下HBT)の各トランジスタ領域を形成することにより達成される。HBTの例では、エミッタ半導体はベース半導体よりも大きなバンドギャップを有するように選択される。このことによりエミッタがエミッタ効率を増加させるために高濃度にドープされるため、ベースを高濃度にドープしてベース抵抗を増加させる必要がなくなり、ベース長を狭くすることを可能にする。さらに、コレクタ半導体はトランジスタのブレークダウン電圧を増加するように選択されることができる。
【0003】
従来、ヘテロ構造トランジスタの利点が得られるのは主として砒化ガリウムアルミニウム/砒化ガリウム(以下AlGaAs/GaAs)半導体システムがあげられる。AlGaAs/GaAsシステムの利点は、優れた格子整合と、良好に開発された成長技術(例えば、分子ビームエピタキシおよび金属有機化合物の化学蒸気付着)と、大きなバンドギャップ差の有効性と、高い電子移動度と、半絶縁GaAs基体を含んでいる点である。
【0004】
これらの半導体システムのマイクロ波およびミリ波信号の伝導は典型的に差動のマイクロストリップ伝送線路あるいはコプレーナ伝送線路により達成される。これらの構造の誘電体は誘電損失を減少するように低い損失タンジェントを有することが好ましい。典型的に、これらの半導体システムの基体は伝送線路の誘電体を形成する。AlGaAs/GaAsシステムの基体はクロムまたは鉄のようなキャリアトラップ不純物の付加を通じて高い比抵抗で製造することができる。従って、これらの基体は低損失伝送線路の形成に使用することができる。また、この高い比抵抗と高い比誘電率を有するこの基体では、平衡と不平衡の状態にある電気信号を変換するための受動素子バラン(平衡−不平衡変換器)において優れた特性を得ることができる。
【0005】
一方近年、シリコンゲルマニウム/シリコン(以下SiGe/Si)やシリコン上のC−MOSデバイスがマイクロ波あるいはミリ波領域において利用できる可能性が示されている。Siは最も成熟した半導体技術であり、他の半導体システムよりも価格面の利点が大きい。
【0006】
しかしながら、AlGaAs/GaAsは基板自体が絶縁性を示すのとは対照的に、Siの比抵抗は純化によってしか増加させることができないので、比抵抗が限定される。従って、比抵抗の低いSi基板にまで伝送線路や受動素子の電磁界が漏れ出し、Si基板上で製造される伝送線路や受動素子は不所望な損失を発生する。主にこの理由で、廉価なSiGe/Siシステムで構成されるMMICは競争的性能を示さない。
【0007】
そこで、Si基板上の能動素子上に絶縁膜を数ミクロンから十数ミクロン堆積させ、その上に伝送線路や受動素子を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、Si−CMOSデバイスは微細化されているのに対し、受動素子の大きさは非常に大きくチップ面積が大きくなり、低コスト化のためには、素子の微細化が非常に重要な課題となっている。面積を大きくなる素子の一つにインダクタが挙げられる。インダクタは一般的にスパイラル形状に形成することで所望のインダクタンスを得る。
【特許文献1】特開2002−057292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明の縦型インダクタは、Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の縦型インダクタは、Si基板上に形成される能動素子上に第1の絶縁膜を介して形成される縦型インダクタであって、少なくとも2層以上の配線と、配線層間に設けられる第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜を貫通して前記配線を電気的に接続するコンタクトとから形成され、前記第2の絶縁膜が前記第1の絶縁膜よりも透磁率が高く、前記第2の絶縁膜が金属化合物と前記金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜の混合材料で形成されることを特徴とする。
【0010】
また、前記配線と前記コンタクトを接続することによりスプリング形状にすることを特徴とする。
また、前記第1の絶縁膜の膜厚が10um以上であることを特徴とする。
【0011】
また、前記第1の絶縁膜が樹脂であることを特徴とする。
また、前記第2の絶縁膜の誘電正接が、0.02以下であることを特徴とする。
また、前記第2の絶縁膜の膜厚が1um以上であることを特徴とする。
【0012】
また、前記第2の絶縁膜の透磁率が1以上であることを特徴とする。
また、前記第2の絶縁膜に含まれる金属化合物の粒子は平均粒径が1um以下の粒子であることを特徴とする。
【0013】
また、前記第2の絶縁膜に含まれる金属化合物は、元素としてNi、Fe、Moのいずれか1つ以上を含むことを特徴とする。
また、前記第2の絶縁膜はインダクタを形成する部分のみに選択的に形成され、前記第2の絶縁膜の周囲の前記配線層間には第3の絶縁膜を形成することを特徴とする。
【0014】
また、前記第2の絶縁膜は感光性材料であることを特徴とする。
以上により、Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、インダクタを複数層に形成された配線をコンタクトで接続して形成し、配線層間の層間膜を金属化合物と金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜との混合材料で形成し、さらに、層間膜の透磁率を下層の絶縁膜よりも高くすることにより、効率の良いインダクタが形成できるので、Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の縦型インダクタは、Si基板上に形成される高周波素子において、少なくとも2層以上の配線を利用して形成し、前記複数配線層の間の層間膜が下層の絶縁膜よりも透磁率が高く、前記層間膜が金属化合物と前記金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜との混合材料で形成されることを特徴とする。
【0017】
このように、複数層に形成された配線を必要な長さになるようにコンタクトで接続してインダクタを形成することにより効率的にインダクタンスを確保し、インダクタを形成する配線層間の層間膜を金属化合物と金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜との混合材料で形成し、さらに、層間膜の透磁率を下層の絶縁膜よりも高くすることにより平面型のインダクタよりも小さい面積で同等以上のインダクタンスを得ることができる。また、層間膜を感光性とすることで容易に所望の部位のみに層間膜を形成することが可能となり、効率の良いインダクタが形成できるので、Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現することができる。
【0018】
以下、本発明における縦型インダクタの具体的な実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1における縦型インダクタの実施の形態について、図1,図2を用いて説明する。
【0019】
図1は実施の形態1における縦型インダクタの構成を示す模式図であり、高周波デバイス中の3層構造の縦型インダクタを抜き出した3次元的構造を示す図である。図2は実施の形態1における縦型インダクタを備える高周波デバイスの構成を示す概略断面図である。
【0020】
図1,図2に示すように、Si基板201上に、SiやSiGeなどSiの特性を用いたトランジスタなどの能動素子層と、Si基板上にCMOSなど能動素子を形成する工程の後工程としてAlやCuなどと絶縁層とを積層した多層配線層202が形成される。この多層配線層202の上に絶縁膜203が形成される。この時、多層配線層202に含まれる絶縁膜の膜厚と、その上に形成される絶縁膜203の膜厚との合計が10um以上とすることが好ましい。特に絶縁膜203のみで10um以上とすることが望ましい。これは、図3に示したように受動素子や配線を形成する層とSi基板との距離が10um以下であると、比抵抗の低いSi基板にまで伝送線路や受動素子の電磁界が漏れ出し、Si基板上で製造される伝送線路や受動素子に不所望な損失が大きく発生するのを防ぐためである。絶縁膜203の上方に縦型インダクタを含む受動素子を形成する第1層目の配線層204,第2層目の配線層206,第3層目の配線層208が形成される。特に、絶縁膜205,絶縁膜207中にコンタクト211を形成し、第1層目の配線層204,第2層目の配線層206,第3層目の配線層208を電気的に接続することにより必要な長さ,インダクタンスを有するインダクタを得ることができる。ここで配線層は3層としているが2層以上であればよい。配線層208上には絶縁膜209が形成される。
【0021】
さらに、第1層目の配線層204,第2層目の配線層206,第3層目の配線層208の間の層間膜205,層間膜207が下層の絶縁膜203よりも透磁率が高く、層間膜205,層間膜207が金属化合物と金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜の混合材料で形成する。
【0022】
このように、インダクタを複数層に形成された配線をコンタクトで接続して形成し、配線層間の層間膜を金属化合物と金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜との混合材料で形成し、さらに、層間膜の透磁率を下層の絶縁膜よりも高くすることにより、縦型に螺旋状に形成した配線内部に発生する磁束を強めることができるので、配線のインダクタンス成分を強めることができる。一般的に透磁率の高い材料は誘電損失が大きく、低損失な配線の層間膜としては不向きである。逆に、誘電損失の低い樹脂膜は透磁率が低く、縦型インダクタの層間膜としては不向きである。しかし、本発明のように混合材料とすることで、誘電損失の上昇を抑えながら、透磁率を高めることができる。また、透磁率の高い材料は一般的に金属材料であるため加工が困難であり、所望の部位だけに形成することが困難である。しかし、感光性有機絶縁膜の性質から、容易に所望の位置のみに層間膜を形成することができ、インダクタンスを形成する以外の高透磁率が不要な部位には低誘電損失に特化した絶縁膜のみによって形成することが可能となる。そのため、Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現する効率の良いインダクタが形成することができる。特に、コンタクト211により第1層目の配線層204,第2層目の配線層206,第3層目の配線層208を電気的に接続して必要なインダクタンスを有するインダクタを得ることができるので、縦型インダクタのインダクタンスを飛躍的に上昇させることができる。
【0023】
また、第1層目の配線層204,第2層目の配線層206,第3層目の配線層208は、Si基板上に形成された能動素子と、その上に形成された絶縁膜203の上に形成されることを特徴とする。また、絶縁膜203としては樹脂を用いても良い。
【0024】
この時、多層配線層202に含まれる絶縁膜の膜厚、絶縁膜203との合計膜厚は厚い方が比抵抗の低いSi基板への電磁界の漏れ出しを防ぎ、伝送線路や受動素子の損失を防げるため望ましい。
【0025】
また、多層配線層202内の配線、もしくは、別途形成する配線層で、信号以外の部分をグラウンドとして、Si基板201からの影響を遮ることが望ましい。また、この場合、そのグラウンド層から受動素子を形成する配線層までの絶縁膜の膜厚が10um以上であることが望ましい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2における縦型インダクタの実施の形態について、図7を用いて説明する。
【0026】
図7は実施の形態2における縦型インダクタを備える高周波デバイスの構成を示す概略断面図である。
図7に示すように、Si基板701上に、SiやSiGeなどSiの特性を用いたトランジスタなどの能動素子層と、Si基板上にCMOSなど能動素子を形成する工程の後工程としてAlやCuなどと絶縁層とを積層した多層配線層702が形成される。この多層配線層702の上に絶縁膜703が形成される。この時、多層配線層702に含まれる絶縁膜の膜厚と、その上に形成される絶縁膜703の膜厚との合計が10um以上とすることが好ましい。特に絶縁膜203のみで10um以上とすることが望ましい。これは、図3に示したように受動素子や配線を形成する層とSi基板との距離が10um以下であると、比抵抗の低いSi基板にまで伝送線路や受動素子の電磁界が漏れ出し、Si基板上で製造される伝送線路や受動素子に不所望な損失が大きく発生するのを防ぐためである。絶縁膜703の上方に縦型インダクタを含む受動素子を形成する第1層目の配線層704,第2層目の配線層706,第3層目の配線層708が形成される。特に、絶縁膜710中にコンタクト711を形成し、第1層目の配線層704,第2層目の配線層706,第3層目の配線層708を電気的に接続することにより必要なインダクタンスを有するインダクタを得ることができる。ここで配線層は3層としているが2層以上であればよい。配線層708上には絶縁膜709が形成される。
【0027】
さらに、第1層目の配線層704,第2層目の配線層706,第3層目の配線層708の間の絶縁膜710が下層の絶縁膜703よりも透磁率が高く、絶縁膜710が金属化合物と金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜との混合材料で形成する。
【0028】
このように、複数層に形成された配線をコンタクトで接続してインダクタを形成し、インダクタを形成する配線層間の層間膜を金属化合物と金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜との混合材料で形成し、さらに、層間膜の透磁率を下層の絶縁膜よりも高くすることにより平面型のインダクタよりも小さい面積で同等以上のインダクタンスを得ることができる。また、層間膜を感光性とすることで容易に所望の部位のみに層間膜を形成することが可能となり、効率の良いインダクタが形成できるので、Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現することができる。特に、コンタクト711により第1層目の配線層704,第2層目の配線層706,第3層目の配線層708を電気的に接続して必要なインダクタンスを有するインダクタを得ることができるので、縦型インダクタのインダクタンスを飛躍的に上昇させることができる。
【0029】
また、第1層目の配線層704,第2層目の配線層706,第3層目の配線層708は、Si基板上に形成された能動素子と、その上方に形成された絶縁膜703の上に形成されることを特徴とする。また、絶縁膜703として樹脂を用いることも可能である。
【0030】
この時、絶縁膜の誘電率が高いほど比抵抗の低いSi基板にまで伝送線路や受動素子の電磁界が漏れ出し、Si基板上で製造される伝送線路や受動素子に不所望な損失が大きく発生するのを防ぐため、多層配線層702に含まれる絶縁膜の膜厚、絶縁膜703との合計膜厚は厚い方が望ましい。
【0031】
また、多層配線層702内の配線、もしくは、別途形成する配線層で、信号以外の部分をグラウンドとして、Si基板701からの影響を遮ることが望ましい。また、この場合、そのグラウンド層から受動素子を形成する配線層までの絶縁膜の膜厚が10um以上であることが望ましい。
【0032】
次に、実施の形態2における縦型インダクタの構成例について、図4〜図6を用いて説明する。
図4は従来のスパイラル型のインダクタの模式図、図5は実施の形態2におけるスプリング状のインダクタの模式図である。図6は層間膜の透磁率とリアクタンスとの関係を示す図であり、横軸に透磁率を縦軸にインダクタンスを示し、スパイラル型インダクタとスプリング型インダクタとを比較した図である。
【0033】
図4に示すように、従来からあるスパイラル型のインダクタは、内径が約100umとなるように太さ10umの任意の1層を1.5巻して渦巻状に形成したインダクタである。また、図5に示すように、実施の形態2におけるスプリング状の縦型インダクタは膜厚が5umの層間膜を挟んで上下2層に形成された太さが10umの配線間をコンタクトで電気的に接続して形成した3巻のスプリング状のインダクタである。
【0034】
このような形状が異なるインダクタにおいても、それぞれのインダクタの投影占有面積(上面図(不図示)において占める面積)が等しい時は、スプリング型のインダクタの方がスパイラル型のインダクタに比べて、層間膜の透磁率によるリアクタンスを向上させる効果が大きくなる。例えば、図6に示す、周波数26GHzにおいて層間膜の透磁率を変化させたときのインダクタンスの変化をシミュレーションした結果からわかるように、平面スパイラル型のインダクタでは、平面上なのでもともと磁束のはみ出しは少なく効果が小さいために層間膜の透磁率を変化させてもインダクタンスはほとんど変化しないのに対し、スプリング状の縦型インダクタは、内部のみ透磁率が高い材料とすることにより磁束を効率的に強めることができるために透磁率1以上で飛躍的にインダクタンスが上昇する。スプリング状の縦型インダクタであれば、その他の「周波数」「層間膜の膜厚」「インダクタの太さ」であっても、透磁率1以上で飛躍的にインダクタンスが上昇する。ただし、周波数については共振周波数を除いた周波数とする。
【0035】
以上のような実施の形態2における縦型インダクタの効果を構成例を示して説明する。
図8は実施の形態2の縦型インダクタにおける動作周波数とインダクタンスの関係を示す図であり、従来のスパイラル型インダクタと実施の形態2におけるスプリング型インダクタとの比較を行っている。
【0036】
ここでは、スパイラル型インダクタとして、絶縁膜703の膜厚が15umで、高さ5umの配線層704を主に用い、高さ5umの配線層706をブリッジ層として、内径が約100umとなるような太さ10umの1.5巻のスパイラル型インダクタを用いる。一方、スプリング型の縦型インダクタとして、配線層704と配線層706とその間に形成される膜厚が5umで透磁率が10である層間膜705を用い、投影占有面積(上面図(不図示)において占める面積)がスパイラル型インダクタの約1/3となる太さが10umで8巻のスプリング型の縦型インダクタを用いる。そして、これらのインダクタに対して、周波数を0〜60GHzに変化させたときのインダクタンスの変化をシミュレーションで計算した結果を図8に示す。図8に示すように、スプリング型の縦型インダクタは投影占有面積がスパイラル型インダクタの1/3にも関わらず、約2倍のインダクタンスを得られる。これらのインダクタはいずれも2層の配線層からのみ形成することができ、プロセス工程も同じであることから、本発明が非常に有効であることがわかる。
【0037】
以上の各実施の形態において、これらの絶縁膜、特に絶縁膜203,絶縁膜703の誘電正接は10GHz以上で0.02以下であることが望ましい。
本発明の縦型インダクタが設けられたデバイスは準ミリ波帯以上の高周波数帯域、特にミリ波帯をターゲットとしており、10GHz以上の周波数帯においても、絶縁膜の誘電正接が小さいことが求められ、許容される誘電正接の値は0.02以下であるためである。一般的に金属化合物は誘電正接が高く、その周囲に伝送線路を形成すると、伝送線路の信号の損失が非常に大きくなる。しかし、本発明では、縦型インダクタの層間膜を金属化合物と有機絶縁膜との混合材料で形成しており、この有機絶縁膜を誘電正接の低い材料とすることで、誘電正接が0.02以下の低誘電正接となる混合材料を作成することが可能となる。
【0038】
また、厚膜層間膜によりSi基板と絶縁膜上の受動素子や伝送線路とを隔てることにより、受動素子や伝送線路からSi基板へ電磁界が漏れ出すのを防ぐことができる。このような膜厚と損失との関係について図3を用いて説明する。
【0039】
図3は絶縁膜の膜厚と損失の関係を示す図であり、26GHzで誘電正接が0.009の樹脂を用いた時の例である。
図3に示すように、このような条件において、絶縁膜の膜厚を10um以上とすることで、伝送線路の損失を大幅に抑えることができることがわかる。
【0040】
また、絶縁膜203,絶縁膜703として例えば、PSG、NSG、BPSG、SiN、SiO、SiONなどを用いることができる。
また、絶縁膜205,絶縁膜207,絶縁膜710として例えば、ポリイミド、BCB(Benzo−Cyclo−Butene)、PBO(Poly−Benz−Oxazole)、SU−8、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂などを用いることもできる。
【0041】
絶縁膜205,絶縁膜207,絶縁膜710を貫通するコンタクトは、絶縁膜205,絶縁膜207,絶縁膜710形成の前に絶縁膜とほぼ同様の高さのメッキポストを形成した後に、絶縁膜205,絶縁膜207,絶縁膜710を塗布、もしくは堆積によって形成し、その後、メッキポスト上部を絶縁膜205,絶縁膜207,絶縁膜710が感光性材料の場合はリソグラフィ法によって、非感光性の場合はエッチング法によって頭だしを実施して形成する。または、絶縁膜205,絶縁膜207,絶縁膜710をリソグラフィ法もしくはエッチング法にてコンタクトビアを形成した後、無電解メッキ法にてコンタクトを埋包して形成する。
【0042】
また、受動素子を形成する配線層(204,206,208,704,706,708)の間の層間膜205,層間膜207あるいは絶縁膜710は、平面型のインダクタよりも小さい面積で同等以上のインダクタンスを得ることができるため、他の絶縁膜よりも透磁率の高いことが望ましい。
【0043】
また、透磁率が高い層間膜710は、誘電損失の上昇を抑えながら、透磁率を高めることができるため、透磁率が高い金属化合物と誘電損失が低い有機絶縁膜の混合材料を用いる。また、有機絶縁膜として例えば、ポリイミド、BCB(Benzo−Cyclo−Butene)、PBO(Poly−Benz−Oxazole)、SU−8、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂を用いることが望ましい。
【0044】
また、受動素子を形成する配線層704,706,708の間の層間膜705,707、絶縁膜710や配線層204,206,208の間の絶縁膜205,207は、膜厚が1um以上あることが望ましい。好ましくは5um以上あることが望ましい。
【0045】
Si−CMOSトランジスタの配線工程で縦型インダクタの配線を形成する場合、その層間膜は厚くても数百nmオーダーであるため、十分なインダクタンスを得ることができない。しかし、Si基板上に10um以上の絶縁膜を持つようなデバイスは、Si−CMOSデバイスの通常工程後の別工程として絶縁膜を形成することが多く、従来のSi−CMOSデバイスの製造工程のルールに縛られない設計が可能となる。そこで、縦型インダクタを構成する配線間の層間膜の膜厚も1um以上にすることが可能であり、比較的大きなインダクタンスを得ることができる。
【0046】
さらに、前記樹脂の膜厚が10um以上であることが望ましい。
また、本発明に係る縦型インダクタでは、前記透磁率の高い層間膜の透磁率は1以上であることが望ましい。
【0047】
また、本発明に係る縦型インダクタでは、前記透磁率の高い層間膜に含まれる金属化合物は平均粒径が1um以下の粒子であることが望ましい。
このようにすることで、インダクタを形成する配線の層間膜厚よりも金属化合物の平均粒径が小さくなり、1um以上の層間膜中において、透磁率が大きいナノコンポジット材料としての特性を発現することができる。ここで平均粒径とはコールターカウンター法によって算出した値とする。
【0048】
また、本発明に係る縦型インダクタでは、前記透磁率の高い層間膜に含まれる金属化合物は、元素としてNi、Fe、Moのいずれか1つ以上を含むことが望ましい。
これらの元素をもつ化合物やフェライト系材料は高い透磁率をもつことが知られており、それらをナノコンポジット材料として用いることが望ましい。
【0049】
また、本発明に係る縦型インダクタでは、図7に例示したように、前記透磁率の高い層間膜はインダクタを形成する部分のみに選択的に形成されていることが望ましい。このようにすると、縦型インダクタを形成する以外の部位は、低誘電損失に特化した材料などを使用することができ、伝送線路やバランなどのその他受動素子を形成する上で、高透磁率ナノコンポジット膜が、信号の損失の原因となることを防ぐことができる。
【0050】
また、本発明に係る縦型インダクタは、前記透磁率の高い層間膜は感光性材料であることが望ましく、リソグラフィ法によって形成されることが望ましい。
金属化合物を含むようなナノコンポジット膜はエッチング加工が困難であるが、このようにすることにより、インダクタを形成する部分のみに選択的に透磁率の高い層間膜を容易に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、Si基板上に、低損失でかつ、小面積で高インダクタンスを実現することができ、デバイスに形成される縦型インダクタ等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態1における縦型インダクタの構成を示す模式図
【図2】実施の形態1における縦型インダクタを備える高周波デバイスの構成を示す概略断面図
【図3】Si絶縁膜の膜厚と伝送線路の損失の関係図
【図4】従来のスパイラル型のインダクタの模式図
【図5】実施の形態2におけるスプリング状のインダクタの模式図
【図6】層間膜の透磁率とリアクタンスとの関係を示す図
【図7】実施の形態2における縦型インダクタを備える高周波デバイスの構成を示す概略断面図
【図8】実施の形態2の縦型インダクタにおける動作周波数とインダクタンスの関係を示す図
【符号の説明】
【0053】
201,701 Si基板
202,702 多層配線層
203,703 絶縁膜
204,206,208,704,706,708 配線層
209,709 絶縁膜
705,707 層間膜
205,207,710 絶縁膜
211 コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si基板上に形成される能動素子上に第1の絶縁膜を介して形成される縦型インダクタであって、
少なくとも2層以上の配線と、
配線層間に設けられる第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜を貫通して前記配線を電気的に接続するコンタクトと
から形成され、
前記第2の絶縁膜が前記第1の絶縁膜よりも透磁率が高く、
前記第2の絶縁膜が金属化合物と前記金属化合物よりも透磁率の低い有機絶縁膜の混合材料で形成されることを特徴とする縦型インダクタ。
【請求項2】
前記配線と前記コンタクトを接続することによりスプリング形状にすることを特徴とする請求項1記載の縦型インダクタ。
【請求項3】
前記第1の絶縁膜の膜厚が10um以上であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項4】
前記第1の絶縁膜が樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜の誘電正接が、0.02以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項6】
前記第2の絶縁膜の膜厚が1um以上であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項7】
前記第2の絶縁膜の透磁率が1以上であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項8】
前記第2の絶縁膜に含まれる金属化合物の粒子は平均粒径が1um以下の粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項9】
前記第2の絶縁膜に含まれる金属化合物は、元素としてNi、Fe、Moのいずれか1つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項10】
前記第2の絶縁膜はインダクタを形成する部分のみに選択的に形成され、前記第2の絶縁膜の周囲の前記配線層間には第3の絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の縦型インダクタ。
【請求項11】
前記第2の絶縁膜は感光性材料であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の縦型インダクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−129936(P2010−129936A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305802(P2008−305802)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】