説明

繊維製品の難燃処理方法

繊維製品の場合において、難燃性は、ポリエチレンイミンとホスホン酸を繊維製品またはその前駆体に適用することにより達成することができる。繊維製品は、織布の形態にあるシート状の布地構造であってもよく、あるいは糸またはファイバーボードであってもよい。繊維製品の前駆体は、さらに加工されて紙またはファイバーボードを与える、水性繊維懸濁液であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の難燃処理方法に関する。
【0002】
例えば、ファイバーボードもしくはファイバーマットのような繊維製品、または繊維製品の前駆体は、それらに望ましい特性を付与するために、ある種の製品で処理することができることが知られている。例えば、R.M. Rowell in "Proceedings, International Workshop on Frontiers of Surface Modification and Characterization of Liqnocellulosic Fibers" (Sweden May 30-31, 1996) (ISBN 91-7197-593-4)に、リグノセルロースの化学修飾が記載されている。
【0003】
DE−A3003648およびDE−A4244194には、製紙において、窒素含有縮合物を使用することが記載されている。
【0004】
EP−A542071には、銅塩を含有し、さらにポリエチレンイミンおよび/またはホスホン酸を含有する木材保存剤が記載されている。
【0005】
S.C. Juneja, "Stable and Leach-resistant Fire Retardants for Wood" in "Forest Products Journal", Vol. 22, No. 6 (1972) pages 17-23には、木材材料の難燃処理が開示されている。"Wood Research", No. 72 (1972) pages 72-89中では、S. Ishihara and T. Makuが、カチオン性製品による木材およびフィルターペーパーの難燃処理について報告している。
【0006】
繊維製品の処理について従来技術で公知の方法は、セルロース繊維を含有する製品の難燃処理に関しては最適ではない。このことは、特に、セルロース含有繊維製品がさらに湿式プロセスにより加工されて、ファイバーボードもしくはファイバーマットを与える際に当てはまる。しばしば、適切な難燃処理は公知の方法では達成されない。この理由は、特に、十分な量の難燃性製品を繊維材料に結合することができないということであろう。
【0007】
繊維材料は、それらに難燃性を付与するために、ある種の製品で処理することができることがさらに知られている。例えば、DE−A3003648およびDE−A4244194に、製紙において、窒素含有縮合物を使用することが記載されている。
【0008】
繊維材料の処理について従来技術で公知の方法は、羊毛を含む材料に難燃処理をもたらすためには最適ではない。しばしば、適切な難燃処理は、公知の方法を用いては達成されず、および/または得られる難燃性は、処理された繊維材料が水と接触すると、ほんの短時間で劣化する。
【0009】
本発明の目的は、改良された繊維製品の難燃処理方法を開発することであり、それは、また一方で、特に、湿式プロセスで製造されたセルロース繊維を高比率で有する繊維製品に良好な難燃効果を付与することが可能である。湿式プロセスにおいては、問題は、実際に、しばしば乾式プロセスにおけるよりも大きく、公知の湿式プロセスにおいて、難燃成分が繊維製品の製造過程において洗い出されるであろう危険が存在する。この場合、最終物品の難燃性の劣化が通常発生する。一方改善された方法は、30〜100重量%の羊毛を含む繊維材料にさえ、良好な耐久性、すなわち、繊維材料が水と接触したときに、実質的に劣化しない難燃効果をも有する良好な難燃効果を付与することを可能とする。
【0010】
この目的は、繊維製品の難燃処理方法であって、繊維製品またはその前駆体が成分Aおよび成分Bで連続的にまたは同時に処理され、成分Aは、一級、二級および三級アミノ基を含有し、かつ5000〜1,500,000、好ましくは10,000〜1,000,000の範囲の重量平均分子量を有する分枝状ポリエチレンイミンであって、ここで、二級アミノ基と一級アミノ基の数の比は、1.00:1〜2.50:1の範囲であり、二級アミノ基と三級アミノ基の数の比は、2.01:1〜2.90:1の範囲であるか、成分Aは、そのようなポリエチレンイミンの混合物であり、成分Bは、式(I)、(II)または(III):
【0011】
【化7】

【0012】
(ここで、式(I)、(II)または(III)中、リンに結合しているOH基の50%までにおいて、その水素原子は、アルカリ金属またはアンモニウム基で置換されていてもよいが、好ましくはこれらのOH基の100%は、非中和形態で存在し、あるいは成分Bは、式(I)、(II)または(III)の化合物から選択される化合物の混合物であり、
yは、0、1または2の値であることができ、好ましくは0の値を有し、
は、HまたはOHであり、
Rは、RがOHであるときには、1〜7個の炭素原子を含有し、RがHであるときには、3〜7個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
は、
【0013】
【化8】

【0014】
であり、
は、HまたはR、好ましくはRであり、かつ
すべての基Rは、互いに独立に、Hまたは
【0015】
【化9】

【0016】
であるか、または式(IV):
【0017】
【化10】

【0018】
の基であり、すべてのRの50〜100%は、
【0019】
【化11】

【0020】
であることが好ましく、
tは、0または1〜10の数である)
のホスホン酸である、難燃処理方法により達成された。
【0021】
本発明に係る方法が使用される繊維製品は、一つの実施態様において、天然繊維もしくは合成繊維の糸またはそのような繊維を含むシート状の布地構造の形態の繊維材料であることができ、そのような繊維のブレンドが存在することも可能である。この実施態様は、以下「選択肢I」と称される。
【0022】
これらの繊維材料は、好ましくは、30〜100重量%の羊毛を含む。残余の0〜70重量%は、ポリオレフィン繊維、ポリアクリロニトリル繊維またはポリアミド繊維であってもよい。ポリエステル繊維は、羊毛のブレンド成分としてはあまり好ましくない。繊維材料は、また、場合によりセルロース繊維を含むことができる。
【0023】
織布が、この実施態様において、好ましく使用される。
【0024】
以下「選択肢II」と称される、他の実施態様において、本発明に係る方法は、20〜100重量%のセルロース繊維を含む繊維製品の場合に使用される。セルロース繊維の含量についてのこの範囲は、無水の繊維製品に対するものである。繊維製品は、家具産業または包装産業において、建築産業および自動車製造において使用することができる完成製品、例えば、紙、プレスボード(例えば、中密度ファイバーボードまたは高密度ファイバーボード)のようなものであってもよい。そのようなファイバーボードまたはプレスボードは、しばしば、繊維に加えて固定用結合剤をも含み、繊維は、プレスボードの強度を決定する成分である。ここに提示されている本発明に係る方法は、そのようなファイバーボードまたはプレスボードの難燃特性を達成するのに適している。そのようなプレスボードの多くの使用目的に難燃特性が必要とされる。そのようなファイバーボードの製造のためには、セルロース繊維は、結合用樹脂または撥水剤のような添加剤と混合することができ、場合により、水性繊維懸濁液を得るために、水が加えられる。このようにして得られる混合物は、成形され、乾燥され、熱および圧力の作用下にプレスされて、ボードとなる。
【0025】
原則として、本発明に係る方法のこの実施態様(選択肢II)は完成最終製品についても実施されるが、好ましい実施態様は、繊維製品の製造方法の間に、すなわち、完成繊維製品の前駆体についてそれを実施することを含む。この前駆体は、好ましくは、セルロース繊維および場合によりさらなる添加剤、例えば上記のタイプのものを含む水性懸濁液である。本発明に係る方法に関連して、そのような繊維懸濁液は、例えば、製紙における前駆体であってもよい。しかしながら、それらは、好ましくは、ファイバーボードまたはファイバーマットの製造における前駆体である。
【0026】
セルロース繊維のそのような水性懸濁液を加工して、ファイバーボード、例えばプレスボードまたは絶縁ボードを得ることは、いわゆる湿式プロセスにより行われる。本発明に係る方法は、有利には、特にこのタイプの湿式プロセスの場合において使用することができ、水性繊維懸濁液、例えばパルプは、成分AおよびBで処理される。ここで、例えば繊維懸濁液は、フィルタースクリーンに注ぎ込まれ、薄層が形成され、それから出発して、完成繊維製品は、乾燥し、熱および圧力の作用下にプレスすることにより製造される。
【0027】
セルロース繊維、水、および場合により上記のさらなる成分を含むその繊維懸濁液(前駆体)は、通常0.3〜15重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%のセルロース繊維を含む。セルロース繊維のこの比率は、好ましくは、水の除去後に、完成繊維製品が、水がなくまた成分AおよびBもない繊維製品に基づいて、20〜100重量%のセルロース繊維を含むようなものである。
【0028】
本発明に係る方法の選択肢IIを、完成繊維製品(ファイバーボード、紙)に対してではなく、その前駆体に対して行うことが有利である。この前駆体は、完成繊維製品の製造の間に形成されるセルロース繊維含有製品であり、さらに加工されて、完成繊維製品を与える。特に、水性セルロース繊維懸濁液は、本発明にかかる方法の選択肢IIを行うための前駆体として好適である。
【0029】
本発明にかかる方法の選択肢IIを、完成繊維製品についてではなく(ある場合にはこのことも可能であるが)、そのタイプの前駆体について行うことが、それにより有効な耐炎性が通常達成されるので有利である。これは、この場合、成分Aおよび/またはBのセルロース繊維へのよりよい結合が、引き続く熱および圧力の作用により達成され、促進されるという事実の故であると思われる。本発明にかかる方法の選択肢IIの有利な実施態様は、繊維製品のセルロース繊維が、部分的にまたは完全にリグノセルロース含有繊維の形態で存在することを特徴とする。リグノセルロースは、セルロース、ポリオース、およびリグニンを含む複合植物材料である。
【0030】
リグノセルロース含有繊維の化学組成は、最初に記載の参考文献(R.M. Rowell, ISBN 91-7197-593-4), 2nd page, "Features of Lignocellulosics"およびさらにEP−A406783に記載されている。
【0031】
選択肢IIの場合、繊維製品は、好ましくは、無水繊維製品の重量に基づいて、20〜100重量%のセルロース繊維を含む。
【0032】
選択肢Iまたは選択肢IIのいずれが本発明に係る方法を行うのに選択されるかということとは関係なく、繊維製品または、選択肢IIの場合に、好ましくはその前駆体は、成分Aおよび成分Bで連続的にまたは同時に処理される。したがって、AおよびBは、例えば、成分AおよびBを含有する混合物の形態で、同時に適用することができる。成分AおよびBを連続的に適用することはしばしば有利であり、成分A(ポリエチレンイミン)を、成分B(ホスホン酸)よりも早く繊維製品に適用することがさらに好ましい。事実、多くの場合に、記述した他の変形法に比して、この手順でより効果的な難燃効果が達成できることが見出されている。
【0033】
選択肢IIの場合、成分AおよびBを、完成繊維製品ではなく、その前駆体に対して適用することが好ましいということを既に述べた。この前駆体は、好ましくは、セルロース繊維を含む水性懸濁液である。
【0034】
同様に、成分Aおよび/または成分Bが繊維製品またはその前駆体に、純粋な形態ではなく水との混合物の形態で適用されることがしばしば有利である。成分Aと成分Bの双方が、各々の場合に、成分Aまたは成分Bおよび追加の水を含む混合物の形態で適用されることが特に有利である。そこで、成分Aは、例えば、100重量部の成分Aあたり50〜500重量部の水を含む混合物の形態で使用することができ、成分Bは、100重量部の成分Bあたり20〜300重量部の水を含む混合物の形態で使用することができる。これらの混合物の一方または双方は、さらなる成分、例えばポリマレイン酸または部分的に加水分解されたポリ無水マレイン酸を含んでいてもよい。部分的にまたは完全に加水分解されたポリ無水マレイン酸の添加は、そのような添加剤が使用されるときには、成分Aまたは成分Bおよび水を含む全混合物に基づいて、好ましくは1〜5重量%の範囲である。
【0035】
ポリマレイン酸または部分的に加水分解されたポリ無水マレイン酸が使用される場合、それは、好ましくは成分Aと水を含む混合物に加えられる。数々の場合に、この添加は、難燃効果の耐久性の増大をもたらす。これは、部分的にまたは完全に加水分解されたポリ無水マレイン酸の付加的な使用が、成分Aおよび/または成分Bの繊維製品へのより良好な固定をもたらすという事実によると考えられる。
【0036】
選択肢Iの場合で、繊維材料に適用する前に成分AとBを混合する、すなわち、AとBを同時に繊維材料に適用しようとするときには、これは繊維材料が高い比率で羊毛を含む場合に特に好適であるが、繊維材料に適用する前に、混合物のpHを4より大きい値、好ましくは6〜8の範囲の値に調整することがしばしば望ましい。このpH調節に特に好適なものは、アンモニアの水溶液である。この目的で、アミンを使用してもよい。アンモニアを使用すると、成分A、成分Bおよび水の混合物を均一な水溶液として得ることが可能であり、これは、本発明に係る方法で繊維材料を処理するのに非常に好適である。
【0037】
アンモニアの使用は、繊維材料の引き続く、例えば110℃〜180℃での熱処理において、アンモニアが繊維材料から除去されるので有利である。良好な耐久性の難燃処理が結果としてもたらされる。
【0038】
選択肢IIの場合に、特に、繊維製品またはその前駆体が10〜25%のリグニンを含むとき、オルトリン酸の部分エステルを繊維製品またはその前駆体に付加的に適用することがさらに有利であろう。この部分エステルの適用は、成分Aまたは成分Bの適用と同時に、あるいは、好ましくは、それとは別個に、別の操作において行われる。適用されるオルトリン酸の部分エステルの量は、無水繊維製品または無水前駆体に基づいて、好ましくは2〜10%の範囲である。好適なリン酸の部分エステルは、特に、エステルのアルコール成分に6〜12個の炭素原子を有するオルトリン酸のモノエステルもしくはジエステル、またはそのようなモノエステルおよびジエステルの混合物である。これの例は、リン酸ジイソオクチルまたはリン酸ジフェニルまたはリン酸ビス(tert−ブチルフェニル)である。そのようなエステルの添加により、難燃効果を増大させることがしばしば可能である。選択肢Iの場合にも、オルトリン酸の部分エステルを繊維製品に適用することはしばしば有利である。上記の記載は、ここに対応して、当てはまる。
【0039】
好ましくは、成分Aまたは成分Bまたは成分Aもしくは成分Bおよび水の混合物のいずれも、微量の不純物の他には金属または金属化合物を含有していない。このことは、コストの理由および環境の理由から有利であり、また、金属イオンによる最終繊維製品の着色が回避される。成分Bにおいて、リンに結合したヒドロキシル基の50%までの水素原子は場合によりアルカリ金属またはアンモニウムイオンで置き換えることができるが、これは好ましくはない。
【0040】
成分A、成分B、または成分Aもしくは成分Bに加えて水をも含む混合物の繊維製品またはその前駆体への適用は、任意の所望の方法により行うことができる。選択肢IIの場合には、前駆体としてセルロース繊維を含む水性懸濁液を使用すること、および水と成分Aを含む混合物、次いで水と成分Bを含む混合物をこの前駆体に適用することが最も有利である。
【0041】
成分Aと成分Bがそれぞれ水との混合物としてまたは純粋な形態で繊維製品または前駆体に適用されるか否かにかかわらず、本発明に係る方法の選択肢IIの好ましい実施態様において、繊維製品またはその前駆体に適用される成分Aの量の、適用される成分Bの量に対する重量比は、1:1.3〜1:4.0の範囲である。
【0042】
選択肢Iの場合には、成分A、成分B、または成分Aもしくは成分Bに加えて水をも含む混合物の繊維材料への適用は、任意の所望の方法により行うことができる。水と成分Aを含む混合物、次いで水と成分Bを含む混合物を繊維材料に適用することが最も有利である。繊維材料がシート状の布地構造として存在する場合には、その適用は、公知のパッディング法により行うことができる。繊維材料が糸の形態で存在する場合には、成分Aと成分Bの適用は、成分Aまたは成分Bおよび水を含む1以上の浴に糸を通過させ、次いで、糸を乾燥されることにより行うことができる。しかしながら、染色プロセスの間に、成分Aおよび/または成分Bを含む1以上の浴中に、糸が巻かれているボビンを浸漬し、次いで、ボビンを乾燥することも可能である。
【0043】
成分Aと成分Bがそれぞれ水との混合物としてまたは純粋な形態で繊維材料に適用されるか否かということとは無関係に、本発明に係る方法の選択肢Iの好ましい態様において、繊維材料に適用される成分Aの量の、適用される成分Bの量に対する重量比は、各々の場合に無水製品に対して、1:1.8〜1:5.0の範囲である。この比は、好ましくは、1:2.3〜1:3.5の範囲である。
【0044】
選択肢IIにおいて、繊維製品またはその前駆体に適用される成分Aと成分Bの量は、無水の繊維製品に基づいて、好ましくは3〜10重量%の成分Aおよび7〜20重量%の成分Bが最終繊維製品に存在するような量である。
【0045】
成分Aは、ポリエチレンイミンである。ポリマーの場合に通常そうであるように、これは、全く同質の分子からなる生成物ではなく、異なる鎖長の生成物の混合物である。ポリエチレンイミンの場合には、文献から公知であるが、その個々の分子はまた分枝単位の数が異なる分枝状ポリマーの混合物が通常存在するという事実も存在する。これは、二級と一級アミノ基とのおよび三級アミノ基との数の比によって表され、その比は、以下、より詳細に説明される。
【0046】
ポリエチレンイミンは、文献公知の生成物である。それらは、特に、1,2−エチレンジアミンと1,2−ジクロロエタンとの反応により製造することができる。その新規な方法を行うために、非置換アジリジン(エチレンイミン)の重合により製造することができるポリエチレンイミンが好ましく使用される。この重合は、公知の方法により、場合により酸性触媒、例えば、塩酸を添加して、場合により水の存在下に、行うことができる。
本発明に係る方法に好適なポリエチレンイミンは、市場で、例えば、日本の日本触媒株式会社からのEPOMINタイプ、例えば、EPOMIN(登録商標)P1050として入手することができる。
【0047】
US6,451,961B2およびUS5,977,293には、ポリエチレンイミンとその製造方法が記載されている。そこに記載のポリエチレンイミンは、それらが上記および請求項1に記載の条件を満たす限りにおいて、本発明に係る方法を行うために使用することができる。さらに、好適なポリエチレンイミンとそれらの製造方法が、D.A. Tomalia et al., in "Encyclopedia of polymer Science and Engineering, Vol. 1, Willey N.Y. 1985, page 680-739に記載されている。
【0048】
ポリエチレンイミン、それらの製造および特性は、また、D. Horn, "Polyethyleneimine-Physicochemical Properties and Applications, in "Polymeric Amines and Ammonium Salts", Goethals E.J., Pergamon Press: Oxford, New York 1980, pages 333-355に記載されている。
【0049】
本発明に係る方法のための成分Aとして好適なポリエチレンイミンは、分枝状である。これは、式:
【0050】
【化12】

【0051】
の末端基および、ポリマー鎖内に、式:
【0052】
【化13】

【0053】
の単位を有するポリマーが、さらに、鎖内に、式:
【0054】
【化14】

【0055】
の単位を含んでいることを意味する。
【0056】
そこで、ポリマーは、一級、二級および三級アミノ基を含んでいる。
【0057】
本発明に係る方法の手順で、繊維材料の難燃性に関して良好な効果を得るために、個々のアミノ基の数の比は、ある特定の範囲内の値である必要がある。そこで、成分Aにおいて、二級アミノ基の数と一級アミノ基の数との比は、1.00:1〜2.50:1の比である必要があり、二級アミノ基の数と三級アミノ基の数との比は、2.01:1〜2.90:1の比である必要がある。これらの数値は、ポリエチレンイミンの製造におけるパラメーターを介して調節することができる。
【0058】
あるポリエチレンイミン、またはポリエチレンイミンの混合物中に存在する種々のアミノ基の数の比についての値は、13C−NMR分光法により決定することができる。これは、T. St. Pierre and M. Geckle, 13C-NMR-Analysis of Branched Polyethyleneimines, J. Macromol. SCI.-CHEM., Vol. A 22(5-7), pages 877-887 (1985)中で説明されている。
【0059】
ポリマーの場合に通常であるように、成分Aは、通常、ポリマーの混合物であり、異なる分子量および異なる分枝度合いのポリエチレンイミン分子からなり、5000〜1,500,00、好ましくは10,000〜1,000,000の重量平均分子量を有する。個々の場合に存在するこの平均分子量の値は、ポリマーの文献に開示されている方法、例えば、ゲル透過クロマトグラフィーにより、また光散乱による検出で決定することができる。以下の手順を、この目的で採用することができる。
【0060】
使用されるカラムは、1以上の「PSS−Suprema」型("Polymer Standards Service GmbH", Mainz, Germany)を含み、それは、目的の分子量範囲に調整され;溶出液:水中の1.5%強度のギ酸;多角度散乱光検出器MALLS(特に、"Polymer Standards Service"から同様に入手可能);内部標準を、場合によりさらに使用できる。
【0061】
上記および請求項1に記載の重量平均分子量の値は、この方法での測定に基づくものである。
【0062】
ポリエチレンイミンの平均分子量は、それらの製造におけるパラメーターを変化させることにより調節することができる。
【0063】
本発明に係る方法の好ましい実施態様において、成分Aは、エチレンイミンの重合により形成され、以下の構造(式(V)):
【0064】
【化15】

【0065】
を有するポリエチレンイミンであり、
重合は、場合により酸で触媒され、
三級アミノ基を有する個々の単位および二級アミノ基を有する個々の単位は、ポリマー鎖全体にわたって任意に分布していることができ、
bは、aよりも大きく、aとbは、分子量および互いのアミノ基の数の比についての請求項1に記載の条件が互いに満足されるような値を有するものであるか、
あるいは成分Aは、そのようなポリエチレンイミンの混合物である。
【0066】
記載のように、成分Aは、通常、ポリエチレンイミンの混合物である。上記の好ましい実施態様において、成分Aは、したがって、通常、式(V)の化合物の混合物である。式(V)の化合物中のaとbの値は、当然のことながら、個々のアミノ基相互の数の比についておよび平均分子量について、混合物で測定される値が上記および請求項1に記載の範囲となるように選択される必要がある。記載のように、これらの値は、ポリエチレンイミンの製造におけるパラメーターを介して調節することができる。
【0067】
成分Bは、式(I)、式(II)、または式(III):
【0068】
【化16】

【0069】
のホスホン酸である。
【0070】
成分Bは、また、式(I)、式(II)および式(III)の化合物から選択される化合物の混合物であってもよい。
【0071】
式(I)において、Rは直鎖状、または分枝状のアルキル基である。下記の基Rがヒドロキシル基である場合、このアルキル基は、1〜7個の炭素原子を含有する。Rが水素であるとき、基Rは、3〜7個の炭素原子を含有する。
【0072】
式(I)中の基Rは、H、またはOHである。
【0073】
式(I)中、基Rは、基:
【0074】
【化17】

【0075】
である。
【0076】
式(I)中の基Rは、水素であってもよい。しかしながら、好ましくは、それは基Rである。これは、最終繊維製品に基づくリンの含量が、RがHであるときよりも高いことを確実にし、改善された難燃性が通常もたらされるという結果となる。
【0077】
式(II)において、yは値0,1、または2であることができる。yは、好ましくは、値0を有し、それは、上記の場合と同様に、繊維製品に基づくリン含量の増加がもたらす。
【0078】
式(III)の化合物中に存在するすべての基Rは、互いに独立に、水素、または、
【0079】
【化18】

【0080】
または式(IV):
【0081】
【化19】

【0082】
の基である。
【0083】
この式(IV)において、tは0、または1〜10の数である。好ましくは、存在するすべての基Rの50〜100%は、
【0084】
【化20】

【0085】
である。
【0086】
成分B中に存在するすべてのホスホン酸が完全に非中和形態で存在する必要はない。むしろ、存在しかつリンに結合しているOH基の50%までは、その酸性水素原子は、アルカリ金属、またはアンモニウムイオンで置換されていてもよい。しかしながら、好ましくは、成分Bのすべてのホスホン酸は、完全に非中和形態で存在し、したがって、すべてのOH基が酸形態で存在する。
【0087】
式(I)、(II)および(III)のホスホン酸は、市販製品であり、例えば、Protex-Extrosa製のMasquol P210-1、またはPhodia製のBriquest 301-50A、または製品Cublen D50(Zschimmer & Schwarz, Germany製)、またはDiquest 2060 S(Solutia, Belgium製)である。
【0088】
式(I)、(II)および(III)のホスホン酸は、一般に文献公知の方法により製造することができる。
【0089】
本発明に係る方法の特に有利な実施態様は、成分Bが式(I)のホスホン酸と式(II)のホスホン酸の混合物であり、その双方が、完全に非中和形態で存在するものであることを特徴とする。
【0090】
そのような混合物において、式(I)のホスホン酸と式(II)のホスホン酸の混合比は、任意の所望の値であってよい。そこで、この二種のホスホン酸の重量比は、0:100〜100:0の値であることができる。例えば、式(I)の一つの化合物または複数の化合物の混合物70〜95重量%と式(II)の一つの化合物または複数の化合物の混合物5〜30重量%とを含有する混合物を成分Bとして使用した場合に、良好な結果が得られる。
【0091】
【化21】

【0092】
である式(I)の化合物を使用すること、およびyが0である式(II)の化合物を使用することが、特に有利である。
【0093】
式(I)の一つの化合物もしくは式(I)の化合物の混合物または式(II)の一つの化合物もしくは式(II)の化合物の混合物または式(III)の一つの化合物もしくは式(III)の化合物の混合物をも、成分Bとして使用することができる。成分Bが、式(II)の一つの化合物または式(II)の化合物の混合物の100%からなる場合に、特に良好な結果を得ることができ、これらの場合、式(II)中のyは、0または1の値を有する。
【0094】
本発明に係る方法の選択肢Iに従って処理される繊維材料は、シート状の布地構造の形態でまたは糸の形態で存在する。その糸は、連続的な単繊維よりなるもの、あるいはリング精紡またはオープン精紡により紡糸された繊維から製造されたものであってもよい。好適なシート状の布地構造は、織布、ニットウエアまたは不織布である。好ましくは、織布が、本発明に係る方法を行うために使用される。上で述べたように、繊維材料は、好ましくは30〜100重量%の羊毛を含んでいる。羊毛100%からなる織布は、特に、本発明に係る方法に好適である。羊毛の起源はここでは重要なことではないが、羊毛の品質は、当然のことながら、最終物品の特性に影響を与える。
【0095】
羊毛含有繊維製品の処理は、所望であれば、例えば成分AおよびBを含む処理浴に市販の防虫剤を添加することにより、防虫処理と組み合わせることができる。
【0096】
本発明に係る方法により処理された繊維材料は、例えば、自動車用シート、カーテン、カーペットなどのような実用的布地の製造に使用することができる。
【0097】
本発明に係る方法の選択肢IIに従って製造された繊維製品はリサイクルプロセスに処することが可能であり、最初にその繊維製品を細かく砕き、次いで、再び加工するとファイバーボードまたはプレスボードとなる。このような方法で製造されたこれらのファイバーボードまたはプレスボードは、次いで、難燃特性を有することがしばしば望ましいかまたは必要とされる。このリサイクルプロセスは、例えば、ファイバーボードまたはプレスボードが約1x1cmの粒子となるように細かく砕かれ、次いで、水または1以上の無機塩を含む水で洗浄されるという方法で行うことができる。所望の最終繊維製品の前駆体が、その後再び製造される。この前駆体は、前と同様に、好ましくは、繊維を含む水性懸濁液である。
【0098】
細かく砕いた後、粒子を純水、例えば蒸留水のみで洗浄した場合、この前駆体は、多くの場合に、熱および圧力の作用下に再度加工しすると、再度難燃組成物で処理する必要なく、良好な難燃特性を有するファイバーボードまたはプレスボードの形態の完成繊維製品を与えることができる。しかしながら、繊維製品を細かく砕いた後に、1以上の無機塩、特にアルカリ土類金属塩を含む水で洗浄を行う手順を採用することも可能である。したがって、洗浄は、例えば、水道水で行うことができる。この場合、水道水の塩含有量に応じて、最終製品として製造されるファイバーボードまたはプレスボードの難燃特性は、難燃組成物を再度適用しない限り、もはや十分ではないことがありうる。細かく砕いた粒子を塩含有水で洗浄後、成分Bを再度適用すると、その最終製品は、十分な難燃特性を獲得することが見出されている。
【0099】
本発明に係る方法の好ましい実施態様は、したがって、選択肢IIの場合には、繊維製品の前駆体が成分Aおよび成分Bで連続的にまたは同時に処理され、成分Aが好ましくは、成分Bよりも先に適用されること、およびこの前駆体が、次いで、さらに熱および圧力の作用下にさらに加工されて、ファイバーボードまたはプレスボードとなり、このファイバーボードまたはプレスボードが、次いで、細かく砕かれかつ1以上の無機塩を含有する水で洗浄され、その後、再び成分Bで処理され、さらに、熱および圧力の作用下に処理されて、ファイバーボードまたはプレスボードとなることを特徴とする。
【0100】
そこで、記載の選択肢IIに係る方法が、最初に実施され、次いで、記載のタイプのリサイクルプロセスが実施される。
【0101】
このリサイクルプロセスにおいて再度適用される成分Bは、上記のものと同じタイプのものである。この目的でも、好ましいものとして上に記載されている成分Bのそれらのメンバーが、同様に好適である。
【0102】
所望の難燃効果を達成するためにリサイクルプロセスにおいて再度適用されるべき成分Bの量は、プロセス条件、例えば、前に洗浄を行った水のタイプおよび量に依存する。
【0103】
記載のリサイクルプロセスにおいても水性繊維懸濁液であることが好ましい前駆体は、上記の方法に係る成分Bで処理することができ、次いで、さらに加工されて、ファイバーボードまたはプレスボードとなる。
【0104】
本発明を、実施態様により、ここに、より詳細に説明する。
【0105】
実施例1(本発明に係るもの)
1a)成分Aを含む混合物の調製
50重量%の水と50重量%のポリエチレンイミンを含む、市販の水溶液(EPOMIN(登録商標)P1050、日本触媒株式会社)5.0kgを、水5.0kgと混合した。調製された混合物は、このように、約25重量%の成分Aを含んでいた。ポリエチレンイミンは分枝状であり、請求項1に記載のようなデータを有していた。
【0106】
1b)成分Bを含む混合物の調製
40重量%の水と60重量%の上記式(I)(式中、
【0107】
【化22】

【0108】
のホスホン酸を含む水溶液10kgを、50重量%の水および50重量%の式(II)(式中、y=0)のホスホン酸を含む水溶液10kgと混合した。調製された混合物は、このように、約55重量%の成分Bを含んでいた。
【0109】
1c)約26重量%のリグニン含有量を有するセルロース繊維の水性懸濁液(=繊維製品の前駆体)の処理。そのような繊維は、工業的に、例えば、いわゆるMasonite法(US1,578,609)またはAsplund法(US2,145,851)により製造することができる。
【0110】
懸濁液の調製には、軟質木材繊維原料20gを、撹拌しながら60℃で水1980g中に懸濁し、繊維懸濁液(前駆体)を形成した(この繊維原料は、70〜75重量%のセルロース繊維および25〜30重量%のリグニンを含んでいた)。6つの試料が、このようにして得られた繊維懸濁液から調製された。これらの試料のうちの2つ、つまり試料No.5およびNo.6は、成分Aおよび成分Bの双方を含むので、本発明に係る方法を行うために供された。試料No.1〜No.4は、成分Aを含むが成分Bを含まないか、あるいはその反対であるので、本発明に係るものではない比較実験を行うために供された。試料No.3は、成分Aも成分B含んでいなかった。試料のいくつかは、リン酸ジイソオクチル(DIOP)を含んでいた。6つの試料の量的な組成を、以下の表1に示す。試料No.5とNo.6の調製において、成分Aは、実施例1aに係る混合物の形態で、成分Bは、実施例1b)に従って得られた混合物の形態で懸濁液に加えた。成分Aの添加は、各々の場合、成分Bの添加よりも早く行った。DIOPは、成分Aの後で、成分Bより前に加えた。各々の場合での成分AまたはBまたはDIOPの添加の後、得られた懸濁液は、各々の場合、吸引フィルター上で吸引して濾過し、プレスして、水の相当部分を除去した。次いで、試料を200℃で43kp/cmの圧力下に45秒間プレスし、その後、室温で10分間、コンディショニングした。次いで、重量および秒で示す燃焼時間(CT)を、このようにして得られたすべての試料について測定した。「CT」は、当該サンプルが15秒間炎に曝され、次いでこの炎が取り去られた後に燃え続ける時間を、秒で示す。したがって、CTのより大きい値は、より小さい難燃効果を意味する。
【0111】
【表1】

【0112】
表1から、本発明に従って調製された試料No.5とNo.6は、比較試料No.1〜No.4に比べて、よりよい難燃効果を有することがはっきりと明白である。
【0113】
実施例2(本発明に係る)
2a)成分Aを含む混合物の調製
50重量%の水と50重量%のポリエチレンイミンを含む、市販の水溶液(EPOMIN(登録商標)P1050)4.8kgを、水4.8kgおよび加水分解されたポリ無水マレイン酸の50%強度の水溶液0.35kgと混合した。調製された混合物は、このように、約24重量%の成分Aを含んでいた。
【0114】
2b)成分Bを含む混合物の調製
40重量%の水と60重量%の上記式(I)(式中、
【0115】
【化23】

【0116】
のホスホン酸を含む水溶液9.2kgを、50重量%の水および50重量%の式(II)(式中、y=0)のホスホン酸を含む水溶液0.8kgと混合した。調製された混合物は、このように、約59重量%の成分Bを含んでいた。
【0117】
2c)水性繊維懸濁液(=繊維製品の前駆体)の処理
セルロース繊維を含む2つの異なる水性懸濁液を調製した(=懸濁液1および2)。
【0118】
懸濁液1の調製には、繊維原料10gを、撹拌しながら室温で水300g中に懸濁した(この繊維原料は、約90重量%のセルロース繊維および10重量%のリグニンを含んでいた)。次いで、この懸濁液を、撹拌しながら全重量1050gまで水で希釈した。
【0119】
懸濁液2の調製には、繊維原料10gを、撹拌しながら水600g中に懸濁した(この繊維原料は、70〜75重量%のセルロース繊維および25〜30重量%のリグニンを含んでいた)。
【0120】
以下に記載の成分AとBで処理したのち、懸濁液1と2から得られた製品を、さらに以下のように処理した:
【0121】
最初に、製品は、吸引フィルター上で吸引して濾過し、プレスして、水の相当部分を除去した。その後、試料のいくつかを、室温および35kp/cmの圧力で3分間プレスし、次いで、120℃で20分間乾燥し、その後、室温で10分間、コンディショニングした。他のいくつかの試料は、室温ではなく、より高い温度でプレスした。これらの試料は、その後はもはや乾燥しなかった。次いで、このようにして得られたすべての試料の重量を測定した。
【0122】
各々の場合に、複数の懸濁液1および懸濁液2の試料は、プレスの前に、成分Aと成分Bで処理し、成分Aは、実施例2aに従って得られた混合物の形態で、成分Bは、実施例2b)に従って得られた混合物の形態で適用した。すべての場合に、成分Aの添加は、成分Bの添加よりも早く行った。いくつかの試料の場合において、リン酸ジイソオクチル(DIOP)を、特に成分Bの添加前に、さらに添加した。
【0123】
また、2つの場合(=「試料1」および「試料2」)に、成分Aまたは成分Bのいずれかのみが適用され、2つの成分のうちの他方は使用されなかった。したがって、試料1および試料2は、本発明に係るものではない比較試料である。
【0124】
以下の表2は、使用した懸濁液1および懸濁液2の量、使用した成分AとBおよび場合によるDIOPの量、ならびにプレスおよび乾燥工程の条件および完成ファイバーボードの重量を示す。表2の右欄における「CT」と表示された燃焼時間は、本発明に係る方法において使用される成分Aおよび成分Bの組み合わせの難燃効果の尺度である。「CT」は、当該サンプルが15秒間炎に曝され、次いでこの炎が取り去られた後に燃え続ける時間を秒で示す。
【0125】
そこで、CTのより大きい値は、試料が難燃性に劣ることを意味する。
【0126】
【表2】

【0127】
本発明に係る方法で処理された試料3〜7は、試料1および2(本発明に係るものではない比較実験)に比べて、実質的により良好な難燃特性を有することがはっきりと明白である。また、試料6と7の比較は、繊維懸濁液におけるより高いリグニン含有量の場合に(懸濁液2)、DIOPの添加がさらなる改善をもたらすことができることを示している。
【0128】
実施例3
3a)請求項1に記載の成分Aを含む混合物の調製
50重量%の水と50重量%のポリエチレンイミンを含む、市販の水溶液(EPOMIN(登録商標)P1050)4.8kgを、水4.8kgおよび加水分解されたポリ無水マレイン酸の50%強度の水溶液0.35kgと混合した。調製された混合物(以下、「混合物3a」と呼ぶ)は、このように、約24重量%の成分Aを含んでいた。
【0129】
3b)請求項1に記載の成分Bを含む混合物の調製
40重量%の水と60重量%の上記式(I)(式中、
【0130】
【化24】

【0131】
のホスホン酸を含む水溶液9.2kgを、50重量%の水および50重量%の式(II)(式中、y=0)のホスホン酸を含む水溶液0.8kgと混合した。調製された混合物(以下、「混合物3b」と呼ぶ)は、このように、約59重量%の成分Bを含んでいた。
【0132】
実施例4(本発明に係る例)
この例は、糸の形態で存在する繊維材料の、成分AおよびBでの処理に関する。
【0133】
3つの別々になされた実験において、3種の異なるタイプ(4a、4b、4c)の紡績糸を、それぞれ、千鳥巻ボビンに巻き取り、それぞれを慣用の染色装置に取り付けた。糸4aは、羊毛100%を含む青色の酸染色紡績糸であり、糸4bは、羊毛90重量%およびポリアミド10重量%を含む褐色の紡績糸であり、そして糸4cは、羊毛90重量%およびポリアミド10重量%を含む青灰色の紡績糸である。すべての3つの実験において、染色装置には、当該糸の重量(千鳥巻ボビンを除いて算出)に基づいて、各々の場合に、室温で、10倍の量の水を入れた。
【0134】
次いで、水を装置から取り除き、混合物3cを室温で加えた。混合物3cは、50重量%の混合物3a(実施例3aに係るもの)および50重量%の水を含んでいた。このように、混合物3cは、成分Aを含んでいた。すべての3つの実験において、添加された混合物3cの量は、当該糸の重量に対して、すなわち、糸4aまたは糸4bまたは糸4cの重量に基づいて、12重量%であった。すべての3つの実験において、千鳥巻ボビンは、染色装置中で、室温で10分間、混合物3cの作用に暴露した。その後、装置を5分間水で洗い流し、その洗い流した水を取り除いた。
【0135】
次いで、混合物3dを装置に室温で入れた。混合物3dは、実施例3b)に従って調製された混合物3bを50重量%と、水50重量%を含んでいた。このように、混合物3dは、成分Bを含んでいた。3つの実験の各々において装置に入れられた混合物3dの量は、糸4aまたは糸4bまたは糸4cの重量に基づいて、12重量%であった。千鳥巻ボビンは、染色装置中で、室温で10分間、混合物3dの作用に暴露した。その後、各々の場合に、装置を室温で2回、水で洗い流した。その後、すべての実験において、千鳥巻ボビンを装置から取り外し、120℃で15分間乾燥した。次いで、ニットウエアのそれぞれ1つのサンプルを、それぞれの糸から作製した。
【0136】
実施例5(本発明に係るもの)
実施例4のすべての3つの実験を、染色装置に添加される混合物3cおよび混合物3dの量を糸重量に基づいて12重量%ではなく6重量%のみとしたことが異なるのみで、繰り返した。
【0137】
難燃性の測定は、実施例4および5からのニットウエア6サンプルについて行った。その測定は、糸4aおよび糸4cのサンプルの場合には、DIN4102 B2に従って、また、糸4bの場合には、方法"Federal Motor Vehicle Safety Standard (FMVSS) 302"に従って行った。この方法は、"Jurgen Troitzsch, International Plastics Flammability Handbook", 2nd edition 1990, Carl Hanser Verlag, Munich, Germany, pages 289/290に記載されている。すべてのサンプルは、非常に良好な難燃性を有すること、すなわち、上記の規定に記載の条件を満たすことが見出された。
【0138】
実施例6(本発明に係るもの)
この実施例は、本発明に係る方法による織布の処理に関する。羊毛100%からなり、赤色に染色された205g/mの材料が、織布として供された。この材料を、以下のようにして調製された液でパッディングすることにより処理した。
【0139】
ポリエチレンイミン(成分A、日本の日本触媒からのEPOMIN(登録商標)P1050)の25%強度の水溶液35gを、式(II)(式中、y=0)のホスホン酸(成分B)の50%強度の水溶液45gと混合した。22%強度のアンモニア水溶液21gを混合物に加えた。撹拌すると、pH7.5の透明な溶液が生成した。この溶液を、水で、重量比1:1に希釈した。得られた混合物を、パッディング液として使用した。
【0140】
パッディングののち、乾燥を150℃で10分間行った。その後、その繊維材料は9%の沈着固体を含んでおり、すなわち、繊維材料の重量は、パッディング前の繊維材料の重量よりも9%多かった。
【0141】
実施例7(本発明に係るもの)
ホスホン酸水溶液45gの代わりに30gのみを用い、乾燥を150℃ではなく110℃で行ったことが異なるままで、実施例6を繰り返した。沈着固体は8.6%であった。
【0142】
実施例8(本発明に係るもの)
羊毛100%からなる織布の代わりに羊毛90重量%およびポリアミド10重量%からなる織布を使用したことが異なるのみで、実施例6を繰り返した。
【0143】
難燃性を、実施例6、7および8に従って処理した織布について、特に燃焼時間を介して測定した。燃焼時間(CT)は、当該サンプルが3秒間炎に曝され、次いでこの炎が取り去られた後に燃え続ける時間を秒で示す。したがって、CTのより大きい値は、難燃性に劣ることを意味する。燃焼時間の測定は、DIN54336(1986年11月版)に従って行った。燃焼時間は、記載された乾燥直後に得られた織布サンプルおよび同じ起源のもので、乾燥後洗浄(40℃/20分間純水)されたサンプルの双方について測定した。
【0144】
結果を表3に示す。
【0145】
【表3】

【0146】
実施例7の場合、成分Bの量は、非洗浄織布の良好な難燃性をもたらすには十分であったが、洗浄プロセスに対して良好な耐久性を達成するためには、成分Bをより多く沈積させることが必要であることが明らかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品の難燃処理方法であって、繊維製品またはその前駆体が成分Aおよび成分Bで連続的にまたは同時に処理され、成分Aは、一級、二級および三級アミノ基を含有し、かつ5000〜1,500,000、好ましくは10,000〜1,000,000の範囲の重量平均分子量を有する分枝状ポリエチレンイミンであって、ここで、二級アミノ基と一級アミノ基の数の比は、1.00:1〜2.50:1の範囲であり、二級アミノ基と三級アミノ基の数の比は、2.01:1〜2.90:1の範囲であるか、成分Aは、そのようなポリエチレンイミンの混合物であり、成分Bは、式(I)、(II)または(III):
【化1】


(ここで、式(I)、(II)または(III)中、リンに結合しているOH基の50%までにおいて、その水素原子は、アルカリ金属またはアンモニウム基で置換されていてもよいが、好ましくはこれらのOH基の100%は、非中和形態で存在し、あるいは成分Bは、式(I)、(II)または(III)の化合物から選択される化合物の混合物であり、
yは、0、1または2の値であることができ、好ましくは0の値を有し、
は、HまたはOHであり、
Rは、RがOHであるときには、1〜7個の炭素原子を含有し、RがHであるときには、3〜7個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
は、
【化2】


であり、
は、HまたはR、好ましくはRであり、かつ
すべての基Rは、互いに独立に、Hまたは
【化3】


であるか、または式(IV):
【化4】


の基であり、存在するすべてのRの50〜100%が、
【化5】


であることが好ましく、
tは、0または1〜10の数である)
のホスホン酸である、難燃処理方法。
【請求項2】
成分Bが、式(I)と式(II)のホスホン酸の混合物であり、その双方が完全に非中和形態で存在するものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分Aが、エチレンイミンの重合により形成され、以下の構造(式(V)):
【化6】


を有するポリエチレンイミンであり、
重合は、場合により酸で触媒され、
三級アミノ基を含む個々の単位および二級アミノ基を含む個々の単位は、ポリマー鎖全体にわたって任意に分布していることができ、
bは、aよりも大きく、aとbは、分子量および互いのアミノ基の数の比についての請求項1に記載の条件が満足されるような値を有するものであるか、
あるいは成分Aが、そのようなポリエチレンイミンの混合物である、
ことを特徴とする、請求項1、または2に記載の方法。
【請求項4】
成分Aおよび/または成分Bは、水との混合物の形態で繊維製品に、または、特に有利には、その前駆体に適用されることを特徴とする、請求項1〜3の1以上に記載の方法。
【請求項5】
成分Aまたは成分Bのいずれもが金属または金属化合物を含有しないことを特徴とする、請求項1〜4の1以上に記載の方法。
【請求項6】
繊維製品が、シート状の布地構造の形態または糸の形態の繊維材料であることを特徴とする、請求項1〜5の1以上に記載の方法。
【請求項7】
繊維材料が、織布であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
繊維材料が、30〜100重量%の羊毛を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
繊維製品に適用された成分Aの量と適用された成分Bの量の重量比が、1:1.8〜1:5.0の範囲、好ましくは1:2.3〜1:3.5の範囲であることを特徴とする、請求項6〜9の1以上に記載の方法。
【請求項10】
繊維製品が、無水繊維製品に対して、20〜100重量%のセルロース繊維を含有することを特徴とする、請求項1〜5の1以上に記載の方法。
【請求項11】
方法が、繊維製品の前駆体を用いて行われ、この前駆体が繊維の水性懸濁液であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
成分Aおよび成分Bに加えて、ポリマレイン酸もしくは部分的に中和されたポリマレイン酸および/またはオルトリン酸の部分エステルもまた、繊維製品またはその前駆体に適用されることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
繊維製品の前駆体が成分Aおよび成分Bで連続的にまたは同時に処理され、成分Aが好ましくは、成分Bよりも先に適用されること、およびこの前駆体が、次いで、さらに熱および圧力の作用下に加工されて、ファイバーボードまたはプレスボードとなり、このファイバーボードまたはプレスボードが、次いで、細かく砕かれかつ1以上の無機塩を含有する水で洗浄され、その後、成分Bで再び処理され、さらに、熱および圧力の作用下に加工されて、ファイバーボードまたはプレスボードとなることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。

【公表番号】特表2008−536018(P2008−536018A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503387(P2008−503387)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001882
【国際公開番号】WO2006/105833
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507324968)ハンツマン・テキスタイル・エフェクツ(ジャーマニー)・ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN TEXTILE EFFECTS(GERMANY)GMBH
【Fターム(参考)】