説明

耐熱光学部品用材料

【課題】高い透明性および高い耐熱性を有する光学部品用材料を提供する。
【解決手段】50〜100質量%の下記一般式(I)


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基および炭素数3〜20のシクロアルキル基から選ばれる基を示す。Aは、フェニル基、炭素数1〜20のアルキレン基および炭素数3〜20のシクロアルキレン基から選ばれる基を示す。nは0または1である。)で表されるアダマンチル基をエステル置換基とする(メタ)アクリル酸誘導体と0〜50質量%の前記以外のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの1種以上を重合してなる重量平均分子量100万以上の重合体を含む耐熱光学部品用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品における耐熱透明材料に関する。詳しくは耐熱性を有し、かつ熱に対して安定で黄変が発生せず、透明性、加工性にも優れた光学部品用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂などが知られている。これらの樹脂は、工業的にも大量に製造され、その良好な透明性を生かし、各分野で大量に使用されている。その透明性はもちろんのこと、軽量性、切削性および研磨性を活かしガラス代替としてプラスチックが利用されている。さらに近年の軽薄短小化を反映して、より熱源に近い位置で使用される場合が多くなり、光線透過率などの光学特性に加えてさらに高い耐熱性が求められている。しかしながら、これらの樹脂は、耐熱性が必ずしも充分ではなく、例えば上記樹脂のうち一番耐熱性の高い樹脂とされるポリカーボネートでも、その耐熱性の指標であるガラス転移温度は150℃程度であり、より高い耐熱性を持つ新しい素材の開発が望まれている。
【0003】
例えば、光学部品用材料分野においては、ポリ(メタ)アクリレート系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリスチレン系重合体、エポキシ樹脂などの透明性重合体の利用が提案されており、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート系重合体やポリカーボネート系重合体はすでにこれらの用途に実際に利用されている。しかし、従来から知られているポリ(メタ)アクリレート系重合体の中でポリメチルアクリレートは耐熱性、耐熱安定性に劣り、耐薬品性、耐溶剤性などの性能に劣り、吸水性が大きく耐水性に劣るので、これらの性能の要求される分野では利用できないという欠点があつた。また、ポリメチルメタクリレートでも、特に耐熱性、耐熱安定性の要求される分野では利用できないという問題があった。
この光学用材料の分野において、従来から知られているポリ(メタ)アクリレート系重合体の上述の問題を改善しようとするものとして多環式脂環族アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体またはこの多環式脂環族アルキル(メタ)アクリレートと各種の(メタ)アクリレート系単量体の共重合体を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。これら特許文献1および2に開示された多環式脂環族アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体またはその共重合体は、いずれも従来から使用されているポリメチル(メタ)アクリレートに比べて耐熱性および耐熱安定性は改善されるが、その改善の程度は小さく、実用上の性能も充分でない。それゆえ、耐熱性および耐熱安定性に優れた重合体が光学用材料の分野では強く要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平07−17713号公報
【特許文献2】特開平06−208001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような状況から、導光板、プリズム、液晶パネル、MD・CD・DVD用光学部品、光学レンズ、プロジェクターレンズ、ヘッドランプレンズ等の用途に適した高い透明性および高い耐熱性を有する光学部品用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アダマンチル基をエステル置換基とする(メタ)アクリル酸誘導体を重合してなる重量平均分子量100万以上の重合体を含む材料により、耐熱性を有し、且つ光学部品用に適する透明性と黄変防止能を有する材料が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下の耐熱光学部品用材料および耐熱光学レンズを提供するものである。
1.50〜100質量%の下記一般式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基および炭素数3〜20のシクロアルキル基から選ばれる基を示す。Aは、フェニル基、炭素数1〜20のアルキレン基および炭素数3〜20のシクロアルキレン基から選ばれる基を示す。nは0または1である。)
で表されるアダマンチル基をエステル置換基とする(メタ)アクリル酸誘導体と0〜50質量%の前記(メタ)アクリル酸誘導体以外のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの1種以上を重合してなる重量平均分子量100万以上の重合体を含むことを特徴とする耐熱光学部品用材料。
2.前記(メタ)アクリル酸誘導体が1-アダマンチルメタクリレートである上記1に記載の耐熱光学部品用材料。
3.前記メタクリル酸エステルがメチルメタクリレートである上記1に記載の耐熱光学部品用材料。
4.樹脂成分全量100質量部に対し、酸化防止剤0.01〜5質量部を配合してなる上記1〜3のいずれかに記載の耐熱光学部品用材料。
5.上記1〜4のいずれかに記載の耐熱光学部品用材料を用いたことを特徴とする耐熱光学レンズ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐熱光学部品用材料は、耐熱性を有し、且つ光学部品用に適する透明性と黄変防止能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の耐熱光学部品用材料は、50〜100質量%の下記一般式(I)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基および炭素数3〜20のシクロアルキル基から選ばれる基を示す。Aは、フェニル基、炭素数1〜20のアルキレン基および炭素数3〜20のシクロアルキレン基から選ばれる基を示す。nは0または1である。)
で表されるアダマンチル基をエステル置換基とする(メタ)アクリル酸誘導体と0〜50質量%の前記(メタ)アクリル酸誘導体以外のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの1種以上を重合してなる重量平均分子量100万以上、好ましくは140万以上の重合体を含むものである。この重量平均分子量の上限は、1000万程度である。上記アダマンチル基としては、特に1−アダマンチル基が好ましい。
耐熱光学部品用材料で用いる重合体の重量平均分子量が100万以上であると、大きい曲げ強度を有する硬化物を得ることができる。
【0014】
本発明の耐熱光学部品用材料に含まれる重合体は、前記(メタ)アクリル酸誘導体の単独重合体であってもよく、前記(メタ)アクリル酸誘導体と、コモノマーである前記(メタ)アクリル酸誘導体以外の他の(メタ)アクリル酸誘導体1種以上とを重合してなる共重合体であってもよい。他の(メタ)アクリル酸誘導体として、例えば、メチルアクリレート、フルオロメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、1,2,2,2-テトラクロロエチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロビルアクリレート、2-クロロ-1-(クロロジフルオロメチル)エチルアクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアクリレート、1-メチルエチルアクリレート、2-(メチルチオ)エチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ブロペニルアクリレート、1-エトキシ-2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2-(エチルチオ)エチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルアクリレート、3-(メチルチオ)プロピルアクリレート、1-メチルプロピルアクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルアクリレート、4-オキサペンチルアクリレート、2-(トリフルオロエトキシ)エチルアクリレート、2-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エチルアクリレート、3-(エチルチオ)プロピルアクリレート、1-エチルプロピルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルアクリレート、2,2-ジメチルプロピルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチルアクリレート、4-メチルチオブチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、3-メチルブチルアクリレート、4-オキサヘキシルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルブチルアクリレー卜、2-メチルペンチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、フェニルアクリレート、2-クロロフェニルアクリレート、4-クロロフェニルアクリレート、2,4-ジクロロフェニルアクリレート、ペンタクロロアクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロアクリレート、ペンタフロロアクリレート、ヘプチルアクリレート、フェニルメチルアクリレート、2-メチルフェニルアクリレート、3-メチルフェニルアクリレート、4-メチルフェニルアクリレート、1-メチルヘキシルアクリレート、4-メトキシフェニルアクリレート、オクチルアクリレート、2-フェニルエチルアクリレート、1-メチルヘブチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレートなどのアクリル酸エステルや、
【0015】
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-クロロエチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2-ニトロエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、プロビルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2-クロロプロピルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロビルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ノナフルオロ-tert-ブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2,2-ジエチルプロピルメタクリレート、1-メチルブチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,6-オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、3,3-ジメチルブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、1-メチルシクロヘキシルメタクリレート、2-メチルシクロヘキシルメタクリレート、3-メチルシクロヘキシルメタクリレート、4-メチルシクロヘキシルメタクリレート、1,1-ジエチルブロピルメタクリレート、2-メチルフェニルメタクリレート、3-メチルフェニルメタクリレート、4-メチルフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2-メトキシフェニルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-フェニルエチルメタクリレート、2,4-ジメチルフェニルメタクリレート、2,5-ジメチルフェニルメタクリレート、2,6-ジメチルフェニルメタクリレート、3,5-ジメチルフェニルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。
本発明において、重合体中コモノマー単位の含有量は50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下である。50質量%を超えると屈折率や耐熱性が悪化することがある。
【0016】
本発明の耐熱光学部品用材料において用いる重合体は、通常、ラジカル重合により得ることができるが、紫外線硬化などの方法により得ることもできる。ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物の他、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジイソブチリルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシソプロピル)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキセンなどのジアルキルパーオキサイド類、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-2-シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオジカーボネート、α-クミルパーオキシネオジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシソブチレート、ジ- t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-アミルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、n-ブチル−4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレートなどのアルキルパーエステル類、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(1,1-ブチルシクロヘキサオキシジカーボネート)、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート類などが挙げられる。
【0017】
分子量を上げる方法としては、重合温度をモノマー沸点より十分に低い温度としたり、重合開始剤として官能部位が2つ以上あるもの(パーオキシケタール類、ケトンバーオキサイド類)を用いることが好ましい。具体的には、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル−4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-2-シクロヘキサンなどが挙げられる。
ラジカル重合開始剤に使用量は、モノマー全量100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜1.0質量部である。上記ラジカル重合開始剤は、それぞれを単独で使用してもよく、また、複数を併用しても差し支えない。
【0018】
また、本発明の耐熱光学部品用材料には、添加剤として、さらに酸化防止剤および光安定剤などを使用することができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ビタミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などがある。
フェノール系酸化防止剤としてはイルガノックス1010(Irganox1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノックス1076(Irganox1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノックス1330(Irganox1330、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノックス3114(Irganox3114、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノックス3125(Irganox3125、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノックス3790(Irganox3790、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、シアノクス1790(Cyanox1790、サイアナミド社製、商標)、スミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社製、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0019】
リン系酸化防止剤としては、イルガフォス168(Irgafos168、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガフォス12(Irgafos12、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガフォス38(Irgafos38、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、アデカスタブ329K(ADKSTAB329K、旭電化社製、商標)、アデカスタブPEP36(ADKSTAB PEP36、旭電化社製、商標)、アデカスタブPEP−8(ADKSTAB PEP−8、旭電化社製、商標)、Sardstab P−EPQ(クラリアント社製、商標)、ウエストン618(Weston 618、GE社製、商標)、ウエストン619G(Weston 619G、GE社製、商標)、ウエストン−624(Weston−624、GE社製、商標)などの市販品を挙げることができる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えばDSTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、DLTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、DLTOIB(吉富社製、商標)、DMTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、Seenox 412S(シプロ化成社製、商標)、Cyanox 1212(サイアナミド社製、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0020】
ビタミン系酸化防止剤としては、トコフェロール、イルガノックスE201(IrganoxE201、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標、化合物名;2,5,7,8−テトラメチル−2(4',8',12'−トリメチルトリデシル)クマロン−6−オール)などの市販品がある。
ラクトン系酸化防止剤としては、特開平7−233160号公報、特開平7−247278号公報に記載されているものを使用できる。また、HP−136(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標、化合物名;5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン)などがある。
アミン系酸化防止剤としては、イルガスタブFS042(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、GENOX EP(クロンプトン社製、商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド)などの市販品を挙げることができる。
これらの酸化防止剤の使用量は、樹脂成分全量100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部程度、好ましくは0.02〜3質量部、より好ましくは0.02〜2質量部である。これらの添加剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
さらに、本発明の耐熱光学部品用材料には、光安定剤を添加することができる。光安定剤としては通常知られているものが使用できるが、好ましくは、ヒンダードアミン系光安定剤である。具体的には、商品名として、旭電化社製のADK STAB LA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−68、LA−77、LA−82、LA−87、LA−94、CSC社製のTinuvin123、144、440、662、Chimassorb2020、119、944、Hoechst社製のHostavin N30、Cytec社製の Cyasorb UV−3346、UV−3526、GLC社製のUval 299、Clariant社製の Sanduvor PR−31等を挙げることができる。
光安定剤の添加量は、樹脂成分全量100質量部に対して、通常、0.005〜5重量部、好ましくは0.002〜2重量部であり、これらの光安定剤は2種以上を組み合わせることもできる。
本発明の耐熱光学部品用材料には、その他必要に応じて高級ジカルボン酸金属塩、高級カルボン酸エステルなどの滑り剤、可塑剤、帯電防止剤、無機および着色剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤等の添加剤を加えることもできる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において得られた耐熱光学部品用材料(硬化物)の物性評価方法は以下の通りである。
(1)分子量測定方法
下記の装置および条件で、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
GPC装置
GPCカラム:TOSOH TSKGuradcolumn H6(1本)+TOSOH TSK−GEL GMH6(1本)
溶媒:THF
測定温度:40℃
流速:1.0ml/min
注入濃度:0.2質量/容量%
注入量:200μl
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器、日本分光社製RI−2031puls
【0023】
(2)曲げ強度
幅10mm、厚さ3mmの試験片を作製し、JIS K7203に準拠して測定した。試験速度は1.5mm/分に設定した。
(3)ガラス転移温度
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製,DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下50℃で5分間保持した後、20℃/分で昇温させることにより得られた熱流束曲線に観測される不連続点をガラス転移温度Tgとした。
(4)軟化点
長さ10mm、一辺の長さ3mmの角柱形を用い、熱物性測定機(セイコーインスツルメンツ社製,TMA/SS6100)を用い、昇温速度は5℃/min、荷重は49mNの条件で測定した。
【0024】
(5)全光線透過率
試料として肉厚3mmの試験片を用いてJIS K7105に準拠して測定した(単位%)。測定装置はHGM−2DP(スガ試験機社製)を用いた。
また、180℃の恒温槽にサンプルを100時間置き、その前後の全光線透過率の差(%)を△全光線透過率とした。
(6)耐熱性試験(ΔYIの測定)
黄変度(YI)の測定を試料として肉厚3mmの試験片を用いてJIS K7105に準拠して測定した。測定装置はSZ−optical SENSOR(日本電色工業社製)を用いて行った。上記試験片を180℃の恒温器に100時間放置し、その前後のYIを測定して、ΔYIとした。YIおよびΔYIの値が小さいほど、黄変の度合いが小さい。
【0025】
実施例1
1-アダマンチルメタクリレート(出光興産社製)モノマー10gにラジカル重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製,パーヘキサ3M-95)0.01gを加え、硬化性組成物とした。この組成物を2枚のガラス板に3mm厚みのテフロン(登録商標)製のスペーサとして挟み込んで作製したセルに流し、オーブンにて110℃で1時間加熱を行った後、室温に徐冷することにより無色透明の板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0026】
実施例2
実施例1においてさらに酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,Irganox1010)を0.05g添加した以外は実施例1と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0027】
実施例3
実施例1においてさらに酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,Irganox3114)を0.02g添加した以外は実施例1と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0028】
実施例4
実施例1においてさらに酸化防止剤としてリン系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,Irgafos168)を0.02g添加した以外は実施例1と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0029】
実施例5
1-アダマンチルメタクリレート(出光興産社製)モノマー9.8gにメチルメタクリレートモノマー(シグマアルドリッチジャパン社製)0.2gを加え、ラジカル重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート(日本油脂社製,パーロイルTCP)0.026gを加え、硬化性組成物とした。この組成物を2枚のガラス板に3mm厚みのテフロン(登録商標)製のスペーサとして挟み込んで作製したセルに流し、オーブンにて60℃で3時間加熱を行った後、2℃/分で200℃まで昇温し、200℃にて0.5時間熱処理し、室温に徐冷することにより無色透明の板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0030】
比較例1
1-アダマンチルメタクリレート(出光興産社製)モノマー10gにラジカル重合開始剤としてターシャリーヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート(日本油脂社製,パーヘキシルI)0.05gを加え、硬化性組成物とした。この組成物を2枚のガラス板に3mm厚みのテフロン(登録商標)製のスペーサとして挟み込んで作製したセルに流し、オーブンにて120℃で3時間加熱を行った後、2℃/分で200℃まで昇温し、200℃にて0.5時間熱処理し、室温に徐冷することにより無色透明の板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0031】
比較例2
実施例1において、1-アダマンチルメタクリレートモノマーをイソボルニルメタクリレート(和光純薬工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0032】
比較例3
実施例1において1-アダマンチルメタクリレートモノマーをジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業社製,ファンクリルFA−513M)モノマーに変更した以外は実施例1と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0033】
比較例4
比較例2においてさらに酸化防止剤としてリン系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製Irgafos168)を0.02g添加した以外は比較例2と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0034】
比較例5
比較例3においてさらに酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,Irganox3114)を0.02g添加した以外は比較例3と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例6
1-アダマンチルメタクリレート(出光興産社製)モノマー7.5gおよびトリエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業社製)モノマー2.5gに、ラジカル重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製,パーヘキサ3M−95)0.01gを加え、硬化性組成物とした。この組成物を2枚のガラス板に3mm厚みのテフロン(登録商標)製のスペーサとして挟み込んで作製したセルに流し、オーブンにて110℃で3時間加熱を行った後、2℃/分で200℃まで昇温し、200℃にて0.5時間熱処理し、
室温に徐冷することにより無色透明の板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表2に示す。
【0037】
実施例7
実施例6において1-アダマンチルメタクリレート(出光興産社製)モノマー7.5gを6.5gに、トリエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業社製)モノマー2.5gを3.5gに変えた以外は実施例6と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表2に示す。
【0038】
実施例8
実施例6において1-アダマンチルメタクリレート(出光興産社製)モノマー7.5gを4.5gに、トリエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業社製)モノマー2.5gを5.5gに変えた以外は実施例6と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表2に示す。
【0039】
実施例9
1-アダマンチルメタクリレート(出光興産社製)モノマー7.5gおよびトリメタクリル酸トリメチロールプロパン(和光純薬工業社製)モノマー2.5gにラジカル重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製,パーヘキサ3M−95)0.01gを加え、硬化性組成物とした。この組成物を用い、実施例6と同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表2に示す。
【0040】
実施例10
実施例6においてさらに酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,Irganox1010)を0.05g添加した以外は実施例6と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表2に示す。
【0041】
実施例11
実施例9においてさらに酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,Irganox3114)を0.02g添加した以外は実施例9と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表2に示す。
【0042】
実施例12
実施例9においてさらに酸化防止剤としてリン系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,Irgafos168)を0.014g添加した以外は実施例9と同様にして硬化組成物を得、同様の方法で板状硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価の結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の耐熱光学部品用材料は、プリズム、液晶パネル、MD・CD・DVD用光学部品、光学レンズ、プロジェクターレンズ、ヘッドランプレンズ等の用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜100質量%の下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。R1〜R3はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基および炭素数3〜20のシクロアルキル基から選ばれる基を示す。Aは、フェニル基、炭素数1〜20のアルキレン基および炭素数3〜20のシクロアルキレン基から選ばれる基を示す。nは0または1である。)
で表されるアダマンチル基をエステル置換基とする(メタ)アクリル酸誘導体と0〜50質量%の前記(メタ)アクリル酸誘導体以外のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの1種以上を重合してなる重量平均分子量100万以上の重合体を含むことを特徴とする耐熱光学部品用材料。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸誘導体が1-アダマンチルメタクリレートである請求項1に記載の耐熱光学部品用材料。
【請求項3】
前記メタクリル酸エステルがメチルメタクリレートである請求項1に記載の耐熱光学部品用材料。
【請求項4】
樹脂成分全量100質量部に対し、酸化防止剤0.01〜5質量部を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱光学部品用材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱光学部品用材料を用いたことを特徴とする耐熱光学レンズ。

【公開番号】特開2011−202167(P2011−202167A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103205(P2011−103205)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2005−29246(P2005−29246)の分割
【原出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】