置敷床材及びこれを用いた床施工構造
【課題】 簡易な構成で、化粧板の表面に現れる裏面溝による影写りを目立たないようにでき、外観性を向上させること。
【解決手段】 基材2上に化粧板3が積層されてなる置敷床材1である。化粧板3の表面3aにその長さ方向Aに沿って表面溝4を設けると共に、表面溝4と対向する基材2の裏面2f位置に幅反り防止用の裏面溝5を設けた。表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込むことにより、化粧板3の表面3aにおいて裏面溝5の影写りが目立たなくなる。
【解決手段】 基材2上に化粧板3が積層されてなる置敷床材1である。化粧板3の表面3aにその長さ方向Aに沿って表面溝4を設けると共に、表面溝4と対向する基材2の裏面2f位置に幅反り防止用の裏面溝5を設けた。表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込むことにより、化粧板3の表面3aにおいて裏面溝5の影写りが目立たなくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置敷床材及びこれを用いた床施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床下地の上に長手形状の床材を幅方向に並べて、隣接する床材の幅方向の端部に設けた実結合部を互いに実結合した状態で敷き詰めるようにしている。この床材では接着剤を使わないため、省エネ化を図ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、複数の床材を幅方向で実結合する方式では、床材の幅方向の膨張等によって幅方向の反りや段違い、波打ち、カッピング等(以下、「幅反り」と称する。)が発生しやすくなる。そこで、基材の裏面にその長さ方向に沿って裏面溝を深く切り込むことによって、基材の幅反りの発生を防止するようにしている。
【0004】
しかしながら、裏面溝を深く切り込む場合にあっては、化粧板の表面に裏面溝が黒い影のように写って見えてしまう現象(以下、「影写り」と称する。)が現れる。とくに最近は化粧板は薄色調が主流であるため、化粧板を通して影写りが目立ちやすくなり、このため床表面の意匠性が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】実開平5−42484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、簡易な構成で、化粧板の表面に現れる裏面溝による影写りを目立たないようにでき、外観に優れた置敷床材を提供することを課題とし、また、床材の防水性を高めてカビやダニの発生を防止できると共に床材のクッション性の劣化を防止でき、さらに置き敷き作業を簡略化できる置敷床材を提供することを課題とし、また経時での目透きの発生及び突き上げ現象を防止でき、さらに水分や熱による伸縮や幅反りの発生を抑制でき、さらに施工コストを削減でき、さらにリフォームが容易となり、そのうえ施工後の実結合部での耐水性を向上させることができ、結果、省施工化及びコストダウンに加えて、施工品質に優れた床施工構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明にあっては、基材2上に化粧板3が積層されてなる置敷床材において、化粧板3の表面3aにその長さ方向Aに沿って表面溝4を設けると共に、表面溝4と対向する基材2の裏面2f位置に幅反り防止用の裏面溝5を設けてなることを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込むことにより、裏面溝5の黒い影が表面溝4によって打ち消されて、化粧板3の表面3aに現れる裏面溝5の影写りを目立たなくすることができる。
【0008】
また、上記裏面溝5の内部空間に軟質樹脂20を充填してなるのが好ましく、この場合、軟質樹脂20にて裏面溝5の影写りを一層防止でき、また、仮りに床上に水をこぼした場合でも基材2の裏面2fから裏面溝5上部の薄い表層部分2gに水分が浸透するのを軟質樹脂20にて防止でき、水分浸透による置敷床材1全体の反り発生防止に効果的となる。さらに裏面溝5内への軟質樹脂20の充填によって、置敷床材1全体において柔軟性を損なわないようにできて「腰」のある置敷床材1が得られるうえに振動吸収効果、断熱効果、防音機能がそれぞれ向上するようになる。
【0009】
また、上記基材2は複数層の合板2a〜2eからなり、表面側の2層目の合板2bに至るように裏面溝5が裏面2f側から切り込まれているのが好ましく、この場合、表面側の1層目の合板2aを残して裏面溝5が切り込まれることで、基材2を構成する合板2a〜2eのコシが切れた状態となり、幅反り防止効果を高めることができる。
【0010】
また上記基材2の裏面に、裏面溝5を跨ぐようにして防水用クッションシート30を取着するのが好ましく、この場合、裏面溝5の下端側が防水用クッションシート30にて覆われるので、仮りに床材1の上で水をこぼした場合でも、水が基材2の裏面側に達するのを防水用クッションシート30にて遮断でき、これにより基材2の裏面側での湿りによるカビやダニの発生を未然に防止できるものであり、しかも防水用クッションシート30自体が防水性を有するので、そのクッション性が劣化することもなく、長期にわたって床材1の歩行感を良好に保てるようになる。さらに基材2の裏面に予め防水用クッションシート30を貼り合わせることで、施工時に防水用クッションシート30を床下地8に対して動かないように固定する必要がなく、敷設作業をより簡略化できるものである。
【0011】
また本発明に係る床施工構造にあっては、上記置敷床材1の長さ方向Aと直交する幅方向Bの端部に実結合部6を設け、置敷床材1を床下地8に対してフリーな状態で隣接する置敷床材1の実結合部6のみを接着剤7にて互いに接着してなることを特徴としている。
【0012】
このような構成とすることで、化粧板3の表面3a側から見て裏面溝5の影写りが目立たないようにできる置敷床材1を実接着工法することで、置敷床材1の動きを小さくでき、経時での目透きの発生と突き上げ現象を防止できる。また置敷床材1を釘打ちしないため、床下地8の伸縮と置敷床材1の伸縮とが分離され、水分や熱による伸縮や反りの発生を抑制でき、さらに釘打ち施工の場合と比較して施工コストを削減でき、そのうえリフォーム時には置敷床材1を簡単に剥がして、置敷床材1の交換、補修等のリフォームが簡易となる。また施工後に、実結合部6からの水浸入を防止でき、実結合部6での耐水性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る置敷床材は、表面溝と裏面溝とを対向する表裏位置に形成するという簡易な構成で、裏面溝の黒い影が表面溝によって打ち消されて、影が目立ちにくくなり、床表面の意匠性を向上させることができる。
【0014】
また本発明に係る床施工構造は、化粧板の表面に現れる裏面溝の影写りを目立たなくできる置敷床材を実接着工法で連結することにより、経時での目透きの発生及び突き上げ現象を防止でき、さらに水分や熱による伸縮や幅反りの発生を抑制でき、さらに施工コストを削減でき、さらにリフォームが容易となり、そのうえ施工後の実結合部での耐水性を向上させることができ、この結果、省施工化及びコストダウンに加えて、施工品質に優れた床施工構造を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
図1は基材2上に化粧板3が積層された長尺の置敷床材1(以下「床材1」と略称する。)の一例を示している。
【0017】
基材2は、例えば5層(プライ)の合板2a〜2eからなり、例えば、図1のように繊維が長さ方向A(図1の紙面に対して垂直方向)に配列される合板2aを1層目に配した合板仕様、或いは、図4のように繊維が幅方向Bに配列される合板2aを1層目に配した合板仕様とされる。なお、合板2a〜2eの層数は5プライに限らず、例えば7プライ、9プライ等の多数層であってもよい。また図1、図4中の幅寸法Dは例えば303mm、総厚d1は例えば12.0mmとされる。また基材2の材質は合板に限らず、硬質樹脂板とMDF(中密度繊維板)とを積層したMDF複合合板(図示せず)を用いたものであってもよい。
【0018】
化粧板3は、例えば耐荷重性を高めるために、硬質の木質単板で構成されている。化粧板3の表面3aには、その長さ方向Aに沿って表面溝4が設けられている。この表面溝4は化粧板3の幅方向Bに間隔をあけて複数条、設けられている。表面溝4は後述の裏面溝5による影写りを目立たないようにして床表面の意匠性を向上させる働きをする。なお、表面溝4はV字溝に限らず、角溝であってもよい。
【0019】
上記化粧板3の表面溝4と対向する基材2の裏面2f位置には、表面溝4と平行な方向(長さ方向A)に延びる裏面溝5が設けられている。ここでは、図1又は図4に示すように、表面側の1層目の合板2aのみを残すように、裏面溝5が裏面2f側から深溝スリット状に切り込まれている。つまり、表面側の2層目の合板2bに至るように裏面溝5が切り込まれており、これにより基材2を構成する合板2a〜2eのコシが切れた状態(合板2a〜2e全体が裏面溝5に沿って手で若干動くことができる程度の状態)となり、幅反りを有効に防止できるようになっている。ここでは裏面溝5の深さd2は例えば9.3mm、溝幅は例えば1.6〜1.8mm程度とされる。また図3に示す例では、裏面溝5の長さ方向A両端部の残し幅d3は例えば30〜50mmとされる。
【0020】
なお、裏面溝5の深さは図1、図4の例に限らず、表面側の2層目(或いは3層目以上)までの合板2bを残すようにして、裏面溝5を切り込むようにしてもよい。また、裏面溝5の長さ方向Aの寸法は、化粧板3の長さ方向A全長にわたって付与される通し溝からなる切りっ放し仕様(図5(a))以外に、長さ方向A両端部のみを残す仕様(図3、図5(b))、さらに長さ方向A両端部と中央部とをそれぞれ残す仕様(図5(c))から選ばれる。ここで図5(a)〜(c)において、裏面溝5の溝ピッチPは例えば75.5mm〜101mmに設定される。また、図5(b)(c)において、両端部の残し寸法及び中央部の残し幅d3、d3´は、例えば200〜300mmとする。なお裏面溝5の溝ピッチPは表面溝4の溝ピッチと等しく設定されるが、裏面溝5の溝幅、溝深さ、及び断面形状は適宜設計変更自在である。
【0021】
上記基材2の長さ方向Aの両端部は面取り加工が施され、長さ方向Aと直交する幅方向Bの両端部は本実加工が施されている。本例では、合板2b、2cの幅方向Bの一端部に雄実6aが突設され、他端部に雌実6bが凹設されている。
【0022】
しかして、本発明の床材1によれば、表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込んでいるので、裏面溝5の黒い影が表面溝4によって打ち消されて、化粧板3の表面3aに現れる裏面溝5の影写りを目立たないようにすることができる。しかも、裏面溝5の方向は長さ方向A(木目方向)と同じであるため、影写りが一層目立ちにくくなり、この結果、表面溝4と裏面溝5とを対向する表裏位置に形成するという簡易な構成で、床表面の意匠性を向上させることができる。しかも裏面溝5によって床材1に屈曲性を持たせることができるので、床下地8に不陸があっても十分に対応できるようになる。
【0023】
図2は上記構成の床材1を施工した状態の一例を示している。図2中の床下地8は例えば、モルタル、コンクリート、捨張などからなる。図中の10は幅木、11は壁である。図2の例では、床下地8に対してフリーな状態で隣接する床材1の雄実6aと雌実6bとを接着剤7にて互いに接着している。しかし実結合部6の接着のみでは、カッピングや床鳴り等が発生しやすいため、床下地8と床材1との間に、緩衝シート9を挿入している。緩衝シート9は、例えば、音や水分の吸収を防止するPE、ウレタン等のクッション性のある材料で形成されている。緩衝シート9は例えば、1.0mm〜3.0mm厚とされ、クッション性を持つことで、床下地8と床材1との間に床下地8の不陸形状に応じた隙間が生じなくなり、歩行時の感触が良くなり、足が疲れない床構造となる。また本例の緩衝シート9は、床材1の裏面2fに対して接着されていない。つまり床材1の裏面溝5が緩衝シート9で密閉状態で接着されると裏面溝5の内部空間が密閉空間となり、歩行時に密閉空間において床鳴りが生じるという問題があるため、本例では床材1と緩衝シート9とはフリーな状態とされる。
【0024】
なお、施工時に床材1の長さ方向Aに反りが発生した場合は、実結合部6を接着した後で仮釘を実結合部6に打ち込んで固定する。このように仮釘固定することにより、平滑性を出して接着剤7を硬化させることができる。従って、接着剤硬化後に仮釘を抜いてもそのままの平滑状態を保持できるようになる。
【0025】
本例の実結合部6の一例を図6(a)に示し、従来の実結合部6´を図6(b)に示す。従来では図6(b)のように、目透きをなくすために雄実6a上面と雌実6b上面との間に角度θ´(例えば、2°〜3°)をつけているため、雄実6a上面と雌実6b上面の接着面積が小さくなり、接着保持力が低くなるという問題があり、また雄実6aと雌実6bとの隙間d6(例えば、0.1〜0.2mm)が小さいため、嵌合がきつくなる問題があり、さらに雄実6a下面と雌実6b下面間の隙間d4(例えば、0.5〜0.7mm)が大きいために接着剤7が漏れやすいという問題がある。これに対して本例の実結合部6では、図6(a)のように雄実6a上面と雌実6b上面とを突き当て可能となるように、雄実6a下面と雌実6b下面とをそれぞれ切削すると共に、雄実6aと雌実6b間の隙間d7を例えば、0.2〜0.3mmまで大きくしている。これにより、雄実6a上面と雌実6b上面との角度θが0°となり、目透きをなくすことができると共に、接触面積を大きくでき、これにより接着保持力をアップさせて床材1の伸縮を小さくできるようになる。また、雄実6aと雌実6b間の隙間d7(例えば、0.2〜0.3mm)が従来より大きくなるため、接着剤7を多めに充填でき、嵌合がきつくならないようにできる。さらに、雄実6a下面と雌実6b下面との隙間d5(例えば0〜0.5mm、好ましくは0〜0.2mm)を従来より小さくできるため、接着剤7が漏れにくくなり、従って、接着剤7が漏れてブリッジができ床鳴りが発生するという問題をなくすことができる。
【0026】
なお、上記接着剤7としては、硬化すると固い性質を表す接着材料、例えば変成アクリルエマルジョン系接着剤などが用いられ、これは変成酢酸ビニルにより耐水性をアップさせることができる性質がある。もちろんこれは一例であり、他の硬質接着材料であってもよい。また実結合部6の強度アップを図る観点から軟質の接着剤は不適である。なお接着剤7の塗布量は特に問わないが、例えば、g/30cm(長手、短手とも)を目安とする。
【0027】
しかして、床材1は実結合部6の接着のみで連結され、釘無し施工を採用することで、床下地8の伸縮と床材1の伸縮とが分離され、水分や熱による伸縮や幅反りの発生を抑制できると共に、釘打ち施工の場合と比較して約1/3強の施工コストを削減できる。また、床材1は床下地8に対して接着されないため、省施工化を実現すると共に、リフォーム時には床材1を簡単に剥がして、床材1の交換、補修等のリフォームが簡易となる。
【0028】
また、実接着工法によって基材2の実接着工法により床材1の動きを小さくでき、経時での目透きの発生と突き上げ現象とを防止できる。さらに施工後に、実結合部6からの水浸入を防止でき、実結合部6での耐水性を向上させることができる。結果、省施工化及びコストダウンに加えて、施工品質の向上が図られる。
【0029】
図7、図8は本発明の他の実施形態であり、裏面溝5の内部空間に軟質樹脂20を充填してある。他の構成は前記図1〜図6の実施形態と同様であり、対応する箇所には同一符号を付しておく。なお図8(a)は裏面溝5を表面から1層目まで深く切り込んだ場合を示し、図8(b)は表面から2層目まで切り込んだ場合を示している。本例では、裏面溝5の深さ約1/4から約1/2程度まで、軟質樹脂20を充填させてある。軟質樹脂20の例として、ゴム系樹脂、SBR(スチレン/ブタジエン共重合体)樹脂等が挙げられる。SBR樹脂の一例として変形スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが使用される。
【0030】
しかして、本例では前記実施形態のように表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込むことで、裏面溝5の黒い影が表面溝4によって打ち消されて、化粧板3の表面3aに現れる裏面溝5の影写りを目立たないようにでき、そのうえ裏面溝5の内側上部に軟質樹脂20を充填したことによって、裏面溝5の影写りを、一層、防止できる効果が得られる。
【0031】
なお、図9(参考図)に示すように、裏面溝5を表面溝4とは対向しない裏面位置に設けることも可能であるが、影写りを十分に抑制するためには、図7のように軟質樹脂20を充填した裏面溝5を表面溝4と対向した裏面2f位置に設けるのが望ましい。
【0032】
さらに、本例では裏面溝5の内側上部に軟質樹脂20を充填しているので、基材2の裏面2fから裏面溝5上部の薄い表層部分2gに水分が浸透することがなくなる。つまり、実結合により複数の床材1が一体連結されている場合でも、仮りに床上に水をこぼした場合は、実結合部分から浸入した水が基材2の防水処理を施していない側端面或いは裏面2fから裏面溝5に回り込み、裏面溝5内を伝って裏面溝5上部の表層部分2gに浸透しやすくなる。このため、裏面溝5上部の薄い表層部分2g(とくに水分が浸透している部分)の強度が弱く、その部分に力が集中すると、その部分が膨張、収縮する結果、床材1の反りが発生する原因となる。そこで、本発明では裏面溝5の内側上部に軟質樹脂20を隙間なく充填させているので、裏面溝5上部の薄い表層部分2gへの水分の浸透を軟質樹脂20によって確実に防止でき、結果、軟質樹脂20は、影写りを抑制する機能と、基材2の裏面2fから裏面溝5上部の表層部分2gへの水分の浸透を抑制する機能とを兼ね備えたものとなり、結果、床材1の表面の外観性を向上させる効果と、裏面溝5上部の表層部分2gの伸縮を抑制して床材1全体の反りを防止する効果とがそれぞれ得られる。
【0033】
そのうえ、軟質樹脂20の弾性力によって床材1の変形に追随できるので、床材1全体において柔軟性を損なわないようにできて「腰」のある床材1が得られる利点が得られると同時に、裏面溝5において振動吸収効果、断熱効果、防音機能をそれぞれ向上させることができる利点もある。
【0034】
ところで、マンション等において和室を洋間に模様替えをする場合は、床材1の水平出しや補強等の目的で、床上にモルタル8aを塗り、一定時間(例えば、1〜2時間程度)経過して乾燥固化するまで待ち、その後、モルタル8a表面に床材1を敷くようにしている。ところが、モルタル8aが未乾燥のままで床材1を敷いてしまうと、モルタル8a中に含まれる水分が床材1を湿らせてしまい、床材1自体の耐久性を劣化させるだけでなく、カビやダニが発生するという問題が生じる。
【0035】
そこで、本発明の他の実施形態として、図10、図11に示すように、基材2の裏面に、裏面溝5を跨ぐようにして防水用クッションシート30を取着した床材1を使用する。なお、表面溝4の真下位置に裏面溝5を切り込んだ構成、隣り合う基材2間を実結合し且つ接着する点などに関しては前記実施形態と同様であり、対応する部分には同一符号を付して詳しい説明を省略する。本例の防水用クッションシート30は、クッション性と防水性とを保有するものであり、基材2の裏面全体に亘って取着されている。なお、裏面全体ではなく、各裏面溝5に各々またがるようにしながら部分的に取着するものであってもよい。防水用クッションシート30の厚みは例えば、1.0mm〜3.0mmとし、接着剤で基材2の裏面に貼り合わせてある。なお、基材2として厚みが9.0mm〜15mm程度のものが使用されるが、勿論この厚みに限定されるものではない。
【0036】
しかして、基材2の裏面側に、各裏面溝5を跨ぐようにして防水用クッションシート30を貼り合わせたので、各裏面溝5の下端側がそれぞれ防水用クッションシート30にて覆われるので、仮りに床材1の上で水をこぼした場合でも、水が基材2の裏面側に達するのを防水用クッションシート30にて遮断でき、これにより基材2の裏面側での湿りによるカビやダニの発生を未然に防止できるものとなり、しかも防水用クッションシート30自体が防水性を有するので、クッション性の劣化もなく、長期にわたって床材1の歩行感を良好に保てるようになる。また、モルタル8aが未乾燥の場合に、モルタル8aの水分を防水用クッションシート30にて遮断できるので、基材2自体の耐久性の劣化を防止できると共に、カビやダニの発生防止に一層効果的となり、そのうえ、施工時にモルタル8aが十分に乾くまで待つ必要もないので、施工期間を大幅に短縮できるようになる。
【0037】
しかも、本例では基材2の裏面に予め防水用クッションシート30を貼り合わせて一体化しているので、施工時に防水用クッションシート30をモルタル8a表面に対して動かないように固定する必要がなく、敷設作業を簡略化できる利点もある。
【0038】
ちなみに、基材2の裏面に防水性のないクッション材を貼着した場合、湿気や水が浸透しやすくなり、床にカビやダニが発生する不具合や、湿気によってクッション性が低下するといった不具合が生じる。また、防水性のないクッション材の下にさらに防水カバーを敷くことも考えられるが、この場合、防水カバーを敷く煩わしさがある。これに対して本例では上記のような不具合はない。
【0039】
さらに本例では、図11のように、壁面11の下端部に幅木10が取り付けられ、幅木10の下端部とモルタル8a表面との間に床材1の端部を介挿した状態になっている。ここにおいて、防水用クッションシート30の幅方向の端面30dを基材2の幅方向の端面と面一としている。これにより、壁面11と防水用クッションシート30との間に湿気が通る隙間がなくなり、壁面11に沿って基材2側からモルタル8a側へ水の浸透、或いは、モルタル8a側から基材2側への水分が浸透がそれぞれ遮断され、壁面11側での防水効果を高めることができる。さらに、隣接する床材1,1間において防水用クッションシート30を隙間なく突き当てるために、一方の床材1の雄実6aよりも下方の端面と面一となるように防水用クッションシート30の端部30c(図30))を切除し、この防水用クッションシート30の切り取った後の端面30aを他方の床材1の雌実6bよりも下方の防水用クッションシート30の端面30bに突き当てるようにしている。これにより、隣接する床材1,1間において防水用クッションシート30,30を隙間なく突き当てることができるようになり、隣接する床材1,1間において、雄実6aと雌実6bとの接合と、防水用クッションシート30の突き当てとで2重に防水ができるようになり、隣接する床材1,1間における防水効果が高められる利点もある。
【0040】
本発明に係る置敷床材及びこれを用いた床施工構造は、オフィスビルの二重床用床材や、マンション用床材、戸建用床材の分野に広範囲に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態の置敷床材の断面図である。
【図2】同上の置敷床材の他例の断面図である。
【図3】同上の置敷床材の下面図である。
【図4】同上の置敷床材の施工状態の断面図である。
【図5】(a)〜(c)は同上の裏面溝の異なる仕様の説明図である。
【図6】(a)は同上の実結合部の結合状態の説明図、(b)は従来の実結合部の結合状態の参考図である。
【図7】本発明の他の実施形態であり、裏面溝の内部空間に軟質樹脂を充填した置敷床材の施工状態の断面図であある
【図8】(a)は同上の軟質樹脂を充填した裏面溝の一例の拡大図、(b)は他例の拡大図である。
【図9】本発明の図7の実施形態に関連する参考図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態であり、裏面溝をまたぐように防水用クッションシートを貼着した床材の断面図である
【図11】図10の施工状態の一例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 置敷床材
2 基材
2a〜2e 合板
2f 裏面
3 化粧板
3a 表面
4 表面溝
5 裏面溝
6 実結合部
7 接着剤
20 軟質樹脂
30 防水用クッションシート
A 長さ方向
B 幅方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、置敷床材及びこれを用いた床施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床下地の上に長手形状の床材を幅方向に並べて、隣接する床材の幅方向の端部に設けた実結合部を互いに実結合した状態で敷き詰めるようにしている。この床材では接着剤を使わないため、省エネ化を図ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、複数の床材を幅方向で実結合する方式では、床材の幅方向の膨張等によって幅方向の反りや段違い、波打ち、カッピング等(以下、「幅反り」と称する。)が発生しやすくなる。そこで、基材の裏面にその長さ方向に沿って裏面溝を深く切り込むことによって、基材の幅反りの発生を防止するようにしている。
【0004】
しかしながら、裏面溝を深く切り込む場合にあっては、化粧板の表面に裏面溝が黒い影のように写って見えてしまう現象(以下、「影写り」と称する。)が現れる。とくに最近は化粧板は薄色調が主流であるため、化粧板を通して影写りが目立ちやすくなり、このため床表面の意匠性が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】実開平5−42484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、簡易な構成で、化粧板の表面に現れる裏面溝による影写りを目立たないようにでき、外観に優れた置敷床材を提供することを課題とし、また、床材の防水性を高めてカビやダニの発生を防止できると共に床材のクッション性の劣化を防止でき、さらに置き敷き作業を簡略化できる置敷床材を提供することを課題とし、また経時での目透きの発生及び突き上げ現象を防止でき、さらに水分や熱による伸縮や幅反りの発生を抑制でき、さらに施工コストを削減でき、さらにリフォームが容易となり、そのうえ施工後の実結合部での耐水性を向上させることができ、結果、省施工化及びコストダウンに加えて、施工品質に優れた床施工構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明にあっては、基材2上に化粧板3が積層されてなる置敷床材において、化粧板3の表面3aにその長さ方向Aに沿って表面溝4を設けると共に、表面溝4と対向する基材2の裏面2f位置に幅反り防止用の裏面溝5を設けてなることを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込むことにより、裏面溝5の黒い影が表面溝4によって打ち消されて、化粧板3の表面3aに現れる裏面溝5の影写りを目立たなくすることができる。
【0008】
また、上記裏面溝5の内部空間に軟質樹脂20を充填してなるのが好ましく、この場合、軟質樹脂20にて裏面溝5の影写りを一層防止でき、また、仮りに床上に水をこぼした場合でも基材2の裏面2fから裏面溝5上部の薄い表層部分2gに水分が浸透するのを軟質樹脂20にて防止でき、水分浸透による置敷床材1全体の反り発生防止に効果的となる。さらに裏面溝5内への軟質樹脂20の充填によって、置敷床材1全体において柔軟性を損なわないようにできて「腰」のある置敷床材1が得られるうえに振動吸収効果、断熱効果、防音機能がそれぞれ向上するようになる。
【0009】
また、上記基材2は複数層の合板2a〜2eからなり、表面側の2層目の合板2bに至るように裏面溝5が裏面2f側から切り込まれているのが好ましく、この場合、表面側の1層目の合板2aを残して裏面溝5が切り込まれることで、基材2を構成する合板2a〜2eのコシが切れた状態となり、幅反り防止効果を高めることができる。
【0010】
また上記基材2の裏面に、裏面溝5を跨ぐようにして防水用クッションシート30を取着するのが好ましく、この場合、裏面溝5の下端側が防水用クッションシート30にて覆われるので、仮りに床材1の上で水をこぼした場合でも、水が基材2の裏面側に達するのを防水用クッションシート30にて遮断でき、これにより基材2の裏面側での湿りによるカビやダニの発生を未然に防止できるものであり、しかも防水用クッションシート30自体が防水性を有するので、そのクッション性が劣化することもなく、長期にわたって床材1の歩行感を良好に保てるようになる。さらに基材2の裏面に予め防水用クッションシート30を貼り合わせることで、施工時に防水用クッションシート30を床下地8に対して動かないように固定する必要がなく、敷設作業をより簡略化できるものである。
【0011】
また本発明に係る床施工構造にあっては、上記置敷床材1の長さ方向Aと直交する幅方向Bの端部に実結合部6を設け、置敷床材1を床下地8に対してフリーな状態で隣接する置敷床材1の実結合部6のみを接着剤7にて互いに接着してなることを特徴としている。
【0012】
このような構成とすることで、化粧板3の表面3a側から見て裏面溝5の影写りが目立たないようにできる置敷床材1を実接着工法することで、置敷床材1の動きを小さくでき、経時での目透きの発生と突き上げ現象を防止できる。また置敷床材1を釘打ちしないため、床下地8の伸縮と置敷床材1の伸縮とが分離され、水分や熱による伸縮や反りの発生を抑制でき、さらに釘打ち施工の場合と比較して施工コストを削減でき、そのうえリフォーム時には置敷床材1を簡単に剥がして、置敷床材1の交換、補修等のリフォームが簡易となる。また施工後に、実結合部6からの水浸入を防止でき、実結合部6での耐水性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る置敷床材は、表面溝と裏面溝とを対向する表裏位置に形成するという簡易な構成で、裏面溝の黒い影が表面溝によって打ち消されて、影が目立ちにくくなり、床表面の意匠性を向上させることができる。
【0014】
また本発明に係る床施工構造は、化粧板の表面に現れる裏面溝の影写りを目立たなくできる置敷床材を実接着工法で連結することにより、経時での目透きの発生及び突き上げ現象を防止でき、さらに水分や熱による伸縮や幅反りの発生を抑制でき、さらに施工コストを削減でき、さらにリフォームが容易となり、そのうえ施工後の実結合部での耐水性を向上させることができ、この結果、省施工化及びコストダウンに加えて、施工品質に優れた床施工構造を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
図1は基材2上に化粧板3が積層された長尺の置敷床材1(以下「床材1」と略称する。)の一例を示している。
【0017】
基材2は、例えば5層(プライ)の合板2a〜2eからなり、例えば、図1のように繊維が長さ方向A(図1の紙面に対して垂直方向)に配列される合板2aを1層目に配した合板仕様、或いは、図4のように繊維が幅方向Bに配列される合板2aを1層目に配した合板仕様とされる。なお、合板2a〜2eの層数は5プライに限らず、例えば7プライ、9プライ等の多数層であってもよい。また図1、図4中の幅寸法Dは例えば303mm、総厚d1は例えば12.0mmとされる。また基材2の材質は合板に限らず、硬質樹脂板とMDF(中密度繊維板)とを積層したMDF複合合板(図示せず)を用いたものであってもよい。
【0018】
化粧板3は、例えば耐荷重性を高めるために、硬質の木質単板で構成されている。化粧板3の表面3aには、その長さ方向Aに沿って表面溝4が設けられている。この表面溝4は化粧板3の幅方向Bに間隔をあけて複数条、設けられている。表面溝4は後述の裏面溝5による影写りを目立たないようにして床表面の意匠性を向上させる働きをする。なお、表面溝4はV字溝に限らず、角溝であってもよい。
【0019】
上記化粧板3の表面溝4と対向する基材2の裏面2f位置には、表面溝4と平行な方向(長さ方向A)に延びる裏面溝5が設けられている。ここでは、図1又は図4に示すように、表面側の1層目の合板2aのみを残すように、裏面溝5が裏面2f側から深溝スリット状に切り込まれている。つまり、表面側の2層目の合板2bに至るように裏面溝5が切り込まれており、これにより基材2を構成する合板2a〜2eのコシが切れた状態(合板2a〜2e全体が裏面溝5に沿って手で若干動くことができる程度の状態)となり、幅反りを有効に防止できるようになっている。ここでは裏面溝5の深さd2は例えば9.3mm、溝幅は例えば1.6〜1.8mm程度とされる。また図3に示す例では、裏面溝5の長さ方向A両端部の残し幅d3は例えば30〜50mmとされる。
【0020】
なお、裏面溝5の深さは図1、図4の例に限らず、表面側の2層目(或いは3層目以上)までの合板2bを残すようにして、裏面溝5を切り込むようにしてもよい。また、裏面溝5の長さ方向Aの寸法は、化粧板3の長さ方向A全長にわたって付与される通し溝からなる切りっ放し仕様(図5(a))以外に、長さ方向A両端部のみを残す仕様(図3、図5(b))、さらに長さ方向A両端部と中央部とをそれぞれ残す仕様(図5(c))から選ばれる。ここで図5(a)〜(c)において、裏面溝5の溝ピッチPは例えば75.5mm〜101mmに設定される。また、図5(b)(c)において、両端部の残し寸法及び中央部の残し幅d3、d3´は、例えば200〜300mmとする。なお裏面溝5の溝ピッチPは表面溝4の溝ピッチと等しく設定されるが、裏面溝5の溝幅、溝深さ、及び断面形状は適宜設計変更自在である。
【0021】
上記基材2の長さ方向Aの両端部は面取り加工が施され、長さ方向Aと直交する幅方向Bの両端部は本実加工が施されている。本例では、合板2b、2cの幅方向Bの一端部に雄実6aが突設され、他端部に雌実6bが凹設されている。
【0022】
しかして、本発明の床材1によれば、表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込んでいるので、裏面溝5の黒い影が表面溝4によって打ち消されて、化粧板3の表面3aに現れる裏面溝5の影写りを目立たないようにすることができる。しかも、裏面溝5の方向は長さ方向A(木目方向)と同じであるため、影写りが一層目立ちにくくなり、この結果、表面溝4と裏面溝5とを対向する表裏位置に形成するという簡易な構成で、床表面の意匠性を向上させることができる。しかも裏面溝5によって床材1に屈曲性を持たせることができるので、床下地8に不陸があっても十分に対応できるようになる。
【0023】
図2は上記構成の床材1を施工した状態の一例を示している。図2中の床下地8は例えば、モルタル、コンクリート、捨張などからなる。図中の10は幅木、11は壁である。図2の例では、床下地8に対してフリーな状態で隣接する床材1の雄実6aと雌実6bとを接着剤7にて互いに接着している。しかし実結合部6の接着のみでは、カッピングや床鳴り等が発生しやすいため、床下地8と床材1との間に、緩衝シート9を挿入している。緩衝シート9は、例えば、音や水分の吸収を防止するPE、ウレタン等のクッション性のある材料で形成されている。緩衝シート9は例えば、1.0mm〜3.0mm厚とされ、クッション性を持つことで、床下地8と床材1との間に床下地8の不陸形状に応じた隙間が生じなくなり、歩行時の感触が良くなり、足が疲れない床構造となる。また本例の緩衝シート9は、床材1の裏面2fに対して接着されていない。つまり床材1の裏面溝5が緩衝シート9で密閉状態で接着されると裏面溝5の内部空間が密閉空間となり、歩行時に密閉空間において床鳴りが生じるという問題があるため、本例では床材1と緩衝シート9とはフリーな状態とされる。
【0024】
なお、施工時に床材1の長さ方向Aに反りが発生した場合は、実結合部6を接着した後で仮釘を実結合部6に打ち込んで固定する。このように仮釘固定することにより、平滑性を出して接着剤7を硬化させることができる。従って、接着剤硬化後に仮釘を抜いてもそのままの平滑状態を保持できるようになる。
【0025】
本例の実結合部6の一例を図6(a)に示し、従来の実結合部6´を図6(b)に示す。従来では図6(b)のように、目透きをなくすために雄実6a上面と雌実6b上面との間に角度θ´(例えば、2°〜3°)をつけているため、雄実6a上面と雌実6b上面の接着面積が小さくなり、接着保持力が低くなるという問題があり、また雄実6aと雌実6bとの隙間d6(例えば、0.1〜0.2mm)が小さいため、嵌合がきつくなる問題があり、さらに雄実6a下面と雌実6b下面間の隙間d4(例えば、0.5〜0.7mm)が大きいために接着剤7が漏れやすいという問題がある。これに対して本例の実結合部6では、図6(a)のように雄実6a上面と雌実6b上面とを突き当て可能となるように、雄実6a下面と雌実6b下面とをそれぞれ切削すると共に、雄実6aと雌実6b間の隙間d7を例えば、0.2〜0.3mmまで大きくしている。これにより、雄実6a上面と雌実6b上面との角度θが0°となり、目透きをなくすことができると共に、接触面積を大きくでき、これにより接着保持力をアップさせて床材1の伸縮を小さくできるようになる。また、雄実6aと雌実6b間の隙間d7(例えば、0.2〜0.3mm)が従来より大きくなるため、接着剤7を多めに充填でき、嵌合がきつくならないようにできる。さらに、雄実6a下面と雌実6b下面との隙間d5(例えば0〜0.5mm、好ましくは0〜0.2mm)を従来より小さくできるため、接着剤7が漏れにくくなり、従って、接着剤7が漏れてブリッジができ床鳴りが発生するという問題をなくすことができる。
【0026】
なお、上記接着剤7としては、硬化すると固い性質を表す接着材料、例えば変成アクリルエマルジョン系接着剤などが用いられ、これは変成酢酸ビニルにより耐水性をアップさせることができる性質がある。もちろんこれは一例であり、他の硬質接着材料であってもよい。また実結合部6の強度アップを図る観点から軟質の接着剤は不適である。なお接着剤7の塗布量は特に問わないが、例えば、g/30cm(長手、短手とも)を目安とする。
【0027】
しかして、床材1は実結合部6の接着のみで連結され、釘無し施工を採用することで、床下地8の伸縮と床材1の伸縮とが分離され、水分や熱による伸縮や幅反りの発生を抑制できると共に、釘打ち施工の場合と比較して約1/3強の施工コストを削減できる。また、床材1は床下地8に対して接着されないため、省施工化を実現すると共に、リフォーム時には床材1を簡単に剥がして、床材1の交換、補修等のリフォームが簡易となる。
【0028】
また、実接着工法によって基材2の実接着工法により床材1の動きを小さくでき、経時での目透きの発生と突き上げ現象とを防止できる。さらに施工後に、実結合部6からの水浸入を防止でき、実結合部6での耐水性を向上させることができる。結果、省施工化及びコストダウンに加えて、施工品質の向上が図られる。
【0029】
図7、図8は本発明の他の実施形態であり、裏面溝5の内部空間に軟質樹脂20を充填してある。他の構成は前記図1〜図6の実施形態と同様であり、対応する箇所には同一符号を付しておく。なお図8(a)は裏面溝5を表面から1層目まで深く切り込んだ場合を示し、図8(b)は表面から2層目まで切り込んだ場合を示している。本例では、裏面溝5の深さ約1/4から約1/2程度まで、軟質樹脂20を充填させてある。軟質樹脂20の例として、ゴム系樹脂、SBR(スチレン/ブタジエン共重合体)樹脂等が挙げられる。SBR樹脂の一例として変形スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが使用される。
【0030】
しかして、本例では前記実施形態のように表面溝4の真下位置に限定して裏面溝5を切り込むことで、裏面溝5の黒い影が表面溝4によって打ち消されて、化粧板3の表面3aに現れる裏面溝5の影写りを目立たないようにでき、そのうえ裏面溝5の内側上部に軟質樹脂20を充填したことによって、裏面溝5の影写りを、一層、防止できる効果が得られる。
【0031】
なお、図9(参考図)に示すように、裏面溝5を表面溝4とは対向しない裏面位置に設けることも可能であるが、影写りを十分に抑制するためには、図7のように軟質樹脂20を充填した裏面溝5を表面溝4と対向した裏面2f位置に設けるのが望ましい。
【0032】
さらに、本例では裏面溝5の内側上部に軟質樹脂20を充填しているので、基材2の裏面2fから裏面溝5上部の薄い表層部分2gに水分が浸透することがなくなる。つまり、実結合により複数の床材1が一体連結されている場合でも、仮りに床上に水をこぼした場合は、実結合部分から浸入した水が基材2の防水処理を施していない側端面或いは裏面2fから裏面溝5に回り込み、裏面溝5内を伝って裏面溝5上部の表層部分2gに浸透しやすくなる。このため、裏面溝5上部の薄い表層部分2g(とくに水分が浸透している部分)の強度が弱く、その部分に力が集中すると、その部分が膨張、収縮する結果、床材1の反りが発生する原因となる。そこで、本発明では裏面溝5の内側上部に軟質樹脂20を隙間なく充填させているので、裏面溝5上部の薄い表層部分2gへの水分の浸透を軟質樹脂20によって確実に防止でき、結果、軟質樹脂20は、影写りを抑制する機能と、基材2の裏面2fから裏面溝5上部の表層部分2gへの水分の浸透を抑制する機能とを兼ね備えたものとなり、結果、床材1の表面の外観性を向上させる効果と、裏面溝5上部の表層部分2gの伸縮を抑制して床材1全体の反りを防止する効果とがそれぞれ得られる。
【0033】
そのうえ、軟質樹脂20の弾性力によって床材1の変形に追随できるので、床材1全体において柔軟性を損なわないようにできて「腰」のある床材1が得られる利点が得られると同時に、裏面溝5において振動吸収効果、断熱効果、防音機能をそれぞれ向上させることができる利点もある。
【0034】
ところで、マンション等において和室を洋間に模様替えをする場合は、床材1の水平出しや補強等の目的で、床上にモルタル8aを塗り、一定時間(例えば、1〜2時間程度)経過して乾燥固化するまで待ち、その後、モルタル8a表面に床材1を敷くようにしている。ところが、モルタル8aが未乾燥のままで床材1を敷いてしまうと、モルタル8a中に含まれる水分が床材1を湿らせてしまい、床材1自体の耐久性を劣化させるだけでなく、カビやダニが発生するという問題が生じる。
【0035】
そこで、本発明の他の実施形態として、図10、図11に示すように、基材2の裏面に、裏面溝5を跨ぐようにして防水用クッションシート30を取着した床材1を使用する。なお、表面溝4の真下位置に裏面溝5を切り込んだ構成、隣り合う基材2間を実結合し且つ接着する点などに関しては前記実施形態と同様であり、対応する部分には同一符号を付して詳しい説明を省略する。本例の防水用クッションシート30は、クッション性と防水性とを保有するものであり、基材2の裏面全体に亘って取着されている。なお、裏面全体ではなく、各裏面溝5に各々またがるようにしながら部分的に取着するものであってもよい。防水用クッションシート30の厚みは例えば、1.0mm〜3.0mmとし、接着剤で基材2の裏面に貼り合わせてある。なお、基材2として厚みが9.0mm〜15mm程度のものが使用されるが、勿論この厚みに限定されるものではない。
【0036】
しかして、基材2の裏面側に、各裏面溝5を跨ぐようにして防水用クッションシート30を貼り合わせたので、各裏面溝5の下端側がそれぞれ防水用クッションシート30にて覆われるので、仮りに床材1の上で水をこぼした場合でも、水が基材2の裏面側に達するのを防水用クッションシート30にて遮断でき、これにより基材2の裏面側での湿りによるカビやダニの発生を未然に防止できるものとなり、しかも防水用クッションシート30自体が防水性を有するので、クッション性の劣化もなく、長期にわたって床材1の歩行感を良好に保てるようになる。また、モルタル8aが未乾燥の場合に、モルタル8aの水分を防水用クッションシート30にて遮断できるので、基材2自体の耐久性の劣化を防止できると共に、カビやダニの発生防止に一層効果的となり、そのうえ、施工時にモルタル8aが十分に乾くまで待つ必要もないので、施工期間を大幅に短縮できるようになる。
【0037】
しかも、本例では基材2の裏面に予め防水用クッションシート30を貼り合わせて一体化しているので、施工時に防水用クッションシート30をモルタル8a表面に対して動かないように固定する必要がなく、敷設作業を簡略化できる利点もある。
【0038】
ちなみに、基材2の裏面に防水性のないクッション材を貼着した場合、湿気や水が浸透しやすくなり、床にカビやダニが発生する不具合や、湿気によってクッション性が低下するといった不具合が生じる。また、防水性のないクッション材の下にさらに防水カバーを敷くことも考えられるが、この場合、防水カバーを敷く煩わしさがある。これに対して本例では上記のような不具合はない。
【0039】
さらに本例では、図11のように、壁面11の下端部に幅木10が取り付けられ、幅木10の下端部とモルタル8a表面との間に床材1の端部を介挿した状態になっている。ここにおいて、防水用クッションシート30の幅方向の端面30dを基材2の幅方向の端面と面一としている。これにより、壁面11と防水用クッションシート30との間に湿気が通る隙間がなくなり、壁面11に沿って基材2側からモルタル8a側へ水の浸透、或いは、モルタル8a側から基材2側への水分が浸透がそれぞれ遮断され、壁面11側での防水効果を高めることができる。さらに、隣接する床材1,1間において防水用クッションシート30を隙間なく突き当てるために、一方の床材1の雄実6aよりも下方の端面と面一となるように防水用クッションシート30の端部30c(図30))を切除し、この防水用クッションシート30の切り取った後の端面30aを他方の床材1の雌実6bよりも下方の防水用クッションシート30の端面30bに突き当てるようにしている。これにより、隣接する床材1,1間において防水用クッションシート30,30を隙間なく突き当てることができるようになり、隣接する床材1,1間において、雄実6aと雌実6bとの接合と、防水用クッションシート30の突き当てとで2重に防水ができるようになり、隣接する床材1,1間における防水効果が高められる利点もある。
【0040】
本発明に係る置敷床材及びこれを用いた床施工構造は、オフィスビルの二重床用床材や、マンション用床材、戸建用床材の分野に広範囲に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態の置敷床材の断面図である。
【図2】同上の置敷床材の他例の断面図である。
【図3】同上の置敷床材の下面図である。
【図4】同上の置敷床材の施工状態の断面図である。
【図5】(a)〜(c)は同上の裏面溝の異なる仕様の説明図である。
【図6】(a)は同上の実結合部の結合状態の説明図、(b)は従来の実結合部の結合状態の参考図である。
【図7】本発明の他の実施形態であり、裏面溝の内部空間に軟質樹脂を充填した置敷床材の施工状態の断面図であある
【図8】(a)は同上の軟質樹脂を充填した裏面溝の一例の拡大図、(b)は他例の拡大図である。
【図9】本発明の図7の実施形態に関連する参考図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態であり、裏面溝をまたぐように防水用クッションシートを貼着した床材の断面図である
【図11】図10の施工状態の一例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 置敷床材
2 基材
2a〜2e 合板
2f 裏面
3 化粧板
3a 表面
4 表面溝
5 裏面溝
6 実結合部
7 接着剤
20 軟質樹脂
30 防水用クッションシート
A 長さ方向
B 幅方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に化粧板が積層されてなる置敷床材において、化粧板の表面にその長さ方向に沿って表面溝を設けると共に、表面溝と対向する基材の裏面位置に幅反り防止用の裏面溝を設けてなることを特徴とする置敷床材。
【請求項2】
上記裏面溝の内部空間に軟質樹脂を充填してなることを特徴とする請求項1記載の置敷床材。
【請求項3】
上記基材は複数層の合板からなり、表面側の2層目の合板に至るように裏面溝が裏面側から切り込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の置敷床材。
【請求項4】
上記基材の裏面に、裏面溝を跨ぐようにして防水用クッションシートを取着したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の置敷床材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の置敷床材の長さ方向と直交する幅方向の端部に実結合部を設け、置敷床材を床下地に対してフリーに置き敷きした状態で、隣接する置敷床材の実結合部のみを接着剤にて互いに接着してなることを特徴とする床施工構造。
【請求項1】
基材上に化粧板が積層されてなる置敷床材において、化粧板の表面にその長さ方向に沿って表面溝を設けると共に、表面溝と対向する基材の裏面位置に幅反り防止用の裏面溝を設けてなることを特徴とする置敷床材。
【請求項2】
上記裏面溝の内部空間に軟質樹脂を充填してなることを特徴とする請求項1記載の置敷床材。
【請求項3】
上記基材は複数層の合板からなり、表面側の2層目の合板に至るように裏面溝が裏面側から切り込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の置敷床材。
【請求項4】
上記基材の裏面に、裏面溝を跨ぐようにして防水用クッションシートを取着したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の置敷床材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の置敷床材の長さ方向と直交する幅方向の端部に実結合部を設け、置敷床材を床下地に対してフリーに置き敷きした状態で、隣接する置敷床材の実結合部のみを接着剤にて互いに接着してなることを特徴とする床施工構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−118337(P2006−118337A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18690(P2005−18690)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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