説明

耐力壁

【課題】施工が容易であるとともに強度が高い耐力壁を提供することを課題とする。
【解決手段】下枠11とこの下枠11に立設された複数の縦枠12とこの縦枠12の上端に横設された上枠13とを備えた枠組2と、下枠11と上枠13との間に設置された構造用面材3と、を有する耐力壁1であって、縦枠12は、構造用面材3を挟んで一対ずつ設けられるとともに下枠11及び上枠13の長手方向に間隔をあけて複数対立設されており、構造用面材3と一対の縦枠12とが釘Kによって接合されており、下枠11と縦枠12及び上枠13と縦枠12とがメタルプレートコネクタ4によって接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠組壁工法で用いる耐力壁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、枠組壁工法で用いる耐力壁の内部に、構造用面材を設ける技術が開示されている。図6は、従来の耐力壁を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のIII−III断面図である。図7は、従来の耐力壁の作用図である。
【0003】
図6の(a)に示すように、従来の耐力壁101は、枠組102と、枠組102の内部に設置された構造用面材103とを有する。枠組102は、下枠104とこの下枠104に立設された6本の縦枠105とこの縦枠105の上端に横設された上枠106とを有する。
【0004】
図6の(b)に示すように、縦枠105(105a〜105f)は、構造用面材103を挟むように一対ずつ立設されるとともに、下枠104及び上枠106の長手方向に所定の間隔をあけて三箇所に立設されている。構造用面材103は、縦枠105a,105bと、縦枠105c,105dと、縦枠105e,105fによってそれぞれ挟持されるとともに、釘Kによってそれぞれ二面せん断接合されている。また、図7に示すように、下枠104及び上枠106と縦枠105とは釘Kによって接合されている。
【0005】
このような構成からなる従来の耐力壁101は、一対の縦枠105と構造用面材103とが釘Kを介して二面せん断接合されているため、せん断耐力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,782,054号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、図7に示すように、従来の耐力壁101の上枠106に水平方向の力が作用すると、下枠104と縦枠105e(105f)との接合部G1には鉛直方向下向きに力が作用し、下枠104と縦枠105a(105b)との接合部G2には鉛直方向上向きに力が作用する。つまり、接合部G2では、下枠104に対して縦枠105a(105b)が、浮き上がろうとする引抜き力が作用する。
【0008】
耐力壁101は、二面せん断接合によってせん断耐力が向上しているため、構造用面材103と縦枠105との接合強度が強い分、接合部G2には大きな引抜き力が作用する。このため、接合部G2が破壊されやすいという問題がある。
【0009】
この問題を解決するために、下枠104と縦枠105との接合部G2に金属プレートを設置し、複数の釘を打ち込んで接合することが考えられる。しかしながら、前記した引抜き力に耐え得るためには数十本の釘を打ち込まなければならず、作業手間がかかるという問題があった。また、狭い領域に多くの釘を打ち込むと枠材にひび割れが生じることがあるため、接合強度が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、施工が容易であるとともに強度が高い耐力壁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、下枠とこの下枠に立設された複数の縦枠とこの縦枠の上端に横設された上枠とを備えた枠組と、前記下枠と前記上枠との間に設置された構造用面材と、を有する耐力壁であって、前記縦枠は、前記構造用面材を挟んで一対ずつ設けられるとともに前記下枠及び上枠の長手方向に間隔をあけて複数対立設されており、前記構造用面材と一対の前記縦枠とが固定部材によって二面せん断接合されており、前記下枠と前記縦枠及び前記上枠と前記縦枠とがメタルプレートコネクタによって接合されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、縦枠と構造用面材とが二面せん断接合されるとともに、下枠及び上枠が縦枠とメタルプレートコネクタによって接合されているため、接合強度を高めることができる。メタルプレートコネクタであれば、狭い領域であっても高い強度を発現することができる。また、メタルプレートコネクタを接合部に圧入するだけでよいため、施工が容易である。
【0013】
また、前記メタルプレートコネクタは、前記下枠と前記縦枠との繋ぎ目線と、前記下枠における前記縦枠の側縁の延長線と、を跨いで連続して接合されていることが好ましい。また、前記メタルプレートコネクタは、前記上枠と前記縦枠との繋ぎ目線と、前記上枠における前記縦枠の側縁の延長線と、を跨いで連続して接合されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、枠組とメタルプレートコネクタとの接合領域を効果的に増やすことで、接合強度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る耐力壁によれば、施工が容易であるとともに高い強度を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る耐力壁を示す斜視図(一部破断)である。
【図2】(a)は図1のI−I断面図、(b)は図1のII−II断面図である。
【図3】メタルプレートコネクタを示す斜視図である。
【図4】第一変形例を示す要部拡大正面図である。
【図5】第二変形例を示す要部拡大正面図である。
【図6】従来の耐力壁を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のIII−III断面図である。
【図7】従来の耐力壁の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る耐力壁1は、枠組壁工法で構築される木造住宅に用いられる。特に、本実施形態では、耐力壁1を木造住宅の内壁として用いる場合を例示する。説明における上下左右前後は、図1の矢印にしたがう。
【0018】
耐力壁1は、図1に示すように、床Fに立設された壁であって、枠組2と、枠組2の内部に設置された構造用面材3と、メタルプレートコネクタ4と、下地板5と、コンセントボックス6と、を主に有する。
【0019】
枠組2は、下枠11と、下枠11に立設する複数の縦枠12と、縦枠12に横設された上枠13と、を有しており、枠状に形成されている。
【0020】
下枠11は、枠組2の下部を構成する木材であって、釘(固定部材)Kによって床Fに接合されている。下枠11は、本実施形態では例えば、枠組壁工法で用いられる204材(89mm×38mm)を用いている。
【0021】
縦枠12は、図1及び図2に示すように、下枠11に立設される木材であって、本実施形態では6本(12a〜12f)立設されている。縦枠12は、本実施形態では例えば、204材を用いている。縦枠12a,12bは、構造用面材3の左端において、構造用面材3の前面及び後面を挟むように立設されている。縦枠12a,12bは、広い面同士が対向するように、いわゆる平使いで構造用面材3を挟み込んでいる。
【0022】
縦枠12a,12bと同様に、縦枠12c,12dは、構造用面材3の中央において、縦枠12e,12fは、構造用面材3の右端において、構造用面材3の前面及び後面を挟むように立設されている。
【0023】
上枠13は、枠組2の上部を構成する木材であって、釘Kによって縦枠12に接合されている。上枠13は、本実施形態では例えば、204材を用いている。
【0024】
構造用面材3は、対向する縦枠12の間に介設される合板である。構造用面材3の厚さは、本実施形態では例えば、12mmになっている。構造用面材3の高さは、縦枠12の高さと略同等になっている。構造用面材3は、図2に示すように、対向する縦枠12a,12b、縦枠12c,12d、縦枠12e,12fによって挟持されるとともに、釘Kによって二面せん断接合されている。構造用面材3は、本実施形態では、図2の(b)に示すように、構造用面材3の前面側及び後面側から釘Kによって交互に接合されている。
【0025】
メタルプレートコネクタ4は、図1乃至図3に示すように、平面視矩形を呈する板状の金属部材であって、下枠11と縦枠12及び上枠13と縦枠12とを接合している。メタルプレートコネクタ4は、本実施形態では、各縦枠12(12a〜12f)の上端及び下端において全部で12枚用いている。
【0026】
メタルプレートコネクタ4は、図3に示すように、基板21と、基板21から切り起こされた爪部22とを有する。爪部22は、三角形状を呈し、基板21に対して垂直に立設されている。メタルプレートコネクタ4は、押圧装置等によって当接された二つの部材の側面からなる各接合部に圧入され、爪部22を接合部に食い込ませることで二つの部材を接合する。基板21は、例えば、1〜2mm程度の厚みになっている。
【0027】
下地板5は、図1及び図2に示すように、枠組2の前面側及び後面側において、図示しない釘によって接合されている。下地板5は、下枠11、縦枠12及び上枠13に留め付けられている。下地板5は、例えば、石膏ボード等を用いて内装材等の下地として利用される。
【0028】
コンセントボックス6は、図1及び図2に示すように、耐力壁1の内部に設置されている。本実施形態では、コンセントボックス6は、下枠11、縦枠12a,12c、上枠13、構造用面材3及び下地板5で囲まれた空間の下部に設置されている。
【0029】
以上説明した本実施形態に係る耐力壁1によれば、縦枠12(12a〜12f)と構造用面材3とが釘Kによって二面せん断接合されるとともに、下枠11及び上枠13が縦枠12とメタルプレートコネクタ4を介してそれぞれ接合されているため、接合強度を高めることができる。つまり、例えば、上枠13の左側から水平力が作用したとしても、下枠11に対する縦枠12a,12bの浮き上がりを阻止することができる。これにより、高い強度を発現することができる。
【0030】
また、メタルプレートコネクタ4を用いることにより、狭い領域であっても、下枠11と縦枠12及び上枠13と縦枠12を強固に接合することができる。また、メタルプレートコネクタ4によれば、接合部に圧入するだけでよいため、施工が容易である。また、メタルプレートコネクタ4の基板21は、1〜2mmと薄い部材であるため、下地板5等の面材を張り付ける際の妨げにならない。また、複数の爪部22を同時に圧入するので、枠組2にひび割れが生じにくい。
【0031】
また、本実施形態では、構造用面材3の厚みを12mmとするとともに、204材の縦枠12を平使いで用いたため、縦枠12a,12b及び構造用面材3の厚みの和が約88mmとなる。これにより、耐力壁1が一般的な枠組壁工法の内壁と同等の厚みになるため、設計の自由度が高い。
【0032】
また、耐力壁1内に形成された空間にコンセントボックス6を設置することにより、耐力壁1内の空間を有効利用することができる。また、耐力壁1は、前面側及び後面側が対称の構造になっているため、設計の自由度が高い。
【0033】
<第一変形例>
次に、本発明の第一変形例について説明する。図4は、本発明の第一変形例を示す要部拡大正面図である。第一変形例は、メタルプレートコネクタ4Aの接合方法が前記した実施形態と相違する。他の部分については、前記した実施形態と共通するため、共通する部分については詳細な説明は省略する。
【0034】
第一変形例に係るメタルプレートコネクタ4Aは、前記した実施形態で用いたメタルプレートコネクタ4よりも大きな形状になっている。ここで、縦枠12aと下枠11との繋ぎ目線を繋ぎ目線P1とし、下枠11を通る縦枠12aの側縁R1の延長線を延長線Q1とし、側縁R2の延長線を延長線Q2とする。
【0035】
メタルプレートコネクタ4Aは、正面視L字状を呈し枠組2に圧入された第一接合領域31と、正面視矩形を呈し枠組2には圧入されていない非接合領域32とを有する。各接合領域は、図4中の2点鎖線で囲んで示している。第一接合領域31は、繋ぎ目線P1を跨ぐとともに、延長線Q1を跨いで連続して接合されている。
【0036】
第一変形例によれば、繋ぎ目線P1と延長線Q1とを跨いで連続して接合されているため、前記した実施形態に比べてメタルプレートコネクタ4Aの接合領域(面積)を効果的に大きくすることができる。これにより、接合強度をより高めることができる。また、第一変形例によれば、非接合領域32が発生してしまうが、メタルプレートコネクタ4Aを切削加工することなく接合領域を効果的に大きくすることができる。また、非接合領域32は、L字状を呈する第一接合領域31の筋交いとしての機能を備えるため、メタルプレートコネクタ4Aの変形が抑制されることにより接合強度をさらに高めることができる。
【0037】
なお、第一変形例において、第一接合領域31を延設させて延長線Q2も跨ぐようにして接合してもよい。
【0038】
<第二変形例>
次に、本発明の第二変形例について説明する。図5は、本発明の第二変形例を示す要部拡大正面図である。第二変形例は、メタルプレートコネクタ4Bの接合方法が前記した実施形態と相違する。他の部分については、前記した実施形態と共通するため、共通する部分については詳細な説明は省略する。
【0039】
第二変形例に係るメタルプレートコネクタ4Bは、前記した第一変形例で用いたメタルプレートコネクタ4Aよりも大きな形状になっている。ここで、縦枠12aと上枠13との繋ぎ目線を繋ぎ目線P2とし、上枠13を通る縦枠12aの側縁R1の延長線を延長線Q3とし、側縁R2の延長線を延長線Q4とする。
【0040】
メタルプレートコネクタ4Bは、正面視T字状を呈し枠組2に圧入された第二接合領域41と、正面視矩形を呈し枠組2には圧入されていない非接合領域42,42とを有する。各接合領域は図5中の2点鎖線で囲んで示している。第二接合領域41は、繋ぎ目線P2を跨ぐとともに、延長線Q3及び延長線Q4を跨いで連続して接合されている。
【0041】
第二変形例によれば、繋ぎ目線P2と延長線Q3,Q4を跨いで連続して接合されているため、前記した実施形態に比べてメタルプレートコネクタ4Bの接合領域(面積)を効果的に大きくすることができる。これにより、接合強度をより高めることができる。また、第二変形例によれば、非接合領域42,42が発生してしまうが、メタルプレートコネクタ4Bを切削加工することなく接合領域を効果的に大きくすることができる。また、非接合領域42,42は、T字状を呈する第二接合領域41の筋交いとしての機能を備えるため、メタルプレートコネクタ4Bの変形が抑制されることにより接合強度をさらに高めることができる。
【0042】
なお、縦枠12aと上枠13との接合部にメタルプレートコネクタ4Aを用いて、第一変形例の態様で接合してもよい。
【0043】
以上本発明の実施形態について説明したが本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、メタルプレートコネクタ4の爪部22に接着剤や粘着テープ等を張着することで、接合部の接合強度をより高めることができる。また、枠組2や構造用面材3等の各要素の寸法は、あくまで例示であって限定されるものでない。
【0044】
また、縦枠12は、本実施形態では6本用いたが本数を限定するものではない。また、耐力壁1を内壁として用いる場合を例示したが、外壁に用いてもよい。また、本実施形態では、正面視矩形のメタルプレートコネクタを用いたが、円形、楕円系、他の角形を呈する形状であってもよい。また、正面視してL字状又はT字状等のメタルプレートコネクタを用いてもよい。また、本実施形態では縦枠12と構造用面材3とを前面及び後面の両側から釘Kで接合したが、片側から接合するだけでもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 耐力壁
2 枠組
3 構造用面材
4 メタルプレートコネクタ
5 下地板
6 コンセントボックス
11 下枠
12 縦枠
13 上枠
21 基板
22 爪部
31 第一接合領域
32 非接合領域
41 第二接合領域
42 非接合領域
K 釘
F 床
P1 繋ぎ目線
P2 繋ぎ目線
Q1 延長線
Q2 延長線
Q3 延長線
Q4 延長線
R1 側縁
R2 側縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠とこの下枠に立設された複数の縦枠とこの縦枠の上端に横設された上枠とを備えた枠組と、前記下枠と前記上枠との間に設置された構造用面材と、を有する耐力壁であって、
前記縦枠は、前記構造用面材を挟んで一対ずつ設けられるとともに前記下枠及び上枠の長手方向に間隔をあけて複数対立設されており、
前記構造用面材と一対の前記縦枠とが固定部材によって二面せん断接合されており、
前記下枠と前記縦枠及び前記上枠と前記縦枠とがメタルプレートコネクタによって接合されていることを特徴とする耐力壁。
【請求項2】
前記メタルプレートコネクタは、
前記下枠と前記縦枠との繋ぎ目線と、前記下枠における前記縦枠の側縁の延長線と、を跨いで連続して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の耐力壁。
【請求項3】
前記メタルプレートコネクタは、
前記上枠と前記縦枠との繋ぎ目線と、前記上枠における前記縦枠の側縁の延長線と、を跨いで連続して接合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐力壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77572(P2012−77572A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226186(P2010−226186)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】