縫目のほつれ止め方法、縫目のほつれ止め装置及び縫目構造
【課題】二重環縫いの縫目に特有のほつれの発生を、針糸及びルーパ糸の付与張力の影響を受けずに有効に防止することができる新たなほつれ止め方法、ほつれ止め装置、及びこれらの方法及び装置によって形成される縫目構造を提供する。
【解決手段】針落ち位置A,Aの後側に糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を配し、該糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を揺動して、夫々の先端のフック部3b及び糸受け部6aをルーパ1に接近させ、フック部3bによりルーパ1が捉えた針糸ループを保持し、側に位置する針糸ループを、針落ち位置Aよりもルーパ1の進出端側に位置させ、糸受け部6aによりルーパ1から縫製生地に延びるルーパ糸を針落ち位置Aよりも前側に位置させて少なくとも1針分の縫製動作を行わせる。
【解決手段】針落ち位置A,Aの後側に糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を配し、該糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を揺動して、夫々の先端のフック部3b及び糸受け部6aをルーパ1に接近させ、フック部3bによりルーパ1が捉えた針糸ループを保持し、側に位置する針糸ループを、針落ち位置Aよりもルーパ1の進出端側に位置させ、糸受け部6aによりルーパ1から縫製生地に延びるルーパ糸を針落ち位置Aよりも前側に位置させて少なくとも1針分の縫製動作を行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等のミシンを使用し、針糸とルーパ糸とにより形成する二重環縫いの縫目において、縫い終わり部分の縫目に発生するほつれを防止するほつれ止め方法、この方法を実施するためのほつれ止め装置、及びこれらの方法及び装置を使用して形成される縫目構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二重環縫いミシンは、針糸を保持して上昇及び下降する一又は複数本の針と、ルーパ糸を保持し、前記針の上下動経路に略直交する方向に進退動作するルーパとを備えている。針は、針板上の縫製生地を貫いて下降し、該縫製生地から抜け出すように上昇する。ルーパは、針の上昇及び下降に連動して針板の下で進退動作し、上昇する針が保持する針糸のループ(針糸ループ)を進出時に捉える。針は、縫製生地を貫いて下降し、退入するルーパが保持するルーパ糸を捉える。
【0003】
二重環縫いミシンは、以上の動作を繰り返して縫製生地に縫目を形成する。図21は、2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面側から見た平面図である。本図に示すように二重環縫いの縫目は、縫製生地の裏面に針糸20,20が形成する針糸ループに、他糸ルーピングの形態をなしてルーパ糸10が絡むことにより形成される。図21Aに示す一般的な二重環縫いの縫目構造においては、縫い終わり時に切断されたルーパ糸10の端部が、図中に矢符により示すように引っ張られた場合、該ルーパ糸10は、針糸20,20が形成する最終の針糸ループ20a,20bから抜け出し、この抜け出しが縫い始め側に向けて逐次移行する結果、縫目全体にほつれが発生するという問題を有している。
【0004】
このようなほつれは、3本以上の針糸とルーパ糸とで形成する二重環縫いの縫目においても同様に発生し、また、偏平縫いミシン等、二重環縫いの縫目を形成するミシン全般においても同様に発生する。
【0005】
二重環縫いの縫目に特有の以上のほつれの発生を防止することを目的とし、従来、種々のほつれ止め方法、及びこの方法を実施するための装置が提案されている。そのうちの一つとして本願出願人によるほつれ止め方法及び装置がある(例えば、特許文献1参照)。このほつれ止め方法は、ルーパの進出により針糸ループに通されたルーパ糸を前記ルーパの進出端部にて保持するルーパ糸掛けフックを設け、このルーパ糸掛けフックを、通常縫製の終了時に針が上昇し、ルーパが進出した状態で動作させて、該ルーパ糸掛けフックにルーパ糸を保持させた状態で一針分の縫製動作を行わせ、その後に針糸及びルーパ糸を切断する方法である。
【0006】
この方法によれば、ルーパ糸掛けフックが保持しているルーパ糸10は、一針分の縫製の間に針糸20,20が形成する最終の針糸ループ20a,20bに他糸レーシングの形態で絡み、図21Bに示すような縫目が形成される。このように絡んだルーパ糸10は、その端部が矢符にて示す如く引っ張られたとしても最終の針糸ループ20a,20bから抜け出し得ないことから、縫目のほつれを発生段階にて防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2879399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、特許第2879399号公報に提案されたほつれ止め方法は、二重環縫いの縫目に特有のほつれの発生を有効に防止し得る優れた方法である。しかしながら、図21Bに示すように形成された縫目においても、ルーパ糸10の切断端部は、図中に白抜矢符に示す向きの力が加わった場合、最終の針糸ループ20a,20bから抜け出す虞れがあり、この抜け出しが生じた後は、一般的な二重環縫いの縫目におけると同様に、ルーパ糸10の抜けが、縫い始め側に向けて順次進行し、縫目全体にほつれが発生することとなる。
【0009】
この問題は、例えば、薄い縫製生地、柔らかい縫製生地の縫製において、良好な仕上がり状態を得るべく、針糸20,20及びルーパ糸10の付与張力を小さくした場合に、針糸ループ20a,20bによるルーパ糸10の締め付けが不足することから発生しやすい。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、二重環縫いの縫目に特有のほつれの発生を、針糸及びルーパ糸の付与張力の影響を受けずに有効に防止することができる新たなほつれ止め方法、及びこの方法の実施に使用するほつれ止め装置を提供し、更に、これらの方法及び装置によって形成される縫目構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、針糸を保持して上下動する針が針板の下に形成する針糸ループを、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進出するルーパにより捉え、該ルーパが保持するルーパ糸により前記針糸ループを他糸ルーピングして形成される二重環縫いの縫目のほつれを防止する方法において、通常縫製の終了時に前記ルーパを進出状態とし、該ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に夫々位置させ、その後、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸ループ及びルーパ糸の位置を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせ、前記針が保持する針糸により前記ルーパが保持する針糸ループを自糸ルーピングすることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設されており、夫々の針が形成する複数の針糸ループのうち、前記ルーパの進出端側に位置する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に位置させることを特徴とする。
【0013】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記少なくとも一針分の縫製動作を、前記縫製生地の送りを停止、又は前記縫製生地の送りピッチを通常縫製時よりも小さくして実施することを特徴とする。
【0014】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記縫製生地の送りの停止、又は通常縫製時よりも小さい送りピッチでの前記縫製生地の送りを、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から実施することを特徴とする。
【0015】
更に本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記ルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に位置させた後、該ルーパ糸の前記ルーパへの送り出しを抑制することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、針糸を保持して上下動する針と、ルーパ糸を保持して、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進退動作するルーパとを備え、前記針が前記針板の下に形成する針糸ループを前記ルーパの進出によって捉え、該ルーパが保持するルーパ糸で前記針糸ループを他糸ルーピングして前記縫製生地に二重環縫いの縫目を形成するミシンに装備してあり、前記縫目のほつれを防止するほつれ止め装置において、前記ルーパに対して接近及び離反動作し、接近動作時に前記ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側で保持する針糸保持機構と、前記ルーパに対して接近及び離反動作し、該ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側で保持するルーパ糸保持機構と、前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構の接離動作を、前記針及びルーパの動作、並びに前記縫製生地の送り動作と関連して制御する制御部とを備え、該制御部は、前記ルーパを進出位置とし、前記針を上昇位置として通常縫製を終えた後に、前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構を接近動作させて前記針糸ループ及びルーパ糸を夫々保持させ、前記針の下降及び上昇を、前記ルーパの進退動作、及び前記縫製生地の送り動作と合わせて実行する少なくとも一針分の縫製動作を、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構による保持状態を維持して行わせることを特徴とする。
【0017】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設してある場合、前記針糸保持機構は、前記ルーパの進出端側に位置する針が形成する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを保持することを特徴とする。
【0018】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記制御部が、前記少なくとも一針分の縫製動作を前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくして実行することを特徴とする。
【0019】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記制御部が、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から、前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくすることを特徴とする。
【0020】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記針糸保持機構が、前記針板下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフック及びストッパレバーと、前記糸掛けフックを、前記ルーパから離れた待機位置から、前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、前記ストッパレバーを、前記糸掛けフックの揺動域から外れた退避位置から、前記糸掛けフックの一部に当接する拘束位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを前記ストッパレバーとの当接により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする。
【0021】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記針糸保持機構が、前記針板の下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフックと、該糸掛けフックよりも前記針板から離れた位置に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する揺動レバー及びストッパレバーと、前記糸掛けフックと前記揺動レバーとを連結する連結ロッドと、前記連結ロッドを介して前記糸掛けフックに作用し、該糸掛けフックを前記ルーパから離れた待機位置から前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、前記ストッパレバーを、前記揺動レバーの一部に係合する係合位置から、該係合位置から外れた退避位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを、前記ストッパレバーと前記揺動レバーの係合により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする。
【0022】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記ルーパ糸保持機構が、前記糸掛けフックに取付けてあり、該糸掛けフックと共に前記糸掛け位置、保持位置及び待機位置との間で移動するルーパ糸保持体を備え、該ルーパ糸保持体は、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記待機位置から前記糸掛け位置への移動の間に捉え、捉えたループ糸を前記保持位置において前記針の下降位置よりも前側で保持することを特徴とする。
【0023】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記ルーパ糸保持体が、前記糸掛けフックに対する位置調節可能に取付けてあることを特徴とする。
【0024】
更に本発明に係る縫目構造は、前述した縫目のほつれ止め方法又は縫目のほつれ止め装置によって縫製生地に形成される二重環縫いの縫目構造において、前記縫製生地の裏面に形成された針糸ループのうち少なくとも縫製方向の終端に位置する針糸ループが前記縫製生地を貫く針糸により自糸ルーピングされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、ルーパを進出状態として通常縫製を終了した後、該ルーパが捉えた針糸ループを、針の下降位置よりもルーパの進出端側に位置させ、またルーパから縫製生地に延びるルーパ糸を針の下降位置よりも前側に位置させた状態で縫製動作を実施し、下降する針が保持する針糸で先の針糸ループを自糸ルーピングするから、ルーパ糸を自糸ルーピング部分で押えて該ルーパ糸の抜けを防止することができ、縫目のほつれを発生段階にて確実に防止することが可能となる。針糸の自糸ルーピングによるルーパ糸の押えは、針糸及びルーパ糸の付与張力が小さい場合でも良好になされ、ほつれを発生を防止することができる。
【0026】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、針糸ループが複数である場合、少なくともルーパの進出端側に位置する針糸ループを前述したように位置させるから、自糸ルーピングを確実に実施し、縫目のほつれを一層確実に防止することができる。
【0027】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法においては、ルーパ糸を前述したように位置させた後、ルーパへのルーパ糸の送り出しを抑制するから、ルーパ糸の位置を確実に保ち、ルーパ糸の存在に影響されずに自糸ルーピングを形成し、ほつれの発生を確実に防止することができると共に、ルーパ糸の糸締まりが強化され、ルーパ糸自体の抜けも防止することができ、糸切り後のルーパ糸の長さが短く、縫目の見栄えが良くなり、縫目品質を高めることができる。
【0028】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、ほつれ止めのための前述した縫製動作を、縫製生地の送りを停止するか、又は縫製生地の送りピッチを小さくして行わせるから、針糸による自糸ルーピング部分が密となり、ルーパ糸の押えが強化され、縫い終わり部分でのルーパ糸の抜けを起点とするほつれの発生を一層確実に防止することができる。
【0029】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、縫製生地の送りの停止、又は縫製生地の送りピッチの縮小を、ほつれ止めのための前述した縫製動作の前の段階から実施するから、針糸による自糸ルーピング部分が、該部分よりも前位置の他糸ルーピング部分を含めて密となり、ルーパ糸の押えが強化され、縫い終わり部分でのルーパ糸の抜けを起点とするほつれの発生を一層確実に防止することができる。
【0030】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、針板と平行な面内で揺動する糸掛けフック及びストッパレバーにより針糸を保持し、前述したように位置させるから、針糸の位置決めを、針板下の限られた空間内での配置が可能な簡素な構成にて実現することができる。また糸掛けフック及びストッパレバーは、夫々が2位置間にて揺動すればよく、各別のアクチュエータ、及びこれらを制御する制御部の構成も簡素化され、縫目のほつれの発生を、簡素な構成で防止することが可能となる。
【0031】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、針板と平行な面内で揺動する糸掛けフック、揺動レバー及びストッパレバーの関連動作により針糸を保持し、前述したように位置させるから、針糸の位置決めを、針板下の限られた空間内での配置が可能な簡素な構成にて実現することができる。また揺動レバー及びストッパレバーは、針板から離れた位置に配してあり、糸掛けフックを針板の近傍に配置すればよいことから、筒形ベッドを備えるミシン等、針板の下部空間が更に限られるミシンへの適用も可能となる。
【0032】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、糸掛けフックに取付けてあり、該糸掛けフックと共に動作するルーパ糸保持体によりルーパ糸を保持し、前述したように位置させるから、針糸と共にルーパ糸を簡素な構成にて位置決めすることができる。
【0033】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、ルーパ糸保持体を糸掛けフックに対して位置調節することにより、針糸とルーパ糸との相対位置を適正に設定することができ、自糸ルーピングを確実に行わせ、縫目のほつれを防止することができる。
【0034】
また本発明に係る縫目構造においては、縫製方向の終端部に針糸による自糸ルーピング部分を備えるから、ルーパ糸の抜けを防止し、この抜けを起点とする縫目のほつれを確実に防止することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する平面図である。
【図2】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する平面図である。
【図3】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する平面図である。
【図4】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置を備えるミシンの制御系のブロック図である。
【図5】制御部の動作内容を示すタイムチャートである。
【図6】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図7】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図8】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図9】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図10】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図11】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図12】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図13】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する上方からの平面図である。
【図14】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する下方からの平面図である。
【図15】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図16】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図17】本発明により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。
【図18】図17に示す縫目構造のほつれ止め効果の説明図である。
【図19】制御部の動作内容の他の実施の形態を示すタイムチャートである。
【図20】図19の動作により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。
【図21】縫い終わり部分の一般的な縫目及び従来のほつれ止め装置により得られる縫い終わり部分の縫目構造を縫製生地の裏面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1〜図3は、実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の構成を略示する上方からの平面図である。図示の装置は、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等、二重環縫いの縫目を形成するミシンに装備されるものである。以下の説明では、図1中に矢符により示した「左,右」及び「前,後」を使用する。ここで、「前」は、縫製作業者に近い側、「後」は、縫製作業者から離れた側であり、「左,右」は、前方から見た場合の「左,右」である。
【0037】
ミシンは、1つのルーパ1と2本の針2,2(図6〜図12参照)とを備えている。針2,2は、針棒駆動機構の動作により上昇及び下降する。図1〜図3中のA,Aは、針2,2の下降位置(針落ち位置)を示している。針落ち位置A,Aは、針板Pの略中央に、左右方向に間隔を隔てて設定してある。
【0038】
図示のルーパ1は、ルーパ駆動機構の動作により針2,2(針落ち位置A,A)の並び方向に進退動作(左進動作及び右退動作)する。図1には、左進位置にあるルーパ1を実線により示し、右退位置にあるルーパ1を破線により示してある。左進位置にあるルーパ1の先端は、針2,2の針落ち位置A,Aを超えて左方向に延出し、右退位置にあるルーパ1の先端は、針2,2の針落ち位置A,Aの右方に離れて位置する。なお、ルーパ1の進退動作の方向は、針2の上下動経路に略直交する方向であればよく、以下に示す本発明の構成は、ルーパの動作方向の如何に拘らずに実現することができる。
【0039】
ミシンは、針2,2の上昇及び下降動作と、ルーパ1の左進及び右退動作とにより、針板P上の縫製生地(図示を省略する)を縫製する。縫製生地は、ミシンベッドの内部に設けた送り機構の動作により、針板P上で後方向(図1中に白抜矢符により示す方向)に送り移動する。送り機構は、送り歯を備えている。送り歯は、針板P上に突出して後方向に移動し、針板P下に没入して前方向に復帰移動する動作を繰り返す。縫製生地は、送り歯が針板P上に突出している間にのみ移動力を加えられ、間欠的に送り移動する。
【0040】
針棒駆動機構、ルーパ駆動機構及び送り機構は、ミシン主軸からの伝動により互いに同期して動作する公知の機構である。針2,2は、各別に針糸20,20(図6〜図12参照)を保持し、送り移動を停止している間に縫製生地を貫通し、針板P下に達した後に上昇して縫製生地の上方に抜け出す。ルーパ1は、ルーパ糸10(図6〜図12参照)を保持し、針2,2の上昇開始に合わせて左進し、針板P下に形成される針糸20,20のループを捉える。縫製生地は、針2,2の抜け出し後に送り移動する。針2,2は、送り移動を終えた縫製生地を貫いて下降し、右退中のルーパ1が保持するルーパ糸10を捉える。ミシンは、以上の動作を繰り返し、縫製生地に二重環縫いの縫目を形成する。
【0041】
以上の如きミシンが備える縫目のほつれ止め装置は、糸掛けフック3及びストッパレバー4を備えている。糸掛けフック3は、針板Pの後側のミシンベッドの上部に、上下方向の支軸30を中心として揺動可能に支持してある。ストッパレバー4は、支軸30の後方に配した上下方向の支軸40を中心として揺動可能に支持してある。
【0042】
糸掛けフック3は、円弧形の湾曲形状を有し、支軸30から後方に延びるアーム3aの端部に左前方に折り返すように連設されている。糸掛けフック3の先端部は、左側後方から針2,2の針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、外向きに突出するフック部3bが設けてある。糸掛けフック3の基部(アーム3aとの連設部)は、連結ロッド31を介して糸操作ソレノイド32に連結してある。糸操作ソレノイド32は、励磁電流の通電により所定角度の回転出力を得るように構成されたロータリソレノイドである。糸操作ソレノイド32は、糸掛けフック3の右後方位置に出力端を上向きとして固定してある。糸操作ソレノイド32の出力端には、揺動アーム33が固定してあり。連結ロッド31は、糸掛けフック3の中途部と揺動アーム33の先端部とを連結している。
【0043】
図1は、糸操作ソレノイド32の消磁状態を示し、図2は、糸操作ソレノイド32の励磁状態を示している。糸操作ソレノイド32が消磁状態にある場合、揺動アーム33は、図1の揺動位置にある。糸操作ソレノイド32が励磁された場合、揺動アーム33は、図1中に矢符により示すように時計回りに揺動し、図2に示す揺動位置となる。揺動アーム33の揺動は、連結ロッド31を介して糸掛けフック3に伝わり、該糸掛けフック3は、図1中に矢符により示すように、支軸30を中心として反時計回りに揺動し、糸掛けフック3の先端のフック部3bは、図2に示すように、左右の針落ち位置A,Aの間に位置する。このように糸掛けフック3は、糸操作ソレノイド32の励磁に応じて、図1に示す待機位置から図2に示す糸掛け位置にまで揺動する。糸操作ソレノイド32は、フックアクチュエータに相当する。
【0044】
ストッパレバー4は、中間部を前記支軸40により支え、前方を凹として湾曲するアーチ形状を有している。右前方に延びるストッパレバー4の基部は、連結ロッド41を介してストッパソレノイド42に連結してある。ストッパソレノイド42は、糸操作ソレノイド32と同様のロータリソレノイドであり、ストッパレバー4の右方に離れた位置に出力端を上向きとして固定してある。ストッパソレノイド42の出力端には、揺動アーム43が固定してあり。連結ロッド41は、ストッパレバー4の基部と揺動アーム43の先端部とを連結している。
【0045】
図1は、ストッパソレノイド42の消磁状態を示している。ストッパソレノイド42が消磁状態にある場合、揺動アーム43は、図1の揺動位置にある。ストッパソレノイド42が励磁された場合、揺動アーム43は、図1中に矢符により示すように時計回りに揺動する。揺動アーム43の揺動は、連結ロッド41を介してストッパレバー4に伝わり、該ストッパレバー4は、図1中に矢符により示すように、支軸40を中心として時計回りに揺動する。
【0046】
ストッパソレノイド42が消磁状態にある場合、ストッパレバー4の左前方に延びる先端部4aは、図1に示すように、待機位置にある糸掛けフック3の一部に重なる。糸掛けフック3は、ストッパレバー4の重なり部の後位置に、前側を上げるように設けた段部3cを有している。ストッパレバー4の先端部4aは、段部3cの前位置で糸掛けフック3の下位置に重なることができる。またストッパレバー4は、支軸40と基部との間に段部4bを有している。段部4bは、後側を上げるように設けられ、図1に示すように、連結ロッド31の下位置での交叉を可能としている。
【0047】
糸掛けフック3が前記糸掛け位置に揺動する際、ストッパソレノイド42は消磁状態にある。ストッパレバー4は、糸掛けフック3により押されて反時計回りに揺動し、糸掛けフック3の揺動を可能とする。ストッパレバー4は、糸掛けフック3の通過後、図2中に実線により示す位置(拘束位置)となる。なお、糸掛けフック3が糸掛け位置に揺動する際には、糸操作ソレノイド32と共にストッパソレノイド42を励磁し、ストッパレバー4を図1中に2点鎖線にて示す位置(退避位置)に移動させてもよい。この場合、糸掛けフック3は、ストッパレバー4と全く干渉せずに揺動することができる。ストッパレバー4は、糸掛けフック3の揺動完了後、ストッパソレノイド42を消磁することで拘束位置となる。拘束位置にあるストッパレバー4の先端部4aは、糸掛けフック3の中途部に外向きに突設された止め部3dの後側に対向する。糸掛けフック3の止め部3dは、前記段部3cの後側に設けてあり、ストッパレバー4の先端部4aと略同一の高さ位置にある。
【0048】
図2に示す状態で糸操作ソレノイド32が消磁された場合、図2中に矢符により示すように、揺動アーム33は反時計回りに揺動し、糸掛けフック3は時計回りに揺動する。この揺動は、糸掛けフック3の止め部3dがストッパレバー4の先端部4aに当たることで拘束され、糸掛けフック3は、図3に示す保持位置において停止する。このとき糸掛けフック3の先端のフック部3bは、図2に示す糸掛け位置(左右の針落ち位置A,Aの間)から、図3に示す保持位置(左側の針落ち位置Aの左後方)に移動し、後述するように、左側の針2の針糸20を引っ掛けて、図3に示す位置で保持する。糸掛けフック3のフック部3bは、図示のように、面取りされた角部を有しており、以上の如き移動の間に接触する針糸20,20及びルーパ糸10の損傷を防止している。
【0049】
図3に示す状態でストッパソレノイド42が励磁された場合、図3中に矢符により示すように、揺動アーム43は反時計回りに揺動する。この揺動によりストッパレバー4は、時計回りに揺動し、該ストッパレバー4の先端部4aは、図3中に2点鎖線にて示すように糸掛けフック3の止め部3bから外れる。糸掛けフック3は、ストッパレバー4による拘束が解除されることで、図1に示す待機位置に復帰する。ストッパレバー4は、ストッパソレノイド42を消磁することで、図1に示す位置に戻る。ミシンによる前述した縫製は、図1に示す状態で行われる。ストッパソレノイド42は、ストッパアクチュエータに相当する。以上のように糸掛けフック3は、糸操作ソレノイド32及びストッパソレノイド42を選択的に励磁することにより、前述した待機位置、糸掛け位置及び保持位置の間で移動する。
【0050】
このような糸掛けフック3には、ルーパ糸保持体6が取付けてある。ルーパ糸保持体6は、糸掛けフック3と同様の円弧形の湾曲形状を有しており、基部の長手方向の2箇所に通した固定ねじ60,60により糸掛けフック3の中途部上面に固定されている。ルーパ糸保持体6の先端部は、糸掛けフック3の左側に沿って前方に延び、糸掛けフック3の先端部の前位置で針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、二股に分岐された糸受け部6aが設けてある。ルーパ糸保持体6は、固定ねじ60,60を緩めることで糸掛けフック3に対する位置調節が可能である。この位置調節は、先端の糸受け部6aによるルーパ糸10の後述する保持が確実になされるように実施される。
【0051】
このように取付けられたルーパ糸保持体6は、糸操作ソレノイド32及びストッパソレノイド42の動作により、糸掛けフック3と共に、前述した待機位置、糸掛け位置及び保持位置との間で移動する。ルーパ糸保持体6先端の糸受け部6aは、図2に示す糸掛け位置において、ルーパ1の上部を通って該ルーパ1の前側に進出し、図3に示す保持位置において、左側の針落ち位置Aの前方に位置する。
【0052】
ミシンは、更に、糸切り機構5を備えている。糸切り機構5は、糸切りフック50と糸切りメス51とを備えている。糸切りフック50及び糸切りメス51は、共通の基台54に取り付けてある。基台54は、右端部及び中途部を支持アーム55a,55bの前端部に連結して支持されている。支持アーム55a,55bは、夫々の後端部の上下方向の支軸を中心として揺動可能である。右側の支持アーム55aの揺動範囲は、中途部に設けたストッパねじ55cにより規制されている。左側の支持アーム55bは、コイルばね55dにより左向きに引っ張り付勢してある。
【0053】
糸切りメス51は、基台54の左端部に固定された板状の部材であり、左方に延びる端縁に刃部を有している。糸掛けフック50は、基台54と糸切りメス51との間に挾持された先端部に、後方に向けて突設された第1のフック部52と第2のフック部53とを備えている。第1,第2のフック部52は、左右方向に所定長離れて位置しており、図1には、糸切りメス51の下位置に重なる第1,第2のフック部52,53を破線により示してある。
【0054】
糸切りフック50は、糸切りメス51との重なり部分から右方に延びる延長部を有しており、この延長部は、基台54をガイドとして左右方向に摺動するスライダ56を介して糸切りレバー57の一端(前端)部に連結されている。糸切りレバー57は、前後方向の中途部を上下方向の支軸57aにより支え、該支軸57aを中心として揺動可能である。糸切りレバー57は、通常時には、戻しばね(図示を省略する)の付勢力により、支持アーム55aをストッパとする図1〜図3に示す揺動位置にあり、他端(後端)部に連結した糸切りアクチュエータ58(図4参照)の動作により時計回りに揺動する。
【0055】
糸切りフック50及び糸切りメス51は、通常縫製中には、図1〜図3に示す待機位置にある。この待機位置は、糸切りアクチュエータ58が動作しておらず、糸切りレバー57が図1〜図3に示す揺動位置となることで得られる。糸切りフック50及び糸切りメス51は、糸切りレバー57と共に右向きに揺動する前記支持アーム55aの作用により、基台54と共に右後方に移動し、ルーパ1の進退動作経路から外れて位置する。また糸切りフック50は、糸切りレバー57に連結されたスライダ56と共に右方向に移動し、図1〜図3に示すように、先端の一部を糸切りメス51の刃部から突出させた状態となる。
【0056】
糸切りレバー57は、糸切りアクチュエータ58の動作により揺動する。この揺動により、右側の支持アーム55aの押えが解除される結果、糸切りフック50及び糸切りメス51は、コイルばね55dの付勢による左側の支持アーム55bの揺動に応じて基台54と共に左前方に移動し、ルーパ1の進退動作経路の上に位置する。糸切りフック50は、糸切りレバー57の更なる揺動によりスライダ56と共に左進動作し、該糸切りフック50の第1,第2のフック部52,53は、糸切りメス51の左方に突出する。
【0057】
糸切りレバー57は、糸切りアクチュエータ58が非動作状態となることで、前記戻しばねの付勢力の作用により反時計回りに揺動する。これにより、糸切りフック50は、右退動作して糸切りメス51の下部に重なり、また糸切りフック50及び糸切りレバー57は、基台54と共に後方に移動して、図1〜図3に示す待機位置に復帰する。
【0058】
図4は、以上のように構成された縫目のほつれ止め装置を備えるミシンの制御系のブロック図である。ミシンの制御部8には、ペダルスイッチ21が発する踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bと、針2,2が上死点近傍にある時に発せられる針位置信号22と、後述のように発せられる糸切り信号23及び針糸払い信号24とが夫々入力されている。
【0059】
一方制御部8の出力は、前述した糸操作ソレノイド32、ストッパソレノイド42及び糸切りアクチュエータ58に夫々与えられている。糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、制御部8から糸操作ソレノイド32及びストッパソレノイド42に夫々与えられる動作指令に従って前述の如く動作し、糸切りフック50は、制御部8から糸切りアクチュエータ58に与えられる動作指令に従って前述の如く進退動作する。
【0060】
更に制御部8の出力は、ミシン主軸の駆動源であるミシンモータ80、布押え用の押え金を昇降する布押えシリンダ81、後述の如く切断される針糸20,20を跳ね上げるエアワイパ82、縫製生地の送り量を調整する送り低減機構83、及びルーパ1へのルーパ糸10の送り出しを抑制するルーパ糸抑制機構84に夫々与えられている。ミシンモータ80は、制御部8からの動作指令に従って駆動又は停止され、また布押えシリンダ81、エアワイパ82、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84は、制御部8からの動作指令に従って動作する。
【0061】
送り低減機構83は、送り機構の送り歯の動作態様を変えることで縫製生地の送り量を小さくする公知の機構である。送り低減機構83は、例えば、送り歯の動作経路を針板Pに対して傾け、該針板P上への突出時間を短くするように動作する。これにより、針板P上の縫製生地に送り歯が作用する時間が短くなり、縫製生地の送りピッチ、即ち、送り機構の1回の動作の間の縫製生地の送り量は小さくなる。
【0062】
ルーパ糸抑制機構84は、ルーパ1に送り込むルーパ糸10の中途部を挾持する糸調子皿と、該糸調子皿による挾持強さを増減するように動作するアクチュエータとを備える公知の機構である。ルーパ糸抑制機構84は、糸調子皿による挾持強さを高め、ルーパ糸10の付与抵抗を増すことにより、ルーパ糸10の送り出しを抑制する。
【0063】
制御部8は、縫製終了時に、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を、ミシンモータ80、布押えシリンダ81、エアワイパ82、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84と関連して動作させることにより、本発明に係るほつれ止め方法を実行する。
【0064】
図5は、ほつれ止めのための制御部8の動作内容を示すタイムチャートである。制御部8は、CPU、ROM及びRAMを備えるコンピュータであり、図5のタイムチャートに従うほつれ止め動作は、ROMに格納された制御プログラムに従うCPUの一連の動作により実行される。図6〜図12は、本発明装置の動作説明図であり、図5のタイムチャートに従う制御部8の動作の間に生じる糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6の動作状態、並びに糸切りフック50の動作状態を示している。
【0065】
ミシンを使用する縫製作業者は、縫製生地の縫製を終了する際、ミシン駆動のためのペダルの踏み込み操作を止め、その後にほつれ止め動作を実行する場合には、前記ペダルを踏み返し操作する。ペダルスイッチ21は、前記ペダルに付設してあり、踏み込み操作中に踏み込み信号21aを出力し、踏み返し操作がなされたとき踏み返し信号21bを出力する。
【0066】
制御部8は、縫製生地の縫製が終了し、図5のS1時点において、ミシン駆動のためのペダルが踏み込み状態から中立状態に戻されたとき、即ち、ペダルスイッチ21から踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれもが与えられない状態となったとき、入力側に与えられる針位置信号22を参照して出力側のミシンモータ80に停止指令を発する。これによりミシンは、針2,2が上死点近傍にあってルーパ1が左進した状態で一時停止する。
【0067】
その後制御部8は、前記ペダルが踏み返し操作されるまで待機する。図5のS2時点において踏み返し操作がなされ、入力側に踏み返し信号21bが与えられた場合、制御部8は、以下に示すほつれ止め動作を開始する。なお制御部8は、ペダルスイッチ21から踏み込み信号21aが再入力された場合、通常縫製動作に復帰する。縫製作業者は、ペダルを再度踏み込み操作することで縫製生地の縫製を継続することができる。
【0068】
なお図5においては、S1時点からS2時点までの間に中立状態が維持されることとなっているが、このような中立状態の維持は必須の操作ではなく、縫製終了時のペダルの操作は、踏み込み状態から踏み返し状態に連続的に移行するようになされてもよい。この場合、移行の過程で中立位置を通過する際、踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれもが与えられない無信号状態が存在し、制御部8は、このような無信号状態をトリガとし、前述の如く、針2,2が上死点近傍に上昇し、ルーパ1が左進端近傍にまで進出した状態を実現した後にほつれ止め動作を開始する。
【0069】
また図5のタイムチャートでは、S2時点においてなされるペダルの踏み返し操作が、以下に示すほつれ止め動作の実行中に継続されることとなっているが、このような踏み返し操作の継続も必須ではなく、制御部8のほつれ止め動作は、踏み返し信号21bの入力停止後も継続して実行される。
【0070】
図6は、ほつれ止め動作の開始時における針2,2及びルーパ1の状態を示している。針2,2は、2本の針糸20,20とルーパ糸10とで二重環縫いの縫目Mが形成された縫製生地の上方に抜け出した状態にある。ルーパ1は、前記縫製生地の下側で左進し、針糸20,20が夫々形成する2つの針糸ループを捉えた状態にある。この状態で、針糸20,20及びルーパ糸10を切断すると、前述した図21Aに示すような縫い終わり部が形成される。
【0071】
ほつれ止め動作の開始後、制御部8は、まず出力側の糸操作ソレノイド32に動作指令を与え、該糸操作ソレノイド32を短時間励磁する。糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、糸操作ソレノイド32の励磁により、図1に示す待機位置から糸掛け位置に移動する。この移動は、前述したように、ストッパレバー4の先端部4aを左向きに押し拡げつつ生じる。
【0072】
ストッパレバー4は、糸掛けフック3が通過した後、復帰ばね(図示を省略する)のばね力の作用により、図2中に実線にて示す拘束位置に移動する。糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、糸操作ソレノイド32の消磁により、時計回りに復帰揺動する。この揺動は、糸掛けフック3の止め部3dが拘束位置にあるストッパレバー4の先端部4aに当たることで拘束され、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図3に示す保持位置にて停止する。
【0073】
図7には、糸掛け位置に移動し、保持位置に戻った糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6の先端部が図示してある。前述したように糸掛け位置に移動する糸掛けフック3の先端のフック部3bは、ルーパ1の左側から該ルーパ1の上を通り、左右の針2,2の針落ち位置A,Aの間に達し、ルーパ1の進出端側の針糸ループを超えて位置する。糸掛けフック3のフック部3bは、糸掛け位置から左後方に移動して保持位置に戻る間に、左側の針糸ループを引っ掛けて保持し、左側の針2の下降位置(針落ち位置A)よりもルーパ1の進出端側に位置させる。
【0074】
一方、糸掛け位置に移動するルーパ糸保持体6の先端の糸受け部6aは、ルーパ1の左側から該ルーパ1の先端部の前上部に位置する。糸受け部6aは、二股に分岐された形状を有しており、糸掛け位置への移動の間にルーパ1の先端部から縫製生地に向けて延びるルーパ糸10を捉え、該ルーパ糸10を前方に押す。糸受け部6aは、糸掛け位置から左後方に移動して保持位置に戻り、該糸受け部6aが保持したルーパ糸10を、図7に示すように、左側の針2の下降位置(針落ち位置A)よりも前側に位置させる。
【0075】
以上の如く糸掛けフック3を動作させた後、制御部8は、図5のS3時点において、出力側のミシンモータ80、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84に動作指令を与える。この動作指令は、針位置信号22を参照し、針2,2が下降した後に上昇し、再度上死点近傍に位置するまでの間与えられる。これにより縫製生地は、一針分縫製される。またこの縫製は、送り低減機構83が動作することにより、通常縫製時よりは小さい送り量の下で実行される。またこの縫製は、ルーパ糸抑制機構84が動作することにより、ルーパ1へのルーパ糸10の送り出しを抑制した状態で実行される。この送り出しの抑制は、糸受け部6aが保持したルーパ糸10が緩み、該ルーパ糸10が位置ずれしないようにするためである。これにより、形成される縫目の見栄えが良好となり、縫目品質を高めることができる。
【0076】
糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図7に示す針糸20及びルーパ糸10の保持を、縫製生地の送り移動が完了し、左右の針2,2が縫製生地を貫通して下降し、左側の針2が、糸掛けフック3が保持する針糸20のループを通り、該ループを捉えるまで継続する。このとき、ルーパ糸保持体6が保持するルーパ糸10は、図7に示すように、左側の針2の前側を横切るように位置している。従って、左側の針2は、ルーパ糸10を捕捉せず、該ルーパ糸10は、右側の針2によりルーパ1の後側で捕捉されるのみである。
【0077】
制御部8は、左側の針2が針糸ループを捉えたタイミングでストッパソレノイド42に短時間の動作指令を与え、該ストッパソレノイド42を励磁する。この励磁によりストッパレバー4は、図3中に実線にて示す拘束位置から、2点鎖線により示す退避位置に移動し、糸掛けフック3の拘束を解除する。これにより糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図8に示すように保持位置から待機位置に復帰移動し、針糸ループ及びルーパ糸10の保持を解除する。
【0078】
ルーパ1は、針2,2の下降と共に右退動作し、捕捉した針糸ループから抜け出す。この抜け出しにより、図9に示すように、右側の針2は、通常縫製時と同様にルーパ糸10を捕捉した状態となるのに対し、左側の針2は、ルーパ糸10ではなく、針糸20のループを捕捉した状態となる。
【0079】
この状態でルーパ1は、左進に転換し、針2,2は、上昇に転換する。図10に示すように、左進するルーパ1は、左右の針糸20,20のループを捉え、上昇する針2,2は、縫製生地の上方に抜け出す。これにより、ルーパ1が捉えた針糸20は、右側の針2の位置ではルーパ糸10を他糸ルーピングするのに対し、左側の針2の位置では、先に形成された針糸20のループを自糸ルーピングすることとなる。
【0080】
一針分の縫製動作は、針2,2が上死点近傍まで上昇し、ルーパ1が左進端近傍に達した状態で終了する。その後制御部8は、糸切り信号23が与えられるまで待機し、図5のS4時点において糸切り信号23が与えられると、出力側の糸切りアクチュエータ58に動作指令を与え、該糸切りアクチュエータ58に所定の動作を行わせる。これにより糸切りフック60は、左進した後に右退動作する。
【0081】
左進する糸切りフック50は、ルーパ1の上部に沿って図11に示す進出端にまで達する。このとき、糸切りフック50の先端部に設けた第1のフック部52は、ルーパ1が保持する針糸20,20のループ内を通ってルーパ1の先端から縫製生地に延びるルーパ糸10に左側に達し、糸切りフック50の中途部に設けた第2のフック部53は、左側の針糸20に左側から対向する。
【0082】
糸切りフック50は、進出端に達した後に右退動作する。第1のフック部52はルーパ糸10を捕捉し、また第2のフック部53は、2本の針糸20,20を順次捕捉する。このように捕捉されたルーパ糸10及び針糸20,20は、糸切りフック50の退入端にまで引かれる。このとき、図12に示すように、第2のフック部53に捉えられた針糸20,20は、糸切りメス51の先端の刃部に摺接することで切断され、また第1のフック部52に捉えられたルーパ糸10は、同様に糸切りメス51の先端の刃部に摺接することで切断されると共に、この切断位置よりもルーパ1側にて保持される。糸切りフック50及び糸切りメス51を備える糸切り機構5は、以上の動作により針糸20,20及びルーパ糸10を切断する。
【0083】
ルーパ糸抑制機構84は、以上の糸切り動作を終えるまで動作を継続し、ルーパ1の先端から縫製生地に延びるルーパ糸10に所定の張力を付与する。糸切りフック50先端の第1のフック部52は、緩みのないルーパ糸10を確実に捕捉することができる。
【0084】
図11,図12に示すように、糸切りフック50は、下面の前側に弾接する板ばね59のばね力により糸切りメス51との摺接部に押し付けられており、糸切りメス51による針糸20,20及びルーパ糸10の切断は、前記板ばね59による押し付け下にて確実になされる。切断されたルーパ糸10は、図12に示すように、糸切りフック50の下面と板ばね59との間に挟まれた状態で保持される。
【0085】
以上のように切断動作を終えた後、制御部8は、針糸払い信号24が与えられるまで待機し、図5のS5時点において針糸払い信号24が与えられると、出力側のエアワイパ82に動作指令を発し、該エアワイパ82を動作させる。エアワイパ82は、空気を吹き出し、針2,2側に連続する針糸20,20の切断端を跳ね上げる。その後制御部8は、図5のS6時点において出力側の布押えシリンダ81に動作指令を発し、該布押えシリンダ81を動作させて布押え用の押え金を上昇させて一連の動作を終える。
【0086】
これにより作業者は、縫製を終えた生地を針板P上から取り外し、新たな縫製生地をセットして次回の縫製を開始することができる。このときルーパ糸10は、糸切りフック50と糸切りメス51とにより針板Pの下で保持され、また針糸20,20は、針板P上に跳ね上げられて、図12に示すように、各別の針2,2から垂れ下がった状態となる。従って、作業者は、針糸20,20及びルーパ糸10に対して何らの始末を要することなく次回の縫製を開始することができる。
【0087】
なお、糸切り機構5による針糸20,20及びルーパ糸10の切断、エアワイパ82の動作による針糸20,20の跳ね上げ、及び布押えシリンダ81を動作による押え金の上昇は、本発明における必須の動作ではない。また実施の形態においてこれらの動作は、外部から与えられる糸切り信号23及び針糸払い信号24を待って、ほつれ止め動作に連続して実施するようにしてあるが、ほつれ止めのための一針分の縫製を終えた後、作業者による適宜の操作に応じた一連の動作として実施してもよい。
【0088】
図13は、実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する上方からの平面図、図14は、同じく下方からの平面図、図15、図16は、同じく動作説明図である。以下の説明では、図15、図16中に矢符により示した「左,右」及び「前,後」を使用する。ここで、図1〜図3と同様、「前」は、縫製作業者に近い側、「後」は、縫製作業者から離れた側であり、「左,右」は、前方から見た場合の「左,右」である。
【0089】
実施の形態2の縫目のほつれ止め装置は、糸掛けフック3、ルーパ糸保持体6及びストッパレバー4を備えており、更に揺動レバー9を備えている。図13に示すように、糸掛けフック3は、針板Pが取付けられた針板台10の上面に、上下方向の支軸34を中心として揺動可能に支持されている。支軸34は、針板Pの右後側で、該針板Pの近傍に位置している。
【0090】
糸掛けフック3は、円弧形の湾曲形状を有しており、支軸34から左方に延びる支持アーム3eの先端部に、前方に折り返すように連設されている。糸掛けフック3の先端部は、針板Pの下側において、左側後方から針2,2の針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、外向きに突出するフック部3bが設けてある。支持アーム3eは、支軸34の前方にも延びており、この延設端には、連結ロッド35の一端部が連結されている。
【0091】
ルーパ糸保持体6は、円弧形の湾曲形状を有し、実施の形態1におけると同様に、2本の固定ねじ60,60により糸掛けフック3の基部に位置調節可能に取り付けてある。ルーパ糸保持体6の先端部は、糸掛けフック3の左側に沿って前方に延び、糸掛けフック3の先端部の前位置で針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、二股に分岐された糸受け部6aが設けてある。
【0092】
揺動レバー9は、針板台11の上面に、上下方向の支軸90を中心として揺動可能に支持されている。支軸90は、糸掛けフック3の支軸34から右方に離れて位置している。揺動レバー9は、支軸90から前方に延びており、該揺動レバー9の先端部には、前記連結ロッド35の他端部が連結されている。
【0093】
揺動レバー9は、先端部近傍の右側を下向きに折り曲げて一体形成された押し板91を備えている。図14に示すように、針板台11の下面には、揺動レバー9の左側に糸操作シリンダ92が固定してある。糸操作シリンダ92は、右向きに突出する出力ロッド93を備えるエアシリンダである。出力ロッド93の先端は、押し板91に対向している。出力ロッド93は、エアチューブ94を介して糸操作シリンダ92に供給される作動エアの作用により進出し、押し板91を右向きに押圧する。
【0094】
針板台11は、糸操作シリンダ92の左側に、前向きに突設されたばね掛け棒95を備えており、該ばね掛け棒95と前記押し板91との間に戻しばね96が張架されている。戻しばね96は、押し板91を左方向に引っ張り付勢するコイルばねであり、連結ロッド35と糸操作シリンダ92との間に配してある。図13、図15、図16においては、連結ロッド35の中途部を破断して戻しばね96の一部を示してある。
【0095】
糸操作シリンダ92が非作動状態にある場合、揺動レバー9は、戻しばね96のばね力により左方に引かれ、図13に示す揺動位置となる。糸掛けフック3先端のフック部3b及びルーパ糸保持体6先端の糸受け部6aは、図13に示すように、針2,2の針落ち位置A,Aの左後方に離れた待機位置にある。
【0096】
糸操作シリンダ92が作動した場合、出力ロッド93が進出し、押し板91を右向きに押圧する。この押圧により揺動レバー9は、図15中に矢符により示すように、戻しばね96のばね力に抗して反時計回りに揺動する。糸掛けフック3の支持アーム3eは、支軸34を中心として反時計回りに揺動し、糸掛けフック3先端のフック部3b、及びルーパ糸保持体6の先端の糸受け部6aは、図15中に矢符により示すように、右前方に進出して、図15に示す糸掛け位置に達し、実施の形態1におけると同様に、フック部3bは、ルーパ1の後側で左側(ルーパ1の進出端側)の針糸ループを超えて位置し、糸受け部6aは、フック部3bの前方でルーパ1の上側に位置する。
【0097】
図14に示すように、ストッパレバー4は、針板台11の下面に上下方向の支軸44を中心として揺動可能に支持されている。支軸44は、揺動レバー9の支軸90の近傍に位置する。ストッパレバー4は、支軸44から右方に延びている。ストッパレバー4は、先端部近傍の後側を下向きに折り曲げて一体形成された押し板45を備え、また前縁の中途部を切欠いてなる係合凹部46を備えている。
【0098】
針板台11の下面には、後端部近傍にストッパシリンダ47が固定されている。ストッパシリンダ47は、後向きに突出する出力ロッド48を備えるエアシリンダである。出力ロッド48の先端は、押し板45に対向している。出力ロッド48は、エアチューブ49を介してストッパシリンダ47に供給される作動エアの作用により進出し、押し板45を後向きに押圧する。
【0099】
針板台11の上面には、ばね掛け棒97が、ストッパシリンダ47の上側で右向きに突設されており、該ばね掛け棒97とストッパレバー4の先端部との間には戻しばね98が張架されている。戻しばね98は、ストッパレバー4の先端部を後方向に引っ張り付勢するコイルばねである。図13、図15及び図16においては、針板台11の一部を破断して、戻しばね98とストッパレバー4との連結部を示してある。
【0100】
ストッパシリンダ47が非作動状態にある場合、ストッパレバー4は、戻しばね98のばね力により前方に引かれ、図14に示すように、揺動レバー9の押し板91に前縁を押し当てた位置にある。この状態で糸操作シリンダ92が作動した場合、押し板91は、ストッパレバー4の前縁に沿って右方に移動する。ストッパレバー4は、移動する押し板91が前縁に設けた係合凹部46に整合した時点で戻しばね98のばね力により引かれ、図14における反時計回りに揺動し、図15に示すように、係合凹部46の底面を揺動レバー9の押し板91に押し当てた状態となる。
【0101】
この状態で糸操作シリンダ92が非作動状態となった場合、揺動レバー9は、戻しばね96のばね力により左方に引かれ、図16中に矢符で示すように時計回りに揺動する。この揺動は、ストッパレバー4の係合凹部46内で押し板91が滑り移動し、該押し板91が係合凹部46の左側縁に係合する位置で拘束される。この時、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、支軸34を中心として時計回りに揺動し、糸掛けフック3先端のフック部3b及びルーパ糸保持体6の先端の糸受け部6aは、左後方に後退移動し、糸掛け位置の近くの保持位置に位置決めされる。この移動の間に実施の形態1におけると同様に、フック部3bは、左側の針糸ループを捉えて引き戻し、ルーパ1の進出端側に位置させ、糸受け部6aは、ルーパ1から縫製生地に延びるルーパ糸を押し、針2の下降位置よりも前側に位置させる。
【0102】
この状態でストッパシリンダ47が作動した場合、出力ロッド48が進出し、ストッパレバー4の押し板45を後向きに押圧する。この押圧によりストッパレバー4は、戻しばね98のばね力に抗して揺動する。ストッパレバー4に設けた係合凹部46は後方に移動し、押し板91との係合を解除する。これにより揺動レバー9は、戻しばね96のばね力の作用で時計回りに揺動し、糸掛けフック3は、保持位置から左後方に移動し、図13に示す待機位置に戻る。ストッパレバー4は、ストッパシリンダ47が非作動状態となることで戻しばね98のばね力の作用により揺動し、図13に示す揺動位置に復帰する。
【0103】
実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置において糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、糸操作シリンダ92及びストッパシリンダ47を選択的に動作させることで、待機位置と糸掛け位置と保持位置との間で移動し、実施の形態1と同様のほつれ止め方法を実施することができる。糸操作シリンダ92は、フックアクチュエータに相当し、ストッパシリンダ47は、ストッパアクチュエータに相当する。
【0104】
実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の動作は、糸操作シリンダ92及びストッパシリンダ47、より詳しくは、糸操作シリンダ92及びストッパシリンダ47に作動エアを給排する給排弁を制御対象とし、図4に示すように構成された制御部8が、図5に示すタイムチャートと同様の制御動作を行うことで達成することができる。
【0105】
図17は、本発明により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図、図18は、図17に示す縫目のほつれ止め効果の説明図である。なおこれらの図においては、図6〜図12とは、左右関係が逆となっているが、以下の説明では、図6〜図12における左,右を使用する。また図17、図18において、縫製生地の送り移動の方向は白抜矢符にて示す方向であり、図17、図18においては、上方が送り移動方向の下流側となり、下方が送り移動方向の上流側となる。
【0106】
図17に示すように、ルーパ糸10は、二重環縫いの縫目Mの最後に縫製生地の裏面に形成される右側(図17においては左側)の針糸ループ20a(以下、右最終ループ20aという)内を通り、ほつれ止めのための一針分の縫製の際に縫製生地の裏面に抜け出す同側の針糸20の前で折り返し、右最終ルーパ6a内を再度通った位置で切断される。
【0107】
一方、一針分の縫製の際に縫製生地の裏面に抜け出す左側(図17においては右側)の針糸20は、前述したように、通常縫製時の最後に縫製生地の裏面に形成される左側の針糸ループ20b(以下、左最終ループ20bという)内を通り、該左最終ループ20bを自糸ルーピングし、単環縫いの縫目を形成する。従って、ルーパ糸10は、図示のように、左側の針糸20と左最終ループ20bとの間に押えられた状態となる。
【0108】
図17、図18において左最終ループ20bは、針糸20との絡みを明示するために緩んだ状態で示されているが、実際の左最終ループ20bは、針糸20が通った後に引き締められ、右最終ループ20aと同様の状態となる。従って、ルーパ糸10は、針糸20と左最終ループ20bとで強固に押えられ、図示のように、左最終ループ20bと、一回前に形成された左針糸ループ20cとの間に掛け渡された状態で拘束される。この拘束は、ルーパ糸10に加わる如何なる方向の作用力に対しても維持されるから、二重環縫いの縫目Mに特有のほつれの発生を、その発生段階にて確実に防止することができる。
【0109】
前述したように、一針分の縫製時における縫製生地の送りピッチは、通常縫製時における縫製生地の送りピッチよりも小さい。従って、図17に示すように、一針分の縫製時における針糸20の抜け出し位置と左最終ループ20bとの間の間隔Lは、左最終ループ20bと一回前に形成された左針糸ループ20cとの間の間隔L0 よりも小さくなる。これにより、左側の針糸20と左最終ループ20bとの間でのルーパ糸10の押えは強化され、ルーパ糸10の抜けに起因するほつれの発生をより確実に防止することができる。
【0110】
ルーパ糸10の押えを強化するという観点から見た場合、前記間隔Lは、可及的に小さくするのが望ましい。一方、前記間隔Lが小さい場合、例えば、薄い縫製生地において、針糸20の抜け出し位置と左最終ループ20bとの間の強度が不足し、縫製生地の損傷を引き起こす虞れがある。それ故、前記間隔L、即ち、一針分の縫製時における縫製生地の送りピッチは、縫製生地の種類に応じて適正に設定する必要がある。
【0111】
図18は、ルーパ糸10の切断端部が、図中に矢符により示す向きに引っ張られた状態を示している。この引っ張りがなされた場合、前述のように、同側の針糸20の前を通るルーパ糸10のループが縮小し右最終ループ20a内に引き込まれる。この結果、針糸20は、ルーパ糸10と右最終ループ20aとの間に挟まれた状態となり、針糸20とルーパ糸10とにより、図示のような「結び目」が形成される。この「結び目」は、ルーパ糸10にも抵抗を加え、該ルーパ糸10の抜けを防止する作用をなすから、図18に示す状態となった場合、二重環縫いの縫目のほつれは、左側の自糸ルーピング部と、右側の「結び目」との相乗作用により一層確実に防止することができる。
【0112】
また以上の如く構成される縫目において、右最終ループ20aから突出するルーパ糸10の切断端部の長さは、図18に示すように十分に短いから、縫製作業者は、切断端部の始末を必要とせずに良好な見栄えを有する高品質の縫目を形成することができる。
【0113】
以上の実施の形態においては、縫製生地の送りピッチを、自糸ルーピングのための一針分の縫製の間に変更しているが、この変更は、前記一針分の縫製の前段階から実施してもよい。図19は、制御部8の動作内容の他の実施の形態を示すタイムチャートである。
【0114】
ほつれ止め動作を実行する場合、縫製作業者は、前述したように、縫製作業の終了時にペダルを中立位置に戻し、その後に踏み返す操作を行う。制御部8は、縫製生地の縫製が終了し、図19のS1時点において、ペダルが中立状態に戻されたとき、入力側に与えられる針位置信号22を参照して出力側のミシンモータ80に停止指令を発する。この実施の形態においてミシンは、針2,2が下死点近傍に下降し、ルーパ1が右退した状態で一時停止する。制御部8は、ペダルが踏み返し操作されるまで待機し、図19のS2時点において踏み返し操作がなされ、入力側に踏み返し信号21bが与えられた場合、制御部8は、以下に示すほつれ止め動作を開始する。
【0115】
なお、図5の説明において述べたように、S1時点からS2時点までのペダルの中立状態の維持は必須の操作ではなく、またS2時点以降のペダルの踏み返し操作の継続も必須の操作ではない。これらの場合に制御部8は、中立状態の通過時に生じる無信号状態、即ち、踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれもが与えられない状態をトリガとして以下に示すほつれ止め動作を開始し、この動作を、踏み返し信号21bの入力停止後も継続する。
【0116】
ほつれ止め動作を開始した制御部8は、まず送り低減機構83に動作指令を与え、その後のS3時点において、ミシンモータ80に動作指令を与える。この動作指令は、針位置信号22を参照し、針2,2が停止位置から上昇して上死点近傍に位置するまでの間与えられる。これにより縫製生地は、半針分縫製される。この縫製は、送り低減機構83が動作状態にあることから、通常縫製時よりも小さい送りピッチの下で実行される。
【0117】
以上の動作により、針2,2は上死点近傍に上昇し、ルーパ1は左進端近傍にまで進出した状態となる。その後制御部8は、S4時点において出力側の糸操作ソレノイド32に動作指令を与え、該糸操作ソレノイド32を短時間励磁し、次いで、S5時点において、出力側のミシンモータ80及びルーパ糸抑制機構84に動作指令を与える。
【0118】
ミシンモータ80への動作指令は、針位置信号22を参照し、上死点にある針2,2が下降した後に上昇し、再度上死点近傍に位置するまでの間与えられる。これにより縫製生地は、一針分縫製される。このとき、送り低減機構83は動作を継続し、またルーパ糸抑制機構84が動作しており、一針分の縫製は、通常縫製時よりは小さい送りピッチの下で、ルーパ1へのルーパ糸10の送り出しを抑制した状態で実行される。
【0119】
その後制御部8は、S6時点において糸切りアクチュエータ58に、またS7時点においてエアワイパ82に、更に、S8時点において布押えシリンダ81に夫々動作指令を発し、これらを動作させて一連の動作を終える。図19のS4〜S8の動作は、図5におけるS2〜S6の動作と同じであり、この動作の間に、自糸ルーピングのための一針分の縫製がなされ、糸切り機構5により針糸20,20及びルーパ糸10が切断され、エアワイパ82の動作により切断された針糸20,20が跳ね上げられm更に布押えシリンダ81を動作により押え金が上昇する。
【0120】
図20は、以上の動作により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。本図は、図18と同様、ルーパ糸10の切断端部が、図中に矢符により示す向きに引っ張られた状態を示しており、二重環縫いの縫目Mのほつれは、左側(図20における右側)の自糸ルーピング部と、右側(図20における左側)の「結び目」との相乗作用により確実に防止することができる。
【0121】
この実施の形態においては、自糸ルーピングのための一針分の縫製の前に、縫製生地の送りを低減した状態で半針分の縫製がなされる。従って、図20に示す縫目構造においては、最後の針糸20の抜け出し位置と左最終ループ20bとの間の間隔L1 だけでなく、左最終ループ20bの一針前の左針糸ループ20cとの間隔L2 も、更に一針前の左針糸ループ20cとの間隔L0 よりも小さくなる。従って、自糸ルーピング部分が、該部分よりも前位置の他糸ルーピング部分を含めて密となり、ルーパ糸10の押えが一層強化され、縫い終わり部分でのルーパ糸10の抜けを起点とするほつれの発生をより確実に防止することができる。
【0122】
なお以上の実施の形態においては、2本の針糸20,20とルーパ糸10とにより形成する二重環縫いの縫目について説明したが、本発明に係る縫目のほつれ止め装置、及びこの装置を用いて実施する縫目のほつれ止め方法は、3本以上の針糸を使用する多本針二重環縫いの縫目においても同様に適用でき、ほつれの発生を有効に防止することができる。
【0123】
また以上の実施の形態においては、2本の針糸20,20が形成する針糸ループのうち、ルーパ1の進出端側に位置する1つを捉え、この状態で1針分の縫製動作を行わせる場合について説明したが、捉える針糸ループは、ルーパ1の進出端側の1つを含む複数であってもよく、またこの保持状態で実施する縫製動作も、2針分、又はそれ以上であってもよい。
【0124】
また以上の実施の形態においては、糸掛けフック3は、針落ち位置Aの左後方と右前方との間で動作して針糸20を捉えるようにしてあるが、糸掛けフック3は、他の動作で針糸20を捉えるようにしてもよい。また針糸20は、実施の形態に示すルーパ1の後側に限らず、ルーパ1の前側で捉えるようにしてもよい。更に、本発明においては、特許請求の範囲に示すように、針糸ループを針2の下降位置よりもルーパ1の進出端側に位置させておけばよく、実施の形態に示すように、糸掛けフック3による針糸20の保持は必須ではない。
【0125】
また以上の実施の形態において、ルーパ糸保持体6は、糸掛けフック3に取り付けてあり、該糸掛けフック3と一体に動作してルーパ糸10を保持するようにしてあるが、ルーパ糸保持体6は、他の動作でルーパ糸10を保持するように構成することもできる。ルーパ糸保持体6は、糸掛けフック3と別体に設け、糸掛けフック3と異なる専用のアクチュエータにより動作させることも可能である。更に、本発明においては、特許請求の範囲に示すように、ルーパ糸10を針2の下降位置よりも前側に位置させておけばよく、実施の形態に示すように、ルーパ保持体6によるルーパ糸10の保持は必須ではない。
【符号の説明】
【0126】
1 ルーパ
2 針
3 糸掛けフック
4 ストッパレバー
6 ルーパ糸保持体
8 制御部
10 ルーパ糸
20 針糸
32 糸操作ソレノイド(フックアクチュエータ)
42 ストッパソレノイド(ストッパアクチュエータ)
47 ストッパシリンダ(ストッパアクチュエータ)
92 糸操作シリンダ(フックアクチュエータ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等のミシンを使用し、針糸とルーパ糸とにより形成する二重環縫いの縫目において、縫い終わり部分の縫目に発生するほつれを防止するほつれ止め方法、この方法を実施するためのほつれ止め装置、及びこれらの方法及び装置を使用して形成される縫目構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二重環縫いミシンは、針糸を保持して上昇及び下降する一又は複数本の針と、ルーパ糸を保持し、前記針の上下動経路に略直交する方向に進退動作するルーパとを備えている。針は、針板上の縫製生地を貫いて下降し、該縫製生地から抜け出すように上昇する。ルーパは、針の上昇及び下降に連動して針板の下で進退動作し、上昇する針が保持する針糸のループ(針糸ループ)を進出時に捉える。針は、縫製生地を貫いて下降し、退入するルーパが保持するルーパ糸を捉える。
【0003】
二重環縫いミシンは、以上の動作を繰り返して縫製生地に縫目を形成する。図21は、2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面側から見た平面図である。本図に示すように二重環縫いの縫目は、縫製生地の裏面に針糸20,20が形成する針糸ループに、他糸ルーピングの形態をなしてルーパ糸10が絡むことにより形成される。図21Aに示す一般的な二重環縫いの縫目構造においては、縫い終わり時に切断されたルーパ糸10の端部が、図中に矢符により示すように引っ張られた場合、該ルーパ糸10は、針糸20,20が形成する最終の針糸ループ20a,20bから抜け出し、この抜け出しが縫い始め側に向けて逐次移行する結果、縫目全体にほつれが発生するという問題を有している。
【0004】
このようなほつれは、3本以上の針糸とルーパ糸とで形成する二重環縫いの縫目においても同様に発生し、また、偏平縫いミシン等、二重環縫いの縫目を形成するミシン全般においても同様に発生する。
【0005】
二重環縫いの縫目に特有の以上のほつれの発生を防止することを目的とし、従来、種々のほつれ止め方法、及びこの方法を実施するための装置が提案されている。そのうちの一つとして本願出願人によるほつれ止め方法及び装置がある(例えば、特許文献1参照)。このほつれ止め方法は、ルーパの進出により針糸ループに通されたルーパ糸を前記ルーパの進出端部にて保持するルーパ糸掛けフックを設け、このルーパ糸掛けフックを、通常縫製の終了時に針が上昇し、ルーパが進出した状態で動作させて、該ルーパ糸掛けフックにルーパ糸を保持させた状態で一針分の縫製動作を行わせ、その後に針糸及びルーパ糸を切断する方法である。
【0006】
この方法によれば、ルーパ糸掛けフックが保持しているルーパ糸10は、一針分の縫製の間に針糸20,20が形成する最終の針糸ループ20a,20bに他糸レーシングの形態で絡み、図21Bに示すような縫目が形成される。このように絡んだルーパ糸10は、その端部が矢符にて示す如く引っ張られたとしても最終の針糸ループ20a,20bから抜け出し得ないことから、縫目のほつれを発生段階にて防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2879399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、特許第2879399号公報に提案されたほつれ止め方法は、二重環縫いの縫目に特有のほつれの発生を有効に防止し得る優れた方法である。しかしながら、図21Bに示すように形成された縫目においても、ルーパ糸10の切断端部は、図中に白抜矢符に示す向きの力が加わった場合、最終の針糸ループ20a,20bから抜け出す虞れがあり、この抜け出しが生じた後は、一般的な二重環縫いの縫目におけると同様に、ルーパ糸10の抜けが、縫い始め側に向けて順次進行し、縫目全体にほつれが発生することとなる。
【0009】
この問題は、例えば、薄い縫製生地、柔らかい縫製生地の縫製において、良好な仕上がり状態を得るべく、針糸20,20及びルーパ糸10の付与張力を小さくした場合に、針糸ループ20a,20bによるルーパ糸10の締め付けが不足することから発生しやすい。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、二重環縫いの縫目に特有のほつれの発生を、針糸及びルーパ糸の付与張力の影響を受けずに有効に防止することができる新たなほつれ止め方法、及びこの方法の実施に使用するほつれ止め装置を提供し、更に、これらの方法及び装置によって形成される縫目構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、針糸を保持して上下動する針が針板の下に形成する針糸ループを、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進出するルーパにより捉え、該ルーパが保持するルーパ糸により前記針糸ループを他糸ルーピングして形成される二重環縫いの縫目のほつれを防止する方法において、通常縫製の終了時に前記ルーパを進出状態とし、該ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に夫々位置させ、その後、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸ループ及びルーパ糸の位置を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせ、前記針が保持する針糸により前記ルーパが保持する針糸ループを自糸ルーピングすることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設されており、夫々の針が形成する複数の針糸ループのうち、前記ルーパの進出端側に位置する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に位置させることを特徴とする。
【0013】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記少なくとも一針分の縫製動作を、前記縫製生地の送りを停止、又は前記縫製生地の送りピッチを通常縫製時よりも小さくして実施することを特徴とする。
【0014】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記縫製生地の送りの停止、又は通常縫製時よりも小さい送りピッチでの前記縫製生地の送りを、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から実施することを特徴とする。
【0015】
更に本発明に係る縫目のほつれ止め方法は、前記ルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に位置させた後、該ルーパ糸の前記ルーパへの送り出しを抑制することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、針糸を保持して上下動する針と、ルーパ糸を保持して、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進退動作するルーパとを備え、前記針が前記針板の下に形成する針糸ループを前記ルーパの進出によって捉え、該ルーパが保持するルーパ糸で前記針糸ループを他糸ルーピングして前記縫製生地に二重環縫いの縫目を形成するミシンに装備してあり、前記縫目のほつれを防止するほつれ止め装置において、前記ルーパに対して接近及び離反動作し、接近動作時に前記ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側で保持する針糸保持機構と、前記ルーパに対して接近及び離反動作し、該ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側で保持するルーパ糸保持機構と、前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構の接離動作を、前記針及びルーパの動作、並びに前記縫製生地の送り動作と関連して制御する制御部とを備え、該制御部は、前記ルーパを進出位置とし、前記針を上昇位置として通常縫製を終えた後に、前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構を接近動作させて前記針糸ループ及びルーパ糸を夫々保持させ、前記針の下降及び上昇を、前記ルーパの進退動作、及び前記縫製生地の送り動作と合わせて実行する少なくとも一針分の縫製動作を、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構による保持状態を維持して行わせることを特徴とする。
【0017】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設してある場合、前記針糸保持機構は、前記ルーパの進出端側に位置する針が形成する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを保持することを特徴とする。
【0018】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記制御部が、前記少なくとも一針分の縫製動作を前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくして実行することを特徴とする。
【0019】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記制御部が、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から、前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくすることを特徴とする。
【0020】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記針糸保持機構が、前記針板下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフック及びストッパレバーと、前記糸掛けフックを、前記ルーパから離れた待機位置から、前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、前記ストッパレバーを、前記糸掛けフックの揺動域から外れた退避位置から、前記糸掛けフックの一部に当接する拘束位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを前記ストッパレバーとの当接により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする。
【0021】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記針糸保持機構が、前記針板の下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフックと、該糸掛けフックよりも前記針板から離れた位置に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する揺動レバー及びストッパレバーと、前記糸掛けフックと前記揺動レバーとを連結する連結ロッドと、前記連結ロッドを介して前記糸掛けフックに作用し、該糸掛けフックを前記ルーパから離れた待機位置から前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、前記ストッパレバーを、前記揺動レバーの一部に係合する係合位置から、該係合位置から外れた退避位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを、前記ストッパレバーと前記揺動レバーの係合により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする。
【0022】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記ルーパ糸保持機構が、前記糸掛けフックに取付けてあり、該糸掛けフックと共に前記糸掛け位置、保持位置及び待機位置との間で移動するルーパ糸保持体を備え、該ルーパ糸保持体は、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記待機位置から前記糸掛け位置への移動の間に捉え、捉えたループ糸を前記保持位置において前記針の下降位置よりも前側で保持することを特徴とする。
【0023】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置は、前記ルーパ糸保持体が、前記糸掛けフックに対する位置調節可能に取付けてあることを特徴とする。
【0024】
更に本発明に係る縫目構造は、前述した縫目のほつれ止め方法又は縫目のほつれ止め装置によって縫製生地に形成される二重環縫いの縫目構造において、前記縫製生地の裏面に形成された針糸ループのうち少なくとも縫製方向の終端に位置する針糸ループが前記縫製生地を貫く針糸により自糸ルーピングされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、ルーパを進出状態として通常縫製を終了した後、該ルーパが捉えた針糸ループを、針の下降位置よりもルーパの進出端側に位置させ、またルーパから縫製生地に延びるルーパ糸を針の下降位置よりも前側に位置させた状態で縫製動作を実施し、下降する針が保持する針糸で先の針糸ループを自糸ルーピングするから、ルーパ糸を自糸ルーピング部分で押えて該ルーパ糸の抜けを防止することができ、縫目のほつれを発生段階にて確実に防止することが可能となる。針糸の自糸ルーピングによるルーパ糸の押えは、針糸及びルーパ糸の付与張力が小さい場合でも良好になされ、ほつれを発生を防止することができる。
【0026】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、針糸ループが複数である場合、少なくともルーパの進出端側に位置する針糸ループを前述したように位置させるから、自糸ルーピングを確実に実施し、縫目のほつれを一層確実に防止することができる。
【0027】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法においては、ルーパ糸を前述したように位置させた後、ルーパへのルーパ糸の送り出しを抑制するから、ルーパ糸の位置を確実に保ち、ルーパ糸の存在に影響されずに自糸ルーピングを形成し、ほつれの発生を確実に防止することができると共に、ルーパ糸の糸締まりが強化され、ルーパ糸自体の抜けも防止することができ、糸切り後のルーパ糸の長さが短く、縫目の見栄えが良くなり、縫目品質を高めることができる。
【0028】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、ほつれ止めのための前述した縫製動作を、縫製生地の送りを停止するか、又は縫製生地の送りピッチを小さくして行わせるから、針糸による自糸ルーピング部分が密となり、ルーパ糸の押えが強化され、縫い終わり部分でのルーパ糸の抜けを起点とするほつれの発生を一層確実に防止することができる。
【0029】
また本発明に係る縫目のほつれ止め方法及び縫目のほつれ止め装置においては、縫製生地の送りの停止、又は縫製生地の送りピッチの縮小を、ほつれ止めのための前述した縫製動作の前の段階から実施するから、針糸による自糸ルーピング部分が、該部分よりも前位置の他糸ルーピング部分を含めて密となり、ルーパ糸の押えが強化され、縫い終わり部分でのルーパ糸の抜けを起点とするほつれの発生を一層確実に防止することができる。
【0030】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、針板と平行な面内で揺動する糸掛けフック及びストッパレバーにより針糸を保持し、前述したように位置させるから、針糸の位置決めを、針板下の限られた空間内での配置が可能な簡素な構成にて実現することができる。また糸掛けフック及びストッパレバーは、夫々が2位置間にて揺動すればよく、各別のアクチュエータ、及びこれらを制御する制御部の構成も簡素化され、縫目のほつれの発生を、簡素な構成で防止することが可能となる。
【0031】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、針板と平行な面内で揺動する糸掛けフック、揺動レバー及びストッパレバーの関連動作により針糸を保持し、前述したように位置させるから、針糸の位置決めを、針板下の限られた空間内での配置が可能な簡素な構成にて実現することができる。また揺動レバー及びストッパレバーは、針板から離れた位置に配してあり、糸掛けフックを針板の近傍に配置すればよいことから、筒形ベッドを備えるミシン等、針板の下部空間が更に限られるミシンへの適用も可能となる。
【0032】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、糸掛けフックに取付けてあり、該糸掛けフックと共に動作するルーパ糸保持体によりルーパ糸を保持し、前述したように位置させるから、針糸と共にルーパ糸を簡素な構成にて位置決めすることができる。
【0033】
また本発明に係る縫目のほつれ止め装置においては、ルーパ糸保持体を糸掛けフックに対して位置調節することにより、針糸とルーパ糸との相対位置を適正に設定することができ、自糸ルーピングを確実に行わせ、縫目のほつれを防止することができる。
【0034】
また本発明に係る縫目構造においては、縫製方向の終端部に針糸による自糸ルーピング部分を備えるから、ルーパ糸の抜けを防止し、この抜けを起点とする縫目のほつれを確実に防止することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する平面図である。
【図2】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する平面図である。
【図3】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する平面図である。
【図4】実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置を備えるミシンの制御系のブロック図である。
【図5】制御部の動作内容を示すタイムチャートである。
【図6】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図7】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図8】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図9】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図10】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図11】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図12】縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図13】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する上方からの平面図である。
【図14】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する下方からの平面図である。
【図15】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図16】実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の動作説明図である。
【図17】本発明により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。
【図18】図17に示す縫目構造のほつれ止め効果の説明図である。
【図19】制御部の動作内容の他の実施の形態を示すタイムチャートである。
【図20】図19の動作により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。
【図21】縫い終わり部分の一般的な縫目及び従来のほつれ止め装置により得られる縫い終わり部分の縫目構造を縫製生地の裏面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1〜図3は、実施の形態1に係る縫目のほつれ止め装置の構成を略示する上方からの平面図である。図示の装置は、二重環縫いミシン、偏平縫いミシン等、二重環縫いの縫目を形成するミシンに装備されるものである。以下の説明では、図1中に矢符により示した「左,右」及び「前,後」を使用する。ここで、「前」は、縫製作業者に近い側、「後」は、縫製作業者から離れた側であり、「左,右」は、前方から見た場合の「左,右」である。
【0037】
ミシンは、1つのルーパ1と2本の針2,2(図6〜図12参照)とを備えている。針2,2は、針棒駆動機構の動作により上昇及び下降する。図1〜図3中のA,Aは、針2,2の下降位置(針落ち位置)を示している。針落ち位置A,Aは、針板Pの略中央に、左右方向に間隔を隔てて設定してある。
【0038】
図示のルーパ1は、ルーパ駆動機構の動作により針2,2(針落ち位置A,A)の並び方向に進退動作(左進動作及び右退動作)する。図1には、左進位置にあるルーパ1を実線により示し、右退位置にあるルーパ1を破線により示してある。左進位置にあるルーパ1の先端は、針2,2の針落ち位置A,Aを超えて左方向に延出し、右退位置にあるルーパ1の先端は、針2,2の針落ち位置A,Aの右方に離れて位置する。なお、ルーパ1の進退動作の方向は、針2の上下動経路に略直交する方向であればよく、以下に示す本発明の構成は、ルーパの動作方向の如何に拘らずに実現することができる。
【0039】
ミシンは、針2,2の上昇及び下降動作と、ルーパ1の左進及び右退動作とにより、針板P上の縫製生地(図示を省略する)を縫製する。縫製生地は、ミシンベッドの内部に設けた送り機構の動作により、針板P上で後方向(図1中に白抜矢符により示す方向)に送り移動する。送り機構は、送り歯を備えている。送り歯は、針板P上に突出して後方向に移動し、針板P下に没入して前方向に復帰移動する動作を繰り返す。縫製生地は、送り歯が針板P上に突出している間にのみ移動力を加えられ、間欠的に送り移動する。
【0040】
針棒駆動機構、ルーパ駆動機構及び送り機構は、ミシン主軸からの伝動により互いに同期して動作する公知の機構である。針2,2は、各別に針糸20,20(図6〜図12参照)を保持し、送り移動を停止している間に縫製生地を貫通し、針板P下に達した後に上昇して縫製生地の上方に抜け出す。ルーパ1は、ルーパ糸10(図6〜図12参照)を保持し、針2,2の上昇開始に合わせて左進し、針板P下に形成される針糸20,20のループを捉える。縫製生地は、針2,2の抜け出し後に送り移動する。針2,2は、送り移動を終えた縫製生地を貫いて下降し、右退中のルーパ1が保持するルーパ糸10を捉える。ミシンは、以上の動作を繰り返し、縫製生地に二重環縫いの縫目を形成する。
【0041】
以上の如きミシンが備える縫目のほつれ止め装置は、糸掛けフック3及びストッパレバー4を備えている。糸掛けフック3は、針板Pの後側のミシンベッドの上部に、上下方向の支軸30を中心として揺動可能に支持してある。ストッパレバー4は、支軸30の後方に配した上下方向の支軸40を中心として揺動可能に支持してある。
【0042】
糸掛けフック3は、円弧形の湾曲形状を有し、支軸30から後方に延びるアーム3aの端部に左前方に折り返すように連設されている。糸掛けフック3の先端部は、左側後方から針2,2の針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、外向きに突出するフック部3bが設けてある。糸掛けフック3の基部(アーム3aとの連設部)は、連結ロッド31を介して糸操作ソレノイド32に連結してある。糸操作ソレノイド32は、励磁電流の通電により所定角度の回転出力を得るように構成されたロータリソレノイドである。糸操作ソレノイド32は、糸掛けフック3の右後方位置に出力端を上向きとして固定してある。糸操作ソレノイド32の出力端には、揺動アーム33が固定してあり。連結ロッド31は、糸掛けフック3の中途部と揺動アーム33の先端部とを連結している。
【0043】
図1は、糸操作ソレノイド32の消磁状態を示し、図2は、糸操作ソレノイド32の励磁状態を示している。糸操作ソレノイド32が消磁状態にある場合、揺動アーム33は、図1の揺動位置にある。糸操作ソレノイド32が励磁された場合、揺動アーム33は、図1中に矢符により示すように時計回りに揺動し、図2に示す揺動位置となる。揺動アーム33の揺動は、連結ロッド31を介して糸掛けフック3に伝わり、該糸掛けフック3は、図1中に矢符により示すように、支軸30を中心として反時計回りに揺動し、糸掛けフック3の先端のフック部3bは、図2に示すように、左右の針落ち位置A,Aの間に位置する。このように糸掛けフック3は、糸操作ソレノイド32の励磁に応じて、図1に示す待機位置から図2に示す糸掛け位置にまで揺動する。糸操作ソレノイド32は、フックアクチュエータに相当する。
【0044】
ストッパレバー4は、中間部を前記支軸40により支え、前方を凹として湾曲するアーチ形状を有している。右前方に延びるストッパレバー4の基部は、連結ロッド41を介してストッパソレノイド42に連結してある。ストッパソレノイド42は、糸操作ソレノイド32と同様のロータリソレノイドであり、ストッパレバー4の右方に離れた位置に出力端を上向きとして固定してある。ストッパソレノイド42の出力端には、揺動アーム43が固定してあり。連結ロッド41は、ストッパレバー4の基部と揺動アーム43の先端部とを連結している。
【0045】
図1は、ストッパソレノイド42の消磁状態を示している。ストッパソレノイド42が消磁状態にある場合、揺動アーム43は、図1の揺動位置にある。ストッパソレノイド42が励磁された場合、揺動アーム43は、図1中に矢符により示すように時計回りに揺動する。揺動アーム43の揺動は、連結ロッド41を介してストッパレバー4に伝わり、該ストッパレバー4は、図1中に矢符により示すように、支軸40を中心として時計回りに揺動する。
【0046】
ストッパソレノイド42が消磁状態にある場合、ストッパレバー4の左前方に延びる先端部4aは、図1に示すように、待機位置にある糸掛けフック3の一部に重なる。糸掛けフック3は、ストッパレバー4の重なり部の後位置に、前側を上げるように設けた段部3cを有している。ストッパレバー4の先端部4aは、段部3cの前位置で糸掛けフック3の下位置に重なることができる。またストッパレバー4は、支軸40と基部との間に段部4bを有している。段部4bは、後側を上げるように設けられ、図1に示すように、連結ロッド31の下位置での交叉を可能としている。
【0047】
糸掛けフック3が前記糸掛け位置に揺動する際、ストッパソレノイド42は消磁状態にある。ストッパレバー4は、糸掛けフック3により押されて反時計回りに揺動し、糸掛けフック3の揺動を可能とする。ストッパレバー4は、糸掛けフック3の通過後、図2中に実線により示す位置(拘束位置)となる。なお、糸掛けフック3が糸掛け位置に揺動する際には、糸操作ソレノイド32と共にストッパソレノイド42を励磁し、ストッパレバー4を図1中に2点鎖線にて示す位置(退避位置)に移動させてもよい。この場合、糸掛けフック3は、ストッパレバー4と全く干渉せずに揺動することができる。ストッパレバー4は、糸掛けフック3の揺動完了後、ストッパソレノイド42を消磁することで拘束位置となる。拘束位置にあるストッパレバー4の先端部4aは、糸掛けフック3の中途部に外向きに突設された止め部3dの後側に対向する。糸掛けフック3の止め部3dは、前記段部3cの後側に設けてあり、ストッパレバー4の先端部4aと略同一の高さ位置にある。
【0048】
図2に示す状態で糸操作ソレノイド32が消磁された場合、図2中に矢符により示すように、揺動アーム33は反時計回りに揺動し、糸掛けフック3は時計回りに揺動する。この揺動は、糸掛けフック3の止め部3dがストッパレバー4の先端部4aに当たることで拘束され、糸掛けフック3は、図3に示す保持位置において停止する。このとき糸掛けフック3の先端のフック部3bは、図2に示す糸掛け位置(左右の針落ち位置A,Aの間)から、図3に示す保持位置(左側の針落ち位置Aの左後方)に移動し、後述するように、左側の針2の針糸20を引っ掛けて、図3に示す位置で保持する。糸掛けフック3のフック部3bは、図示のように、面取りされた角部を有しており、以上の如き移動の間に接触する針糸20,20及びルーパ糸10の損傷を防止している。
【0049】
図3に示す状態でストッパソレノイド42が励磁された場合、図3中に矢符により示すように、揺動アーム43は反時計回りに揺動する。この揺動によりストッパレバー4は、時計回りに揺動し、該ストッパレバー4の先端部4aは、図3中に2点鎖線にて示すように糸掛けフック3の止め部3bから外れる。糸掛けフック3は、ストッパレバー4による拘束が解除されることで、図1に示す待機位置に復帰する。ストッパレバー4は、ストッパソレノイド42を消磁することで、図1に示す位置に戻る。ミシンによる前述した縫製は、図1に示す状態で行われる。ストッパソレノイド42は、ストッパアクチュエータに相当する。以上のように糸掛けフック3は、糸操作ソレノイド32及びストッパソレノイド42を選択的に励磁することにより、前述した待機位置、糸掛け位置及び保持位置の間で移動する。
【0050】
このような糸掛けフック3には、ルーパ糸保持体6が取付けてある。ルーパ糸保持体6は、糸掛けフック3と同様の円弧形の湾曲形状を有しており、基部の長手方向の2箇所に通した固定ねじ60,60により糸掛けフック3の中途部上面に固定されている。ルーパ糸保持体6の先端部は、糸掛けフック3の左側に沿って前方に延び、糸掛けフック3の先端部の前位置で針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、二股に分岐された糸受け部6aが設けてある。ルーパ糸保持体6は、固定ねじ60,60を緩めることで糸掛けフック3に対する位置調節が可能である。この位置調節は、先端の糸受け部6aによるルーパ糸10の後述する保持が確実になされるように実施される。
【0051】
このように取付けられたルーパ糸保持体6は、糸操作ソレノイド32及びストッパソレノイド42の動作により、糸掛けフック3と共に、前述した待機位置、糸掛け位置及び保持位置との間で移動する。ルーパ糸保持体6先端の糸受け部6aは、図2に示す糸掛け位置において、ルーパ1の上部を通って該ルーパ1の前側に進出し、図3に示す保持位置において、左側の針落ち位置Aの前方に位置する。
【0052】
ミシンは、更に、糸切り機構5を備えている。糸切り機構5は、糸切りフック50と糸切りメス51とを備えている。糸切りフック50及び糸切りメス51は、共通の基台54に取り付けてある。基台54は、右端部及び中途部を支持アーム55a,55bの前端部に連結して支持されている。支持アーム55a,55bは、夫々の後端部の上下方向の支軸を中心として揺動可能である。右側の支持アーム55aの揺動範囲は、中途部に設けたストッパねじ55cにより規制されている。左側の支持アーム55bは、コイルばね55dにより左向きに引っ張り付勢してある。
【0053】
糸切りメス51は、基台54の左端部に固定された板状の部材であり、左方に延びる端縁に刃部を有している。糸掛けフック50は、基台54と糸切りメス51との間に挾持された先端部に、後方に向けて突設された第1のフック部52と第2のフック部53とを備えている。第1,第2のフック部52は、左右方向に所定長離れて位置しており、図1には、糸切りメス51の下位置に重なる第1,第2のフック部52,53を破線により示してある。
【0054】
糸切りフック50は、糸切りメス51との重なり部分から右方に延びる延長部を有しており、この延長部は、基台54をガイドとして左右方向に摺動するスライダ56を介して糸切りレバー57の一端(前端)部に連結されている。糸切りレバー57は、前後方向の中途部を上下方向の支軸57aにより支え、該支軸57aを中心として揺動可能である。糸切りレバー57は、通常時には、戻しばね(図示を省略する)の付勢力により、支持アーム55aをストッパとする図1〜図3に示す揺動位置にあり、他端(後端)部に連結した糸切りアクチュエータ58(図4参照)の動作により時計回りに揺動する。
【0055】
糸切りフック50及び糸切りメス51は、通常縫製中には、図1〜図3に示す待機位置にある。この待機位置は、糸切りアクチュエータ58が動作しておらず、糸切りレバー57が図1〜図3に示す揺動位置となることで得られる。糸切りフック50及び糸切りメス51は、糸切りレバー57と共に右向きに揺動する前記支持アーム55aの作用により、基台54と共に右後方に移動し、ルーパ1の進退動作経路から外れて位置する。また糸切りフック50は、糸切りレバー57に連結されたスライダ56と共に右方向に移動し、図1〜図3に示すように、先端の一部を糸切りメス51の刃部から突出させた状態となる。
【0056】
糸切りレバー57は、糸切りアクチュエータ58の動作により揺動する。この揺動により、右側の支持アーム55aの押えが解除される結果、糸切りフック50及び糸切りメス51は、コイルばね55dの付勢による左側の支持アーム55bの揺動に応じて基台54と共に左前方に移動し、ルーパ1の進退動作経路の上に位置する。糸切りフック50は、糸切りレバー57の更なる揺動によりスライダ56と共に左進動作し、該糸切りフック50の第1,第2のフック部52,53は、糸切りメス51の左方に突出する。
【0057】
糸切りレバー57は、糸切りアクチュエータ58が非動作状態となることで、前記戻しばねの付勢力の作用により反時計回りに揺動する。これにより、糸切りフック50は、右退動作して糸切りメス51の下部に重なり、また糸切りフック50及び糸切りレバー57は、基台54と共に後方に移動して、図1〜図3に示す待機位置に復帰する。
【0058】
図4は、以上のように構成された縫目のほつれ止め装置を備えるミシンの制御系のブロック図である。ミシンの制御部8には、ペダルスイッチ21が発する踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bと、針2,2が上死点近傍にある時に発せられる針位置信号22と、後述のように発せられる糸切り信号23及び針糸払い信号24とが夫々入力されている。
【0059】
一方制御部8の出力は、前述した糸操作ソレノイド32、ストッパソレノイド42及び糸切りアクチュエータ58に夫々与えられている。糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、制御部8から糸操作ソレノイド32及びストッパソレノイド42に夫々与えられる動作指令に従って前述の如く動作し、糸切りフック50は、制御部8から糸切りアクチュエータ58に与えられる動作指令に従って前述の如く進退動作する。
【0060】
更に制御部8の出力は、ミシン主軸の駆動源であるミシンモータ80、布押え用の押え金を昇降する布押えシリンダ81、後述の如く切断される針糸20,20を跳ね上げるエアワイパ82、縫製生地の送り量を調整する送り低減機構83、及びルーパ1へのルーパ糸10の送り出しを抑制するルーパ糸抑制機構84に夫々与えられている。ミシンモータ80は、制御部8からの動作指令に従って駆動又は停止され、また布押えシリンダ81、エアワイパ82、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84は、制御部8からの動作指令に従って動作する。
【0061】
送り低減機構83は、送り機構の送り歯の動作態様を変えることで縫製生地の送り量を小さくする公知の機構である。送り低減機構83は、例えば、送り歯の動作経路を針板Pに対して傾け、該針板P上への突出時間を短くするように動作する。これにより、針板P上の縫製生地に送り歯が作用する時間が短くなり、縫製生地の送りピッチ、即ち、送り機構の1回の動作の間の縫製生地の送り量は小さくなる。
【0062】
ルーパ糸抑制機構84は、ルーパ1に送り込むルーパ糸10の中途部を挾持する糸調子皿と、該糸調子皿による挾持強さを増減するように動作するアクチュエータとを備える公知の機構である。ルーパ糸抑制機構84は、糸調子皿による挾持強さを高め、ルーパ糸10の付与抵抗を増すことにより、ルーパ糸10の送り出しを抑制する。
【0063】
制御部8は、縫製終了時に、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6を、ミシンモータ80、布押えシリンダ81、エアワイパ82、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84と関連して動作させることにより、本発明に係るほつれ止め方法を実行する。
【0064】
図5は、ほつれ止めのための制御部8の動作内容を示すタイムチャートである。制御部8は、CPU、ROM及びRAMを備えるコンピュータであり、図5のタイムチャートに従うほつれ止め動作は、ROMに格納された制御プログラムに従うCPUの一連の動作により実行される。図6〜図12は、本発明装置の動作説明図であり、図5のタイムチャートに従う制御部8の動作の間に生じる糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6の動作状態、並びに糸切りフック50の動作状態を示している。
【0065】
ミシンを使用する縫製作業者は、縫製生地の縫製を終了する際、ミシン駆動のためのペダルの踏み込み操作を止め、その後にほつれ止め動作を実行する場合には、前記ペダルを踏み返し操作する。ペダルスイッチ21は、前記ペダルに付設してあり、踏み込み操作中に踏み込み信号21aを出力し、踏み返し操作がなされたとき踏み返し信号21bを出力する。
【0066】
制御部8は、縫製生地の縫製が終了し、図5のS1時点において、ミシン駆動のためのペダルが踏み込み状態から中立状態に戻されたとき、即ち、ペダルスイッチ21から踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれもが与えられない状態となったとき、入力側に与えられる針位置信号22を参照して出力側のミシンモータ80に停止指令を発する。これによりミシンは、針2,2が上死点近傍にあってルーパ1が左進した状態で一時停止する。
【0067】
その後制御部8は、前記ペダルが踏み返し操作されるまで待機する。図5のS2時点において踏み返し操作がなされ、入力側に踏み返し信号21bが与えられた場合、制御部8は、以下に示すほつれ止め動作を開始する。なお制御部8は、ペダルスイッチ21から踏み込み信号21aが再入力された場合、通常縫製動作に復帰する。縫製作業者は、ペダルを再度踏み込み操作することで縫製生地の縫製を継続することができる。
【0068】
なお図5においては、S1時点からS2時点までの間に中立状態が維持されることとなっているが、このような中立状態の維持は必須の操作ではなく、縫製終了時のペダルの操作は、踏み込み状態から踏み返し状態に連続的に移行するようになされてもよい。この場合、移行の過程で中立位置を通過する際、踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれもが与えられない無信号状態が存在し、制御部8は、このような無信号状態をトリガとし、前述の如く、針2,2が上死点近傍に上昇し、ルーパ1が左進端近傍にまで進出した状態を実現した後にほつれ止め動作を開始する。
【0069】
また図5のタイムチャートでは、S2時点においてなされるペダルの踏み返し操作が、以下に示すほつれ止め動作の実行中に継続されることとなっているが、このような踏み返し操作の継続も必須ではなく、制御部8のほつれ止め動作は、踏み返し信号21bの入力停止後も継続して実行される。
【0070】
図6は、ほつれ止め動作の開始時における針2,2及びルーパ1の状態を示している。針2,2は、2本の針糸20,20とルーパ糸10とで二重環縫いの縫目Mが形成された縫製生地の上方に抜け出した状態にある。ルーパ1は、前記縫製生地の下側で左進し、針糸20,20が夫々形成する2つの針糸ループを捉えた状態にある。この状態で、針糸20,20及びルーパ糸10を切断すると、前述した図21Aに示すような縫い終わり部が形成される。
【0071】
ほつれ止め動作の開始後、制御部8は、まず出力側の糸操作ソレノイド32に動作指令を与え、該糸操作ソレノイド32を短時間励磁する。糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、糸操作ソレノイド32の励磁により、図1に示す待機位置から糸掛け位置に移動する。この移動は、前述したように、ストッパレバー4の先端部4aを左向きに押し拡げつつ生じる。
【0072】
ストッパレバー4は、糸掛けフック3が通過した後、復帰ばね(図示を省略する)のばね力の作用により、図2中に実線にて示す拘束位置に移動する。糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、糸操作ソレノイド32の消磁により、時計回りに復帰揺動する。この揺動は、糸掛けフック3の止め部3dが拘束位置にあるストッパレバー4の先端部4aに当たることで拘束され、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図3に示す保持位置にて停止する。
【0073】
図7には、糸掛け位置に移動し、保持位置に戻った糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6の先端部が図示してある。前述したように糸掛け位置に移動する糸掛けフック3の先端のフック部3bは、ルーパ1の左側から該ルーパ1の上を通り、左右の針2,2の針落ち位置A,Aの間に達し、ルーパ1の進出端側の針糸ループを超えて位置する。糸掛けフック3のフック部3bは、糸掛け位置から左後方に移動して保持位置に戻る間に、左側の針糸ループを引っ掛けて保持し、左側の針2の下降位置(針落ち位置A)よりもルーパ1の進出端側に位置させる。
【0074】
一方、糸掛け位置に移動するルーパ糸保持体6の先端の糸受け部6aは、ルーパ1の左側から該ルーパ1の先端部の前上部に位置する。糸受け部6aは、二股に分岐された形状を有しており、糸掛け位置への移動の間にルーパ1の先端部から縫製生地に向けて延びるルーパ糸10を捉え、該ルーパ糸10を前方に押す。糸受け部6aは、糸掛け位置から左後方に移動して保持位置に戻り、該糸受け部6aが保持したルーパ糸10を、図7に示すように、左側の針2の下降位置(針落ち位置A)よりも前側に位置させる。
【0075】
以上の如く糸掛けフック3を動作させた後、制御部8は、図5のS3時点において、出力側のミシンモータ80、送り低減機構83及びルーパ糸抑制機構84に動作指令を与える。この動作指令は、針位置信号22を参照し、針2,2が下降した後に上昇し、再度上死点近傍に位置するまでの間与えられる。これにより縫製生地は、一針分縫製される。またこの縫製は、送り低減機構83が動作することにより、通常縫製時よりは小さい送り量の下で実行される。またこの縫製は、ルーパ糸抑制機構84が動作することにより、ルーパ1へのルーパ糸10の送り出しを抑制した状態で実行される。この送り出しの抑制は、糸受け部6aが保持したルーパ糸10が緩み、該ルーパ糸10が位置ずれしないようにするためである。これにより、形成される縫目の見栄えが良好となり、縫目品質を高めることができる。
【0076】
糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図7に示す針糸20及びルーパ糸10の保持を、縫製生地の送り移動が完了し、左右の針2,2が縫製生地を貫通して下降し、左側の針2が、糸掛けフック3が保持する針糸20のループを通り、該ループを捉えるまで継続する。このとき、ルーパ糸保持体6が保持するルーパ糸10は、図7に示すように、左側の針2の前側を横切るように位置している。従って、左側の針2は、ルーパ糸10を捕捉せず、該ルーパ糸10は、右側の針2によりルーパ1の後側で捕捉されるのみである。
【0077】
制御部8は、左側の針2が針糸ループを捉えたタイミングでストッパソレノイド42に短時間の動作指令を与え、該ストッパソレノイド42を励磁する。この励磁によりストッパレバー4は、図3中に実線にて示す拘束位置から、2点鎖線により示す退避位置に移動し、糸掛けフック3の拘束を解除する。これにより糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、図8に示すように保持位置から待機位置に復帰移動し、針糸ループ及びルーパ糸10の保持を解除する。
【0078】
ルーパ1は、針2,2の下降と共に右退動作し、捕捉した針糸ループから抜け出す。この抜け出しにより、図9に示すように、右側の針2は、通常縫製時と同様にルーパ糸10を捕捉した状態となるのに対し、左側の針2は、ルーパ糸10ではなく、針糸20のループを捕捉した状態となる。
【0079】
この状態でルーパ1は、左進に転換し、針2,2は、上昇に転換する。図10に示すように、左進するルーパ1は、左右の針糸20,20のループを捉え、上昇する針2,2は、縫製生地の上方に抜け出す。これにより、ルーパ1が捉えた針糸20は、右側の針2の位置ではルーパ糸10を他糸ルーピングするのに対し、左側の針2の位置では、先に形成された針糸20のループを自糸ルーピングすることとなる。
【0080】
一針分の縫製動作は、針2,2が上死点近傍まで上昇し、ルーパ1が左進端近傍に達した状態で終了する。その後制御部8は、糸切り信号23が与えられるまで待機し、図5のS4時点において糸切り信号23が与えられると、出力側の糸切りアクチュエータ58に動作指令を与え、該糸切りアクチュエータ58に所定の動作を行わせる。これにより糸切りフック60は、左進した後に右退動作する。
【0081】
左進する糸切りフック50は、ルーパ1の上部に沿って図11に示す進出端にまで達する。このとき、糸切りフック50の先端部に設けた第1のフック部52は、ルーパ1が保持する針糸20,20のループ内を通ってルーパ1の先端から縫製生地に延びるルーパ糸10に左側に達し、糸切りフック50の中途部に設けた第2のフック部53は、左側の針糸20に左側から対向する。
【0082】
糸切りフック50は、進出端に達した後に右退動作する。第1のフック部52はルーパ糸10を捕捉し、また第2のフック部53は、2本の針糸20,20を順次捕捉する。このように捕捉されたルーパ糸10及び針糸20,20は、糸切りフック50の退入端にまで引かれる。このとき、図12に示すように、第2のフック部53に捉えられた針糸20,20は、糸切りメス51の先端の刃部に摺接することで切断され、また第1のフック部52に捉えられたルーパ糸10は、同様に糸切りメス51の先端の刃部に摺接することで切断されると共に、この切断位置よりもルーパ1側にて保持される。糸切りフック50及び糸切りメス51を備える糸切り機構5は、以上の動作により針糸20,20及びルーパ糸10を切断する。
【0083】
ルーパ糸抑制機構84は、以上の糸切り動作を終えるまで動作を継続し、ルーパ1の先端から縫製生地に延びるルーパ糸10に所定の張力を付与する。糸切りフック50先端の第1のフック部52は、緩みのないルーパ糸10を確実に捕捉することができる。
【0084】
図11,図12に示すように、糸切りフック50は、下面の前側に弾接する板ばね59のばね力により糸切りメス51との摺接部に押し付けられており、糸切りメス51による針糸20,20及びルーパ糸10の切断は、前記板ばね59による押し付け下にて確実になされる。切断されたルーパ糸10は、図12に示すように、糸切りフック50の下面と板ばね59との間に挟まれた状態で保持される。
【0085】
以上のように切断動作を終えた後、制御部8は、針糸払い信号24が与えられるまで待機し、図5のS5時点において針糸払い信号24が与えられると、出力側のエアワイパ82に動作指令を発し、該エアワイパ82を動作させる。エアワイパ82は、空気を吹き出し、針2,2側に連続する針糸20,20の切断端を跳ね上げる。その後制御部8は、図5のS6時点において出力側の布押えシリンダ81に動作指令を発し、該布押えシリンダ81を動作させて布押え用の押え金を上昇させて一連の動作を終える。
【0086】
これにより作業者は、縫製を終えた生地を針板P上から取り外し、新たな縫製生地をセットして次回の縫製を開始することができる。このときルーパ糸10は、糸切りフック50と糸切りメス51とにより針板Pの下で保持され、また針糸20,20は、針板P上に跳ね上げられて、図12に示すように、各別の針2,2から垂れ下がった状態となる。従って、作業者は、針糸20,20及びルーパ糸10に対して何らの始末を要することなく次回の縫製を開始することができる。
【0087】
なお、糸切り機構5による針糸20,20及びルーパ糸10の切断、エアワイパ82の動作による針糸20,20の跳ね上げ、及び布押えシリンダ81を動作による押え金の上昇は、本発明における必須の動作ではない。また実施の形態においてこれらの動作は、外部から与えられる糸切り信号23及び針糸払い信号24を待って、ほつれ止め動作に連続して実施するようにしてあるが、ほつれ止めのための一針分の縫製を終えた後、作業者による適宜の操作に応じた一連の動作として実施してもよい。
【0088】
図13は、実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の要部の構成を略示する上方からの平面図、図14は、同じく下方からの平面図、図15、図16は、同じく動作説明図である。以下の説明では、図15、図16中に矢符により示した「左,右」及び「前,後」を使用する。ここで、図1〜図3と同様、「前」は、縫製作業者に近い側、「後」は、縫製作業者から離れた側であり、「左,右」は、前方から見た場合の「左,右」である。
【0089】
実施の形態2の縫目のほつれ止め装置は、糸掛けフック3、ルーパ糸保持体6及びストッパレバー4を備えており、更に揺動レバー9を備えている。図13に示すように、糸掛けフック3は、針板Pが取付けられた針板台10の上面に、上下方向の支軸34を中心として揺動可能に支持されている。支軸34は、針板Pの右後側で、該針板Pの近傍に位置している。
【0090】
糸掛けフック3は、円弧形の湾曲形状を有しており、支軸34から左方に延びる支持アーム3eの先端部に、前方に折り返すように連設されている。糸掛けフック3の先端部は、針板Pの下側において、左側後方から針2,2の針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、外向きに突出するフック部3bが設けてある。支持アーム3eは、支軸34の前方にも延びており、この延設端には、連結ロッド35の一端部が連結されている。
【0091】
ルーパ糸保持体6は、円弧形の湾曲形状を有し、実施の形態1におけると同様に、2本の固定ねじ60,60により糸掛けフック3の基部に位置調節可能に取り付けてある。ルーパ糸保持体6の先端部は、糸掛けフック3の左側に沿って前方に延び、糸掛けフック3の先端部の前位置で針落ち位置A,Aに臨ませてあり、該先端部には、二股に分岐された糸受け部6aが設けてある。
【0092】
揺動レバー9は、針板台11の上面に、上下方向の支軸90を中心として揺動可能に支持されている。支軸90は、糸掛けフック3の支軸34から右方に離れて位置している。揺動レバー9は、支軸90から前方に延びており、該揺動レバー9の先端部には、前記連結ロッド35の他端部が連結されている。
【0093】
揺動レバー9は、先端部近傍の右側を下向きに折り曲げて一体形成された押し板91を備えている。図14に示すように、針板台11の下面には、揺動レバー9の左側に糸操作シリンダ92が固定してある。糸操作シリンダ92は、右向きに突出する出力ロッド93を備えるエアシリンダである。出力ロッド93の先端は、押し板91に対向している。出力ロッド93は、エアチューブ94を介して糸操作シリンダ92に供給される作動エアの作用により進出し、押し板91を右向きに押圧する。
【0094】
針板台11は、糸操作シリンダ92の左側に、前向きに突設されたばね掛け棒95を備えており、該ばね掛け棒95と前記押し板91との間に戻しばね96が張架されている。戻しばね96は、押し板91を左方向に引っ張り付勢するコイルばねであり、連結ロッド35と糸操作シリンダ92との間に配してある。図13、図15、図16においては、連結ロッド35の中途部を破断して戻しばね96の一部を示してある。
【0095】
糸操作シリンダ92が非作動状態にある場合、揺動レバー9は、戻しばね96のばね力により左方に引かれ、図13に示す揺動位置となる。糸掛けフック3先端のフック部3b及びルーパ糸保持体6先端の糸受け部6aは、図13に示すように、針2,2の針落ち位置A,Aの左後方に離れた待機位置にある。
【0096】
糸操作シリンダ92が作動した場合、出力ロッド93が進出し、押し板91を右向きに押圧する。この押圧により揺動レバー9は、図15中に矢符により示すように、戻しばね96のばね力に抗して反時計回りに揺動する。糸掛けフック3の支持アーム3eは、支軸34を中心として反時計回りに揺動し、糸掛けフック3先端のフック部3b、及びルーパ糸保持体6の先端の糸受け部6aは、図15中に矢符により示すように、右前方に進出して、図15に示す糸掛け位置に達し、実施の形態1におけると同様に、フック部3bは、ルーパ1の後側で左側(ルーパ1の進出端側)の針糸ループを超えて位置し、糸受け部6aは、フック部3bの前方でルーパ1の上側に位置する。
【0097】
図14に示すように、ストッパレバー4は、針板台11の下面に上下方向の支軸44を中心として揺動可能に支持されている。支軸44は、揺動レバー9の支軸90の近傍に位置する。ストッパレバー4は、支軸44から右方に延びている。ストッパレバー4は、先端部近傍の後側を下向きに折り曲げて一体形成された押し板45を備え、また前縁の中途部を切欠いてなる係合凹部46を備えている。
【0098】
針板台11の下面には、後端部近傍にストッパシリンダ47が固定されている。ストッパシリンダ47は、後向きに突出する出力ロッド48を備えるエアシリンダである。出力ロッド48の先端は、押し板45に対向している。出力ロッド48は、エアチューブ49を介してストッパシリンダ47に供給される作動エアの作用により進出し、押し板45を後向きに押圧する。
【0099】
針板台11の上面には、ばね掛け棒97が、ストッパシリンダ47の上側で右向きに突設されており、該ばね掛け棒97とストッパレバー4の先端部との間には戻しばね98が張架されている。戻しばね98は、ストッパレバー4の先端部を後方向に引っ張り付勢するコイルばねである。図13、図15及び図16においては、針板台11の一部を破断して、戻しばね98とストッパレバー4との連結部を示してある。
【0100】
ストッパシリンダ47が非作動状態にある場合、ストッパレバー4は、戻しばね98のばね力により前方に引かれ、図14に示すように、揺動レバー9の押し板91に前縁を押し当てた位置にある。この状態で糸操作シリンダ92が作動した場合、押し板91は、ストッパレバー4の前縁に沿って右方に移動する。ストッパレバー4は、移動する押し板91が前縁に設けた係合凹部46に整合した時点で戻しばね98のばね力により引かれ、図14における反時計回りに揺動し、図15に示すように、係合凹部46の底面を揺動レバー9の押し板91に押し当てた状態となる。
【0101】
この状態で糸操作シリンダ92が非作動状態となった場合、揺動レバー9は、戻しばね96のばね力により左方に引かれ、図16中に矢符で示すように時計回りに揺動する。この揺動は、ストッパレバー4の係合凹部46内で押し板91が滑り移動し、該押し板91が係合凹部46の左側縁に係合する位置で拘束される。この時、糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、支軸34を中心として時計回りに揺動し、糸掛けフック3先端のフック部3b及びルーパ糸保持体6の先端の糸受け部6aは、左後方に後退移動し、糸掛け位置の近くの保持位置に位置決めされる。この移動の間に実施の形態1におけると同様に、フック部3bは、左側の針糸ループを捉えて引き戻し、ルーパ1の進出端側に位置させ、糸受け部6aは、ルーパ1から縫製生地に延びるルーパ糸を押し、針2の下降位置よりも前側に位置させる。
【0102】
この状態でストッパシリンダ47が作動した場合、出力ロッド48が進出し、ストッパレバー4の押し板45を後向きに押圧する。この押圧によりストッパレバー4は、戻しばね98のばね力に抗して揺動する。ストッパレバー4に設けた係合凹部46は後方に移動し、押し板91との係合を解除する。これにより揺動レバー9は、戻しばね96のばね力の作用で時計回りに揺動し、糸掛けフック3は、保持位置から左後方に移動し、図13に示す待機位置に戻る。ストッパレバー4は、ストッパシリンダ47が非作動状態となることで戻しばね98のばね力の作用により揺動し、図13に示す揺動位置に復帰する。
【0103】
実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置において糸掛けフック3及びルーパ糸保持体6は、糸操作シリンダ92及びストッパシリンダ47を選択的に動作させることで、待機位置と糸掛け位置と保持位置との間で移動し、実施の形態1と同様のほつれ止め方法を実施することができる。糸操作シリンダ92は、フックアクチュエータに相当し、ストッパシリンダ47は、ストッパアクチュエータに相当する。
【0104】
実施の形態2に係る縫目のほつれ止め装置の動作は、糸操作シリンダ92及びストッパシリンダ47、より詳しくは、糸操作シリンダ92及びストッパシリンダ47に作動エアを給排する給排弁を制御対象とし、図4に示すように構成された制御部8が、図5に示すタイムチャートと同様の制御動作を行うことで達成することができる。
【0105】
図17は、本発明により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図、図18は、図17に示す縫目のほつれ止め効果の説明図である。なおこれらの図においては、図6〜図12とは、左右関係が逆となっているが、以下の説明では、図6〜図12における左,右を使用する。また図17、図18において、縫製生地の送り移動の方向は白抜矢符にて示す方向であり、図17、図18においては、上方が送り移動方向の下流側となり、下方が送り移動方向の上流側となる。
【0106】
図17に示すように、ルーパ糸10は、二重環縫いの縫目Mの最後に縫製生地の裏面に形成される右側(図17においては左側)の針糸ループ20a(以下、右最終ループ20aという)内を通り、ほつれ止めのための一針分の縫製の際に縫製生地の裏面に抜け出す同側の針糸20の前で折り返し、右最終ルーパ6a内を再度通った位置で切断される。
【0107】
一方、一針分の縫製の際に縫製生地の裏面に抜け出す左側(図17においては右側)の針糸20は、前述したように、通常縫製時の最後に縫製生地の裏面に形成される左側の針糸ループ20b(以下、左最終ループ20bという)内を通り、該左最終ループ20bを自糸ルーピングし、単環縫いの縫目を形成する。従って、ルーパ糸10は、図示のように、左側の針糸20と左最終ループ20bとの間に押えられた状態となる。
【0108】
図17、図18において左最終ループ20bは、針糸20との絡みを明示するために緩んだ状態で示されているが、実際の左最終ループ20bは、針糸20が通った後に引き締められ、右最終ループ20aと同様の状態となる。従って、ルーパ糸10は、針糸20と左最終ループ20bとで強固に押えられ、図示のように、左最終ループ20bと、一回前に形成された左針糸ループ20cとの間に掛け渡された状態で拘束される。この拘束は、ルーパ糸10に加わる如何なる方向の作用力に対しても維持されるから、二重環縫いの縫目Mに特有のほつれの発生を、その発生段階にて確実に防止することができる。
【0109】
前述したように、一針分の縫製時における縫製生地の送りピッチは、通常縫製時における縫製生地の送りピッチよりも小さい。従って、図17に示すように、一針分の縫製時における針糸20の抜け出し位置と左最終ループ20bとの間の間隔Lは、左最終ループ20bと一回前に形成された左針糸ループ20cとの間の間隔L0 よりも小さくなる。これにより、左側の針糸20と左最終ループ20bとの間でのルーパ糸10の押えは強化され、ルーパ糸10の抜けに起因するほつれの発生をより確実に防止することができる。
【0110】
ルーパ糸10の押えを強化するという観点から見た場合、前記間隔Lは、可及的に小さくするのが望ましい。一方、前記間隔Lが小さい場合、例えば、薄い縫製生地において、針糸20の抜け出し位置と左最終ループ20bとの間の強度が不足し、縫製生地の損傷を引き起こす虞れがある。それ故、前記間隔L、即ち、一針分の縫製時における縫製生地の送りピッチは、縫製生地の種類に応じて適正に設定する必要がある。
【0111】
図18は、ルーパ糸10の切断端部が、図中に矢符により示す向きに引っ張られた状態を示している。この引っ張りがなされた場合、前述のように、同側の針糸20の前を通るルーパ糸10のループが縮小し右最終ループ20a内に引き込まれる。この結果、針糸20は、ルーパ糸10と右最終ループ20aとの間に挟まれた状態となり、針糸20とルーパ糸10とにより、図示のような「結び目」が形成される。この「結び目」は、ルーパ糸10にも抵抗を加え、該ルーパ糸10の抜けを防止する作用をなすから、図18に示す状態となった場合、二重環縫いの縫目のほつれは、左側の自糸ルーピング部と、右側の「結び目」との相乗作用により一層確実に防止することができる。
【0112】
また以上の如く構成される縫目において、右最終ループ20aから突出するルーパ糸10の切断端部の長さは、図18に示すように十分に短いから、縫製作業者は、切断端部の始末を必要とせずに良好な見栄えを有する高品質の縫目を形成することができる。
【0113】
以上の実施の形態においては、縫製生地の送りピッチを、自糸ルーピングのための一針分の縫製の間に変更しているが、この変更は、前記一針分の縫製の前段階から実施してもよい。図19は、制御部8の動作内容の他の実施の形態を示すタイムチャートである。
【0114】
ほつれ止め動作を実行する場合、縫製作業者は、前述したように、縫製作業の終了時にペダルを中立位置に戻し、その後に踏み返す操作を行う。制御部8は、縫製生地の縫製が終了し、図19のS1時点において、ペダルが中立状態に戻されたとき、入力側に与えられる針位置信号22を参照して出力側のミシンモータ80に停止指令を発する。この実施の形態においてミシンは、針2,2が下死点近傍に下降し、ルーパ1が右退した状態で一時停止する。制御部8は、ペダルが踏み返し操作されるまで待機し、図19のS2時点において踏み返し操作がなされ、入力側に踏み返し信号21bが与えられた場合、制御部8は、以下に示すほつれ止め動作を開始する。
【0115】
なお、図5の説明において述べたように、S1時点からS2時点までのペダルの中立状態の維持は必須の操作ではなく、またS2時点以降のペダルの踏み返し操作の継続も必須の操作ではない。これらの場合に制御部8は、中立状態の通過時に生じる無信号状態、即ち、踏み込み信号21a及び踏み返し信号21bのいずれもが与えられない状態をトリガとして以下に示すほつれ止め動作を開始し、この動作を、踏み返し信号21bの入力停止後も継続する。
【0116】
ほつれ止め動作を開始した制御部8は、まず送り低減機構83に動作指令を与え、その後のS3時点において、ミシンモータ80に動作指令を与える。この動作指令は、針位置信号22を参照し、針2,2が停止位置から上昇して上死点近傍に位置するまでの間与えられる。これにより縫製生地は、半針分縫製される。この縫製は、送り低減機構83が動作状態にあることから、通常縫製時よりも小さい送りピッチの下で実行される。
【0117】
以上の動作により、針2,2は上死点近傍に上昇し、ルーパ1は左進端近傍にまで進出した状態となる。その後制御部8は、S4時点において出力側の糸操作ソレノイド32に動作指令を与え、該糸操作ソレノイド32を短時間励磁し、次いで、S5時点において、出力側のミシンモータ80及びルーパ糸抑制機構84に動作指令を与える。
【0118】
ミシンモータ80への動作指令は、針位置信号22を参照し、上死点にある針2,2が下降した後に上昇し、再度上死点近傍に位置するまでの間与えられる。これにより縫製生地は、一針分縫製される。このとき、送り低減機構83は動作を継続し、またルーパ糸抑制機構84が動作しており、一針分の縫製は、通常縫製時よりは小さい送りピッチの下で、ルーパ1へのルーパ糸10の送り出しを抑制した状態で実行される。
【0119】
その後制御部8は、S6時点において糸切りアクチュエータ58に、またS7時点においてエアワイパ82に、更に、S8時点において布押えシリンダ81に夫々動作指令を発し、これらを動作させて一連の動作を終える。図19のS4〜S8の動作は、図5におけるS2〜S6の動作と同じであり、この動作の間に、自糸ルーピングのための一針分の縫製がなされ、糸切り機構5により針糸20,20及びルーパ糸10が切断され、エアワイパ82の動作により切断された針糸20,20が跳ね上げられm更に布押えシリンダ81を動作により押え金が上昇する。
【0120】
図20は、以上の動作により得られる2本針二重環縫いの縫目構造を縫製生地の裏面から見た図である。本図は、図18と同様、ルーパ糸10の切断端部が、図中に矢符により示す向きに引っ張られた状態を示しており、二重環縫いの縫目Mのほつれは、左側(図20における右側)の自糸ルーピング部と、右側(図20における左側)の「結び目」との相乗作用により確実に防止することができる。
【0121】
この実施の形態においては、自糸ルーピングのための一針分の縫製の前に、縫製生地の送りを低減した状態で半針分の縫製がなされる。従って、図20に示す縫目構造においては、最後の針糸20の抜け出し位置と左最終ループ20bとの間の間隔L1 だけでなく、左最終ループ20bの一針前の左針糸ループ20cとの間隔L2 も、更に一針前の左針糸ループ20cとの間隔L0 よりも小さくなる。従って、自糸ルーピング部分が、該部分よりも前位置の他糸ルーピング部分を含めて密となり、ルーパ糸10の押えが一層強化され、縫い終わり部分でのルーパ糸10の抜けを起点とするほつれの発生をより確実に防止することができる。
【0122】
なお以上の実施の形態においては、2本の針糸20,20とルーパ糸10とにより形成する二重環縫いの縫目について説明したが、本発明に係る縫目のほつれ止め装置、及びこの装置を用いて実施する縫目のほつれ止め方法は、3本以上の針糸を使用する多本針二重環縫いの縫目においても同様に適用でき、ほつれの発生を有効に防止することができる。
【0123】
また以上の実施の形態においては、2本の針糸20,20が形成する針糸ループのうち、ルーパ1の進出端側に位置する1つを捉え、この状態で1針分の縫製動作を行わせる場合について説明したが、捉える針糸ループは、ルーパ1の進出端側の1つを含む複数であってもよく、またこの保持状態で実施する縫製動作も、2針分、又はそれ以上であってもよい。
【0124】
また以上の実施の形態においては、糸掛けフック3は、針落ち位置Aの左後方と右前方との間で動作して針糸20を捉えるようにしてあるが、糸掛けフック3は、他の動作で針糸20を捉えるようにしてもよい。また針糸20は、実施の形態に示すルーパ1の後側に限らず、ルーパ1の前側で捉えるようにしてもよい。更に、本発明においては、特許請求の範囲に示すように、針糸ループを針2の下降位置よりもルーパ1の進出端側に位置させておけばよく、実施の形態に示すように、糸掛けフック3による針糸20の保持は必須ではない。
【0125】
また以上の実施の形態において、ルーパ糸保持体6は、糸掛けフック3に取り付けてあり、該糸掛けフック3と一体に動作してルーパ糸10を保持するようにしてあるが、ルーパ糸保持体6は、他の動作でルーパ糸10を保持するように構成することもできる。ルーパ糸保持体6は、糸掛けフック3と別体に設け、糸掛けフック3と異なる専用のアクチュエータにより動作させることも可能である。更に、本発明においては、特許請求の範囲に示すように、ルーパ糸10を針2の下降位置よりも前側に位置させておけばよく、実施の形態に示すように、ルーパ保持体6によるルーパ糸10の保持は必須ではない。
【符号の説明】
【0126】
1 ルーパ
2 針
3 糸掛けフック
4 ストッパレバー
6 ルーパ糸保持体
8 制御部
10 ルーパ糸
20 針糸
32 糸操作ソレノイド(フックアクチュエータ)
42 ストッパソレノイド(ストッパアクチュエータ)
47 ストッパシリンダ(ストッパアクチュエータ)
92 糸操作シリンダ(フックアクチュエータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針糸を保持して上下動する針が針板の下に形成する針糸ループを、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進出するルーパにより捉え、該ルーパが保持するルーパ糸により前記針糸ループを他糸ルーピングして形成される二重環縫いの縫目のほつれを防止する方法において、
通常縫製の終了時に前記ルーパを進出状態とし、該ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に夫々位置させ、その後、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸ループ及びルーパ糸の位置を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせ、前記針が保持する針糸により前記ルーパが保持する針糸ループを自糸ルーピングすることを特徴とする縫目のほつれ止め方法。
【請求項2】
前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設されており、夫々の針が形成する複数の針糸ループのうち、前記ルーパの進出端側に位置する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に位置させることを特徴とする請求項1に記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項3】
前記少なくとも一針分の縫製動作を、前記縫製生地の送りを停止、又は前記縫製生地の送りピッチを通常縫製時よりも小さくして実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項4】
前記縫製生地の送りの停止、又は通常縫製時よりも小さい送りピッチでの前記縫製生地の送りを、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から実施することを特徴とする請求項3に記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項5】
前記ルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に位置させた後、該ルーパ糸の前記ルーパへの送り出しを抑制することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項6】
針糸を保持して上下動する針と、ルーパ糸を保持して、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進退動作するルーパとを備え、前記針が前記針板の下に形成する針糸ループを前記ルーパの進出によって捉え、該ルーパが保持するルーパ糸で前記針糸ループを他糸ルーピングして前記縫製生地に二重環縫いの縫目を形成するミシンに装備してあり、前記縫目のほつれを防止するほつれ止め装置において、
前記ルーパに対して接近及び離反動作し、接近動作時に前記ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側で保持する針糸保持機構と、
前記ルーパに対して接近及び離反動作し、該ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側で保持するルーパ糸保持機構と、
前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構の接離動作を、前記針及びルーパの動作、並びに前記縫製生地の送り動作と関連して制御する制御部とを備え、
該制御部は、前記ルーパを進出位置とし、前記針を上昇位置として通常縫製を終えた後に、前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構を接近動作させて前記針糸ループ及びルーパ糸を夫々保持させ、前記針の下降及び上昇を、前記ルーパの進退動作、及び前記縫製生地の送り動作と合わせて実行する少なくとも一針分の縫製動作を、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構による保持状態を維持して行わせることを特徴とする縫目のほつれ止め装置。
【請求項7】
前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設してある場合、前記針糸保持機構は、前記ルーパの進出端側に位置する針が形成する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを保持することを特徴とする請求項6に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記少なくとも一針分の縫製動作を前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくして実行することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から、前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくすることを特徴とする請求項8に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項10】
前記針糸保持機構は、
前記針板下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフック及びストッパレバーと、
前記糸掛けフックを、前記ルーパから離れた待機位置から、前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、
前記ストッパレバーを、前記糸掛けフックの揺動域から外れた退避位置から、前記糸掛けフックの一部に当接する拘束位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、
前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを前記ストッパレバーとの当接により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項11】
前記針糸保持機構は、
前記針板の下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフックと、
該糸掛けフックよりも前記針板から離れた位置に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する揺動レバー及びストッパレバーと、
前記糸掛けフックと前記揺動レバーとを連結する連結ロッドと、
前記連結ロッドを介して前記糸掛けフックに作用し、該糸掛けフックを前記ルーパから離れた待機位置から前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、
前記ストッパレバーを、前記揺動レバーの一部に係合する係合位置から、該係合位置から外れた退避位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、
前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを、前記ストッパレバーと前記揺動レバーの係合により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項12】
前記ルーパ糸保持機構は、
前記糸掛けフックに取付けてあり、該糸掛けフックと共に前記糸掛け位置、保持位置及び待機位置との間で移動するルーパ糸保持体を備え、
該ルーパ糸保持体は、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記待機位置から前記糸掛け位置への移動の間に捉え、捉えたループ糸を前記保持位置において前記針の下降位置よりも前側で保持することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項13】
前記ルーパ糸保持体は、前記糸掛けフックに対する位置調節可能に取付けてあることを特徴とする請求項12に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め方法によって縫製生地に形成される二重環縫いの縫目構造において、
前記縫製生地の裏面に形成された針糸ループのうち少なくとも縫製方向の終端に位置する針糸ループが前記縫製生地を貫く針糸により自糸ルーピングされていることを特徴とする縫目構造。
【請求項15】
請求項6乃至請求項13のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め装置によって縫製生地に形成される二重環縫いの縫目構造において、
前記縫製生地の裏面に形成された針糸ループのうち少なくとも縫製方向の終端に位置する針糸ループが前記縫製生地を貫く針糸により自糸ルーピングされていることを特徴とする縫目構造。
【請求項1】
針糸を保持して上下動する針が針板の下に形成する針糸ループを、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進出するルーパにより捉え、該ルーパが保持するルーパ糸により前記針糸ループを他糸ルーピングして形成される二重環縫いの縫目のほつれを防止する方法において、
通常縫製の終了時に前記ルーパを進出状態とし、該ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に夫々位置させ、その後、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸ループ及びルーパ糸の位置を維持して少なくとも1針分の縫製動作を行わせ、前記針が保持する針糸により前記ルーパが保持する針糸ループを自糸ルーピングすることを特徴とする縫目のほつれ止め方法。
【請求項2】
前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設されており、夫々の針が形成する複数の針糸ループのうち、前記ルーパの進出端側に位置する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側に位置させることを特徴とする請求項1に記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項3】
前記少なくとも一針分の縫製動作を、前記縫製生地の送りを停止、又は前記縫製生地の送りピッチを通常縫製時よりも小さくして実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項4】
前記縫製生地の送りの停止、又は通常縫製時よりも小さい送りピッチでの前記縫製生地の送りを、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から実施することを特徴とする請求項3に記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項5】
前記ルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側に位置させた後、該ルーパ糸の前記ルーパへの送り出しを抑制することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め方法。
【請求項6】
針糸を保持して上下動する針と、ルーパ糸を保持して、前記針の上下運動経路に略直交する方向に進退動作するルーパとを備え、前記針が前記針板の下に形成する針糸ループを前記ルーパの進出によって捉え、該ルーパが保持するルーパ糸で前記針糸ループを他糸ルーピングして前記縫製生地に二重環縫いの縫目を形成するミシンに装備してあり、前記縫目のほつれを防止するほつれ止め装置において、
前記ルーパに対して接近及び離反動作し、接近動作時に前記ルーパが捉えた針糸ループを前記針の下降位置よりも前記ルーパの進出端側で保持する針糸保持機構と、
前記ルーパに対して接近及び離反動作し、該ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記針の下降位置よりも前側で保持するルーパ糸保持機構と、
前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構の接離動作を、前記針及びルーパの動作、並びに前記縫製生地の送り動作と関連して制御する制御部とを備え、
該制御部は、前記ルーパを進出位置とし、前記針を上昇位置として通常縫製を終えた後に、前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構を接近動作させて前記針糸ループ及びルーパ糸を夫々保持させ、前記針の下降及び上昇を、前記ルーパの進退動作、及び前記縫製生地の送り動作と合わせて実行する少なくとも一針分の縫製動作を、前記針が下降して前記針糸ループに通るまで前記針糸保持機構及びルーパ糸保持機構による保持状態を維持して行わせることを特徴とする縫目のほつれ止め装置。
【請求項7】
前記針が前記ルーパの進出方向に複数並設してある場合、前記針糸保持機構は、前記ルーパの進出端側に位置する針が形成する針糸ループを含む少なくとも1つの針糸ループを保持することを特徴とする請求項6に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記少なくとも一針分の縫製動作を前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくして実行することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記少なくとも一針分の縫製動作の前の段階から、前記縫製生地の送りピッチをゼロ、又は通常縫製時よりも小さくすることを特徴とする請求項8に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項10】
前記針糸保持機構は、
前記針板下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフック及びストッパレバーと、
前記糸掛けフックを、前記ルーパから離れた待機位置から、前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、
前記ストッパレバーを、前記糸掛けフックの揺動域から外れた退避位置から、前記糸掛けフックの一部に当接する拘束位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、
前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを前記ストッパレバーとの当接により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項11】
前記針糸保持機構は、
前記針板の下に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する糸掛けフックと、
該糸掛けフックよりも前記針板から離れた位置に配してあり、該針板と略平行な面内で揺動する揺動レバー及びストッパレバーと、
前記糸掛けフックと前記揺動レバーとを連結する連結ロッドと、
前記連結ロッドを介して前記糸掛けフックに作用し、該糸掛けフックを前記ルーパから離れた待機位置から前記ルーパに接近した糸掛け位置に揺動させるフックアクチュエータと、
前記ストッパレバーを、前記揺動レバーの一部に係合する係合位置から、該係合位置から外れた退避位置に揺動させるストッパアクチュエータとを備え、
前記制御部は、前記フックアクチュエータ及びストッパアクチュエータを選択的に制御し、前記糸掛けフックが前記糸掛け位置で捉えた針糸ループを、前記ストッパレバーと前記揺動レバーの係合により前記糸掛け位置と前記待機位置との間の保持位置で保持させることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項12】
前記ルーパ糸保持機構は、
前記糸掛けフックに取付けてあり、該糸掛けフックと共に前記糸掛け位置、保持位置及び待機位置との間で移動するルーパ糸保持体を備え、
該ルーパ糸保持体は、前記ルーパから前記縫製生地に延びるルーパ糸を前記待機位置から前記糸掛け位置への移動の間に捉え、捉えたループ糸を前記保持位置において前記針の下降位置よりも前側で保持することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項13】
前記ルーパ糸保持体は、前記糸掛けフックに対する位置調節可能に取付けてあることを特徴とする請求項12に記載の縫目のほつれ止め装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め方法によって縫製生地に形成される二重環縫いの縫目構造において、
前記縫製生地の裏面に形成された針糸ループのうち少なくとも縫製方向の終端に位置する針糸ループが前記縫製生地を貫く針糸により自糸ルーピングされていることを特徴とする縫目構造。
【請求項15】
請求項6乃至請求項13のいずれか1つに記載の縫目のほつれ止め装置によって縫製生地に形成される二重環縫いの縫目構造において、
前記縫製生地の裏面に形成された針糸ループのうち少なくとも縫製方向の終端に位置する針糸ループが前記縫製生地を貫く針糸により自糸ルーピングされていることを特徴とする縫目構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−6009(P2013−6009A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206440(P2011−206440)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000114868)ヤマトミシン製造株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000114868)ヤマトミシン製造株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
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