説明

老化防止剤

【課題】 痴呆症等が改善できる老化防止剤の提供。
【解決手段】 アミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩、並びにキノン誘導体若しくはキノンを含有する老化防止剤。アミノ酸は、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、セリン、システィンから選ばれる1種又は2種以上のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性の組織呼吸不全による細胞死と、それに伴う老化症状を防止する老化防止剤、及びそれを用いた液体飲料、食品添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、先にアミノ酸がヒト培養細胞の低酸素環境における細胞死を防止し(非特許文献1)、同時に、細胞内のCoQが増量することから、細胞は酸素利用が困難な状態においては酸素を利用せずにエネルギーを得る、Prop−CoA代謝系を賦活させて生存する方法を見出すものと想定した。
【0003】
またCoQ10は、加齢と共に生合成機能が低下し、各組織における含量が低下するため、CoQ10の投与により、心筋梗塞、再灌流における心筋保護、心筋症患者の心駆駆出率及び生存率の増加、免疫機能の増強、抗酸化作用、血圧低下、疲労回復、寿命の延長、動脈硬化の予防等が報告されている(非特許文献2)。
【非特許文献1】J.Biol.Chem.Vol.277,32791−32798,2002
【非特許文献2】J.Mol.Cardiol.vol.17,873-884,1985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、痴呆症等の老化症状を改善する老化防止剤、それを用いた液体飲料、食品添加剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、課題の解決手段として、アミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩、並びにキノン誘導体若しくはキノンを含有する老化防止剤、及びそれを用いた液体飲料、食品添加剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の老化防止剤は、組織呼吸障害に起因する脳血管型及びアルツハイマー型痴呆の改善効果、老化に伴う心不全、高血圧、動脈硬化等の症状を改善する効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の老化防止剤に含まれるアミノ酸は、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、セリン、システィン及びこれらの薬理学的に許容できる塩から選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。薬理学的に許容できる塩としては、塩酸、硫酸等の無機酸の塩、酢酸、フマル酸等の有機酸の塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩等を挙げることができる。
【0008】
2種以上のアミノ酸を組み合わせて用いるときは、投与された組織細胞ミトコンドリア内のフマール酸、コハク酸濃度が高まるように代謝上の配慮をするとともに、アミノ酸が溶解した溶液の液性が中性になるようにすることが好ましく、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸を等モルずつ混合することがより好ましい。
【0009】
本発明の老化防止剤に含まれるキノン誘導体又はキノンは、下記一般式(I)又は(II)で表されるものが好ましい。
【0010】
【化4】

【0011】
〔式中、Aは次式:
【0012】
【化5】

【0013】
又は
【0014】
【化6】

【0015】
で示される基であり、nは1〜9の整数である。〕
一般式(I)で表される化合物は特公平5−6533号公報に開示されているものであり、具体的には、次に挙げる前記公報の実施例1〜10に記載されたものを含めたものを用いることができる。その他、市販品である、CoQ10粉末(日清ファルマ社製又は鐘淵化学工業社製)を用いることもできる。
【0016】
(キノン誘導体1)
5−(7−カルボキシ−3−メチル−2,6−オクタジエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体2)
5−(11−カルボキシ−3,7−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体3)
5−(15−カルボキシ−3,7,11−トリメチル−2,6,10,14−ヘキサデカテトラエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体4)
5−(19−カルボキシ−3,7,11,15−テトラメチル−2,6,10,14,18−エイコサペンタエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体5)
5−(23−カルボキシ−3,7,11,15,19−ペンタメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体6)
6−(7−カルボキシ−3−メチル−2,6−オクタジエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体7)
6−(11−カルボキシ−3,7−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体8)
6−(15−カルボキシ−3,7,11−トリメチル−2,6,10,14−ヘキサデカテトラエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体9)
6−(19−カルボキシ−3,7,11,15−テトラメチル−2,6,10,14,18−エイコサペンタエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体10)
6−(23−カルボキシ−3,7,11,15,19−ペンタメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体11)
(2E,6E,10E,14E,18E,22E,26E,30E,34E,38E)-2-(3,7,11,15,19,23,27,31,35,39-デカメチルテトラコンタ-2,6,10,14,18,22,26,30,34,38-デカエン-1-イル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-1,4-ベンゾキノン
一般式(II)で表される化合物は、人体、微生物等において存在が報告されているものである(Lester,R.L. & Crane,F.L.:J.Biol.Chem.234,2169、1959)。
【0017】
(キノン;ユビキノン10;コエンザイムQ10)
(2E,6E,10E,14E,18E,22E,26E,30E,34E,38E)-2-(3,7,11,15,19,23,27,31,35,39-Decamethyltetraconta-2,6,10,14,18,22,26,30,34,38-decaen-1-nyl)5,6-dimethoxy-3-methyl-1,4-benzoquinone
薬理学的に許容できる塩としては、塩酸、硫酸等の無機酸の塩、酢酸、フマル酸等の有機酸の塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩等を挙げることができる。
【0018】
本発明の老化防止剤は、アミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩10〜500mgと、キノン誘導体若しくはキノン500〜10,000mgを含有することが好ましい。
【0019】
本発明の老化防止剤は、賦形剤、増量剤、清涼剤、甘味剤等の一般的な配合成分を用い、散剤、液剤、錠剤、カプセル剤等の所望の剤型にすることができるが、これらの中でも散剤、液剤が好ましい。
【0020】
散剤とするときは、散剤100g中に、アミノ酸を25〜85g含有させ、キノン誘導体又はキノンを1000〜15000mg含有させる。散剤としたときの1日の有効摂取量は2〜6g程度である。
【0021】
液剤とするときは、散剤100ml中に、アミノ酸を2〜8g含有させ、キノン誘導体又はキノンを10〜600mg含有させる。液剤としたときの1日の有効摂取量は40〜100ml程度である。
【0022】
本発明の老化防止剤は、液体飲料(ドリンク剤)にすることができる。ドリンク剤にする場合には、アミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩、並びにキノン誘導体若しくはキノンと共に、通常のドリンク剤に配合する成分を併用することができる。
【0023】
本発明の老化防止剤は、食品添加剤(散剤、液剤等の所望の形態にすることができる)にして各種食品や調味料等に添加することができる。例えば、散剤、液剤にして、ふりかけ、粉末スープ、調味料、菓子類、ヨーグルト、マヨネーズ、ドレッシング等に添加することができる。
【実施例】
【0024】
実施例1
下記処方の散剤(1日分,分2服用)を調製した。
【0025】
5%CoQ10粉末(日清ファルマ社製) 300mg
L−アルギニン 1300mg
L−グルタミン 1100mg
L−アスパラギン酸 1000mg
この散剤を、記銘力低下を訴え、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)法による知能評価スケールで痴呆レベルにある患者に、1日2服(朝食後と夕食後)、約20週間服用させた。結果を表1に示す。満点は30点、20点以下は痴呆、21点以上は非痴呆を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
*:視力が回復し、老眼鏡が不要となった。
【0028】
表1の結果から明らかなとおり、非痴呆レベルへの移行ないし知能評価スケールにおける改善という有意の記憶力改善がみられた。
【0029】
この結果から、通称老人ボケと言われる脳血管型及びアルツハイマー型痴呆(いずれも組織呼吸障害に起因する)に有効であると結論できるほか、視力回復効果もみられた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩、並びにキノン誘導体若しくはキノンを含有する老化防止剤。
【請求項2】
アミノ酸が、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、セリン、システィンから選ばれる1種又は2種以上のものであり、
キノン誘導体が、下記一般式(I)又は(II):
【化1】

〔式中、Aは次式:
【化2】

又は
【化3】

で示される基であり、nは1〜9の整数である。〕
で表されるものである、請求項1記載の老化防止剤。
【請求項3】
散剤又は液剤である、請求項1又は2記載の老化防止剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の老化防止剤を含有する液体飲料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の老化防止剤を含有する食品添加剤。


【公開番号】特開2006−69958(P2006−69958A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255288(P2004−255288)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(502179628)バイオ医学研究所株式会社 (2)
【Fターム(参考)】