説明

繊維基材を処理するためのフルオロケミカルウレタン組成物

本発明の組成物には、1種または複数のフルオロケミカルウレタン化合物と1種または複数のシルセスキオキサン化合物とを含む。このフルオロケミカルウレタン化合物には、(a)1種または複数の多官能イソシアネート化合物;(b)1種または複数のフルオロケミカル単官能化合物;および場合によっては(c)1種または複数の親水性ポリオキシアルキレン化合物;および/または(d)1種または複数のシラン化合物;の反応生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維基材を処理するための、1種または複数のフルオロケミカルウレタン化合物、および1種または複数のシルセスキオキサン化合物を含むフルオロケミカル組成物に関する。このフルオロケミカル組成物は、このフルオロケミカル組成物で処理した繊維基材の撥油性および/または撥水性、染み防止性および/または汚れ防止性、ならびに染み解放性および/または汚れ解放性の内の1つまたは複数を改良すると共に、耐久性を改良することができる。
【背景技術】
【0002】
繊維および繊維基材、たとえばテキスタイル、紙および皮革などの上にある種のフルオロケミカル組成物を使用することによって、撥油性および撥水性ならびに汚れ抵抗性および染み抵抗性を付与することは、当業者には周知である。たとえば、バンクス(Banks)編『オルガノフルオライン・ケミカルズ・アンド・ゼア・インダストリアル・アプリケーションズ(Organofluorine Chemicals and Their Industrial Applications)』(エリス・ホーウッド・リミテッド(Ellis Horwood Ltd.)、英国チチェスター(Chichester,England)(1979)、p.226〜234を参照されたい。そのようなフルオロケミカル組成物に含まれるものとしては、たとえば、フルオロケミカルグアニジン(米国特許第4,540,497号明細書、チャン(Chang)ら)、カチオン性および非カチオン性フルオロケミカル組成物(米国特許第4,566,981号明細書、ハウエルズ(Howells))、フルオロケミカルカルボン酸およびエポキシ系カチオン性樹脂を含む組成物(米国特許第4,426,466号明細書、シュバルツ(Schwartz))、フルオロ脂肪族カルボジイミド(米国特許第4,215,205号明細書、ランドゥッチ(Landucci))、フルオロ脂肪族アルコール(米国特許第4,468,527号明細書、パーテル(Patel))、フッ素含有付加ポリマー、コポリマー、およびマクロマー(米国特許第2,803,615号明細書;同第3,068,187号明細書;同第3,102,103号明細書;同第3,341,497号明細書;同第3,574,791号明細書;同第3,916,053号明細書;同第4,529,658号明細書;同第5,216,097号明細書;同第5,276,175号明細書;同第5,725,789号明細書;同第6,037,429号明細書)、フッ素含有リン酸エステル(米国特許第3,094,547号明細書;同第5,414,102号明細書;同第5,424,474号明細書)、フッ素含有ウレタン(米国特許第3,987,182号明細書;同第3,987,227号明細書;同第4,504,401号明細書;同第4,958,039号明細書)、フルオロケミカルアロファネート(米国特許第4,606,737号明細書)、フルオロケミカルビウレット(米国特許第4,668,406号明細書)、フルオロケミカルオキサゾリジノン(米国特許第5,025,052号明細書)、およびフルオロケミカルピペラジン(米国特許第5,451,622号明細書)などが挙げられる。
【0003】
米国特許第3,493,424号明細書(モーロック(Mohrlok)ら)には、滑り防止、艶消し、および/または乾燥汚れ抵抗性を与えた繊維材料が記載されているが、そのためには、シルセスキオキサンのコロイド懸濁液を塗布し、次いでその材料を乾燥させている。米国特許第4,351,736号明細書(スタインバーガー(Steinberger)ら)には、ケイ酸とオルガノシルセスキオキサンのコロイド懸濁液を含む、テキスタイルのパイル安定化含浸剤が記載されている。米国特許第4,781,844号明細書(コルトマン(Kortmann)ら)には、オルガノシルセスキオキサン含有ゾルと、汚れ抵抗性を付与するためのペルフルオロアルキル基を含む有機ポリマー樹脂との水性コロイド懸濁液を含む、テキスタイル仕上げ剤の記載がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶媒系および水系のフルオロケミカル組成物が、繊維表面に撥水性および撥油性を与えるために用いられてきた。有機溶媒は、健康、安全および環境の面で問題があるので、水系の組成物が特に望ましい。しかしながら、従来知られている組成物は典型的には水性分散体またはエマルションであって、溶液ではなく、そのため、良好な撥水・撥油・防汚性を付与するためには、高温で硬化させる必要があった。多くの場合、たとえば高温硬化は、実際的でなかったり、不可能であったりする。この理由から、コストがかかりエネルギー消費の多い高温硬化条件を必要とせずに、良好な撥水・撥油・防汚性を付与できる、フルオロケミカルウレタンに対するニーズが依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様において、本発明は、1種または複数のフルオロケミカルウレタン化合物および1種または複数のシルセキオキサン(silsequioxane)化合物を含む、フルオロケミカル組成物に関するが、ここで前記シルセスキオキサンには、10重量%未満の、テトラアルコキシシラン(tetralkoxysilanes)の共縮合物(またはそれの加水分解生成物(hydrosylates)、たとえば、Si(OH)4)を含む。このシルセスキオキサンには、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の、テトラアルコキシシランの共縮合物、またはその加水分解生成物を含む。この組成物は、撥油性を犠牲にすることなく優れた撥水性を与える点に特徴がある。ポリオルガノシラン、たとえばポリ(ジメチルシロキサン)は、繊維基材に撥水性を付与し、繊維基材の「手触り(hand)」や柔軟性を改良する目的で使用されてはきたが、それらは、撥油性および/または防汚性に関しては悪影響があることが知られている。
【0006】
これらのフルオロケミカルウレタン化合物には、(a)1種または複数の多官能イソシアネート化合物と、(b)1種または複数のフルオロケミカル単官能化合物との反応生成物を含む。場合によっては、このフルオロケミカルウレタン化合物には、(c)1種または複数の親水性ポリオキシアルキレン化合物および/または(d)1種または複数のイソシアネート反応性シランをさらに含む。
【0007】
本発明者らは、均一で耐久的な、以下に記す性質の1つまたは複数を満足のいくレベルで付与することが可能なフルオロケミカル組成物が必要であることを認識していた。撥油性および撥水性、および/または汚れ抵抗性および染み抵抗性、および/または汚れ防止性および染み防止性。それらの化学組成物は、水および/または有機溶媒に可溶または分散可能で、多くの実施形態においては、周囲温度で硬化させることができる。
【0008】
本発明のまた別な実施形態は、本発明のフルオロケミカル組成物と溶媒とからの溶液または分散体を含む、繊維基材を処理するための組成物に関する。このフルオロケミカル組成物は、溶媒に可溶性であるのが好ましい。基材に塗布した場合、この処理組成物は、基材の外観に変化を与えることなく、基材の上に化学組成物を均質に分散させることができる。いくつかの実施形態においては、このコーティングを得るために高温で硬化させる必要はなく、その処理組成物を周囲温度で硬化(すなわち、乾燥)させることができる。別の実施形態においては、本発明のコーティング組成物に、高温硬化(たとえば、約125゜Fすなわち49℃またはそれ以上の温度)を用いることも可能である。
【0009】
これらの組成物は、各種広い範囲の基材に、たとえば、局所塗布によって、コーティングとして塗布することができ、その基材に耐久性のある、解放性/撥水・撥油・防汚性/抵抗性を与えることができる。コーティングとして塗布した場合、本発明の化学組成物は、繊維基材に均質な特性を与えることが可能であって、塗布した基材の外観を変化させることはない。このウレタン化合物のフルオロケミカル含量が比較的低いにも関わらず、本発明の化学組成物は、従来技術のものに比較して、同等またはより優れた耐久性のある染み解放性を与える。さらに、いくつかの実施形態においては、本発明の化学組成物は、高温硬化を必要とせず、周囲温度で硬化(すなわち、乾燥)させることができる。
【0010】
さらに本発明は、少なくとも1種の溶媒と本発明の化学組成物から誘導された、硬化させたコーティングを有する繊維基材を含む物品に関する。この化学組成物を塗布、硬化させた後の基材は、耐久性のある解放性/抵抗性/撥水・撥油・防汚性を示す。
【0011】
本発明はさらに、基材の1つまたは複数の表面の上に本発明のコーティング組成物を塗布し、そのコーティング組成物を硬化させる(すなわち、乾燥させる)ことにより、1つまたは複数の表面を有する繊維基材に汚れ解放特性および/または汚れ防止特性を付与する方法に関する。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲において使用する以下の用語は、特に断らない限り、つぎの意味を有する。
「アシルオキシ」という用語は、基−OC(O)Rを意味し、ここでRは、アルキル、アルケニル、およびシクロアルキル、たとえば、アセトキシ、3,3,3−トリフルオロアセトキシ、プロピオニルオキシなどである。
【0013】
「アルコキシ」という用語は、基−ORを意味し、ここでRは、後に説明するアルキル基であって、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどである。
【0014】
「アルキル」という用語は、1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖状で飽和の1価の炭化水素基か、または3個〜約12個の炭素原子を有する分岐状で飽和の1価の炭化水素基を意味し、たとえば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、ペンチルなどである。
【0015】
「アルキレン」という用語は、1個〜約12個の炭素原子を有する直鎖状で飽和の2価の炭化水素基か、または3個〜約12個の炭素原子を有する分岐状で飽和の2価の炭化水素基を意味し、たとえば、メチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレンなどである。
【0016】
「アリール脂肪族」という用語は、そのアルキレン基に結合した芳香族基を有する、先に定義したアルキレン基を意味し、たとえば、ベンジル、ピリジルメチル、1−ナフチルエチルなどである。
【0017】
「硬化された化学組成物」という用語は、その化学組成物が乾燥されるか、またはその化学組成物から溶媒を約24時間までの間に周囲温度(15〜35℃)で蒸発させるか、または高温で乾燥させたものを意味する。
【0018】
「繊維基材」という用語は、たとえば、織布、編物、不織布、カーペット、およびその他のテキスタイルのような合成繊維を含む材料、およびたとえば綿、紙、および皮革のような天然繊維を含む材料を意味する。
【0019】
「フルオロカーボン単官能化合物」という用語は、1つのイソシアネート反応性官能基とペルフルオロアルキルまたはペルフルオロヘテロアルキル基(ペルフルオロポリエーテルを含む)を有する化合物を意味し、たとえば、C49SO2N(CH3)CH2CH2OH、C49SO2N(CH3)CH2CH2NH2、C49CH2CH2OH、C49CH2CH2SH、C25O(C24O)3CF2CONHC24OH、C25O(C24O)3CF2CONHC24CO2H、C613CH2OH、C613CH2N(CH3)OHなどである。
【0020】
「フルオロケミカルウレタン化合物」という用語は、少なくとも1種の多官能イソシアネート化合物と1種または複数のフッ素化単官能化合物との反応から誘導された、または誘導可能な化合物を意味し、そして場合によっては、少なくとも1種の親水性ポリオキシアルキレン化合物、および/または1種または複数のイソシアネート反応性シラン化合物を含む。
【0021】
「ヘテロアシルオキシ」という用語は、本質的には先に挙げたアシルオキシと同じ意味を有するが、ただし、1種または複数のヘテロ原子(すなわち、酸素、硫黄、および/または窒素)がR基の中に存在しており、炭素原子の合計数が50までであって、たとえば、CH3CH2OCH2CH2C(O)O−、C49OCH2CH2OCH2CH2C(O)O−、CH3O(CH2CH2O)nCH2CH2C(O)O−などである。
【0022】
「ヘテロアルコキシ」という用語は、本質的には先に挙げたアルコキシと同じ意味を有するが、ただし、1種または複数のヘテロ原子(すなわち、酸素、硫黄、および/または窒素)がそのアルキル鎖の中に存在しており、炭素原子の合計数が50までであって、たとえば、CH3CH2OCH2CH2O−、C49OCH2CH2OCH2CH2O−、CH3O(CH2CH2O)nHなどである。
【0023】
「ヘテロアルキル」という用語は、本質的には先に挙げたアルキルと同じ意味を有するが、ただし、1種または複数のカテナリーヘテロ原子(すなわち、酸素、硫黄、および/または窒素)がそのアルキル鎖の中に存在し、それらのヘテロ原子が、少なくとも1個の炭素によって互いに分断されていて、たとえば、CH3CH2OCH2CH2−、CH3CH2OCH2CH2OCH(CH3)CH2−、C49CH2CH2SCH2CH2−などである。
【0024】
「ヘテロアルキレン」という用語は、本質的には先に挙げたアルキレンと同じ意味を有するが、ただし、1種または複数のカテナリーヘテロ原子(すなわち、酸素、硫黄、および/または窒素)がそのアルキレン鎖の中に存在し、それらのヘテロ原子が、少なくとも1個の炭素によって互いに分断されていて、たとえば、−CH2OCH2O−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2N(CH3)CH2CH2−、−CH2CH2SCH2CH2−などである。
【0025】
「ヘテロアラルキレン」という用語は、先に定義したアラルキレン基と同じ意味を有するが、ただし、カテナリーな酸素、硫黄、および/または窒素原子が存在していて、たとえば、フェニレンオキシメチル、フェニレンオキシエチル、ベンジレンオキシメチルなどである。
【0026】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味するが、フルオロおよびクロロが好ましい。
【0027】
「イソシアネート反応性官能基」という用語は、イソシアネート基と反応することが可能な官能基を意味していて、たとえばヒドロキシル、アミノ、チオールなどである。
【0028】
「ペルフルオロアルキル」という用語は、本質的には先に挙げた「アルキル」と同じ意味を有するが、ただし、そのアルキル基の水素原子の全部、または本質的に全部がフッ素原子によって置換され、その炭素原子数が2〜約12個のもので、たとえば、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロオクチルなどである。
【0029】
「ペルフルオロアルキレン」という用語は、本質的には先に挙げた「アルキレン」と同じ意味を有するが、ただし、アルキレン基の水素原子の全部、または本質的に全部がフッ素原子によって置換されているもので、たとえば、ペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロオクチレンなどである。
【0030】
「ペルフルオロヘテロアルキル」という用語は、本質的には先に挙げた「ヘテロアルキル」と同じ意味を有するが、ただし、そのヘテロアルキル基の水素原子の全部、または本質的に全部がフッ素原子によって置換され、その炭素原子数が3〜約100個のもので、たとえば、CF3CF2OCF2CF2−、CF3CF2O(CF2CF2O)3CF2CF2−、C37O(CF(CF3)CF2O)mCF(CF3)CF2−(ここでmは、約10〜約30)、などである。
【0031】
「ペルフルオロヘテロアルキレン」という用語は、本質的には先に挙げた「ヘテロアルキレン」と同じ意味を有するが、ただし、そのヘテロアルキレン基の水素原子の全部、または本質的に全部がフッ素原子によって置換され、その炭素原子数が3〜約100個のもので、たとえば、−CF2OCF2−、−CF2O(CF2O)n(CF2CF2O)mCF2−などである。
【0032】
「過フッ素化基」という用語は、炭素に結合した水素原子の全部、または本質的に全部がフッ素原子によって置換されている有機基を意味し、たとえば、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロヘテロアルキルなどである。
【0033】
「ポリイソシアネート化合物」という用語は、多価の有機基に結合した2個以上のイソシアネート基、−NCOを含む化合物を意味し、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットおよびイソシアヌレートなどである。
【0034】
「反応性ポリオキシアルキレン」という用語は、1分子あたり平均して1個またはそれ以上のイソシアネート反応性官能基を有する、オキシアルキレン繰り返し単位を有するポリマーを意味する。
【0035】
「シラン基」という用語は、少なくとも1個の加水分解基が結合されている、ケイ素を含む基を意味し、たとえば、−Si(OCH33、−Si(OOCCH32CH3、−Si(Cl)3などである。
【0036】
「撥水・撥油・防汚性(repellency)」という用語は、処理した基材の、油および/または水による濡れに対する抵抗性、および/または微粒子の汚れの付着に対する抵抗性の目安である。撥水・撥油・防汚性は、本明細書に記載した試験方法に従って測定することができる。
【0037】
「抵抗性(Resistance)」という用語は、染みまたは汚れと接触させた場合に、処理した基材がそれぞれ染みおよび/または汚れを寄せ付けないようにする性能の目安である。
【0038】
「解放性(Release)」という用語は、処理した基材が、クリーニングまたは洗濯によって汚れおよび/または染みを除くことができるようにする性能の目安である。
【0039】
「解放性/抵抗性/撥水・撥油・防汚性」という用語は、その組成物が、撥油性、撥水性、染み解放性、染み防止性、汚れ解放性および汚れ防止性の内の、少なくとも1つを有することを示す。
【0040】
「シルセスキオキサン」および「シルセスキオキサン共縮合物」は、式R102Si(OR112のジアルコキシシラン(またはその加水分解生成物)と、式R10SiO3/2のトリアルコキシシラン(またはその加水分解生成物)との共縮合物であって、ここでそれぞれのR10は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、またはアリール基であり、R11は1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。シルセスキオキサンには、場合によっては、式R103SiOR11のシランの共縮合物を含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の化学組成物には、1種または複数のフルオロケミカルウレタン化合物および1種または複数のシルセスキオキサン化合物を含み、それらによって、そのフルオロケミカルウレタン化合物を用いて処理した繊維基材の抵抗性/解放性/撥水・撥油・防汚性を改良する。このフルオロケミカルウレタン化合物には、(a)1種または複数の多官能イソシアネート化合物;(b)1種または複数のフルオロケミカル単官能化合物;および場合によっては(c)1種または複数の親水性ポリオキシアルキレン化合物;および/または(d)1種または複数のシラン化合物の反応生成物を含む。
【0042】
前記第1の成分の前記第2の成分に対する重量比は一般的には、1:1から10:1まで、好ましくは3:1から5:1までである。より好ましくは、この組成物には、50〜90重量%の前記第1の成分と、15〜50重量%の前記第2の成分とを含む。
【0043】
それぞれのフルオロケミカルウレタン化合物には、少なくとも1種の多官能イソシアネート化合物と少なくとも1種のフッ素化単官能化合物との反応から誘導された、または誘導可能なウレタン基が含まれる。このフルオロケミカルウレタン化合物の末端は、平均して、(a)1種または複数のペルフルオロアルキル基、(b)1種または複数のペルフルオロヘテロアルキル基;および場合によっては、(c)1種または複数のシリル基および/または(d)1種または複数の親水性ポリオキシアルキレン基である。この反応生成物は、化合物が混合されたものとなり、そのいくぶんかには先に挙げた化合物が含むが、置換のパターンや、置換の程度が異なったウレタン化合物をさらに含んでいてもよい、ということは理解されるであろう。
【0044】
一般的には、前記フルオロケミカル単官能化合物の量は、利用可能なイソシアネート基の60〜95%と反応するに充分な量とし、前記親水性ポリオキシアルキレン化合物が存在する場合には、その量は、利用可能なイソシアネート基の0.1〜30%と反応するに充分な量とし、そして、前記シランの量は、利用可能なイソシアネート基の0.1〜25%と反応するに充分な量とする。好ましくは、前記親水性ポリオキシアルキレンの量は、利用可能なイソシアネート基の0.5〜30%と反応するに充分な量とし、前記シランの量は、利用可能なイソシアネート基の0.1〜15%と反応するに充分な量とし、前記フルオロケミカル単官能化合物の量は、利用可能なイソシアネート基の60〜90%と反応するに充分な量とする。
【0045】
存在させることが可能なウレタン化合物のタイプで好適なものは、以下の式
fZR2−X’(−CONH−Q(A)m−NHCO−X’R3X’−)nCONH−Q(A)−NHCO−X’R1Si(Y)3
fZR2−X’(−CONH−Q(A)m−NHCO−X’R3X’−)nCONHR1Si(Y)3
(ここで、
fZR2−は、少なくとも1種のフルオロケミカル単官能化合物の残基であり;
fは、2〜約12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、または3〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基であり;
Zは、共有結合、スルホンアミド(−SO2NR−)、またはカルボキサミド(−CONR−)(ここでRは水素またはアルキル)であり;
1は、アルキレン、ヘテロアルキレン、アラルキレン、またはヘテロアラルキレン基であり;
2は、2価の直鎖状または分岐状鎖のアルキレン、シクロアルキレン、またはヘテロアルキレン基で、1〜14個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を含むものであるが、R2が、1〜14個の炭素原子のアルキレンまたはヘテロアルキレンであるのが好ましい;
Qは、多価の有機基で、多官能イソシアネート化合物の残基であり;
3は、多価、好ましくは2価の有機基で、親水性ポリオキシアルキレンの残基であり;
X’は、−O−、−S−、または−N(R)−(ここでRは、水素またはC1〜C4アルキル)であり;
Yはそれぞれ独立して、ヒドロキシ;アルコキシ、アシルオキシ、ヘテロアルコキシ、ヘテロアシルオキシ、ハロ、およびオキシムからなる群より選択される加水分解性部分;または、フェニル、脂環族、直鎖脂肪族、および分岐鎖脂肪族からなる群より選択される非加水分解性部分であって、ここで少なくとも1つのYは、加水分解性部分であり;
Aは、RfZR2−OCONH−、(Y)3SiR1XCONH−、および(Y)3SiR1NHCOOR3OCONH−からなる群より選択され;
mは0〜2の整数であり;そして
nは1〜10の整数である)
で表されるものである。
【0046】
上記の化学式に関しては、化合物が反応生成物の理論上の構造を示していることは、理解されるであろう。反応生成物には、イソシアネート基の置換パターンが異なる化合物の混合物が含まれている。
【0047】
本発明において有用な多官能イソシアネート化合物には、多価の有機基Qに結合したイソシアネート基を含み、そのような有機基としては多価の脂肪族、脂環族、または芳香族部分;またはブロック化イソシアネート、ビウレット、イソシアヌレート、もしくはウレトジオン、またはそれらの混合物に結合した、多価の脂肪族、脂環族もしくは芳香族部分を含みうる。好適な多官能イソシアネート化合物には、少なくとも2個、好ましくは3個以上の−NCO基を含む。2個の−NCO基を含む化合物としては、2価の脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、または芳香族部分に、−NCO基が結合したものが挙げられる。3個の−NCO基を含む化合物で好適なものとしては、イソシアナト脂肪族、イソシアナト脂環族、またはイソシアナト芳香族の1価の部分で、それらがビウレットまたはイソシアヌレートに結合したものが挙げられる。
【0048】
好適な多官能イソシアネート化合物の代表例としては、本明細書で定義する多官能イソシアネート化合物のイソシアネート官能性誘導体が挙げられる。そのような誘導体の例を挙げれば、イソシアネート化合物のウレア、ビウレット、アロファネート、ダイマーおよびトリマー(たとえばウレトジオンおよびイソシアヌレート)、およびそれらの混合物からなる群より選択されるものであるが、これらに限定される訳ではない。各種好適な有機ポリイソシアネート、たとえば脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、または芳香族ポリイソシアネートを、単独で使用してもよいし、あるいは2種以上の混合物で使用してもよい。
【0049】
脂肪族多官能イソシアネート化合物は一般に、芳香族化合物よりも光安定性が良好であるので、繊維基材を処理するのには好ましい。一方で、芳香族多官能イソシアネート化合物は一般に、脂肪族多官能イソシアネート化合物よりも安価で、また親水性ポリオキシアルキレン化合物やその他のイソシアネート反応性化合物に対する反応性もより高い。
【0050】
好適な芳香族多官能イソシアネート化合物の例を挙げれば(これらに限定される訳ではない)、以下のようなものからなる群より選択することができる。2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、TDIとトリメチロールプロパンとのアダクト(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)からデスモジュール(Desmodur)(登録商標)CBとして入手可能)、TDIのイソシアヌレートトリマー(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)からデスモジュール(Desmodur)(登録商標)ILとして入手可能)、ジフェニルメタン4,4'−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4'−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−ナフタレン、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1−メチオキシ(methyoxy)−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、およびそれらの混合物。
【0051】
有用な脂環族多官能イソシアネート化合物の例を挙げれば(これらに限定される訳ではない)、以下のようなものからなる群より選択することができる。ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)Wとして市販されており、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)から入手可能)、4,4'−イソプロピル−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,4−シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)(BDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、およびそれらの混合物。
【0052】
有用な脂肪族多官能イソシアネート化合物の例を挙げれば(これらに限定される訳ではない)、以下のようなものからなる群より選択することができる。1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、1,12−ドデカンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレア、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)のビウレット(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)からデスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−100およびN−3200として入手可能)、HDIのイソシアヌレート(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)からデモジュール(Demodur)(登録商標)N−3300およびデスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−3600として入手可能)、HDIのイソシアヌレートとHDIのウレトジオンのブレンド(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)からデスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−3400として入手可能)、およびそれらの混合物。
【0053】
有用なアリール脂肪族ポリイソシアネートの例を挙げれば(これらに限定される訳ではない)、以下のようなものからなる群より選択することができる。m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−(1−イソシアナトエチル)−フェニルイソシアネート、m−(3−イソシアナトブチル)−フェニルイソシアネート、4−(2−イソシアナトシクロヘキシル−メチル)−フェニルイソシアネート、およびそれらの混合物。
【0054】
好適なポリイソシアネートは一般に、以下のものからなる群より選択することができる。ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、1,12−ドデカンジイソシアネートイソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4'−ジイソシアネート、MDI、上述の全化合物の誘導体、たとえばデスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−100、N−3200、N−3300、N−3400、N−3600など、およびそれらの混合物。
【0055】
市販されている好適な多官能イソシアネートの例を挙げれば、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−3200、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−3300、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−3400、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−3600、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)H(HDI)、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)W(ビス[4−イソシアナトシクロヘキシル]メタン)、モンジュール(Mondur)(登録商標)M(4,4'−ジイソシアナトジフェニルメタン)、モンジュール(Mondur)(登録商標)TDS(98%トルエン2,4−ジイソシアネート)、モンジュール(Mondur)(登録商標)TD−80(80%の2,4と20%の2,6−トルエンジイソシアネート異性体)、およびデスモジュール(Desmodur)(登録商標)N−100などで、いずれもペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,PA)のバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)から入手可能である。
【0056】
その他有用なトリイソシアネートとしては、3モルのジイソシアネートを1モルのトリオールと反応させることによって得られるものがある。たとえば、トルエンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,4,4−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、またはm−テトラメチルキシレンジイソシアネートを1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンと反応させてトリイソシアネートを形成させることができる。m−テトラメチルキシレンジイソシアネートとからの反応生成物は、サイテン(CYTHANE)3160として市販されている(コネチカット州スタンフォード(Stamford,Conn)のアメリカン・サイアナミド(American Cyanamid))。
【0057】
本発明の化学組成物を調製するために使用するのに好適なフルオロケミカル単官能化合物としては、少なくとも1個のRf基を含むものが挙げられる。このRf基には、直鎖、分岐鎖または環状のフッ素化アルキレン基が含まれ、それらがどのような組合せになっていてもよい。Rf基には、場合によっては、その炭素−炭素鎖の中に、1種または複数のヘテロ原子(すなわち、酸素、硫黄、および/または窒素)が含まれていて、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖(すなわち、ヘテロアルキレン基)を形成していてもよい。完全にフッ素化されている基が一般に好ましいものの、水素または塩素原子が置換基として存在していてもよいが、ただし、2個の炭素原子あたり、いずれかの原子の存在量が1個以下とする。さらに、どのRf基にも、少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含んでいるのが好ましい。その基の末端部分は、一般に完全にフッ素化されていて、少なくとも3個のフッ素原子を含んでいるのが好ましく、たとえば、CF3O−、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、(CF32N−、(CF32CF−、SF5CF2−などである。ある種の実施形態においては、ペルフルオロアルキル基(すなわち、式Cn2n+1−)(ここでnは、両端を含めて2〜12)が好ましいRf基で、n=3〜5であればより好ましく、n=4であるのが最も好ましい。
【0058】
有用なフルオロケミカル単官能化合物としては、次式:
f−Z−R2−X
(ここで、
fは、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロヘテロアルキル基であり;
Zは、共有結合、スルホンアミド基、カルボキサミド基、カルボキシル基、またはスルホニル基から選択される連結基であり;そして
2は、1〜14個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子の、2価の直鎖または分岐鎖アルキレン、シクロアルキレン、またはヘテロアルキレン基であり;そして
Xは、イソシアネート反応性官能基、たとえば−NH2;−SH;−OH;−N=C=O;または−NRH(ここでRはHまたはC1〜C4アルキル)である)の化合物が挙げられる。
【0059】
有用なフルオロケミカル単官能化合物の代表例を挙げれば以下のようなものなど、およびそれらの混合物である。
【0060】
【表1】

【0061】
所望により、上述のものに代えて他のイソシアネート反応性官能基を用いることも可能である。
【0062】
本発明の化学組成物のある種の好ましい実施形態には、2〜12個の炭素、好ましくは3〜6個の炭素、より好ましくは4個の炭素を有する、末端フルオロアルキル基を含む組成物が含まれる。驚くべきことには、比較的短いペルフルオロアルキル基(すなわち、炭素6個以下)を用いても、これらの化学組成物は優れた解放性/抵抗性/撥水・撥油・防汚性を示す。フッ素含量の低い組成物の方がより安価であるが、当業者は典型的には、炭素が8個より短いRf基は撥油性および撥水性ならびに耐汚染性が劣るという理由から、それらを軽視してきた。
【0063】
これまで公知のフルオロケミカル界面活性剤の多くには、ペルフルオロオクチル部分が含まれている。それらの界面活性剤は、究極的には、分解してペルフルオロオクチル含有化合物となる。ある種のペルフルオロオクチル含有化合物は、生物体内に生蓄積されやすいという報告があり、この傾向は、いくつかのフルオロケミカル化合物に関しては、問題となる可能性があることが示唆されてきた。たとえば、米国特許第5,688,884号明細書(ベーカー(Baker)ら)を参照されたい。その結果、希望する解放性/抵抗性/撥水・撥油・防汚性を与えるのに有効であり、かつ、(組成物およびそれの分解生成物の傾向を含めて)生体からより効果的に排泄されるようなフッ素含有組成物が望まれている。
【0064】
ペルフルオロアルキルC3〜C6部分を含む、本発明の好適なフルオロケミカル組成物は、環境中の生物学的、熱的、酸化的、加水分解的および光分解的な条件に暴露させたときに、分解されて各種の分解生成物になると考えられる。たとえば、ペルフルオロブチルスルホンアミド部分を含む組成物は、究極的には、ペルフルオロブチルスルホン酸塩に、少なくとも部分的には、分解されるものと期待される。驚くべきことには、そのカリウム塩の形で試験したペルフルオロブチルスルホン酸塩は、ペルフルオロヘキシルスルホン酸塩よりも効果的に、そしてペルフルオロオクチルスルホン酸塩よりもさらに効果的に、生体から排泄されることが見出された。
【0065】
有用なペルフルオロヘテロアルキル基は次式:
1f−O−Rf2−(Rf3q− (II)
(ここでR1fは、過フッ素化アルキル基を表し、Rf2は、1、2、3または4個の炭素原子を有する過フッ素化アルキレンオキシ基からなる過フッ素化ポリアルキレンオキシ基、またはそのような過フッ素化アルキレンオキシ基の混合を表し、R3fは、過フッ素化アルキレン基を表し、qは0または1である)に相当するものである。式(II)における過フッ素化アルキル基R1fは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含むことができる。典型的な過フッ素化アルキル基は、CF3−CF2−CF2−である。R3fは、直鎖状または分岐状の過フッ素化アルキレン基であって、典型的には1〜6個の炭素原子を有する。たとえば、R3fは−CF2−または−CF(CF3)−である。過フッ素化ポリアルキレンオキシ基R2fのペルフルオロアルキレンオキシ基の例としては以下のものを挙げることができる。
−CF2−CF2−O−、
−CF(CF3)−CF2−O−、
−CF2−CF(CF3)−O−、
−CF2−CF2−CF2−O−、
−CF2−O−、
−CF(CF3)−O−、
−CF2−CF2−CF2−CF2−O−。
【0066】
ペルフルオロアルキレンオキシ基は、同一のペルフルオロアルキレンオキシ単位で構成されていてもよいし、あるいは異なったペルフルオロアルキレンオキシ単位の混合であってもよい。そのペルフルオロアルキレンオキシ基が異なったペルフルオロアルキレンオキシ単位で構成されている場合には、それらは、ランダムな配置、交互配置、あるいはブロックとして存在していてもよい。過フッ素化ポリ(アルキレンオキシ)基の典型例としては以下のものが挙げられる。−[CF2−CF2−O]r−;−[CF(CF3)−CF2−O]n−;−[CF2CF2−O]i−[CF2O]j−および−[CF2−CF2−O]l−[CF(CF3)−CF2−O]m−;(ここでrは4〜25の整数、nは3〜25の整数、i、l、mおよびjはそれぞれ2〜25の整数である)。式(II)に相当する好適な過フッ素化ポリエーテル基は、CF3−CF2−CF2−O−[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−(ここでnは、3〜25の整数)である。この過フッ素化ポリエーテル基は、nが3に等しい場合の分子量が783で、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをオリゴマー化させることにより、誘導することができる。そのような過フッ素化ポリエーテル基は、環境に優しい性質を有しているために、特に好ましい。
【0067】
部分「−Z−R2−」の例としては、O、NまたはSで分断されていてもよく、また置換されていてもよい、芳香族または脂肪族基を含む有機基が挙げられ、それらは、アルキレン基、オキシ基、チオ基、ウレタン基、カルボキシ基、カルボニル基、アミド基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、カルボキシアルキレンおよび/またはアミドアルキレン基などである。官能基Tの例としてはチオール、ヒドロキシおよびアミノ基が挙げられる。
【0068】
具体的な実施形態において、フルオロケミカル単官能化合物は次式に相当し:
f1−[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−Z−R2−X
ここでRf1は、過フッ素化アルキル基、たとえば、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の過フッ素化アルキル基を表し、nは3〜25の整数であり、Zはカルボニル基またはCH2であり、R2は、たとえば先に結合基Qのところで挙げたような化学結合または有機の2価または3価の結合基であり、そしてXは、イソシアネート反応性基をあらわすが、それぞれのXは同じであっても異なっていてもよい。特に好適な化合物は、R1fがCF3CF2CF2−を表しているものである。具体的な実施形態においては、部分−Z−R2−Xは、式−CO−X−Ra(OH)kの部分であって、ここでkは、1または2、XはOまたはNRb(Rbは、水素または1〜4個の炭素原子のアルキル基をあらわす)であり、Raは1〜15個の炭素原子のアルキレンである。
【0069】
上の式(III)における部分「−Z−R2−X」の代表例としては、−CONR−CH2CHOHCH2OH(ここでRは水素、またはたとえば1〜4個の炭素原子のアルキル基);−CONH−1,4−ジヒドロキシフェニル;−CH2OCH2CHOHCH2OH;−COOCH2CHOHCH2OHおよび−CONR−(CH2mOH(ここでR2は水素、またはたとえば1〜4個の炭素原子のアルキル基)が挙げられる。
【0070】
ペルフルオロポリエーテル単官能化合物は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをオリゴマー化することによって得ることができ、それによりペルフルオロポリエーテルカルボニルフルオリドが生成する。このカルボニルフルオリドは、当業者周知の反応によって、酸、エステルまたはアルコールに転化させることができる。カルボニルフルオリド、またはそれから誘導した酸、エステルもしくはアルコールを、次いで公知の手順に従ってさらに反応させることによって、所望のイソシアネート反応性基を導入することができる。たとえば、EP870 778号明細書には、所望の部分「−Z−R2−」を有する化合物を製造するために適した方法が記載されている。上に挙げた基1を有する化合物は、フッ素化ポリエーテルのメチルエステル誘導体を、3−アミノ−2−ヒドロキシ−プロパノールと反応させることによって、得ることができる。上に挙げた基5を有する化合物は、同様にして、ヒドロキシル官能基を1つだけ持つアミノ−アルコールと反応させることによって、得ることができる。たとえば、2−アミノエタノールならば、上述の基5で、R2が水素、mが2の化合物を与える。上述の式(I)に従う化合物のさらなる例は、EP870 778号明細書または米国特許第3,536,710号明細書に開示されている。
【0071】
当業者には明かなことではあるが、式(I)に従うフッ素化ポリエーテルの混合物を使用して、このフルオロケミカル組成物のフッ素化ポリエーテル化合物を調製することができる。一般に、式(I)に従うペルフルオロポリエーテルを製造する方法では、分子量が異なるペルフルオロポリエーテルの混合物が得られ、そのような混合物はそのままで、このフルオロケミカル組成物のフルオロケミカル成分を調製するために使用できる。好ましい実施形態においては、ペルフルオロポリエーテル化合物のそのような混合物には、750g/モル未満の分子量を有する過フッ素化ポリエーテル部分を有するフッ素化ポリエーテル化合物を全く含まないか、または、そうでない場合には、その混合物が、750g/モル未満の分子量を有する過フッ素化ポリエーテル部分を有するフッ素化ポリエーテル化合物を、フッ素化ポリエーテル化合物の全重量を基準にして10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下の量で含む。
【0072】
本発明の第1の成分のフルオロケミカルウレタン化合物を調製する際に使用するのに適した親水性ポリオキシアルキレン化合物としては、もし使用するのなら、平均官能基数が1よりも大きいポリオキシアルキレン化合物が挙げられる(好ましくは、約2〜5;より好ましくは、約2〜3;最も好ましくは約2で、2官能化合物たとえばジオールが最も好ましい)。イソシアネート反応性基は1級でも2級でもよいが、反応性が高いことから1級の基が好ましい。異なった官能基数を有する化合物の混合物、たとえば1、2および3個のイソシアネート反応性基を有するポリオキシアルキレン化合物の混合物を使用して、平均値を1より大きくすることができる。ポリオキシアルキレン基としては、1〜3個の炭素原子を有するもの、たとえばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンおよびそれらのコポリマー、たとえばオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の両方を有するポリマーなどが挙げられる。
【0073】
ポリオキシアルキレン含有化合物の例を挙げれば、ポリグリコールのアルキルエーテル、たとえば、ポリエチレングリコールのメチルまたはエチルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムまたはブロックコポリマーのヒドロキシ末端メチルまたはエチルエーテル、ポリエチレンオキシドのアミノ末端メチルまたはエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのヒドロキシ末端コポリマー(ブロックコポリマーを含む)、モノ−またはジアミノ−末端ポリ(アルキレンオキシド)たとえば、ジェファミン(Jeffamine)(登録商標)ED、ジェファミン(Jeffamine)(登録商標)EDR−148、およびポリ(オキシアルキレン)チオールなどがある。市販されている脂肪族ポリイソシアネートとしては、ベイガード(Baygard)(登録商標)VP SP23012、ルコガード(Rucoguard)(登録商標)EPF1421および、ツビコート(Tubicoat)(登録商標)Fix ICBなどが挙げられる。
【0074】
第1の成分として有用な市販されている親水性ポリオキシアルキレン化合物としては、カーボワックス(Carbowax)(登録商標)ポリ(エチレングリコール)原料で数平均分子量(Mn)が約200〜約2000のもの(ダウ・ケミカル・コーポレーション(Dow Chemical Corp.)から入手可能);ポリ(プロピレングリコール)原料たとえば、PPG−425(ライオンデル・ケミカルズ(Lyondell Chemicals)から入手可能);ポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)のブロックコポリマー、たとえば、プルロニック(Pluronic)(登録商標)L31(BASF・コーポレーション(BASF Corporation)から入手可能);2級ヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンテトロールの「PeP」シリーズ(ワイアンドット・ケミカルズ・コーポレーション(Wyandotte Chemicals Corporation)から入手可能)の、たとえば、「PeP」450、550、および650などが挙げられる。
【0075】
本発明の化学組成物の中で使用するのに適したシラン化合物は、もし存在させるなら、以下の式:
X−R1−Si−(Y)3
(ここでXは、イソシアネート反応性官能基、たとえば−NH2;−SH;−OH;−N=C=O;または−NRH(ここでRはHまたはC1〜C4アルキルである)であり;
1は、アルキレン、ヘテロアルキレン、アラルキレン、またはヘテロアラルキレン基であり;そして
Yはそれぞれ独立して、ヒドロキシ;アルコキシ、アシルオキシ、ヘテロアルコキシ、ヘテロアシルオキシ、ハロ、およびオキシムからなる群より選択される加水分解性部分;または、フェニル、脂環族、直鎖脂肪族、および分岐鎖脂肪族からなる群より選択される非加水分解性部分であって、ここで少なくとも1つのYは、加水分解性部分である)を有するものである。
【0076】
したがって、これらのシラン化合物は、そのケイ素の上に1個、2個または3個の加水分解性基(Y)と、イソシアネート反応性または活性水素反応性基(X−R1)を含む、1個の有機基を含む。各種慣用される加水分解性基、たとえば、アルコキシ、アシルオキシ、ヘテロアルコキシ、ヘテロアシルオキシ、ハロ、オキシムなどからなる群より選択されるようなものが、加水分解性基(Y)として使用することができる。加水分解性基(Y)は、好ましくはアルコキシまたはアシルオキシであり、より好ましくはアルコキシである。
【0077】
Yがハロの場合には、ハロゲン含有シランから放出されるハロゲン化水素が、セルロース基材を使用しているときにはポリマー分解の原因となる可能性がある。Yがオキシム基の場合には、式−N=CR56の低級オキシム基が好ましいが、ここでR5とR6は、同一であっても異なっていてもよいが、約1〜約12個の炭素原子を含む1価の低級アルキル基であって、好ましくは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群より選択される。
【0078】
2価の橋かけラジカル(R1)の代表例としては、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH264CH2CH2−、および−CH2CH2O(C24O)2CH2CH2N(CH3)CH2CH2CH2−からなる群より選択されるものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0079】
その他の好適なシラン化合物としては、1個または2個の加水分解性基を含むもの、たとえば、R2OSi(R721XHおよび(R8O)2Si(R7)R1XHの構造を有するものが挙げられるが、ここで、R1は先に定義したものであり、R7とR8は、フェニル基、脂環族基、または約1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基からなる群より選択される。R7とR8が、1〜4個の炭素原子を含む低級アルキル基であるのが好ましい。
【0080】
これらの末端シリル基のいくつかが加水分解して、−SiOH基またはその他の金属水酸化物基を含む基材の表面と相互反応することで、シロキサン結合が生成するが、たとえば、
【化1】

の反応が起きる。このようにして形成された結合、特にSi−O−Si結合は耐水性があり、本発明の化学組成物によって付与される汚れ解放性の耐久性を向上させることができる。
【0081】
そのようなシラン化合物は当業者には周知であって、多くのものが市販されているし、容易に調製することもできる。代表的なイソシアネート反応性シラン化合物としては、以下のものからなる群、およびそれらの混合物より選択されるが、これらに限定される訳ではない。
【0082】
【表2】

【0083】
本発明の処理組成物には、シルセスキオキサンを含む。有用なシルセスキオキサンとしては、式R102Si(OR112のジオルガノオキシシラン(またはその加水分解生成物)と、式R10SiO3/2のオルガノシラン(またはその加水分解生成物)との共縮合物が挙げられるが、ここでそれぞれのR10は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、またはアリール基であり、R11は1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。好適なシルセスキオキサンは、組成物に添加する前には、中性またはアニオン性のシルセスキオキサンである。有用なシルセスキオキサンは以下の特許に記載されている方法により製造することができる。米国特許第3,493,424号明細書(モーロック(Mohrlok)ら)、同第4,351,736号明細書(スタインバーガー(Steinberger)ら)、同第5,073,442号明細書(ノウルトン(Knowlton)ら)、同第4,781,844号明細書(コルトマン(Kortmann)ら)、および同第4,781,844号明細書(これらのそれぞれを、参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【0084】
シルセスキオキサンは、シランを、水、緩衝液、界面活性剤および場合によっては有機溶媒の混合物に添加し、その混合物を酸性または塩基性条件下で撹拌することによって、調製することができる。200〜500オングストロームの狭い粒径範囲とするためには、シランを一定量でゆっくりと添加するのが好ましい。添加することが可能なシランの正確な量は、置換基Rや、界面活性剤にアニオン性のものを使用したかカチオン性のものを使用したか、によって変わってくる。シルセスキオキサンの共縮合物は、その中の単位の分布がブロック状であってもランダムであってもよいが、シランの同時加水分解によって形成させる。存在させる、テトラアルコキシシランも含めたテトラオルガノシランと、その加水分解生成物(たとえば、式Si(OH)4のもの)の量は、シルセスキオキサンの重量を基準にして、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0085】
本発明のシルセスキオキサンを調製するためには、以下のシランが有用である。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトキシシラン、および2−エチルブトキシトリエトキシシラン。
【0086】
一般に、ヒドロキシ価は、約1000〜6000/g、好ましくは約1500〜2500である。ヒドロキシ価はたとえば滴定によって測定することができるし、あるいは分子量を29Si NMRから推定することもできる。
【0087】
この組成物には、Si(OH)4またはテトラオルガノオキシシランもしくはその加水分解生成物を10重量%以下(好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満)の量で含んでいてもよいが、本発明者らの見出したところでは、それらは、得られるフルオロケミカル組成物の撥油性の性能を低下させる。市販されているシロキサン樹脂のほとんどのものには、共縮合物中にテトラルキオキシシラン(tetralkyoxysilanes)が含まれているために、上記の量よりも多くの量を含んでいる。残存テトラルキオキシシラン(またはその加水分解生成物、たとえばSi(OH)4)を本質的に含まない、特に有用なシルセスキオキサンは、ミシガン州ミッドランド(Midland,MI)のダウ・コーニング(Dow Corning)から入手可能なSR2400・レジン(SR2400 Resin)(登録商標)である。
【0088】
本発明のフルオロケミカル組成物は、以下に示す段階合成法に従って製造することができる。当業者のよく理解するところであるが、段階の順序には制限はなく、所望の化学組成物を得るために変更を加えてもよい。合成においては、多官能イソシアネート化合物と単官能フルオロケミカル化合物を合わせて乾燥条件下で好ましくは溶媒中に溶解させ、次いで、その得られた溶液を、触媒の存在下で撹拌しながら、約40〜80℃、好ましくは約60〜70℃で、0.5時間〜2時間、好ましくは1時間加熱する。反応条件(たとえば、反応温度および/または使用した多官能イソシアネート)に応じて、多官能イソシアネート/単官能フルオロケミカル化合物混合物の約0.5重量パーセントまでの触媒レベルを使用することができるが、典型的には約0.00005〜約0.5重量パーセントが必要であり、0.02〜0.1重量パーセントが好ましい。
【0089】
好適な触媒としては、3級アミンおよびスズ化合物が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。有用なスズ化合物の例としては、スズ(II)およびスズ(IV)塩、たとえば、オクタン酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジ−2−エチルヘキサノエート、およびジブチルスズオキシドなどが挙げられる。有用な3級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、モルホリン化合物、たとえばエチルモルホリンおよび2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wis)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.))、および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデセ−7−エン(DBU、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wis)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.))などが挙げられる。スズ化合物が好ましい。
【0090】
得られたフルオロケミカル官能性ウレタン化合物は、場合によっては、上述のシラン化合物の1種または複数とさらに反応させる。そのシラン化合物を上記の反応混合物に添加し、残存NCO基のある程度の部分と反応させる。上述の温度、乾燥条件、および混合を0.5時間〜2時間、好ましくは1時間続ける。それによって、末端シラン含有基がイソシアネート官能性ウレタン化合物と結合する。アミノシランが好ましいが、その理由は、残存NCO基とシラン化合物のアミノ基との反応が、早く、完全に進行するからである。イソシアネート官能性シラン化合物を使用することもできるが、多官能イソシアネート化合物の、親水性2官能ポリオキシアルキレンおよびフルオロケミカル単官能化合物に対する比が、得られる化合物の末端がヒドロキシル基となるような割合の場合には、この化合物が好ましい。
【0091】
これらの化合物は、場合によっては、平均官能基数が1よりも大きいポリオキシアルキレン化合物を用いて、さらに官能化させるが、それには上述のように、得られた混合物の中の残存NCO基のいくらかを、上述の1種または複数の反応性ポリオキシアルキレン化合物と反応させる。したがって、そのポリオキシアルキレン化合物は、先に挙げた添加の場合と同じ条件を用いて、反応混合物に添加する。
【0092】
場合によっては、未反応のイソシアネート基があれば、それを加水分解させたり、エステル化させたり、あるいはブロック化イソシアネート基とすることができる。「ブロック化イソシアネート」とは、イソシアネート基の一部をブロッキング剤と反応させてあるポリイソシアネートのことを言う。イソシアネートのブロッキング剤は、それをイソシアネート基と反応させたときに生成する基が、室温では通常ならイソシアネートと反応するような化合物と室温では反応しないが、高温にするとイソシアネート反応性化合物と反応するような、化合物である。一般的には、高温ではブロッキング基がブロック化ポリイソシアネート基から放出されて、それによってイソシアネート基が再び生成し、次いでそれが、繊維基材の表面に見出されるような、イソシアネート反応性基と反応する。ブロッキング剤およびそれらの作用機構に関しては、ダグラス・ウィックス(Douglas Wicks)およびゼノ・W・ウィックス・Jr(Zeno W.Wicks Jr.)「ブロックト・イソシアネーツ・III:パート・A(Blocked Isocyanates III:Part A)、メカニスムス・アンド・ケミストリー(Mechanisms and chemistry)」、プログレス・イン・オーガニック・コーティングズ(Progress in Organic Coatings)第36巻(1999)、p.14〜172に記載がある。
【0093】
ブロックイソシアネートは、芳香族、脂肪族、環状または非環状であってよく、一般にブロックジ−もしくはトリイソシアネートまたはそれらの混合物で、イソシアネートと、イソシアネート基と反応できる少なくとも1つの官能基を有するブロッキング剤とを反応させることによって得ることができる。好適なブロック化イソシアネートは、150℃未満の温度で、高温におけるブロッキング剤の脱離により、イソシアネートと反応性の基と反応することが可能な、ブロック化ポリイソシアネートである。好適なブロッキング剤としては、アリールアルコール類たとえばフェノール、ラクタム類たとえばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、オキシム類たとえばホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、2−ブタノンオキシムまたはジエチルグリオキシムなどが挙げられる。好適なブロッキング剤にはさらに、重亜硫酸塩やトリアゾールも挙げられる。
【0094】
別な方法として、残存している未反応のイソシアネート基があれば、加水分解させてアミン(またはその塩)にしたり、アルコールと反応させてウレタン基を形成させてもよい。
【0095】
水系の場合、本発明のフルオロケミカルウレタン処理組成物には、アクリル系および/またはメタクリル系モノマーからのポリマーをさらに含んでいてもよく、それらは、処理物に耐久性を与えることが見出された。そのようなポリマーの具体例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のアルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーで、たとえばアクリル酸のC1〜C30アルキルエステルなどが挙げられる。そのようなアルキルエステルの具体例を挙げれば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクタデシルおよびアクリル酸ラウリルなどがある。好適なポリマーの具体例としては、アクリル酸メチルのホモポリマー、およびアクリル酸メチルとアクリル酸オクタデシルのコポリマーがある。市販されているアクリル系コポリマーとしては、ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown,PA)のエア・プロダクツ(Air Products)から入手可能なハイブリジュール(Hybridur)(登録商標)製品が挙げられる。そのようなアクリレートコポリマーは一般に、フルオロケミカルウレタンの重量を基準にして、2〜20%の量で使用することができる。
【0096】
この組成物にはさらに、シルセスキオキサン成分のための架橋触媒が含まれていてもよい。好適な架橋剤の例としては、オルガノチタネート、オルガノゲルマネートおよびオルガノジルコネートを挙げることができる。この架橋触媒は、一般的な構造としてM(OR124の構造を有しているが、ここでMはチタン、ゲルマニウムまたはジルコニウム原子であり、R12はそれぞれ1価の炭化水素基またはアシル基である。R12基は、各種のアルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、アミノアルキル、オキサアルキル、ヒドロキシアルキル、およびアルカリール基、さらにはアシルなどとすることができる。それぞれのR12は同一であっても異なっていてもよく、触媒の混合物を使用してもよい。触媒は、シルセスキオキサンの重量を基準にして、0.01〜3重量%、好ましくは0.1〜2重量%の量で使用する。
【0097】
有用な触媒の例を挙げれば、アルキルスズ誘導体、たとえば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、およびジブチルスズジオクトエートで、ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown,PA)のエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレーテッド(Air Products and Chemicals,Inc.)から「T−シリーズ触媒」として市販されているもの、オルトジルコネートエステル(たとえば、n−ブチルジルコネート、n−プロピルジルコネート)およびオルトチタネートエステル(たとえば、テトライソブチルオルトチタネート、チタンアセチルアセトネート、アセトアセチックエステルチタネートでデュポン(DuPont)からタイゾール(TYZOR)の商品名で市販されているものなどがある。そのような架橋剤は、有機溶媒を含む組成物に対しては特に有用であるが、水系用のチタネート化合物としては、(たとえば、チタンラクテートキレート、タイゾール(TYZOR)LA)も知られている。米国特許第2,732,320号明細書(ギリセン(Guillissen)ら)、米国特許第3,647,846号明細書(ハートライン(Hartlein)ら)、米国特許第3,015,637号明細書(ラウナー(Rauner)ら)、および米国特許第4,399,247号明細書(オーナ(Ona)ら)を参照されたい(それぞれを、参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【0098】
繊維基材のためのコーティング組成物には、本発明の化学組成物と少なくとも1種の溶媒との溶液または分散体が含まれる。繊維基材に塗布すると、この処理組成物が、解放性/抵抗性/撥水・撥油・防汚性を付与し、使用、クリーニング、および風雨による損傷摩耗に暴露させたときの、耐久性を示す(すなわち、すり切れに対する抵抗性がある)。
【0099】
本発明のフルオロケミカル組成物は、各種の溶媒に溶解または分散させて、基材の上に本発明の化学組成物をコーティングして使用するのに適したコーティング組成物を形成させることができる。繊維基材処理組成物には、約0.1〜約50重量パーセントの化学組成物を含むことができる。コーティング組成物中にこの化学組成物を、好ましくは約0.1〜約10重量パーセント、最も好ましくは約2〜約4重量パーセントで使用することができる。
【0100】
好適な溶媒としては、水、アルコール、エステル、グリコールエーテル、アミド、ケトン、炭化水素、クロロ炭化水素、クロロカーボン、およびそれらの混合物が挙げられる。この組成物を塗布する相手の基材によっては、水が好ましい溶媒となるが、その理由は、水は環境問題を起こすことがなく、安全で無毒とみなされているからである。溶媒の混合物を使用することもできるが、そのような混合物としては、フルオロケミカルウレタンとシルセスキオキサン成分とが最も揮発性の低い溶媒に可溶であって、組成物の均一なコーティングを可能とするものを選択する必要がある。
【0101】
本発明の処理組成物は、広い範囲の各種繊維基材に適用して、耐久性のある汚れ解放性を示す物品を得ることができる。本発明の物品には、少なくとも1種の溶媒および本発明の化学組成物から誘導される処理を施した繊維基材が含まれる。このコーティング組成物を塗布、硬化させた後の基材は、耐久性のある解放性/撥水・撥油・防汚性/抵抗性を示す。
【0102】
この処理組成物は、その他の基材にも塗布することができるが、そのような基材としては、ガラス、セラミック、石材、金属、半多孔質材料たとえばグラウト、セメントおよびコンクリート、木材、塗料、プラスチック、ゴムなどが挙げられる。
【0103】
この処理組成物は広い範囲の各種繊維基材に塗布できるが、そのようなものとしては、織物、編物および不織布、テキスタイル、カーペット、皮革、および紙などが挙げられる。求核性の基を有する基材、たとえば綿が好ましいが、その理由は、それらが、本発明の化学組成物のシラン基および/またはイソシアネート基と結合することが可能で、それによって、繊維処理物の耐久性が向上するからである。当業者に公知の各種の塗布方法を使用することができるが、そのようなものとしては、たとえば、スプレー法、ディッピング法、浸漬法、発泡法、噴霧法、エアロゾル法、ミスト法、フラッドコーティング(flood−coating)法などが挙げられる。
【0104】
繊維基材に解放性/撥水・撥油・防汚性/抵抗性を付与するためには、本発明のコーティング組成物を基材に塗布し、周囲温度または高温で、硬化(すなわち、乾燥)させる。
【0105】
この組成物を塗布するための処理プロセスは、吸尽(exhaustion)プロセス、局所(topical)プロセスのいずれであってもよい。吸尽プロセスにおいては、繊維基材をまず、基材のそれぞれの繊維の全部を本発明の水性組成物と接触させることによって、完全に処理する。その接触工程の後で、得られた完全にウェットな繊維基材を、水飽和雰囲気中、たとえばスチームボックスの中で、処理組成物をそれぞれの繊維の表面に固着させるに充分な時間、加熱する。加熱処理したウェット繊維基材を次いで、水を用いて洗い流し、オーブンの中で、それぞれの繊維の表面上の、処理組成物を効果的に活性化させるのに充分な温度で、乾燥させる。場合によっては、充分に高い浴温度(たとえば、200゜F(83℃)を超える温度)で塗布させることによって、その後の蒸熱処理をする必要をなくすこともできる。それぞれの繊維全体に完全に浸透させたこの繊維基材は、未処理のカーペットの場合に比較して、汚れに対する顕著な防御性を示し(数サイクルの「ウォークオン(walk−on)」試験で実証される)、また優れた動的水抵抗性を示す(すなわち、この処理をしたカーペットは、高いところからまき散らした水系飲料の浸透に対する抵抗性がある)。
【0106】
繊維基材を処理するために適した吸尽プロセスの例としては、浸漬、フラッディング、ベック(Beck)バット加工、ホットオッティング(hot otting)、パディングおよびパドルフォーミング塗布などが挙げられる。有用な処理設備としては、独国クレーフェルト(Krefeld,Germany)のエデュアルド・クスターズ・マシンファブリーク・GmbH・&・Co.、KG(Eduard Kusters Maschinefabrik GmgH & Co.,KG)から入手可能な、たとえば、クスター(Kuster)のフレックス−ニップ(Flex−nip)(登録商標)装置、クスター(Kuster)のフォームアプリケーター、フルイコン(Fluicon)(登録商標)フラッドアプリケーター、およびフルイダイ(Fluidye)(登録商標)ユニットなどが挙げられる。
【0107】
シルセスキオキサンを含む水性の酸性組成物を塗布するための適切な局所処理プロセスとしては、スプレー法および低密度フォーム塗布(low density foam application)が挙げられる。たとえば、繊維基材の上にこの化学組成物をスプレーすることによって、組成物を塗布することも可能である。周囲温度硬化は、約15〜35℃(すなわち、周囲温度)で実施するのが好ましく、最高約24時間までで、乾燥させる。熱処理と周囲温度硬化のいずれでも、この化学組成物は基材との化学結合、およびこの化学組成物の分子の間の化学結合を形成することができる。しかしながら、吸尽処理プロセスの方が、処理した繊維に優れた性能を付与するので、好ましい。
【0108】
所望により、処理した繊維基材を、たとえばオーブンの中で、加熱処理にかけることも可能である。加熱処理は典型的には、約50℃〜約190℃の間で実施するが、特定のシステムまたは使用した塗布方法などによって異なる。一般的には、温度約120℃〜170℃、特に約150℃〜約170℃で、約20秒〜10分、好ましくは3〜5分が適している。熱処理と周囲温度硬化のいずれでも、この化学組成物は基材との化学結合、およびこの化学組成物の分子の間の化学結合を形成することができる。
【0109】
熱処理をするか、周囲温度硬化にするかの選択は、目的とする最終用途によって決まることが多い。民生用途では、この組成物が、家庭用の洗濯、椅子ばりまたはカーペットに適用されるので、周囲温度硬化が望ましい。産業用途では、繊維基材、たとえばテキスタイルが製造時に高温に暴露されるのが普通であるので、高温硬化または熱処理するのが望ましい。一般に、ブロック化イソシアネート基を含む組成物が好ましく、その場合には、熱処理を実施する。
【0110】
繊維基材に塗布する処理組成物の量は、処理される基材の外観と感触に実質的に悪影響が出ることなく、基材表面に所望の高いレベルの性質を充分付与することできるように、選択する。そのような量としては、処理した繊維基材の上で得られるフルオロケミカルウレタン組成物の量が、繊維基材の重量を基準にして0.05%〜10%、好ましくは0.1〜5重量%となるようにするのが普通であり、これは繊維上固形分すなわちSOFと呼ばれている。目的の性質を付与するのに充分な量は、実験的に求めることができ、必要あるいは希望によって増やすこともできる。
【0111】
好適な繊維基材としては、カーペット、布地、テキスタイル、および繊維たとえばヤーンまたはスレッドから織った各種基材が挙げられるが、カーペットが好ましい繊維基材の形態である。繊維は、各種の熱硬化性または熱可塑性ポリマー、たとえばポリアミド、ポリエステル、アクリルおよびポリオレフィン、セルロースなどから製造することができる。ポリアミド(たとえば、ナイロン)が好ましい繊維である。
【0112】
少なくとも1種の溶媒および本発明の化学組成物から得られる処理した基材は、汚れおよび/または染みに対する抵抗性、および/または単純な洗濯法による汚れおよび/または汚れ解放性を有していることが見出された。硬化させた処理物はさらに、耐久性があって、その結果、使用、クリーニング、および風雨が原因の損傷摩耗によるすり切れに対する抵抗性を示すことも見出された。
【0113】
本発明を以下の実施例を参照しながらさらに説明するが、それらは、本発明をそれらに限定することを意図しているものではない。全ての部およびパーセントは、特に記さない限り、重量基準である。
【実施例】
【0114】
【表3】

【0115】
布地
試験に用いた布地:100%綿布地(#428、ニュージャージー州ミドルセックス(Middlesex,NJ)のテスト・ファブリックス・インコーポレーテッド(Test Fabrics,Inc.)製)、および100%ポリオレフィンベッチン布地(A8、ニュージャージー州のチェロキー・フィニッシング・カンパニー(Cherokee Finishing Co.)製)。
【0116】
組成物の塗布および試験
性能試験−撥油性
この試験では、処理した布地の油系の挑戦課題に対する抵抗性を測定する。1つの標準表面張力流体(シリーズ8番、表面張力低下)の1滴を、処理した布地の上に落とす。30秒後にも濡れがなければ、次に高い標準数の流体(次に低い表面張力)を試験する。流体が布地にしみこんだ場合には、その最も低い数の流体の次に低い数を評点とする。たとえば、4番の流体が布地を濡らした場合には、その布地の評点は3とする。この試験のより詳細については、3M・プロテクティブ・マテリアル・ディビジョン(3M Protective Material Division)の「オイル・レペレンシー・テスト・I(Oil Repellency Test I)」法(書類番号:98−0212−0719−0)に記載がある。
【0117】
性能試験−撥水性
この試験では、処理した繊維基材の水系の挑戦課題に対する抵抗性を測定する。1つの標準表面張力流体(シリーズ11番、表面張力低下、水と、水/イソプロピルアルコール混合物に基づくもので、100%の水が評点0、100%IPAが評点10)の1滴を、処理した布地の上に置いて、液滴を作らせる。30秒後にも濡れがなければ、次に高い標準数の流体(次に低い表面張力)を試験する。流体が布地にしみこんだ場合には、その最も低い数の流体の次に低い数を評点とする。たとえば、4番の流体が布地を濡らした場合には、その布地の評点は3とする。この試験のより詳細については、3M・プロテクティブ・マテリアル・ディビジョン(3M Protective Material Division)の「ウォーター・レペレンシー・テスト・II(Water Repellency Test II)」法(書類番号:98−0212−0721−6)に記載がある。
【0118】
性能試験−撥水・撥油耐久性試験
この試験の目的は、摩耗ディスクを取り付けたクロックメーター(Crock Meter)を用いて、摩耗させた後の撥油性または撥水性を測定することである。この試験のより詳細については、3M・ホーム・ケア・ディビジョン(3M Home Care Division)の「スプレー・アンド・オイル・レペレンシー・レーティング(Spray and Oil Repellency Rating)」法(書類番号:HHP−TM−48)に記載がある。
【0119】
性能試験−スプレー試験
この試験の目的は、動的スプレー評点(dynamic spray rating)と呼ばれるものを測定することである。この試験手順は、AATCC・テスト・メソッド(AATCC Test Method)42−1980に修正を加えたものである。この試験では、45度に傾けた布地の上に室温の水(250mL)を流して実施する。全ての水が試料から流れ落ちたら、評点100を与え、布地の表面に顕著な濡れが認められたら、評点50を与える。この試験のより詳細については、3M・ホーム・ケア・ディビジョン(3M Home Care Division)の「スプレー・アンド・オイル・レペレンシー・レーティング(Spray and Oil Repellency Rating)」法(書類番号:HHP−TM−40)に記載がある。
【0120】
性能試験−濡れ試験
この試験の目的は、スプレー試験を実施した後で、水のウェットスルー(wet through)を測定することである。評点は1〜6とするが、評点6は完全に乾いている状態、そして評点1は完全に濡れている状態である。この試験のより詳細については、3M・ホーム・ケア・ディビジョン(3M Home Care Division)の「スプレー・アンド・オイル・レペレンシー・レーティング(Spray and Oil Repellency Rating)」法(書類番号:HHP−TM−40)に記載がある。
【0121】
性能試験−人工的汚れ防止
この試験では、処理した繊維基材の汚れの挑戦課題に対する抵抗性を測定する。典型的には、12インチ×18インチのカーペットの試料を、3〜6のセクションに分割する。1つのセクションを対照として未処理で残し、残りのセクションを保護仕上げ剤で処理して、室温で乾燥させるが、ここでTは100°F以下、相対湿度は50%未満である。40個のセラミックペレット(半分が10g、半分が20gの重量)と、20gの3M標準油試験用汚れ(3M・プロテクティブ・マテリアルズ・ディビジョン・プロダクト(3M Protective Materials Division Product)41−4201−6292−1)を充填したドラムの中に、処理した物品をテープ止めする。このドラムを10分間回転させ、次いで逆向きに10分間回転させる。カーペットを取り出して、2方向で真空掃除機をかけ、処理した領域を、未処理の領域と比較する。同一の試料の範囲内で直接比較し、1〜5の評点を与えるが、ここで1は未処理相当(顕著な汚れ)、5は汚れ無しである。この試験のより詳細については、AATCC「アーティフィシャル・アンチソイリング・テスト(Artificial Antisoiling Test)」法、123−1995に記載がある。
【0122】
性能試験−耐酸汚染性
この試験では、処理した繊維基材の赤色酸性染料の染みに対する抵抗性を測定する。AATCCのTM175−1998試験法に従った。未処理の新しいカーペットと比較して、評点を与えるが、ここで評点1は未処理のもの、評点5は染みが完全に除去されたことを示す。
【0123】
フルオロケミカル(FC)ウレタンの調製
FCウレタン、MeFBSE/N3300/PEG1450/APTES
典型的な調製手順は、以下のようなものであった。1リットルのフラスコに、MeFBSE(58.89g)、DBTDL(3滴;約20mg)および酢酸エチル(237.0g、全体に対するチェック量)を仕込んだ。乾燥窒素でパージ下で、その混合物を撹拌しながら、温度を60℃に上げた。次いで、N3300(40.0g)を徐々に添加して、温度は60〜65℃の間に維持した。添加が終了したら、その反応混合物を60℃で1時間撹拌した。次いでAPTES(4.56g)を滴下により添加し、その反応混合物の温度を65℃未満に保ち、反応混合物を30分間撹拌した。その混合物を撹拌しながら、固体のPEG1450(12.00g)を添加し、反応の進行をFTIRで追跡して、約2289cm-1の−NCO帯の消失により、反応の完了とした。未反応の−NCO基があれば、メタノールまたはエタノールを用いて消滅させた。
【0124】
布地に対する試験
このFCウレタンをSR−2400シルセスキオキサンと組み合わせて、表2に列記した組成物を得た。これらの作業は通常、排気フードの中で室温で行った。典型的な添加順序は、FCウレタン、次いで希釈剤、シルセスキオキサン、それから架橋剤である。加圧缶の中に充填する場合には、最後にCO2を添加するが、性能試験のためには、加圧缶から供給する必要はない。表の中のパーセントは、特に断らない限り、固形分の重量パーセントである。
【0125】
【表4】

【0126】
調製物1〜10を、エアロゾル化スプレーとして、#428綿試験布地に塗布して、20g/ft2の濡れ含浸量とした。実施例1〜10ならびに比較例C1およびC2についての、静的撥水性(性能試験−撥水性)、静的撥油性(性能試験−撥油性)、濡れ性(性能試験−濡れ性)、スプレー性(性能試験−スプレー試験)および耐久性(性能試験−撥水・撥油耐久性)に関する試験結果を表3にまとめた。
【0127】
【表5】

【0128】
調製物1〜10を、エアロゾル化スプレーとして、A8ポリオレフィンベッチン試験布地に塗布して、20g/ft2の濡れ含浸量とした。実施例11〜20についての、静的撥水性(性能試験−撥水性)、静的撥油性(性能試験−撥油性)、濡れ性(性能試験−濡れ性)、スプレー性(性能試験−スプレー性)、および耐久性(性能試験−撥水・撥油耐久性試験)に関する試験結果を表4にまとめた。
【0129】
【表6】

【0130】
カーペットに関する試験
このフルオロケミカルウレタンをSR−2400シルセスキオキサンと組み合わせて、表5に示す調製物11〜15を得たが、これらは、溶媒系(IPA)システムで、固形分%が表に示したようなものであった(固形分約25%)。次いで、調製物11〜15を脱イオン水を用いて、固形分3〜4%のエマルションに希釈して、即使用状態(ready−to−use)組成物とし、次いでそれをスプレーとしてカーペット(ジョージア州ダルトン(Dalton,GA)のショウ・インダストリーズ(Shaw Industries)から入手可能な、ブルー・トランジション・III(Blue Transition III)ナイロン6,6の新品カーペット)に塗布して、固形分含浸量が約0.4〜0.7g/ft2になるようにした。実施例21〜25についての、静的撥水性(性能試験−撥水性)、静的撥油性(性能試験−撥油性)、耐汚れ性(性能試験−耐汚れ性)、および耐染み性(性能試験−耐酸汚染性)に関する試験結果を表6にまとめた。表の中のパーセントは、特に断らない限り、固形分の重量パーセントである。
【0131】
【表7】

【0132】
【表8】

【0133】
上述の水希釈システムは水の中では安定ではなく、真空掃除機に対する耐久性(durability to vacuuming)に欠けることが判った。真空掃除機に対する耐久性を改良する目的で、添加アクリレート(ハイブリジュール(Hybridur)(登録商標)580)を含む、表7に示す調製物16〜18を、溶媒を使用しないエマルションとして調製した。比較例調製物C3には、SR−2400シルセスキオキサンを含まず、またアクリレートも添加しなかった。場合によっては(調製物17および比較調製物C3)、さらに安定性を高めるために、シリコーン流体を添加した。これらのエマルションは、以下のようにして調製した。
【0134】
1ガロンの容器の中に、588gのフルオロケミカルウレタン(酢酸エチル中65%)と、52gのシルセスキオキサン(メチルイソブチルケトン中65%)を入れた。この混合物を150゜Fに加熱した。別な容器で、1000gの水を160゜Fに加熱して、その中に、65gのローダカル(Rhodacal)(登録商標)DS−10を溶解させた。溶解させ、適当な温度になったら、その水を、フルオロケミカルとシルセスキオキサンの溶液に高速撹拌下で加えた。次いで、水性アクリレートエマルションを添加して、さらに撹拌を続けた。次いでその混合物をホモジナイズさせて、真空下、浴温160゜Fでストリッピングを行った。溶媒を完全に除去すると、固形分含量が約30〜40%のものが得られた。次いでその混合物を脱イオン水でさらに希釈して、固形分約3%の即使用状態の組成物とした。任意成分のシリコーン流体またはその他の溶媒は、ホモジナイズ化の前、あるいはストリッピングの後に添加してもよい。表7に見られるように、調製物17および比較調製物C3には、安定性向上のためのシリコーン流体が含まれている。
【0135】
次いで、調製物16〜18および比較調製物C3を脱イオン水を用いて、固形分3〜4%のエマルションに希釈して、即使用状態の組成物とし、次いでそれをスプレーとしてカーペット(ジョージア州ダルトン(Dalton,GA)のショウ・インダストリーズ(Shaw Industries)から入手可能な、ブルー・トランジション・III(Blue Transition III)ナイロン6,6の新品カーペット)に塗布して、固形分含浸量が約0.4〜0.7g/ft2になるようにした。実施例26〜28および比較例C3についての、静的撥水性(性能試験−撥水性)、静的撥油性(性能試験−撥油性)、耐汚れ性(性能試験−耐汚れ性)、および耐染み性(性能試験−耐酸汚染性)に関する試験結果を表8にまとめた。表の中のパーセントは、特に断らない限り、固形分の重量パーセントである。
【0136】
【表9】

【0137】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)1種または複数の多官能イソシアネート化合物;および
(2)1種または複数のフルオロケミカル単官能化合物;
の反応生成物を含む、1種または複数のフルオロケミカルウレタン化合物を含む第1の成分と、
(b)1種または複数のシルセスキオキサンを含む、第2の成分と、
を含み、
前記シルセスキオキサンが、テトラアルコキシシランまたはその加水分解生成物の共縮合物を10重量%未満の量で含む、組成物。
【請求項2】
前記シルセスキオキサンが、式R102Si(OR112のシラン(またはその加水分解生成物)と、式R10SiO3/2のシランとの共縮合物を含み、ここでそれぞれのR10が、1〜6個の炭素原子のアルキル基、またはアリール基であり、それぞれのR11が、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の成分が、1種または複数の親水性ポリオキシアルキレン化合物の反応生成物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の成分が、次式:
X−R1−Si−(Y)3
(ここで、
Xは−SH;−OH;−N=C=O;または−NRHであって、ここでRは、フェニル、直鎖および分岐状の脂肪族、脂環族、および脂肪族エステル基からなる群より選択され;
1は、アルキレン、ヘテロアルキレン、アラルキレン、またはヘテロアラルキレン基であり;そして
Yはそれぞれ独立して、ヒドロキシル;アルコキシ、アシルオキシ、ヘテロアルキオキシ、ヘテロアシルオキシ、ハロ、およびオキシムからなる群より選択される加水分解性部分;または、フェニル、脂環族、直鎖脂肪族、および分岐鎖脂肪族からなる群より選択される非加水分解性部分であって、ここで少なくとも1つのYは、加水分解性部分である)
の1種または複数のシラン化合物の反応生成物をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の成分の前記フルオロケミカル単官能化合物が次式:
f−Z−R2−X
(ここで、
fは、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロヘテロアルキル基であり;
Zは、共有結合、スルホンアミド基、カルボキサミド基、カルボキシル基、またはスルホニル基から選択される連結基であり;そして
2は、2価の直鎖または分岐鎖アルキレン、シクロアルキレンまたはヘテロアルキレン基であり、1〜14個の炭素原子を有し;そして
Xは−NH2;−SH;−OH;−N=C=O;または−NRHであって、ここでRは、フェニル、直鎖および分岐状の脂肪族、脂環族、および脂肪族エステル基からなる群より選択され;R1は、アルキレン、ヘテロアルキレン、アラルキレン、またはヘテロアラルキレン基である)
のものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学組成物。
【請求項6】
fが、3〜5個の炭素のペルフルオロアルキル基である、請求項5に記載の化学組成物。
【請求項7】
fがペルフルオロポリエーテルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の成分の前記親水性ポリオキシアルキレン化合物の量が、前記ウレタン化合物の利用可能なイソシアネート基の0.1〜30%のものと反応するに充分であり、前記シラン化合物の量が、利用可能なイソシアネート基の0.1〜25%のものと反応するに充分であり、そして、前記フルオロケミカル単官能化合物の量が、利用可能なイソシアネート基の60〜95%のものと反応するに充分である、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
未反応のイソシアネート基がすべて、ブロック化イソシアネート基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の成分の前記第2の成分に対する比率が、1:1から10:1までである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化学組成物と溶媒とからの溶液を含む、処理組成物。
【請求項12】
50〜90重量%の前記第1の成分と、10〜50重量%の前記第2の成分とを含む、請求項11に記載の処理組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の溶媒と請求項11に記載の処理組成物から誘導される、硬化されたコーティングを有する繊維基材を含む物品。
【請求項14】
請求項11に記載の処理組成物を塗布する工程と、前記コーティング組成物を硬化させる工程とを含む、繊維基材に汚れ解放特性を付与するための方法。
【請求項15】
前記コーティング組成物を、繊維の上の固形分を0.05%〜5%とするに充分な量で塗布する、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2006−513306(P2006−513306A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568042(P2004−568042)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041129
【国際公開番号】WO2004/070105
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】