説明

縦型吸込みポンプ

【課題】 水面の浮遊物を排出すると同時に、水底の沈殿物や堆積物も同時に効率良く排出可能ならしめる縦型吸込みポンプの提供。
【解決手段】 電動機軸の先端に羽根車を取付け、羽根車の回転により水を上方へ汲み上げる遠心ポンプに於いて、電動機軸を垂直方向で且つ羽根車は円板の上下面の双方へ一定高さ寸法のブレードを取付けた構成となし、該円板を介しその上下箇所からの水汲み上げを可能になさしめる。このさい、上記円板の上下面のブレードの高さを、適宜異ならしめたり、上記電動機軸は、その垂直な一定長さ範囲を筒状のケーシングで取囲み、該ケーシング上端縁で表面水が吸い込まれる構成になされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縦型吸込みポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
油など水より比重の軽い液が水面に浮上している場合や、池などで発生するアオコなど、水面上に浮いているものをポンプで回収する装置の幾つかは存在するが、これらのものは何れも多くの水を一緒に吸い込むため、後工程の処理に経費が嵩む問題がある。
【特許文献1】特開2003−184778
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は水面の浮遊物を排出すると同時に、水底の沈殿物や堆積物も同時に排出可能ならしめんとするものであり、そのさい水面の浮遊物を効率良く回収する吸い込み力の確保と、水位の変動により上方から空気を吸い込んだ状態でもエアーロックを起こすことなく連続的な排出を可能なさしめる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、電動機軸の先端に羽根車を取付け、羽根車の回転により水を上方へ汲み上げる遠心ポンプに於いて、電動機軸を垂直方向で且つ羽根車は円板の上下面の双方へ一定高さ寸法のブレードを取付けた構成となし、該円板を介しその上下方向から同時の水汲み上げを可能になしたことを特徴とする。このさい、上記円板下面のブレードの高さは、円板上面のブレード高さと同等若しくはそれ以下になしたり、上記電動機軸は、その垂直な一定長さ範囲を筒状のケーシングで取囲み、且つ該ケーシング上端縁で表面水が吸い込まれる構成になしたりするのであり、また上記ケーシング上端縁をV字状に切り欠き、該切り欠きの総面積をポンプ吸込み口断面積より小さくなしたりする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は上記の如き構成のため、上水面の水位が低下し、上方の吸い込み口が大気に露出して空気を吸い込む状態になっても、羽根車の円板下部にはブレードが取付けてあり、しかもこれが水没しているためポンプ作用を発揮し、吸い込まれた空気を一緒に排出することができるものとなる。
一方、筒状のケーシング上縁に穿設したV字状の切欠は、ある程度の水位変動を予想して定めた寸法で切り欠いており、上端から切り欠きの底以上にある水位下では、ポンプの吸い込み力によりケーシング内部は外部の水位より下がり、滝のように吸い込まれることから、表層水だけを有効的に排出できるものとなる。他方、円板裏面のブレードは、上面側のブレード高さと同等若しくは適宜異ならしめ、また円板を挟んで上下夫々れの吸込口の口径を変えるなどして処理物の種類や大きさ形状などに順応した効率の良い汲上げ作用を遂行できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は本発明に係る縦型吸込みポンプ1の縦断面図、図2は該ポンプに使用される羽根車の斜視図である。2は上記ポンプの上部ブラケットであって、内部にステーター及びローターからなる電動モータ3を収蔵させ、該モータ3の回転軸4は上部ブラケット2の軸受部2aから外方へ一定の長さ寸法に突出するものとなされている。なお、5は上記軸受2aから一体的に前記回転軸4の突出方向へ沿って平行並設される水の汲上げ通路匣である。
【0007】
6は上記の突出させた回転軸4の先端に取付けた羽根車であって、本発明では図2に示す如き構成である。即ち、円板7の上下面の双方に対し一定高さ寸法tの弧状ブレード8a,8b,・・・,9a,9b,・・・などが形成されており、軸先端に対しナット10を使用して止着される。
【0008】
11は上記汲上げ通路匣5を上部ブラケット2の他端側から支持してなる支柱、12は上下ブラケット2の下方中央に穿設してなるポンプ吸込口であって、上記羽根車6は該吸込口12を挿通した回転軸4の先端に取付けるものとなしてある。13は下部ブラケットであって上記上部ブラケットの下面側へ嵌着され、このさい上記羽根車6を下方から被蔽するようになして汲上げ通路匣5に連通されるようになされており、且つ該下部ブラケット13の回転軸4先端と相当する部分には上記吸込口12と同等大きさの下部吸込口14が穿設されるものとなされている。
【0009】
15は上記回転軸4及び汲上げ通路匣5の外周を被覆する如く設けしめてなる筒状ケーシングであって、本実施例ではその上端部の周縁には多数のV字状切欠16が設けたものとなされている。該切欠16の大きさ寸法は任意に設計することができるが、後述する作用効果の関係からその切り込み深さhは、ケーシング丈長Lの凡そ1/3〜1/5になされる。
なお、図面で17は電動機フレーム、18は端子箱、19は冷却ファン、20はファンカバーである。
【0010】
本発明は上記の如き構成であって、例えばクーラント液タンク内でその循環液処理用ポンプとして使用する場合、タンク内の上水面にはアルミなど金属の切削粉を含んだ泡が発生しており、且つタンク底部にはスラジが堆積したものとなっている。図面で21はタンク内の上水面を示しており、今電動モータ3の運転で羽根車6が回動されると、タンク内の水が汲み上げられて、該水位21は下降するものとなるが、通常のタンク内には継続的にクーラント液が流入されるものとなっているため、この水位変化は実質的には或る一定の範囲内で行われるものとなる。
【0011】
ところで、本発明の羽根車6は円板7の上下面に対し夫々れブレード8,9を備えており、従って電動モータ3の運転と共にこれらブレード8,9はその上下方向からの水を夫々れ吸込口12,14を介し、同時に吸込んで汲み上げ通路匣5へ向けて押し上げるようになすのであり、水位21表面の浮遊物やタンク底部の堆積物を併せて効率良く汲み上げせしめるものとなる。
本発明では上記運転中、水位21が異常に低下して例え上方の吸込み口12が大気に露出し、空気を吸込む状態になったとしても下部のブレード9が水没しているため、これがポンプ作用を発揮して吸い込まれる空気も併せて排出することを可能にするのである。
【0012】
本発明で筒状ケーシング15上縁に設けるV字状切欠16の切込み深さhを深くし過ぎると、水位上面よりその下部周辺の水を多く吸い込むようになるため、浮遊物の回収率を低下させる問題があり、従ってこの点を本発明者らは数多の実験結果からケーシング15の丈長Lの凡そ1/3〜1/5の範囲にすることにした。
ところで、上記V字状切欠16はその上方開放部に比べ下方部は次第に狭小化されるものになるが、両者の開放比率は前者の1に対し後者を0.3〜0.5の範囲で選定することが好ましい。
【0013】
而して、これらV字状切欠16の上方開放部pから表面水が筒状ケーシング15内へ流入するさい、その総面積Sをポンプ吸込口12の面積S’より小さくなるようにすると良く、この理由は小さくすることによりV字状切欠16箇所に於ける吸い込み抵抗が増加し、筒状ケーシング15外周の水面と該ケーシング内の水面に水位差が発生し、滝の如き流れ込み状態が得られるので回収効率の向上に寄与すること大ならしめるものとなる。これに対し、逆のS>S’の場合は水位差が生じないため、ポンプの吸い込み力だけでは水面の浮遊物の回収が効果的に行われなくなるのである。なお、上記したV字状切欠16のV字の深さを深くし過ぎると、V溝の下周辺の水を多く吸い込むため、本発明の目的の1つである上水面の浮遊物の回収効率が悪くなるのであり、従ってこのことを回避するためには余り深くし過ぎないようにする必要がある。
【0014】
一方、本発明の羽根車6で円板7の上下面に取付けるブレード8,9は、その高さ寸法tを適宜異ならしめるのであり、即ち通常は同一高さ寸法のものとなされるが、今若し下面側9の高さ寸法を大ならしめるようにすると、同等になされるものに比べ、底面側からの堆積物が多量に吸込口14へ導かれるようになる。他方、上方からの吸込口12と下方からの吸込口14は、一般的に同一口径寸法のものに設計するが、両者の口径寸法を適宜異ならしめることにより、即ち例えば下方の吸込口14を上方の吸込口12より小ならしめたりすると、上記ブレードの高さ寸法tを適宜異ならしめることと同様にその吸込量が異なるのであり、これらのことは浮遊物や堆積物の種類、形状その他の点などを考慮して好適な条件にマッチさせる選択設計を可能にする上で寄与する。このさい、ブレードの高さ寸法tは凡そ5mm〜25mmの範囲で設計される。
【0015】
上記実施例ではクーラントポンプの使用について説明したが、本発明は水面に浮遊するものを排出すると同時に、水底に沈殿、堆積したものも併せて排出する排出ポンプとして使用する。ところで、界面活性剤が含まれ水溶液を循環して使用する装置にあっては、連続的な攪拌作用で水面に泡が多量に発生するため、泡の回収用としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るポンプの縦断面図である。
【図2】本発明で使用する羽根車の斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ポンプ
2 上部ブラケット
3 電動モータ
4 回転軸
5 汲上げ通路匣
6 羽根車
7 円板
8a,8b ブレード
9a,9b ブレード
12 吸込口
13 下部ブラケット
14 吸込口
15 筒状ケーシング
16 V字状切欠
21 上水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機軸の先端に羽根車を取付け、羽根車の回転により水を上方へ汲み上げる遠心ポンプに於いて、電動機軸を垂直方向で且つ羽根車は円板の上下面の双方へ一定高さ寸法のブレードを取付けた構成となし、該円板を介しその上下箇所からの水汲み上げを可能になしたことを特徴とする縦型吸込みポンプ。
【請求項2】
上記円板の上下面のブレードの高さを、適宜異ならしめたことを特徴とする請求項1記載の縦型吸込みポンプ。
【請求項3】
上記電動機軸は、その垂直な一定長さ範囲を筒状のケーシングで取囲み、該ケーシング上端縁で表面水が吸い込まれる構成になしたことを特徴とする請求項1又は2記載の縦型吸込みポンプ。
【請求項4】
上記筒状のケーシング上端縁をV字状に切り欠いたことを特徴とする請求項3記載の縦型吸込みポンプ。
【請求項5】
上記切り欠きの総面積をポンプ吸込み口断面積より小さくなしたことを特徴とする請求項4記載の縦型吸込みポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−115816(P2008−115816A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301799(P2006−301799)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000133939)株式会社テラルキョクトウ (48)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000179328)リックス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】