説明

缶体へのフィルムラベル貼着方法及びその装置

【課題】薄肉化された缶体でも高速で貼着ムダなく安定してフィルムラベルを貼着でき、且つ樹脂被覆缶体であっても缶体内面の樹脂にダメージを与えることなく良好に貼着できる缶体へのフィルムラベルの貼着方法及び装置を提供する。
【解決手段】マンドレルに装着された缶体と、ラベルを接着可能な温度に加熱された加熱貼着ローラ3の間に、吸着搬送ベルトコンベヤ20からフィルムラベルfを缶体及び加熱貼着ローラ3の双方に非接触状態で供給し、加熱貼着ローラ3によりフィルムラベルを缶体に押圧することによりラベルを接着可能な温度に加熱して貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体へのフィルムラベル貼着方法及び貼着装置、特に薄肉2ピース缶の缶体にもフィルムラベルを良好に貼着できるフィルムラベル貼着方法及び貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2ピース缶体に印刷により文字や図柄を形成するのに代えて、予めPETフィルム等の熱可塑性フィルムに図柄を印刷したフィルムラベルを缶体に貼着する方法が美麗で装飾効果の高い缶を得る方法として普及している。従来の2ピース缶の缶体に印刷済みのフィルムラベルを貼着する方法として、マンドレルターレットのマンドレルに装着した缶体をフィルムラベルが接着できる温度まで外部より高周波誘導加熱する一方、貼着ローラ上にフィルムラベルを供給して、マンドレル・貼着ローラ間でフィルムラベルを挟持、押圧して貼着する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、その場合、薄肉化された缶体やアルミ缶体等は熱容量が小さいため、缶体周面に温度ムラが生じてフィルムラベルを適切に貼着できないことがあった。それを解決するために、マンドレル上での缶体の加熱に加えて貼着ローラ側からフィルムラベルを加熱することが提案されている(特許文献3)。しかし、貼着ローラ側からフィルムラベルを接着温度まで加熱すると、貼着ローラ上のフィルムラベルに収縮や歪が生じてしまうため、補助的に加温する程度しかできない。さらに、他の方法として、マイラー(剥離シート)上にフィルムラベルを配置して、缶体と加熱ローラ間に供給する方法も提案されている(特許文献2)が、この方法はマイラーを挟んで伝熱するため加熱効率が悪く、また使用後のマイラーは廃棄物となってしまう欠点がある。また他の方法として、マンドレル内部にヒータを配置してマンドレルにより缶体を内面から加熱する方法も知られている。しかしながらこの方法は、樹脂被覆した缶体であると缶体内周面の樹脂がダメージを受ける恐れがある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−179830号公報
【特許文献2】特開昭52−32081号公報
【特許文献3】特開2001−047511号公報
【特許文献4】特開平08−001778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、従来提案されている缶体へのフィルムラベルの貼着方法・装置のうち、高周波誘導加熱を用いた缶体の加熱では、近年缶体の薄肉化に伴い缶体周面の温度ムラが大きくなり、フィルムラベルの接着強度が部分的に低下する問題があり、また、加熱貼着ローラ側からフィルムラベルを加熱すると、加熱貼着ローラ上のフィルムラベルに収縮や歪が生じてしまう問題がある。さらにマイラーによる方法は、ホットローラの熱をマイラーを通してフィルムラベルの缶体側に塗布された接着剤に伝達するため時間を要し高速化に不利であり、また使用後のマイラーは廃棄物となってしまう欠点がある。さらにまた、マンドレルで缶体を加熱する方法は、缶体内面の樹脂がダメージを受ける恐れがある等、従来の何れの方法も特に薄肉缶体で樹脂被覆した缶体への適用では、解決すべき問題点があった。また、従来のフィルムラベル貼着装置は、貼着ローラの周面にフィルムラベルを吸着保持して缶体に貼着させるものであるため、及び缶体との接触時間を稼ぐために、貼着ローラの直径を大きくし、且つ貼着域におけるマンドレルターレットの公転軌道を湾曲させてトラッキング角度を大きくするなど、装置が大型化し且つ複雑な構造となっている問題点がある。
【0005】
そこで本発明は、従来の缶体へのフィルムラベル貼着方法及び装置における上記問題点を解決しようとするものであり、薄肉化された缶体でも高速で貼着ムダなく安定してフィルムラベルを貼着でき、且つ樹脂被覆缶体であっても缶体内面の樹脂にダメージを与えることなく良好に貼着でき、しかも装置を小型化できる缶体へのフィルムラベル貼着方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のフィルムラベルの貼着方法は、マンドレルに装着された缶体とフィルムラベルを缶体へ接着可能な温度に加熱された加熱貼着ローラの間にラベル供給手段からフィルムラベルを供給し、前記加熱貼着ローラがフィルムラベルを加熱押圧して缶体に貼着することを特徴とするものである。
【0007】
前記フィルムラベルは押圧の直前まで缶体及び加熱貼着ローラの双方に非接触で供給され、缶体への押圧時に前記加熱ローラで加熱されるようにすることが望ましい。そして、フィルムラベルは、前記ラベル供給手段によって進行方向と平行な方向にひだ付けされてこしを持たせて送り出されるようにすることによって、ラベル供給手段から送り出されたフィルムラベルの垂れ曲がりを防止し、非接触状態で貼着位置に良好に供給することができるので望ましい。また、前記フィルムラベルの缶体への貼着後、その下流側でさらに他の加熱貼着ローラで加熱押圧する再ニップ工程を設けることによって、貼着速度をより高速化及び缶体の温度を低下させることができるので望ましい。
【0008】
上記課題を解決する本発明のフィルムラベルの貼着装置は、所定ピッチでマンドレルが配置されたマンドレルターレット、該マンドレルターレットのマンドレルに装着された缶体と回転接触して前記フィルムラベルを加熱押圧する加熱貼着ローラ、(該加熱貼着ローラと接して該加熱貼着ローラの周面を加熱する加熱ローラ)及び前記マンドレルに装着された缶体と前記加熱貼着ローラとが接触回転する位置にフィルムラベルを供給するフィルムラベル供給手段とからなることを特徴とするものである。
【0009】
前記フィルムラベル供給手段は、回転駆動される無端ベルトとフィルムラベル載置台及び吸引チャンバーとからなる吸着搬送ベルトコンベヤで形成することができる。そして、該吸着搬送ベルトコンベヤは、前記無端ベルト両端縁と前記フィルムラベル載置台との間に段差部があり、該段差部が前記吸引チャンバーと連通して搬送中のフィルムラベルを前記ベルトの両端縁に沿って吸引して前記段差部によって供給方向に癖付けをするように構成することによって、薄くてコシのないフィルムラベルであっても良好に貼着位置へ供給可能となる。また、前記加熱貼着ローラが、前記マンドレルターレットの公転軌道に沿って複数個配置することが望ましく、それにより装置の高速化・小型化及び比較的低い缶温度でのフィルムラベルの貼着が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルムラベル貼着装置によれば、薄肉化された缶体でも高速で貼着ムダなく安定してフィルムラベルを貼着でき、且つ樹脂被覆缶体であっても缶体内面の樹脂にダメージを与えることなく良好にフィルムラベルを貼着でき、しかも装置を小型化できる。そして、請求項2、8の発明によれば、フィルムラベルを缶体への貼着まで加熱貼着ローラに無接触で貼着位置に供給できるので、加熱貼着ローラ上に供給してから貼着する場合と比べて、熱により収縮や歪が生じることなく、良好に貼着できる。そして、請求項3、9に記載の発明によれば、搬送方向と平行な方向に「ひだ」を付けてフィルムラベルに「こし」を持たせることができ、供給手段の先端から押圧位置にフィルムラベルを安定して供給できる。
【0011】
さらに、請求項4、10に記載の発明によれば、フィルムラベルは複数箇所で加熱押圧されるので、個々の加熱貼着ローラを小さく且つ高速回転させることができ、装置の小型化と高速化を図ることができる。そして、缶体が高温に加熱されることなく、フィルムラベルを良好に貼着でき、内面に樹脂フィルム層を有する缶体の場合でも樹脂フィルムにダメージを与えることなく、良好に貼着できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルムラベル貼着装置の概略模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフィルムラベル貼着装置の加熱装置の断面図である。
【図3】本発明に係るフィルムラベル貼着装置のフィルムラベル搬送手段の要部模式図である。
【図4】図3及び図5におけるB−B断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る吸着搬送ベルトコンベヤにおけるフィルムラベルへの「ひだ」付け作用を説明するための模式図であり、(a)は搬送方向に直角断面(図5のC−C断面)における模式図、(b)は搬送方向と平行断面(図3のD−D断面)における模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る缶体へのフィルムラベル貼着方法及びその装置の実施形態を図面を基に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る缶体へのフィルムラベル貼着装置の実施形態の概略図である。本実施形態のフィルムラベル貼着装置1は、主な構成として、マンドレルターレット2、加熱貼着ローラ3、加熱ローラ4、フィルムラベル供給手段6とから構成されている。マンドレルターレット2は缶体が嵌合装着されるマンドレルが片持ち状態で回転面に対して直角に突出して定ピッチで配置されて間欠回転(公転)し、後述するように、加熱貼着ローラと接する位置では公転を停止して、マンドレルが1回転するように構成されている。
【0014】
加熱貼着ローラ3は、その断面を図2に示すように装置本体9に回転可能に装着され、金属ローラ10の表面にゴム層11を貼着してなるゴムローラであり、マンドレル8との間に缶体cを挟んでフィルムラベルを押圧して良好に接着できるように、表面を弾性体で形成してある。加熱貼着ローラ3を内面から暖めてもよいが、ゴムが断熱材であるため、表面を所定温度に加熱するには熱効率が悪いため、本実施形態では加熱貼着ローラを外側から加熱するように、その外周面に接触回転する加熱ローラ4を配置して、前記加熱貼着ローラ3と加熱ローラ4とで加熱装置5を構成してある。本実施形態では加熱ローラ4は、加熱貼着ローラ表面を短時間(高速)で均一に効率的に加熱するため、図示のように3個配置しているが、それに限るものではない。なお、図1において、8は缶体が装着されていないマンドレル、8(c)は缶体が装着されているマンドレル、8(f)はフィルムラベルが貼着された缶体を装着しているマンドレルを示している。
【0015】
加熱装置5の加熱貼着ローラ3と加熱ローラ4が接している部分の断面図を図2に示している。加熱ローラ4は、熱伝導率のよいアルミニウム合金で形成され、内部にヒータ12が配置されて内部より加熱するようになっている。装置本体9に直接又はブラケット13を介して回転自在に支持され、加熱貼着ローラ3と摺接して加熱貼着ローラ3の回転により摩擦力でほぼ同期して回転する。図2において、14はヒータに電力を供給するブラシ装置であり、回転側のスリップリング15と固定側のブラシ16とから構成され、回転する加熱ローラ内のヒータに電力を供給する。なお、該加熱ローラには、その表面温度を検出するセンサーを有し、制御装置により所定温度に保つように制御される。また、加熱ローラを電熱ヒータで加熱するのに代えて、加熱ローラ内を加熱オイルを循環させたり、あるいは赤外線ヒータを用いて加熱することも可能である。また、加熱ローラを用いずに直接加熱貼着ローラ3の表面を赤外線ヒータ等で加熱することも可能である。
【0016】
なお、本実施形態では、上記加熱貼着ローラ3及びそれに接する3組の加熱ローラ4からなる加熱装置5を図示のように、下流側にさらに2組配置して、最初の加熱装置5−1によるラベリング後、さらに次の加熱装置5−2,5−3によって多段階に加熱押圧(再ニップ、再々ニップ)を行うように構成している。図示の実施形態のように多段階、例えば3段階設けると、缶体は合計3回転の間加熱されることになり、1回で加熱する場合(即ち、1組の加熱装置の場合)と比べて良好な加熱時間・温度を得ることができ、ラインの高速化あるいは缶体の加熱温度の低温化が可能となる。
また本発明では、従来の貼着ローラと相違して加熱貼着ローラ上にフィルムラベルを供給する必要がないので、加熱貼着ローラを小型化でき、装置を小型化・省電力化できる。そのため多段階に設けても装置がかさばらない。
このように、小型の装置においてより高速で且つ缶体温度を低く抑えて適正にフィルムラベルの貼着が可能となる。
【0017】
フィルムラベル供給手段6は、図1に仮想線で示すように、マンドレル8に装着されている缶体cと加熱貼着ローラ3との貼着位置にフィルムラベルfを供給するもので、上流側から1枚ずつ切断されて供給されるフィルムラベルfを吸着搬送する吸着搬送ベルトコンベヤ20で構成され、図示のように貼着位置に向けて傾斜状態で配置され、その詳細が図3〜図5に示されている。吸着搬送ベルトコンベヤ20は、本実施形態では、フィルム載置台22の搬送方向に直角な面(幅方向)の両端部近傍と中央部に合計3本のベルト案内溝23に無端の歯付きベルト21の片側(往側)が配置されて構成されている。案内溝23の深さは、歯付きベルト21の谷21bの深さよりも若干浅く形成され、歯付きベルト21の谷底部近傍がフィルム載置台22の載置面22aに向けて連通する開口部24となるような関係で配置されている。そのため、歯付きベルト21の搬送面21aとフィルム載置台22の載置面22aとの間には、図5に明示するように、段差tが存在している。この段差tと開口部24の存在によって、後述するように、搬送するフィルムラベルが歯付きベルトの両端縁に沿って吸着され、フィルムラベルに搬送方向に縦筋状に癖付けして「こし」を持たせ、後述するように貼着位置まで安定して供給できるようにしてある。前記段差tは、貼着後のフィルムラベルに傷跡が残らない程度の癖付けができればよく、0.1〜1mm程度が望ましい。フィルム載置台22の案内溝23の底部には、搬送方向に沿って間欠的にバキューム孔25が形成され、フィルム載置台22の下に形成されているバキュームチャンバー26に連通している(図4)。該バキュームチャンバー26は、配管を介して真空ポンプ装置に連通し、所定の真空度を維持して、フィルムラベルを吸引して歯付けベルト21に吸着させて搬送しながら「こし」を持たせるための癖付けを行う。
【0018】
フィルムラベルは薄くて「こし」がないので、吸着搬送ベルトコンベヤ20の先端(下流端)はなるべく加熱貼着ローラと缶体との間の供給位置近くに達するように配置することが望ましい。しかしながら、先端部には歯付きベルトと噛合って駆動するスプロケット軸27を有しているので接近配置するには物理的障害があるため、本実施形態はそれを解消するために、前記したようにフィルムラベルに「こし」を持たせる工夫をし、さらにコンベヤ先端から供給位置に向けて薄板状の案内板28を配置し、フィルムラベルが加熱貼着ローラと缶体の間に達するまでに垂れ下がることを防止し安定して供給できるようにしている。
【0019】
本実施形態のフィルムラベル貼着装置1においては、図1に示すように、マンドレルターレット2の公転軌道に沿って、ラベリングする加熱貼着ローラが配置される位置に缶体が到達する前に、缶体を外部から予備加熱する予備加熱手段を配置した予備加熱域7を設けている。予備加熱域7には、予備加熱手段として高周波コイルを配置して缶体を外部から高周波誘導加熱できるようにしている。本発明は、基本的にはフィルムラベルを加熱貼着ローラで加熱して貼着するものであり、缶体の加熱は必ずしも必須のものではないが、フィルムラベルを缶体に貼着前に予備加熱することによって、より高速化が図られるので望ましい。
【0020】
なお、図1において、30は缶体を供給する供給シュート、31は切出しホイール、32はインフィードターレットであり、缶体供給ステーションを構成する。33は排出シュートであり、これらは公知の手段を適宜採用して構成する。
【0021】
本実施形態のフィルムラベル貼着装置1は、以上のように構成され、次のような方法で缶体表面にフィルムラベルを貼着する。
缶体成形ラインから搬送されて缶体供給ステーションによりマンドレルターレットのマンドレル8に装着された缶体cは、マンドレルターレットにより間欠的に公転軌道に沿って移動し、予備加熱域7で高周波誘導加熱で所定温度まで予備加熱される。缶体の予備加熱温度は、従来の缶体を高周波誘導加熱で加熱してフィルムラベルを貼着する場合の加熱温度(約150〜200℃)よりも低い150℃以下、好適には80〜100℃にでき、内面が樹脂被覆された缶体であっても、被覆樹脂がダメージを受けることはない。
予備加熱の具体的な手段としては高周波誘導加熱に限らず、赤外線ヒータを用いたり、本願の加熱貼着ローラと同様な構成を用いたりすることもできる。
また上記した温度範囲であれば、マンドレルで缶内面から加熱することも可能である。
【0022】
一方、各加熱貼着ローラ3は、3個の加熱ローラ4と回転接触しており、加熱ローラ4が内部のヒータ12により加熱されることにより、加熱貼着ローラのゴム層表面に伝熱し、ラベルが接着可能な所定温度(缶体種やフィルムラベルの種類によって異なるが通常150℃〜230℃)までゴム層が加熱される。従って、本実施形態によれば、加熱貼着ローラのゴム層表面が外部より直接加熱されるので、断熱体のゴム層であっても熱効率良く加熱することができる。そして、本実施形態によれば加熱ローラは3個配置されているので、加熱貼着ローラが加熱ローラとの接触時間が短くても3箇所で加熱ローラと接触するので、効果的に所定温度に加熱することができ、その分高速化が可能となる。
【0023】
そして、マンドレル8に装着された缶体cが加熱貼着ローラ3との接触開始と同タイミングでラベル供給手段6よりフィルムラベルfを缶体cと加熱貼着ローラ3の噛み込み位置に供給される。本発明では、フィルムラベルはマンドレルに対向する加熱貼着ローラを熱源として貼着可能な温度まで加熱するが、フィルムラベルは貼着位置に達するまで加熱貼着ローラ及び缶体と非接触状態で供給され、貼着時に加熱貼着ローラの加圧によりはじめて加熱される。それにより、従来の加熱貼着ローラ上にフィルムラベルを供給して加熱する場合に生じる加熱貼着ローラ上でのフィルムラベルの収縮や歪が生じることはない。ラベル供給手段6は、前述したように吸着搬送ベルトコンベヤ20で構成され、3本の歯付きベルト21がフィルム載置台22の案内溝23に案内され、歯の谷部近傍がフィルム載置台から僅かに突出しているため、フィルム載置台の搬送面が案内溝23の底部に間欠的に形成されたバキューム孔25を介して真空源に連通し、図5に示すようにベルトの両側縁に沿って吸着される。そのため、フィルムラベルfは図示のようにベルトの両側縁の段差面に沿って強制的に曲げられた形となり、3本のベルトに載った部分が送り方向にひだ状に癖付けされ、その部分が「こし」となり、吸着搬送ベルトコンベヤの先端から送り出されて支持がなくなってもこしが強くなり、垂れ曲がることがなく、缶体と加熱貼着ローラとの接点箇所に供給される。
なお、吸着搬送ベルトコンベヤによるフィルムラベルの送り速度は、缶体とフィルムラベルが接触してフィルムラベルを挟みこむ周速よりも僅かに遅く設定してあり、それにより挟み込み開始時に吸着搬送ベルトコンベヤとの間でフィルムラベルに張力が付与されしわが修正される。
【0024】
マンドレルに装着した缶体が加熱貼着ローラの位置に到達したらその位置でマンドレルが少なくとも1回転する間公転を停止し、それと共に供給されたフィルムラベルを缶体と加熱貼着ローラで挟んで少なくとも1回転する。フィルムラベルは、第1加熱装置5−1が配置されている位置で、缶体と加熱貼着ローラとの間に挟み込まれて加圧されることにより、加熱貼着ローラからの熱伝達によって接着剤が接着可能の温度に加熱されながら缶体が1回転する間に缶体に貼着(ラベリング)される。さらに、缶体が第2加熱装置5−2の位置に到着すると、缶体にラベリングされたフィルムラベルをさらに第2の加熱貼着ローラ3で押圧回転(再ニップ)することによって、接着強度が増し第1回のニップで接着不足があってもより完全に接着させて良好にラベリングを行うことができる。さらに第3加熱装置5−3の加熱貼着ローラで再々ニップを行う。本実施形態では、3段階に加熱装置を配置しているが、必ずしもそれに限るものでなく、必要に応じて加熱装置は1段階のみあるいは多段階に設置することができる。
以上のようにすることによって、フィルムラベルの貼着装置を小型化・高速化でき、且つ缶体自体の加熱温度を低温化でき、高品質のフィルムラベル貼着缶体を製造するとこができる。
【0025】
本発明における加熱貼着ローラを本実施形態のように複数回押し当てて、2ピース缶体にフィルムラベルを貼着する場合の効果を確認するために、2ピース缶体(容量:350ml、缶材質:アルミニウム、板厚:0.12〜0.17mm)に厚さ接着剤層を含めたラベル厚み:20μmのPETフィルムからなるフィルムラベルを表1に示す条件で貼着した。貼着は、予備加熱後の缶体温度をパラメータとして、ラベリングのみ(ニップ1回)、ラベリング+再ニップ(ニップ2回)、ラベリング+再ニップ2回(ニップ3回)を行って、そのときのラベリング状態を目視で確認した。その結果を表1に示す。なお、そのときの各加熱貼着ローラのゴム層表面の温度を215℃、貼着速度100m/minで行った。
【表1】

【0026】
表1から明らかなように、貼着速度100m/minという高速でフィルムラベルを缶体に貼着した場合、加熱装置1組の場合(即ち、ラベリング工程のみ)は、缶体温度100℃で良好にラベリングができ、また2組目を設けて再ニップすることによって、缶体温度85℃で良好にできた。さらに、3組目を設けて再ニップを繰り返すことによって缶体温度80℃でも良好に貼着できた。このように、再ニップ工程を設けることによって、缶体温度をより低い状態で良好に接着できることが確認された。さらに、表に示していないが、貼着速度を50m/minと低速で行った場合は、ラベリング工程のみで再ニップを行わなくても缶体温度85℃で良好に貼着できることが確認された。
以上のことから、本実施形態の装置によれば、貼着速度を遅くすることによって、再ニップを行わなくても低い缶体温度で良好に貼着でき、さらに再ニップを行うことによってより低温の缶体温度での貼着が可能となった。そして、再ニップを追加することにより、より高速でラベリングが可能となった。しかも、本発明によれば、フィルムラベル貼着区間を加熱貼着ローラに沿うように半径方向にくぼませてトラッキング角度を大きくする必要がなく、マンドレルターレットの構成が簡単で、且つ装置を小型化できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、フィルムラベルを薄肉化された缶体であっても高速で安定して貼着でき、しかも装置の小型化も可能であるので、装飾性の高い缶体を得るのに産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0028】
1 フィルムラベル貼着装置
2 マンドレルターレット
3 加熱貼着ローラ
4 加熱ローラ
5 加熱装置
6 フィルムラベル供給手段
7 予備加熱域
8 マンドレル
9 装置本体
10 金属ローラ
11 ゴム層
12 ヒータ
13 ブラケット
14 ブラシ装置
15 スリップリング
16 ブラシ
20 吸着搬送コンベヤ
21 歯付きベルト
22 フィルム載置台
23 案内溝
24 開口部
25 バキューム孔
26 バキュームチャンバー
27 スプロケット軸
30 供給シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルに装着された缶体とフィルムラベルが接着可能な温度に加熱された加熱貼着ローラの間にラベル供給手段からフィルムラベルを供給し、前記加熱貼着ローラがフィルムラベルを加熱押圧して缶体に貼着することを特徴とする缶体へのフィルムラベル貼着方法。
【請求項2】
前記フィルムラベルは押圧の直前まで缶体及び加熱貼着ローラの双方に非接触で供給され、缶体への押圧時に前記加熱貼着ローラで加熱される請求項1に記載のフィルムラベル貼着方法。
【請求項3】
前記フィルムラベルは、前記ラベル供給手段によって供給方向と平行な方向にひだ付けされて送り出されるようにしてなる請求項2に記載のフィルムラベル貼着方法。
【請求項4】
前記フィルムラベルの缶体への貼着後、その下流側でさらに他の加熱貼着ローラで加熱押圧する再ニップ工程を有する請求項1〜3の何れかに記載のフィルムラベル貼着方法。
【請求項5】
フィルムラベルを押圧する前に、缶体を予備加熱する請求項1〜4の何れかに記載のフィルムラベル貼着方法。
【請求項6】
所定ピッチでマンドレルが配置されたマンドレルターレット、該マンドレルターレットのマンドレルに装着された缶体と回転接触して前記フィルムラベルを加熱押圧する加熱貼着ローラ、及び前記マンドレルに装着された缶体と前記加熱貼着ローラとが接触回転する位置にフィルムラベルを供給するフィルムラベル供給手段とからなることを特徴とする缶体へのフィルムラベル貼着装置。
【請求項7】
前記加熱貼着ローラと接して該加熱貼着ローラの周面を加熱する加熱ローラを備えなる請求項6に記載の缶体へのフィルムラベル貼着装置。
【請求項8】
前記フィルムラベル供給手段は、回転駆動される無端ベルトとフィルムラベル載置台及び吸引チャンバーとからなるフィルムラベルを吸着搬送する吸着搬送ベルトコンベヤで形成されている請求項6又は7に記載のフィルムラベル貼着装置。
【請求項9】
前記吸着搬送ベルトコンベヤは、前記無端ベルト両端縁と前記フィルムラベル載置台との間に段差部があり、該段差部が前記吸引チャンバーと連通して搬送中のフィルムラベルを前記ベルトの両端縁に沿って吸引して前記段差部によって供給方向にひだ付けするようにしてなる請求項8に記載のフィルムラベル貼着装置。
【請求項10】
前記加熱貼着ローラが、前記マンドレルターレットの公転軌道に沿って複数個配置されてなる請求項6〜9の何れかに記載のフィルムラベル貼着装置。
【請求項11】
前記マンドレルに装着された缶体と前記加熱貼着ローラとが接触回転するより手前の前記マンドレルの公転軌道上に予備加熱域を備えることを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載のフィルムラベル貼着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255949(P2011−255949A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134055(P2010−134055)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】