説明

繊維強化樹脂製レジューサの製造方法

【課題】口径組み合わせ毎に成形型を必要とすることなく、一つの成形型で所定口径組み合わせに対応することが可能である、簡便な繊維強化樹脂製レジューサの製造方法を提供する。
【解決手段】上記の製造方法を、使用する最大口径から最小口径まで絞り込んだ断面漏斗状のテーパ面を有する円錐台状の成形型本体と、その両端より延出する回転軸とからなる成形型を用意し、この成形型に、その回転軸を回転させながら、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた強化繊維基材を、成形型を囲包するように巻き付け、樹脂を固化或いは硬化させて成形したのち、脱型して、漏斗状管状体を作成し、次いで、漏斗状管状体の両端にその口径に略合う直管を連接するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製レジューサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂製の円筒形状品(管)は、軽量で高強度であるため、多用されてきており、その成形には、一般的にハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、シートワインディング法などが用いられている。ハンドレイアップ法は、成形型に、人手で強化繊維に樹脂を刷毛やローラで含浸させつつ、脱泡しながら所定の厚さまで積層するものであり、また、フィラメントワインディング法は、連続繊維に樹脂を含浸させながら、回転するマンドレル(筒状の金属製が多い)に適宜の巻き付け角で巻き付けて所定の形状に成形するものであり(例えば特許文献1参照)、シートワインディング法は、ロール状に巻き取られた強化繊維の織布を、芯材の周囲にヘリカル状に巻回し、その織布に樹脂を含浸させて硬化させるものである(例えば特許文献2参照)。
【0003】
また、上水・下水等の配管をする場合、口径を途中で絞り込んだり、広げたりすることがあり、その際にはレジューサが用いられる。
しかし、一般的には両端のストレート短管部も一体成形され、その場合は、各口径組み合わせ毎にその都度個別に成形型を用意しなければならず、作業が煩雑になるなどの問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平06−26858号公報
【特許文献2】特開2007−136997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、このような事情の下、口径組み合わせ毎に成形型を必要とすることなく、一つの成形型で所定口径組み合わせに対応することが可能である、簡便な繊維強化樹脂製レジューサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、上記製造方法において、成形型として、使用最大口径と使用最小口径の範囲に渡る口径をもつものを用い、成形に当り、この最大口径と最小口径の間の必要とする所定口径範囲の部分だけを使用することが課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、使用する最大口径から最小口径まで絞り込んだ断面漏斗状のテーパ面を有する円錐台状の成形型本体と、その両端より延出する回転軸とからなる成形型を用意し、この成形型に、その回転軸を回転させながら、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた強化繊維基材を、成形型を囲包するように巻き付け、樹脂を固化或いは硬化させて成形したのち、脱型して、漏斗状管状体を作成し、次いで、漏斗状管状体の両端にその口径に略合う直管を連接することを特徴とする繊維強化樹脂製レジューサの製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、繊維強化樹脂製レジューサが、偏心型のものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、繊維強化樹脂製レジューサが、同心型のものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、連接するのを、相互に端面同士を突き合せ、接着或いは溶着するものとすることを特徴とする製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、連接するのが、嵌合、螺合等の連結方法であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、連接するのが、嵌合、螺合等の連結方法と接着或いは溶着等の接合方法との組合せ方法であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、直管を連接するにあたり、連接部の外周縁面及び/又は外周面に沿って繊維強化樹脂で囲包するようにインフュージョン成形を行うことで上記連接部を補強することを特徴とする製造方法が提供される。
本発明において、テーパ面とは、上記成形型本体の一端から他端にかけて次第に縮径する面をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、繊維強化樹脂製レジューサの成形において、口径組み合わせ毎に成形型を必要とすることなく、簡便に一つの成形型で所定口径組み合わせに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】偏心レジューサ用成形型の1例の模式図である。
【図2】図1の成形型を用いて得られる脱型前の漏斗状管状体の1例の模式図である。
【図3】図2の漏斗状管状体を用いて得られる偏心レジューサの1例の模式図である。
【図4】同心レジューサ用成形型の1例の模式図である。
【図5】図4の成形型を用いて得られる脱型前の漏斗状管状体の1例の模式図である。
【図6】図5の漏斗状管状体を用いて得られる同心レジューサの1例の模式図である。
【図7】図2の漏斗状管状体を用いて得られる、接合部が繊維強化樹脂で補強された偏心レジューサの1例の模式図である。
【図8】図7の偏心レジューサにおいて、補強接合部の形成に用いられる強化繊維基材の1例の模式図である。
【図9】巻き付け状態とした図8の強化繊維基材を示す模式図である。
【図10】図9の強化繊維基材に諸種の部材を配設してインフュージョン成形に処しうるようにした配設態様の1例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の製造方法においては、先ず、使用する最大口径から最小口径まで絞り込んだ断面漏斗状のテーパ面を有する円錐台状の成形型本体と、その両端より延出する回転軸とからなる成形型を用意し、この成形型に、その回転軸を回転させながら、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた強化繊維基材を、成形型を囲包するように巻き付け、樹脂を固化或いは硬化させて成形したのち、脱型して、漏斗状管状体を作成する。上記成形型本体は使用する最大口径から最小口径まで絞り込んだ形状としているので、成形の際には必要な口径の部分のみを使用するようにすることができ、この方法で成形を行うことで、口径の組み合わせ毎に成形型を作らなくてもよく、1型で各口径に対応できるため、設備投資が抑えられるようになる。
【0017】
成形型本体の形状は、同心型でも、偏心型でもよく、また、そのテーパ面の傾斜角度は所望レジューサに応じ、それに併せて適宜変動させる。
【0018】
脱型は、成形型が断面漏斗状のテーパ面を有し、傾斜していわゆる抜き勾配が設けられているので、通常容易に行われるが、低勾配で傾斜度が小さい場合には、脱型を容易にするため、成形型は、その外周面に、その肉厚方向に弾性を備えて成形品からの脱型性を高める脱型用緩衝材を巻回し、さらにこの脱型用緩衝材の外周に、漏斗状管状体と脱型用緩衝材との離型性を高める離型シートを巻回して巻き付けに供するのが、樹脂を含浸させた強化繊維基材層を形成し、樹脂を固化或いは硬化させて成形された漏斗状管状体から成形型を脱型用緩衝材の弾性を利用して容易に脱型でき、脱型後の漏斗状管状体の内周側の脱型用緩衝材および離型シートも容易に除去しうるので、好ましい。また、この好適態様において、脱型用緩衝材を設けることなく、成形型の外周面に離型シートのみを巻回するようにしてもよい。
【0019】
次いで、漏斗状管状体の両端にその口径に略合う直管すなわち一端には大径の直管、他端には小径の直管を連接する。連接方法は特に限定されず、例えば相互に端面同士を突き合せ、接着或いは溶着などの化学的、物理的な接合方法、嵌合、螺合等の機械的な連結方法、及び上記接合と連結を組合せる方法などが挙げられる。
【0020】
具体的には、必要強度を確保できる種類・枚数・幅の強化繊維基材をハンドレイアップ法でオーバーレイして接合するなどの方法が挙げられる。
また、接合部や連結部の補強のため、接合部の外周縁面や連結部の外周面に沿って繊維強化樹脂で囲包させるようにしてもよく、それにはインフュージョン成形の適用等が好ましく、例えば、連接させた直管部のシールを確保した後、連接部の外周面に強化繊維基材を積層しインフュージョン法で繊維強化樹脂補強を施すなどの方法が用いられ、具体的には、強化繊維基材を、接合部の外周縁面に沿い、相互に接合させたもの同士の外周面に跨って配設し、次いで、前記強化繊維基材をバッグフィルムにより被覆して前記外周面に密封したのち、前記外周面と密封材との間を減圧し、流動性樹脂を吸引注入し、さらに注入した該樹脂を硬化或いは固化させるなどの真空注入成形法を用いることができ、その際、前記強化繊維基材は、前記接合部の外周縁面に沿って配設される複数枚のシート状物とし、周方向の一端を接着させ、周方向の他端を、隣り合う他のシート状物の外面に重なり合うように配設して、接合部の周方向に沿って重ね張りされるように略風車状に配設するのが好ましく、強化繊維基材は、例えば所定の長さにカットされたシート状物等が用いられ、シート状物は、上記外周面に直接に巻回されるバインダーを介在してなる形態のものであってもよい。
【0021】
強化繊維基材を構成する強化繊維としては、例えばガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などが挙げられ、強化繊維基材としては、例えばガラスクロス、カーボンクロス、ケブラークロスなどの編織物、不織布、チョップドストランドマット、繊維ステッチ材、強化繊維編織物と綿状材のサンドウィッチ構造材等が挙げられ、その他、連接部の外周面に沿って配設される複数枚のシート状の外層基材を備え、各外層基材は、周方向の一端を接着させ、周方向の他端を、隣り合う他の外層基材の外面に重なり合うようにして配設されて、連接部の周方向に沿って重ね張りされるようなものも用いられ、このものの場合、前記複数枚の外層基材は、各外層基材の一端を、重なり合った他の外層基材の他端に対し、周方向の位置がずれるように配置されるのが好ましく、また、そのサイズとしては例えば連接部の外周長を約2分割から6分割する長さに相当する大きさのものや、さらに高次に分割(例えば8〜16分割)して多重に重なり合うようにしたものなどが挙げられる。
【0022】
また、インフュージョン法においては、好ましくは、強化繊維基材層の上にさらに離型材または樹脂拡散部材を配設するか、あるいは離型材及び樹脂拡散部材をその順またはその逆順に配設するのがよい。
【0023】
離型材は固化した注入樹脂の離型性を高めるものであり、注入樹脂と非接着性の材料からなるシートが好ましい。
【0024】
樹脂拡散部材は注入樹脂の拡散を促進するものであり、注入樹脂を強化繊維基材に偏りなく含浸させるとともに、接合部上の所望の範囲全体に注入樹脂を拡散させうるものであり、網状のシート材が好ましい。
樹脂拡散部材は強化繊維基材の種類、厚みなどの条件により、成形可能であれば使用しなくてもよい。
【0025】
インフュージョン法においては、強化繊維基材層を、あるいはさらに加えて離型材や樹脂拡散部材をバッグフィルムで所定連接部上に気密に覆う。バッグフィルムは、この種の真空注入成形法に一般的に用いられる気密な合成樹脂製のフィルム材であれば特に限定されない。そして、バッグフィルムは、連接部の周縁部において、粘着材料等のシール材を用いてバッグフィルムを連接部の表面に固着するのが好ましい。これにより、連接部とバッグフィルムとの間を、気密かつ密閉された成形部として構成することができる。
【0026】
そして、バッグフィルム内すなわちバッグフィルムで覆われた内部を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続したのち、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化させる。減圧ラインとしては、例えば減圧吸引口を真空ポンプに取り付けたものなどが挙げられる。この注入樹脂としては、例えば、低粘度系のビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂などが好ましい。注入ラインとしては、樹脂注入口を樹脂貯留槽から樹脂を供給するコネクターと接続したものや樹脂注入ホースをバッグフィルム内に挿入し樹脂拡散部材に接するように設置したものなどが挙げられ、樹脂注入は、所定の真空圧にまで達し、シワがないことを確認後、行うのが好ましい。樹脂注入後は、樹脂に熱硬化性のものを用いた場合は熱を加えて、あるいは硬化剤を樹脂に加えた場合はその後硬化して成形する。また、熱可塑性の樹脂を用いる場合は、液化するまで加温された樹脂を注入後、冷却し樹脂を固化させる。
【0027】
上記インフュージョン法において、前記強化繊維基材は、前記接合部の外周縁面に沿って配設される複数枚のシート状物であってもよく、その場合、シート状物は、周方向の一端を接着させ、周方向の他端を、隣り合う他のシート状物の外面に重なり合うように配設して、接合部の周方向に沿って重ね張りされるように略風車状に配設するのがよく、シート状物は所定の長さにカットされたものが扱いやすく、またシート状物は、上記連接部の外周面に直接に巻回されるバインダーを介在してなる形態のものであってもよい。
シート状物の配設は、周方向および横方向に位置をずらしながら行われるか、或いは複数枚のシート状物として複数種類の幅寸法を有するもの(好ましくは幅が少しずつ異なるもの)が用いられる場合、周方向に位置をずらしながら行われ、両端面がなだらかになるように積層され、全体として央部に必要幅が確保され、両端部側に向かって徐々に減肉していくように配設するのがよい。
シート状物のサイズとしては例えば上記連接部の外周面における外周長を約2分割から6分割する長さに相当する大きさのものや、さらに高次に分割(例えば7〜16や、7〜50分割)して多重に重なり合うようにしたものなどが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらの図により何ら限定されるものではない。
図1及び図4にそれぞれ偏心レジューサ用成形型1及び同心レジューサ用成形型1´を模式的に示す。各図において、中央に示すように、成形型1,1´は、種々の製品群全体に対応しうるように、それらのうちの最大口径と最小口径とを具備させた成形型本体11,11´と、該成形型本体から延出する回転軸12,12´とからなる。回転軸としては、例えば成形型本体に比しかなり短い、丸い棒状体或いは桿状体などが挙げられる。なお、各図において、左右に、一端および他端における成形型本体と回転軸の形状を示す。
また、図2及び図5にそれぞれ図1及び図4の成形型を用いて得られる脱型前の漏斗状管状体21,21´を示す。
また、図3及び図6にそれぞれ図2及び図5の漏斗状管状体を用い、各漏斗状管状体21,21´の両端に直管22,22´を連接して得られる偏心レジューサ2及び同心レジューサ2´を示す。
【0029】
レジューサの製造には、先ず、図1あるいは図2の成形型に、それを回転させながら、流動性樹脂を含浸させた強化繊維基材を所定の肉厚や強度になるように巻き付け、固化或いは硬化させて図2及び図5に示すように漏斗状管状体を成形したのち、脱型することにより漏斗状管状体を作成する。
その際、巻き付けは、成形型の断面漏斗状のテーパ面における、必要とするレジューサの大口径部直径と同径部から小口径部直径と同径部までを使用して行われる。
【0030】
次いで、このようにして得られた漏斗状管状体は、端部のバリを取ったのち、両端に大径のFRP製直管と小径のFRP製直管と連接させて、図3及び図6にそれぞれ示すように、偏心レジューサ及び同心レジューサに成形される。
その際、連接を接合法で行った場合、接合部の補強について、以下、図7〜10を参照しながら説明する。
図7に、図2の漏斗状管状体21を用い、その端部に、それと略同径の直管22を連接させて得られる偏心レジューサについて、その接合部における補強態様の1例を示す。図8に示すように、図7の偏心レジューサにおいて、その接合部に配設され補強接合部の形成に用いられる強化繊維基材3は、内層基材31と外層基材32とからなる。内層基材31は、連接部の外周面に直接に巻き付けられるバインダーであり、例えば、強化繊維材をチョップドストランドマット状の形態にステッチ加工を施したもので、シート状に形成された基材であるのが好ましい。このようなチョップドストランドマットのステッチ基材による内層基材31は、ステッチ糸の力により形状保持性を有し、連接部の外周面に対する追従性に優れている。外層基材32は、内層基材31の外径側に重ねて配設される複数枚のシート状のものであって、強化繊維フィラメントを集束した繊維ストランドを引き揃えて形成したロービングを、横糸に用いて織物または不織布とされたシート状繊維基材であるのが好ましい。
このような強化繊維基材3のうち内層基材31を、まず、接合部の外周面に沿わせて配設する。
【0031】
続いて、図9に示すように、内層基材31の外周面に沿わせてその周方向に、複数枚のシート状の外層基材32を、順に巻き付けつつ重ね張りする。
【0032】
外層基材32は、接合部の外径に応じて、規定する長さに裁断して形成されている。例示の形態では、外層基材32は、接合部の外周長を約2分割から6分割する長さに相当する大きさに裁断され、外層基材32の幅を、内層基材31の幅とほぼ同等の大きさとして矩形状に形成され、接合部の周方向に重ね張りされる。
重ね張りされる各外層基材32の周方向の一端側は、内層基材31に接着して固定するとともに、周方向の他端側は内層基材31に接着させずにおく。
【0033】
外層基材32は、図9に示すように、先に巻き付けた内層基材31の外面に重ねて、複数枚の外層基材32をそれぞれ周方向に配設するようにして巻き付けられる。具体的には、接合部の外周面に沿って、周方向に一枚の外層基材32をセットし、その外層基材32の周方向の一端側を、内層基材31の外面に接着して固定する。また、この外層基材32の周方向の他端側は接着せずに、そのまま接合部の外形状に沿わせて置く。続いて配設する外層基材32も同様に、その周方向の一端側を内層基材31に対して接着するとともに、他端側を接着させずに隣り合う他の外層基材32の外面に重ね合わせるように配設する。強化繊維基材3の配設および固定には、内層基材31にも外層基材32にも共に吹付け糊や粘着剤や接着剤等を用いることができる。
【0034】
このようにして、図9に示すように、複数枚の外層基材32を内層基材31の外面に重ね張りする。外層基材32は、周方向に一定量ずつ、その配設位置をずらしながら、順に積層される。外層基材32を積層する際の、隣り合う他の外層基材32との重ね代wには、一枚の外層基材32の長さの1/10以上の長さを確保することが望ましい。また、この外層基材32同士の重ね代が無く、端部同士が接する状態あるいは離間する状態となる配設位置は、外層基材32による強度を得るには好ましくない。これにより、所定の肉厚を確保して強化繊維基材3を積層することができる。
【0035】
次に、図10に示すように、前記積層した外層基材32の外面に、伸縮性不織布4が重ねて巻き付けられ、伸縮性不織布4は、複数枚の外層基材32を内層基材31を介して接合部の外周面に押さえて定着させるものとなる。外層基材32は、周方向の一端側のみが接着され固定されているが、伸縮性不織布4で押さえられて安定的に積層状態を維持することができる。また、外層基材32の周方向の他端側は、隣り合う外層基材32に重ね合わされているだけであるので、不織布4で巻き込む際に、不要な皺を生じることなく接合部の外周に沿って固定される。
【0036】
続いて、巻いた不織布4の外面に離型布5を巻き付け等で重ねて配設する。
【0037】
さらに、離型布5の外面に、樹脂拡散部材6を配設する。
【0038】
また、樹脂拡散部材6の外側には、注入樹脂の注入管8を配置する。注入管8の配置形態は適宜であるが、接合部の管底付近に設けることが好ましい。この注入管8としては、ゴム製のパイプなどがあり、バッグフィルム7を通されて、樹脂拡散部材6に接続される。
【0039】
また、バッグフィルム7で覆った成形部には減圧ラインが配設されている。減圧ラインは、ゴムチューブ等のホースを介して減圧源に接続される。また、接合部の大きさ等に合わせて、かかる注入管8を、適宜間隔で複数本、樹脂拡散部材6の外面に配設するようにしてもよい。
【0040】
次いで、これらの離型布5並びに樹脂拡散部材6、および注入管8を配設した接合部を、バッグフィルム7で気密に被覆する。そして、連接部の周縁部に、粘着材やシールテープなどのシール材を用いてバッグフィルム7を接合部の表面に固着する。これにより、接合部とバッグフィルム7との間を、気密に密閉された成形部として構成することができる。また、バッグフィルム7で被覆した成形部には、成形部内の空気を吸引して減圧する減圧源が接続される。
【0041】
樹脂注入にあたっては、接続された減圧源によりバッグフィルム7の内側を減圧し、略真空状態とする。このとき、積層した強化繊維基材3(特に、外層基材32)に皺が生じていないことを確認する。複数枚を重ね張りした状態の外層基材32は、周方向の一端側がそれぞれ固定されているのみで、周方向の他端側が固定されていないので、バッグフィルム7により密封して減圧されて外層基材32に皺を生じるように作用しても、外層基材32の非接着の他端側へ皺を逃がすことができ、その結果、皺の発生を効果的に防ぐことができる。また、この際、強化繊維基材3が所定の肉厚になっているかどうかも直接触れて測定し、確認することができる。また、確認により不具合があれば、作業を中断して樹脂注入の前段階で修正することができる。
【0042】
そして、かかる減圧環境下において、注入管8から樹脂を注入し、バッグフィルム7の内側(成形部内)に拡散させる。注入された樹脂は、樹脂拡散部材6を介して全体にわたって均等に拡散され、不織布4、および強化繊維基材3に含浸する。
【0043】
樹脂注入が完了すると、成形部内の減圧状態を維持したまま注入樹脂を固化させ、これにより、強化繊維材料と含浸一体化させることができる。
【0044】
このようにして、レジューサを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明方法は、繊維強化樹脂製レジューサの成形において、口径組み合わせ毎に成形型を必要とすることなく、簡便に一つの成形型で所定口径組み合わせに対応することができるので、産業上大いに有用である。
【符号の説明】
【0046】
1,1´ 成形型
11,11´ 成形型本体
12,12´ 回転軸
2,2´ 繊維強化樹脂製レジューサ
21,21´ 漏斗状管状体
22,22´ 直管
3 強化繊維基材
31 内層基材
32 外層基材
4 不織布
5 離型布
6 樹脂拡散部材
7 バッグフィルム
8 注入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用する最大口径から最小口径まで絞り込んだ断面漏斗状のテーパ面を有する円錐台状の成形型本体と、その両端より延出する回転軸とからなる成形型を用意し、この成形型に、その回転軸を回転させながら、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた強化繊維基材を、成形型を囲包するように巻き付け、樹脂を固化或いは硬化させて成形したのち、脱型して、漏斗状管状体を作成し、次いで、漏斗状管状体の両端にその口径に略合う直管を連接することを特徴とする繊維強化樹脂製レジューサの製造方法。
【請求項2】
繊維強化樹脂製レジューサが、偏心型のものであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
繊維強化樹脂製レジューサが、同心型のものであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
連接するのを、相互に端面同士を突き合せ、接着或いは溶着するものとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
連接するのが、嵌合、螺合等の連結方法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
連接するのが、嵌合、螺合等の連結方法と接着或いは溶着等の接合方法との組合せ方法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
直管を連接するにあたり、連接部の外周縁面及び/又は外周面に沿って繊維強化樹脂で囲包するようにインフュージョン成形を行うことで上記連接部を補強することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−98475(P2011−98475A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253812(P2009−253812)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】