説明

繊維強化プラスチックス

【課題】軽量化を実現しつつ、高い機械的強度を有する繊維強化プラスチックスを提供する。
【解決手段】マトリックス樹脂と強化繊維と中空微粒子とを有する繊維強化プラスチックスであって、前記中空微粒子は、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマーを重合してなるものであり、最外層に厚さ20nm以上の外壁層を少なくとも1層有し、中空率が20〜95体積%であり、かつ、平均粒子径が0.1〜100μmである繊維強化プラスチックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化を実現しつつ、高い機械的強度を有する繊維強化プラスチックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等の強化繊維と、マトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチックス(FRP)は、軽量であり、強度や弾性率等の機械特性が優れるため、自動車部材、航空機部材、鉄道車両部材、船舶部材、建築部材、電気部材、スポーツ用品等に広く用いられている。
特に、自動車部材、航空機部材、鉄道車両部材等の輸送機器分野に使用される場合には、機械的強度の向上に加えて、軽量化(低比重化)に対する要求が極めて高くなっている。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、マトリックス樹脂に発泡剤を配合することで樹脂を発泡させる方法が開示されている。しかしながら、成形機中で発泡を行うことは困難であり、形状を保持することができなかった。また、発泡させた繊維強化プラスチックスは、機械的強度が低下したり、強度のばらつきが大きくなったりする問題が生じていた。
【0004】
更に、例えば、特許文献2等には、マトリックス樹脂にガラスバルーンやシラスバルーン等の無機バルーンを配合することで、繊維強化プラスチックスの低比重化を図る方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、成形前の樹脂組成物に無機バルーンを多量に配合しなければならず、該樹脂組成物が高粘度となり、成形時に強化繊維に含浸させることが困難となるといった問題や、無機バルーンとマトリックス樹脂との親和性が悪いことに起因して、無機バルーンの分散性が低下するという問題が生じていた。
【特許文献1】特開2003−145570号公報
【特許文献2】特開2000−336131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、軽量化を実現しつつ、高い機械的強度を有する繊維強化プラスチックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、マトリックス樹脂と強化繊維と中空微粒子とを有する繊維強化プラスチックスであって、前記中空微粒子は、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマーを重合してなるものであり、最外層に厚さ20nm以上の外壁層を少なくとも1層有し、中空率が20〜95体積%であり、かつ、平均粒子径が0.1〜100μmである繊維強化プラスチックスである。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、マトリックス樹脂と強化繊維とを有する繊維強化プラスチックスに、樹脂からなる中空微粒子を含有させることで、マトリックス樹脂との親和性の問題を改善することが可能となることを見出した。
しかしながら、単に、樹脂からなる中空微粒子を含有させただけでは、繊維強化プラスチックスの成形時において、マトリックス樹脂の原料モノマーやマトリックス樹脂を溶解させるための溶剤に中空微粒子のシェルが侵され、所望の機械的強度や軽量性が得られないという問題が新たに生じていた。
そこで、本発明者らは、更に鋭意検討した結果、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマーを重合させることにより中空微粒子を形成するとともに、最外層に所定の厚みを有する1層以上の外壁層を形成し、かつ、中空率及び平均粒子径を所定の範囲内とすることで、マトリックス樹脂の原料モノマーや有機溶剤に侵されることなく、繊維強化プラスチックスに含有させた場合に、高強度及び低比重化を実現することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の繊維強化プラスチックスは、中空微粒子を有する。
上記中空微粒子は、単孔構造であってもよく、多孔構造であってもよい。なお、本明細書において、「単孔構造」とは、ただ1つの閉じた空隙を有する構造のことをいい、「多孔構造」とは、複数の空隙を有する構造をいう。
【0009】
上記中空微粒子は、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマーを重合してなるものである。上記架橋性モノマーを20重量%以上含有することで、中空微粒子の強度を向上させることができるとともに、耐溶剤性を大幅に改善することができる。
【0010】
上記架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマー、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。これら架橋性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記反応性モノマーは、架橋性モノマーを含有し、その含有量の下限は20重量%である。20重量%未満であると、得られる中空微粒子の外壁層の架橋が不充分となり、強度、耐熱性及び耐溶剤性が不充分となる。上記架橋性モノマーの含有量の好ましい上限は80重量%であり、より好ましい上限は70重量%である。
【0012】
上記反応性モノマーにおける上記架橋性モノマー以外の反応性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸等の重合性不飽和結合を有するカルボン酸;カルボン酸エステル;カルボン酸塩;2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等の重合性不飽和結合を有するスルホン酸;スルホン酸エステル;スルホン酸塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの反応性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記中空微粒子は、最外層に厚さ20nm以上の外壁層を少なくとも1層有する。上記外壁層を有することで、有機溶剤やマトリックス樹脂の原料モノマーが中空微粒子に含浸することがなく、中空微粒子の中空構造を維持することができる。
【0014】
上記中空微粒子の具体的な構成としては、例えば、中空微粒子が単孔構造である場合には、1層の外壁層と中空部とからなる中空微粒子や、2層の外壁層と中空部とからなる中空微粒子等が挙げられる。また、中空微粒子が多孔構造である場合には、1層の外壁層と多孔質部とからなる中空微粒子等が挙げられる。
【0015】
上記外壁層の材質としては、有機溶剤やマトリックス樹脂の原料モノマーに侵され難い材質であれば特に限定されないが、上記架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマーを重合してなるものの他、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド系樹脂、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0016】
上記外壁層の厚さの下限は20nmである。20nm未満であると、上記外壁層として充分な強度が得られないことがある。また、好ましい下限は30nmであり、好ましい上限は50μmである。
また、上記中空微粒子が単孔構造である場合、上記外壁層の厚さの好ましい下限は30nm、好ましい上限は60μmである。
上記中空微粒子の外壁層の厚さが30nm未満であると、中空微粒子の強度が充分に得られないことがある。また、60μmを超えると、得られる繊維強化プラスチックスの軽量性が不充分となることがある。
なお、上記外壁層の厚さは、透過型電子顕微鏡で撮影した写真をもとに、粒子500個について外壁層の厚さを測定したものを単純平均した値として求められるものを意味する。
【0017】
上記中空微粒子の中空率の下限は20体積%、上限は95体積%である。20体積%未満であると、得られる繊維強化プラスチックスの軽量化効果が不充分となる。また95体積%を超えると、中空微粒子の粒子強度が低下して、成形時に粒子形状を保持しにくくなることがある。なお、好ましい下限は25体積%、好ましい上限は90体積%である。
なお、本明細書において、中空率とは、中空微粒子全体の体積に対する中空部分の体積の比率のことをいい、例えば、ポロシメーター2000(アムコ社製)等を用いることにより測定することができる。
【0018】
上記中空微粒子は、平均粒子径の下限が0.1μm、上限が100μmである。0.1μm未満であると、中空微粒子同士の凝集が発生して取り扱い性が優れないことがある。100μmを超えると、成形後の機械的強度が低下したり、表面の平滑性が劣ることがある。好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は80μmである。
なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、上記中空微粒子を膨潤させない溶剤中に分散させて動的光散乱式粘度分布計により測定される体積平均粒子径を意味する。
【0019】
本発明の中空微粒子は、平均粒子径のCV値の好ましい上限が20%である。上記CV値が20%を超えると、強度のばらつきが大きくなることがある。
【0020】
また、本発明の中空微粒子は、略真球形であることが好ましく、真球度の好ましい下限は0.7である。0.7未満であると、上記中空微粒子の中空率が著しく低下する場合がある。より好ましい下限は0.8であり、更に好ましい下限は0.9である。なお、本明細書において、真球度とは、電子顕微鏡を用いて、1つの中空微粒子を観察した際に測定される当該1つの中空微粒子の最小の幅を最大の幅で除した値を意味する。
【0021】
上記中空微粒子は、10%圧縮強度の好ましい下限が1.5MPaである。1.5Mpa未満であると、成形時に潰れやすくなり、所望の機械的強度、軽量性を有する繊維強化プラスチックスが得られない。
なお、本明細書において10%圧縮強度とは、中空微粒子をその粒子径に対して10%圧縮するのに必要な圧力を意味し、例えば、島津製作所社製「微小圧縮試験機MCTM−500」等を用いて測定することができる。
【0022】
上記中空微粒子は、ガラス転移温度の好ましい下限が200℃である。200℃未満であると、繊維強化プラスチックスとして成形する際に加熱した場合等に中空微粒子が熱変形によりつぶれてしまうことがある。
【0023】
本発明の繊維強化プラスチックスにおける上記中空微粒子の含有量としては特に限定されず、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は80重量%である。0.1重量%未満であると、所望の低比重化を達成できないことがあり、80重量%を超えると、機械的強度や成形性が低下することがある。
【0024】
上記中空微粒子の製造方法としては、上記外壁層が形成される方法であり、中空率及び平均粒子径が所定範囲内となる方法であれば、特に限定されないが、例えば、上記中空微粒子が単孔構造の中空微粒子である場合には、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマー、及び、有機溶剤を含有する反応性溶液を調製する工程、前記反応性溶液からなる油滴を極性溶媒に懸濁する工程、上記反応性モノマーを重合させて上記有機溶剤と相分離させ、上記有機溶剤を内包するマイクロカプセル型ポリマー粒子を作製する工程、及び、上記マイクロカプセル型ポリマー粒子から上記有機溶剤を除去する工程を有する方法により製造することができる。
【0025】
上記中空微粒子の製造方法は、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマー、及び、有機溶剤を含有する反応性溶液を調製する工程を有する。
【0026】
上記反応性モノマーについては、上述した通りであるが、上記有機溶剤としては、上記反応性モノマーと反応せずに混和し、かつ、反応性モノマーの重合温度において液状であるものであれば特に限定されず、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,4−ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。
【0027】
上記反応性溶液からなる油滴を極性溶媒に懸濁する工程において用いられる極性溶媒としては特に限定されず、例えば、水やエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の通常の懸濁重合法等に用いられるものを用いることができる。
また、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の乳化剤や、セチルアルコール等の分散助剤を併用してもよい。
【0028】
上記反応性モノマーを重合させて上記有機溶剤と相分離させ、上記有機溶剤を内包するマイクロカプセル型ポリマー粒子を作製する工程では、例えば、上記反応性溶液に重合開始剤を添加した場合、上記極性溶媒に油滴状に分散させた反応性溶液を加熱して上記重合開始剤の反応開始温度にすることにより、上記反応性溶液における反応性モノマーが反応して外壁層を生じる。その結果、生成した外壁層からなる外殻に、有機溶剤を内包したマイクロカプセル型ポリマー粒子が作製される。
【0029】
次に、上記マイクロカプセル型ポリマー粒子から上記有機溶剤を除去する工程を行い、内部に単一の空隙を有する真球状の中空微粒子を製造する。
【0030】
上記有機溶剤を除去する方法としては特に限定されず、例えば、得られたマイクロカプセル型ポリマー粒子の分散液に窒素、空気等の気体を吹き込む方法;減圧雰囲気とする方法等が挙げられる。
【0031】
上記中空微粒子が多孔構造である場合、上記中空微粒子の製造方法としては、例えば、水を中空化剤として用いる際には、まず、上記架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマー中に水を懸濁させ、水滴が分散したエマルジョン(W/Oエマルジョン)を調製する。次いで、上記W/Oエマルジョンを水中に乳化懸濁させて3層構造のエマルジョン(W/O/Wエマルジョン)を調製した後、反応性モノマーを重合させることにより、水を内包マイクロカプセルが得られる。得られたマイクロカプセルに内包される水を蒸発乾燥させることで、粒子中に空洞部が残され、中空微粒子が得られる。上記W/O/Wエマルジョンの各層には、エマルジョンを安定化させる目的で、各種の添加剤を使用してもよい。
【0032】
本発明の繊維強化プラスチックスは、マトリックス樹脂を含有する。
上記マトリックス樹脂としては特に限定されず、熱可塑性樹脂を用いても、熱硬化性樹脂を用いてもよい。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、セルロース誘導体、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、アルキド樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、フェノール樹脂、パラフィンワックス等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらのマトリックス樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の繊維強化プラスチックスにおける上記マトリックス樹脂の含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は80重量%である。20重量%未満であると、機械的強度や成形性が低下することがあり、80重量%を超えると、低比重化が図れないことがある。
【0034】
本発明の繊維強化プラスチックスは、強化繊維を有する。
上記強化繊維としては特に限定されず、例えば、繊維強化プラスチック用に通常用いられる強化繊維を用いることができる。具体的には例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チラノ繊維、SiC繊維等の有機、無機繊維等が挙げられる。なかでも、機会特性、耐熱酸化性、寸法安定性等、非常に優れた性質を有することから、炭素繊維が好ましい。
【0035】
上記強化繊維の形態としては特に限定されず、長繊維、短繊維であってもよく、織物、編み物、不織布等のシート状形態を有するもの等が挙げられる。
【0036】
本発明の繊維強化プラスチックスにおける上記強化繊維の含有量の好ましい下限は19.9重量%、好ましい上限は79.9重量%である。上記強化繊維の含有量を上記範囲内とすることで、疲労強度や衝撃特性に優れた繊維強化プラスチックスとすることができる。
【0037】
本発明の繊維強化プラスチックスの密度の好ましい上限は1.0g/mlである。1.0g/mlを超えると、密度が高すぎ、軽量化を目的とする部材に使用することが困難となる。好ましい下限は0.2g/mlである。
【0038】
本発明の繊維強化プラスチックスの23℃における3点曲げ強度の好ましい下限は200kg/mmである。200kg/mm未満であると、強度が低すぎ、耐久性等の物性が低下する。
なお、上記3点曲げ強度は、JIS K 7055に準拠した方法で測定することができる。
【0039】
本発明の繊維強化プラスチックスには、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で公知のタルク、炭酸カルシウム等の無機充填剤や、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤等を添加してもよい。
【0040】
本発明の繊維強化プラスチックスを製造する方法としては特に限定されず、例えば、強化繊維を織物、不織布、マット状等に加工した後にマトリックス樹脂及び中空微粒子を含有する組成物を溶融し含浸させ成形する方法、上記マトリックス樹脂、強化繊維及び中空微粒子を含有する組成物を押出機等の公知の装置を用いて溶融混練してペレット状にしたものを射出成形する方法、マトリックス樹脂、強化繊維及び中空微粒子を含有する組成物を押出機より溶融混練してシート状、環状等の形状に直接成形する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によると、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマーを重合させることにより中空微粒子を形成するとともに、最外層に所定の厚みを有する1層以上の外壁層を形成し、かつ、中空率及び平均粒子径を所定の範囲内とすることで、マトリックス樹脂の原料モノマーや有機溶剤に侵されることなく、繊維強化プラスチックスに含有させた場合に、高強度及び低比重化を実現することが可能な繊維強化プラスチックスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
(1)中空微粒子の調製
親水性モノマーとしてメタクリル酸50重量%と、架橋性モノマーとして、ポリエチレングリコールジメタクリレート10重量%(ポリオキシエチレンユニット数=1;日本油脂社製、ブレンマーPDE−50R)及びトリメチロールプロパントリアクリレート40重量%とからなる反応性モノマー100重量部に対して、中空化剤としてノルマルヘキサン145重量部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部を混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液の全量を、1重量%ポリビニルアルコール(PVA)と0.02重量%亜硝酸ナトリウムとの水溶液300重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた20リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、上記で得られた乳化懸濁液の全量を一括して投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始した。4時間重合した後、重合器を室温まで冷却して、溶剤内包マイクロカプセルスラリーを得た。得られたスラリーを、噴霧乾燥機を用いて乾燥し、中空微粒子を得た。
【0044】
(2)繊維強化プラスチックスの作製
硬化性液状成形樹脂としてエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製「エピクロン850」)150重量部と、硬化剤(油化シェル社製「エピキュアT」)30重量部とを混合した後、更に得られた中空微粒子40重量部を添加、混合することにより、中空微粒子含有樹脂組成物を調製した。
得られた中空微粒子含有樹脂組成物を、炭素繊維(東レ社製、トレカ)に常温で含浸積層し、更に常温で1日熟成させた。得られた成形材料を長さ2.5cm、幅1cmに裁断した後、140℃に加熱された金型内で5分間硬化させ、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)平板を製造した。
【0045】
(比較例1)
中空微粒子として、多孔質球状微粒子(積水化成品社製、MBP−8)を用いた以外は、実施例1と同様にしてCFRP平板を製造した。
【0046】
(実施例2〜6、比較例2〜6)
((1)中空微粒子の調製)において、表1に示す組成のモノマーを用いてモノマー溶液を調製した以外は実施例1と同様にして中空微粒子及びCFRP平板を得た。
【0047】
(評価)
実施例、比較例で得られた中空微粒子及び繊維強化プラスチックスについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0048】
(1)外壁層の厚み
実施例及び比較例で得られた中空微粒子500個について、透過型電子顕微鏡で撮影した写真をもとに、外壁層の厚さを測定し、測定値を単純平均したものを外壁層の厚みとした。
【0049】
(2)中空率の測定
実施例及び比較例で得られた中空微粒子0.5gをサンプリングし、ポロシメーター2000(アムコ社製)を用いて、中空率を測定した。なお、測定温度は23℃、封入水銀圧力は2000kg/cmとした。
【0050】
(3)中空微粒子の平均粒子径
実施例及び比較例で得られた中空微粒子について、動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用い、体積平均粒子径を測定した。
【0051】
(4)10%圧縮強度の測定
実施例及び比較例で得られた中空微粒子の10%圧縮強度を微小圧縮試験機(島津製作所社製、MCTM−500)を用いて測定した。
【0052】
(5)繊維強化プラスチックス成形体の密度の測定
得られたCFRP平板について、その体積と重量とから密度を算出した。
【0053】
(6)3点曲げ強度の測定
得られたCFRP平板について、JIS K 7055の3点曲げ試験に準拠した方法にて、3点曲げ強度を測定した。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、軽量化を実現しつつ、高い機械的強度を有する繊維強化プラスチックスを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂と強化繊維と中空微粒子とを有する繊維強化プラスチックスであって、
前記中空微粒子は、架橋性モノマーを20重量%以上含有する反応性モノマーを重合してなるものであり、
最外層に厚さ20nm以上の外壁層を少なくとも1層有し、
中空率が20〜95体積%であり、かつ、
平均粒子径が0.1〜100μmである
ことを特徴とする繊維強化プラスチックス。
【請求項2】
中空微粒子は、10%圧縮強度が1.5MPa以上であることを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチックス。
【請求項3】
強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維強化プラスチックス。
【請求項4】
密度が1.0g/ml以下、かつ、23℃における3点曲げ強度が200kg/mm以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の繊維強化プラスチックス。

【公開番号】特開2009−242477(P2009−242477A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88225(P2008−88225)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】