説明

耐熱性、嫌気硬化性組成物

本発明は、高い温度条件に対する耐性を示す嫌気硬化性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、高い温度条件に対して耐性を示す嫌気硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
一般に、嫌気接着剤組成物は周知である。例えば、R.D.Richによる、接着剤技術ハンドブック中の「嫌気接着剤」[Anaerobic Adhesives in Handbook of Adhesive Technology,29,467−79,A.Pizzi and K.L.Mittal,eds.,Maecel Dekker,Inc.,New York(1994)]およびそこに挙げられている参考文献を参照されたし。これらの組成物は多数利用され、新規の用途開発が続いている。
【0003】
従来の嫌気性接着剤は、通常、フリーラジカル重合可能なアクリレートエステルモノマーをペルオキシ開始剤および禁止剤成分と共に含む。また、そのような嫌気性接着剤組成物は、組成物が硬化する速度を速めるために促進剤成分を含んでいることが多い。
【0004】
多くの接着剤、特に嫌気性接着剤は、特定の添加物の含有によって高温度での劣化に対する耐性が与えられきた。例えば、米国特許第3,988,299号(Malofsky)公報は、改良された熱特性を有する熱硬化性組成物を記載しており、これは特定のアクリレートモノマーおよびマレイミド化合物を含む。
【0005】
L.J.BacceiおよびB.M.Malofskyは、「改良された耐熱性を有するマレイミド含有嫌気性接着剤」[”Anaerobic Adhesive Containing Maleimides Having Improved Thermal Resistance”in Adhesive Chemicals,589−601,L−H,Lee,ed.,Plenum Publishing Corp.(1984)]で、少なくとも150℃の温度で完全に硬化される嫌気性接着剤の耐熱性を向上するために、マレイミド−具体的には、N−フェニルマレイミド、m−フェニレンジマレイミドおよびメチレンジアニリンとメチレンジアニリンビスマレイミドとの反応生成物の利用を公表している。
【0006】
熱劣化に対する耐性を与えるために、前記のようなマレイミド化合物を嫌気性接着剤組成物へ付加することで許容できる性能を有する反応生成物が提供されるとはいえ、そのような配合物に含ませる代替の化合物を見いだすことは好ましいと考えられる。
【0007】
過去に、Henkel社は、熱劣化に対する耐性が強化された嫌気性接着剤組成物を考案した。例えば、米国特許第6,342,545号(Klemarczyk)はラジカル硬化性組成物を開示およびクレームし、この組成物のラジカル硬化反応生成物は、改良された接着力および高温度での熱劣化に対する耐性を示す。この組成物は嫌気状態で硬化する可能性があり、(a)(メタ)アクリレート成分;(b)耐熱性付与剤として潜在性イミダゾールの有効量;および(c)嫌気性硬化−誘導組成物のようなラジカル硬化−誘導組成物を含む。潜在性イミダゾールは、活性水素と第3級アミノ基を共に有する化合物と、エポキシ化合物およびカルボン酸無水物を反応させることによって得られる付加物である。そして、耐熱性付与剤は、メチルイミジゾール、ベンゾイルイミジゾール、ベンゾイルメチルイミジゾール、フタロイルジイミジゾールおよびこれらの組合せから選択される。
【0008】
また、米国特許第6,150,479号(Klemarczyk)公報はラジカル硬化性組成物を開示およびクレームし、この組成物のラジカル硬化反応生成物は、改良された接着力および高温度での熱劣化に対する耐性を示す。この組成物は嫌気状態で硬化する可能性があり、(a)(メタ)アクリレート成分;(b)特定の構造の共反応物成分(この成分の例としては、エポキシ化シトロネリルアクリレート;エポキシ化シトロネリルメタクリレート;シクロヘキセニルメタノールアクリレート;シクロヘキセニルメタノールメタクリレート;エポキシ化シクロヘキセニルメタノールメタクリレート;ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート;エポキシ化ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート;ジヒドロジシクロペンタジエニルメタクリレート;エポキシ化ジヒドロジシクロペンタジエニルメタクリレート;エポキシ化2−プロペノイック酸,2−[(3a,3,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデニル)オキシ]エチルエステル;エポキシ化2−プロペノイック酸,2−メチル,2−[(3a,3,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデニル)オキシ]エチルエステルおよびこれらの組合せが挙げられる);および(C)嫌気性硬化−誘導組成物のようなラジカル硬化−誘導組成物、を含む。ここでは、組成物中に共反応物が存在するので、改良された接着力および高い温度での熱劣化に対する耐性を有する、組成物のラジカル硬化反応生成物を与える。また、前記組成物は、例えば、イミジゾール誘導体(例えば、ベンゾイルイミジゾール、メチルイミジゾール、ベンゾイルメチルイミジゾール、フタロイルジイミジゾールおよびこれらの組合せ)、潜在性イミジゾール、および活性水素を第3級アミノ基と共に分子内に有する化合物とエポキシ化合物およびカルボン酸無水物とを反応させて得られる付加物から選択されるような耐熱性−付与剤を含むことができる。
【0009】
また、Henkel社は、ホウ酸(品物No.190901)を有するPSTと呼ばれ、他の成分全体のうち約1−5%のホウ酸を有する製品を販売してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該分野での現状技術にもかかわらず、 ラジカル硬化性接着剤、例えば、嫌気的に硬化可能な接着剤の反応生成物の熱的性能を改良するために、添加物の探索が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の嫌気硬化性組成物は、(メタ)アクリレート成分;嫌気硬化システム;およびIA族またはIIA族元素とハロゲン、サルフェートまたはスルホネートとの化合物を含む。任意に、本発明の嫌気硬化性組成物は、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィンおよびこれらの組合せを含む。
【0012】
好ましくは、前記化合物は、IIA族元素がカルシウム、およびハロゲンがフッ素の化合物である。
【0013】
1つの実施形態では、前記ポリオレフィンが存在し、このポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンおよびこれらのコポリマーおよび組合せから選択される。
【0014】
別の実施形態では、前記ハロゲン化ポリオレフィンが存在し、このハロゲン化ポリオレフィンは、ハロゲン化ポリエチレン、ハロゲン化ポリプロピレン、ハロゲン化ポリブチレンおよびこれらのコポリマーおよび組合せから選択される。
好ましくは、このハロゲン化ポリオレフィンのハロゲンはフッ素である。
【0015】
1つの商業用途では、本発明の組成物は嫌気性パイプシーラントとして有用であり、そしてIIA族元素およびハロゲンの化合物(例えば、フッ化カルシウム)および任意に、ポリエチレンおよび・またはポリテトラフロロエチレンポリマーを含有しているので、パイプのかみ付きを防いで高い温度条件で優れたシール適性を組成物に与える。フッ化カルシウムが存在しない組成物と比較して、フッ化カルシウムが存在する組成物は良好なシール適性を示した。ここで、本発明の組成物は室温でパイプをシールおよび固定するだけではなく、高い温度でもシールする。
【0016】
また、本発明は、 本発明の嫌気硬化性組成物、さらには本発明の嫌気硬化性組成物の反応生成物を製造および使用するための方法を提供する。
【0017】
本発明は、「発明の詳細な説明 」およびその後の代表的な実施例を読むことによって、より十分に理解されると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
【0019】
本発明の嫌気硬化性組成物は、(メタ)アクリレート成分;嫌気硬化性システム;およびIA族またはIIA族元素およびハロゲン、サルフェートまたはスルホネートの化合物を含む。任意に、本発明の嫌気硬化性組成物は、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィンおよびこれらの組合せを含む。好ましくは、前記化合物は、IIA族元素がカルシウムおよびハロゲンがフッ素である化合物である。
【0020】
前記(メタ)アクリレート成分は、多くの材料、例えば、HC=CGCOによって表されるものから選択されてもよく、ここで、Gは、水素、ハロゲンまたは1から約4個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく、Rは、1から約16個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキルまたはアリール基から選択されてもよく、前記すべての基は、任意に、シラン、シリコン、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホネート、スルホンなどで置換されていても、または場合によっては割り込まれていてもよい。
【0021】
本発明で使用するのに適した追加の(メタ)アクリレートモノマーとしては、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、例えば、決して限定されるものではないが、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのような2−または3−官能性(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(「TMPTMA」)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジ−(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレンジグリコールジアクリレート、ジグリセロールテトラメタクリレート、テトラメチレンジメタクリレート、エチレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、および例えば、エトキシ化ビスフェノール−A(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)のようなビスフェノール−Aモノおよびジ(メタ)アクリレートならびに例えば、エトキシ化ビスフェノール−F(メタ)アクリレートのようなビスフェノール−Fモノおよびジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
さらに、本発明で使用できる別の(メタ)アクリレートモノマーとしては、シリコーン(メタ)アクリレート部分構造(「SiMA」)、例えば、米国特許第5,605,999号(Chu)公報に教示およびクレームされているものが挙げられ、この特許の開示は参照して本明細書に明示的に組みこまれる。
【0023】
当然ながら、これらの(メタ)アクリレートモノマーの組合せも使用することができる。
【0024】
前記(メタ)アクリレート成分は、組成物の全重量を基準として、組成物の約10から約75重量%、例えば、約20から約60重量%、例えば、約25から約50重量%を構成しなければならない。
【0025】
IA族またはIIA族元素とハロゲン、サルフェートまたはスルホネートとの化合物は、本発明の組成物に高い温度条件下で安定性を付与できるようにするには、そのような条件下で安定でなければならない。
【0026】
IA族またはIIA族元素とハロゲン、サルフェートまたはスルホネートとの化合物は、本発明の組成物中、組成物の全重量を基準として、約10重量%から約50重量%、例えば、約15重量%から約40重量%、例えば、約25重量%から約35重量%の範囲内の量で存在しなければならない。
【0027】
前記化合物は、リチウム、ナトリウムまたはカリウムのようなIA族元素、またはカルシウム、バリウム、マグネシウムまたはストロンチウムのようなIIA族元素を含むことができる。
【0028】
さらに、前記化合物は、フッ素のようなハロゲン、またはサルフェートもしくはスルホネートを含むことができる。
【0029】
そしてまた、ポリオレフィンは、ハロゲン化されているかどうかに関わらず含まれていてもよい。実際、ポリオレフィンおよびハロゲン化ポリオレフィンは含まれていてもよく、好ましくは組合せで含まれることができる。
【0030】
本発明の組成物に含まれていてもよいポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンおよびこれらのコポリマーおよび組合せがある。これらのポリオレフィンのハロゲン化バージョンとしては、フッ素化ポリエチレンが挙げられ、ポリ(テトラフルオロエチレン)のようなものが特に好ましい。
【0031】
ポリオレフィンはハロゲン化されているかどうかに関わらず、本発明の組成物中、組成物の全重量を基準として、約2重量%から約30重量%、例えば、約10重量%から約25重量%の範囲内、例えば、約20重量%の量で存在しなければならない。ポリオレフィンは少なくとも2重量%の量で存在しなければならず、残りが(1種存在する限り)ハロゲン化ポリオレフィンである。
【0032】
前記ポリオレフィンは粒子状材料または粉末形態で提供される。このポリオレフィン粉末は、一般に、約0.1から約50ミクロンの平均粒径を有する。好ましくは、このポリオレフィン粉末は約20ミクロンの平均粒径を有する。本発明の組成物で使用するのに適したポリオレフィン粉末は、典型的には、約75℃から約175℃範囲の融点を有する。本発明の組成物がこの組成物で使用されたポリオレフィン粉末の融点より高い温度に達した場合、このポリオレフィン粉末は、典型的には、本発明の組成物に実質的に溶解する。本発明で適した市販のポリエチレン粉末は、Equistar Chemical Companyから登録商標名Microtheneで販売されている0.909から0.952g/ccの範囲の平均密度を有するものである。好ましいポリオレフィン粉末はMicrothene(登録商標)FN510−00である。このポリオレフィン粉末は、少なくとも1種のCからCアルケンモノマーの繰り返し単位を含有するポリオレフィンから構成される。
【0033】
幅広く様々なハロゲン化ポリオレフィン、例えば、ペルフッ素化炭化水素ポリマーは、例えば、「テフロン(登録商標)」の名前でDuPont社から販売されているものが入手できる。そのようなペルフッ素化炭化水素ポリマーは、典型的には、約0.1から最高、約100μmの範囲の粒径、約0.2から最高、約20g/mの範囲の表面積、および少なくとも100g/Lの嵩密度を有することで特徴付けられる。あるいは、そのようなペルフッ素化炭化水素ポリマーは、約250−500g/Lの範囲の平均嵩密度、325+/−5℃の融解ピーク温度(ASTM D1457によって測定して)、約8−15μmの範囲の平均粒径分布、約8−12m/gの範囲の比表面積、および比較的狭い分子量分布を有することでさらに特徴付けられる。
【0034】
本発明の組成物の硬化を誘導および加速するための好ましい嫌気硬化システムは、サッカリン、トルイジン、例えば、N,N−ジエチル−p−トルイジン(「DE−p−T」)およびN,N−ジメチル−o−トルイジン(「DM−o−T」)、アセチルフェニルヒドラジン(「APH」)、マレイン酸、およびキノンのような安定剤、例えば、ナフトキノンおよびアントラキノンを含んでいてもよい。例えば、米国特許第3,218,305号(Krieble)、同4、180,640号(Melody)、同4,287,330号(Rich)および同4,321,349号(Rich)各公報を参照されたい。
【0035】
前パラグラフにリストされた嫌気硬化−誘導組成物の成分に加えて、最近、Henkel社は嫌気硬化促進剤シリーズを見いだした。その一部は下で説明される:
【0036】
【化1】

【0037】
【化2】

ここで、R−Rは、各々独立して、水素またはC1−4から選択され;Zは、炭素−炭素一重結合または炭素−炭素二重結合であり;mは0または1であり;nは1から5の間の整数であり、
【0038】
【化3】

ここで、Yは芳香族環であり、任意に、最高5つの位置でC1−6アルキルまたはアルコキシ、もしくはハロ基で置換されており;Aは、C=O、S=OまたはO=S=Oであり;Xは、NH、OまたはSであり;Zは芳香族環であり、任意に、最高5つの位置でC1−6アルキルまたはアルコキシ、もしくはハロ基で置換されており;またはYおよびZは、同じ芳香族環または芳香族環システムに共に結合されていてもよく(ただし、XがNHの場合、o−安息香酸スルフィミドはそれから除外される)、
【0039】
【化4】

ここで、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボキシル、またはスルホネートであり、Rは、上で定義されたもの、およびアルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、またはアラルキルである。米国特許第6,835,762号、同6,897,277号および同6,958,368号各公報を参照されたし。
【0040】
さらに、Loctite(R&D)社は、硬化促進剤として下記のトリチアジアザペンタレンを使用して嫌気的に硬化可能な組成物を考案した:
【0041】
【化5】

ここで、AおよびAは、OおよびNから選択されてもよく、
R、R、RおよびRは、同じであっても、または異なっていてもよく、上で定義されたもの、および1から約30個の炭素原子有するシクロアルキル、シクロアルケニル、およびアリールであり、但しヘテロ原子、および複素環式構造によって置換されていても、または割り込まれていてもよく、または
およびRは、共に結合して約20から約28個の環原子を有する環状構造を形成していてもよく、そして共にトリチアジアザペンタレン構造で置換または割り込まれていてもよいジアルキル置換ポリエーテル構造を表し、このトリチアジアザペンタレン構造はそれ自体、上で定義されたものと同じA、R、またはRによって置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。米国特許第6,583,289号(McArdle)公報を参照されたし。
【0042】
また、トリアジン/チオール嫌気硬化システムは本発明の実施で使用されてもよい。例えば、米国特許第4,413,108号、同4,447,588号、同4,500,608号および同4,528,059号各公報はそのようなシステムを説明し、上記各特許はその全部を参照して本明細書に明示的に組みこまれる。
【0043】
また、本発明の組成物は他の通常の成分、例えば、鉄および銅のような金属触媒を含んでいてもよい。金属触媒は、一般に、1成分嫌気配合物では好ましくない(従って金属を析出する金属イオン封鎖剤の使用)。2成分嫌気配合物では、金属触媒はペルオキシ化合物のような重合開始剤を含まない配合物の一部に添加されてよい。
【0044】
多くの周知のフリーラジカル重合開始剤、例えば、限定されることなしに、CHP、パラ−メンタンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)およびt−ブチルペルベンゾエートのようなヒドロペルオキシドは、典型的に、本発明の組成物に包含される。他のペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアセチルペルオキシド、ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)吉草酸エステル、p−クロロベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチル−ペルオキシヘキサ−3−イン、4−メチル−2,2−ジ−t−ブチルペルオキシペンタンおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0045】
前記嫌気硬化システムは、組成物の全重量を基準にして、約0.1から約10重量%、例えば、約1から約5重量%の量で使用されてよい。
【0046】
硬化性組成物またはこれらの反応生成物のいずれかの物理的特性を変えるために、通常の嫌気硬化性組成物に追加の成分が含有されてきた。例えば、増粘剤、非反応性可塑剤、フィラー、強化成分(例えば、エラストマーおよびゴム)、および他の周知の添加物は、当業者が添加することが好ましいと思えばそこに添加されてよい。
【0047】
また、本発明は、本発明の嫌気性接着剤組成物、さらにはこの組成物の反応生成物を製造および使用する方法を提供する。
【0048】
本発明の組成物は当業者に周知の通常の方法によって製造されることができる。例えば、本発明の組成物の成分は、これらの成分が組成物において果たすことができる役割および機能に適応する任意の都合のよい順番で一緒に混合される。
【0049】
本発明の組成物は、本明細書に記載された所望の利益および利点で機能するために様々な基体に塗布される。例えば、適切な基体は、鋼鉄、真鍮、銅、アルミニウム、亜鉛、ガラス、ならびに他の金属および合金、セラミックおよび熱硬化性樹脂から構成されてもよい。本発明の組成物は、ガスケットおよび複合体用途で使用するのに適したものになる有利な特性を有することができる。本発明の組成物は、鋼鉄およびアルミニウム上で特に良好な結合強度を示す。本発明の組成物の硬化速度を高めるために、選択された基体の表面に適切なプライマーが塗布されてもよい。例えば、米国特許第5,811,473号(Ramos)公報を参照されたし。
【0050】
また、本発明は、本発明の嫌気性接着剤組成物の反応生成物を製造するための方法を提供する。この方法は以下のステップ:組成物を所望の基体表面に塗布するステップおよび組成物をそれが硬化するのに十分な時間、嫌気環境に曝すステップを含む。
【0051】
上の本発明の記載を背景に、広範囲の実用機会が提供されることは明らかである。下記の実施例は、ただ、説明する目的で提供され、本明細書での教示を何らか制限するように解釈されるものではない。
【実施例】
【0052】
実施例1
下の表1には3つの試料を示しており、試料No.1は試料No.2およびNo.3に対するコントロールとしての役を果たし、試料No.2−4は、本発明の実施形態バージョンである。
【0053】
【表1】

【0054】
各成分を任意の都合のよい順序で混合し、次いで下記のように使用した。これらの試料に関するシール性評価を、「シール性と熱エージング試験」(Sealability and Heat Aging Test)の標題が付けられたASTM D6396−99に従って行なった。すなわち、3/8”の可鍛鋼鉄パイプティーおよび鋼鉄パイププラグを使用した。各々の試験ジョイントに対して、オス継ぎ手の2番目から6番目のネジ山に試料を塗布し、確実に試料の平均高がネジ山クラウンに達し、そして試料が完全にネジ山の谷を濡らすようにした。トルク・レンチを用いて、試料で覆われた2つのパイププラグを240インチ−ポンド(27.2Nm)のトルクを適用して各々のティーに差し込んだ。そうして形成した組立品を室温で少なくとも24時間硬化した。パイプティーのシール性試験クランプを組立品に付け、水浴中に沈めた。組立品を100psi(0.7Mpa)で5分間加圧し、各々の試験継ぎ手で観察されるいかなるリークパスも書き留めた。次いで組立品を大気圧に戻すために圧力を解放した。
【0055】
熱エージングのために、組立品を表2および3に指定された時間および温度で温度室に置き、組立品を温度室から取り出し、放置して室温に戻した。この時点で、各々の組立品について、100psiの空気圧力でシール性を評価した。
【0056】
下の表No.2および3を参照すると、室温条件下で24時間硬化し、その後、200℃または233℃のいずれかで24時間または1週間熱エージングを行なった試料No.1は、100psiでパイプを通る空気に対してシールできなかったことが理解できるだろう。対照的に、試料No.2および3の各々は、同じ条件で硬化した後、100psiでパイプを通る空気に対してシールできた。さらに、試料No.4は、同じ条件で硬化した後、100psiでパイプを通る空気に対してシールできた。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
実施例2
ここで、2つの異なった高い温度(280℃および350℃)で3日間曝して相対的なシール性を決定するために、LOCTITE PST 567に対抗して試料No.3を評価した。LOCTITE PST 567は、ビスフェノールAフマレート樹脂(30−60重量%)、ポリグリコールジメタクリレート(10−30重量%)、ポリグリコールラウレート(10−30重量%)、ポリエチレングリコールモノココエート(10−30重量%)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(5−10重量%)、二酸化チタン
(1−5重量%)、シリカ(1−5重量%)およびサッカリン(1−5重量%)を含む。
【0060】
これらの試料に関して、「耐スチーム性試験」(Steam Resistance Test)の標題が付けられたASTM D6396−99に従って耐スチーム性の評価を実施した。すなわち、1/2”鍛黒鋼ネジ山パイプ継ぎ手カプリング、1/2”鍛黒鋼ネジ山パイプ継ぎ手六角プラグ、1/2”鍛黒鋼両端ネジ山継ぎ手パイプ、および1/2”鍛黒鋼ネジ山パイプ継ぎ手キャップを、何もしない(as received)状態で使用し、試料をジョイントの間に使って組み立てた。すなわち、ボンベ当り3つの試験ジョイントを有する1/2”パイプボンベの組立品を形成した。組立品を仕上げて締め付ける前に、約7グラムの水を組立品に添加した。このボンベを室温で少なくとも24時間硬化し、その後、各々の組立品を秤量した。次いで、組立品を加圧ポット中に置き、このポットを温度室に置いた。記載された時間間隔の後、組立品を温度室から取り出して室温に冷却し、この時点で組立品を再度秤量した。
【0061】
結果は、下の表4および5に集められている。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
表4および5の結果は、LOCTITE PST 567が鍛鋼ボンベのネジ山をシールするために使用された場合、280℃で22%でのスチームが失われ、350℃で47%のスチームが失われたことを示す。ところが、試料No.3が鍛鋼ボンベのネジ山をシールするために使用された場合、上記温度で、それぞれ1%および2%のスチームが失われた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気硬化性組成物であって、
(a)(メタ)アクリレート成分;
(b)嫌気硬化システム;および
(c)IA族またはIIA族元素およびハロゲン、サルフェートまたはスルホネート;および
(d)任意に、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィンおよびこれらの組合せ;を含む、組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート成分が、HC=CGCOで表され、ここでGは、H、ハロゲンおよび1から約4個の炭素原子を有するアルキルからなる群より選択されるものであり、Rは、1から約16個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリール、およびアリール基からなる群より選択されるものである(但し、これらの基は、シラン、シリコン、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カルバメート、アミン、アミド、硫黄、スルホネートおよびスルホンからなる群より選択されるものによって置換されているかまたは割り込まれていても、またま置換されていないかまたは割り込まれていなくてもよい。)、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート成分が、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−(メタ)アクリレート、ビスフェノール−F−(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−F−(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記嫌気硬化システムが、下記:
A.サッカリン、トルイジン、アセチルフェニルヒドラジン、マレイン酸、およびキノンの組合せ;
B.
【化1】

【化2】

ここで、R、RおよびRは、各々独立して、水素またはC1−4からなる群より選択され;Zは、炭素−炭素一重結合または炭素−炭素二重結合であり;mは0または1であり;nは1から5の間の整数であり;
C.
【化3】

ここで、Yは、任意に、C1−6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基によって、最高5つの位置まで置換された芳香族環からなる群より選択され;Aは、C=O、S=OまたはO=S=Oであり;Xは、NH、OまたはSであり;Zは、任意に、C1−6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基によって、最高5つの位置まで置換された芳香族環であり;またはYおよびZは、同じ芳香族環または芳香族環システムに共に結合されていてもよく(ただし、XがNHの場合、o−安息香酸スルフィミドはそれから除外される);
D.
【化4】

ここで、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボキシル、またはスルホネートからなる群より選択され、Rは、上で定義されたもの、およびアルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、またはアラルキルであり;
E.下記の構造:
【化5】

に包含されるトリチアジアザペンタレンであり、ここで、
AおよびAは、各々独立して、OおよびNからなる群より選択され;
R、R、RおよびRは、同じであるかまたは異なっており、上で定義されたもの、および1から約30個の炭素原子有するシクロアルキル、シクロアルケニル、およびアリールであり、但しヘテロ原子、および複素環式構造によって置換されていても、または割り込まれていてもよく、または
およびRは、共に結合して約20から約28個の環原子を有する環状構造を形成していてもよく、そして共にトリチアジアザペンタレン構造で置換されていてもまたは割り込まれていてもよいジアルキル置換ポリエーテル構造を表し、このトリチアジアザペンタレン構造はそれ自体、上で定義されたものと同じA、R、まはたRによって置換されていてもまたは置換されていなくてもよく;および
F.トリアジンおよびチオールの組合せ、
の1種類以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物が、IA族元素の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物が、IIA族元素の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物が、IIA族元素の化合物であってカルシウム化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物が、ハロゲン化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物が、サルフェートの化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記化合物が、スルホネートの化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィンが、存在し、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンおよびこれらのコポリマーおよび組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ハロゲン化ポリオレフィンが、存在し、ハロゲン化ポリエチレン、ハロゲン化ポリプロピレン、ハロゲン化ポリブチレンおよびこれらのコポリマーおよび組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ハロゲン化ポリオレフィンのハロゲンが、フッ素である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物の反応生成物。
【請求項15】
嫌気硬化性組成物からの反応生成物を製造するための方法であって、以下のステップ:請求項1に記載の嫌気硬化性組成物を所望の基体表面に塗布するステップおよび組成物をそれが硬化するのに十分な時間嫌気環境に曝すステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を有する、対になった2つの基体の間に形成された結合を含む、組成物。

【公表番号】特表2011−502199(P2011−502199A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532033(P2010−532033)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/012197
【国際公開番号】WO2009/058250
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】