説明

群衆監視装置および方法ならびにプログラム

【課題】精度良く異常領域を検出する。
【解決手段】監視領域WR内からベクトル発生領域BGRの検出が行われ、検出されたベクトル発生領域BGRにおいて基準領域Rrefの設定および複数の注目領域ARの生成が行われる。このとき、監視領域WRの中から人物の密集度が設定しきい値未満である領域が基準領域Rrefとして設定される。その後、基準領域Rrefを用いて異常のある注目領域ARが検出される。その後、検出した異常領域EARについての情報が画面上に出力され、もしくはカメラ制御手段50により監視カメラ2が異常領域をズーミングして撮影する等が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ等を用いて撮影した画像に基づいて群衆の状態を監視する群衆監視装置および方法ならびにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像のパターン認識技術の発達により画像に映し出された人物の顔を自動的に識別しもしくは人物と背景とを自動的に識別する技術が開発されている。このうち、監視カメラ等により撮影された画像に基づいて群衆を監視し、群衆の異常を検出することが提案されている(たとえば特許文献1、2参照)。特許文献1には、フレーム画像の差分に基づいてオプティカルフロー(動きベクトル)を求め、2以上の対象領域におけるオプティカルフローの平均値を比較し、比較結果に基づいて状態指標を算出することが開示されている。また、特許文献2には、画像内の人物の密集度を算出し、算出した人物の密集度をデータベース内に記憶した基準密集度と比較し、比較結果に基づいて異常の判断を行うことが開示されている。
【0003】
また、特許文献3には、画像から人物が異常な動作をしているか否かを判別するために、画像を複数の領域に分割し、分割した各領域から特徴量を抽出し、抽出した特徴量をベクトル成分とする特徴ベクトルと学習済みの判別器とを用いて異常が発生したか否かを判断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−99241号公報
【特許文献2】国際公開第2005/039181号パンフレット
【特許文献3】特開2008−269063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、任意の2以上の領域を選択した場合、いずれも異常が生じている場合には異常が検出できないとともに、いずれの領域が異常であるか識別することができず、異常検出の精度が悪いという問題がある。また、特許文献2、3のように、基準密集度を予め設定する場合、判断対象である群衆に最適な基準領域でない場合が生じ、結果として異常検出の精度が落ちる場合があるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、群衆の監視を行う際に異常の検出精度を向上させることができる群衆監視装置および方法ならびにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の群衆監視装置は、画像内の監視領域において群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域を検出する領域検出手段と、領域検出手段により検出されたベクトル発生領域のうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として設定する基準領域設定手段と、監視領域を複数の領域に分割して注目領域を生成する注目領域生成手段と、基準領域設定手段において設定された基準領域に基づいて各注目領域が異常のある異常領域であるかを検出する異常検出手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の群衆監視方法は、画像内の監視領域において群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域を検出し、検出したベクトル発生領域のうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として設定するとともに、監視領域を複数の領域に分割して注目領域を生成し、設定した基準領域に基づいて各注目領域が異常のある異常領域であるかを検出することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の群衆監視プログラムは、画像内の監視領域において群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域を検出し、検出したベクトル発生領域のうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として設定するとともに、監視領域を複数の領域に分割して注目領域を生成し、設定した基準領域に基づいて各注目領域が異常のある異常領域であるかを検出することを実行させること特徴とするものである。
【0010】
ここで、基準領域設定手段は、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を選択するものであればその方法を問わず、たとえばベクトル発生領域から人物の頭部を検出する頭部検出手段と、頭部検出手段において検出された頭部の単位面積当たりの頭部密度を算出する密度算出手段と、密度算出手段において算出された頭部密度が設定しきい値未満の領域を用いて基準領域を選択する領域選択手段とを備えたものであってもよい。
【0011】
このとき、基準領域設定手段は、頭部密度が設定しきい値未満の領域内に終点を有する動きベクトルを抽出し、抽出した動きベクトルの始点となる領域を基準領域として選択するものであってもよい。
【0012】
あるいは、基準領域設定手段は、画像内に群衆もしくは移動体が入り込み始めた際の領域およびその周辺から人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として選択するものであってもよい。
【0013】
さらには、基準領域設定手段は、監視領域の境界部分における動きベクトルが発生し始めた領域であって、始点が該監視領域外にあり終点が監視領域内にある動きベクトルの終点を集計した領域を基準領域として設定するものであってもよい。
【0014】
また、異常検出手段は、基準領域に基づいて注目領域が異常領域であるか否かを検出するものであればその方法を問わず、たとえば各注目領域内の人物の密度を算出し、算出した注目領域の人物の密集度が基準領域内の人物の密集度以上であるか否かを判断するものであってもよい。
【0015】
このとき、異常検出手段は、注目領域から人物の密度を算出するものであればその方法を問わず、たとえば各注目領域から頭部を検出する頭部検出手段と、頭部検出手段による頭部の検出後に注目領域のサイズを縮小する画像縮小手段と、画像縮小手段により縮小された画像に基づいて人物の密集度を算出する密度算出手段とを備えたものであってもよい。
【0016】
あるいは、異常検出手段は、基準領域および各注目領域から特徴量を抽出し、抽出した特徴量を用いて異常領域を検出するものであってもよいし、基準領域および各注目領域から動きベクトルを抽出し、抽出した動きベクトルを用いて異常領域を検出するものであってもよい。
【0017】
さらに、基準領域および注目領域について複数の多重解像度画像を生成する多重解像度変換手段をさらに有するものであってもよい。このとき、異常検出手段は、多重解像度変換手段により変換された複数の多重解像度画像毎に異常領域候補を検出し、多重解像度画像毎に検出した異常領域候補を用いて異常領域を検出することになる。
【0018】
なお、群衆監視装置は、異常検出手段により検出された異常領域に対しカメラがズームアップ撮影を行うようにカメラを制御するカメラ制御手段をさらに備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の群衆監視装置および方法ならびにプログラムによれば、画像内の監視領域において群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域を検出し、検出したベクトル発生領域のうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として設定するとともに、監視領域を複数の領域に分割して注目領域を生成し、設定した基準領域に基づいて各注目領域が異常のある異常領域であるかを検出することにより、群衆の中でも人物の移動に制限が少ない人物密集度が少ない領域を基準領域として設定し、基準領域に基づいて異常領域を検出することができるため、精度の高い異常検出を行うことができる。
【0020】
なお、基準領域設定手段が、ベクトル発生領域から人物の頭部を検出する頭部検出手段と、頭部検出手段において検出された頭部の単位面積当たりの頭部密度を算出する密度算出手段と、密度算出手段において算出された頭部密度が設定しきい値未満の領域を用いて基準領域を選択する領域選択手段とを備えたものであるとき、自動検出を行いやすい頭部に基づいて人物の密度を検出することができるため、精度良く異常検出を行うことができる。
【0021】
また、基準領域設定手段が、頭部密度が設定しきい値未満の領域内に終点を有する動きベクトルを抽出し、抽出した動きベクトルの始点となる領域を基準領域として選択するものであれば、異常が発生している可能性が少ない領域を基準領域として設定することができるため、異常領域の検出精度を高めることができる。
【0022】
また、異常検出手段が、各注目領域内の人物の密度を算出し、算出した注目領域の人物の密集度が基準領域内の人物の密集度以上であるか否かを判断するものであれば、人物の密集度が極めて高い領域を異常をして検出することができる。
【0023】
さらに、異常検出手段が、各注目領域から頭部を検出する頭部検出手段と、頭部検出手段による頭部の検出後に注目領域のサイズを縮小する画像縮小手段と、画像縮小手段により縮小された画像に基づいて人物の密集度を算出する密度算出手段とを備えたものであるとき、データ量の少ない縮小した画像を用いて効率的に密度の算出を行い異常検出速度を向上させることができる。
【0024】
さらに、異常検出手段が、基準領域および各注目領域から動きベクトルを抽出し、抽出した動きベクトルを用いて異常領域を検出するものであるとき、たとえば群衆の中において周囲とは異なる動きをする集団等を察知し異常として検出することができる。
【0025】
また、基準領域および注目領域について複数の多重解像度画像を生成する多重解像度変換手段をさらに有するものであり、異常検出手段が、多重解像度変換手段により変換された複数の多重解像度画像毎に異常領域候補を検出し、多重解像度画像毎に検出した異常領域候補を用いて異常領域を検出するものであれば、画像に映り込む群衆の様々なサイズに対応した異常検出を行うことができる。
【0026】
さらに、異常検出手段により検出された異常領域に対しカメラがズームアップ撮影を行うようにカメラを制御するカメラ制御手段をさらに備えたものであるとき、異常領域の状況をよりよく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の群衆監視装置の好ましい実施形態を示すブロック図
【図2】監視カメラ2により撮影され取得された画像の一例を示す模式図
【図3】図1の基準領域設定手段において基準領域が設定される様子を示す模式図
【図4】図1の基準領域設定手段において基準領域が設定される別の一例を示す模式図
【図5】図1の基準領域設定手段において基準領域が設定される別の一例を示す模式図
【図6】図1の基準領域設定手段において基準領域が設定される別の一例を示す模式図
【図7】図1の注目領域生成手段において注目領域が生成される様子を示す模式図
【図8】本発明の群衆監視方法の好ましい実施形態を示すフローチャート
【図9】本発明の群衆監視装置の第2の実施形態を示すブロック図
【図10】図9の異常検出手段において注目領域が縮小される様子を示す模式図
【図11】本発明の群衆監視装置の第3の実施形態を示すブロック図
【図12】図11の多重解像度変換手段により生成された多重解像度画像に基づいて異常検出が行われる様子を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の群衆監視装置の好ましい実施形態を示すブロック図である。なお、図1のような群衆監視装置1の構成は、補助記憶装置に読み込まれた群衆監視プログラムをコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。また、この群衆監視プログラムは、CD−ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされることになる。
【0029】
図1の群衆監視装置1は、たとえば監視カメラ2により群衆を撮影した複数のフレーム画像FPからなる動画像の監視領域WRについて群衆の異常を検出するものであって、領域検出手段10、基準領域設定手段20、注目領域生成手段30、異常検出手段40、カメラ制御手段50を備えている。なお、監視領域WRは、図2に示すように、たとえば予め画像中央部分に設定されたものであってもよいし、画像全体を監視領域WRとして設定してもよい。
【0030】
領域検出手段10は、監視領域WR内において人の密度変化もしくは移動速度の変化が生じている領域を検出するものである。具体的には、領域検出手段10は、監視カメラ2により取得された動画像について、背景画像BPとフレーム画像FPの差分を算出することにより、動きベクトルが発生しているベクトル発生領域BGRを検出する。なお、背景画像BPは予め設定されたものであってもよいし、下記式(1)に示すように、重み付け係数αを用いて時間経過とともに更新するものであってもよい。
BP(t)=α・BP(t)+(1−α)・BP(t−1) ・・・(1)
【0031】
図1の基準領域設定手段20は、領域検出手段10により検出されたベクトル発生領域BGRのうち、人物の密集度が設定しきい値未満である疎領域を基準領域Rrefとして設定するものである。具体的には、基準領域設定手段20は、ベクトル発生領域BGRにおいて、人物の頭部を用いて人物の密度を算出するものであって、頭部検出手段21、密度算出手段22、領域選択手段23を有している。頭部検出手段21は、ベクトル発生領域BGRから人物の頭部を検出するものであって、頭部を検出する方法としてパターンマッチングやニューラルネットワークによる画像認識等の公知の技術を用いることができる。
【0032】
密度算出手段22は、頭部検出手段21において検出された頭部の単位面積当たりの頭部密度を算出するものである。具体的には、図3に示すように、密度算出手段22は、ベクトル発生領域BGRを複数のブロック領域BR毎に分割し、頭部検出手段21により検出された頭部の数をブロック領域BR毎に計測する。そして、密度算出手段22はブロック領域BR当たりの頭部の数を密度として算出する。
【0033】
領域選択手段23は、密度算出手段22において算出された頭部密度が設定しきい値未満の領域を用いて基準領域Rrefを選択するものである。このとき、領域選択手段23は、頭部密度が設定しきい値未満の領域を基準領域Rrefとして設定してもよいし、頭部密度が設定しきい値未満の領域Rref1と当該領域内の動きベクトルとに基づいて基準領域Rrefを設定するようにしてもよい。
【0034】
すなわち、領域選択手段23は、監視領域WR内に群衆が入り始めた領域を基準領域Rrefとして設定する。具体的には、図4に示すように、領域選択手段23は、頭部密度が設定しきい値未満の領域R内に終点を有する動きベクトルを抽出する。さらに、領域選択手段23は、検出した動きベクトルのうち監視領域外に始点を有する動きベクトルを検出し、始点が監視領域外であって終点が監視領域内にある動きベクトルの終点画素を集計する。その後、モフォロジー処理により領域を整形したものを基準領域Rrefとして選択する。
【0035】
図1、図3および図4において、頭部の検出結果に基づいて基準領域Rrefを検出する場合について例示しているが、動きベクトルの密度に基づいて基準領域Rrefを設定するようにしてもよい。具体的には、基準領域設定手段20は、図5に示すように、ベクトル発生領域BGRの中から動きベクトルが密な領域と疎の領域とを抽出する。そして、基準領域設定手段20は、密な領域と疎の領域とに対し2値化処理をし、クロージング処理(白黒画像に対する膨張処理および収縮処理の繰り返し) により小さな疎領域を除去した後に輝度反転処理を行うことにより、疎の領域を基準領域Rrefとして設定する。
【0036】
さらに、基準領域設定手段20は、監視領域WR内において動きベクトルが発生し始めた領域を基準領域Rrefとして設定するものであってもよい。すなわち、図6に示すように、基準領域設定手段20は、監視領域WRの境界部分の動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルのうち、動きベクトルの始点が監視領域WR外であって終点が監視領域内にある動きベクトルを抽出し、その終点画素を集めた領域を基準領域Rrefとして設定するようにしてもよい。監視領域WR内へ群衆が侵入し始めた領域を基準領域Rrefとして設定することにより、群衆の先頭は人物の密集度が小さいとともに前に障害物がなく正常な動きをするため、異常を検出する際の基準として最適な基準領域Rrefを設定することができる。
【0037】
図1の注目領域生成手段30は、監視領域WRを複数の領域に分割して注目領域ARを生成するものである。具体的には、図7に示すように、注目領域生成手段30はn×n画素からなる切取枠を監視領域WRの範囲内でラスタスキャンすることにより複数の注目領域ARを生成する。
【0038】
図1の異常検出手段40は、基準領域設定手段20において設定された基準領域Rrefと各注目領域ARとそれぞれ比較することにより異常のある異常領域を検出するものである。ここで、異常検出方法として種々の方法を採用することができる。なお、異常検出手段40は、注目領域ARと基準領域Rrefとを比較する際に、ガウシアンフィルタ等を用いて、空間的および時間的にスムージング処理を行なった後に、以下に示す異常検出を行うようにしてもよい。
【0039】
異常検出手段40は基準領域Rrefおよび注目領域ARの人物の密度を用いて異常領域EARを検出する。すなわち、異常検出手段40は、注目領域ARについて上述の頭部検出手段21と同様に頭部を検出し、注目領域AR内の頭部の密度を算出する。そして、異常検出手段40は、注目領域ARの頭部密度が基準領域Rrefの頭部密度以上であるとき、その注目領域ARは異常領域EARであると判断する。これにより、密集度が極めて高い状態である場合等の異常状態を検出することができる。
【0040】
あるいは、異常検出手段40は基準領域Rrefおよび注目領域ARに存在する動きベクトル(オプティカルフロー)に基づいて異常領域EARを検出するようにしてもよい。具体的には、異常検出手段40は、注目領域ARおよび基準領域Rrefの動きベクトルの平均値を算出する。そして、異常検出手段40は注目領域ARと基準領域Rrefとの動きベクトルの平均値の差分が設定しきい値以上である場合には注目領域ARに異常があると判断し、設定しきい値未満であれば注目領域ARに異常はないと判断する。これにより、群衆の一部が急に立ち止まるもしくは急に走り出すといった危険を生じやすい異常状態を検出することができる。
【0041】
さらには、異常検出手段40は注目領域ARおよび基準領域Rrefから特徴量を抽出し、抽出した特徴量の差分が設定しきい値以上であるか否かを判断することにより、異常を検出するものであってもよい。具体的には、基準領域Rrefおよび注目領域ARについてそれぞれフレーム間差分を行い、動き量の変化、エッジ量の変化、色の変化を特徴量として抽出する。そして、異常検出手段40は、基準領域Rrefの特徴量と注目領域ARの特徴量の差分が設定しきい値以上であるか否かを判断することにより異常の検出を行う。特に、上述した動き量の変化に対し所定のCosθだけ重み付けをした後に異常を検出するようにしてもよい(図2参照)。これにより、群衆の移動方向に合わせて上下方向の動き変化には敏感に左右方向の動き変化には鈍感になるとともに、動き量が群衆の進む方向とは反対であるときには符号が逆になるため、2つの領域の動き量の差分が大きくなり、より精度良く異常検出を行うことができる。
【0042】
なお、異常検出手段40は、上記異常検出手法のうちいずれか1つを用いてもよいし複数の手法を用いてもよい。たとえば、異常検出手段40が頭部密度による異常検出と動きベクトルによる異常検出とを行うことにより、密集度が極めて高い場合および周囲とは異なる動きする人物がいる場合の双方の異常を検出することができる。
【0043】
図1のカメラ制御手段50は、異常検出手段40における検出結果に基づいて監視カメラ2の動作を制御する機能を有している。たとえば異常検出手段40において異常領域EARが検出されたとき、カメラ制御手段50は異常領域EARをズームアップして撮影する機能を有している。なお、カメラ制御手段50は、基準領域設定時においてはレンズをズームして頭部サイズを求め、異常検出時においては視野を広げるように監視カメラ2を制御してもよい。
【0044】
図8は本発明の群衆監視方法の好ましい実施形態を示すフローチャートであり、図1から図8を参照して群衆監視方法について説明する。まず、監視カメラ2により群衆を撮影した動画像Pが取得された際、領域検出手段10においてベクトル発生領域BGRの検出が行われる(ステップST1)。その後、ベクトル発生領域BGRにおいて頭部の検出(ステップST2−1)、密度の算出(ステップST2−2)、基準領域の選択(ステップST2−3)等に基づき、人物の密集度が設定しきい値未満の領域が基準領域Rrefとして設定されるとともに(図2〜図6参照)、複数の注目領域ARが生成される(ステップST3、図7参照)。
【0045】
次に、異常検出手段40において基準領域Rrefを用いて異常のある注目領域ARが検出される(ステップST4)。このとき、上述したように、たとえば基準領域Rrefと注目領域ARとの動きベクトルの平均値の差分が設定しきい値以上であるかを判断することにより異常が検出される。その後、異常検出手段40から検出した異常領域EARについての情報が画面上に出力され、もしくはカメラ制御手段50により監視カメラ2が異常領域をズーミングして撮影する等が行われる(ステップST5)。
【0046】
このように、基準領域Rrefを予め設定するのではなく、フレーム画像FP内から検出することにより、撮影されている群衆に最適な基準領域Rrefに基づいて異常検出を行うことができ、異常の検出精度を向上させることができる。すなわち、たとえばコンサート、スポーツ観戦、駅の改札等の群衆が形成される場所や客層により群衆の特性が異なる。したがって、予め設定された基準領域Rrefでは正確に異常を検出できない場合がある。また、従来のように単に2つの領域を抽出し比較するだけでは、いずれの領域にも異常がある場合には異常が検出できないとともに、2つの領域のうちいずれの領域が異常であるか判断しづらいという問題がある。
【0047】
そこで、群衆内においてある人物とって他の人物は障害物であり、人物が少ない領域にいる人物は周囲の人物に影響されることなく正常な動きをするという知見に基づき、人物が少ない領域を基準領域Rrefとして設定する。これにより、群衆内において正常な動きをしていると見なされる人物の密集度の低い領域を基準領域Rrefとして設定し、基準領域Rrefと注目領域ARとを比較して異常を検出することにより、画像内の群衆の特性に合った異常の検出を精度良く行うことができる。
【0048】
図8は本発明の群衆監視装置の別の実施形態を示すブロック図であり、図8を参照して群衆監視装置100について説明する。なお、図8の群衆監視装置100において図1の群衆監視装置1と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を量略する。図8の群衆監視装置100が図1の群衆監視装置1と異なる点は、人物(頭部)の密度により異常検出を行う際に密度の算出を高速に行う点である。
【0049】
具体的には、異常検出手段140は注目領域ARを縮小した後に密度を算出し異常検出を行う機能を有しており、頭部検出手段141、画像縮小手段142、密度算出手段143、異常判断手段144を備えている。
【0050】
頭部検出手段141は、注目領域AR内から人物の頭部を検出するものであり、上述した頭部検出手段21と同様の手法により頭部を検出する。画像縮小手段142は、頭部検出手段141により検出された頭部のサイズが1〜数画素の設定画素サイズになるように注目領域ARを縮小するものである。密度算出手段143は、縮小された縮小注目領域ARから頭部の密度を算出する。異常判断手段144は、縮小注目領域ARの密度と基準領域Rrefの密度とをから注目領域ARの異常を検出するものである。
【0051】
このように、頭部検出を実行し頭部サイズを求めた後に画像解像度を頭部サイズが1〜数画素になるまで縮小して実行後に異常検出を行うことにより、密度の算出および異常検出を行う際にたとえば注目領域ARを1/4×1/4にサイズを縮小した際には処理時間を1/16に減らすことができ、処理時間の大幅な高速化を図ることができる。
【0052】
なお、注目領域ARを縮小した後に密度を求める場合について例示しているが、基準領域Rrefの基準密度を算出する際にも頭部を検出後に画像を縮小し頭部の密度を算出するようにしてもよい。
【0053】
図11は本発明の群衆監視装置の別の実施形態を示すブロック図であり、図11を参照して群衆監視装置200について説明する。なお、図11の群衆監視装置200において図1の群衆監視装置1と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図11の群衆監視装置200が図1の群衆監視装置1と異なる点は、複数の解像度画像に基づいて異常を検出する点である。
【0054】
群衆監視装置200は多重解像度変換手段210をさらに有しており、多重解像度変換手段210は、図12に示すように、フレーム画像FPについて解像度の異なる複数の解像度画像を生成する。そして、基準領域設定手段20および注目領域生成手段30は、各解像度画像についてそれぞれ基準領域Rrefの設定および注目領域ARの生成を行う。
【0055】
このとき、異常検出手段240は、解像度画像毎に基準領域Rrefおよび注目領域ARに基づき異常の検出を行う。その後、異常検出手段240は、各解像度画像において検出された複数の異常候補領域を平均化、論理和等により統合し、最終的な異常領域を検出する。このように、複数の解像度画像毎に異常検出を行うことにより、異常領域のサイズ変動への追従性を持たせて精度良く異常領域を検出することができる。
【0056】
上記実施の形態によれば、画像内の監視領域WRにおいて群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域BGRを検出し、検出したベクトル発生領域BGRのうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域Rrefとして設定するとともに、監視領域WRを複数の領域に分割して注目領域ARを生成し、設定した基準領域に基づいて各注目領域が異常のある異常領域EARであるかを検出することにより、人物の移動に制限が少ない人物の密集度が少ない領域を基準領域Rrefとして設定し、基準領域に基づいて異常領域を検出することができるため、精度の高い異常検出を行うことができる。
【0057】
また、図1および図3に示すように、基準領域設定手段20が、ベクトル発生領域から人物の頭部を検出する頭部検出手段21と、頭部検出手段21において検出された頭部の単位面積当たりの頭部密度を算出する密度算出手段22と、密度算出手段22において算出された頭部密度が設定しきい値未満の領域を用いて基準領域Rrefを選択する領域選択手段23とを備えたものであるとき、自動検出を行いやすい頭部に基づいて人物の密度を検出することができるため、精度良く異常検出を行うことができる。
【0058】
また、図4に示すように、基準領域設定手段20が、頭部密度が設定しきい値未満の領域内に終点を有する動きベクトルを抽出し、抽出した動きベクトルの始点となる領域を基準領域Rrefとして選択するものであれば、異常が発生している可能性が少ない領域を基準領域Rrefとして設定することができるため、異常領域EARの検出精度を高めることができる。
【0059】
さらに、異常検出手段40が、各注目領域AR内の人物の密度を算出し、算出した注目領域ARの人物の密集度が基準領域Rref内の人物の密集度以上であるか否かを判断するものであれば、人物の密集度が極めて高い領域を異常をして検出することができる。
【0060】
また、異常検出手段40が、基準領域Rrefおよび各注目領域ARから動きベクトルを抽出し、抽出した動きベクトルを用いて異常領域EARを検出するものであるとき、たとえば群衆の中において周囲とは異なる動きをする集団等を事前に察知し異常として検出することができる。
【0061】
さらに、図9、図10に示すように、異常検出手段140が、各注目領域から頭部を検出する頭部検出手段141と、頭部検出手段141による頭部の検出後に注目領域のサイズを縮小する画像縮小手段142と、画像縮小手段142により縮小された画像に基づいて人物の密集度を算出する密度算出手段143とを備えたものであるとき、データ量の少ない縮小した画像を用いて効率的に密度の算出を行い異常検出速度を向上させることができる。
【0062】
また、図11、図12に示すように、基準領域Rrefおよび注目領域ARについて複数の多重解像度画像を生成する多重解像度変換手段210をさらに有するものであり、異常検出手段240が、多重解像度変換手段210により変換された複数の多重解像度画像毎に異常領域候補を検出し、多重解像度画像毎に検出した異常領域候補を用いて異常領域EARを検出するものであれば、画像に映り込む群衆の様々なサイズに対応した異常検出を行うことができる。
【0063】
さらに、異常検出手段40により検出された異常領域EARに対しカメラがズームアップ撮影を行うようにカメラを制御するカメラ制御手段50をさらに備えたものであるとき、異常領域の状況をよりよく把握することができる。
【0064】
本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されない。たとえば群衆の検出の他に他の領域の特定のオブジェクトの抽出結果も用いて異常検出を行うようにしても良い。たとえば、群衆の進行を止める信号機の色の変化を抽出し、信号機が赤になれば群衆の前の方から停止することに鑑み、異常検出手段40において群衆の動きが止まった場合であっても信号機が赤であることを認識したときには、移動速度変化がマイナスになった場合であっても異常ではないと判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1、100、200 群衆監視装置
2 監視カメラ
10 領域検出手段
20 基準領域設定手段
21 頭部検出手段
22 密度算出手段
23 領域選択手段
30 注目領域生成手段
40、140、240 異常検出手段
50 カメラ制御手段
143 密度算出手段
144 異常判断手段
200 群衆監視装置
210 多重解像度変換手段
AR 注目領域
BGR ベクトル発生領域
EAR 異常領域
FP フレーム画像
P 動画像
Rref 基準領域
WR 監視領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像内の監視領域において群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域を検出する領域検出手段と、
該領域検出手段により検出された前記ベクトル発生領域のうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として設定する基準領域設定手段と、
前記監視領域を複数の領域に分割して注目領域を生成する注目領域生成手段と、
該基準領域設定手段において設定された前記基準領域に基づいて前記各注目領域が異常のある異常領域であるかを検出する異常検出手段と
を備えたことを特徴とする群衆監視装置。
【請求項2】
前記基準領域設定手段が、
前記ベクトル発生領域から人物の頭部を検出する頭部検出手段と、
該頭部検出手段において検出された頭部の単位面積当たりの頭部密度を算出する密度算出手段と、
該密度算出手段において算出された頭部密度が設定しきい値未満の領域を用いて前記基準領域を選択する領域選択手段と
を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の群衆監視装置。
【請求項3】
前記基準領域設定手段が、頭部密度が設定しきい値未満の領域内に終点を有する動きベクトルを抽出し、抽出した前記動きベクトルの始点となる領域を前記基準領域として選択するものであることを特徴とする請求項2記載の群衆監視装置。
【請求項4】
前記基準領域設定手段が、前記監視領域の境界部分における前記動きベクトルが発生し始めた領域であって、始点が該監視領域外にあり終点が該監視領域内にある前記動きベクトルの終点を集計した領域を前記基準領域として設定するものであることを特徴とする請求項1記載の群衆監視装置。
【請求項5】
前記異常検出手段が、前記各注目領域内の人物の密度を算出し、算出した前記注目領域の人物の密集度が前記基準領域内の人物の密集度以上であるか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の群衆監視装置。
【請求項6】
前記異常検出手段が、前記各注目領域から頭部を検出する頭部検出手段と、該頭部検出手段による頭部の検出後に前記注目領域のサイズを縮小する画像縮小手段と、該画像縮小手段により縮小された画像に基づいて人物の密集度を算出する密度算出手段とを備えたものであることを特徴とする請求項5記載の群衆監視装置。
【請求項7】
前記異常検出手段が、前記基準領域および前記各注目領域から特徴量を抽出し、抽出した前記特徴量を用いて前記異常領域を検出するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の群衆監視装置。
【請求項8】
前記異常検出手段が、前記基準領域および前記各注目領域から動きベクトルを抽出し、抽出した前記動きベクトルを用いて前記異常領域を検出するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の群衆監視装置。
【請求項9】
前記基準領域および注目領域について複数の多重解像度画像を生成する多重解像度変換手段をさらに有するものであり、前記異常検出手段が、前記多重解像度変換手段により変換された前記複数の多重解像度画像毎に異常領域候補を検出し、前記多重解像度画像毎に検出した前記異常領域候補を用いて前記異常領域を検出するものであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の群衆監視装置。
【請求項10】
前記異常検出手段により検出された前記異常領域に対しカメラがズームアップ撮影を行うように該カメラを制御するカメラ制御手段をさらに備えたものであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の群衆監視装置。
【請求項11】
画像内の監視領域において群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域を検出し、
検出した前記ベクトル発生領域のうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として設定するとともに、前記監視領域を複数の領域に分割して注目領域を生成し、
設定した前記基準領域に基づいて前記各注目領域が異常のある異常領域であるかを検出する
ことを特徴とする群衆監視方法。
【請求項12】
コンピュータに、
画像内の監視領域において群衆もしくは移動体が存在するベクトル発生領域を検出し、
検出した前記ベクトル発生領域のうち、人物の密集度が設定しきい値未満である領域を基準領域として設定するとともに、前記監視領域を複数の領域に分割して注目領域を生成し、
設定した前記基準領域に基づいて前記各注目領域が異常のある異常領域であるかを検出する
ことを実行させるための群衆監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−76316(P2011−76316A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226250(P2009−226250)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100134245
【弁理士】
【氏名又は名称】本澤 大樹
【Fターム(参考)】