説明

繊維強化熱可塑性樹脂成形品

【課題】特定の扁平断面形状を有する強化繊維を含み、その強化繊維の繊維長分布が長繊維側にシフトした、機械的強度、耐熱性、反り性、表面外観に優れた繊維強化熱可塑性樹脂成形品を提供する。
【解決手段】 (A)熱可塑性樹脂70〜35重量%、(B)断面が下記式による扁平率2.3以上の扁平形状である強化繊維30〜65重量%を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形品において、成形品中の強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上であることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
扁平率=強化繊維長径(a)/強化繊維短径(b)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂成形品に関するものであり、より詳しくは、扁平断面形状を有する強化繊維を含み、その強化繊維の繊維長分布が長繊維側にシフトした、機械的強度、耐熱性、反り性、表面外観に優れた繊維強化熱可塑性樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維、炭素繊維などに代表される強化繊維を含有した熱可塑性樹脂成形品は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性などに優れ、自動車分野、電気電子機器分野、精密機械分野などの部品として利用されている。しかし、最近の部品に対する軽量化要求に伴い部品の小型化、薄肉化が進み、機械的強度や寸法精度などがさらに厳しく求められ、それと同時に、使用される成形品材料に対しては、上記のような要求特性に適した材料の開発が求められることとなった。特に、自動車分野においては、エンジンルーム内の部品として使用するためには、100℃以上の高温においても十分な機械的強度を有していることが求められており、また、外装パネルやそれを支える構造体においても、樹脂製品が用いられるようになってきている。
【0003】
成形品中の強化繊維長に関しては、繊維長を長くすることによって、剛性、耐衝撃性等の機械的強度が改善されるということは、従来から知られている。例えば、特許文献1には、(A)ポリアミド樹脂に(B)長さ3mm以上の繊維状強化材5〜80重量%(組成物中)および、(C)炭素数22〜32の脂肪酸金属塩を0.01〜3重量%(組成物中)を配合してなる、機械的強度および成形加工性に優れた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物および該樹脂組成物を射出成形してなる成形品が開示されている。また、特許文献2では、特許文献1における(A)ポリアミド樹脂が、ナイロン66成分/ナイロン6成分=99〜1重量%/1〜99重量%のブレンド物である、良表面外観、高熱変形温度の樹脂組成物および該樹脂組成物を射出成形してなる成形品が開示されている。
しかし、特許文献1、2に記載の樹脂組成物に用いられている繊維状強化材は、製造の容易さから断面が円形のものであり、このような断面形状の繊維状強化材を用いた場合、機械的強度の向上は認められるものの、射出成形時に繊維状強化材が粉砕され、成形品中に残存する強化材の繊維長が短くなり、強化材による補強効果が低下したり、樹脂流れに伴う強化材の配向により成形品に方向性が出て反りが発生するといった問題があり、特定部品のみの適用にとどまっていた。また、特許文献2に関しては、射出成形品中に分散している繊維状強化材の繊維長が重量平均繊維長で1mm以上であることを規定しているが、その重量平均繊維長の測定法や実成形品中の繊維長に関しては全く記載されていない。
【0004】
特許文献3は、長繊維強化材を含む樹脂成形品中の繊維長分布の形状と、成形性および成形品物性との関係を2分数ワイブル分布により近似した発明であり、その分布形状が、繊維長の短い方から長い方へなだらかに尾を引くような形状となっている場合に、成形性と成形品物性のバランスに優れることが記載されている。特許文献4には、射出成形時の繊維配向によって生じる成形体の異方性を低減した長繊維強化熱可塑性樹脂製外装成形体として、成形体中に分散する強化繊維の含有率が30重量%〜90重量%であって、重量平均繊維長が1.5mm〜10mmであり、成形体の最大投影面積が20000mm2以上であり、成形時に断面積100mm2以下の狭流路の流路長が150mm以下であり、しかも、肉厚2mm以上の成形体部分の最大線膨張係数が5×10-5-1以下であり、かつ、最大線膨張係数/最小線膨張係数の比が1.8以下である、長繊維強化熱可塑性樹脂製外装成形体が開示されている。しかし、該技術で用いられている強化材も通常の円形断面形状のものであり、繊維長が長い場合の成形性や衝撃強度、実成形品の外観、成形収縮や反りによる寸法安定性などは十分であるとは言えない。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献5では、強化繊維の代表であるガラス繊維の断面形状を扁平なものとすることにより、円形断面のガラス繊維に比べ比表面積が増大しマトリックス樹脂組成物との接着効果が増大し、また、成形体中の繊維長を長くすること(平均繊維長は、円形断面形状の場合0.47mmに対し、まゆ型断面形状では0.57mm)によって、機械的強度が改善することが示されている。しかし、特許文献5に記載の樹脂組成物は、円形断面ガラス繊維を配合した樹脂組成物に比べ、引張強度、表面平滑性の向上や反りの防止には効果はあるものの十分ではなく、衝撃強度に関しては、特に熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いた場合は、円形断面のガラス繊維を用いた場合と同程度に低下する場合がある。
【0006】
特許文献6には、特許文献5で挙げられている問題を解決するために、扁平ガラス繊維を長繊維化する方法が開示されている。具体的には、熱可塑性樹脂からなるペレット中に、断面が扁平な扁平ガラス繊維フィラメントを、該フィラメントの両端面が前記ペレット表面に達するように、複数のフィラメントが一方向に配列された、扁平ガラス繊維含有ペレットを提供することが記載されている。しかし、特許文献6には、成形品中の残存繊維長に関する記載はあるが、全体的な繊維長分布の説明や、繊維長分布と成形品物性の相関については一切言及されていない。また、該技術を用いた場合、成形品中のガラス繊維の残存繊維長が十分長くないため(実施例では、長いもので0.49mm)、このような成形品は、衝撃強度はある程度改善されるものの、さらにより高い性能が求められる最近の傾向においては、機械的強度の低下や高温雰囲気下での強度維持、樹脂の収縮や反りによる寸法変化の問題は十分に解決されたとは言えない。
【0007】
【特許文献1】特開平5−9380号公報
【特許文献2】特開平6−107944号公報
【特許文献3】特開平9−286036号公報
【特許文献4】特開2006−82275号公報
【特許文献5】特公平2−60494号公報
【特許文献6】特開2006−45390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、その目的は、機械的強度、耐熱性、反り性等の寸法精度、表面外観に優れた繊維強化熱可塑性樹脂成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、強化繊維の断面形状が扁平な強化繊維を用い、同時に、成形品中に残存している強化繊維の繊維長を長く保つ、具体的には、強化繊維の重量平均繊維長を1mm以上とすることにより、機械的強度の改善ばかりでなく、驚くべきことに、耐熱性、寸法精度、表面外観の改善が同時に図られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明の要旨は、(A)熱可塑性樹脂70〜35重量%、(B)断面が下記式による扁平率2.3以上の扁平形状である強化繊維(以下、「扁平強化繊維」と記す)30〜65重量%を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形品において、成形品中の強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上であることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品に存する。
具体的には、以下の手段により達成された。
(1)(A)熱可塑性樹脂70〜35重量%、(B)断面が下記式による扁平率2.3以上の扁平形状である強化繊維30〜65重量%を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形品において、成形品中の強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上であることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
扁平率=強化繊維長径(a)/強化繊維短径(b)
(2)(B)強化繊維の扁平率が2.3〜5である、(1)に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(3)重量平均繊維長が1〜10mmである、(1)または(2)に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(4)成形品中の繊維長1mm以上である強化繊維の割合が、全強化繊維中の30重量%以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(5)(B)強化繊維の断面形状が長円形である、(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(6)(A)熱可塑性樹脂として、少なくとも1種のポリアミド樹脂を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(7)(A)熱可塑性樹脂として、少なくとも1種のポリエステル樹脂を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(8)(A)熱可塑性樹脂が、少なくとも、0〜50モル%のパラキシリレンジアミンと、50〜100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(9)(A)熱可塑性樹脂の20重量%以上が、0〜50モル%のパラキシリレンジアミンと、50〜100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6〜12のα、ω一直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂である、(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(10)(A)熱可塑性樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂および/またはポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(11)(A)熱可塑性樹脂として、少なくとも、30℃でフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンとの1対1(重量比)混合液中で測定した極限粘度が0.3〜1.2dl/gで、かつ、チタン含有量が80ppm以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(12)ロービング状の強化繊維を熱可塑性樹脂で被覆した後、3mm以上の長さにカットされたペレットを用い、射出成形法または押出成形法にて製造されたことを特徴とする、(1)〜(11)のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
(13)ロービング状の強化繊維に熱可塑性樹脂を被覆した後、3mm以上の長さにカットされたペレットを射出成形または押出成形する工程を含むことを特徴とする、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、機械的強度ばかりでなく、耐熱性、寸法精度、表面外観に優れた繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得ることが可能である。これら樹脂成形品は、軽量化、薄肉化、並びに、寸法精度、外観向上の要求性能を十分に満足することができるため、自動車分野、電気電子機器分野、精密機械分野の部品等広範囲の用途に利用可能であり、本発明の工業的価値は顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
(A)熱可塑性樹脂:
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、結晶性熱可塑性樹脂、非晶性熱可塑性樹脂の何れであってもよい。
結晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、芳香族ビニル化合物重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(ポリアミド樹脂)
本発明におけるポリアミド樹脂とは、その分子中に酸アミド基(−CONH−)を有する、加熱溶融できるポリアミド重合体である。具体的には、ラクタムの重縮合物、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物との重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、またはそれ等の共重合ポリアミド樹脂やブレンド物等である。
【0015】
ポリアミド樹脂の重縮合の原料であるラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、(2,2,4−または2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナンメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン化合物等が挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸等が挙げられる。
ω−アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0016】
これらの原料から重縮合されてなるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT等が挙げられる。本発明においては、これらポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0017】
上述のようなポリアミド樹脂の中でも、成形性、耐熱性などの観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、またはポリアミドMXD6等のMXナイロンとして広く知られているポリアミド樹脂がより好ましく使用される。これらの中でも、さらにMXナイロンが、耐熱性、成形品表面外観の観点から好ましい。また、ポリアミド樹脂が混合物である場合は、ポリアミド樹脂中のMXナイロンの比率が20重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
ここで好ましく使用されるポリアミド樹脂であるMXナイロンとは、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とキシリレンジアミンとの重縮合で得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。本発明においては0〜50モル%のパラキシリレンジアミンと、50〜100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6〜12のα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂がより好ましい。該MXナイロンは、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド9T等の脂肪族系ポリアミド樹脂に比べ結晶化速度がやや遅いため、特に成形サイクルを短縮するために、該MXナイロンに脂肪族系ポリアミド樹脂を配合して用いることが好ましい。
上記成形サイクル短縮の目的で配合する場合に用いられる脂肪族系ポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46等の結晶化速度の速いポリアミド樹脂や、ポリアミド66/6T、66/6T/6I、ポリアミド9T等の高融点のポリアミド樹脂が挙げられ、経済性の観点からポリアミド66またはポリアミド6が好ましい。成形性および物性のバランスから、その脂肪族系ポリアミド樹脂の配合率は、全ポリアミド樹脂中の60重量%以下が好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂の配合率を60重量%以下にすることにより、耐熱性を良好に保つことができる。
【0019】
MXナイロンの原料であるα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の中では、炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸、例えば、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸などが好適に使用できる。これらのα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の中でも、成形性、成形品性能等のバランスを考慮すると、アジピン酸が特に好適である。
【0020】
MXナイロンのもうひとつの原料に使用するキシリレンジアミンとは、メタキシリレンジアミン、もしくはパラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとの混合キシリレンジアミンである。混合キシリレンジアミン中のメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は50/50〜100/0が好ましく、55/45〜100/0がより好ましい。パラキシリレンジアミンのモル比率を50モル%以下とすることにより、ポリアミド樹脂の融点を低く保ち、MXナイロンの重合やMXナイロンを含む樹脂組成物の成形加工が容易になるため好ましい。特に、パラキシリレンジアミンの比率を10モル%以上とすることにより、ポリアミド樹脂の結晶化速度を速くすることができ、脂肪族系ポリアミド樹脂の配合量を減らすことができるためさらに好ましい。
【0021】
ポリアミド樹脂の相対粘度は、好ましくは2.0〜4.0であり、より好ましくは2.0〜2.7である。相対粘度を2.0以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の脆化を防ぐことができ、4.0以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の成形時の流動性を良好にすることができ成形加工が容易となり好ましい。なお、本発明において、相対粘度は、溶媒として96%硫酸を用い、樹脂濃度1g/100ml、温度23℃の条件で測定した粘度を意味する。
【0022】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、重合体分子量の観点から、好ましくは10〜140eq/ton、より好ましくは30〜100eq/tonである。また、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は、重合体分子量の観点から、好ましくは10〜140eq/ton、より好ましくは30〜100eq/tonである。
【0023】
(ポリエステル樹脂)
本発明におけるポリエステル樹脂とは、好ましくは、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と脂肪族グリコールとの重縮合反応によって得られる重合体或いは共重合体であり、1種のポリエステル樹脂を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
芳香族ジカルボン酸またはその誘導体としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、ならびに、これらのアルキル(例えば、炭素数1〜4)あるいはグリコールのエステルが挙げられる。中でも、テレフタル酸またはこのジアルキルエステルがより好ましく、テレフタル酸またはそのジメチルエステルが特に好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸またはその誘導体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、これらの芳香族ジカルボン酸またはその誘導体は、これと共に、少量の他の二塩基酸または多塩基酸またはこれらのアルキルあるいはグリコールのエステル等を混合して用いてもよい。例えば、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体に対して20重量%以下の、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸等の多塩基酸、またはこれらのアルキルあるいはグリコールのエステル等を混合して用いることができる。
【0025】
脂肪族グリコールとしては、好ましくは、炭素数2〜20のグリコールであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらのグリコールは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、これら脂肪族グリコールは、これと共に少量の他のグリコールまたは多価アルコール等を混合して用いてもよい。例えば、脂肪族グリコールに対して20重量%以下の、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、キシリレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等の芳香族グリコール、グリセリンあるいはペンタエリスリトール等の多価アルコール等を混合して用いることができる。
【0026】
また、本発明のポリエステル樹脂は、上述の成分以外に、例えば、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸およびp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、tert−ブチル安息香酸およびベンゾイル安息香酸等の単官能成分を共重合成分として使用することもできる。
【0027】
ポリエステル樹脂の代表的なものとしては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂またはこれを主体とする共重合体が挙げられ、具体的には、機械的強度および耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびこれらの共重合体が好ましい。これらの樹脂を共重合体で使用する場合は、テレフタル酸が全ジカルボン酸成分の50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、エチレングリコール、またはテトラメチレングリコールが全グリコールの50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。このようなポリアルキレンテレフタレート樹脂を用いることにより、機械的強度および耐熱性がより向上する傾向にあり好ましい。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、なかでも、フェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの1:1(重量比)の混合溶媒中、30℃の温度で測定した極限粘度が0.3〜1.2dl/gのポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度を0.3dl/g以上とすることにより、得られる繊維強化ポリエステル樹脂の機械的性能をより優れたものとすることができる。また、極限粘度を1.2dl/g以下とすることにより、繊維強化ポリエステル樹脂の流動性を良好に保つことができ、成形性が向上する傾向にある。また、成形過程における強化繊維の折損を抑止し成形品中の強化繊維の繊維長をより長く保つことができ、機械的強度の低下を防ぐことが可能となる。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、極限粘度の異なる2種以上のポリブチレンテレフタレート樹脂を併用し、上記範囲内の極限粘度としてもよい。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂の加水分解による強度低下を抑制するために、ポリブチレンテレフタレート樹脂中のチタン含有量は80ppm以下であることが好ましく、60ppm以下であることがより好ましい。チタン含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造時に用いるチタン化合物の配合量により調整することができる。
【0029】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂も好ましく使用することができる。ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂である場合、その極限粘度は好ましくは0.5〜0.9dl/gである。極限粘度を上記範囲内とすることにより、成形加工が容易になり、得られる樹脂組成物の機械的強度をより良好なものとすることができる。また、該ポリエチレンテレフタレート樹脂は、極限粘度の異なる2種以上のポリエチレンテレフタレート樹脂を併用し、上記範囲内の極限粘度としてもよい。
【0030】
ポリエステル樹脂を製造する場合、公知の方法を広く採用できる。例えば、テレフタル酸成分とテトラメチレングリコール成分とからなるポリブチレンテレフタレート樹脂を製造する場合、直接重合法およびエステル交換法のいずれの方法も採用できる。直接重合法は、例えば、テレフタル酸とテトラメチレングリコールを直接エステル化反応させる方法であり、初期のエステル化反応で水が生成する。エステル交換法は、例えば、テレフタル酸ジメチルを主原料として使用する方法であり、初期のエステル交換反応でアルコールが生成する。直接エステル化反応は原料コスト面から好ましい。
重合触媒を用いる場合は、チタン化合物を選択することが好ましい。チタン化合物としては特に制限はなく、具体的には、例えば、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物類、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート類、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート類等が挙げられる。中でも、チタンアルコラート類が好ましく、さらにはテトラアルキルチタネート類が好ましく、特にテトラブチルチタネートが好ましい。これらの重合触媒は、水、テトラメチレングリコール等の溶液として供給し、供給量としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂の理論収量当たり、チタン原子換算で好ましくは80ppm以下、より好ましくは60ppm以下である。
また、ポリエステル樹脂は、原料供給またはポリマーの払い出し形態について、回分法および連続法のいずれの方法で製造してもよい。さらに、初期のエステル化反応またはエステル交換反応を連続操作で行って、それに続く重縮合を回分操作で行ったり、逆に、初期のエステル化反応またはエステル交換反応を回分操作で行って、それに続く重縮合を連続操作で行う方法もある。
【0031】
(ポリアセタール樹脂)
本発明におけるポリアセタール樹脂とは、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンの重合によって製造される重合体であり、例えば、オキシメチレン基を繰り返し単位とする単独重合体が挙げられる。耐熱性および化学的抵抗性を増加させるために、末端基をエステル基またはエーテル基に変換することが一般に行われている。
ポリアセタール樹脂はブロック共重合体であってもよい。この種の共重合体は、上記オキシメチレン基を繰り返し単位とする単独重合体ブロックと、他種の重合体ブロックとから構成される。他種の重合体ブロックの具体例としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリチオール、ビニルアセテート、アクリル酸共重合体、水素添加ブタジエン、アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
ポリアセタール樹脂はランダム共重合体であってもよい。この種の共重合体では、ホルムアルデヒドおよびトリオキサンは、他のアルデヒド、環状エーテル、ビニル化合物、ケテン、環状カーボネート、エポキサイド、イソシアネート、エーテル等と共重合される。共重合される化合物の具体例としては、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセペン、エピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、イソブチレンオキサイドおよびスチレンオキサイド等が挙げられる。この種の共重合体では、カチオン重合後、重合触媒の失活化、末端安定化などが一般に行われる。また、オキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、炭素数2以上のオキシアルキレン基を含有する共重合体が汎用される。
【0032】
(ポリオレフィン樹脂)
本発明におけるポリオレフィン樹脂とは、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィン同士の共重合体、α−オレフィン(複数種でもよい)を主成分とし、他の不飽和単量体(複数種でもよい)を副成分とする共重合体等である。ここで、共重合体とは、ブロック、ランダム、グラフト、これらの複合物等の如何なる共重合のタイプでもよい。また、これらのオレフィン重合体の塩素化、スルホン化、カルボニル化等の変性されたものを含む。
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられる。これらの中でも、入手の簡便さから炭素数2〜8のα−オレフィンが好ましい。
上記不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(以下、両者を併せて「(メタ)アクリル酸」と略記する。)、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸等の不飽和有機酸、その誘導体(エステル、無水物等)、不飽和脂肪族環状オレフィン等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1、プロピレン−エチレンブロックまたはランダム共重合体、エチレンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0033】
(ポリカーボネート樹脂)
本発明におけるポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂の何れをも使用できるが、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐していてもよいし、共重合体であってもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造できる。また、溶融法によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂を用いる場合、末端基のOH基量を調整して用いてもよい。
【0034】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0035】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、分岐剤、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(すなわち、イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0036】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。さらには、上述した芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量として、13,000〜30,000が好ましく、16,000〜28,000がより好ましく、17,000〜24,000がさらに好ましい。粘度平均分子量を30,000以下とすることにより、流動性を良好に保ち、13,000以上とすることにより、衝撃強度をより優れたものとすることができる。
【0038】
(ポリフェニレンエーテル樹脂)
本発明におけるポリフェニレンエーテル樹脂は、下記一般式(1)で示されるフェニレンエーテル構造を有する単独重合体または共重合体である。
【0039】
【化1】

一般式(1)中、2つのR1は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基またはハロ炭化水素オキシ基を表し、2つのR2 は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基またはハロ炭化水素オキシ基を表し、nは10以上の整数を表す。ただし、2つのR1が共に水素原子になることはない。
【0040】
1、R2としては、水素原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基が好ましい。第1級アルキル基の好適な例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2,3−ジメチルブチル基、2、3−もしくは4−メチルペンチル基またはヘプチル基等が挙げられる。第2級アルキル基の好適な例としては、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基または1−エチルプロピル基等が挙げられる。アリール基の好適な例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。特に、R1は、第1級若しくは第2級の炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であることがより好ましい。R2は水素原子であることがより好ましい。
【0041】
好適なポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル等の2,6−ジアルキルフェニレンエーテルの重合体が挙げられる。共重合体としては、各種2,6−ジアルキルフェノール/2,3,6−トリアルキルフェノール共重合体が挙げられる。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体が好ましい。また、分子量、溶融粘度、耐衝撃強度などの特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテル樹脂も好適である。
【0042】
ポリフェニレンエーテル樹脂の固有粘度は、クロロホルム中、30℃で測定した値として、0.2〜0.8dl/gであるものが好ましく、0.2〜0.7dl/gのものがより好ましく、0.25〜0.6dl/gであるのものがさらに好ましい。固有粘度を0.2dl/g以上とすることにより、樹脂組成物の耐衝撃性等の機械的強度の低下を防ぐことができ、0.8dl/g以下とすることにより、樹脂流動性がより良好となり、成形加工が容易となる。
【0043】
(芳香族ビニル化合物重量体)
芳香族ビニル化合物重合体は、下記一般式(2)で示される構造を有する単量体化合物から誘導された重合体である。
【化2】

一般式(2)中、R3は、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子を表し、R4は、水素原子、低級アルキル基、塩素原子またはビニル基を表し、nは1〜5の整数を表す。
【0044】
芳香族ビニル化合物重合体の具体例としては、例えば、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体等が挙げられる。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂としては、機械的強度、耐油性、耐薬品性、耐熱性、耐久性、成形性のバランスに優れている点から、前述のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0046】
(B)扁平強化繊維:
本発明における(B)扁平強化繊維とは、ガラス繊維、炭素繊維などとして知られている、機械的強度の向上を主目的にプラスチックに配合される繊維状の強化材であり、繊維の断面は従来のような円形ではなく、扁平な形状であることを特徴としている。強化繊維の扁平形状の例としては、特許文献5の第1図の(イ)、(ロ)、(ハ)に、それぞれ、まゆ形、長円形、楕円形として例示されている。第1図において、長径を(a)、短径を(b)とし、強化繊維の扁平の程度を扁平率とし、長径(a)/短径(b)で表す。本発明においては該扁平率が2.3以上であることが必要であり、2.3〜5であることが好ましく、3〜4.5であることがより好ましい。扁平率を2.3以上とすることにより、成形品の反りや成形収縮を効果的に改善することができる。なお、扁平率を算出するための長径(a)および短径(b)は、強化繊維断面の顕微鏡写真から実寸を測定することにより求めた。
【0047】
また、(B)扁平強化繊維の断面積は、好ましくは2×10-5〜8×10-3mm2、より好ましくは8×10-5〜8×10-3mm2、さらに好ましくは8×10-5〜8×10-4mm2である。断面積を上記範囲内とすることにより、強化繊維の製造および成形に用いる樹脂組成物ペレット製造時の取扱いが容易になるため好ましい。さらに、上記断面積範囲内の強化繊維を用いた場合、熱可塑性樹脂との接触面積が大きくなり、十分な補強効果を得ることができる。
【0048】
(B)扁平強化繊維の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量%中の30〜65重量%、好ましくは35〜60重量%である。(B)成分の含有量を65重量%以下とすることにより、成形時の流動性を良好なものとすることができると同時に、成形中の強化繊維の破砕を防ぎ、成形品中の繊維長を長く保つことができ、機械的強度の低下を防ぐことができるため好ましい。含有量の下限については、基本的には従来の円形断面形状の強化繊維を用いた場合と同様で、20重量%以上において機械的強度の改善が確認できる。しかし、強化繊維の含有量が30重量%未満であると、成形時の樹脂流動性が良いため、繊維の断面形状に関わらず樹脂の流動方向に強化繊維がほとんど配向し、寸法精度(成形収縮率および収縮率の異方性)や反り、表面外観に関して扁平強化繊維の添加効果が十分に発揮されず、円形断面繊維との違いが明確ではない。
【0049】
これに対して、(B)扁平強化繊維の含有量が30重量%以上である場合には、強化繊維自身の特徴が顕著に現れ始める。強化繊維の含有量が増加するに伴い成形時の流動性が低下し、さらには、強化繊維の破砕を防ぎ長い強化繊維長を確保するために、成形時の可塑化および射出が低剪断速度で行われるため、樹脂流動方向への強化繊維の配向がより低下する傾向にある。扁平強化繊維を用いた場合、特に、断面の扁平の程度が大きい場合は、繊維長方向の樹脂流動以外に繊維断面長径(a)方向への樹脂の流動が起こるため、(a)方向に沿って平行に強化繊維が配向し易くなる。特に成形品表面付近においては、このような配向の傾向がより強い。円形断面では通常起こらないこのような扁平強化繊維に特徴的な繊維配向の影響で、寸法精度や反り、表面外観の改善効果が発揮される。
また、このように長径(a)方向に沿って強化繊維が配向し、そして、成形品中の強化繊維の繊維長が長いために、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、熱をかけてもマトリックス樹脂が撓みにくく、より高い耐熱性を発揮できると考えられる。
このような長径(a)方向に沿った繊維の配向の影響は、断面が長円形の場合により顕著に現れるため、本発明においては、断面が長円形の強化繊維が好ましい。断面形状がまゆ形や楕円形の場合は、まゆ形での溝や楕円形での堰によって長径(a)方向への樹脂の流動が妨げられ、その流動の一部が繊維長方向へ流動する傾向にあるため、(a)方向に沿った強化繊維の配列が起こりにくく、長円形の強化繊維に比べると、寸法精度や反り、耐熱性、表面外観への改善効果はやや劣る。なお、本発明において長円形とは、例えば、特公平2−60494号公報の第1図の(ロ)に示されているような、繊維断面の重心に対して対称の位置に略平行である部分を有する形状を言う。
【0050】
(B)扁平強化繊維は、その取扱いおよび樹脂との密着性の見地から、使用にあたって必要ならば収束剤および/または表面処理剤で表面処理されていることが望ましい。収束剤および/または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等、公知の集束剤、表面処理剤を使用することが可能であり、その付着量は、強化繊維重量の0.05重量%以上とすることが好ましい。強化繊維はこれらの化合物により、あらかじめ表面処理または収束処理を施して用いてもよいし、本発明の樹脂成形品に用いる樹脂組成物ペレット製造の際に同時に添加してもよい。
【0051】
かかる(B)扁平強化繊維は、例えば溶融物を吐出するために使用するブッシングとして、長円形、まゆ形、楕円形、矩形スリット状等の適当な孔形状を有するノズルを用いて紡糸することにより製造することができる。又、各種の断面形状(円形断面を含む)を有する近接して設けられた複数のノズルから溶融物を紡出し、紡出された溶融フィラメントを互いに接合して単一のフィラメントとすることによっても製造できる。このような製造技術については、例えば特開平7−291649号公報、特開2000−344541号公報等において開示されている。
【0052】
本発明においては、成形品中の強化繊維の重量平均繊維長は、1mm以上であり、好ましくは1〜10mmであり、さらに好ましくは、1.5〜8mmである。特に本発明では、1mm以上である強化繊維の割合が、全強化繊維の30重量%以上であることが、機械的強度および高温下での強度保持の観点から好ましい。成形品中における強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上の強化繊維の割合は、全強化繊維中の33重量%〜95重量%であることがより好ましい。
強化繊維長の測定は、成形品の中央部から約5gのサンプルを切り出し、温度600℃の電気炉で2時間灰化後、残った強化繊維に対して行った。得られた強化繊維を折損しないように中性表面活性剤水溶液中に分散させ、その分散水溶液をピペットを用いてスライドグラス上に移し、顕微鏡で写真撮影を行った。その写真画像に対して、画像解析ソフトを用い、1000〜2000本の強化繊維について測定を行った。
【0053】
上記条件の達成には、少なくとも、射出または押出成形に供される樹脂組成物ペレットの段階において、少なくともこのような繊維長が確保される必要がある。このような繊維長が確保された樹脂組成物ペレットを製造する方法としては、例えば、強化繊維マットの両側から溶融樹脂シートでプレスし、シートカッターで直方体の粒状物を作成する方法や、電線被覆の要領で強化繊維ロービング表面に樹脂を被覆しストランド状にしてからペレットに切断する方法等が採用される。また、溶融混練で樹脂組成物ペレットを製造する場合は、混練時に強化繊維が破損しないような混練条件を選択するとよい。これらの方法の中でも、強化繊維をペレットの長さ方向に効率よく平行に配列させることができ、繊維の分散も良好にすることができる点から、引抜き成形法(米国特許第3042570号、特開昭53−50279号公報他)を採用することが好ましい。
該引抜き成形法とは、基本的には連続した強化用繊維束を引きながら樹脂を含浸させる方法であり、多くの様々な特許で開示されている公知の技術(強化繊維のロービング形状、強化繊維の予熱方法、開繊方法、熱可塑性樹脂への強化繊維の含浸方法、樹脂含浸後の賦形方法、冷却方法、カッティング方法等)の全てが使用可能である。射出または押出成形などでの強化繊維の折損を考えれば、長繊維強化ペレットのサイズは、ペレット長(すなわち、強化繊維の長さ)が1mm以上であり、好ましくは3mm以上であり、より好ましくは、ペレット長が3〜50mmで、ペレット径が1.5〜4mmの円柱状のものである。このようなペレットと同じ長さの強化繊維を含んだ長繊維強化ペレットを用いて射出、押出成形することにより、嵩密度の増加を抑え、成形加工時にホッパー内でブリッジが発生したり、スクリューへの食い込みが悪くなる現象を防ぎ、本発明の成形品を効率よく安定して製造することができる。
【0054】
溶融混練により樹脂組成物ペレットを製造する場合は、例えば、各種押出機、ブラベンダープラストグラフ、ラボプラストミル、ニーダー、バンバリーミキサーなどが使われる。本発明においては、ベント口から脱気できる設備を有する2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。また、(A)熱可塑性樹脂および必要に応じて配合される添加剤は、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で予め混合しておいてもよいし、混合せずに溶融混練機に投入してもよいが、(B)扁平強化繊維は2軸押出機の下流側に設ける専用投入口から別途投入することが好ましく、混合による強化繊維の破損ができる限り少なくなるように、混合時間や回転数を調整することがより好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂の種類にもよるが、本発明においては、溶融混練時の溶融樹脂の圧力を低減するために、溶融樹脂の可塑化温度を通常より高めに設定することが好ましい。例えば、ポリアミドアミド樹脂やポリエステル樹脂を溶融混練する場合は、通常は220〜280℃で可塑化するが、混練時の溶融樹脂の圧力を低減し、混合による強化繊維の破損をできるだけ低減するために、通常より高めの、例えば、260〜280℃で可塑化することが好ましい。
【0055】
上記のような条件のいずれかを採用することにより、または、複数の条件を組み合わせることにより、樹脂組成物ペレット中の強化繊維の繊維長をより長く保つことが可能となる。溶融混練により樹脂組成物ペレットを製造する場合は、樹脂組成物ペレット中の強化繊維の好ましい繊維長は1〜20mmであり、より好ましくは1.5〜20mmであり、さらに好ましくは2〜15mmである。
【0056】
また、上記記載の方法以外に、(A)熱可塑性樹脂と(B)扁平強化繊維、および必要に応じて配合される添加剤成分を、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ドラムブレンダー等で予め混合した後、そのドライブレンド物を溶融混練することなく、そのまま成形に用いる方法も効果的である。この方法を用いた場合、上記溶融混練での強化繊維の破損を回避することができるため、得られる成形品中の強化繊維長をより長く保つことが可能である。
【0057】
射出、押出成形において、強化繊維を折損しないように、成形品中の繊維長1mm以上の強化繊維の割合を高める方法としては、上記長繊維強化ペレット、溶融混練樹脂組成物ペレットおよびドライブレンド物を用いる方法以外に、例えば、スクリュー構成、スクリューやシリンダー内壁の加工、ノズル径、金型構造等の成形機条件の選択、可塑化、計量、射出時等の成形条件の調整、成形材料への他成分の添加等、種々の方法が挙げられる。
成形機としては、例えば、未溶融樹脂に急激な剪断をかけないようにスクリュー構成がより緩圧縮なタイプのスクリューを採用する方法や、インラインスクリュータイプ成形機においては、スクリュー先端の逆流防止リング等のクリアランスを大きくする方法等が採用できる。
成形条件の調整においては、特に、高剪断速度での可塑化や射出を回避する必要がある。本発明においては、可塑化、計量、射出時の条件として、例えば、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数、射出速度等を調整することが好ましい。シリンダー温度は、使用する熱可塑性樹脂の種類によって適宜調整することが必要であるが、例えば、熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂の場合は、好ましくは270〜320℃、より好ましくは280〜300℃に設定する。熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂の場合は、好ましくは250〜300℃、より好ましくは260〜280℃に設定する。
背圧を調整する場合は、好ましくは0.2〜5MPa、より好ましくは0.3〜3MPaに設定する。スクリュー回転数を調整する場合は、好ましくは30〜150rpm、より好ましくは40〜100rpmに設定する。射出速度を調整する場合は、好ましくは10〜100mm/sec、より好ましくは10〜50mm/secに設定する。
成形性、強化繊維分散性、成形品物性を損なわない程度に、成形機の条件、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数、射出速度等の成形条件のいずれかを上記好適な範囲内に調整することにより、または、これら好適な範囲内の2以上の条件を組み合わせることにより、適切な溶融粘度、圧力での成形が可能であり、強化繊維の破損を抑止し、表面外観の優れた成形品を得ることが可能である。
また、他成分を成形材料に添加する方法も効果的である。例えば、滑剤を添加し射出成形時の樹脂溶融粘度を下げる方法や、可塑剤を添加して樹脂流動性を改善する方法等が有効である。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸金属塩やモンタン酸金属塩等の脂肪酸金属塩、長鎖飽和脂肪酸ワックス、アミド系ワックス等が挙げられ、これらを機械物性に大きな影響を与えない範囲で添加することが好ましい。該滑剤の配合量は、例えば、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
可塑剤としては、例えば、ピロリドンカルボン酸化合物やパラヒドロキシ安息香酸等の、常温では固体であるが溶融温度で液状化するタイプのものが挙げられ、機械物性に大きな影響を与えない程度添加することが好ましい。該可塑剤の配合量は、例えば、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。
【0058】
また、上述の樹脂組成物ペレットを製造する際に、本発明の樹脂組成物の特性を阻害しない範囲内で、上述の必須成分および必要に応じて添加される成分以外に、例えばタルクなどの結晶核剤、ハロゲン化銅系(例えば、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅)および/またはハロゲン化アルカリ金属系(例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等)等の安定剤や、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系等の酸化防止剤、ワラストナイト等の(B)成分以外の無機充填材、離型性改良剤、難燃剤および/または難燃助剤、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐衝撃改良剤およびその他の周知の添加剤を配合することができる。
【0059】
本発明においては、(A)熱可塑性樹脂が結晶性である場合、上述の添加剤の中でも、結晶化速度を上げ成形性を改良するため、結晶核剤を配合することが好ましい。結晶核剤としては、通常、タルク、窒化ホウ素等の無機系の結晶核剤が挙げられるが、有機系の結晶核剤を添加しても良い。結晶核剤の添加量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部である。配合量を0.01重量部以上とすることにより結晶核剤としての効果を十分に発揮することができ、配合量を10重量部以下とすることにより、異物効果による強度や衝撃値の低下を防ぐことができ、必要以上に添加することなく低コストで好ましい。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形時の離型性を向上させるため、離型性改良剤を配合することが好ましい。離型性改良剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸等の炭素数14以上の長鎖脂肪族カルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミド等)、ステアリルアルコール等の炭素数14以上の高級脂肪族アルコールおよびその誘導体、ステアリルアミン等の炭素数14以上のアミンおよびその誘導体、低分子量ポリエチレンワックス、パラフィン系ワックス等のワックス類、シリコーンオイル、シリコンガム等が挙げられる。配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。配合量を上記範囲内とすることにより、離型性改良効果を十分に発揮することができ、成形時のガスの発生や、成形品表面の外観の低下を防ぐことができるため好ましい。
【0061】
耐衝撃改良剤としては、例えば、α−オレフィン系、スチレン系、アクリル系、シリコーン系等の熱可塑性エラストマーや、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂等のコア−シェルポリマー等が挙げられる。配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。
【0062】
(B)成分以外の無機充填材の具体例としては、例えば、円形断面を有するガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維や、マイカ、タルク、ワラストナイト、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。
【0063】
さらに、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、(A)熱可塑性樹脂の一部として、熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。この様な熱硬化性樹脂を含む場合の熱硬化性樹脂の配合量は、好ましくは(A)熱可塑性樹脂中の50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0064】
また、本発明においては、(A)熱可塑性樹脂の一部としてリサイクル樹脂を配合して用いてもよい。該リサイクル樹脂としては特に制限はなく、成形時のパージ樹脂、スプルー、ランナーや、成形時、二次加工時、組み立て工程時等の工程内で発生した不良品、目的の用途に使用後回収された成形品等、種々の段階からのリサイクル品を用いることができる。該リサイクル樹脂を使用する場合、その配合量は、(A)熱可塑性樹脂とリサイクル樹脂の合計100重量%中の50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下がより好ましい。リサイクル樹脂の配合量を50重量%以下とすることにより、機械的強度、成形品の寸法安定性、外観等を良好なものとすることができる。また、(A)熱可塑性樹脂とリサイクル樹脂を混合して成形に用いる際は、成形工程における分級防止のため、それらの形状や大きさをできるだけ近似させることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0066】
実施例1
[繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの製造法]
実施例1−1〜1−8、比較例1−1〜1−3、1−6〜1−9、1−11、1−12で用いたペレットの製造法
ガラス繊維ロービングを開繊して引きながら、ポリアミド樹脂の溶融物(樹脂温度280℃)に含浸させた後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、切断し、実施例1−2においては長さ3mm、その他の実施例、比較例においては長さ12mmの長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。ガラス繊維ロービング量とポリアミド樹脂量との比率を調整することにより、ペレット中の強化繊維の含有量を調節した。なお、各実施例および比較例において、ガラス繊維の断面形状およびポリアミド樹脂の種類は表1〜3に示した通りである。
【0067】
比較例1−4、1−5、1−10で用いたペレットの製造法
表1、2に示す配合割合で、ガラス繊維チョップドストランド以外をドライブレンド後、二軸押出機(日本製鋼所社製、「TEX30XCT」、バレル9ブロック構成)を用いて、樹脂温度280℃、スクリュー回転数250rpmの条件下、ガラス繊維以外の上記ドライブレンド物はホッパーより、ガラス繊維はホッパー側から数えて5番目のブロックからサイドフィーダーより供給し溶融混練を行い、長さ3mmにカットして射出成形用のペレットを製造した。
【0068】
上記の方法で得られた各実施例および比較例のポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で12時間乾燥した後、下記の成形条件で下記評価試験用の成形品を作製した。得られた成形品を用い、下記条件に従って評価を行った。
【0069】
[成形条件]
射出成形機(日本製鋼所社製、「J150E−P−2M」)にて、表1、2に記載の実施例1−1〜1−5および比較例1−1〜1−10においては、標準タイプスクリューを用い、シリンダー温度280℃、金型温度120℃、スクリュー回転数65rpm、背圧は比較例1−3が6.0MPa、それ以外の例は0.4MPaの条件で、また、表3に記載の実施例1−6〜1−8および比較例1−11、1−12においては、緩圧縮タイプスクリューを用い、金型温度120℃で、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数を表3の条件に設定し、以下の機械的強度測定用ISO試験片、成形収縮率測定用試験片、反り量測定用試験片、表面外観評価用試験片を作製した。
【0070】
[繊維長1mm以上の繊維含有率及び平均繊維長評価法]
上記記載の方法で作製された曲げ試験用、成形収縮率測定用、反り量測定用の各々の試験片の中央部から約5gのサンプルを切り出し、600℃の電気炉(東洋製作所社製「電気マッフル炉KM−28」)内で2時間灰化し、熱可塑性樹脂成分のみを燃焼させた後、ガラス繊維を折損しないようにやさしくピンセットで中性表面活性剤水溶液中に広げ、分散させた。分散水溶液を、ピペットを用いてスライドグラス上に移し、顕微鏡で20倍と40倍の倍率で写真撮影を行った。得られた写真を、画像解析ソフト(プラネトロン社製「Image−Pro Plus」)を用い、1000〜2000本のガラス繊維について測定を行い、繊維長1mm以上の比率を測定した。また、繊維長の重量平均値を重量平均繊維長、数平均値を数平均繊維長とした。
【0071】
[機械的強度測定法]
上記成形条件で得られたISO試験片を用い、ISO527規格に従って引張試験を、ISO178規格に従って曲げ試験を、ISO179規格に従ってシャルピー衝撃試験(ノッチつき)を行った。また、耐熱性を評価するため、試験片を120℃以下に加熱しながらの曲げ試験も行った。
【0072】
[成形収縮率測定法]
上記成形条件で、縦100mm、横100mm、厚み2mmの四角形の平板をフィルムゲート金型にて成形し、樹脂流れ方向(MD)と流れの直角方向(TD)の成形収縮率を測定した。MDとTDのいずれも平均収縮率が低く、MDとTDの成形収縮率の比(異方性MD/TD)が1に近く異方性が小さい方が、金型設計が容易で、寸法精度が出しやすく、一般的に好ましい。
【0073】
[反り量測定法]
上記成形条件で、直径100mm、厚み1.6mmの円板(ゲートは円周上の1点ゲート)を作製した。円板の片端を平板に固定し、反対側が平板から浮き上がった際の、最も浮き上がった箇所の高さを測定し反り量とした。この数値が小さいほど成形品にひずみがなく好ましい。
【0074】
[表面外観評価法]
上記成形条件で、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板試験片を作製した。
得られた試験片の表面を目視観察し、ガラス繊維の浮きあがり状態で外観を評価した。ガラス繊維の浮き上がりがなく表面状態が非常に優れているものを◎、一般的な成形品の許容外観範囲内であるものを○、ガラス繊維の浮き上がりが一部に認められるものを△、かなり広い範囲にわたってガラス繊維の浮きが認められ、全く許容範囲外であるものを×として表記した。
【0075】
[原材料]
(A)ポリアミド樹脂:
(A−1)MXナイロン;三菱ガス化学株式会社製、「商品名:MXナイロン6000」、相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100ml、23℃で測定)2.14
(A−2)ポリアミド6;三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、「商品名:ノバミッド(登録商標)1007J」、相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100ml、23℃で測定)2.14
(B)強化繊維:
(B−1)異形断面ガラス繊維ロービング;日東紡社製、長円形(FF)、長径(a)=28μm、短径(b)=7μm、扁平率4
(B−2)異形断面ガラス繊維ロービング;日東紡社製、まゆ形(HIS)、長径(a)=20μm、短径(b)=10μm、扁平率2
(B−3)円形断面ガラス繊維ロービング;日東紡社製、円形、繊維径13μm
(B−4)異形断面ガラス繊維チョップドストランド;日東紡社製、長円形(FF)、長径(a)=28μ、短径(b)=7μm、扁平率4、繊維長3mm
(B−5)円形断面ガラス繊維チョップドストランド;日東紡社製、円形、繊維径13μm、繊維長3mm
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
表1は、ポリアミド樹脂としてMXナイロンを用いた実施例、比較例を示している。結果より、次のことが確認された。
(1)比較例1−1は、実施例1−1、1−2と樹脂組成が同じで、強化繊維として円形ガラス繊維を用いた例である。この場合、成形品中の平均ガラス繊維長および1mm以上のガラス繊維比率が実施例1−1と同程度であっても、また、実施例1−2よりも、平均ガラス繊維長が長く、1mm以上のガラス繊維比率が多くても、機械的強度、耐熱性、成形収縮率、反り性、表面外観の全てが低下する。また、比較例1−2のように、強化繊維として扁平ガラス繊維を用いた場合であっても、扁平率が本発明の範囲より小さい場合は、機械的強度、耐熱性、成形収縮率、反り性、表面外観が本発明の目標を達成しない。
(2)比較例1−3は、実施例1−1、1−2と樹脂組成が同じで、成形品中の平均ガラス繊維長を短く、1mm以上のガラス繊維比率を少なく調整した例である。この場合、シャルピー衝撃強度、120℃での曲げ強度が大きく低下し、成形収縮率および反りも本発明の目標を達成しない。
(3)比較例1−4、1−5は、ガラス繊維をチョップドストランドの形態で配合した例である。
比較例1−4では実施例1−1、1−2と同じ扁平ガラス繊維を、比較例1−5では比較例1−2と同じ円形ガラス繊維を用いており、成形中の平均繊維長および1mm以上の繊維比率が低い。これらの比較例は、特に、シャルピー衝撃強度および120℃での曲げ強度、弾性率の低下が著しく、成形収縮率、反り性、表面外観も低下する。
(4)比較例1−6、1−7は、MXナイロンとガラス繊維の配合比が80/20で上述(1)〜(3)の組成比と異なる場合で、比較例1−6は本発明の扁平ガラス繊維を、比較例1−7では円形ガラス繊維を用いた例である。ガラス繊維の配合量が本発明の範囲より少ない場合は、扁平ガラス繊維を用いた場合も円形ガラス繊維を用いた場合も、機械的強度、成形収縮率、反り、表面外観に差は確認できず、扁平ガラス繊維の効果が発揮されない。
【0080】
表2は、ポリアミド樹脂としてポリアミド6、および、ポリアミド6とMXナイロン混合物を用いた実施例、比較例を示している。結果より、次のことが推定される。
(5)実施例1−3〜1−5は、機械的強度、耐熱性、成形収縮率、反り性、表面外観がいずれも優れている。
(6)比較例1−8は、強化繊維として扁平率が2である扁平ガラス繊維を用いた例である。
この場合、扁平率4のガラス繊維を用いた実施例1−4に比べ、機械的強度が大きく低下する。特に120℃の曲げ強度および弾性率の低下が著しく、耐熱性が低下する。
(7)比較例1−9、1−10は、ポリアミド6とガラス繊維の配合比が80/20で、比較例1−9は扁平率4のガラス繊維を、比較例1−10では円形ガラス繊維をチョップドストランドの形態で使用した例である。ガラス繊維の配合量が本発明の範囲より少ない場合は、繊維断面が円形であり、かつ、1mm以上の繊維長の割合が2%と低い樹脂成形品と比べても、扁平ガラス繊維の効果は発揮されず、これは上述(4)の傾向と同様である。
【0081】
表3は、表1、2の例で用いた射出成形機のスクリュータイプを緩圧縮タイプに変更した条件下での、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数の条件の効果を確認した結果である。
(8)実施例1−6、1−7および比較例1−11の結果より、背圧を上げるに従い、平均ガラス繊維長および1mm以上のガラス繊維比率が低下することが分かる。比較例1−11の様に、背圧を6.0MPaまで上げると、平均ガラス繊維長および1mm以上のガラス繊維比率が本願の範囲を下回り、機械的強度が低下する。
(9)実施例1−8、比較例1−12の結果より、スクリュー回転数を上げると、平均ガラス繊維長および1mm以上のガラス繊維比率が低下することがわかる。比較例1−12の様に、スクリュー回転数を120rpmまで上げると、平均ガラス繊維長および1mm以上のガラス繊維比率が本願の範囲を下回り、機械的強度が低下する。
【0082】
実施例2
[ガラス繊維強化ポリエステル樹脂ペレットの製造法]
実施例2−1、2−4および比較例2−4、2−5で用いたペレットの製造法
(B−1)連続した扁平ガラス繊維ロービング(日東紡社製、長円形(FF)、長径(a)=28μm、短径(b)=7μm、扁平率4)を開繊して引取りながら含浸ダイの中を通し、含浸ダイに供給された溶融樹脂を含浸させた後、賦形、冷却、切断する引抜き成形法を用いて、(B−1)ガラス繊維含有率50重量%、ペレット長12mmの長繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。樹脂としては、(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、「商品名:ノバデュラン(登録商標)5008」、極限粘度0.85dl/g)を溶融して使用した。得られたペレット中のガラス繊維は直径16μmで、繊維長はペレットと同じ12mmで、ペレットの長さ方向に平行配列しているものであった。
【0083】
実施例2−2で用いたペレットの製造法
実施例2−1において、(B−1)扁平ガラス繊維ロービング量と(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂量との比率を調整することにより、(B−1)ガラス繊維含有率を30重量%にかえた以外は実施例2−1と同様にして、長繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。
【0084】
実施例2−3で用いたペレットの製造法
実施例2−1において、樹脂成分を、(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A−2)ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱化学(株)製「商品名:ノバペックス(登録商標)GS385」、固有粘度0.65dl/g)の混合物に変えた以外は実施例2−1と同様にして、長繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。なお、この時の(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A−2)ポリエチレンテレフタレート樹脂の重量比は(A−1):(A−2)=40:10とした。
【0085】
実施例2−5で用いたペレットの製造法
実施例2−1において、ペレット長を9mmにした以外は、実施例2−1と同様にして、長繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。
【0086】
比較例2−1で用いたペレットの製造法
実施例2−1において、強化繊維を、断面が円形の(B−2)円形ガラス繊維ロービング(日東紡社製 円形、繊維径=13μm)に変えた以外は、実施例2−1と同様にして長繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。
【0087】
比較例2−2で用いたペレットの製造法
(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B−3)扁平ガラス繊維チョップドストランド(日東紡社製、長円形(FF)、長径(a)=28μm、短径(b)=7μm、扁平率4、繊維長3mm)を二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30XCT」、バレル9ブロック構成)を用いてペレット化した。この時の樹脂温度は280℃、スクリュー回転数は250rpmとし、(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂はホッパーより、(B−3)扁平ガラス繊維チョップドストランドはホッパー側から数えて5番目のブロックからサイドフィーダーにより供給し溶融混練を行い、長さ3mmにカットして繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。
【0088】
比較例2−3で用いたペレットの製造法
比較例2−2において、強化繊維を、断面が円形の(B−4)円形ガラス繊維チョップドストランド(日東紡社製、円形、繊維径=13μm、繊維長3mm)に変えた以外は、比較例2−2と同様にして繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。
【0089】
比較例2−6で用いたペレットの製造法
実施例2−1において、(B−1)扁平ガラス繊維ロービング量と(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂量との比率を調整することにより、(B−1)ガラス繊維含有率を15重量%にかえた以外は実施例2−1と同様にして、長繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。
【0090】
比較例2−7で用いたペレットの製造法
比較例2−1において、(B−2)円形ガラス繊維ロービング量と(A−1)ポリブチレンテレフタレート樹脂量との比率を調整することにより、(B−1)ガラス繊維含有率を15重量%にかえた以外は比較例2−1と同様にして、長繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを製造した。
【0091】
[射出成形の条件]
得られた繊維強化ポリエステル樹脂ペレットを120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J150E−P−2M」)にて、実施例2−4では一般スクリューを、実施例2−4以外の実施例及び比較例では緩圧縮スクリューを用い、シリンダー温度275℃、金型温度80℃、スクリュー回転数80rpm、背圧は比較例2−4、2−5が6.0MPa、それ以外の実施例及び比較例においては0.6MPaの条件で、以下の機械的強度及び荷重たわみ温度測定用ISO試験片、直径100mm、厚み1.6mmの反り測定用試験片(ゲートは円周上の1点ゲート)、縦100mm、横100mm、厚み2mmの表面外観評価用試験片を作製した。得られた成形品を用い、繊維長1mm以上の繊維含有率及び重量平均繊維長評価、表面外観評価については、上記実施例1と同様に行い、機械的強度、荷重たわみ温度および反りについては、下記条件に従って評価を行った。結果を表4、5に示す。
【0092】
[機械的強度および荷重たわみ温度測定法]
上記成形条件で得られたISO試験片を用い、ISO527規格に従って引張試験を、ISO178規格に従って曲げ試験を、ISO179規格に従ってシャルピー衝撃試験(ノッチ無し)を行った。ISO75規格に従って荷重たわみ温度(1.80MPa)測定を行い、耐熱性の指標とした。
【0093】
[反り量評価法]
上記成形条件で得られた反り評価用試験片の片端を精密定盤(JIS B7513)に固定し、反対側が精密定盤から浮き上がった状態を目視観察し、浮き上がりの量を反り量として測定した。浮き上がりが無く反り性に非常に優れているものを◎、浮き上がりが若干確認できるが反り量が5mm以下であり、実成形品としては問題ないと判断されるものを○、反り量が5mmを超え10mm以下であり実成形品として問題があると判断されるものを△、反り量が10mmを超え浮き上がりが大きいものを×として表記した。
【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【0096】
表4、5の結果から、以下のことが確認された。
(1)実施例2−1〜2−5は、樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート樹脂、又は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の混合物を用いた場合で、成形品中の重量平均繊維長が本発明範囲内の例である。いずれの例も、良好な機械的強度、耐熱性、成形品反り性及び外観を有することがわかる。
(2)実施例2−1および比較例2−1は、樹脂ペレット中のガラス繊維の割合が同じで、ガラス繊維断面が扁平(実施例2−1)及び円形(比較例2−1)の場合の例である。実施例2−1及び比較例2−1の比較から、ガラス繊維断面が扁平なものを用いることにより、機械的強度及び耐熱性を向上させ、成形品反り性及び外観を大きく改善できることがわかる。
(3)実施例2−1及び比較例2−2は、樹脂ペレット製造に用いる扁平断面ガラス繊維をロービング(実施例2−1)及びチョップドストランド(比較例2−2)の形態で用いた場合の例である。ロービング形態のガラス繊維を用いることにより、樹脂ペレット中の繊維長も長くなるため、該樹脂ペレットを用いた成形品中の繊維長をも長く保つことができ、機械的強度、耐熱性、成形品反り性及び外観をより優れたものとすることができる。
また、比較例2−1及び2−3は、樹脂ペレット製造に用いる円形断面ガラス繊維をロービング(比較例2−1)及びチョップドストランド(比較例2−3)の形態で用いた場合の例である。比較例2−3はチョップドストランドを用いているため成形品中の繊維長も短く、得られた成形品は本発明の目的を達成できない。一方、比較例2−1では、ロービング形態のガラス繊維を用いているため成形品中の繊維長を長く保つことはできる。しかし、ガラス繊維断面が円形であるため、成形品反り性及び外観が本発明の目的を達成できない。
(4)実施例2−1及び比較例2−4、2−5は、樹脂ペレット組成が同じで、射出成形時の成形条件が異なる場合の例である。これらの比較から、背圧を低くすることにより、成形品中のガラス繊維の破損を防ぎ、1mm以上の比率及び重量平均繊維長をより高めることが可能であることがわかる。背圧が高く、成形品中のガラス繊維が本発明で規定する範囲を満足しない場合は、本願の目的を達成できないことがわかる。
(5)比較例2−6、2−7は、ポリブチレンテレフタレートとガラス繊維の配合比が85:15で、比較例2−6は本発明の扁平ガラス繊維を、比較例2−7では円形ガラス繊維を用いた例である。成形品中の重量平均繊維長が本発明範囲内であっても、ガラス繊維の配合量が本発明の範囲より少ない場合は、扁平ガラス繊維を用いた場合も円形ガラス繊維を用いた場合も、いずれも、機械的強度、耐熱性、成形品反り性は改善されず、特に、扁平断面ガラス繊維の効果も発揮されない。
(6)実施例2−1及び2−4は、樹脂ペレット中のガラス繊維の割合が同じで、射出成形に用いる成形機のスクリュータイプが、緩圧縮タイプ(実施例2−1)及び一般タイプ(実施例2−4)の場合の例である。射出成形に用いるスクリューとしては一般タイプのものより緩圧縮タイプのものを用いた方がガラス繊維の破損が少なく、成形品中の繊維長1mm以上の比率及び重量平均繊維長をより高めることが可能であり、機械的強度、耐熱性、成形品の反り性により優れた成形品が得られることがわかる。
実施例2−1及び2−5は、樹脂ペレット中のガラス繊維の割合が同じで、射出成形に用いる樹脂ペレット製造の段階で、樹脂ペレットのペレット長が12mm(実施例2−1)及び9mm(実施例2−5)の場合の例である。樹脂ペレットのペレット長を長くすることによりペレット中の強化繊維の繊維長も長くすることが可能であり、そのような樹脂ペレットを用いて成形品を成形した場合に、成形品中の強化繊維もより長く保つことができ、機械的強度により優れた成形品が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、以上詳細に説明した通り、次のような有利な効果が期待でき、産業上の利用価値は極めて高い。
即ち、本発明は、機械的強度ばかりでなく、耐熱性、表面外観、寸法精度に優れた繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得ることができるので、軽量化、薄肉化、並びに、寸法精度、外観向上の要求性能を十分に満足することができ、自動車分野、電気電子機器分野、精密機械分野の部品等、広範囲の用途に利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂70〜35重量%、(B)断面が下記式による扁平率2.3以上の扁平形状である強化繊維30〜65重量%を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形品において、成形品中の強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上であることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
扁平率=強化繊維長径(a)/強化繊維短径(b)
【請求項2】
(B)強化繊維の扁平率が2.3〜5である、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項3】
重量平均繊維長が1〜10mmである、請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項4】
成形品中の繊維長1mm以上である強化繊維の割合が、全強化繊維中の30重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項5】
(B)強化繊維の断面形状が長円形である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項6】
(A)熱可塑性樹脂として、少なくとも1種のポリアミド樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項7】
(A)熱可塑性樹脂として、少なくとも1種のポリエステル樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項8】
(A)熱可塑性樹脂が、少なくとも、0〜50モル%のパラキシリレンジアミンと、50〜100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項9】
(A)熱可塑性樹脂の20重量%以上が、0〜50モル%のパラキシリレンジアミンと、50〜100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6〜12のα、ω一直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項10】
(A)熱可塑性樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂および/またはポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項11】
(A)熱可塑性樹脂として、少なくとも、30℃でフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンとの1対1(重量比)混合液中で測定した極限粘度が0.3〜1.2dl/gで、かつ、チタン含有量が80ppm以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項12】
ロービング状の強化繊維を熱可塑性樹脂で被覆した後、3mm以上の長さにカットされたペレットを用い、射出成形法または押出成形法にて製造されたことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項13】
ロービング状の強化繊維に熱可塑性樹脂を被覆した後、3mm以上の長さにカットされたペレットを射出成形または押出成形する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。

【公開番号】特開2008−95066(P2008−95066A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136363(P2007−136363)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】