説明

耐摩耗性の低摩擦被覆組成物、被覆を施した部品およびその被覆方法

【課題】耐摩耗性の低摩擦被覆組成物、被覆を施した部品およびその被覆方法を提供する。
【解決手段】被覆物の摺動、転動、微動または衝撃付与部材用の組成物が、TiB対BN比が1:7乃至20:1の範囲にあるTiBおよびBNの複合材粉末、ならびにニッケル、クロム、鉄、コバルト、アルミニウム、タングステン、カーボンおよびその合金から成るグループから選ばれる金属マトリックスを調製することにより形成される。マトリックス形成合金はW、Co、Cr、Fe、Ni、Mo、Al、Si、Cu、Y、Ag、P、Zr、Hf、B、Ta、V、Nbから成るグループから選ばれる合金およびその合金類である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触表面に用いられる耐摩耗性の低摩擦被覆組成物に関し、被覆組成物は、加工中の製品上に溶射、プラズマ溶射、無電解または電解めっきを限定なしに含む公知の方法により塗布することができる。
【背景技術】
【0002】
接触表面に用いる被覆物には、優れた耐溶湯腐蝕性、耐熱性、耐熱衝撃性、耐酸化性および耐摩耗性があることを求められるのが一般的である。被覆組成物は、特定用途、例えば、ガスタービンエンジン用シール、サイジング機器、航空機エンジン部品、成形機、ガラス繊維加工部品、銃器部品(銃尾、銃身、チョーク、消炎器、ガスポート)等により変わる。組成物は、部品または構成材の機能、すなわち、係止、排出、摺動、転動、回転、衝撃付与または軸受け等によっても変わる。先行技術の被覆組成物はさらに被覆物が付与する最終物性、すなわち、耐食性、耐微動および表面疲れ、耐摩擦性、硬い軸受け面の被覆物、柔軟な軸受け面の被覆物、熱バリア性または良導体、電気絶縁体、摩擦性、低摩擦係数または焦げ付き防止性によっても変わる。
【0003】
TiBはヌープ硬度が3000kg/mmであり温度が1000℃未満での優れた耐酸化性により、セラミックス切断機および他の構成材の破壊靭性を改善することは周知である。被覆組成物に用いられるすべての潤滑剤のうち、BNは耐食性を維持しつつ摩擦性を与えるためにしばしば用いられる。しかしながら、顧客がBNにより潤滑性を与えるべきか、所望の耐摩耗性を得るためにBNを除くかBNの量を減らして被覆組成物に靭性を与えるべきかを選択しなければならない用途もある。
【0004】
特許文献1には、焼結TiB粉末による溶射/プラズマ溶射被覆組成物が開示されている。特許文献2には、浸漬、被覆、スプレー塗装または塗装用途に用いられる、BNおよび任意にTiBが加えられた被覆組成物が開示されている。特許文献3には、BN、グラファイトまたはPTFE等の潤滑剤に、TiB、TiC等の成分を任意に有することからなり、任意成分が”湿度依存性がないことおよび熱安定性等の所望の性質を付与する”ために加えられる固体潤滑層を含む軸受けおよび被覆組成物が開示されている。特許文献4には、基板にフィルム形成被覆物として用いられるBN含有組成物等の粉末含有組成物において、BN被着被覆物の導電率を上げるためにTiB粉末がBN粉末に加えられる、またはBN被着被覆物の熱伝導度を上げるためにAlN粉末がBN粉末に加えられることからなる組成物が開示されている。
【0005】
蒸着ボートの製造においては、セラミックス材料の圧密体が成形品に加工される。その後、空孔そして/または溝が成形品から加工され蒸着ボートを形成する。蒸着ボートが仕様書通りに仕上げられるまで、相当量のスクラップ材が生成される。さらに、電気的な要求事項および設計仕様書を含む仕様(一つのメーカーに対し25超の変更仕様、http://www.advceramics.com/geac/products/intermetallic_boats/参照)を満たさないボートは、同様にスクラップ材として廃棄される。顧客サイトにおいておよびボートのタイプにより、二三時間操作後に、ボートにより最終的にボートの空孔となる深溝で溶湯による腐食が始まることもあり得る。空孔により蒸着された基板に不均一性が生じた場合、または金属スパッターによりボートに孔が生じた場合には、ボートは交換され廃棄されるのが一般的である。
【0006】
本特許出願者は、先行技術の耐摩耗性被覆物に用いられる成分が耐食性蒸着ボートにあることが分かるのが一般的であることに注目した。本特許出願者は、耐食性蒸着ボートおよび使用済み蒸着ボートからスクラップ品が大量に廃棄され、蒸着ボートに一般的に用いられる材料を必要とする多数の用途があることにも注目した。
【0007】
実施形態では、本発明は、BN等の材料から低摩擦(潤滑)性およびTiB等の材料から耐摩耗性(硬度)のバランスのとれた組み合わせを備えた複合材からなる被覆組成物に関するものである。第二の実施形態では、本発明は、例えば、TiB等の硬質材およびBN等の粉末固体潤滑剤で、両成分が蒸着ボートおよびサイドダムのスクラップ材にあることが分かるのが一般的であり、両成分を使用する被覆組成物に用いられる、例えば、1乃至1000ミクロンの範囲にある微細な粉砕された粒子等の廃棄物から有用材料を作ることにより、蒸着ボートそして/またはサイドダムからスクラップ材をリサイクル使用する新規かつ革新的な方法に関するものである。
【特許文献1】米国特許第5,837,327号
【特許文献2】米国特許第5,007,962号
【特許文献3】米国特許第6,994,475号
【特許文献4】米国特許第5,026,422号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属マトリックス中にTiBおよびBNの複合材粉末を有する転動または摩擦部品の接触表面を被覆し、金属マトリックスが少なくとも一つのニッケル、クロム、鉄、コバルト、アルミニウムおよびその合金からなる方法において、金属マトリックス中のTiB−BN複合材の混合物を、TiB対BN比が1:7乃至20:1である焼結複合材を形成する850℃および1600℃間で加熱し、焼結複合材を平均粒径が10乃至200μmの範囲まで微細化することにより複合材粉末が調製されることからなる方法に関するものである。
【0009】
別の態様では、本発明は、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、アルミニウム、タングステンおよびその合金から選ばれる金属マトリックスの複合粉末、およびTiB対BN比が1:7乃至20:1の範囲にあるTiBおよびBNの複合材粉末からなる、接触表面に用いられる被覆組成物に関するものである。
【0010】
別の態様では、本発明は、耐摩耗性の改善および摩擦緩和性を必要とするエンジン部品、軸受け表面、成形機、銃器部品、造粒機部品等の被覆用途において、組成物は、a)少なくとも一つのTiB、ZrB、TiN、SiC、Crおよびその混合物、ならびにb)少なくとも一つのBN、AlN、Si、希土類金属化合物の窒化物、アルミナ、シリカ、三酸化二ホウ素、オキシ窒化ホウ素、希土類金属化合物の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物およびその混合物からなる廃棄された耐食性セラミックス材料からリサイクル使用される、粒径中間値が1乃至1000μmの範囲にある固体粒子からなる被覆用途に関するものである。
【0011】
最後に、本発明は、ベース基板を有し、少なくとも一つのニッケル、クロム、鉄、コバルト、アルミニウムおよびその合金から成るグループから選ばれる金属マトリックス、ならびにTiB対BN比が1:7乃至20:1の範囲にあるTiBおよびBNの複合材粉末からなる複合粉末混合物からなる被覆層を有する摺動、転動、微動または衝撃付与部材において、被覆層がボートおよびサイドダム等のリサイクル使用/廃棄されたものからのセラミックス材料からなり、材料は平均一次粒径が1乃至1000μmの範囲にあることからなる部材に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここで用いられる、“第一”、“第二”等の用語は、いかなる順序または重要性をも表すものではなく、むしろ一つの要素を他と区別するために用いられ、“定冠詞”および“不定冠詞”の用語は量の限定を表わすものではなく、むしろ少なくとも一つの言及されたものがあることを表す。更に、ここで開示された範囲のすべては、終点を含み、独立に結合可能である。
【0013】
ここで用いられる、概略を示す言葉は、関係する基本性能の変更を招かずに変え得るいかなる定量表現の修飾にも適用し得る。従って、”約”および”ほぼ”等の単数または複数の用語で修飾される値は特定の厳密な値に限定し得ないこともある。
【0014】
ここで用いられる、“蒸着ボート”という用語は、”耐火ボート”、”蒸発ボート”、”蒸発容器”、”蒸発器ボート”、”金属蒸着用ボート“、または単なる”容器“もしくは”ボート“と同じ意味で用いても良く、セラミックス複合材からなる蒸着用加熱源のことである。
【0015】
ここで用いられる、溶射またはフレーム溶射被覆物は、溶融または軟化粒子が基板に被覆物を形成する方法により作られる被覆物である。実施形態では、粒子は表面に塗布後に軟化される。別の実施形態では、粒子は表面に塗布される前に軟化される。
【0016】
成分A−TiBおよびBNからなる複合材粉末
ここで用いられる、”複合材”という用語は、”複合材粉末”と同じ意味で用いても良く、各粒子が二つ以上の別個の材料を結合して成る(パウダーブレンドとは同じではない)粉末のことを言い、生じた粉末または材料は、例えば、TiBおよびBNのブレンド物とは明らかに異なる性質を有するTiBおよびBNからなる複合材粉末等、二つ以上の相異なる材料のブレンド物とは異なる物理的または化学的性質を有する。本発明において、TiBおよびBNの複合材粉末からなる発明性のある被覆組成物は先行技術の被覆組成物とは明らかに異なる性質を有し、TiBそして/またはBNおよび任意に他の成分を加えることからなり得る。
【0017】
二ホウ化チタン(TiB)は本質的に優れた硬度および高耐熱ならびに導電性を有するが、並みの破壊靭性および曲げ強度に問題がある。BNは本質的に優れた潤滑性、耐熱衝撃性の改善および耐溶湯攻撃性を含み多くの特別に優れた化学的、熱的、機械的および電気的性質を有する。しかしながら、BNの並みの硬度により、特に高摩擦負荷での厳しい摩擦用途での使用が制限される。本発明の被覆組成物には、TiBおよびBNの複合材が使用される。TiBおよびBNの複合材で作られる被覆物の性質は、焼結することなしに単に混合された粉末で作られたものに優る。本発明の被覆物は、両材料の最も優れた性質のバランスのとれた組み合わせを示す。
【0018】
実施形態では、BNおよびTiBからなる複合材粉末は、例えば、多数の供給元からの市販の原料等の初使用の材料から製造される。第二の実施形態では、複合材粉末は、蒸発ボートまたはサイドダム等のスクラップ品耐食性セラミックス材料からの素材からなる。リサイクル使用される材料はBNおよびTiBの両者からなり、1乃至1000μmの制御範囲の微細粒径のものなので、多数の用途でBNおよびTiBの初使用の混合物の代わりに用いても良い。
【0019】
TiBおよびBN成分からなる複合材粉末は、被覆組成物の最終重量の5乃至60重量%で存在する。実施形態では、その量は組成物の10乃至50重量%の範囲にある。第二の実施形態では、15乃至45重量%の範囲であり、第三の実施形態では、組成物の25乃至45重量%の範囲である。TiB対BN比は実施形態では、1:7乃至20:1の範囲にある。第二の実施形態では、1:6乃至9:1の範囲にあり、第三の実施形態では、1:5乃至8:1の範囲にある。
【0020】
実施形態では、複合材粉末組成物は35乃至80重量%のBNおよび20乃至80重量%のTiBからなる。別の実施形態では、複合材粉末組成物は40乃至65重量%のBNおよび25乃至65重量%のTiBからなる。
【0021】
実施形態では、複合材の粒径は10乃至800μmの範囲にあり、第二の実施形態では、20乃至500μmの範囲にある。第三の実施形態では、複合材は平均一次粒径が3乃至10μmである。
【0022】
実施形態では、複合材粉末はBET法比表面積が0.1乃至20.0m/gである。第二の実施形態では、複合材粉末はBET法比表面積が1乃至10.0m/gである。ここで用いられる、比表面積はブルナウア、エメットおよびテラーの方法、J.Am.Chem.Soc.、60、309(1938)、により得られた値であり、B.E.T.法比表面積として表わされる。
【0023】
実施形態では、複合材粉末製品は機械的強度が50Mpa超である。第二の実施形態では、複合材粉末製品は機械的強度が100MPa超であり、第三の実施形態では、機械的強度が500MPa未満である。
【0024】
実施形態では、複合材粉末は分散指数が0.05乃至0.9である。第二の実施形態では、粉末は分散指数が0.1乃至0.7である。
【0025】
被覆組成物の最終物性および所望の最終用途により、複合材粉末はさらに任意の成分からなり得る。実施形態では、組成物はさらに少なくとも一つのZr、Al、Crのホウ化物およびその混合物ならびにタングステン、Si、TiおよびCrの炭化物およびその混合物のグループから選ばれる導電性成分からなる。また、第三の実施形態では、複合材粉末はさらに金属窒化物、金属炭化物および金属酸化物からなり得る。実施形態では、複合材はさらに少なくとも一つの窒化アルミニウム、窒化ケイ素、希土類金属化合物の窒化物、アルミナ、シリカ、三酸化二ホウ素、オキシ窒化ホウ素、希土類金属化合物の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物およびその混合物等の非導電性成分からなる。また、別の実施形態では、付加成分はTiNである。第四の実施形態では、複合材粉末の任意の成分は金属、合金、サーメットまたはその粉末の組み合わせである。第五の実施形態では、BNおよびTiBの複合材はさらに先行技術の被覆組成物のセラミックス材料、例えば、ホウ化一モリブデン粉末、ホウ化二モリブデン粉末、一ホウ化クロム粉末、二ホウ化クロム粉末、二ホウ化ジルコニウム粉末、二ホウ化タンタル粉末、炭化タングステン粉末、炭化クロム粉末、炭化一モリブデン粉末、炭化二モリブデン粉末、コバルト粉末、コバルト合金粉末、クロム粉末、クロム合金粉末、モリブデン粉末、モリブデン合金粉末、タングステン粉末、タングステン合金粉末およびダイヤモンドダストからなる。
【0026】
スクラップ品耐食性セラミックス材料からのBNおよびTiBからなる複合材粉末:
蒸着ボートの製造においては、ボートは素地を形成する各種成分からなる混合物を成型し、素地の金型プレスそして/または素地の加熱プレスすることにより作製され、その後、帯鋸、グラインダー、放電加工(EDM)、放電加工研削(EDG)、レーザー、プラズマ、超音波加工、サンドブラストおよびウオータージェット等を含む手動または自動手段により所望の構造そして/または寸法に加工されるのが一般的である。そのプロセスにおいて、スクラップ材は鋸屑タイプの材料から大きな塊または特定の寸法公差を満たさない最終品蒸着ボートに至るまで、各種の形態、形状および粒径で生成される。所望の寸法公差のボートが加工された後、固有抵抗、強度および真空蒸着系の変動を最小にする他の物理特性を含む多数の他の仕様に対して適格性が確認される。これらの試験に合格しない加工済みボートは、同様にスクラップ材として廃棄される。蒸着プロセスの領域では、クラップ材は廃棄された蒸着ボートから生成される。上記プロセスからのスクラップ品、すなわち、仕様を満足しない蒸着ボート製造品、廃棄されたボートおよび真空蒸着操作からの廃ボートは集められ、被覆組成物として本発明における後続使用でリサイクル使用できる。
【0027】
BNおよびTiBからなる複合材粉末の発生元は、廃棄またはスクラップ品蒸着ボートに限定されないことに注意すること。廃棄またはスクラップ品サイドダムを限定なしに含み、他の発生元の可能性もある。サイドダムは、他の構成材の中でもBNおよびTiBからなる、鋼とアルミニウムの連続鋳造に用いられるセラミックス部品である。実施形態では、サイドダムは米国特許第5,336,454号、第5,401,696号および第6,745,963号に開示される組成物を有する。
【0028】
スクラップ品および廃棄されたセラミックス発生源の組成は、ボートまたはサイドダムの発生元、すなわちメーカーにより変わる。一般的には、耐食性組成物は、a)TiB、二ホウ化ジルコニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化クロムおよびその混合物等の導電性成分、ならびにb)BN、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、希土類金属化合物の窒化物、アルミナ、シリカ、三酸化二ホウ素、オキシ窒化ホウ素、希土類化合物の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物およびその混合物等の非導電性成分からなる。BNは六方晶系のBNもしくは無定形のBN、またはその混合物のいずれかである。
【0029】
実施形態では、BNおよびTiBの成分は10乃至60重量%のBN、0乃至60重量%の少なくともAlNまたはSiN、および30乃至70重量%の少なくともTiB、ホウ化ジルコニウム、ホウ化アルミニウム、ホウ化クロム、炭化ケイ素、炭化チタンおよび炭化クロムからなるスクラップ化された材料からのものである。別の実施形態では、BNおよびTiBの成分は20乃至50重量%のTiB、23.6乃至41重量%の主にTiBおよびBNの形で提供されるB、22.5乃至31重量%の主にBNの形で提供される窒素、および0.3乃至1.5重量%の主にホウ酸カルシウムの形で提供されるカルシウム(Ca)からなるリサイクル使用される蒸着ボートからのものである。また、スクラップ材が廃棄されたまたは使用済み蒸着ボートからなる別の実施形態では、材料はさらに3%未満のTiC、ZrC、HfC、VC、NbC、TaC、Cr、MoC、WC、金属アルコキシド、シリコンアルコキド、化合物、誘導体およびその混合物等の蒸着ボートに対して濡れ向上性そして/または耐食性を与えるために一般的に用いられる組成物からなり得る。
【0030】
スクラップ品が異なる発生元から来たものなので異なる組成物のものである実施形態では、具体的には、まず、異なるバッチの代表サンプルの化学組成が分析され、組成毎に異なるバッチに分類しても良い。リサイクル使用の一バッチのスクラップ品の幾つかは、所望の組成の仕込み品を含む最終固体粒子の規定範囲内の組成を有するバッチを得るように、異なる組成のバッチと混合しても良い。
【0031】
まず、ダブルコーンミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等を用いて同一収集品バッチまたは異なるバッチからの材料が任意に混合しても良い。最終固体粒子への粉砕は、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー、グラインダー、可逆インパクター等の公知の機器を用いて、圧縮、固着、剪断力の一つ以上を組み合わせるプロセスで行なっても良い。スクラップ材の更に細かい部分は、ボール、ペブル、ロッドもしくはチューブミル、ハンマー(インパクト)ミルまたはディスク(アトリッション)ミル等の粉砕機を含む公知の手段を用いる粉砕段階で粉砕しても良い。粉砕はリサイクル使用バッチのスクラップ材の組成の仕込み品、ならびにBNおよびTiBからなる最終複合材粉末の所望の性質により、乾式粉砕のみ、湿式粉砕のみ(粉砕媒体および粉砕液を含む粉砕混合物)、または両者の組み合わせでできる。粉砕後、複合材粉末は、例えば、連続遠心分離装置、液体サイクロン等の公知の装置またはプロセスを用いて分級される。さらに、上記工程のいずれも、生ずる複合材粉末が所望の組成の仕込み品および、例えば、1乃至1000μmの範囲にある粒径を有するように繰り返すことができる。
【0032】
初使用材からBNおよびTiBからなる複合材粉末:
実施形態では、複合材粉末はBNおよびTiBの混合物からなり、用いられる窒化ホウ素は六方晶系のBNであり、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク、シンテックケラミック、ESK、川崎化学およびサン・ゴバンセラミックス等の多数の供給元から市販されている。実施形態では、さらに被覆物に所望の特性を付与するためにBNは表面処理または”被覆”される。BNの表面被覆物の例には、アルミナ、ジルコニウム酸塩、ジルコニウムアルミン酸塩、アルミン酸塩、シラン類およびその混合物を限定なしに含む。BN粉末の粒径は最終用途による。実施形態では、BNは平均粒径が100μm未満である。第二の実施形態では、50μm未満である。第三の実施形態では、5乃至50μmの範囲にある。第四の実施形態では、5乃至30μmの間にある。第五の実施形態では、BNは粒径が1μm未満、すなわち、10乃至800nmの範囲にあるナノサイズ粒子であり、実施形態では、超音波処理およびプラズマ支援パルスレーザ蒸着法を限定なしに含む公知のプロセスにより作られる、10乃至100nmの範囲にある。
【0033】
二ホウ化チタン(TiB)は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク、プレマテックLLC、リード・アドバンスト・マテリアルズおよびセラダイン社等の多数の供給元から市販されている。TiBの粒径は最終被覆用途による。実施形態では、TiBは平均粒径が20μm未満である。第二の実施形態では、粒径が15μm未満である。第三の実施形態では、粒径が5μm未満である。第四の実施形態では、セラミックス材料をナノ粒子サイズまで微粉化する公知の高エネルギーボールミル法、超音波処理法または他の方法で粉砕後、TiBは粒径が100nm未満である。
【0034】
実施形態では、複合材TiB−BN粉末は、融解を伴わずに凝集塊を形成する十分な温度にTiB−BNの混合物を加熱することにより形成される。また、別の実施形態では、被覆組成物の個別成分として与えられるTiB―BN複合材において、TiB−BNの混合物が融解を伴わずに凝集塊を形成する十分な温度に加熱される。
【0035】
また、別の実施形態では、複合材は少なくとも50%の理論密度(TD)を有する素地を形成し、TiB−BNの混合物よりなり素地を金型プレスすることにより形成される。実施形態では、次いで、素地は少なくとも圧力約100Mpaにおいて少なくとも圧密化温度約1000℃に加熱される。別の実施形態では、素地は圧力1乃至100Mpaにおいて温度1800乃至2200℃に等方圧で加熱プレスされる。また、別の実施形態では、0.5乃至200Mpaの単軸プレスまたは冷間等方圧プレス後に加熱プレスが行われる。実施形態では、素地は温度1000℃超で常圧焼結により圧密化される。別の実施形態では、素地はスリップ鋳造、テープ鋳造、一時使用金型鋳造または遠心鋳造等のプロセスで形成される。次の工程では、素地は粗破砕用のクラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等を含む公知の破砕手段を用いて粗破砕される。破砕段階後、破砕された材料は粉砕段階用の粉砕機に直接供給するか、まず、大粒片を破砕段階に戻してリサイクル使用し、更に細かい部分を粉砕段階に進められるように粒径毎に分級するかを選択することができる。粉砕は粉砕対象の材料の組成の仕込み品により乾式粉砕のみ、湿式粉砕のみ(粉砕媒体および粉砕液を含む粉砕混合物)、または両者の組み合わせができる。
【0036】
反応工程で生成されたBNおよびTiBからなる複合材粉末
また、第三の実施形態では、複合材粉末は反応工程で生成される。複合材粉末を生成する反応工程の一例は米国特許第5,100,845号に開示された通りであり、少なくとも一つのチタン含有化合物、少なくとも一つのホウ素含有化合物、微粒子カーボンおよび少なくとも一つの窒素含有化合物の混合物が、合成品の二ホウ化チタンおよび窒化ホウ素組成物の混合物を製造する十分な時間、例えば、少なくとも1400℃の高温に加熱される。
【0037】
実施形態では、BNおよびTiBの複合材粉末がBN基板およびチタン源を用いて生成され、BN基板は六方晶系のBNであり、多数の供給元から市販されている。好ましくは、チタン源はいかなる微細化可能形態のチタン、または微細化されたチタン源であり得る。従って、TiO、TiO、Ti、Ti、TiC、TiN、TiH等の微細化可能または微細化された形態および微細化されたチタンハロゲン化物である。実施形態では、Ti源はTiOである。実施形態では、還元剤、例えば、水素ガスまたは炭化水素等のカーボン源、水素源がチタン源を還元するために用いることができる。
【0038】
実施形態のBNおよびTiBの複合材粉末は、まず、個々の反応剤を混合して加熱することにより作られる。この混合は公知の乾式混合または湿式混合法のいずれかを用いて行うことができる。実施形態では、反応剤の平均粒径が約20ミクロン未満であり、約50ミクロン超の分離した反応剤領域が本質的にはないように均質混合が行なわれる。次の工程では、BNおよびTiBの複合材粉末を製造する十分な条件下で材料が反応される。実施形態では、温度として少なくとも1000℃、例えば、1200乃至約2000℃に加熱することにより反応が行なわれる。また、別の実施形態では、不活性または反応に影響を及ぼさない雰囲気下、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、一酸化炭素、キセノン、クリプトンおよびその混合物の存在下で加熱される。
【0039】
成分B−マトリックス成分
ここで用いられる、金属または金属性という用語は、金属、合金、サーメットまたはその組み合わせのことである。実施形態では、被覆組成物はさらに少なくとも一つの金属、合金またはサーメット粉末成分、高耐熱性ポリマーまたはその混合物の被覆組成物の1乃至95重量%からなり、被覆組成物のマトリックスを形成する。
【0040】
実施形態では、金属性成分はW、Co、Cr、Fe、Ni、Mo、Al、Si、Cu、Y、Ag、P、Zr、Hf、B、Ta、V、Nbおよびその混合物のグループから選ばれる金属粉末である。第二の実施形態では、金属含有成分が被覆対象の基板に被着する被覆層のBN/TiBと複合材を形成する。第三の実施形態では、金属性成分は炭化タングステンサーメット(WC−Co−Cr)である。
【0041】
実施形態では、金属粉末は少なくとも一つの鋼基板に良好に結合するNi、Cr、TiまたはSiを含む合金である。第二の実施形態では、金属粉末は10乃至25重量%のモリブデン、55乃至70重量%のニッケル合金および5乃至25重量%のクロム金属、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化タングステンまたはその混合物である。第三の実施形態では、金属粉末は少なくとも一つのAg、Cu、Mn、CrおよびSiを含む融点が約750乃至1000℃の範囲にある合金からなる。第四の実施形態では、金属粉末はニッケル、コバルトそして/または鉄を、最大20%のクロムおよび少量のホウ素、シリコンおよびカーボンを含む自溶性合金である。第五の実施形態では、金属粉末は高温用途向けのものであり、少なくとも0.5乃至約3%のハフニウムを含み、ニッケル、コバルトおよびその混合物から成るグループから選ばれるバランスを有する。第六の実施形態では、金属粉末は30乃至70重量%のモリブデン、1乃至40重量%のコバルトおよび10乃至30重量%の少なくとも一つのNi、Cr、TiまたはSiを含む。
【0042】
実施形態では、金属性成分の代わりに、被覆組成物は1乃至95重量%の高耐熱性ポリマー、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族プラスチックおよびその混合物から成るグループから選ばれるポリマーからなる。
【0043】
実施形態では、金属マトリックス成分に加えて、被覆組成物はさらに1乃至30重量%の高耐熱性ポリマー、特に、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族プラスチックおよびその混合物から成るグループから選ばれるポリマーからなる。
【0044】
成分C−任意の結合剤/他の成分:部品または構成材の被覆物の多孔性を上げる実施形態では、粒径範囲が1乃至200μmの結合剤が、(フレーム)溶射またはプラズマ溶射法の前に1乃至30重量%で複合材に混合できる。多孔性および浸透性被覆物を得るために、一時使用の結合剤が被着、燃焼または浸出される。結合剤の例には、合成アクリルまたはメタクリル樹脂、熱硬化リン酸塩結合剤、熱硬化ケイ酸カリウム結合剤およびその混合物が含まれる。
【0045】
最終用途により、付加成分を被覆組成物に導入し得る。付加成分は凝集体の平均粒径より小さな粒径分布を有する単一分布または複数分布の粒子からなることができる。用い得る任意の成分の一つは、無煙炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、バックミンスターフラーレンまたは前記の組み合わせ等の不溶性カーボンであり得る。他の付加成分は、潤滑剤、流動促進剤、流動補助剤、分散剤、界面活性剤または消泡剤であり得、以下に説明する。他の付加成分は所望の複合材構造物の性質を修正できるような他のタイプのセラミックスまたはマトリックス相であり得る。被覆組成物に用い得る添加剤の他の例には、グラファイト、二硫化モリブデン、フッ化カルシウム、ベントナイト、ムライト等の固体潤滑剤粒子、最終被覆構造物の細孔を形成する薬剤、または最終被覆組成物の摩擦性を向上させる物質である。実施形態では、被覆組成物はさらに金属または合金で被覆された固体潤滑剤粉末、または高耐熱性ポリマーでできている粒子からなり、粒径が0.5乃至40μmであり、金属またはポリマーはマトリックス成分からなる物質と同じでも異なっても良い。
【0046】
実施形態では、被覆組成物はさらに少なくとも一つのZr、Al、Crのホウ化物およびその混合物ならびにタングステン、Si、TiおよびCrの炭化物およびその混合物のグループから選ばれる導電性成分からなる。また、別の実施形態では、被覆組成物はさらに金属窒化物、金属炭化物および金属酸化物からなり得る。実施形態では、被覆組成物はさらに少なくとも一つの窒化アルミニウム、窒化ケイ素、希土類金属化合物の窒化物、アルミナ、シリカ、三酸化二ホウ素、オキシ窒化ホウ素、希土類金属化合物の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物およびその混合物等の非導電性成分からなる。また、別の実施形態では、付加成分はTiNである。
【0047】
被覆組成物を形成する方法
本発明の実施例では、被覆組成物はマトリックス形成金属または合金中の窒化ホウ素(BN)−二ホウ化チタン(TiB)の複合材粒子からなる。第二の実施形態では、複合材被覆組成物は金属または合金粉末との凝集粒子からなり、各々の凝集体が複数のBN/TiBの複合材粒子からなり、複合材粒子が金属または合金粉末と混合されるためのものであり、溶射法で金属およびTiB/BN成分からできている複合材を同時に形成する。また、別の実施形態では、被覆組成物は金属または合金粉末で被覆されたBN/TiBの複合材粒子からなり、溶射、浸漬、塗装、ブラッシング、プラズマ溶射等の被覆用途の後続使用のためのものであり、金属そして/または合金で被覆されたTiB/BNの複合材が、溶射、浸漬、塗装、ブラッシング、プラズマ溶射等の被覆工程で同時に形成される。
【0048】
実施形態では、BN/TiB複合材および金属/サーメット粉末を共に乾式混合、電解被覆、流動床、CVDまたは噴霧乾燥することを含む公知の方法を用いて、BN/TiB複合材が金属/サーメット粉末と混合または被覆され、金属層で中心核を被覆された複合材粒子用のものである。金属粉末被覆BN/TiB複合材は公知の熱被覆法により接触表面に塗布される。実施形態では、焼結被覆粉末組成物は、金属被覆BN/TiBの複合材粉末組成物の混合物を、少なくとも合金の10%がBN/TiB粒子への拡散を確実にする十分な時間、温度約850℃および1600℃、実施形態では、1000℃から1400℃に加熱することにより調製される。第二の実施形態では、複合材粉末は温度1000℃乃至1400℃に加熱される。
【0049】
次の工程では、焼結製品は特定用途で所望される特性により所望の粒径に破砕/粉砕される。焼結粉末は被覆層を形成する基板に爆発またはプラズマ溶射被着により塗布される。
【0050】
実施形態では、セラミックス転化が行なわれる場合にカルボシラン結合−(Si−C)−そして/またはシロキサン結合−(Si−O)−が残る有機ケイ素ポリマーからなる封止剤とTiB−BN複合材との混合により封止組成物が調製される。TiB−BN複合材は、複合材を形成する十分な高温でBNおよびTiB粉末または素地の混合物を焼結することにより調製される。その後、その混合物は比表面積が0.1乃至20.0m2/g、および粒径が5乃至500μmの範囲にあるBN/TiBを主成分とする微細複合材粉末製品を形成するために破砕/粉砕される。TiB−BN複合材含有組成物は、後続のスプレー塗布用の二酸化炭素等の従来の噴射ガスを含むエアゾール缶に用いることができる。
【0051】
金属粉末が第一の金属被覆層を形成する基板に熱溶射された後、金属被覆層の空隙を充填するために金属基板に刷毛塗り、浸漬または噴霧してTiB−BN封止組成物が金属被覆層に塗布される。次の加熱工程では、TiB−BN複合材は、金属のマトリックスに熱分解または溶融し、TiB−BN−金属複合材を形成する。
【0052】
本発明の組成物による被覆対象品
被覆用途においては、TiBとの複合材粉末は、高熱伝導性、導電性、硬度および強度および耐溶湯攻撃性等の優れた性質を示す。被覆用途を限定なしに含む各種用途においては、BNとの複合材粉末は電気絶縁性、耐熱衝撃性の改善、耐溶湯攻撃性、高温安定性および潤滑性等のBNに固有の性質を示し、PTFE、グラファイト、MoS、WS、MnS等の特定材料に付加または代替して用い得る。
【0053】
被覆組成物は耐摩耗性の改善および摩擦緩和性の両者を要求する用途、例えば、被覆物の摺動、転動、微動、衝撃付与部材または部品等の使用に適する。例には、耐熱衝撃性の改善、金属の不濡れの改善および耐食性の改善を要求する被覆用途を限定なしに含み、例えば、ノズル用被覆物、エンジン部品用耐摩耗性被覆物、金属、プラスチック、エラストマー、セラミックスおよび複合材を成形品に形成する、転動、紡糸、剪断加工、曲げ加工、引き抜き加工、スエージ加工、鍛造、鋳造、押出成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、引抜および積層を含む操作に用いられる成形機用の耐摩耗性被覆物、内燃機関またはガスタービンエンジン部品用の被覆物、銃尾、銃身、チョーク、消炎器、ガスポート、または固着、排出、摺動、回転もしくは軸受けに使われるいかなる銃器部品の磨耗表面等の銃器部品用の被覆物、粉砕機、分級機、サイクロン、篩等の粉砕機器に用いられる部品用被覆物等を限定なしに含まれる。実施形態では、被覆物はタービン、バルブおよびゲートシート、ポンプシール、導管、ファンブレード、糸案内、伸線加工キャプスタンおよびマンドレルに塗布される。
【0054】
ここで用いられる、”基板”は、被覆対象の部品、部材または構成材のことである。被覆対象の基板材料は、金属、合金、サーメット、セラミックスおよびガラスから選ばれるがそれには限定されない。実施形態では、高耐熱性熱可塑性樹脂が基板用材料として用いられる。被覆対象の基板用金属材料の例には、Al、Fe、Si、Cr、Zn、Zr、Niおよびその合金が含まれる。基板用セラミックス材料の例には、金属窒化物、金属炭化物、アルミナ等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素および炭化ケイ素が含まれる。ガラスの例には、石英ガラスが含まれる。
【0055】
被覆組成物を塗布する方法
本発明の被覆物は、爆発またはプラズマ溶射被着、高速燃焼溶射(超音波ジェット溶射を含む)、フレーム溶射およびいわゆる高速プラズマ溶射法(低圧または真空溶射法を含む)を限定なしに含む公知のいかなる被覆法でも塗布できる。用い得るプラズマガスの実例で無限定の例には、窒素/水素、アルゴン/水素、アルゴン/ヘリウムおよびアルゴン/窒素が含まれる。溶射条件にはいかなる限定もない。
【0056】
実施形態では、被覆組成物はプラズマもしくは燃焼フレーム、またはガス式高速フレーム溶射(HVOF)もしくは圧縮空気による高速フレーム溶射(HVAF)燃焼フレーム中で加熱され、組成物を被覆物形成表面に噴射することにより被着される。
【0057】
実施形態では、まず、基板はエッチングまたはパターン化により調製され、被覆前に粗面化領域のパターンを作成する。任意の表面作製工程後、まず、従来のスプレーガンを用いて基板上に被覆物を噴霧することにより熱被覆物が塗布される。次に、被覆物が融着する十分な時間、フレームトーチまたは炉で、例えば、950℃に加熱することにより生じた被覆物が溶融される。
【0058】
また、別の実施形態では、BN/TiB複合材を含む被覆物が基板上に被着される場合に、被覆物を形成する基板に被覆物が拡散し取り込まれるように十分に加熱されるように、被覆対象の基板を加熱することにより熱被覆物が塗布される。
【0059】
実施形態では、TiB−BN複合材からなる被覆物は基板に刷毛塗りまたは噴霧されるか、付着粉末被覆物を作るために基板を組成物に浸漬しても良い。本発明の粉末含有組成物も、二酸化炭素等の従来の噴出ガスを含むエアゾール缶に用いても良い。本実施形態では、新規の粉末含有組成物は、基板にそのまま残る粉末の付着被覆物を作るようにエアゾール缶から基板表面に直接分散させても良い。エアゾール用途に適するいかなる噴出ガスも本発明の組成物の粉末含有組成物と共に用いても良い。
【0060】
また、実施形態では、TiB−BN複合材は溶射に基づく被覆物、具体的には、米国特許第5,837,327号に開示されるように、金属または合金(M)マトリックス中の50容量%超のTiB硬質相粒子からなるTiB−Mに基づく被覆物に用いられる。実施形態では、微粒子のTiB−BN複合材粉末は、米国特許第5,454,168号に開示された金属性フィルム記録媒体用の保護被覆組成物に用いられる。材料に本質的に存在するBNは、当該被覆物に潤滑性、耐食性および摩擦性の向上等の付加価値をもたらし、固有の潤滑性を有する保護部品の寿命を延ばす。
【0061】
また、別の実施形態では、TiB−BN複合材粉末は、米国特許出願弟2005/0112399号に開示された組成物により、タービン部品と共に用いる耐食性被覆物、電気めっきまたは無電解めっき用途のいずれであれ、それに導入しても良い。実施形態では、TiB−BN複合材はセラミックス被覆物および耐火金属の合金からなる組成物に用いられ、本発明のTiBおよびBN混合物は被覆物への潤滑性および硬度の向上等の付加特性を与え、TiB/BN複合材粉末混合物は35乃至80重量%のBN、20乃至80重量%のTiBおよび100μm未満の平均粒径からなる。
【0062】
別の実施形態では、TiB−BN複合材は、米国特許第5,049,450号および米国特許出願第2005/0155454号に開示された被覆物により、複数のBNの超微粒子および金属または合金の超微粒子を有する摩擦性の溶射被覆物に用いても良い。また、実施形態では、当該複合材は米国特許出願第2004/0194662号の開示による溶射粉末に用いられ、TiB2はZrB、炭化ホウ素、SiC、TiC、WCおよびダイヤモンドダスト等のセラミックス材料に加えてまたはその代わりに用いられる。
【0063】
実施形態では、TiB−BN複合材は、マトリックス形成金属、合金または高耐熱性ポリマーが複合材粉末の金属皮覆として存在する溶射被覆物に用いられる。実施形態では、金属被覆TiB−BN複合材は、金属皮覆TiB−BN複合材粒子および金属未皮覆TiB−BN複合材粒子、または他の任意の滑剤性粒子の混合物からなる溶射被覆物に用いられる。第二の実施形態では、マトリックス形成合金は、米国特許公開公報第20050287390A1号および米国特許第5,702,769号に開示された、Ni、Co、Cu、Fe、Al金属およびその組み合わせならびに、例えば、NiCrAl、NiCr、CuAlおよびAlSi等の合金から選ばれる。
【0064】
実施形態の基板表面の被覆物は厚さが50乃至500μmである。第二の実施形態では、150乃至300μmである。第三の実施形態では、500μm未満である。厚さが500μm超の被覆物は厚過ぎて層間剥離を起す危険性があり得ることに注意すること。
【0065】
実施形態では、被覆物は表面粗さが最大60μm、第二の実施形態では、最大20μmである。
以下に、本発明の実施例を説明により限定なしに示す。
【実施例1】
【0066】
理論密度が60%である窒化ホウ素45重量%および二ホウ化チタン65重量%からなる素地が、理論密度が少なくとも90%になるように圧力約100MPaで圧密温度1400℃に加熱される。素地はハンマーミルを用いて更に小片に破砕され、その後ディスク(アトリション)ミルを用いて粉砕される。粉砕された粉末は平均粒径が15乃至30μmの複合材粉末を得るために、例えば、タイラー標準篩により篩にかけられる。粉末はシリコン12重量%を含むアルミニウム粉末の微粉と混合される。スラリーを形成するために有機結合剤(UCAR ラテックス879)が金属および複合材粉末と混合される。材料が乾燥し凝集粉末が形成されるまで混合物は約150℃に加熱し撹拌混合される。その後、粉末は粒径が40乃至210μmになるよう篩にかけられる。粉末は被覆物が30μmの基板上にプラズマガンで溶射される。
【0067】
ここで参照した引用はすべて参考までにここに明示して入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触表面に用いる被覆組成物において、5乃至60重量%の平均一次粒径が1乃至1000μmの範囲にある複合材粉末の総量、マトリックス形成金属、合金または高耐熱性ポリマーのバランスからなり、複合材粉末はTiB対BN比が1:7乃至20:1のTiBおよびBN粉末の混合物からなる被覆組成物。
【請求項2】
請求項1記載の被覆組成物において、マトリックス形成合金はW、Co、Cr、Fe、Ni、Mo、Al、Si、Cu、Y、Ag、P、Zr、Hf、B、Ta、V、Nbから成るグループから選ばれる合金およびその合金類であることからなる被覆組成物。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の被覆組成物において、マトリックス形成高耐熱性ポリマーがポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族プラスチックおよびその混合物から成るグループから選ばれることからなる被覆組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の被覆組成物において、マトリックス形成合金は、さらに、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族プラスチックおよびその混合物から成るグループから選ばれる高耐熱性ポリマーが組成物の1乃至約30重量%からなる被覆組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の被覆組成物において、複合材粉末は、TiB対BN比が1:6乃至9:1のTiBおよびBN粉末の混合物からなり、BET法比表面積が0.1乃至20.0m/gであることからなる被覆組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の被覆組成物において、複合材粉末は平均一次粒径が10乃至800μmの範囲にあることからなる被覆組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の被覆組成物において、複合材粉末は機械的強度が50Mpa超であることからなる被覆組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の被覆組成物において、複合材粉末は、一つの廃棄された蒸着ボート、廃棄されたサイドダム、スクラップ化された蒸着ボート、スクラップ化されたサイドダムおよびその混合物から生成されることからなる被覆組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の被覆組成物において、複合材粉末は、10乃至60重量%のBN、1乃至60重量%のTiB、0乃至60重量%の少なくとも一つのAl、Si、Fe、Co、Ni元素の窒化物およびその混合物、ならびに30乃至70重量%の少なくとも一つのTi、Zr、Al、Crのホウ化物およびその混合物、Si、TiおよびCrの炭化物およびその混合物のグループから選ばれる材料を含むリサイクル使用そして/または廃棄された材料からなる被覆組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の被覆組成物において、複合材粉末は、少なくとも一つのTiB、BNおよび窒化アルミニウム、少なくとも一つのW、Fe、Co、Nb、Mo、Hf、VおよびTaから選ばれる金属、ならびに少なくとも一つのCaO、MgO、Al、TiO、Y、YAG(Al12)、YAP(AlYO)およびYAM(Al)化合物およびその混合物のグループから選ばれる酸化物を含むリサイクル使用そして/または廃棄された材料からなる被覆組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の被覆組成物において、複合材粉末はさらに少なくとも一つのニッケル、クロム、鉄、コバルト、アルミニウムおよびその合金からなる被覆組成物。
【請求項12】
接触表面に被覆物を作る方法において、平均一次粒径が1乃至1000μmの範囲にある複合材粉末を含む被覆組成物、マトリックス形成合金または高耐熱性ポリマーのバランスを与え、複合材粉末はTiB対BN比が1:7乃至20:1のTiBおよびBN粉末の混合物からなり、接触表面上に被覆組成物を熱的に被着する工程からなる方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、TiB対BNの複合材粉末からなる被覆組成物を与える工程が、さらに、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、アルミニウムおよびその合金から成るグループから選ばれる粉末成分を用いて、焼結複合材を形成する850℃および1600℃の間に混合物を加熱することによりTiBおよびBNの複合材粉末を焼結する工程からなる方法。
【請求項14】
接触表面に用いる被覆組成物において、組成物は、複合材粉末混合物がニッケル、クロム、鉄、コバルト、アルミニウム、タングステンおよびその合金から成るグループから選ばれる金属マトリックスならびにTiBおよびBNの複合材粉末からなり、金属性成分が最終被覆組成物の40乃至95重量%の範囲で存在し、TiBおよびBNの複合材粉末のTiB対BN比が1:7乃至20:1の範囲にあることからなる方法。
【請求項15】
溶射被覆用途用の複合材粉末において、平均粒径が1乃至1000μmおよびBET法比表面積が0.1乃至20.0m/gであり、比が1:7乃至20:1の範囲にあるTiBおよびBNからなる複合材粉末。
【請求項16】
請求項15記載の複合材粉末において、機械的強度が50Mpa超であることからなる複合材粉末。
【請求項17】
請求項15乃至16のいずれかに記載に複合材粉末において、複合材粉末は、少なくとも一つの廃棄された蒸着ボート、廃棄されたサイドダム、スクラップ化された蒸着ボート、スクラップ化されたサイドダムおよびその混合物から選ばれる廃棄/リサイクル使用されたものから生成されることからなる複合材粉末。
【請求項18】
ベースメタルを有し少なくとも外表面の一部に形成された少なくとも一つの被覆層を有する摺動、転動、微動または衝撃付与部材において、前記被覆層が一つの廃棄またはスクラップ品蒸着ボート、廃棄またはスクラップ品サイドダムまたはその混合物からリサイクル使用される材料を含み、前記リサイクル使用される材料が少なくとも一つのTiB、二ホウ化ジルコニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化クロムおよびその混合物等の導電性成分、少なくとも一つのBN、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、希土類金属化合物の窒化物、アルミナ、シリカ、三酸化二ホウ素、オキシ窒化ホウ素、希土類金属化合物の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物およびその混合物等の非導電性成分からなることを特徴とする部材。
【請求項19】
請求項18記載の摺動、転動、微動または衝撃付与部材において、前記少なくとも外表面の一部に形成された少なくとも一つの被覆層が少なくとも一つの廃棄された蒸着ボート、廃棄されたサイドダム、スクラップ化された蒸着ボート、スクラップ化されたサイドダムおよびその混合物からリサイクル使用される材料を含み、前記リサイクル使用される材料が10乃至60重量%のBN、0乃至60重量%の少なくとも一つのAl、Si、Ti、Fe、Co、Ni元素の窒化物およびその混合物、ならびに30乃至70重量%の少なくとも一つのTi、Zr、Al、Crのホウ化物およびその混合物、ならびにSi、TiおよびCrの炭化物のグループから選ばれる電導性材料からなる部材。
【請求項20】
ベースメタルを有する摺動、転動、微動または衝撃付与部材の少なくとも一部の表面の被覆に用いる組成物において、被覆組成物が一つの廃棄またはスクラップ品蒸着ボート、廃棄またはスクラップ品サイドダムまたはその混合物からリサイクル使用される材料を含み、前記リサイクル使用される材料が少なくとも一つのTiB、二ホウ化ジルコニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化クロムおよびその混合物等の導電性成分、ならびに少なくとも一つのBN、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、希土類金属化合物の窒化物、アルミナ、シリカ、三酸化二ホウ素、オキシ窒化ホウ素、希土類金属化合物の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物およびその混合物等の非導電性成分からなる部材。

【公開番号】特開2007−211339(P2007−211339A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−345092(P2006−345092)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】