説明

耐光性プライマー組成物、該プライマー組成物を用いる発光半導体装置の製造方法、及び該方法により得られる発光半導体装置

【課題】良好な塗布作業性を持ち、封止樹脂と基材の接着信頼性が高く、光照射や加熱に対して高い耐変色性を有するプライマー材料、及びそれを使用する発光半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1):
1XYSi(R34-X-Y ・・・(1)
(式中、R1及びRは独立に水素原子、又は反応性置換基を一個以上有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基を示す。R3は塩素原子、水酸基もしくは炭素原子数1〜30の非置換もしくは置換のアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。Xは1〜2の整数であり、Yは0〜1の整数であり、X+Yは1又は2の整数である。)
で表される少なくとも1種のシラン化合物及び/又はこれらの部分加水分解縮合物、
(B)ルイス酸性の有機アルミニウム化合物、並びに、
(C)有機溶媒、
を含有してなるプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐光性プライマー組成物、該プライマー組成物を用いる発光半導体装置の製造方法、及び該方法により得られる発光半導体装置布方法、該プライマー組成物を用いた発光半導体装置、及び該発光半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードの高輝度、高出力化により、発光ダイオードを構成するパッケージ材料や封止材料などの材料はこれまでより大きな光・熱的負荷に晒されるようになっている。近年になり高出力発光ダイオード(LED)の封止樹脂としてシリコーン樹脂に代表される耐久性の高い材料の使用が広がりつつある。しかしながらLEDを搭載するためのパッケージは金属、半導体材料等の複数種の材料からなり、封止樹脂材料はそれら多岐にわたる材料と接着信頼性を有する必要がある。加えてLED駆動時の光照射と高温下ではプライマー層の変色を引き起こし、LEDからの光取り出し効率が低下することが問題となっている。また、高活性の化合物を含有するプライマーは塗布処理時間の余裕が小さいが生産上の作業性の点で問題となる。これらの問題を解決するためにこれまでにもシラノール縮合触媒やシランカップリング剤の組み合わせからなるプライマーに関する報告例がある(特許文献1、2)が、LEDへのプライマー塗布作業性、接着信頼性と耐変色性の三点を両立させたプライマーは示されていない。
【0003】
【特許文献1】特開2004-339450
【特許文献2】特開2005-093724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題とするところは、良好な塗布作業性を持ち、封止樹脂と基材の接着信頼性が高く、光照射や加熱に対して高い耐変色性を有するプライマー材料を提供することにある。
【0005】
また、本発明の課題は、このようなプライマー組成物を使用することにより高性能の発光半導体装置を製造する方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決する為に本発明者らは鋭意研究の結果、ルイス酸である有機アルミニウム化合物と特定のシランカップリング剤、及び有機溶媒を組合わせることで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、上記課題を解決する手段として、本発明は、第一に、
(A)下記一般式(1):
1XYSi(R34-X-Y ・・・(1)
(式中、R1及びRは独立に水素原子、又は反応性置換基を一個以上有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基を示す。R3は塩素原子、水酸基もしくは炭素原子数1〜30の非置換もしくは置換のアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。Xは1〜2の整数であり、Yは0〜1の整数であり、X+Yは1又は2の整数である。)
で表される少なくとも1種のシラン化合物及び/又はこれらの部分加水分解縮合物、
(B)ルイス酸性の有機アルミニウム化合物、並びに、
(C)有機溶媒、
を含有してなるプライマー組成物を提供する。
【0008】
本発明は、第二に、
上記のプライマー組成物をプレモールドパッケージ上に装着された発光半導体素子表面に塗布した後乾燥して該発光半導体素子表面を覆うプライマー組成物層を形成し、該プライマー組成物層上に付加反応硬化型シリコーン樹脂を適用し、前記素子をオーバーモールド樹脂封止することを特徴とする発光半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプライマー組成物を用いることにより、プライマー塗布・乾燥工程で利用できる時間的余裕を改善して作業性を高め、封止樹脂の基材に対する接着信頼性を向上させることができる。加えて、プライマー組成物の塗布層は化学的、物理的安定性を有していることから、素子点灯時に発生する高温・光照射条件でもプライマー層は耐変色性を有する。これらの特性から長寿命かつ信頼性の高い発光半導体装置を実現することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
[プライマー組成物]
−(A)シランカップリング剤−
(A)成分として用いられるものは、一般式(1):
1XYSi(R34-X-Y ・・・(1)
(式中、R1及びRは独立に水素原子、又は反応性置換基を一個以上有してもよい炭素原子数1〜30、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜15のアルキル基を示す。R3は塩素原子、水酸基もしくは炭素原子数1〜30の非置換もしくは置換のアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。Xは1〜2の整数であり、Yは0〜1の整数であり、X+Yは1又は2の整数である。)
で表される1種又は2種以上のシラン化合物及び/又はこれらの部分加水分解縮合物である。尚、R1、Rは同時に水素原子ではないこと(即ち、R1、Rのうち、少なくとも一方が反応性置換基を1個以上有してもよい炭素原子数2〜30のアルキル基であること)が好ましい。
【0012】
一般式(1)において、RとRの両方、もしくは一方がアルキル基である場合、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の好適には炭素原子数1〜18のアルキル基を挙げることが出来る。
【0013】
又はRにより表されるアルキル基は反応性置換基を一個以上有してもよい。ここで、反応性置換基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、イソシアノ基を挙げることができる。
【0014】
さらに具体的には、エポキシ基又はエポキシ基を有するアルキル基としては、例えば、グリシジル基、β−グリシドキシエチル基、α−グリシドキシプロピル基、β−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、α−グリシドキシブチル基、β−グリシドキシブチル基、γ−グリシドキシブチル基、δ−グリシドキシブチル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基等を挙げることができる。
【0015】
オキセタニル基を有するアルキル基としては、(3−エチルオキセタン−3−イル)プロピル基等を挙げることができる。
【0016】
アクリロイルオキシ基を有するアルキル基としては、例えば、アクリロイルオキシメチル基、β−アクリロイルオキシエチル基、β−アクリロイルオキシプロピル基、γ−アクリロイルオキシプロピル基等を挙げることができる。
【0017】
メタクリロイルオキシ基を有するアルキル基としては、メタクリロイルオキシメチル基、β−メタクリロイルオキシエチル基、β−メタクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基等を挙げることができる。
【0018】
メルカプト基を有するアルキル基としては、例えば、メルカプトメチル基、β−メルカプトエチル基、β−メルカプトプロピル基、γ−メルカプトプロピル基等を挙げることができ、アミノ基を有する置換基としては、アミノメチル基、β−アミノエチル基、β−アミノプロピル基、γ−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピル基、N−フェニル−γ−アミノプロピル基等を挙げることができる。
【0019】
シアノ基を有する置換基としては、シアノメチル基、β−シアノエチル基、β−シアノプロピル基、γ−シアノプロピル基等を挙げることができる。イソシアノ基を有する置換基としては、イソシアノメチル基、β−イソシアノエチル基、β−イソシアノプロピル基、γ−イソシアノプロピル基等を挙げることができる。
【0020】
一般式(1)においてR3は塩素原子、水酸基もしくは炭素原子数1〜30の非置換もしくは置換のアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。
【0021】
炭素原子数1〜30の非置換もしくは置換のアルコキシ基としては、炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜6程度の低級アルコキシが好適であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の非置換のアルコキシ基や、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシ置換のアルコキシ基などが挙げられる。
炭素原子数1〜30の非置換もしくは置換のアリールオキシ基としては、炭素原子数6〜18、特には炭素原子数6〜12程度の、芳香族環を1個又は2個有するものが好適であり、例えば、フェニルオキシ基、o,m,p−トリルオキシ基、ジメチルフェニルオキシ基、o,m,p−エチルフェニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基、アンスラニルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
−(B)有機アルミニウム化合物−
(B)成分として使用されるルイス酸性の有機アルミニウム化合物は、本発明のプライマー組成物においてシラノール縮合触媒として作用するものと考えられ、好適には、下記一般式(2):
4xAl(OR53-X ・・・(2)
(式中、xは0〜3の整数であり、xが1〜3のときRは独立に炭素原子数30以下(即ち、炭素原子数1〜30)、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10のアルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基(即ち、アセトネート基)を示し、R5は炭素原子数1〜15の非置換もしくは置換のアルキル基又はアリール基を示す。)
で表される有機アルミニウム化合物である。前記アルミニウム化合物を表す一般式(2)において、R5の非置換もしくは置換のアルキル基又はアリール基として、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の、好適には炭素原子数1〜15、特に1〜10程度のアルキル基を挙げることができる。また、フェニル基、フルオロフェニル基、β−ナフチル基、β−ナフチル基、アンスラニル基等の好適には炭素原子数6〜18のアリール基が好適である。
【0023】
4としてのアルコキシ基及びOR5としての非置換もしくは置換アルコキシ基又はアリールオキシ基としては、一般式(1)のRとして例示したものと同じ非置換もしくは置換アルコキシ基又は非置換もしくは置換アリールオキシ基が挙げられる。
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリス(sec−ブトキシ)アルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリス(sec−プロポキシ)アルミニウム、トリブトキシアルミニウム、トリス(tert−ブトキシアルミニウム)、トリス(シクロヘキシルオキシ)アルミニウム、アセチルジメトキシアルミニウム、アセチルジエトキシアルミニウム、アセチルジプロポキシアルミニウム、アセチルビス(sec−プロポキシ)アルミニウム、アセチルジブトキシアルミニウム、アセチルビス(sec−ブトキシ)アルミニウム、アセチルビス(tert−ブトキシ)アルミニウム、アセチルオキシジメトキシアルミニウム、アセチルオキシジエトキシアルミニウム、アセチルオキシジプロポキシアルミニウム、アセチルオキシビス(sec−プロポキシ)アルミニウム、アセチルオキシジブトキシアルミニウム、アセチルオキシビス(sec−ブトキシ)アルミニウム、アセチルオキシビス(tert−ブトキシ)アルミニウム
等が挙げられる。好ましくは、トリス(sec−ブトキシ)アルミニウムである。
【0024】
(B)成分としては、ルイス酸性有機アルミニウム化合物を一種単独でも二種以上の組合わせとしても使用することができる。
【0025】
本発明の組成物において、(A)成分/(B)成分の質量比は1以下であることが好ましく、(A)成分/(B)成分の質量比が1〜0.01、更に、0.8〜0.1、特には、0.7〜0.2程度であることが塗布作業性、即ち、プライマー塗布後から乾燥を終了するまでの乾燥工程に利用することができる時間の範囲(可使時間又はマージン)を大幅に拡大することが可能になるという点でより好ましい。
【0026】
−有機溶媒−
(C)成分として用いられる有機溶媒としては公知の各種有機溶媒を用いることができるが、特に高い効果を得ることができるものとして、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素原子数5〜15の炭化水素系溶媒を用いることができる。含ヘテロ溶媒(即ち、炭素、水素以外のヘテロ原子を含有する溶媒)も用いることができ、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルコール系、エーテル系、エステル系溶媒も使用でき、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシラン系、シロキサン系溶媒も用いることができる。またフルオロアルカン、フルオロアルキルエーテル等の含フッ素系溶媒も使用することができる。より好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン等の炭素原子数5〜15の芳香族炭素環系溶媒又は芳香族複素環系溶媒を使用することができる。
【0027】
好ましい芳香族炭素環系溶媒の例として、一般式(3):
【0028】
【化1】

で表される化合物からなる有機溶媒が挙げられる。
【0029】
上記式(3)において、R、R、Rの置換基の例としては、独立に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アミド基、アミノ基、及びハロゲン原子が挙げられ、特にR、R、Rが水素原子とアルキル基のみの組合せからなるものが好ましい。
【0030】
前記アルキル基は直鎖状、分枝したもしくは環状のアルキル基のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、1-メチル-シクロプロピル、2-メチル−シクロプロピル、n-ペンチル、1-メチル-n-ブチル、2-メチル-n-ブチル、3-メチル-n-ブチル、1,1-ジメチル-n-プロピル、1,2-ジメチル-n-プロピル、2,2-ジメチル-n-プロピル、1-エチル-n-プロピル、シクロペンチル、1-メチル-シクロブチル、2-メチル-シクロブチル、3-メチル-シクロブチル、1,2-ジメチル-シクロプロピル、2,3-ジメチル-シクロプロピル、1-エチル-シクロプロピル、2-エチル-シクロプロピル、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル、2-メチル-n-ペンチル、3-メチル-n-ペンチル、4-メチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-n-ブチル、1,2-ジメチル-n-ブチル、1,3-ジメチル-n-ブチル、2,2-ジメチル-n-ブチル、2,3-ジメチル-n-ブチル、3,3-ジメチル-n-ブチル、1-エチル-n-ブチル、2-エチル-n-ブチル、1,1,2-トリメチル-n-プロピル、1,2,2-トリメチル-n-プロピル、1-エチル-1-メチル-n-プロピル、1-エチル-2-メチル-n-プロピル、シクロヘキシル、1-メチル-シクロペンチル、2-メチル-シクロペンチル、3-メチル-シクロペンチル、1-エチル-シクロブチル、2-エチル-シクロブチル、3-エチル-シクロブチル、1,2-ジメチル-シクロブチル、1,3-ジメチル-シクロブチル、2,2−ジメチル-シクロブチル、2,3-ジメチル-シクロブチル、2,4-ジメチル-シクロブチル、3,3-ジメチル-シクロブチル、1-n-プロピル-シクロプロピル、2-n-プロピル-シクロプロピル、1-i-プロピル-シクロプロピル、2-i-プロピル-シクロプロピル、1,2,2-トリメチルシクロプロピル、1,2,3-トリメチルシクロプロピル、2,2,3-トリメチルシクロプロピル、1-エチル-2-メチルシクロプロピル、2-エチル-1-メチルシクロプロピル、2-エチル-2-メチルシクロプロピル、2-エチル-3-メチルシクロプロピル等が挙げられる。
【0031】
上記式(3)のアルコキシ基としては、例えば、合成可能な水酸基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、c−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、c−ブトキシ、1−メチル−c−プロポキシ、2−メチル−c−プロポキシ、ペントキシ、c−ペントキシ、ヘキソキシ、c−ヘキソキシ基等が挙げられる。
【0032】
上記式(3)のアミド基としては、例えば、アセトアミド(アセチルアミノ)、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノ、i−プロピルカルボニルアミノ、n−ブチルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0033】
上記式(3)のアミノ基としては、例えばアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0034】
上記式(3)のハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0035】
有機溶媒のより具体的な例は、アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、n−プロパノール、sec−ブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール、1−ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の1価のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノsec−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノsec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールモノn−ペンチルエーテル、エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノプロピオネート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノプロピオネート、ジエチレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有するアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール等の2価アルコール類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、1−クロロ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、2−シアノエタノール、アセトンシアノヒドリン等の水酸基以外の置換基を有するアルコール類等が挙げられる。
【0036】
エステル系溶媒としては、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等のギ酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル等の酢酸エステル類;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のプロピオン酸エステル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;酪酸エステル類;イソ酪酸エステル類;吉草酸エステル類;安息香酸エステル類;シュウ酸エステル類;マロン酸エステル類;マレイン酸エステル類;酒石酸エステル類;クエン酸エステル類;ジエチレングリコールジエステル類;炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のカーボネート結合を有する化合物;ホウ酸エステル類;リン酸エステル類が挙げられる。
【0037】
アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド,N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非環状アミド類、N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミド類等が挙げられる。
【0038】
ニトロ化合物系溶媒としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のアルキル置換ニトロ化合物が挙げられる。
【0039】
これらの有機溶媒は一種単独でも二種以上の組み合わせでも適宜使用することができるが、特異的にプライマー組成物の高い保存安定性を得られる点から、特に芳香族化合物系溶媒が好ましい。
【0040】
[発光半導体装置の製造方法]
本発明の発光半導体装置の製造方法は、上記のプライマー組成物をプレモールドパッケージ上に装着された発光半導体素子表面に塗布した後乾燥して該発光半導体素子表面を覆うプライマー組成物層を形成し、該プライマー組成物層上に付加反応硬化型シリコーン樹脂を適用し、前記素子をオーバーモールド樹脂封止することを特徴として含む。
【0041】
この製造方法においては、前記の発光半導体素子表面に形成されたプライマー組成物層中における一般式(1)で表されるシラン化合物中のRの反応率が50〜90%、より好ましくは55〜80%、更に好ましくは60〜75%の範囲にある状態で、付加反応硬化型シリコーン樹脂によりオーバーモールド樹脂封止することが好ましい。ここで、「Rの反応率」とは、前記シラン化合物中に存在したRの当初のモル数をA、反応(加水分解、及び場合によってはさらに縮合)後に残存している未反応Rのモル数をBとすると、(1−B/A)×100(%)で表される。なお、本発明のプライマー組成物を使用する前においては、該反応率は0〜49%の範囲内にあることが接着信頼性及び耐変色性の点で好ましい。
【0042】
プレモールドパッケージは、例えば、リードフレーム、合成樹脂、セラミック等の種々の材料で構成されていることが多いが、本発明のプライマー組成物の使用により信頼性の高い接着を達成することができる。
【0043】
発光半導体素子としては、例えば、発光ダイオード、半導体レーザー、有機EL(エレクトロルミネッセンス)、無機EL等が挙げられる。
【0044】
プライマー組成物を被封止部に塗布する方法は特に制限されず、通常行なわれるいずれの方法でよい。一般的には、定量液体吐出装置によるプライマー滴下の方法でよい。塗布後の乾燥は、例えば、10〜40℃において行なえばよく、通常室温(15−30℃)でよい。
【0045】
プライマー組成物の塗布から乾燥(終了)までの時間は15分〜6時間、特に20分〜3時間程度の余裕(マージン)を取って行なうことが好ましいが、本発明の組成物を使用することにより十分にこのような塗布、乾燥条件を設定することができる。より好ましくは、30分〜1時間である。
【0046】
封止樹脂として使用される付加反応硬化型シリコーン樹脂も特に制限されない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において「部」は「質量部」を意味する。
【0048】
−実施例1−
(1)プライマー組成物の調製
窒素気流下でトルエン99.25部にトリス(sec−ブトキシ)アルミニウム0.5部を加え、五分間激しく攪拌を行うことで溶解させた。続いて、得られた溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM-403)0.25部を溶解し、五分間激しく攪拌してプライマー組成物を得た。このプライマー組成物は使用前に窒素気流下でポアサイズ(ろ過細孔)1μmのフィルターで濾過を行った。
【0049】
(2)LED素子へのプライマー処理
パッケージ(オーバーモールドパッケージ)に装着した発光ダイオード素子の樹脂封止を行う部位に対して、(1)で得たプライマー組成物をディスペンス装置を用いることで塗布した。続いて、塗布したプライマー組成物に含まれる溶媒を室温下、それぞれ30分間、1時間及び2時間の乾燥により除去し、封止部位にプライマー層を形成させた。
【0050】
(3)LEDの封止
ビニル基末端ポリジメチルシロキサン(信越化学工業製、商品名X-35-330A)5gを白金触媒入りヒドロメチルシロキサン(信越化学工業製、商品名X-35-330B)5gと真空下で脱泡しつつ攪拌した。続いて当該樹脂溶液をディスペンス装置によりLEDパッケージ型枠に注入した後に60℃で1時間、続いて100℃で2時間、150℃で4時間処理することで封止済のLEDを得た。
【0051】
(4)プライマー硬化物のシランカップリング剤反応度の測定
本発明におけるプライマー組成物をガラスシャーレ上に塗布した後、30分間、1時間、2時間の条件でそれぞれ乾燥し、得られた硬化物を重クロロフォルムに溶解し、不溶物は濾過により除去した。この溶液をNMR(核磁気共鳴スペクトル)によって測定し、メトキシシラン残留量を積分比より求めることで反応度を決定した。同様の実験を三回繰り返し、反応度が60〜75%の範囲以内にあることを確認した。
【0052】
−比較例1−
(チタン系プライマーによる塗布処理)
実施例1において調製したプライマー組成物の代りにチタン系プライマー(信越化学工業(株)製、商品名プライマーC)を使用した以外は、実施例1の(3)の手法でLED素子を封止した。
【0053】
−評価−
実施例1及び比較例1で得られた封止済LEDについて、下記の条件により
・LEDパッケージの汚損性、
・塗布乾燥作業の時間的余裕
・リフローに対する耐剥離性、及び
・吸湿条件下でのLED駆動時における耐変色性
を下記の基準により評価した。
【0054】
「塗布乾燥作業の時間的余裕」と「リフローに対する耐剥離性」の結果を表1に示す。「吸湿条件下でのLED駆動時における耐変色性」の結果を表2に示す。
【0055】
(1)LEDパッケージの汚染性評価
プライマー塗布処理後、LEDパッケージの表面状態を実体顕微鏡により観察した際の状態を以下の四段階に分別した。
A:プライマー塗布・乾燥後のLEDパッケージ表面が滑らかで、かつ透明である。
B:プライマー塗布・乾燥後のLEDパッケージ表面が滑らかで、かつ不透明である。
C:プライマー塗布・乾燥後のLEDパッケージ表面が荒れていて、かつ透明である。
D:プライマー塗布・乾燥後のLEDパッケージ表面が荒れていて、かつ不透明である。
【0056】
(2)封止樹脂のLEDパッケージ上の剥離試験
複数個(n=1〜16)のプライマー塗布・乾燥後のLEDパッケージに樹脂を封止し、硬化反応を行った後、それらを85℃、湿度85%に保った恒温恒湿槽中に24時間放置した。恒温恒湿槽から取り出した後は直ちにIRリフロー装置によって260℃で3回熱履歴をかけた(コンベア速度:40cm/min)。処理後のLEDパッケージの状態を実体顕微鏡で観察ことで、LEDパッケージと封止樹脂界面の剥離状態を判別し、以下の二段階に判定した。
【0057】
A:LEDにおいて封止後の封止樹脂とLEDパッケージ界面が密着している。
B:LEDにおいて封止後の封止樹脂とLEDパッケージ界面が剥離している。
【0058】
(3)プライマー処理・封止を行ったLEDの点灯試験
初期においては無色透明であった樹脂封止済LEDを85℃、湿度85%の条件下で通電・点灯試験を行い、最大1000時間迄のLEDの着色状態を以下の三段階に分けて判定を行った。
【0059】
A:ほとんど変色が見られなかった。
B:わずかに変色していた
C:強く変色した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
上記の結果から、比較例1で使用したチタン系プライマーは長時間の塗布乾燥条件では接着信頼性が低下し、短時間のLED点灯で変色した。一方、本発明のプライマー組成物を使用した場合には、LED素子に対する塗布乾燥に利用することができる時間の範囲が広く作業性に優れている。また、長時間のLED駆動において変色せず高い耐変色性を示した。本発明のプライマー組成物を使用した場合には、塗布乾燥の作業性、耐変色性及び耐剥離性能の点でも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1):
1XYSi(R34-X-Y ・・・(1)
(式中、R1及びRは独立に水素原子、又は反応性置換基を一個以上有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基を示す。R3は塩素原子、水酸基もしくは炭素原子数1〜30の非置換もしくは置換のアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。Xは1〜2の整数であり、Yは0〜1の整数であり、X+Yは1又は2の整数である。)
で表される少なくとも1種のシラン化合物及び/又はこれらの部分加水分解縮合物、
(B)ルイス酸性の有機アルミニウム化合物、並びに、
(C)有機溶媒、
を含有してなるプライマー組成物。
【請求項2】
(B)成分の有機アルミニウム化合物が下記一般式(2):
4xAl(OR53-X ・・・(2)
(式中、xは0〜3の整数であり、xが1〜3のときRは独立に炭素原子数30以下のアルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基を示し、R5は炭素原子数1〜15の非置換もしくは置換のアルキル基又はアリール基を示す。)
で表される少なくとも1種の有機アルミニウム化合物である請求項1に係るプライマー組成物。
【請求項3】
(A)成分/(B)成分の質量比が1以下であることを特徴とする請求項1又は2に係るプライマー組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプライマー組成物をプレモールドパッケージ上に装着された発光半導体素子表面に塗布した後乾燥して該発光半導体素子表面を覆うプライマー組成物層を形成し、該プライマー組成物層上に付加反応硬化型シリコーン樹脂を適用し、前記素子をオーバーモールド樹脂封止することを特徴とする発光半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記の発光半導体素子表面に形成されたプライマー組成物層中における一般式(1)で表されるシラン化合物中のRの反応率が50〜90%の範囲の状態で、付加反応硬化型シリコーン樹脂によりオーバーモールド樹脂封止することを特徴とする請求項4に係る発光半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の方法により製造された発光半導体装置。

【公開番号】特開2007−246803(P2007−246803A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74307(P2006−74307)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】